説明

車両用操舵装置

【課題】三相ブラシレスモータの駆動回路内の1つのスイッチング素子が短絡故障した場合に、短絡故障したスイッチング素子を特定することが可能となる車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】6つのFET31のうちの1つが短絡故障した場合には、制御可能領域特定部41は、電動モータ18の駆動を停止させた後、短絡故障が発生しているFETを特定するための処理を行なう。つまり、制御可能領域特定部41は、まず、各相の相電圧に基づいて、短絡故障が発生しているFETの上下段の位置(ハイサイドまたはローサイド)を特定する。次に、制御可能領域特定部41は、特定された上下段位置と、U相、V相およびW相の相電流のうちの2つの相電流とに基づいて、電圧短絡故障が発生しているFET31の相を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三相ブラシレスモータを駆動するためのモータ制御装置を備えた車両用操舵装置に関する。車両用操舵装置の一例は、電動パワーステアリング装置である。三相ブラシレスモータは、車両の舵取り機構に駆動力を付与する駆動源として用いられる。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置に使用されているブラシレスモータの駆動回路は、FET(Field Effect Transistor)などのスイッチング素子を含んでいる。スイッチング素子に故障が発生すると、ステアリングホイールを操作するときにブラシレスモータが負荷となり、操舵が重くなるおそれがある。このような問題に対処するために、ブラシレスモータと駆動回路との結線にリレーが挿入されている。たとえば、三相ブラシレスモータの場合には、二相のモータ結線にそれぞれリレーを挿入し、無制御時およびスイッチング素子の故障時には、それらのリレーをオフするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4484320号公報
【特許文献2】特開2008-168728号公報
【特許文献3】特公昭57-46087号公報
【特許文献4】特開平5-137380号公報
【特許文献5】特許第3854190号公報
【特許文献6】特許第3839142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、三相ブラシレスモータの駆動回路内の1つのスイッチング素子が短絡故障した場合に、短絡故障したスイッチング素子を特定することが可能となる車両用操舵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、ロータおよび界磁コイルを有する三相ブラシレスモータ(18)によって車両の舵取り機構に駆動力を付与する車両用操舵装置であって、2個のスイッチング素子(31UH,31UL;31VH,31VL;31WH,31WL)が直列に接続された直列回路を三相の各相に対応して3組備え、電源(33)と接地(34)との間においてそれらの直列回路が並列接続されており、各スイッチング素子に回生ダイオード(32UH,32UL,32VH,32VL,32WH,32WL)が並列に接続されている駆動回路(30)と、前記三相ブラシレスモータに流れる3つの相電流のうち、少なくとも2つの相電流を検出するための電流検出手段(51,51,51)と、前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、全てのスイッチング素子をオフさせるための制御を行なうことにより、前記三相ブラシレスモータの駆動を停止させる停止制御手段(41,42)と、前記停止制御手段によって前記三相ブラシレスモータの駆動が停止されている状態において、短絡故障したスイッチング素子がハイサイドのスイッチング素子であるか、ローサイドのスイッチング素子であるかを特定する第1特定手段(41)と、前記車両を操向させるための操舵部材が操作されたときに、前記電流検出手段によって検出される2つの相電流それぞれの符号と、前記第1特定手段による特定結果とに基づいて、短絡故障したスイッチング素子が三相のうちのいずれの相のスイッチング素子であるかを特定する第2特定手段(41)とを含む、車両用操舵装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0006】
この構成では、複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、三相ブラシレスモータの駆動が停止される。そして、第1特定手段によって、短絡故障したスイッチング素子がハイサイドのスイッチング素子であるか、ローサイドのスイッチング素子であるかが特定される。また、車両を操向させるための操舵部材が操作されたときに、第2特定手段によって、電流検出手段によって検出される2つの相電流それぞれの符号と、第1特定手段による特定結果とに基づいて、短絡故障したスイッチング素子が三相のうちのいずれの相のスイッチング素子であるかが特定される。これにより、短絡故障したスイッチング素子が特定される。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記三相ブラシレスモータに印加される各相電圧を検出する電圧検出手段(41)をさらに含み、前記第1特定手段は、前記電圧検出手段によって検出される各相電圧に基づいて、短絡故障したスイッチング素子がハイサイドのスイッチング素子であるか、ローサイドのスイッチング素子であるかを特定するものである、請求項1に記載の車両用操舵装置である。
