説明

車両用交流発電機

【課題】整流装置の冷却性を向上させることができる車両用交流発電機を提供すること。
【解決手段】車両用交流発電機1の整流装置4は、フレーム5に固定されて整流素子41の冷却を行う放熱フィン42を有する。この放熱フィン42は、回転子3の回転軸32に対して径方向に延在する第1のフィン43を有する。リヤカバー6は、第1のフィン43の径方向外側であって、第1のフィン43よりもリヤ側の位置に冷却風の吸入窓61を有する。冷却ファン33の回転に伴って吸入窓61からリヤカバー6の内部に取り込まれた冷却風が、第1のフィン43に沿って径方向外側から径方向内側に流れ、さらに第1のフィン43の径方向内側に形成された通風空間45から冷却ファン33側に流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転軸と垂直な向きに延在する放熱フィンに整流素子を取り付けて整流装置を形成し、回転子に取り付けられた冷却ファンを回転させることにより、リヤカバーの軸方向端面に設けられた吸入窓から冷却風を取り込んで放熱フィンに向け、さらにその表面に沿って流すことにより整流装置を冷却するようにした車両用交流発電機が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−509393号公報
【特許文献2】特開平10−56762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両用交流発電機に用いられている整流装置では、リヤカバーの軸方向端面に設けられた吸入窓から取り込まれた冷却風は、全体が冷却フィンの全面に沿って流れるわけではないため、冷却性が悪いという問題があった。例えば、特許文献2に開示された車両用交流発電機では、リヤカバーの軸方向端面に設けられた複数の吸入窓の中の最内径側の吸入窓から取り込まれた冷却風は、放熱フィンの表面全体に沿って流れるわけではなく、内径側の一部の表面に沿って流れた後、フレーム内に吸い込まれてしまうため、放熱フィンの冷却に充分寄与しているとはいえない。また、このように整流装置の冷却性が悪いと、整流装置に備わった整流素子の温度が高くなって寿命低下につながったり、冷却性を確保するために放熱フィンの面積を大きくすることにより発電機全体が大きくなったり、耐熱性の高い整流素子を使うことにより部品コストが上昇するなどの不都合を招くことになる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、整流装置の冷却性を向上させることができる車両用交流発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用交流発電機は、冷却ファンとともに回転する回転子と、回転子と対向配置された固定子と、回転子と固定子とを支持するフレームと、フレームに固定されて整流素子の冷却を行う放熱フィンを有する整流装置と、整流装置を含む電気部品を覆うリヤカバーとを備える車両用交流発電機において、放熱フィンは、回転子の回転軸に対して径方向に延在する第1のフィンを有し、リヤカバーは、第1のフィンの径方向外側であって、第1のフィンよりもリヤ側の位置に冷却風の吸入窓を有し、冷却ファンの回転に伴って吸入窓からリヤカバーの内部に取り込まれた冷却風が、第1のフィンに沿って径方向外側から径方向内側に流れ、さらに第1のフィンの径方向内側に形成された通風空間から冷却ファン側に流れている。
【0007】
整流装置の径方向外側から導入された冷却風を、放熱フィンの表面に沿って流すことができるため、冷却風の全体が放熱フィンの冷却に寄与することになり、整流装置の冷却性を向上させることができる。また、整流装置の冷却性向上に伴って、整流素子の温度低減による長寿命化、放熱フィンの面積縮小による発電機全体の小型化、耐熱性の低い整流素子使用による部品コスト削減が可能となる。
【0008】
また、上述したリヤカバーは、軸方向端面であって放熱フィンに対応する対向面に、冷却風の吸入窓が形成されていないことが望ましい。これにより、放熱フィンの径方向外側のみから冷却風を導入することができるため、整流装置の冷却性を確実に向上させることができる。
【0009】
また、上述した放熱フィンは、回転子の回転軸に対して放射状に形成されていて第1のフィンからリヤ側に延在する第2のフィンを有することが望ましい。これにより、放熱フィンの表面積を拡大することが可能となり、整流装置の冷却性をさらに向上させることができる。また、周方向に隣接する2枚の第2のフィンに着目すると、径方向内側になるほどこれらの間の間隔が狭くなるため、径方向内側になるほど冷却風の風速が増し、冷却効率をさらに上げることができる。
