説明

車両用外板部材

【課題】所定の強度を維持しつつ、優れた軽量性、衝撃吸収性、吸音性および易解体性(リサイクル性)を有する車両用外板部材を提供する。
【解決手段】嵩比重が0.1以上0.8以下の多孔質プラスチックからなるシート部材10を備えた車両用外板部材8とする。シート部材と、接着樹脂層と、金属板または繊維強化プラスチック板とをこの順で積層する。シート部材と、カーボンその他の繊維からなる繊維層とを交互に積層して接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や鉄道車両等の各種車両に使用可能な車両用外板部材に関し、特に軽量性、衝撃吸収性、吸音性および易解体性(リサイクル性)に優れた車両用外板部材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車や鉄道車両等の各種車両の外板部材として、鋼板やアルミニウム等からなる薄板や、FRP(繊維強化プラスチック)からなるものが使用されている。これらの車両用外板部材、特に自動車の外板部材においては、衝突時における安全性を高めることが求められており、衝突等の衝撃的な外力が加わった際に、事故に巻き込まれた歩行者や乗員等の安全を確保するために、高い衝撃吸収機能が求められている。
【0003】
上記要求を満たすため、鋼板やアルミニウム等の薄板を外板部材として使用している場合には、衝突した際の衝撃を車体変形、すなわち外板部材の変形によって吸収し、衝撃による人体へのダメージを緩和するようにしている。自動車のボンネットのように、車両先端部は、車両の進行方向からの大きな衝撃を吸収して、歩行者や乗務員を保護する必要があるために、特に高い衝撃吸収特性が求められている。
【0004】
このような車両外板部材に加わる衝撃を吸収する手段として、上述のような外板部材の変形による衝撃吸収機能に加えて、外板部材の内側に衝撃吸収材と吸音材とを重ねて貼り合わせた衝撃吸収吸音材が提案されている(特許文献1参照)。また、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる車両外装部材の衝撃吸収材も提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−315443号公報
【特許文献2】特開2002−096703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の衝撃吸収吸音材は、外板部材の内側に吸音材とハニカム状の衝撃吸収材を積層するという2種類の機能部材を重ね合わせた構造であるため、衝撃吸収力等は優れているが、製造および加工が煩雑である。さらに、特許文献1の衝撃吸収吸音材は、厚さが衝撃吸収材の厚さだけでも15mm〜25mmと相当厚いので、車体の内部空間における専有面積が大きくなってしまうのみならず、重量も増えてしまう。また、特許文献2に記載の衝撃吸収材も、基本的には外装部材の内側に貼り付けるものである。
【0007】
上述のように、従来技術による衝撃吸収材は、発泡体を基本的に衝撃の吸収を目的として車両用外板部材の内面側に貼り付けて使用するものであり、外板部材の外側に積層するものではなかった。また、車両用外板部材そのものが衝撃吸収機能を有するものではなかったため、衝撃吸収材は外板部材とは別個のものとして外板部材の内側に接着して使用されていた。
【0008】
さらに、社会的要請として、原油の高騰や地球環境の保護の観点から、エネルギー消費量を低減することも強く求められている。車両の外板部材の重量は、燃費に直接影響を及ぼすことから、車両の安全性を確保しつつ車両用外板部材を軽量化することが求められる。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、所定の強度を維持しつつ、優れた軽量性、衝撃吸収性、吸音性および易解体性(リサイクル性)を有する車両用外板部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、下記(1)〜(6)の車両用外板部材を提供する。
(1)嵩比重が0.1以上0.8以下の多孔質プラスチックからなるシート部材を備えることを特徴とする車両用外板部材。
(2)前記シート部材と、接着樹脂層と、金属板または繊維強化プラスチック板とをこの順で積層したことを特徴とする(1)の車両用外板部材。
(3)前記シート部材と、カーボンその他の繊維からなる繊維層とを交互に積層して接着したことを特徴とする(1)の車両用外板部材。
(4)前記シート部材は、金属板製または繊維強化プラスチック板製の補強用リブを備えることを特徴とする(1)〜(3)の車両用外板部材。
(5)前記補強用リブは、所定の人体損傷衝撃力以上の力を受けたときに予め定められた所定の位置で変形するか、予め定められた所定の位置で折れる脆弱部を有することを特徴とする(4)の車両用外板部材。
(6)前記シート部材に所望の顔料が添加されていることを特徴とする(1)〜(5)の車両用外板部材。