【0008】
この構成では、電圧検出手段によって検出される各相電圧に基づいて、短絡故障したスイッチング素子がハイサイドのスイッチング素子であるか、ローサイドのスイッチング素子であるかが特定される。
請求項3記載の発明は、前記第1特定手段は、前記電圧検出手段によって検出される各相電圧のうちのいずれかの相電圧が、所定の第1の閾値以下であるという第1条件を満たしているか否かを判別し、前記第1条件を満たしている場合には短絡故障したスイッチング素子がローサイドのスイッチング素子であると判定する手段(S22,S23)と、前記電圧検出手段によって検出される各相電圧のうちのいずれかの相電圧が、前記第1の閾値より大きい所定の第2の閾値以上であるという第2条件を満たしているか否かを判別し、前記第2条件を満たしている場合には短絡故障したスイッチング素子がハイサイドのスイッチング素子であると判定する手段(S24,S25)とを含む、請求項2に記載の車両用操舵装置である。
【0009】
この構成では、電圧検出手段によって検出される各相電圧のうちのいずれかの相電圧が、所定の第1の閾値以下であるという第1条件を満たしているか否かが判別される。そして、第1条件を満たしている場合には短絡故障したスイッチング素子がローサイドのスイッチング素子であると判定される。また、電圧検出手段によって検出される各相電圧のうちのいずれかの相電圧が、第1の閾値より大きい所定の第2の閾値以上であるという第2条件を満たしているか否かが判別され、第2条件を満たしている場合には短絡故障したスイッチング素子がハイサイドのスイッチング素子であると判定される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施形態に係る車両用操舵装置としての電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】ECUの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】V相のローサイドFETが短絡故障した場合に負荷電流が流れる閉回路を示す電気回路図である。
【図4】V相のハイサイドFETが短絡故障した場合に負荷電流が流れる閉回路を示す電気回路図である。
【図5】U相のローサイドFETが短絡故障した場合に負荷電流が流れる閉回路を示す電気回路図である。
【図6】U相のハイサイドFETが短絡故障した場合に負荷電流が流れる閉回路を示す電気回路図である。
【図7】W相のローサイドFETが短絡故障した場合に負荷電流が流れる閉回路を示す電気回路図である。
【図8】W相のハイサイドFETが短絡故障した場合に負荷電流が流れる閉回路を示す電気回路図である。
【図9】短絡故障しているFET31の位置と各相電流I,I,Iの符号との関係を示す模式図である。
【図10】短絡故障が発生したときの制御部の動作を示すフローチャートである。
【図11】図10のステップS2の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図12】図11のステップS12で行なわれる一次判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】図11のステップS12で行なわれる二次判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】制御可能領域の特定方法を説明するための説明図である。
【図15】制御可能領域の特定方法を説明するための説明図である。
【図16A】制御可能領域の特定方法を説明するための説明図である。
【図16B】制御可能領域の特定方法を説明するための説明図である。
【図17】制御可能領域において120°矩形駆動方式によって電動モータを駆動するときの、各FETのオン・オフのタイミングを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用操舵装置としての電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0012】
ステアリングシャフト6は、直線状に延びている。また、ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。すなわち、ステアリングホイール2が回転されると、入力軸8および出力軸9は、互いに相対回転しつつ同一方向に回転するようになっている。
【0013】
ステアリングシャフト6の周囲には、舵角センサ24およびトルクセンサ11が設けられている。舵角センサ24は、ステアリングシャフト6の回転角である操舵角を検出する。トルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクを検出する。舵角センサ24によって検出される操舵角と、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクは、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)12に入力される。また、ECU12には、車速センサ23によって検出される車速が入力される。
【0014】
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端(図1では下端)には、ピニオン16が連結されている。
【0015】