【0010】
また、上述した第2のフィンは、軸方向に沿ったリヤ側端部がリヤカバーに当接していることが望ましい。これにより、整流装置とリヤカバーの間の隙間を通して流れる冷却風をなくして冷却風全体を放熱フィンを通して流すことができ、冷却風の風量を増すことなく整流装置の冷却性をさらに向上させることができる。
【0011】
また、上述したリヤカバーは、金属材料によって形成されていることが望ましい。これにより、放熱フィンからリヤカバーに伝熱してリヤカバーを放熱部材として利用することが可能となる。
【0012】
また、上述したリヤカバーは、放熱フィン側に突出する第3のフィンを有することが望ましい。これにより、リヤカバーを放熱部材として利用する際の放熱効果をさらに高めることができる。
【0013】
また、上述した放熱フィンとリヤカバーとを一体で成型したことが望ましい。これにより、部品点数の削減によるコスト低減が可能となる。また、放熱フィンからリヤカバーへの伝熱性を高めることができ、整流装置の冷却性をさらに向上させることができる。
【0014】
また、上述したフレームの軸方向端面を第1のフィンとして用いることが望ましい。これにより、部品点数の削減によるコスト低減が可能となる。特に、熱容量の大きいフレームを放熱フィンとして利用することにより、整流素子の過渡時の温度変化を緩和したり、ピーク温度を下げることができる。
【0015】
また、上述した第1のフィンは、回転子の回転軸に沿って複数段に重ねて配置されることが望ましい。これにより、放熱フィンの表面積をさらに拡大することが可能となり、整流装置の冷却性をさらに向上させることができる。
【0016】
また、上述したリヤカバーの軸方向端面の一部であって、第1のフィンの径方向内側に形成された通風空間に対向する領域の軸方向位置を、径方向内側になるほど冷却ファン側に傾斜させることが望ましい。これにより、放熱フィンの径方向内側に形成された通風空間における冷却風の滞留を防止して流れを円滑にすることができ、通風抵抗の低減に伴う風量増加による冷却性の向上が可能となる。また、リヤカバーを放熱部材として利用する場合には、リヤカバーの放熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の部分的な断面図である。
【図2】リヤカバーを側面方向から見た部分的な展開図である。
【図3】負極側放熱フィンと正極側放熱フィンを有する整流装置を含む電気部品の配置例を示す図である。
【図4】変形例を示す整流装置周辺の部分的な断面図である。
【図5】リヤカバー側にフィンを追加した変形例を示す整流装置周辺の部分的な断面図である。
【図6】図5のVI−VI線の部分的な断面図である。
【図7】放熱フィンとリヤカバーとを一体に成型した変形例を示す整流装置周辺の部分的な断面図である。
【図8】フレームを第1のフィンとして用いる変形例を示す整流装置周辺の部分的な断面図である。
【図9】2段構成とした変形例の放熱フィンを側面方向から見た部分的な展開図である。
【図10】リヤカバーの変形例を示す整流装置周辺の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、一実施形態の車両用交流発電機の部分的な断面図であり、リヤ側部分の断面構造が示されている。図1に示す車両用交流発電機1は、固定子2、回転子3、整流装置4、フレーム5、リヤカバー6等を含んで構成されている。
【0019】
固定子2は、固定子鉄心21と、この固定子鉄心21に巻回した固定子巻線22とを備えている。回転子3は、ポールコア31を回転軸32に通して、界磁巻線(図示せず)を両側から挟み込んだ構造を有している。ポールコア31の軸方向端面には、冷却ファン33が溶接等によって取り付けられており、冷却ファン33とともに回転子3が回転する。また、回転軸32の後方端部近傍には、界磁巻線に接続された給電用のスリップリング34、35が配置されている。固定子2は、この回転子3と対向配置されている。なお、上述した説明では、界磁巻線は回転子3に備わっているものとしたが、フレーム5側に固定されたブラシレスタイプの構成を採用するようにしてもよい。
【0020】
整流装置4は、固定子巻線22の出力電圧である交流電圧を整流素子41を用いて整流して直流の出力電力を得るためのものであり、整流素子41の冷却を行う放熱フィン42を有する。整流素子41としては、ダイオードを用いる場合、MOS−FET等のスイッチング素子を用いる場合、ダイオードとスイッチング素子を組み合わせる場合などが考えられる。また、放熱フィン42は、回転軸32に対して径方向(例えば、垂直方向)に延在する第1のフィン43と、回転軸32に対して放射状に形成されているとともに第1のフィン43からリヤ側に向かって延在する第2のフィン44とを有する。