【0011】
(1)の車両用外板部材では、嵩比重が0.1以上0.8以下の多孔質プラスチックからなるシート部材を用いて外板部材が形成されるので、外板部材の強度を維持しつつ、軽量化することが可能となる。また、多孔質プラスチックは多くの気泡あるいは気孔を有しているので、衝撃吸収機能および吸音機能を備えている。これに対し、多孔質プラスチックの嵩比重が0.8を超えると、気泡あるいは気孔の全体に占める割合が減り、無垢のプラスチックと機械的な特性が変わらなくなることから、衝撃吸収機能や吸音機能に対する優位性がなくなってしまう。また、多孔質プラスチックの嵩比重が0.1を下回ると、シート部材としての強度が低下して車両に必要な強度を維持できないことから好ましくない。多孔質プラスチックの嵩比重のより好ましい値は0.3〜0.8、特に0.3〜0.4である。
【0012】
(2)の車両用外板部材によると、従来の外板部材である金属板または繊維強化プラスチック板に、接着樹脂層と、多孔質プラスチックからなるシート部材とを積層することにより、金属板または繊維強化プラスチック板を薄くすることができるため、軽量化が可能となる他、強度を増やすこと、衝撃吸収機能を付加することが可能となる。
【0013】
(3)の車両用外板部材は、多孔質プラスチック層と繊維層との積層構造であるため、強度が増す他、衝撃吸収機能を付与することが可能となり、また、軽量化することも可能となる。
【0014】
(4)の車両用外板部材は、車両用外板部材の強度を補完しつつ、衝撃吸収機能を維持することが可能となる。
【0015】
(5)の車両用外板部材は、補強用リブの選択の自由度を増加させつつ、人体の安全をより確実に確保することが可能となる。また、衝撃を受けたときの変形部位を指定することが可能となり、衝撃吸収機能の制御や、変形形状を規定することが可能となるため、変形による搭乗者等への危険を回避する等の設計が容易となる。
【0016】
(6)の車両用外板部材では、多孔質プラスチックは、外表面が平滑であるため、外表面の塗装が不要となり、塗装コストの削減を図ることや、軽量化、環境保全等に資することが可能となる。
【0017】
本明細書において、車両用外板部材とは、自動車等の車両のボンネット、ドア等の外装部品を構成するための薄板部材のみならず、該薄板部材を各種材料の層(シート)を複数積層して形成する場合には、これらの各層を形成する部材をも含む概念として使用する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両の外側を形成する車両外板部材を、嵩比重が0.1以上0.8以下の多孔質プラスチックからなるシート部材を用いて形成することにより、車体の軽量化を可能とし、かつ、車両外板部材に衝突時における衝撃吸収機能と吸音機能を付与した。また、金属板または繊維強化プラスチック板と多孔質プラスチックからなるシート部材とを易解体性接着剤で接着した場合には、外板部材のリサイクル性を高めることができる。さらに、多孔質プラスチックに所望の顔料を添加することにより、塗装を不要とすることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。ここでは一例として、図4に概念図を示すような自動車のボンネットを想定して説明する。なお、各実施形態の説明において同様の部位には同一の符号を付すこととする。また、以下の説明では、代表的な例として自動車の外板部材について説明するが、本発明の車両用外板部材は、鉄道等のその他の車両にも使用可能である。その場合には、求められる強度に応じて、厚さや補強部材等を適宜変形して使用することができる。
【0020】
(第1実施形態)
図1に本発明に係る車両用外板部材の第1実施形態を示す。第1実施形態の車両用外板部材8は、嵩比重が0.1以上0.8以下の多孔質プラスチックからなるシート部材(以下、「多孔質プラスチックシート部材」と称する)10を備えている。図1(a)は、第1実施形態の車両用外板部材を一枚のシート部材として示している。また、図1(b)に、そのシート部材の一部断面を拡大して模式的に示している。図中、Tは多孔質プラスチックシート部材10の厚さを示している。多孔質プラスチックシート部材10の厚さTは、1〜5mm、特に2〜4mmとすることが好ましい。
【0021】
多孔質プラスチックシート部材10は、内部に空孔を多数有するプラスチック多孔質体であり、気泡核剤や不活性ガスにより発泡させた連続気泡または独立気泡、あるいはシートを一軸延伸または二軸延伸等により得られるものであり、限定されるものではない。また、発泡プラスチックは多くの気泡を有しているので、衝撃吸収機能および吸音機能も備えている。
【0022】
