説明

車両用伝動装置

【課題】ケース部材と逆止弁とのシール性を確保しつつ該逆止弁の小型化を可能とし、もってコンパクト化を図ることが可能な車両用伝動装置を提供する。
【解決手段】ミッションケース4の穴部4Aは、雌ネジ4dが形成された内周面部4bと、油路4aに連通する孔部4eが形成されると共に該孔部4eを囲う外縁部4fを備える底部4cと、を有して構成される。また、逆止弁10の逆止弁ケース11は、内部に逆止機構15を収納すると共に外面に雌ネジ4dに螺合する雄ネジ11cが形成された円筒部11aと、該円筒部11aの先端部11bに形成されると共に外縁部4fに当接する当接面11dとを備えるように構成される。そして、ミッションケース4の穴部4Aに逆止弁10を螺合した際に、外縁部4fと当接面11dとを密着させることで、油路4aと油路6aとの間をシールさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動変速機やハイブリッド駆動装置等の車両用伝動装置に係り、詳しくは、車両用伝動機構の収容部分を構成するケース部材と車両用伝動機構を油圧制御する油圧制御装置との間に介在するように、該ケース部材の外面に形成された穴部に装着される逆止弁を備えた車両用伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば油圧制御を必要とする変速機構等を備えているものでありながら、停車中にエンジンを停止するアイドルストップ車両やハイブリッド車両が種々開発されている。このような車両にあっては、走行中に油圧制御のための油圧を発生させるようにエンジンに連動する機械式オイルポンプと、エンジンの停止中に補助的に油圧を発生させるために、該機械式オイルポンプとは独立して電動モータにより駆動される電動オイルポンプと、が備えられており、つまり2つのオイルポンプを並列的に備えるものが主流である。
【0003】
このように2つのオイルポンプを備えるものにあっては、一方のオイルポンプが停止した状態で、他方のオイルポンプが駆動されると、停止している側のオイルポンプに油圧が逆流して油圧損失を招く虞がある。そのため、それら2つのオイルポンプの吐出油路には、それぞれ逆止弁が設けられ、停止している側のオイルポンプに油圧が逆流することの防止が図られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−139060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の例えば機械式オイルポンプの吐出油路に配設された逆止弁(70)は、ミッションケース(41)に対して固着されているが、該逆止弁のバルブケース(72)がミッションケースに対してシールされた状態で固着されなければ、ミッションケースとバルブケースとの間を通って油圧が逆流する虞がある。そのため、特許文献1の逆止弁にあっては、バルブケースの外周にフランジ(72d)を設け、該フランジをミッションケースに圧着させることでシール性を確保している。
【0006】
しかしながら、上記のようにバルブケースの外周にフランジを設けてシール性を確保するものにあっては、シール性を向上しようとすると、フランジを大径化する必要が生じ、逆止弁の搭載スペースが大きくなって、車両用伝動装置(自動変速機やハイブリッド駆動装置等)のコンパクト化の妨げとなるという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、ケース部材と逆止弁とのシール性を確保しつつ該逆止弁の小型化を可能とし、もってコンパクト化を図ることが可能な車両用伝動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は(例えば図1乃至図3参照)、車両用伝動機構(2)の収容空間(2A)を形成すると共に第1油路(3a,4a)が形成されたケース部材(3,4)と、
前記ケース部材(3,4)の外面(4S)に取付けられると共に前記第1油路(3a,4a)に連通し得る第2油路(6a)が形成され、前記車両用伝動機構(2)を油圧制御する油圧制御装置(5)と、
前記ケース部材(3,4)の第1油路(3a,4a)と前記油圧制御装置(5)の第2油路(6a)との間に介在するように、前記ケース部材(4)の外面(4S)に形成された穴部(4A)に装着される逆止弁(10)と、を備えた車両用伝動装置(1)において、
前記ケース部材(4)の穴部(4A)は、雌ネジ(4d)が形成された内周面部(4b)と、前記第1油路(4a)に連通する孔部(4e)が形成されると共に該孔部(4e)を囲う外縁部(4f)を備える底部(4c)と、を有し、
前記逆止弁(10)は、内部に逆止機構(15)を収納すると共に外面に前記雌ネジ(4d)に螺合する雄ネジ(11c)が形成された円筒部(11a)と、該円筒部(11a)の先端部(11b)に形成されると共に前記外縁部(4f)に当接する当接部(11d)と、を備える逆止弁ケース(11)を有し、