【0021】
フレーム5は、固定子2および回転子3を収容しており、回転子3を回転軸32を中心に回転可能な状態で支持するとともに、回転子3のポールコア31の外周側に所定の隙間を介して配置された固定子2を固定する。また、フレーム5は、固定子鉄心21の軸方向端面から突出した固定子巻線22に対向した部分に冷却風の吐出窓51が、軸方向端面の内径側に冷却風の吸入窓52がそれぞれ設けられている。具体的には、図1に示すように、フレーム5の軸方向端面の中央部には、回転子3を回転可能な状態で支持するために用いられる軸受け7を収容する軸受け収容部53が形成されており、この軸受け収容部53の外径側に隣接するように複数の吸入窓52が形成されている。
【0022】
リヤカバー6は、フレーム5のリヤ側に突出する回転軸32の後方端部とともに、リヤ側の外部に取り付けられる整流装置4やブラシ装置、ICレギュレータなどの電気部品の全体を覆って、これらを保護するためのものである。リヤカバー6は、樹脂材料あるいは金属材料によって形成されている。金属材料としてはアルミニウムや鉄などを用いることができる。また、金属材料を用いた場合の製法としては、板材を用いたプレス成型やダイカストなどが考えられる。このリヤカバー6の側面には、整流装置4の第1のフィン43の径方向外側であって第1のフィン43よりもリヤ側の位置に冷却風の吸入窓61が形成されている。一方、このリヤカバー6には、軸方向端面であって放熱フィン42(第1のフィン43、第2のフィン44)に対向する面には、冷却風の吸入窓が形成されていない。
【0023】
図2は、リヤカバー6を側面方向から見た部分的な展開図である。図2に示すように、リヤカバー6の側面には、第1のフィン43よりもリヤ側の位置に、縦長の矩形形状を有する複数の吸入窓61が形成されている。なお、吸入窓61の大きさおよび個数は、異物混入防止および風量確保の観点から適宜変更することが可能である。
【0024】
ところで、整流素子41としてダイオードを用い、絶縁せずに放熱フィン42に取り付けて全波整流回路を形成する場合を考えると、放熱フィン42には、複数の負極側整流素子41Aとしてのダイオードのアノードが共通に取り付けられる負極側放熱フィン42Aと、複数の正極側整流素子41Bとしてのダイオードのカソードが共通に取り付けられる正極側放熱フィン42Bとが含まれる。そして、正極側放熱フィン42Bの一部に出力端子(図示せず)が取り付けられる。
【0025】
図3は、負極側放熱フィン42Aと正極側放熱フィン42Bを有する整流装置4を含む電気部品の配置例を示す図である。図3に示すように、扇形を有する第1のフィン43Aとこの第1のフィン43Aに対して垂直に延在する第2のフィン44Aからなる負極側放熱フィン42Aと、扇形を有する第1のフィン43Bとこの第1のフィン43Bに対して垂直に延在する第2のフィン44Bからなる正極側放熱フィン42Bの一方端同士が周方向に沿って所定の隙間を介して隣接配置されており、これら負極側放熱フィン42Aおよび正極側放熱フィン42Bのそれぞれの他方端の間に形成された空間にブラシ装置8とICレギュレータ9とが配置されている。
【0026】
なお、整流素子41としてダイオードを用い、絶縁した状態で放熱フィン42に取り付ける場合には、放熱フィン42全体を同じ電位にすることができ、2つに分ける必要がないため、図3に示した負極側放熱フィン42Aと正極側放熱フィン42Bとを一体化した構造とすることができる。
【0027】
この点は、整流素子41としてダイオード以外の素子(MOS−FET等のスイッチング素子)を用いる場合も同様である。MOS−FET等のスイッチング素子をモジュール化して放熱フィン42に取り付ける場合には、放熱フィン42全体を同じ電位にすることができる場合があるため(例えば、特開2011−151977号公報参照)、放熱フィン42全体を同じ電位にすることが可能となり、図3に示した負極側放熱フィン42Aと正極側放熱フィン42Bとを一体化した構造とすることができる。
【0028】
上述した構造を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介して回転軸32に取り付けられたプーリにエンジン(ともに図示せず)からの回転力が伝えられると回転子3が所定方向に回転する。この状態で回転子3の界磁巻線に外部から励磁電圧を印加することにより、ポールコア31が励磁され、固定子巻線22に交流電圧を発生させることができ、整流装置4の出力端子からは直流の出力電力が取り出される。