多孔質プラスチックシート部材10が発泡シートの場合、嵩比重は、求められる特性に応じて発泡倍率でコントロールすることができる。発泡倍率としては、1.2〜10倍程度が好ましい。さらに好ましくは1.5〜5倍、中でも2〜4倍が好ましい。特に強度をより重視する場合は発泡倍率を低く、軽量化を重視する場合には発泡倍率を高くとることが好ましい。発泡倍率が10倍を超えると、強度が弱くなるため好ましくない。また、発泡倍率が1.2倍より低いと、軽量効果が小さくなる。発泡倍率とは、発泡前の樹脂の比重ρβと発泡体の比重ρとの比(ρβ/ρ)で表される。よって、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂をベースとして微細発泡させた場合、PET樹脂の比重は1.34g/cm程度であるため、4倍発泡させた微細発泡体の比重(嵩比重)は0.335g/cm程度となる。多孔質プラスチックシート部材10は、気泡を有するため、材料本来の強度を維持しつつ軽量化することが可能となる。また、多数の気泡を有しており、衝撃力を受けた際に気泡が座屈することにより衝撃を吸収するため、人に衝突した場合などの衝撃吸収力に優れている。
【0023】
本発明では、車両用外板部材を形成する多孔質プラスチックシート部材10として、細かい気泡の微細発泡プラスチックを用いることにより、表面平滑性を得ることができるので、外板部材の表面材料として好適に使用することが可能となる。さらに、多孔質プラスチックシート部材10を外板部材の表面に露出する構成とする場合、プラスチック材料に顔料を添加することで、塗装がなくともメタリック調に仕上げることが可能となる。このように塗装が不要となることにより、塗装コストが不要となる他、環境保全にも資することができる。
【0024】
多孔質プラスチックシート部材10に用いる樹脂としては、コストや信頼性からPET樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)やポリカーボネート(PC)樹脂が好適である。その他、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレンブロック共重合体、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール(POM)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等の各種樹脂も適用でき、車の外装に使われることを勘案して材料を選定することができる。
【0025】
図1(a)には、車両用外板部材8を補強するための補強リブ15を例示している。補強リブ15は、ボンネットその他の広い平面が連続する部分等のように、一定の形状を保つために補強が必要な位置に適宜設けることができる。補強リブ15は、金属または繊維強化プラスチックや、その他の強度の高い材料により形成することができる。しかし、補強リブ15も、人体安全の観点から、人体を損傷する衝撃より小さい衝撃力により、変形または折れるような材料で構成されることが好ましい。したがって、図1(a)に示すように、人体を損傷する衝撃より小さい衝撃力により折れ曲がりまたは破損するような脆弱部16を複数設けることが好ましい。
【0026】
また、発泡等の多孔質プラスチックを車両の外表面に使用することにより、塗装を施さなくともメタリック調に仕上げることも可能であり、この場合拡散反射が主であるので、ギラギラ感がない。塗装が不要となることにより、塗装費用コストが不要となるほか、塗料が無くなるため、さらに軽量化が可能となり、また、塗装が無いことによる環境保全性、およびリサイクルによる再利用がし易くなるという利点も有する。なお、車体の色は、プラスチック材料に顔料を添加することにより、所望の色を得ることができる。
【0027】
次に、本発明で用いる多孔質プラスチックシート部材10の製造方法の1例として、微細発泡プラスチックの製造方法について説明する。本発明で用いる微細発泡プラスチックは、例えば、樹脂シートとセパレータとを重ねて巻くことによりロールを形成し、該ロールを加圧不活性ガス雰囲気中に保持して樹脂シートに不活性ガスを含有させる工程(以下、第1工程という)と、不活性ガスを含有させた樹脂シートを常圧下で加熱して発泡させる工程(以下、第2工程という)とを具備する製造方法により製造することができる。
【0028】
以下、上述した製造方法をより詳細に説明する。第1工程では、まず、樹脂シートとセパレータとを重ね合わせて巻くことによりロールを形成する。樹脂シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリカーボネートからなるもの、またはこれらの樹脂をベースとして他のポリマーをブレンドした各種のポリマーアロイからなるものなどが挙げられる。樹脂シートには、樹脂本来の特性を損なわない範囲で、結晶化核剤、結晶化促進剤、気泡化核剤、抗酸化剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、顔料、染料、滑剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0029】