前記ケース部材(4)の穴部(4A)に前記逆止弁(10)を螺合した際、前記外縁部(4f)と前記当接部(11d)とが密着して、前記第1油路(4a)と前記第2油路(6a)との間をシールすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は(例えば図1及び図2参照)、前記逆止弁(10)は、前記逆止弁ケース(11)の円筒部(11a)の外面にあって、前記雄ネジ(11c)が形成された部分が最大径であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は(例えば図1参照)、車両を駆動する駆動源により駆動される第1オイルポンプ(32)と、
電動モータにより駆動される第2オイルポンプ(33)と、を備え、
前記第1油路は、前記第1オイルポンプ及び前記第2オイルポンプの一方(例えば32)から吐出される油圧を出力するポンプ吐出油路(3a,4a)であり、
前記第2油路は、前記第1オイルポンプ(32)及び前記第2オイルポンプ(33)により発生した油圧を前記油圧制御の元圧として供給する元圧供給油路(6a)であり、
前記逆止弁(10)は、前記第1オイルポンプ及び前記第2オイルポンプの他方(例えば33)から吐出される油圧が前記元圧供給油路(6a)を介して前記ポンプ吐出油路(3a,4a)に逆流することを防止することを特徴とする。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、ケース部材の穴部に逆止弁を螺合した際、該穴部の底部の外縁部と該逆止弁の逆止弁ケースにおける円筒部の先端部の当接部とが密着して、第1油路と第2油路との間をシールする構造であるので、ケース部材と逆止弁との間に十分なシール性を確保することができるものでありながら、例えば逆止弁の外周にフランジを設けるなど、シール専用の部分を設けることを不要とすることができ、逆止弁を小型化することができて、車両用伝動装置のコンパクト化を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、逆止弁は、逆止弁ケースの円筒部の外面にあって、雄ネジが形成された部分が最大径であるので、つまり円筒部の外面で突出する部分が無い、小型化した逆止弁を提供することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明によると、逆止弁は、第1オイルポンプ及び第2オイルポンプの一方のポンプ吐出油路に、第1オイルポンプ及び第2オイルポンプの他方から吐出される油圧が逆流することを防止するものとして不可欠なものであるが、その逆止弁を小型化することができるので、車両用伝動装置のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車両用伝動装置の逆止弁の取付部分を示す部分断面図。
【図2】図1のA−A矢視断面図。
【図3】2つのオイルポンプによる油圧供給部分を示す油圧回路図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図3に沿って説明する。本実施の形態に係る車両用伝動装置1は、例えば、図示を省略したエンジンにクラッチを介して接続される入力軸を有するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの多段式の自動変速機構(車両用伝動機構)2と、該自動変速機構2の入力軸に駆動連結されたモータ・ジェネレータ(不図示)と、該自動変速機構2を油圧制御して変速を行う油圧制御装置5とを備えて構成された、いわゆる1モータ型のハイブリッド駆動装置からなる。
【0017】
本車両用伝動装置1は、例えば上記自動変速機構2の入力軸に回転連結されてエンジン或いはモータ・ジェネレータによって回転駆動される機械式オイルポンプ(第1オイルポンプ、2つのオイルポンプの一方)(MOP)32と、該機械式オイルポンプ32とは独立して駆動される電動モータ(不図示)によって回転駆動される電動オイルポンプ(第2オイルポンプ、2つのオイルポンプの他方)(EOP)33と、の2つのオイルポンプを並列に備えている。
【0018】
詳細には、図3に示すように、オイルパン7のオイル収容空間7A(図1参照)には、ストレーナ31が配置されており、該ストレーナ31に接続された油路a1に、機械式オイルポンプ32の吸入側の油路a3と、電動オイルポンプ33の吸入側の油路a4とが接続されている。このうちの電動オイルポンプ33は、吐出側の油路a5に接続されており、該油路a5は、逆止弁34を介して油路a6,a7に接続されている。
【0019】
また、一方の機械式オイルポンプ32は、詳しくは後述する吐出側の油路(第1油路、ポンプ吐出油路)3a,4a(図1参照)に接続されており、該油路4aは、詳しくは後述する逆止弁10が介在する形で油路(第2油路、元圧供給油路)6a(図1参照)に接続され、上記a7に接続されている。該油路a6,a7,6aは、油圧制御装置5の図示を省略したレギュレータバルブに接続され、該レギュレータバルブによりライン圧に調圧されて各種の油圧制御の元圧とされる。言い換えると、油路a6,a7,6aは、機械式オイルポンプ32及び電動オイルポンプ33により発生した油圧を油圧制御の元圧として供給する元圧供給油路ということになる。