【0029】
また、回転子3とともに冷却ファン33が回転すると、その内周側が負圧になって、リヤカバー6の吸入窓61を通して冷却風がリヤカバー6の外部から内部に取り込まれる。このようにして冷却ファン33の回転に伴って吸入窓61からリヤカバー6の内部に取り込まれた冷却風は、第1のフィン43(43A、43B)に沿って径方向外側から径方向内側に流れ、さらに第1のフィン43の径方向内側に形成された通風空間45(図3)から冷却ファン33側に流れた後、冷却ファン33によって径方向外側に押し出されてフレーム5の吐出窓51から排出される。これらの冷却風の流れが図1では矢印Fで示されている。
【0030】
このように、本実施形態の車両用交流発電機1では、リアカバー6は側面に冷却風の吸入窓61が形成されており、整流装置4の径方向外側から導入された冷却風を、放熱フィン42の表面に沿って流すことができるため、冷却風の全体が放熱フィン42の冷却に寄与することになり、整流装置4の冷却性を向上させることができる。また、整流装置4の冷却性向上に伴って、整流素子41の温度低減による長寿命化、放熱フィン42の面積縮小による発電機全体の小型化、耐熱性の低い整流素子41の使用による部品コスト削減が可能となる。特に、リヤカバー6の軸方向端面であって放熱フィン42に対応する対向面に冷却風の吸入窓が形成されていないため、放熱フィン42の径方向外側のみから冷却風を導入することができ、整流装置4の冷却性を確実に向上させることができる。
【0031】
また、第2のフィン44が回転子3の回転軸32に対して放射状に形成されていて第1のフィン43からリヤ側に延在しており、これにより、放熱フィン42の表面積を拡大することが可能となり、整流装置4の冷却性をさらに向上させることができる。また、周方向に隣接する2枚の第2のフィン44に着目すると、径方向内側になるほどこれらの間の間隔が狭くなるため、径方向内側になるほど冷却風の風速が増し、冷却効率をさらに上げることができる。
【0032】
図4は、変形例を示す整流装置周辺の部分的な断面図である。図4に示す変形例では、整流装置4を構成している放熱フィン42の第2のフィン44は、軸方向に沿ったリヤ側端部がリヤカバー6に当接している。これにより、整流装置4とリヤカバー6の間の隙間を通して流れる冷却風をなくして冷却風全体を放熱フィン42を通して流すことができ、冷却風の風量を増すことなく整流装置4の冷却性をさらに向上させることができる。
【0033】
なお、図3に示したように、放熱フィン42が負極側放熱フィン42Aと正極側放熱フィン42Bとによって構成されている場合には、リヤカバー6の材質によって若干の違いが生じる。例えば、リヤカバー6が樹脂材料によって形成されている場合には、第2のフィン44A、44Bの電位に関係なく、これらをリヤカバー6に当接することができる。
【0034】
一方、リヤカバー6が金属材料によって形成されている場合には、正極電位を有する第2のフィン44Bとリヤカバー6との間を電気的に絶縁する必要がある。この絶縁は、例えばリヤカバー6の表面に塗布等によって形成された絶縁塗装によって行ったり、第2のフィン44Bとリヤカバー6との間に熱伝導性が良好な絶縁シートを挿入することで行ったり、これらを同時に行ったりすることが考えられる。
【0035】
また、絶縁した状態で整流素子41を放熱フィン42に取り付ける場合であって、放熱フィン42全体をリヤカバー6と同電位にすることができる場合には、リヤカバー6が金属材料によって形成されている場合であっても第2のフィン44の全部をリヤカバー6に当接することができる。
【0036】
また、リヤカバー6を金属材料で形成し、第2のフィン44の端部を当接した場合には、第2のフィン44からリヤカバー6に伝熱してリヤカバー6を放熱部材として利用することができる。この場合には、リヤカバー6側にフィンを追加することで、さらに放熱性を向上させることができる。
【0037】