ラック軸14は、自動車の左右方向(直進方向に直交する方向)に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の中間部には、ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることによって、転舵輪3を転舵することができる。
【0016】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸13の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。電動モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータからなる。減速機構19は、ウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。減速機構19は、伝達機構ハウジングとしてのギヤハウジング22内に収容されている。
【0017】
ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは同方向に回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォーム軸20によって回転駆動される。
電動モータ18によってウォーム軸20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸2を回転駆動することによって、転舵輪3が転舵されるようになっている。
【0018】
電動モータ18は、モータ制御装置としてのECU12によって制御される。ECU12は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルク、車速センサ23によって検出される車速等に基づいて、電動モータ18を制御する。具体的には、ECU12では、操舵トルクと目標アシスト量との関係を車速ごとに記憶したマップを用いて目標アシスト量を決定し、電動モータ18の発生するアシスト力が目標アシスト量に近づくように制御する。
【0019】
図2は、ECU12の電気的構成を示す概略図である。電動モータ18は、U相界磁コイル18U、V相界磁コイル18V、W相界磁コイル18Wを有するステータと、これらの界磁コイル18U,18V,18Wからの反発磁界を受ける永久磁石が固定されたロータとを備えている。
ECU12は、電動モータ18の駆動電力を生成する駆動回路30と、駆動回路30を制御するための制御部40とを備えている。制御部40は、CPUとこのCPUの動作プログラム等を記憶したメモリ(ROM,RAM,不揮発性メモリ等)とを含むマイクロコンピュータで構成されている。
【0020】
駆動回路30は、三相ブリッジインバータ回路である。この駆動回路30では、電動モータ18のU相に対応した一対のFET(電界効果トランジスタ)31UH,31ULの直列回路と、V相に対応した一対のFET31VH,31VLの直列回路と、W相に対応した一対のFET31WH,31WLの直列回路とが、直流電源33と接地34との間に並列に接続されている。また、各FET31UH〜31WLには、それぞれ回生ダイオード32UH〜32WLが、接地34側から直流電源33側に順方向電流が流れるような向きで、並列に接続されている。
【0021】
以下において、各相の一対のFETのうち、電源側のものを「ハイサイドFET」または「上段FET」といい、接地34側のものを「ローサイドFET」または「下段FET」という場合がある。また、6つのFET31UH〜31WLを総称するときには、「FET31」ということにする。同様に、6つの回生ダイオード32UH〜32WLを総称するときには、「回生ダイオード32」ということにする。
【0022】
電動モータ18のU相界磁コイル18Uは、U相に対応した一対のFET31UH,31ULの間の接続点に接続されている。電動モータ18のV相界磁コイル18Vは、V相に対応した一対のFET31VH,31VLの間の接続点に接続されている。電動モータ18のW相界磁コイル18Wは、W相に対応した一対のFET31WH,31WLの間の接続点に接続されている。各相の界磁コイル18U,18V,18Wと駆動回路30とを接続するための各接続線には、各相の相電流I,I,Iを検出するための電流センサ51,51,51が設けられている。電動モータ18側には、ロータの回転角(電気角)を検出するためのレゾルバ等の回転角センサ52が設けられている。
【0023】
制御部40は、メモリに格納された所定の動作プログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、制御可能領域特定部41と、正弦波駆動部42と、短絡故障時用駆動部43とが含まれる。
正弦波駆動部42は、各FET31に故障が発生していない通常時において、各FET31を制御することにより、電動モータ18を180°通電正弦波駆動するものである。正弦波駆動部42には、回転角センサ52によって検出されるロータ回転角(電気角)と、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクと、車速センサ23によって検出される車速と、電流センサ51,51,51によって検出される各相の相電流I,I,Iが入力される。
【0024】
