説明

車両用制御装置

【課題】車輪のキャンバ角を調整するときのアクチュエータを負荷に適した短い動作時間で駆動できる車両用制御装置を提供すること。
【解決手段】指標取得手段S43によりアクチュエータに供給される電力に関する指標が取得され、その指標が、アクチュエータの動作時間を所定の動作時間内にするために必要な電力に対応する所定値より小さいか指標判断手段S44により判断される。判断の結果、指標が所定値より小さい場合に、アクチュエータの動作時間が短くなるように、電力調整手段S45によりアクチュエータに供給される電力が調整される。これにより、路面の状態や車両1の走行速度等により車輪2のキャンバ角を調整するときのアクチュエータの負荷が変化しても、負荷に適した短い動作時間でアクチュエータを駆動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪のキャンバ角を調整するアクチュエータを備えた車両に用いられる車両用制御装置に関し、特に、車輪のキャンバ角を調整するときのアクチュエータを負荷に適した短い動作時間で駆動できる車両用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の走行状態に応じて車輪のキャンバ角を調整することで、車両の走行安定性を確保する技術が知られている。この種の技術に関し、例えば特許文献1には、車両の走行速度を検出し、その走行速度に応じてアクチュエータを駆動させ車輪のキャンバ角を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−193781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、車輪のキャンバ角を調整するときのアクチュエータの動作時間(アクチュエータに電力が供給されてからキャンバ角の調整が終了するまでの時間)については何ら開示されていなかった。車輪のキャンバ角を調整するときのアクチュエータの負荷は、路面の状態や車両の走行速度等の変化に応じて常に変化しているので、アクチュエータの動作時間が制御されない場合、負荷によってアクチュエータの動作時間が変動してしまう。車輪のキャンバ角を調整するときのアクチュエータの動作時間は短い方が望ましいが、負荷によってアクチュエータの動作時間が変動するので、アクチュエータの負荷に適した短い動作時間でアクチュエータを駆動できないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、車輪のキャンバ角を調整するときのアクチュエータを負荷に適した短い動作時間で駆動できる車両用制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の車両用制御装置によれば、車体と、その車体を支持する車輪と、その車輪のキャンバ角をアクチュエータを駆動させて調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両に用いられるものであり、条件判断手段により車輪のキャンバ角を調整する所定の条件を満たすか判断される。その条件判断手段により所定の条件を満たすと判断される場合に、キャンバ角調整手段によりキャンバ角調整装置が作動され、アクチュエータに電力が供給されてアクチュエータが駆動され車輪のキャンバ角が調整される。
【0007】
また、指標取得手段によりアクチュエータに供給される電力に関する指標が取得され、その指標取得手段により取得される指標が、キャンバ角調整手段により駆動されるアクチュエータに電力が供給されてからキャンバ角の調整が終了するまでのアクチュエータの動作時間を所定の動作時間内にするために必要な電力に対応する所定値より小さいか指標判断手段により判断される。判断の結果、指標が所定値より小さい場合に、アクチュエータの動作時間が短くなるように、電力調整手段によりアクチュエータに供給される電力が調整される。このように電力に関する指標が所定値より小さい場合に、アクチュエータの動作時間が短くなるようにアクチュエータに供給される電力が調整されるので、路面の状態や車両の走行速度等により車輪のキャンバ角を調整するときのアクチュエータの負荷が変化しても、負荷に適した短い動作時間でアクチュエータを駆動できる効果がある。
【0008】
請求項2記載の車両用制御装置によれば、電力調整手段は、指標判断手段により指標が所定値より小さいと判断される場合に、所定の動作時間内となる範囲内で、アクチュエータに供給される電力を大きくするように調整する。これにより、アクチュエータに過大な電力を供給することなくアクチュエータの動作時間を所定の範囲内にすることができる。その結果、請求項1の効果に加え、アクチュエータによって消費される電力を抑制できる効果がある。
【0009】
請求項3記載の車両用制御装置によれば、所定値はセットアップ時に設定される値であるので、請求項1又は2に記載の効果に加え、所定値を簡便に設定することができる効果がある。なお、「セットアップ時」とは、車両の製造時や車両が出荷された後の整備時などにおいて、車両用制御装置のソフトウェアやデバイスドライバの設定を行い、使用可能な状態にする時をいう。
【0010】
請求項4記載の車両用制御装置によれば、指標判断手段により指標が所定値以上であると判断される場合に、アクチュエータに供給される電力を調整せずに、アクチュエータ駆動手段によりアクチュエータに所定量の電力が供給されアクチュエータが駆動される。アクチュエータに供給される電力を調整しないことで、アクチュエータの消費電力の抑制に優先して、アクチュエータの動作時間を確実に短縮できる。その結果、請求項1から3のいずれかの効果に加え、車輪のキャンバ角の調整を迅速にできると共に、キャンバ角の調整効果を早く得られるようにできる効果がある。
【0011】
請求項5記載の車両用制御装置によれば、指標判断手段により指標が所定値以上であると判断される場合に、動作時間短縮手段によりアクチュエータに供給される電力を大きくするように調整される。これによりアクチュエータの動作時間をさらに短縮できる。その結果、請求項1から3のいずれかの効果に加え、車輪のキャンバ角の調整を迅速にできると共に、キャンバ角の調整効果を早く得られるようにできる効果がある。
【0012】
さらに、動作時間短縮手段は、アクチュエータに供給される電力が、キャンバ角調整装置により定められる許容量以下となるように調整するので、負担をかけることなくキャンバ角調整装置を確実に動作させることができ、信頼性を確保できる効果がある。
【0013】
請求項6記載の車両用制御装置によれば、キャンバ角調整装置はアクチュエータ及び車輪に連係されると共に、アクチュエータに連動して車輪のキャンバ角を調整する連係部材を備え、その連係部材は車体と車輪との間に配設されるものである。そのため、キャンバ角の絶対値を大きくするように車輪のキャンバ角が調整される場合には、車体の重量によりアクチュエータの負荷を著しく軽減できる。一方、キャンバ角の絶対値を小さくするように車輪のキャンバ角が調整される場合には、車体の重量によりアクチュエータの負荷が大きくなる。
【0014】
ここで、電力調整手段は、キャンバ角調整手段により車輪のキャンバ角の絶対値を大きくするように調整される場合、即ち、車輪のキャンバ角による効果を増大させる場合であって、車体の重量によりアクチュエータの負荷が軽減される場合に、アクチュエータに供給される電力を調整する。これにより請求項1から5のいずれかの効果に加え、アクチュエータによって消費される電力を抑制しつつキャンバ角の調整効果を迅速に増大できる効果がある。
【0015】
請求項7記載の車両用制御装置によれば、アクチュエータは直流モータにより構成されるものである。直流モータは入力された電流に対してトルクが直線的に比例する。また、直流モータに流れる電流の測定は精度良く行うことができる。指標取得手段により直流モータに流れる電流が取得され、その電流が所定の電流より小さいか指標判断手段により判断される。判断の結果、電力調整手段により直流モータに供給される電力(電圧と電流との積)が調整されるので、請求項1から6のいずれかの効果に加え、アクチュエータの動作時間を精度良く調整できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施の形態における車両用制御装置が搭載される車両を模式的に示した模式図である。
【図2】懸架装置の斜視図である。
【図3】(a)はキャンバ角調整装置の上面模式図であり、(b)は図3(a)のIIIb−IIIb線におけるキャンバ角調整装置の断面模式図である。
【図4】(a)は第1状態における懸架装置の正面模式図であり、(b)は第2状態における懸架装置の正面模式図である。
【図5】車両用制御装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図6】モータ制御マップを模式的に示した模式図である。
【図7】状態量判断処理を示すフローチャートである。
【図8】走行状態判断処理を示すフローチャートである。
【図9】キャンバ制御処理を示すフローチャートである。
【図10】キャンバ付与処理を示すフローチャートである。
【図11】第2実施の形態におけるキャンバ付与処理を示すフローチャートである。
【図12】第3実施の形態における車両用制御装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図13】モータ制御マップを模式的に示した模式図である。
【図14】関数選択マップを模式的に示した模式図である。
【図15】タイヤ剛性識別処理を示すフローチャートである。
【図16】路面μ識別処理を示すフローチャートである。
【図17】キャンバ付与処理を示すフローチャートである。
【図18】(a)はアクチュエータに入力される電圧を模式的に示した模式図であり、(b)はアクチュエータに入力される電圧を模式的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
【0018】
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体BFと、その車体BFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を車体BFに独立に懸架する懸架装置4,14と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
【0019】
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
【0020】