図5は、リヤカバー6側にフィンを追加した変形例を示す整流装置周辺の部分的な断面図である。図6は、図5のVI−VI線の部分的な断面図である。図4に示す変形例では、隣接する2枚の第2のフィン44の間に配置されるように、第3のフィン62がリヤカバー6と一体に形成されている。この第3のフィン62は、吸入窓61からリヤカバー6の内部に取り込まれた冷却風によって冷却されるため、第2のフィン44からの伝熱によって温度が上昇した放熱部材としてのリヤカバー6を効率的に冷却することできる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、放熱フィン42とリヤカバー6とを別部品としたが、これらが同電位の場合には一体で成型するようにしてもよい。図7は、放熱フィン42とリヤカバー6とを一体に成型した変形例を示す整流装置周辺の部分的な断面図である。例えば、ダイカストによって一体に成型する場合が考えられる。これにより、部品点数の削減によるコスト低減が可能となる。また、放熱フィン42からリヤカバー6への伝熱性を高めることができ、整流装置4の冷却性をさらに向上させることができる。但し、この場合には、型の抜き方向を考慮して吸入窓61の形状等を決定する必要がある。例えば、隣接する2つの吸入窓61の中間位置に第2のフィン44を配置し、吸入窓61から径方向外側に型が抜けるようにすることが考えられる。また、必ずしも放熱フィン42の全体とリヤカバー6と一体に成型する必要はなく、例えば、図3に示した負極側放熱フィン42A側のみをリヤカバー6と一体に成型し、正極側放熱フィン42B側を別部品によって形成するようにしてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、第1のフィン43とフレーム5とを別部品としたが、これらが同電位の場合には、フレーム5の軸方向端面を第1のフィン43として用いるようにしてもよい。図8は、フレーム5を第1のフィン43として用いる変形例を示す整流装置周辺の部分的な断面図である。フレーム5への整流素子41の取り付けは、接着材を用いる方法や、フレーム5に形成した取付穴に圧入する方法などが考えられる。これにより、部品点数の削減によるコスト低減が可能となる。特に、熱容量の大きいフレーム5を放熱フィン42として利用することにより、整流素子41の温度をさらに下げることができる。但し、必ずしも第1のフィン43の全体とフレーム5を用いて実現する必要はなく、例えば、図3に示した負極側放熱フィン42Aの第1のフィン43Aのみをフレーム5によって実現し、正極側放熱フィン42Bの第1のフィン43Bをフレーム5とは別部品によって形成するようにしてもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、放熱フィン42を軸方向に沿って重ねない1段構成としたが、複数の放熱フィン42を軸方向に沿って重ねた複数段構成(例えば2段構成)としてもよい。
【0041】
図9は、2段構成とした変形例の放熱フィン42を側面方向から見た部分的な展開図である。2段構成とする場合には、同電位の放熱フィン42同士を重ねる場合と、異なる電位の放熱フィン42を重ねる場合が考えられる。前者は、放熱フィン42全体が単一の電位を有し、これら2つの放熱フィン42を2段に重ねる場合である。整流素子41は、いずれか一方の放熱フィン42のみに取り付けるようにしてもよいが、両方の放熱フィン42に取り付けるようにしてもよい。後者は、負極電位(あるいはグランド電位)を有する負極側放熱フィン42Aと正極側放熱フィン42Bとを2段に重ねる場合である。また、それぞれの放熱フィン42の間および放熱フィン42とリヤカバー6との間は、隙間を設ける場合や当接する場合の他にこれらを組み合わせるようにしてもよい。電位の異なるフィン同士を当接する場合には、絶縁塗装や絶縁シートを用いて電気的に絶縁する必要がある。
【0042】
また、上述した実施形態では、リヤカバー6の軸方向端面を平坦な面としたが冷却風の流れに沿って部分的に傾斜させることにより通風抵抗を低減するようにしてもよい。図10は、リヤカバー6の変形例を示す整流装置周辺の部分的な断面図である。図10に示すように、リヤカバー6は、軸方向端面の一部であって、放熱フィン42(第1のフィン43)の径方向内側に形成された通風空間45に対向する領域の軸方向位置を、径方向内側になるほど冷却ファン33側に傾斜させている。放熱フィン42の第2のフィン44の端部はリヤカバー6に当接させてもよいが、図1等に示すようにこれらの間に隙間を形成するようにしてもよい。また、放熱フィン42を複数段構成としたり、放熱フィン42とリヤカバー6とを一体に成型するようにしてもよい。
【0043】
このように、リヤカバー6の一部を傾斜させることにより、放熱フィン42の径方向内側に形成された通風空間45における冷却風の滞留を防止して流れを円滑にすることができ、通風抵抗の低減に伴う風量増加による冷却性の向上が可能となる。また、リヤカバー6を放熱部材として利用する場合には、この傾斜部分に冷却風が直接あたるため、リヤカバー6の放熱性を高めることができる。