正弦波駆動部42は、たとえば、操舵トルクと目標アシスト量(電流目標値)との関係を車速毎に記憶したマップと、トルクセンサ11によって検出された操舵トルクと、車速センサ23によって検出された車速とに基づいて、目標アシスト量を決定する。そして、正弦波駆動部42は、目標アシスト量と、電流センサ51,51,51によって検出される各相の相電流I,I,Iと、回転角センサ52によって検出されるロータ回転角(電気角)とに基づいて、電動モータ18の発生するアシスト力(トルク)が目標アシスト量に近づくように、各FET31をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
【0025】
制御可能領域特定部41は、電動モータ18の異常が検出されたときに、電動モータ18の駆動を停止させるための制御と、FET31に短絡故障が発生しているか否かの判定と、FET31に短絡故障が発生している場合に短絡故障が発生しているFET(FET位置)の特定と、制御可能領域の特定とを行う。制御可能領域とは、6つのFET31UH〜31WLのうちの1つのFETが短絡故障した場合に、電動モータ18を駆動することが可能なロータ回転角領域(電気角領域)をいう。制御可能領域特定部41には、図示しない相電圧検出回路によって検出される各相の相電圧V,V,Vと、電流センサ51,51,51によって検出される各相の相電流I,I,Iが入力される。
【0026】
6つのFET31UH〜31WLのうちの1つのFETが短絡故障した場合に、他のFETの全てがオフとなっている状態でロータが回転されたときには、電気角によっては、短絡故障したFETと、正常なFETに並列接続された回生ダイオードとによって形成される閉回路に負荷電流が流れる。この実施形態では、制御可能領域特定部41は、2つの正常相のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域を「可能領域」として特定し、2つの正常相のうちのいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域を「不定領域」として特定し、2つの正常相の両方に負荷電流が流れる電気角領域を「不可領域」として特定する。
【0027】
この実施形態では、「可能領域」と「不定領域」とを合わせた領域が、電動モータ18を駆動することが可能な制御可能領域として特定され、「不可領域」が電動モータ18を駆動することが不可能な制御不能領域として特定されることになる。なお、「可能領域」のみを電動モータ18を駆動することが可能な制御可能領域として特定し、「不定領域」と「不可領域」とを合わせた領域を電動モータ18を駆動することが不可能な制御不能領域として特定するようにしてもよい。
【0028】
図3に示すように、V相のローサイドFET31VLが短絡故障した場合に、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵によってロータが回転されたとする。そうすると、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって、符号61で示す第1の閉回路や符号62で示す第2の閉回路に矢印で示す方向に負荷電流が流れるようになる。
【0029】
第1の閉回路61は、短絡故障したV相のローサイドFET31VLと、正常相であるU相のローサイドFET31ULに並列接続された回生ダイオード32ULと、U相界磁コイル18Uと、V相界磁コイル18Vとを含んでいる。一方、第2の閉回路62は、短絡故障したV相のローサイドFET31VLと、正常相であるW相のローサイドFET31WLに並列接続された回生ダイオード32WLと、W相界磁コイル18Wと、V相界磁コイル18Vとを含んでいる。
【0030】
したがって、V相のローサイドFET31VLが短絡故障した場合には、「不可領域」、「可能領域」および「不定領域」は、次のようになる。すなわち、前記第1の閉回路61および前記第2の閉回路62の両方に負荷電流が流れる電気角領域が「不可領域」となる。一方、前記第1の閉回路61および前記第2の閉回路62のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域が「可能領域」となる。そして、前記第1の閉回路61および前記第2の閉回路62のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域が「不定領域」となる。
【0031】
V相のローサイドFET31VLが短絡故障している場合において、U相界磁コイル18Uを含む第1の閉回路61に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧Vが正常相であるU相の相電圧Vより高い(大きい)ことが必要となる。また、この場合、駆動回路30から電動モータ18に向かって流れる電流の極性を正とすると、正常相であるU相の相電流Iの極性は正となり、短絡故障相であるV相の相電流Iの極性は負となる。同様に、W相界磁コイル18Wを含む第2の閉回路62に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧Vが正常相であるW相の相電圧Vより高いことが必要となる。また、この場合、正常相であるW相の相電流Iの極性は正となり、短絡故障相であるV相の相電流Iの極性は負となる。
【0032】
図4に示すように、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障した場合において、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵操作によってロータが回転されたとする。そうすると、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって、符号63で示す第3の閉回路や符号64で示す第4の閉回路に矢印で示す方向に負荷電流が流れるようになる。