また、車輪2は、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRが全て同じ形状および特性に構成され、それら左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRのトレッドの幅(図1左右方向の寸法)が全て同じ幅に構成されている。
【0021】
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図5参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
【0022】
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
【0023】
懸架装置4,14は、路面から車輪2を介して車体BFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、伸縮可能に構成され、図1に示すように、懸架装置4が左右の前輪2FL,2FRを、懸架装置14が左右の後輪2RL,2RRを、それぞれ車体BFに懸架する。なお、左右の後輪2RL,2RRを懸架する懸架装置14は、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
【0024】
ここで、図2から図4を参照して、懸架装置14の詳細構成について説明する。図2は懸架装置14の斜視図である。なお、懸架装置14の構成は左右共通であるので、以下においては右の後輪2RRを懸架する懸架装置14についてのみ説明し、左の後輪2RLを懸架する懸架装置14についての説明を省略する。
【0025】
図2に示すように、懸架装置14は、ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造として構成され、車輪2(右の後輪2RR)を回転可能に保持するキャリア部材41と、そのキャリア部材41を車体BFに上下動可能に連結すると共に互いに所定間隔を隔てて上下に配置されるアッパーアーム42及びロアアーム43と、ロアアーム43及びアッパーブラケットUBの間に介装され緩衝装置として機能するコイルスプリングCS及びショックアブソーバSAと、キャリア部材41の上下動を許容しつつ前後方向の変位を規制するトレーリングアーム44と、アッパーアーム42及び車体BFとの間に介装されるキャンバ角調整装置45とを主に備えて構成される。なお、ロアアーム43は2本が配設されている。
【0026】
このように、本実施の形態では、ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造により車輪2を懸架するので、車輪2が車体BFに対して上下動し、懸架装置14が伸縮(以下「サスストローク」と称す)する際のキャンバ角の変化を最小限に抑制することができる。キャンバ角調整装置45がアッパーアーム42に連結されるので、ロアアーム43に連結される場合と比較して、車輪2の接地面側を支点として車輪2のキャンバ角を調整する動作を行うことができるので、かかるキャンバ角を調整するための駆動力を低減することができる。同様に、車体BFの上方側に配設することができるので、その分、路面から跳ね飛ばされた石などを衝突しにくくして、キャンバ角調整装置45が破損することを抑制できる。
【0027】
図3を参照して、キャンバ角調整装置45の詳細構成を説明する。図3(a)はキャンバ角調整装置45の上面模式図であり、図3(b)は図3(a)のIIIb−IIIb線におけるキャンバ角調整装置45の断面模式図である。なお、図3(a)では、一部の構成を部分的に断面視した状態が図示されている。
【0028】
キャンバ角調整装置45は、車輪2(右の後輪2RR)のキャンバ角を調整するための装置であり、回転駆動力を発生するRRモータ91RR(アクチュエータ)と、そのRRモータ91RRから入力される回転を減速して出力する減速装置92と、その減速装置92から出力される回転駆動力により回転駆動されるクランク部材93と、そのクランク部材93の位相を検出するRRポジションセンサ94RRとを主に備えて構成される。
【0029】
RRモータ91RRは、DCモータ(直流モータ)により構成され、そのRRモータ91RRの回転駆動力は、減速装置92により減速された後、クランク部材93に付与される。クランク部材93は、RRモータ91RRの軸回転運動をアッパーアーム42の往復運動に変換するクランク機構として構成される部位であり、所定間隔を隔てて対向配置される一対のホイール部材93aと、それら一対のホイール部材93aの対向面間を連結するクランクピン93bとを備える。
【0030】
ホイール部材93aは、軸心O1を有する円盤状に形成され、減速装置92から付与される回転駆動力により軸心O1を回転中心として回転可能な状態で車体BF(図2参照)に配設される。クランクピン93bは、アッパーアーム42の一端側に設けられた連結部42aが回転可能に連結される軸状部材であり、ホイール部材93aの軸心O1に対して偏心して配設されている。
【0031】
即ち、クランクピン93bの軸心O2は、ホイール部材93aの軸心O1に対して、距離Erだけ偏心して位置する。よって、ホイール部材93aが軸心O1を中心として回転されると、クランクピン93bは、ホイール部材93aの軸心O1を中心とし距離Erを回転半径とする回転軌跡TRに沿って移動される。これにより、クランク部材93が回転されると、クランクピン93bに連結されたアッパーアーム42が車体BF(図2参照)に近接または離間する方向(図3上下方向)へ往復運動される。
【0032】
RRポジションセンサ94RRは、ホイール部材93aの中央に軸心O1と同軸に連結されるポジション軸94aと、そのポジション軸94aに配設されポジション軸94aの回転角に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器(図示せず)とを備える。よって、クランク部材93が回転された場合には、可変抵抗器の抵抗値に基づいて、クランク部材93の回転角(即ち、クランクピン93bの位相)を検出できる。なお、ポジションセンサとしては、ホール素子を用いた非接触式センサを用いても良い。
【0033】
図4(a)は、第1状態における懸架装置14の正面模式図であり、図4(b)は、第2状態における懸架装置14の正面模式図である。上述したように、アッパーアーム42は、一端側に設けられた連結部42a(図3参照)がクランクピン93bを介してホイール部材93aの軸心O1から偏心した位置(軸心O2)に回転可能に連結される一方、他端側(図4左側)がキャリア部材41の上端側(図4上側)に回転可能に連結される。
【0034】
よって、RRモータ91RRから付与される回転駆動力によりクランク部材93のホイール部材93aが軸心O1を回転中心として回転されると、クランクピン93bが回転軌跡TRに沿って移動され(図3(b)参照)、アッパーアーム42が往復移動される。これにより、アッパーアーム42を介して、キャリア部材41の上端側(図4上側)が車体BFに対して近接または離間されることで、キャリア部材41に保持される車輪2のキャンバ角が調整される。
【0035】
ここで、アッパーアーム42の他端側(図4左側)をキャリア部材41の上端側に回転可能に連結する際の回転中心を軸心O3と定義する。本実施の形態では、各軸心O1,O2,O3が、車輪2から車体BFへ向かう方向(図4左から右に向かう方向)において、軸心O3、軸心O2、軸心O1の順に一直線上に並んで位置する第1状態(図4(a)に示す状態)と、軸心O3、軸心O1、軸心O2の順に一直線上に並んで位置する第2状態(図4(b)に示す状態)とのいずれか一方の状態となるように、車輪2のキャンバ角を調整する。
【0036】
なお、本実施の形態では、図4(b)に示す第2状態において、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(車輪2の中心線が垂直線に対して車体BF側に傾いた状態)の所定角度(本実施の形態では−3°、以下「第2キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。一方、図4(a)に示す第1状態では、車輪2へのキャンバ角の付与が解除され、そのキャンバ角が0°(以下「第1キャンバ角」と称す)に調整される。
【0037】
この場合、第1状態および第2状態では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TR(図3(b)参照)の軸心O2における接線とを直角とすることができるので、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生せず、ホイール部材93aが回転しないようにすることができる。よって、車輪2のキャンバ角を所定角度(第1キャンバ角または第2キャンバ角)に機械的に維持することができるので、第1状態または第2状態においてRRモータ91RRの駆動力を解除しておくことができる。その結果、車輪2のキャンバ角を所定角度に維持するために必要なRRモータ91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。
【0038】
また、RRモータ91RR及び車輪2に連係されると共に、RRモータ91RRに連動して車輪2のキャンバ角を調整する連係部材(アッパアーム42、ロアアーム43及びクランク部材93)は、車体BFと車輪2との間に配設されている。そのため、車輪2のキャンバ角の絶対値を大きくするように車輪2のキャンバ角が調整される場合(第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)へ調整される場合)、車体BFの重量によりRRモータ91RRの負荷を小さくできる。一方、キャンバ角の絶対値を小さくするように車輪2のキャンバ角が調整される場合(第2キャンバ角(−3°)から第1キャンバ角(0°)へ調整される場合)、車体BFの重量によりRRモータ91RRの負荷が大きくなる。
【0039】
なお、請求項1記載の「キャンバ角」としては、本実施の形態では、第1キャンバ角および第2キャンバ角が該当する。また、左右の前輪2FL,2FRに対応して設けられる懸架装置4は、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、キャンバ角調整装置45が省略され、アッパーアーム42の一端側が車体BFに回転可能に連結されている点)と、操舵機能を有して構成される点を除き、その他の構成は懸架装置14と同一の構成であるので、その説明を省略する。
【0040】