【0020】
なお、上記レギュレータバルブ(不図示)等によって調圧された際に余った油圧は、油路a2を介して、機械式オイルポンプ32の吸入側の油路a3及び電動オイルポンプ33の吸入側の油路a4に戻されることで、それらのオイルポンプの駆動抵抗を下げて、それらオイルポンプの効率向上に用いられ、つまり車両の燃費向上に寄与する。
【0021】
以上のような油圧回路に配置された機械式オイルポンプ32と電動オイルポンプ33とは、例えば車両を駆動する駆動源(不図示のエンジンやモータ・ジェネレータ)が駆動されている際には機械式オイルポンプ32がその駆動力に連動して駆動され、例えば車両の停車中などにあって駆動源が停止されて機械式オイルポンプ32が停止されると電動オイルポンプ33が補助的に電動モータ(不図示)によって駆動される。
【0022】
この際、機械式オイルポンプ32の駆動中にあって、該機械式オイルポンプ32から油路3a,4a、逆止弁10を介して油路6a,a6,a7に吐出(出力)されて供給された油圧は、逆止弁34によって逆流することが防止され、電動オイルポンプ33に油圧が逆流することはない。また反対に、電動オイルポンプ33の駆動中にあって、該電動オイルポンプ33から油路a5、逆止弁34を介して油路a6,6a,a7に吐出(出力)されて供給された油圧は、逆止弁10によって逆流することが防止され、機械式オイルポンプ32に油圧が逆流することはない。
【0023】
ついで、本発明の要部となる逆止弁10の取付部分について図1及び図2に沿って説明する。車両用伝動装置1は、上述した機械式オイルポンプ32を収納するポンプケース(ケース部材)3と、ミッションケース(ケース部材)4とを備えており、該ミッションケース4により囲まれた略円筒状の空間の開口部分を該ポンプケース3で閉塞するように、それらミッションケース4とポンプケース3とを接合することで、自動変速機構2の変速機構を収容する収容空間2Aを形成するケース部材として構成される。
【0024】
上記ポンプケース3には、機械式オイルポンプ32の吐出口(不図示)に接続された油路3aが形成されており、また、ミッションケース4には、ポンプケース3に接合された状態で該油路3aに接続される油路4aが形成されており、これら油路3a及び油路4aにより機械式オイルポンプ32の吐出側の油路を構成する。
【0025】
該ミッションケース4の例えば車両進行方向の前方側の外面(ケース部材の外面)4Sは、油圧制御装置5が接合される接合面として形成されている。該油圧制御装置5は、上記油路6aを含む複数の油路が形成されると共に各種のバルブが嵌挿されたバルブボディ6を有しており、該バルブボディ6は、表面6bにシール板8が貼り合わされていると共に、該シール板8を介して上記ミッションケース4の外面4Sに密着された形で該ミッションケース4に取付けられている。
【0026】
また、該バルブボディ6の外側は、オイルパン7によって覆われており、該オイルパン7は、シール面7aが上記ミッションケース4の外面4Sに密着された形で、該ミッションケース4に取付けられている。該オイルパン7とバルブボディ6との間には、該バルブボディ6における各種のドレーンポートから排出されたオイルや、上記ミッションケース4の収容空間2Aにおいて変速機構を潤滑したオイルなどが溜められるオイル収容空間7Aが形成されている。なお、上述したように、該オイル収容空間7Aに上記ストレーナ31が配設されていることになる。
【0027】
一方、上記ミッションケース4には、詳しくは後述する逆止弁10を取付けるため、上記外面4Sから油路4aに向けて凹む穴部4Aが形成されている。該穴部4Aは、略々円筒状からなる内周面部4bと、穴の底部分となる底部4cとを有しており、該内周面部4bには、後述する逆止弁10の雄ネジ11cが螺合される雌ネジ4dが形成されている。また、底部4cには、上記油路4aに連通する孔部4eが形成されていると共に、該孔部4eを囲う外縁部4fが備えられている。
【0028】
逆止弁10は、大まかに、逆止弁ケース11と、その内部に収納される逆止機構15とを有して構成されている。該逆止弁ケース11は、略々円筒状の円筒部11aと、その先端に形成された先端部11bとを有して構成されており、該円筒部11aの外周面には、上記雌ネジ4dに螺合する雄ネジ11cと、該先端部11bとは反対側の端部において六角状の頭部11hとが形成されている。なお、この六角状の頭部11hの角部の先端(最大径部分)は、雄ネジ11cのネジ山の外径と同径に形成されており、言い換えると、雄ネジ11cが、逆止弁ケース11の外周面における最大径の部分となる。
【0029】