【0033】
第3の閉回路63は、短絡故障したV相のハイサイドFET31VHと、V相界磁コイル18Vと、U相界磁コイル18Uと、正常相であるU相のハイサイドFET31UHに並列接続された回生ダイオード32UHとを含んでいる。一方、第4の閉回路64は、短絡故障したV相のハイサイドFET31VHと、V相界磁コイル18Vと、W相界磁コイル18Wと、正常相であるW相のハイサイドFET31WHに並列接続された回生ダイオード32WHとを含んでいる。
【0034】
したがって、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障した場合には、「不可領域」、「可能領域」および「不定領域」は、次のようになる。すなわち、前記第3の閉回路63および前記第4の閉回路64の両方に負荷電流が流れる電気角領域が「不可領域」となる。一方、前記第3の閉回路63および前記第4の閉回路64のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域が「可能領域」となる。そして、前記第3の閉回路63および前記第4の閉回路64のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域が「不定領域」となる。
【0035】
V相のハイサイドFET31VHが短絡故障している場合において、U相界磁コイル18Uを含む第3の閉回路63に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧Vが正常相であるU相の相電圧Vより低い(小さい)ことが必要となる。また、この場合、正常相であるU相の相電流Iの極性は負となり、短絡故障相であるV相の相電流Iの極性は正となる。同様に、W相界磁コイル18Wを含む第4の閉回路64に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧Vが正常相であるW相の相電圧Vより低いことが必要となる。また、この場合、正常相であるW相の相電流Iの極性は負となり、短絡故障相であるV相の相電流Iの極性は正となる。
【0036】
図5に示すように、U相のローサイドFET31ULが短絡故障した場合に、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵によってロータが回転されたとする。そうすると、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって、符号65で示す第5の閉回路や符号66で示す第6の閉回路に矢印で示す方向に負荷電流が流れるようになる。
【0037】
第5の閉回路65は、短絡故障したU相のローサイドFET31ULと、正常相であるV相のローサイドFET31VLに並列接続された回生ダイオード32VLと、V相界磁コイル18Vと、U相界磁コイル18Uとを含んでいる。一方、第6の閉回路66は、短絡故障したU相のローサイドFET31ULと、正常相であるW相のローサイドFET31WLに並列接続された回生ダイオード32WLと、W相界磁コイル18Wと、U相界磁コイル18Uとを含んでいる。
【0038】
したがって、U相のローサイドFET31ULが短絡故障した場合には、「不可領域」、「可能領域」および「不定領域」は、次のようになる。すなわち、前記第5の閉回路65および前記第6の閉回路66の両方に負荷電流が流れる電気角領域が「不可領域」となる。一方、前記第5の閉回路65および前記第6の閉回路66のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域が「可能領域」となる。そして、前記第5の閉回路65および前記第6の閉回路66のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域が「不定領域」となる。
【0039】
U相のローサイドFET31ULが短絡故障している場合において、V相界磁コイル18Vを含む第5の閉回路65に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるU相の相電圧Vが正常相であるV相の相電圧Vより高い(大きい)ことが必要となる。また、この場合、正常相であるV相の相電流Iの極性は正となり、短絡故障相であるU相の相電流Iの極性は負となる。同様に、W相界磁コイル18Wを含む第6の閉回路66に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるU相の相電圧Vが正常相であるW相の相電圧Vより高いことが必要となる。また、この場合、正常相であるW相の相電流Iの極性は正となり、短絡故障相であるU相の相電流Iの極性は負となる。
【0040】
図6に示すように、U相のハイサイドFET31UHが短絡故障した場合において、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵操作によってロータが回転されたとする。そうすると、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって、符号67で示す第7の閉回路や符号68で示す第8の閉回路に矢印で示す方向に負荷電流が流れるようになる。
【0041】