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。
【0041】
この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
【0042】
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(ステア角、ステア角速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
【0043】
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態、或いは、サスストロークセンサ装置83の検出結果に応じてキャンバ角調整装置45(図3参照)を作動制御する。
【0044】
次いで、図5を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図5は車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図5に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
【0045】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図7から図11に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。ROM72には、図5に示すようにモータ制御マップ72aが設けられている。
【0046】
ここで、図6を参照してモータ制御マップ72aの内容について説明する。図6はモータ制御マップ72aの内容を模式的に示した模式図である。モータ制御マップ72aは、RRモータ91RRを流れる電流(モータ電流)を決定するためのマップであり、RRモータ91RRに電力が供給されてから車輪2のキャンバ角の調整が終了するまでのRRモータ91RRの動作時間と、車輪2のキャンバ角を調整するときにRRモータ91RRに流れる電流との関係を示す関数Fにより構成されている。但し、RRモータ91RRの印加電圧は一定とする。なお、RLモータ91RLについても同様の関係があるので、RLモータ91RLに関するマップの図示および説明を省略する。
【0047】
ここで、RLモータ91RL(直流モータ)は負荷に応じて回転数および電流が変動する特性があり、負荷が大きくなれば回転数が小さくなり電流は増大する。従って、車輪2のキャンバ角を調整するときのRRモータ91RRの電流は、RRモータ91RRの負荷、即ち、車両1が走行する路面の摩擦係数等により変化する。また、路面の摩擦係数が変わらなくても、車輪2(タイヤ)の種類や大きさ等によってタイヤ剛性が変わり負荷が変わるため、路面の摩擦係数、タイヤの種類や大きさ等に応じた電流のデータを実測や計算等により集める。これを統計的に処理することにより、タイヤの種類や大きさ等の各種条件毎にモータ制御マップ72aを得ることができる。
【0048】
なお、モータ制御マップ72aは、第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)へ調整する(キャンバ角の絶対値を大きくする)ときのものである。このときは、第2キャンバ角(−3°)から第1キャンバ角(0°)へ調整する(キャンバ角の絶対値を小さくする)ときと比べて、車体BFの重量によりRRモータ91RRの負荷は軽減される。また、モータ制御マップ72aは、推奨されるタイヤを装着した車両1が通常走行する路面(市街地の路面に相当)におけるものである。
【0049】
モータ制御マップ72aによれば、RRモータ91RRに流れる電流を小さくすればRRモータ91RRの駆動速度が小さくなり、車輪2のキャンバ角の調整に時間がかかるため、RRモータ91RRの動作時間が長くなる。一方、RRモータ91RRに流れる電流を大きくすればRRモータ91RRの駆動速度が大きくなり、車輪2のキャンバ角を短時間で調整できるため、RRモータ91RRの動作時間を短くできる。
【0050】
ここで、車両1の操縦安定性等を向上させる要求がある場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)へ調整されるので、このときの各モータ91RL,91RRの動作時間は短い方が望ましい。そこで、各モータ91RL,91RRの動作時間の上限値(規定値D)を規定する。規定値Dは、車両1の走行性能、キャンバ角調整装置45の特性等を考慮して決定される。RRモータ91RRの動作時間の規定値Dが定められると、その動作時間にするために必要なモータ電流が関数Fから求められる。関数F上の点P3から求められるモータ電流を所定値cとする。
【0051】
次に、モータ制御マップ72aを用いたRRモータ91RRの制御方法について説明する。RRモータ91RRに流れる電流(モータ電流)を検出し、その電流が所定値cより小さい電流Lであったとする(点P4)。このときは関数Fに沿って電流を所定値cまで大きくする(点P3)。電流を大きくすることでRRモータ91RRの動作時間をT2からDに短くできる。また、電流を所定値cまで大きくすることで、RRモータ91RRによって消費される電力が過大になることも防止できる。
【0052】
一方、RRモータ91RRに流れる電流(モータ電流)を検出し、その電流が所定値c以上の電流H1であったとする(点P2)。このときはRRモータ91RRのモータ電流を調整することなく、その電流H1でRRモータ91RRを駆動する。このときのRRモータ91RRの消費電力は、モータ電流が所定値cである場合の消費電力よりやや大きいが、RRモータ91RRの動作時間を規定値Dより短縮できる。これにより、キャンバ角の調整効果(キャンバスラストが生じる等)を早く得ることができる。
【0053】
また、RRモータ91RRに流れる電流(モータ電流)を検出し、その電流が所定値c以上の電流H1であった場合に(点P2)、RRモータ91RRのモータ電流を調整し、電流H2(点P1)までの任意の値に大きくすることは可能である。なお、関数F上の点P1における動作時間MINは、キャンバ角調整装置45の応答時間により定められる最短(限界)の動作時間である。これにより、電流H1の場合との比較で、RRモータ91RRの動作時間をさらに短くできると共に、動作時間MIN以上であるから、キャンバ角調整装置45を確実に動作させることができ、信頼性を確保できる。
【0054】
特に、RRモータ91RRのモータ電流を電流H2まで大きくすることで(点P1)、RRモータ91RRの動作時間を最短にできる。なお、図6の縦軸に示す電流MAXは、キャンバ角調整装置45の駆動制御回路(図示せず)やRRモータ91RRの特性により定められる最大電流である。電流H2は、この最大電流より小さいため、RRモータ91RRは最短の動作時間MINで駆動される。
【0055】
図5に戻って説明する。RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、キャンバフラグ73a、状態量フラグ73b及び走行状態フラグ73cが設けられている。
【0056】
キャンバフラグ73aは、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態にあるか否かを示すフラグであり、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された場合(即ち、ネガティブキャンバが付与された場合)にオンに切り替えられ、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された場合(即ち、ネガティブキャンバの付与が解除された場合)にオフに切り替えられる。
【0057】
状態量フラグ73bは、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを示すフラグであり、後述する状態量判断処理(図7参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における状態量フラグ73bは、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この状態量フラグ73bがオンである場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たしていると判断する。
【0058】
走行状態フラグ73bは、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを示すフラグであり、後述する走行状態判断処理(図8参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における走行状態フラグ73cは、車両1の走行速度が所定の走行速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この走行状態フラグ73cがオンである場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
【0059】
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
【0060】
キャンバ角調整装置45は、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置14のクランク部材93(図3参照)へ回転駆動力を付与するRLモータ91RL及びRRモータ91RR(アクチュエータ)と、それら各モータ91RL,91RRの回転駆動力により回転されたクランク部材93の位相をそれぞれ検出するRLポジションセンサ94RL及びRRポジションセンサ94RRと、それら各ポジションセンサ94RL,94RRの検出結果を処理してCPU71へ出力する出力回路(図示せず)と、各モータ91RL,91RRを流れる電流をそれぞれ検出するRL電流検出器95RL,RR電流検出器95RRと、それらRL電流検出器95RL,RR電流検出器95RRの検出結果を処理してCPU71へ出力する出力回路(図示せず)と、CPU71からの指示に基づいて各モータ91RL,91RRをそれぞれ駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。
【0061】
なお、各モータ91RL,91RRは、電動のサーボモータとして構成される。即ち、キャンバ角調整装置45は、各ポジションセンサ94RL,94RRにより検出した各モータ91RL,91RRの状態(位相)をフィードバックし、現在位置と目標位置との差分を減少させることで、各モータ91RL,91RRの位置制御を行う。