また、円筒部11aの内周面11iは、後述する逆止機構15のボール12の転動面となっていると共に、スプリング座14が嵌合される。また、該内周面11iには、例えば周方向の3箇所にあって、後述するスプリング座14の横孔14aに対向する位置に、オイルを導通する導通溝11gが形成されている。
【0030】
一方の先端部11bは、その先端側面が上記外縁部4fの側面4gに当接して密着する当接面(当接部)11dとなっており、その中心部分に上記孔部4eに連通する貫通孔11eが形成されている。該貫通孔11eの上記当接面11dとは反対側の開口部分には、逆止機構15のボール12が着座する着座面11fが面取りされた形で形成されている。
【0031】
逆止機構15は、大まかに、ボール12と、スプリング座14と、それらの間に縮設されたスプリング13とを備えて構成されている。ボール12は、上記逆止弁ケース11の内周面11iに転動自在に配置され、かつ上記着座面11fに向けてスプリング13により付勢されている。スプリング座14は、外周面にスプリング13の端部を支持する段差部14cを有していると共に、上記逆止弁ケース11の内周面11iに圧入される形で嵌合されている。また、スプリング座14には、中心部にボール12とは反対側に開口した中心穴14bが形成されていると共に、該中心穴14bから外周方向に向き、かつ上記導通溝11gに向くように横孔14aが形成されている。
【0032】
即ち、逆止機構15は、ボール12及びスプリング13を逆止弁ケース11の内部に収納しつつ、スプリング座14の横孔14aが上記導通溝11gに向くように該スプリング座14が逆止弁ケース11の内周面11iに圧入されて組立てられることになる。
【0033】
以上のように構成された逆止弁10を組付ける際は、ミッションケース4の穴部4Aに対して、逆止弁ケース11の先端部11bが底部4cに向くように挿入され、六角状の頭部11hが例えばレンチ等の工具によって回転されることで、雌ネジ4dと雄ネジ11cとが螺合されていく。そして、逆止弁ケース11の先端部11bの当接面11dが、ミッションケース4の穴部4Aの底部4cにおける外縁部4fの側面4gに密着するように押し付けられて締結される。この当接面11dと外縁部4fの側面4gとの密着により、これにより、ミッションケース4の孔部4eと逆止弁10の逆止弁ケース11の貫通孔11eとの間がシールされ、つまり、ミッションケース4の油路4aとバルブボディ6の油路6aとの間がシールされる。
【0034】
このように装着された逆止弁10おいては、機械式オイルポンプ32が駆動されて油路3a,4aに油圧が吐出されると、スプリング13の付勢力に打勝つ形でボール12を着座面11fから離反し、貫通孔11eを介して油圧を逆止弁ケース11の内部に流す。このように逆止弁ケース11の内部に流れてきた油圧は、導通溝11gを介して、或いはスプリング座14の横孔14a及び中心穴14bを介して、バルブボディ6の油路6aに流れ、上述したように油路a7を介して油圧制御装置5内に供給される(図3参照)。
【0035】
また反対に、機械式オイルポンプ32が停止されて電動オイルポンプ33が駆動され、油路a6を介してバルブボディ6の油路6aに油圧が流れると、導通溝11gを介して、或いはスプリング座14の横孔14a及び中心穴14bを介して、ボール12を着座面11fに向けて押圧し、該ボール12と着座面11fとの間がシールされて、油圧の逆流が防止される。
【0036】
またこの際、例えば雌ネジ4d及び雄ネジ11cの間などを流れてきた油圧は、逆止弁ケース11の先端部11bの当接面11dと、ミッションケース4の穴部4Aの底部4cにおける外縁部4fの側面4gとの間によってシールされ、つまり逆止弁10とミッションケース4との間がシールされているので、上記油路6aから油路4aへの油圧の逆流が防止される。
【0037】
以上説明した本実施の形態における本車両用伝動装置1にあっては、ミッションケース4の穴部4Aに逆止弁10を螺合した際、該穴部4Aの底部4cの外縁部4fと該逆止弁10の逆止弁ケース11における円筒部11aの先端部11bの当接面11dとが密着して、油路4aと油路6aとの間をシールする構造であるので、ミッションケース4と逆止弁10との間に十分なシール性を確保することができるものでありながら、例えば逆止弁10の外周にフランジを設けるなど、シール専用の部分を設けることを不要とすることができ、逆止弁10を小型化することができる。
【0038】
また、このように逆止弁10にフランジを設けるなど、シール専用の部分を外周に設けることを不要とすることができるので、逆止弁10とバルブボディ6の油路6aの内面6cとを近づけることができ、無駄な間隔を無くして、バルブボディ6の小型化も図ることができ、更に、フランジを設けないことで、雄ネジ11cと六角状の頭部11hとを連続的に設けることができて、逆止弁10の長手方向の短縮化も図ることができて、バルブボディ6の厚みを薄くすることも可能とすることができる。これにより、油圧制御装置5の小型化を図ることができて、車両用伝動装置1としてコンパクト化を図ることができる。