第7の閉回路67は、短絡故障したU相のハイサイドFET31UHと、U相界磁コイル18Uと、V相界磁コイル18Vと、正常相であるV相のハイサイドFET31VHに並列接続された回生ダイオード32VHとを含んでいる。一方、第8の閉回路68は、短絡故障したU相のハイサイドFET31UHと、U相界磁コイル18Uと、W相界磁コイル18Wと、正常相であるW相のハイサイドFET31WHに並列接続された回生ダイオード32WHとを含んでいる。
【0042】
したがって、U相のハイサイドFET31UHが短絡故障した場合には、「不可領域」、「可能領域」および「不定領域」は、次のようになる。すなわち、前記第7の閉回路67および前記第8の閉回路68の両方に負荷電流が流れる電気角領域が「不可領域」となる。一方、前記第7の閉回路67および前記第8の閉回路68のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域が「可能領域」となる。そして、前記第7の閉回路67および前記第8の閉回路68のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域が「不定領域」となる。
【0043】
U相のハイサイドFET31UHが短絡故障している場合において、V相界磁コイル18Vを含む第7の閉回路67に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるU相の相電圧Vが正常相であるV相の相電圧Vより低い(小さい)ことが必要となる。また、この場合、正常相であるV相の相電流Iの極性は負となり、短絡故障相であるU相の相電流Iの極性は正となる。同様に、W相界磁コイル18Wを含む第8の閉回路68に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるU相の相電圧Vが正常相であるW相の相電圧Vより低いことが必要となる。また、この場合、正常相であるW相の相電流Iの極性は負となり、短絡故障相であるU相の相電流Iの極性は正となる。
【0044】
図7に示すように、W相のローサイドFET31WLが短絡故障した場合に、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵によってロータが回転されたとする。そうすると、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって、符号69で示す第9の閉回路や符号70で示す第10の閉回路に矢印で示す方向に負荷電流が流れるようになる。
【0045】
第9の閉回路69は、短絡故障したW相のローサイドFET31WLと、正常相であるU相のローサイドFET31ULに並列接続された回生ダイオード32ULと、U相界磁コイル18Uと、W相界磁コイル18Wとを含んでいる。一方、第10の閉回路70は、短絡故障したW相のローサイドFET31WLと、正常相であるV相のローサイドFET31VLに並列接続された回生ダイオード32VLと、V相界磁コイル18Vと、W相界磁コイル18Wとを含んでいる。
【0046】
したがって、W相のローサイドFET31WLが短絡故障した場合には、「不可領域」、「可能領域」および「不定領域」は、次のようになる。すなわち、前記第9の閉回路69および前記第10の閉回路70の両方に負荷電流が流れる電気角領域が「不可領域」となる。一方、前記第9の閉回路69および前記第10の閉回路70のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域が「可能領域」となる。そして、前記第9の閉回路69および前記第10の閉回路70のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域が「不定領域」となる。
【0047】
W相のローサイドFET31WLが短絡故障している場合において、U相界磁コイル18Uを含む第9の閉回路69に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるW相の相電圧Vが正常相であるU相の相電圧Vより高い(大きい)ことが必要となる。また、この場合、正常相であるU相の相電流Iの極性は正となり、短絡故障相であるW相の相電流Iの極性は負となる。同様に、V相界磁コイル18Vを含む第10の閉回路70に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるW相の相電圧Vが正常相であるV相の相電圧Vより高いことが必要となる。また、この場合、正常相であるV相の相電流Iの極性は正となり、短絡故障相であるW相の相電流Iの極性は負となる。
【0048】
図8に示すように、W相のハイサイドFET31WHが短絡故障した場合において、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵操作によってロータが回転されたとする。そうすると、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって、符号71で示す第11の閉回路や符号72で示す第12の閉回路に矢印で示す方向に負荷電流が流れるようになる。
【0049】
第11の閉回路71は、短絡故障したW相のハイサイドFET31WHと、W相界磁コイル18Wと、U相界磁コイル18Uと、正常相であるU相のハイサイドFET31UHに並列接続された回生ダイオード32UHとを含んでいる。一方、第12の閉回路72は、短絡故障したW相のハイサイドFET31WHと、W相界磁コイル18Wと、V相界磁コイル18Vと、正常相であるV相のハイサイドFET31VHに並列接続された回生ダイオード32VHとを含んでいる。
【0050】