【0062】
また、駆動制御回路は、RLモータ91RL及びRRモータ91RRの回転軸を電気的にロック(規制)するサーボロック回路を備えており、RLモータ91RL及びRRモータ91RRのサーボロックをオンすることで、各ホイール部材93aの回転をそれぞれ独立して規制可能に構成されている。
【0063】
但し、アクチュエータは直流モータ(RLモータ91RL及びRRモータ91RR)に限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、電動シリンダや油圧アクチュエータ、ソレノイド等が例示される。
【0064】
加速度センサ装置80は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ80a及び左右方向加速度センサ80bと、それら各加速度センサ80a,80bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0065】
前後方向加速度センサ80aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度、いわゆる前後Gを検出するセンサであり、左右方向加速度センサ80bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度、いわゆる横Gを検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ80a,80bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
【0066】
また、CPU71は、加速度センサ装置80から入力された各加速度センサ80a,80bの検出結果(前後G、横G)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の走行速度を取得することができる。
【0067】
ヨーレートセンサ装置81は、車両1のヨーレートを検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る鉛直軸(図1矢印U−D方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角速度を検出するヨーレートセンサ81aと、そのヨーレートセンサ81aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0068】
ロール角センサ装置82は、車両1のロール角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る前後軸(図1矢印F−B方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角を検出するロール角センサ82aと、そのロール角センサ82aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0069】
なお、本実施の形態では、ヨーレートセンサ81a及びロール角センサ82aがサニャック効果により回転角速度および回転角を検出する光学式ジャイロセンサにより構成されている。但し、他の種類のジャイロセンサを採用することは当然可能である。他の種類のジャイロセンサとしては、例えば、機械式や流体式などのジャイロセンサが例示される。
【0070】
サスストロークセンサ装置83は、左右の後輪2RL,2RRを車体BFに懸架する各懸架装置14の伸縮量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各懸架装置14の伸縮量をそれぞれ検出する合計2個のRLサスストロークセンサ83RL及びRRサスストロークセンサ83RRと、それら各サスストロークセンサ83RL,83RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
【0071】
本実施の形態では、各サスストロークセンサ83RL,83RRがひずみゲージとして構成されており、これら各サスストロークセンサ83RL,83RRは、各懸架装置14のショックアブソーバ(図示せず)にそれぞれ配設されている。
【0072】
なお、CPU71は、サスストロークセンサ装置83から入力された各サスストロークセンサ83RL,83RRの検出結果(伸縮量)に基づいて、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重を取得することもできる。即ち、車輪2の接地荷重と懸架装置4の伸縮量とは比例関係を有しているので、懸架装置4の伸縮量をXとし、懸架装置4の減衰定数をkとすると、車輪2の接地荷重Fは、F=kXとなる。
【0073】
接地荷重センサ装置84は、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の接地荷重をそれぞれ検出する合計2個のRL,RR接地荷重センサ84RL,84RRと、それら各接地荷重センサ84RL,84RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
【0074】
なお、本実施の形態では、各接地荷重センサ84RL,84RRがピエゾ抵抗型の荷重センサとして構成されており、これら各接地荷重センサ84RL,84RRは、各懸架装置14のショックアブソーバSA(図2参照)にそれぞれ配設されている。
【0075】
サイドウォール潰れ代センサ装置85は、左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代をそれぞれ検出する合計2個のRL,RRサイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRと、それら各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
【0076】
なお、本実施の形態では、各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRがひずみゲージとして構成されており、これら各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRは、各車輪2内にそれぞれ配設されている。
【0077】
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0078】
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0079】
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63のステア角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0080】
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分して、各ペダル61,62の踏み込み速度およびステアリング63のステア角速度を取得することができる。更に、CPU71は、取得したステアリング63のステア角速度を時間微分して、ステアリング63のステア角加速度を取得することができる。
【0081】
図5に示す他の入出力装置90としては、例えば、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共にその取得した車両1の現在位置を道路に関する情報が記憶された地図データに対応付けて取得するナビゲーション装置などが例示される。
【0082】
次いで、図7を参照して、状態量判断処理について説明する。図7は状態量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の状態量が所定の条件を満たすかを判断する処理である。
【0083】
CPU71は、状態量判断処理に関し、まず、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)、ブレーキペダル62の操作量(踏み込み量)及びステアリング63の操作量(ステア角)をそれぞれ取得し(S1、S2、S3)、それら取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する(S4)。なお、S4の処理では、S1〜S3の処理でそれぞれ取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量と、それら各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量にそれぞれ対応してROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回する場合に、車輪2がスリップする恐れがあると判断される限界値)とを比較して、現在の各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
【0084】
その結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合には(S4:Yes)、状態量フラグ73bをオンして(S5)、この状態量判断処理を終了する。即ち、この状態量判断処理では、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断する。
【0085】
一方、S4の処理の結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量のいずれもが所定の操作量より小さいと判断される場合には(S4:No)、状態量フラグ73bをオフして(S6)、この状態量判断処理を終了する。
【0086】
次いで、図8を参照して、走行状態判断処理について説明する。図8は走行状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する処理である。
【0087】
CPU71は、走行状態判断処理に関し、まず、車両1の走行速度を取得し(S11)、その取得した車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する(S12)。なお、S12の処理では、S11の処理で取得した車両1の走行速度と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する。その結果、車両1の走行速度が所定の速度より小さいと判断される場合には(S12:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