【0044】
また、上述した実施形態では、第1のフィン43のリヤ側に第2のフィン44が形成されている場合について説明したが、整流素子41の発熱量が少ない場合などにおいては、第1のフィン43のみで放熱フィン42を形成し、第2のフィン44を省略するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上述したように、本発明によれば、整流装置4の径方向外側から導入された冷却風を、放熱フィン42の表面に沿って流すことができるため、冷却風の全体が放熱フィン42の冷却に寄与することになり、整流装置4の冷却性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 車両用交流発電機
2 固定子
3 回転子
4 整流装置
5 フレーム
6 リヤカバー
8 ブラシ装置
9 ICレギュレータ
32 回転軸
33 冷却ファン
41 整流素子
42 放熱フィン
43 第1のフィン
44 第2のフィン
45 通風空間
51 吐出窓
52 吸入窓
61 吸入窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ファンとともに回転する回転子と、前記回転子と対向配置された固定子と、前記回転子と前記固定子とを支持するフレームと、前記フレームに固定されて整流素子の冷却を行う放熱フィンを有する整流装置と、前記整流装置を含む電気部品を覆うリヤカバーとを備える車両用交流発電機において、
前記放熱フィンは、前記回転子の回転軸に対して径方向に延在する第1のフィンを有し、
前記リヤカバーは、前記第1のフィンの径方向外側であって、前記第1のフィンよりもリヤ側の位置に冷却風の吸入窓を有し、
前記冷却ファンの回転に伴って前記吸入窓から前記リヤカバーの内部に取り込まれた冷却風が、前記第1のフィンに沿って径方向外側から径方向内側に流れ、さらに前記第1のフィンの径方向内側に形成された通風空間から前記冷却ファン側に流れることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項2】
請求項1において、
前記リヤカバーは、軸方向端面であって前記放熱フィンに対応する対向面に、前記放熱フィンの冷却風の吸入窓が形成されていないことを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記放熱フィンは、前記回転子の回転軸に対して放射状に形成されていて前記第1のフィンからリヤ側に延在する第2のフィンを有することを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項4】
請求項3において、
前記第2のフィンは、軸方向に沿ったリヤ側端部が前記リヤカバーに当接していることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項5】
請求項4において、
前記リヤカバーは、金属材料によって形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項6】
請求項5において、
前記リヤカバーは、前記放熱フィン側に突出する第3のフィンを有することを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記放熱フィンと前記リヤカバーとを一体で成型したことを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記フレームの軸方向端面を前記第1のフィンとして用いることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記第1のフィンは、前記回転子の回転軸に沿って複数段に重ねて配置されることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、
前記リヤカバーの軸方向端面の一部であって、前記第1のフィンの径方向内側に形成された前記通風空間に対向する領域の軸方向位置を、径方向内側になるほど前記冷却ファン側に傾斜させることを特徴とする車両用交流発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−110777(P2013−110777A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251447(P2011−251447)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】