第1工程においては、以上のようにして形成されたロールを圧力容器に入れ、加圧不活性ガス雰囲気中に保持して樹脂シートに発泡剤として不活性ガスを含有させる。発泡剤として用いられる不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどが挙げられる。これらのうち、樹脂シートにおける含有量が多くなる二酸化炭素が好ましい。不活性ガスの浸透条件は、圧力が30kg/cm以上、好ましくは50kg/cm以上である。
【0030】
第2工程においては、第1工程において不活性ガスを含有させた樹脂シートを、常圧下でその樹脂の軟化温度以上に加熱することにより発泡させる。第2工程における加熱手段としては、熱風循環式発泡炉、オイルバス、溶融塩バスなどが挙げられる。
【0031】
より具体的には、例えば圧力容器から取り出したロールの樹脂シートとセパレータとを分離させながら、樹脂シートだけを熱風循環式発泡炉中を通過させる方法が用いられる。その後、炉から出た発泡シートを直ちに成形ロールで平らに成形する。さらに、これを冷却することにより所望の発泡シートを得る。
【0032】
以上のように、前記製造方法では、微細な気泡を含有する発泡体を製造する方法として、例えばポリエチレンテレフタレートのシートに加圧下で不活性ガスを含有させ、そのシートに掛かっている圧力を開放してガスを過飽和状態にした後、ガラス転移点以上に加熱することにより気泡を成長させ、その後冷却することにより気泡を固定するものである。
【0033】
(第2実施形態)
本発明で用いる多孔質プラスチックシート部材10の製造方法の1例として、押出発泡プラスチックの製造方法について説明する。本発明において用いられるポリプロピレン、あるいは、エチレン−プロピレンブロックまたはランダム共重合体のエチレン含有量は5〜20重量%が好ましい。エチレン含有量が20重量%を越えると得られる発泡体の剛性が劣る傾向にある。エチレン含有量がこの範囲内であるエチレン−プロピレン共重合体を用いることによって、均一な気泡、高独立気泡率、高発泡倍率の発泡体であって、耐衝撃性に優れた発泡体を得ることができる。
【0034】
本発明のエチレン−プロピレンブロック共重合体は、メルトフローレート(以下MFRとする)が0.1〜10g/10minのものが用いられる。なお、本発明におけるMFRは230℃、0.2MPaで測定した値である。
【0035】
また、MFR0.1〜2g/10min、好ましくは0.1〜1g/10minのエチレン−プロピレンブロック共重合体と、MFR5〜15g/10min、好ましくは7〜10g/10minのエチレン−プロピレンブロックまたはランダム共重合体とからなるエチレン−プロピレン共重合体混合物が用いられる。特に、MFR5〜15g/10minのエチレン−プロピレン共重合体は、ブロック共重合体を選択すると剛性、耐衝撃性の点でより優れた発泡体となる。
【0036】
エチレン−プロピレン共重合体混合物は、それぞれ前記の範囲のMFRを有する、エチレン−プロピレンブロック共重合体30〜70重量%とエチレン−プロピレンブロックまたはランダム共重合体70〜30重量%とからなる。配合比を特に30〜50重量%と70〜50重量%とすると、押出加工時の加工性に優れ、かつ得られる発泡体の表面が平滑で、気泡径が均一となる。
【0037】
本発明の製造方法に用いられるエチレン−プロピレン共重合体は、密度0.93g/cm以上0.94g/cm未満、MFR0.1〜2g/10minのものが好ましい。密度が上記の範囲内である場合には、押出加工時の加工性に優れ、かつ得られる発泡体が剛性に優れたものとなる。
【0038】
なお、本発明における樹脂組成物のメルトテンションは、JIS K 7121により測定した最高融解ピーク温度+10℃に樹脂組成物の温度を保ち、キャピラリーレオメーターに取り付けられたダイス(直径2mm、長さ8mm)から速度10mm/minで樹脂組成物を押し出し、プーリーを介して速度4m/minで安定に引き取ったときに、プーリーに取り付けられたロードセルによって検出された張力の測定値とする(東洋精機(株)製、キャピログラフにより測定)。
【0039】
本発明で使用される発泡剤としては、加熱により分解し気体を発生する熱分解型、例えば、アゾジカルボンアミド、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、などがあげられ、場合によっては、亜鉛華、ステアリン酸亜鉛などの発泡助剤により分解温度を適宜調整することができる。
【0040】
また、押出機のシリンダー途中などからガスを圧入し発泡させてもよい、発泡剤として用いるガスは、窒素ガス、炭酸ガス、ブタン、ペンタン、プロパンなどが挙げられる。熱分解型発泡剤の配合量、ガス注入量は、所望の発泡倍率に応じて適宜調整する。
【0041】
本発明における樹脂組成物には、さらに、より気泡を均一微細にするためには、タルク、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸などを気泡核剤として添加することが望ましい。また、必要に応じて各種添加剤として、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、導電性付与剤、着色剤を適量配合してもよい。