【0088】
一方、S12の処理の結果、車両1の走行速度が所定の速度以上であると判断される場合には(S12:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)を取得し(S13)、その取得したステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S14)。なお、S14の処理では、S13の処理で取得したステアリング63の操作量と、ROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図7に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断するためのステアリング63の操作量より小さい値)とを比較して、現在のステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
【0089】
その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S14:Yes)、走行状態フラグ73cをオンして(S15)、この走行状態判断処理を終了する。即ち、この走行状態判断手段では、車両1の走行速度が所定の速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
【0090】
一方、S14の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S14:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
【0091】
次いで図9を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図9はキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整する処理である。
【0092】
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断し(S21)、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S21:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S22)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S22:No)、キャンバ付与処理を実行する(S23)。
【0093】
ここで図10を参照して、キャンバ付与処理について説明する。図10はキャンバ付与処理を示すフローチャートである。この処理は、RLモータ91RL及びRRモータ91RR(図5参照)を駆動する電流を決定すると共に、RLモータ91RL及びRRモータ91RRを駆動制御し、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)へネガティブキャンバを付与するための処理である。
【0094】
CPU71は、キャンバ付与処理に関し、まず、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角は第2キャンバ角(−3°)であるか否かを判断する(S41)。左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角が第2キャンバ角でないと判断される場合には(S41:No)、左右の後輪2RL,2RRへネガティブキャンバを付与するため、RLモータ91RL及びRRモータ91RRを駆動する(S42)。次いで、RLモータ91RL及びRRモータ91RRを流れる電流(モータ電流)を取得する(S43)。なお、直流モータでは、モータの起動時に逆起電力により大きな起動電流が生じるが、モータ電流はこの起動電流ではなく、起動後のモータに流れる電流である。
【0095】
次いで、CPU71はROM72に記憶されたモータ制御マップ72a(図6参照)を参照して、モータ電流が所定値c以上であるか否かを判断する(S44)。モータ電流が所定値cより小さいと判断される場合には(S44:No)、モータ電流が小さいと判断されたRLモータ91RL,RRモータ91RRの動作時間を所定時間(規定値D)以下にするように、各モータ91RL,91RRの駆動制御回路(図示せず)に所定値c以上のモータ電流を設定する(S45)。そして、RL,RRモータ91RL,91RRを駆動し(S46)、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角は第2キャンバ角であるか否かを判断する(S41)。その結果、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角が第2キャンバ角であると判断される場合には(S41:Yes)、各車輪2へネガティブキャンバが付与されているので、このキャンバ解除処理を終了する。一方、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角が第2キャンバ角でないと判断される場合には(S41:No)、S42〜S46の処理を実行する。
【0096】
また、S44の処理において、モータ電流が所定値c以上であると判断される場合には(S44:Yes)、そのモータの動作時間は十分短いと判断されるので、各モータ91RL,91RRの駆動制御回路(図示せず)によりモータ電流を調整することなく、RL,RRモータ91RL,91RRを駆動する(S46)。
【0097】
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たす場合、即ち、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回すると車輪2がスリップする恐れがあると判断される場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。
【0098】
また、各モータ91RL,91RRに連動して車輪2のキャンバ角を調整する連係部材(アッパアーム42、ロアアーム43及びクランク部材93)は、車体BFと車輪2との間に配設されているので、車輪2のキャンバ角を調整して車輪2にネガティブキャンバを付与するときは、車体BFの重量により、各モータ91RL,91RRの負荷を軽減できる。しかし、車輪2のキャンバ角を調整するときのアクチュエータの負荷は、車両1の走行速度が大きいほど、タイヤ剛性の影響が小さくなるため減少する傾向がある。また、剛性の低いタイヤを装着した場合や、車両1が摩擦係数の低い路面を走行する場合も、車輪2のキャンバ角を調整するときのアクチュエータの負荷が減少する傾向がある。これらの場合、RL,RRモータ91RL,91RRのモータ電流は小さくなる傾向がある。
【0099】
これに対し、上記のキャンバ付与処理を実行することで、左右の後輪2RL,2RRへネガティブキャンバを付与するときのモータ電流が所定値cより小さい場合に、RL,RRモータ91RL,91RRの動作時間が短くなるように、RL,RRモータ91RL,91RRのモータ電流が調整される。これにより、路面の状態や車両1の走行速度等によりRL,RRモータ91RL,91RRの負荷が変化しても、その負荷に適した短い動作時間でRL,RRモータ91RL,91RRを駆動できる。
【0100】
特に、RL,RRモータ91RL,91RRのモータ電流が所定値cより小さいと判断される場合に、所定の動作時間(規定値D)となる範囲内で、RL,RRモータ91RL,91RRに供給される電力を大きくするように調整されると、RL,RRモータ91RL,91RRに過大な電力を供給することなくRL,RRモータ91RL,91RRの動作時間を規定値D内にすることができる。その結果、RL,RRモータ91RL,91RRによって消費される電力を抑制できる。
【0101】
また、モータ電流の所定値cは、車両1の製造時や車両1が出荷された後の整備時などにおいて、ソフトウェアやデバイスドライバの設定が行われ車両用制御装置100を使用可能な状態にするセットアップ時に設定される。一方、セットアップ時に所定値cを設定するのではなく、走行中の車両1のRL,RRモータ91RL,91RRの負荷、動作時間、モータ電流等を検出し、記憶したそれらのデータからその車両1に応じた所定値cを計算し、書き換えるようにすることは可能である。しかし、ソフトウェアが複雑化すると共に大きな記憶容量を要するという問題がある。これに対し本実施の形態によれば、所定値cを簡便に設定することができ、ソフトウェアを簡素化できる。
【0102】
また、モータ電流が所定値c以上であると判断される場合には、RL,RRモータ91RL,91RRに供給される電力を調整せずに、RL,RRモータ91RL,91RRに所定量の電力が供給され駆動される。RL,RRモータ91RL,91RRに供給される電力を調整しないことで、RL,RRモータ91RL,91RRによって消費される電力を抑制するよりも、RL,RRモータ91RL,91RRの動作時間を短縮することを優先できる。その結果、車輪2へネガティブキャンバを迅速に付与し、車輪2に付与されたネガティブキャンバによる効果(キャンバスラストが生じる等)を早く得られるようにできる。
【0103】
また、各モータ91RL,91RRは直流モータにより構成されており、直流モータは入力された電流に対してトルクが直線的に比例する特性をもつ。また、直流モータに流れる電流の測定は精度良く行うことができる。その測定結果に基づき各モータ91RL,91RRに供給される電力(電圧と電流との積)が調整されるので、各モータ91RL,91RRの動作時間を精度良く調整できる。
【0104】
図9に戻って説明する。キャンバ付与処理(S23)により各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2にネガティブキャンバを付与した後は、キャンバフラグ73aをオンして(S24)、このキャンバ制御処理を終了する。一方、S22の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S22:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S23及びS24の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
【0105】