【0039】
また、逆止弁10は、逆止弁ケース11の円筒部11aの外面にあって、雄ネジ11cが形成された部分が最大径であるので、つまり円筒部11aの外面で突出する部分が無い、小型化した逆止弁10を提供することができる。
【0040】
更に、逆止弁10は、機械式オイルポンプ32の吐出側の油路4aに、電動オイルポンプ33から吐出される油圧が逆流することを防止するものとして不可欠なものであるが、その逆止弁10を小型化することができるので、車両用伝動装置1のコンパクト化を図ることができる。
【0041】
なお、以上説明した本実施の形態においては、車両用伝動装置としてハイブリッド駆動装置であるものを一例に説明したが、これに限らず、油圧の逆流を防止する逆止弁がケース部材の外面に形成された穴部に取付けられるものであれば、どのような伝動装置であってもよい。
【0042】
また、本実施の形態においては、逆止弁10を機械式オイルポンプ32の吐出側の油路4aに取付けた場合を説明したが、反対に、電動オイルポンプ33の吐出側の油路a5に取付ける逆止弁34の構造として用いても構わない。
【0043】
また、本実施の形態においては、例えば車両用伝動装置の変速機構として、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの自動変速機構を用い、油圧制御装置5(つまり逆止弁10)がミッションケース4の前方側の側面に取付けられるものを説明したが、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)タイプの自動変速機構などを用い、油圧制御装置(つまり逆止弁)がミッションケースの下方面に取付けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用伝動装置(ハイブリッド駆動装置)
2 車両用伝動機構(自動変速機構)
2A 収容空間
3 ケース部材(ポンプカバー)
3a 第1油路、ポンプ吐出油路
4 ケース部材(ミッションケース)
4A 穴部
4S ケース部材の外面
4a 第1油路、ポンプ吐出油路
4b 内周面部
4c 底部
4d 雌ネジ
4e 孔部
4f 外縁部
5 油圧制御装置
6a 第2油路、元圧供給油路
10 逆止弁
11 逆止弁ケース
11a 円筒部
11b 先端部
11c 雄ネジ
11d 当接部(当接面)
15 逆止機構
32 第1オイルポンプ(機械式オイルポンプ)
33 第2オイルポンプ(電動オイルポンプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用伝動機構の収容空間を形成すると共に第1油路が形成されたケース部材と、
前記ケース部材の外面に取付けられると共に前記第1油路に連通し得る第2油路が形成され、前記車両用伝動機構を油圧制御する油圧制御装置と、
前記ケース部材の第1油路と前記油圧制御装置の第2油路との間に介在するように、前記ケース部材の外面に形成された穴部に装着される逆止弁と、を備えた車両用伝動装置において、
前記ケース部材の穴部は、雌ネジが形成された内周面部と、前記第1油路に連通する孔部が形成されると共に該孔部を囲う外縁部を備える底部と、を有し、
前記逆止弁は、内部に逆止機構を収納すると共に外面に前記雌ネジに螺合する雄ネジが形成された円筒部と、該円筒部の先端部に形成されると共に前記外縁部に当接する当接部と、を備える逆止弁ケースを有し、
前記ケース部材の穴部に前記逆止弁を螺合した際、前記外縁部と前記当接部とが密着して、前記第1油路と前記第2油路との間をシールする、
ことを特徴とする車両用伝動装置。
【請求項2】
前記逆止弁は、前記逆止弁ケースの円筒部の外面にあって、前記雄ネジが形成された部分が最大径である、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用伝動装置。
【請求項3】
車両を駆動する駆動源により駆動される第1オイルポンプと、
電動モータにより駆動される第2オイルポンプと、を備え、
前記第1油路は、前記第1オイルポンプ及び前記第2オイルポンプの一方から吐出される油圧を出力するポンプ吐出油路であり、
前記第2油路は、前記第1オイルポンプ及び前記第2オイルポンプにより発生した油圧を前記油圧制御の元圧として供給する元圧供給油路であり、
前記逆止弁は、前記第1オイルポンプ及び前記第2オイルポンプの他方から吐出される油圧が前記元圧供給油路を介して前記ポンプ吐出油路に逆流することを防止する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−172766(P2012−172766A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35616(P2011−35616)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】