【0042】
(第3実施形態)
図2に本発明に係る車両用外板部材の第3実施形態を示す。第1実施形態、あるいは第2実施形態の車両用外板部材40は、嵩比重が0.1以上0.8以下の前記多孔質プラスチックシート部材10と、接着樹脂層20と、金属(鋼、アルミニウム等)または繊維強化プラスチックからなる薄板部材30とをこの順で積層したものである。
【0043】
第3実施形態では、薄板部材30の厚さを従来よりも薄くすることが可能となる。従来、外板部材として鋼板を使用する場合、0.8mm程度の厚さのものが使用されているが、図2のような構成とすることにより、0.4mm程度の鋼板を薄板部材30とすることも可能となる。また、このように、薄板部材30を積層する場合には、多孔質プラスチックシート部材10の厚さも、第1実施形態のような単体の場合よりも薄くすることができる。多孔質プラスチックシート部材10の厚さをどの程度とするかは、求められる強度と、使用される薄板部材30の材料や厚さ等に応じて決められる。
【0044】
第3実施形態のように、薄板部材30と多孔質プラスチックシート部材10とを樹脂層20により接着して積層する構成の場合には、薄板部材30と多孔質プラスチックシート部材20とを全面接着せずに部分的に接着して、または両者の接着強度を低くして、所定値以上の衝撃を受けたときに両者が部分的に剥がれるようにして衝撃を吸収し易くする構成とすることも可能である。
【0045】
(第4実施形態)
図3に本発明に係る車両用外板部材の第4実施形態を示す。図3(a)は、第4実施形態に係る車両用外板部材の部分拡大断面図であり、図3(b)は、第4実施形態に係る車両用外板部材の分解斜視図である。
【0046】
第4実施形態の車両用外板部材50は、嵩比重が0.1以上0.8以下の多孔質プラスチックシート部材10と、ガラス繊維、カーボン繊維等の繊維により形成された薄い繊維層60とを交互に積層して接着したものである。
【0047】
積層する各繊維層60は、それぞれ繊維の向きを一方向に揃えた状態で配置した薄層である。繊維層を積層する場合、上下の繊維層60、60は、両者の間に多孔質プラスチックシート部材10を挟んだ状態で、繊維層60、60の繊維の向きが交わるような方向(図4(b)では直交する方向)に積層され、接着される。このように、繊維層60、60をクロスして積層し接着することにより、車両用外板部材50の強度が各段に増す。また、各多孔質プラスチックシート部材10は、気泡を多数有するので、衝撃吸収機能、吸音機能、断熱機能を備えている。図4においては、繊維層を2枚、多孔質プラスチックシート部材10を3枚積層する例を示したが、これより多い枚数積層してもよく、より少ない枚数積層してもよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものでない。まず、実施例における測定項目について説明する。
(嵩比重)
水中置換法により測定した。
(平均気泡径)
発泡シートの断面のSEM写真を撮影し、一定断面積内に含まれる気泡の径を測定して平均化することにより求めた。
(発泡倍率)
発泡シートの比重(ρf)を水中置換法により測定し、発泡前の樹脂の比重(ρs)との比ρs/ρfとして算出した。
【0049】
(実施例1)
550mm幅×60m長さ×4mm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)シートのロール(ユニチカ(株)製)と、セパレータとして550mm幅×60m長さ×160μm厚、目付量55g/mのオレフィン系不織布のロール(FT300グレード、日本バイリーン(株)製)とを用意した。両者を重ねて、PETシートの表面同士が接触する部分がないように巻いて新たにロールを作製した。このロールを圧力容器内部にて60kg/cmの炭酸ガスを40時間浸透させ、ロールを高圧容器から取出した。このとき、PETシート中のガス含有量は6.3重量%であった。また、ガスを含有するPETシートの結晶化度を示差走査型熱量分析計(DSC)による測定から求めたところ33%であった。次に、圧力容器からロールを取り出し、オレフィン系不織布を取り除きながらPETシートだけを240℃に設定した熱風循環式発泡炉に発泡時間が1分になるように連続的に供給して発泡させた。得られた発泡シートの嵩比重は0.4で発泡倍率は3.5倍であり、この発泡プラスチックシートを真空式成型機により所望の形状(図4参照)に成形し、車両用外板部材を得た。
【0050】
(実施例2)
実施例1で示した製法にて得られた嵩比重0.4の発泡シートの片面にホットメルト系接着樹脂層を設け、この上に金属板を積層し、車両用外板部材を得た。
【0051】
(実施例3)