これに対し、S21の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S21:No)、走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断し(S25)、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S25:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S26)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S26:No)、キャンバ付与処理(図10参照)を実行し(S27)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2にネガティブキャンバを付与する。次いで、キャンバフラグ73aをオンして(S28)、このキャンバ制御処理を終了する。
【0106】
これにより、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車両1の走行速度が所定の速度以上であると共にステアリング63の操作量が所定の操作量以下であり、車両1が比較的高速で直進している場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。
【0107】
また、S25の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S25:No)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S29)。その結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S29:Yes)、キャンバ角調整装置45を作動させて各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除する(S30)。次いで、キャンバフラグ73aをオフして(S31)、このキャンバ制御処理を終了する。
【0108】
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たしておらず車両1の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両1の走行安定性を優先して確保する必要がない場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、キャンバスラストの影響を回避して、省燃費化を図ることができる。一方、S29の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S29:No)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S30及びS31の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
【0109】
このようにキャンバ制御処理を実行することで、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。また、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。
【0110】
なお、図9に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の条件判断手段としてはS21,S25の処理が、キャンバ角調整手段としてはS30の処理が、それぞれ該当する。図10に示すフローチャート(キャンバ付与処理)において、請求項1記載のキャンバ角調整手段としてはS42,S46の処理が、指標取得手段としてはS43の処理が、指標判断手段としてはS44の処理が、電力調整手段としてはS45の処理が、それぞれ該当する。請求項4記載のアクチュエータ駆動手段としては、S44の処理においてYesと判断された場合のS46の処理が該当する。また、請求項1記載の電力調整手段または請求項4記載のアクチュエータ駆動手段によりアクチュエータに供給される「電力」としては、各モータ91RL,91RRの印加電圧にモータ電流を乗じて得られる値が該当する。
【0111】
次いで、図11を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態ではキャンバ付与処理(図10参照)において、モータ電流が所定値以上であると判断される場合には(S44:Yes)、各モータ91RL,91RRに供給される電力を調整せずに各モータ91RL,91RRを駆動する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、モータ電流が所定値以上であると判断される場合には(S44:Yes)、各モータ91RL,91RRに供給される電力を大きくするように調整する場合(S47)について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図11は第2実施の形態におけるキャンバ付与処理を示すフローチャートである。
【0112】
図11に示すように、S44の処理において、モータ電流が所定値c(図6参照)以上であると判断される場合には(S44:Yes)、そのモータの動作時間は十分短いと判断されるが、さらに動作時間を短くするため、各モータ91RL,91RRの駆動制御回路(図示せず)によりモータ電流を電流H2に調整し、各モータ91RL,91RRの動作時間が最短になるようにし(S47)、RL,RRモータ91RL,91RRを駆動する(S46)。
【0113】
なお、S47の処理では、モータ電流は所定値cより大きくH2以下の範囲で適宜設定できる。これによりRRモータ91RRの動作時間を短縮できる。その動作時間は、キャンバ角調整装置45の応答時間により定められる最短(限界)の動作時間(MIN)以上であるので、キャンバ角調整装置45を確実に動作させることができ、信頼性を確保できる。なお、図11に示すフローチャート(キャンバ付与処理)において、請求項5記載の動作時間短縮手段としては、S47の処理が該当する。
【0114】
次いで、図12から図17を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、ROM72に記憶されたモータ制御マップ72aが単一の関数Fにより構成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、ROM272に記憶されたモータ制御マップ272aが複数の関数A〜Cにより構成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0115】
まず、図12を参照して車両用制御装置200の詳細構成について説明する。図12は車両用制御装置200の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置200は、実施の形態1で説明した車両用制御装置100に代えて、車両1に搭載されるものとする。車両用制御装置200はCPU71、ROM272及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。ROM272はモータ制御マップ272a及び関数選択マップ272bが記憶されている。
【0116】
ここで、図13を参照してモータ制御マップ272aの内容について説明する。図13はモータ制御マップ272aの内容を模式的に示した模式図である。モータ制御マップ272aは、RRモータ91RRを流れる電流(モータ電流)を決定するためのマップであり、RRモータ91RRに電力が供給されてから車輪2のキャンバ角の調整が終了するまでのRRモータ91RRの動作時間と、車輪2のキャンバ角を調整するときにRRモータ91RRに流れる電流との関係を示す関数A〜Cにより構成されている。
【0117】
関数A〜Cは、RRモータ91RRの負荷の大きさ毎に設定された関数である。RRモータ91RRは動作時間が同じであっても、負荷が大きくなるにつれRRモータ91RRに流れる電流は増加するからである。但し、RRモータ91RRの印加電圧は一定とする。なお、RLモータ91RLについても同様の関係があるので、RLモータ91RLに関するマップの図示および説明を省略する。
【0118】
関数Aは、剛性の大きなタイヤが車両1に装着された場合や、摩擦係数の大きな路面(例えばサーキット等の専用舗装路面)を車両1が走行する場合等に適用される。関数Bは、推奨される一般的なタイヤが車両1に装着された場合や、市街地等の一般道を車両1が走行する場合等に適用される。関数Cは、剛性の小さなタイヤや転がり抵抗の小さな低燃費タイヤが車両1に装着された場合や、摩擦係数の小さな路面(例えば雪道等)を車両1が走行する場合等に適用される。モータ制御マップ272aによれば、動作時間が規定値Dに定められたとすると、関数Cが適用されるとRRモータ91RRのモータ電流は最も小さく(点P9)、次いで関数B(点P7)、関数A(点P5)の順にモータ電流は大きくなる。
【0119】
また、モータ電流が大きくなるにつれ動作時間を短くすることができ、関数B又は関数Cが適用された場合には、キャンバ角調整装置45の応答時間により定められる最短(限界)の動作時間MINまで短縮できる(点P8又は点P10)。これに対し関数Aが適用された場合、キャンバ角調整装置45の応答時間により定められる最短(限界)の動作時間MINまで動作時間を短縮することはできない。関数Aでは、モータ電流が大きくなると、動作時間MINにより定められる電流値に達する前に、キャンバ角調整装置45の駆動制御回路(図示せず)やRRモータ91RRの特性により定められる最大電流MAXに達してしまうからである(点P6)。しかしながら、関数Aが適用された場合であっても、モータ電流を電流MAX以下にすることで、キャンバ角調整装置45を確実に動作させることができ、信頼性を確保できる。
【0120】
次に図14を参照して、関数選択マップ272bについて説明する。図14は関数選択マップ272bの内容を模式的に示した模式図である。関数選択マップ272bは、モータ制御マップ272aに記憶された複数の関数A〜Cの内、RRモータ91RRを制御するときに適用する関数を選択するためのマップである。関数選択マップ272bによれば、タイヤ剛性は大・中・小の3つのランクに区分されており、路面の摩擦係数(路面μ)も大・中・小の3つのランクに区分されている。これらの組合せにより関数A〜Cが選択される。例えば、タイヤ剛性が大かつ路面μが中のときは関数Aが選択され、タイヤ剛性が小かつ路面μが中のときは関数Cが選択される。
【0121】