実施例1で示した製法にて得られた嵩比重0.4の発泡シートの片面にホットメルト系接着樹脂層を設け、この上に繊維強化プラスチック板を積層し、車両用外板部材を得た。
【0052】
(実施例4)
実施例1で示した製法にて得られた嵩比重0.4の発泡シートの片面にホットメルト系接着樹脂層を設け、この上にカーボン繊維からなる繊維層を接着し、車両用外板部材を得た。
【0053】
(実施例5)
実施例1で示した製法にて得られた嵩比重0.4の発泡シートの片面に繊維強化プラスチック製の補強用リブを備え、車両用外板部材を得た。
【0054】
(実施例6)
ポリプロピレン樹脂を押出機(φ90mm)を用いて溶融混練し、嵩比重0.8、発泡体厚さ5mmとなるように、押出機途中より炭酸ガスを圧入し、押出機先端に取り付けられた幅1000mmのTダイより押出樹脂温度193〜195℃または164〜166℃で押出発泡した後、金属ロールにより冷却、成形して発泡体を得た。得られた発泡プラスチックシートを真空式成型機により所望の形状(図4参照)に成形し、車両用外板部材を得た。
【0055】
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂を押出機(φ90mm)を用いて溶融混練し、嵩比重0.9、発泡体厚さ5mmとなるように、押出機途中より炭酸ガスを圧入し、押出機先端に取り付けられた幅1000mmのTダイより押出樹脂温度193〜195℃または164〜166℃で押出発泡した後、金属ロールにより冷却、成形して発泡体を得た。得られた発泡プラスチックシートを真空式成型機により所望の形状(図4参照)に成形し、車両用外板部材を得た。
【0056】
実施例1〜実施例5の車両用外板部材では、嵩比重が0.4の多孔質プラスチックからなるシート部材を用いて外板部材が形成され、実施例6の車両用外板部材では、嵩比重が0.8の多孔質プラスチックからなるシート部材を用いて外板部材が形成されるので、外板部材の強度を維持しつつ、軽量化することが可能となる。また、多孔質プラスチックは多くの気泡あるいは気孔を有しているので、衝撃吸収機能および吸音機能が認められる結果となった。これに対し、比較例1の多孔質プラスチックは嵩比重が0.9であり、その結果、気泡あるいは気孔の全体に占める割合が減り、無垢のプラスチックと機械的な特性が変わらなくなることから、衝撃吸収機能や吸音機能が認められない結果となってしまった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は、本発明に係る車両用外板部材の第1実施形態の一部の外観を示す斜視図であり、(b)は、本発明に係る車両用外板部材に使用する多孔質プラスチックシート部材の内部構造をイメージとして示す断面図である。
【図2】本発明に係る車両用外板部材の第3実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る車両用外板部材の第2実施形態を示すもので、(a)は部分拡大図、(b)は分解斜視図である。
【図4】本発明の車両用外板部材をボンネットに適用した例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
8 車両用外板部材
10 多孔質プラスチックシート部材
11 気泡
15 補強リブ
16 脆弱部
20 樹脂層
30 薄板部材
40 車両用外板部材
60 繊維層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩比重が0.1以上0.8以下の多孔質プラスチックからなるシート部材を備えることを特徴とする車両用外板部材。
【請求項2】
前記シート部材と、接着樹脂層と、金属板または繊維強化プラスチック板とをこの順で積層したことを特徴とする請求項1に記載の車両用外板部材。
【請求項3】
前記シート部材と、カーボンその他の繊維からなる繊維層とを交互に積層して接着したことを特徴とする請求項1に記載の車両用外板部材。
【請求項4】
前記シート部材は、金属製または繊維強化プラスチック製の補強用リブを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用外板部材。
【請求項5】
前記補強用リブは、所定の人体損傷衝撃力以上の力を受けたときに予め定められた所定の位置で変形するか、予め定められた所定の位置で折れる脆弱部を有することを特徴とする請求項4に記載の車両用外板部材。
【請求項6】
前記シート部材に所望の顔料が添加されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用外板部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−23612(P2010−23612A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185998(P2008−185998)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】