また、ROM272には、車両1の駆動輪(左右の前輪2FL,2FR)のスリップ率と車両1の前後G(前後加速度)から推定されるタイヤ剛性のランク(大・中・小)のデータが記憶されている。さらにROM272には、車両1の走行速度、操舵角(ステア角)および横G(横加速度)から推定される路面μ(路面の摩擦係数)のランク(大・中・小)のデータが記憶されている。
【0122】
図12に戻って説明する。車輪回転速度センサ装置86は、車輪2(左右の前輪2FL,2FR、左右の後輪2RL,2RR)の回転速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の回転速度をそれぞれ検出する合計4個のFL〜RRセンサ86FL〜86RRと、それら各センサ86FL〜86RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
【0123】
図12に示す他の入出力装置290としては、例えば、関数選択マップ272bから任意の関数A〜Cを選択する入力装置が例示される。剛性の大きなタイヤ或いは転がり抵抗の小さな低燃費タイヤを車両1に装着したときや、車両1が雪道等を走行するときは、運転者や車両整備者等は、入力装置を介して関数A〜Cのいずれかを選択できる。これにより車両1の状態に適したモータ制御マップ272aを用いて各モータ91RL,91RRを最適に制御できる。
【0124】
次いで図15を参照して、タイヤ剛性識別処理について説明する。図15はタイヤ剛性識別処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1に装着されたタイヤの剛性ランク(大・中・小)を識別するための処理である。
【0125】
なお、この処理は、上記の入出力装置290(入力装置)を介して関数A〜Cのいずれかが選択されたときは、実行されないようにすることが可能である。また、入出力装置290(入力装置)を介して関数A〜Cのいずれかが選択されたときであっても、このタイヤ剛性識別処理を実行することは当然可能である。また、車両用制御装置200の電源が投入されている間、常時実行されるようにしても良いし、一定の時間や走行距離が経過する毎に実行されるようにしても良い。
【0126】
CPU71は、タイヤ剛性識別処理に関し、まず、車輪2(左右の前輪2FL,2FR、左右の後輪2RL,2RR)の回転速度を取得し(S51)、次に車両1の走行速度および前後Gを取得する(S52)。次いで、取得した車輪2(左右の前輪2FL,2FR、左右の後輪2RL,2RR)の回転速度から駆動輪(左右の前輪2FL,2FR)の平均車輪速度を算出する(S53)。次に、駆動輪の平均車輪速度および車両1の走行速度から、駆動輪のスリップ率を算出する(S54)。次いで、駆動輪のスリップ率および車両1の前後Gからタイヤ剛性ランクを求め(S55)、このタイヤ剛性識別処理を終了する。なお、S55の処理では、S51〜S54の処理で取得し算出した駆動輪のスリップ率および車両1の前後Gに対応してROM272に予め記憶されているタイヤ剛性ランクとを比較して、車両1に装着されたタイヤの剛性がいずれのランク(大・中・小)かを判断する。
【0127】
次いで図16を参照して、路面μ識別処理について説明する。図16は路面μ識別処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1が走行する路面μ(路面の摩擦係数)のランク(大・中・小)を識別するための処理である。
【0128】
CPU71は、路面μ識別処理に関し、まず、車両1の走行速度、ステアリング63の操作量(操舵角)、車両1の横Gを取得する(S61〜S63)。次いで、取得した車両1の走行速度、横G及び操舵角から路面μランクを求め(S64)、この路面μ識別処理を終了する。なお、S64の処理では、S61〜S63の処理で取得した車両1の走行速度、操舵角および横Gに対応してROM272に予め記憶されている路面μランクとを比較して、車両1が走行する路面の摩擦係数がいずれのランク(大・中・小)かを判断する。
【0129】
次いで、図17を参照してキャンバ付与処理について説明する。図17はキャンバ付与処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行されるキャンバ制御処理(図9参照)において、S23及びS27の処理に代えて実行される。この処理は、RLモータ91RL及びRRモータ91RR(図12参照)を駆動する電流を決定すると共に、RLモータ91RL及びRRモータ91RRを駆動制御し、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)へネガティブキャンバを付与するための処理である。
【0130】
CPU71は、キャンバ付与処理に関し、まず、関数選択マップ272b(図12及び図14参照)から関数A〜Cのいずれかを選択する(S71)。なお、この処理は、タイヤ剛性識別処理(図15参照)及び路面μ識別処理(図16参照)により決定されたタイヤ剛性ランク及び路面μランクに基づき実行される。そして、以後の処理(S41〜S46)では、モータ制御マップ272a(図12及び図13参照)の選択された関数A〜Cのいずれかに基づき、RLモータ91RL及びRRモータ91RRが制御される。
【0131】
以上説明した第3実施の形態によれば、RLモータ91RL及びRRモータ91RRの動作時間とモータ電流との関係を示す複数の関数A〜Cから、車両1の状態(タイヤ剛性や路面μ等)に最も適したものを選択し、それに基づいてRLモータ91RL及びRRモータ91RRを制御できる。これにより、車両1のユーザー等によってタイヤ交換等が行われ、車両1の状態が変更された場合においても、RLモータ91RL及びRRモータ91RRを、負荷に適した短い動作時間で駆動できる。
【0132】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0133】
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態で説明した第1キャンバ角および第2キャンバ角の値は任意に設定することができる。
【0134】
上記各実施の形態では、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角および第2キャンバ角のいずれかに設定するキャンバ角調整装置45が搭載された車両1に用いられる車両用制御装置100,200について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。任意のキャンバ角に連続的に設定可能に構成されたキャンバ角調整装置が搭載された車両に用いられる車両用制御装置に適用することは当然可能である。この場合のRLモータ91RL及びRRモータ91RRの動作時間は、車輪2のキャンバ角を任意の角度に調整するようにCPU71がキャンバ角調整装置45に指示してから、その角度に調整が終了するまでの時間をいう。
【0135】
上記各実施の形態では、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をキャンバ角調整装置45により調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これに替えて又はこれに加えて、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角をキャンバ角調整装置45により調整することは当然可能である。
【0136】
また、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をキャンバ角調整装置45により調整してネガティブキャンバを付与する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角をキャンバ角調整装置45により調整してポジティブキャンバを付与するようにすることは当然可能である。軸心O2の位置やアッパーアーム42の長さ等を変えることにより、ポジティブキャンバを付与するようにすることが可能である。
【0137】
上記各実施の形態では、第1状態および第2状態のいずれにおいても、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1状態または第2状態の一方のみにおいて、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置し、第1状態または第2状態の他方においては、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置しないように制御することは当然可能である。
【0138】
上記各実施の形態では、キャンバ角調整機構45が、アッパーアーム42と車体BFとの間に介装される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ロアアーム43と車体BFとの間にキャンバ角調整機構45を介装しても良い。
【0139】
上記実施の形態では、アクチュエータを直流モータで構成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。アクチュエータを電動シリンダ、ソレノイド等によって構成する場合には、直流モータと同様に、入力する電力を調整してアクチュエータの駆動速度を調整することができる。
【0140】
上記各実施の形態では、予め設定された電流値(所定値c)に基づいてモータ電流を調整する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、車両1の走行中に各モータ91RL,91RRの駆動による動作時間をRAM73に記憶し、それに基づいて所定値を書き換えるようにすることは当然可能である。
【0141】
上記実施の形態では、モータ電流を調整してRLモータ91RL及びRRモータ91RRの動作時間を調整する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、パルス制御により印加する平均電圧を調整して、RLモータ91RL及びRRモータ91RRの動作時間を調整することは当然可能である。
【0142】
ここで図18を参照して、パルス制御の一例を説明する。図18(a)及び図18(b)は、RLモータ91RL及びRRモータ91RR(アクチュエータ)に入力される電圧を模式的に示した模式図である。横軸は時間tであり、縦軸は電圧であり、A1及びA2は平均電圧を示している。図18(a)に示すように、ON時間の割合が大きいと各モータ91RL,91RRの平均電圧A1が高くなるので、各モータ91RL,91RRの駆動速度を大きくすることができ、各モータ91RL,91RRの動作時間を短くすることができる。一方、図18(b)に示すように、ON時間の割合が小さいと各モータ91RL,91RRの平均電圧A2が低くなるので、各モータ91RL,91RRの駆動速度を小さくすることができ、各モータ91RL,91RRの動作時間を長くすることができる。
【0143】
以上のようにパルス制御により平均印加電圧を調整することで、RLモータ91RL及びRRモータ91RRに入力する電力を調整して、RLモータ91RL及びRRモータ91RRの動作時間を調整できる。また、必要なときだけ通電されるので、回路全体の効率が上がり負担も軽くできる。なお、請求項1記載の電力調整手段または請求項4記載のアクチュエータ駆動手段によりアクチュエータに供給される「電力」としては、パルス制御された電圧の平均値にモータ電流を乗じて得られる値が該当する。
【0144】
上記各実施の形態では、各モータ91RL,91RRのモータ電流を指標として各モータ91RL,91RRに供給される電力を調整する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の指標による公知の調整方法を採用することは当然可能である。他の調整方法としては、例えば、各モータ91RL,91RRの逆起電圧を指標として、各モータ91RL,91RRの印加電圧を調整する方法、各モータ91RL,91RRの回転数を指標として、各モータ91RL,91RRのモータ電流を調整する方法等を挙げることができる。各モータ91RL,91RRの回転数を指標にできるのは、各モータ91RL,91RRの印加電圧と無負荷回転速度とは比例関係にあるからである。
【0145】
上記第3実施の形態で説明したタイヤ剛性識別処理、路面μ識別処理は、それぞれ特開2006−130941号公報、特開平11−194087号公報等に開示される公知の処理であるので、第2実施の形態で説明した識別方法に限定されるものではない。
【0146】
上記第3実施の形態では、ROM272に3つの関数A〜Cが記憶される場合について説明したが、関数の数は3つに限定されるものではない。タイヤの剛性(種類)や路面μ等に応じた任意の数(例えば4つ以上または2つ)の関数に基づいて、各モータ91RL,91RRの制御を行うようにすることは当然可能である。
【0147】
上記各実施の形態のいずれかの一部または全部を他の実施の形態の一部または全部と組み合わせても良い。また、上記各実施の形態のうちの一部の構成を省略しても良い。例えば、状態量判断処理(図7参照)、走行状態判断処理(図8参照)のいずれかを省略し、それに係るキャンバ制御処理(図9参照)における判断を省略することは可能である。
【0148】
上記各実施の形態では、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量に基づいて、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、各ペダル61,62及びステアリング63の操作量に代えて、他の状態量に基づいて車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断することは当然可能である。他の状態量としては、例えば、各ペダル61,62の操作速度や操作加速度のように、運転者により操作される操作部材の状態を示すものでも良く、或いは、車両1自体の状態を示すものでも良い。車両1自体の状態を示すものとしては、車両1の前後Gなどが例示される。
【0149】
上記各実施の形態では、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断する状態量判断処理において、アクセルペダル61の操作量、ブレーキペダル62の操作量およびステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断するための各操作量の判断基準を、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回する場合に、車輪2がスリップする恐れがあると判断される限界値とする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、単に車両1の状態量(例えば、各ペダル61,62の操作量やステアリング63の操作量など)に基づいて設定しても良い。
【0150】
また、上記実施の形態では説明を省略したが、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断された場合において、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角(第2キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整し、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除するように制御することは可能である。これによりタイヤの偏摩耗を抑制することができるため、直進安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
【0151】
なお、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であるか否かを判断する指標としては、各懸架装置14の伸縮量、車両1の前後G、横G、ヨーレート、ロール角、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重、タイヤサイドウォールの潰れ代、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)、ステアリング63の操作量(ステア角)、操作速度または操作加速度の内の1以上を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0152】
100,200 車両用制御装置
1 車両
2FL 左の前輪(車輪の一部)
2FR 右の前輪(車輪の一部)
2RL 左の後輪(車輪の一部)
2RR 右の後輪(車輪の一部)
42 アッパアーム(連係部材の一部)
43 ロアアーム(連係部材の一部)
45 キャンバ角調整装置
91RL RLモータ(アクチュエータ、直流モータ)
91RR RRモータ(アクチュエータ、直流モータ)
93 クランク部材(連係部材の一部)
BF 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、その車体を支持する車輪と、その車輪のキャンバ角をアクチュエータを駆動させて調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両に用いられる車両用制御装置であって、
前記車輪のキャンバ角を調整する所定の条件を満たすかを判断する条件判断手段と、
その条件判断手段により所定の条件を満たすと判断される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させ前記アクチュエータに電力を供給し前記アクチュエータを駆動させて前記車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整手段と、
そのキャンバ角調整手段により駆動される前記アクチュエータに供給される電力に関する指標を取得する指標取得手段と、
その指標取得手段により取得される指標が、前記キャンバ角調整手段により駆動される前記アクチュエータに電力が供給されてからキャンバ角の調整が終了するまでの前記アクチュエータの動作時間を所定の動作時間内にするために必要な電力に対応する所定値より小さいかを判断する指標判断手段と、
その指標判断手段により前記指標が前記所定値より小さいと判断される場合に、前記アクチュエータの動作時間が短くなるように、前記アクチュエータに供給される電力を調整する電力調整手段とを備えていることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記電力調整手段は、前記指標判断手段により前記指標が前記所定値より小さいと判断される場合に、前記所定の動作時間内となる範囲内で、前記アクチュエータに供給される電力を大きくするように調整することを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記所定値は、セットアップ時に設定される値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記指標判断手段により前記指標が前記所定値以上であると判断される場合に、前記アクチュエータに供給される電力を調整せずに、前記アクチュエータに所定量の電力を供給して前記アクチュエータを駆動させるアクチュエータ駆動手段を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記指標判断手段により前記指標が前記所定値以上であると判断される場合に、前記アクチュエータに供給される電力を大きくするように調整する動作時間短縮手段を備え、
その動作時間短縮手段は、前記アクチュエータに供給される電力が、前記キャンバ角調整装置により定められる許容量以下となるように調整することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記キャンバ角調整装置は、前記アクチュエータ及び前記車輪に連係されると共に、前記アクチュエータに連動して前記車輪のキャンバ角を調整する連係部材を備え、その連係部材は前記車体と前記車輪との間に配設されるものであり、
前記電力調整手段は、前記キャンバ角調整手段により前記車輪のキャンバ角の絶対値を大きくするように調整される場合に、前記アクチュエータに供給される電力を調整することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは直流モータにより構成されるものであり、
前記指標取得手段は前記直流モータに流れる電流を取得し、前記指標判断手段は前記直流モータに流れる電流が所定の電流より小さいかを判断することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−214086(P2012−214086A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79669(P2011−79669)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】