したがって、W相のハイサイドFET31WHが短絡故障した場合には、「不可領域」、「可能領域」および「不定領域」は、次のようになる。すなわち、前記第11の閉回路71および前記第12の閉回路72の両方に負荷電流が流れる電気角領域が「不可領域」となる。一方、前記第11の閉回路71および前記第12の閉回路72のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域が「可能領域」となる。そして、前記第11の閉回路71および前記第12の閉回路72のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域が「不定領域」となる。
【0051】
W相のハイサイドFET31WHが短絡故障している場合において、U相界磁コイル18Uを含む第11の閉回路71に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるW相の相電圧Vが正常相であるU相の相電圧Vより低い(小さい)ことが必要となる。また、この場合、正常相であるU相の相電流Iの極性は負となり、短絡故障相であるW相の相電流Iの極性は正となる。同様に、V相界磁コイル18Vを含む第12の閉回路72に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるW相の相電圧Vが正常相であるV相の相電圧Vより低いことが必要となる。また、この場合、正常相であるV相の相電流Iの極性は負となり、短絡故障相であるW相の相電流Iの極性は正となる。
【0052】
以上のように、1つのFET31が短絡故障しており、他のFET31の全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵操作によってロータが回転された場合には、閉回路に負荷電流が流れる。この場合、短絡故障しているFET31の位置と各相電流I,I,Iの符号との関係は、図9に示すようになる。
短絡故障時用駆動部43(図2参照)は、制御可能領域特定部41によって特定された「可能領域」および「不定領域」において、電動モータ18を駆動するための処理を行なうものである。
【0053】
図10は、故障が発生したときの制御部40の動作を示すフローチャートである。
制御可能領域特定部41は、電動モータ18が正弦波駆動部42によって180°通電正弦波駆動されている場合に、電動モータ18に動作不良(故障)が発生したことを検出すると、正弦波駆動部42にモータ停止指令に与える(ステップS1)。正弦波駆動部42は、故障判定部41からのモータ停止指令を受信すると、180°通電正弦波駆動を中止して、全てのFET31がオフとなるように、各FET31を制御する。これにより、電動モータ18が停止する。
【0054】
この後、制御可能領域特定部41および短絡故障時用駆動部43は、短絡故障時のモータ制御処理を実行する(ステップS2)。短絡故障時のモータ制御処理は、電源オフ指令等の制御停止指令が与えられるまで(ステップS3:YES)、継続して行われる。
図11は、図10のステップS2の処理(短絡故障時のモータ制御処理)の手順を示すフローチャートである。
【0055】
短絡故障時のモータ制御処理においては、制御可能領域特定部41は、6つのFET31のうちの1つが短絡故障している場合において、短絡故障したFET(短絡故障したFETの位置)が既に特定されているか否かを判別する(ステップS11)。つまり、短絡故障したFETが、三相(U,V,W)のうちのいずれの相のFETであり、かつハイサイドまたはローサイドのうちのいずれのサイドのFETであるかが、既に特定されているか否かが判別される。短絡故障したFETが特定されていない場合には(ステップS11:NO)、制御可能領域特定部41は、短絡故障が発生しているか否か、および短絡故障が発生している場合には短絡故障が発生しているFETを特定するための処理を行なう(ステップS12)。
【0056】
具体的には、制御可能領域特定部41は、まず、一次判定処理を行なう。一次判定処理においては、制御可能領域特定部41は、各相の相電圧V,V,Vに基づいて、短絡故障が発生しているか否か、および短絡故障が発生している場合には短絡故障が発生しているFETがハイサイドFETであるか、ローサイドFETであるかを特定する。一次判定処理によって短絡故障が発生しているFET31がハイサイドFETであるかローサイドFETであるかを特定できた場合には、制御可能領域特定部41は、二次判定処理を行なう。二次判定処理においては、制御可能領域特定部41は、一次判定処理結果(短絡故障FETの上下段位置)と、U相、V相およびW相の3つの相電流I,I,Iのうちの2つの相電流に基づいて、短絡故障が発生しているFET31の相(短絡故障相)を特定する。これにより、短絡故障が発生している一つのFET31を特定することができる。一次判定処理および二次判定処理の詳細については、後述する。
【0057】
前記ステップS12の処理によって短絡故障が発生しているFETを特定できなかった場合(短絡故障が発生していないと判定した場合も含まれる)には(ステップS13:NO)、図10のステップS3に移行する。ステップS3で、制御終了指令が与えられていない場合には、ステップS11に戻る。なお、前記ステップS12の処理の開始時点において短絡故障が発生しているFET31がハイサイドFETであるかローサイドFETであるかが既に特定されている場合には、制御可能領域特定部41は、一次判定処理を行なうことなく、二次判定処理を開始する。
【0058】
前記ステップS12の処理によって短絡故障が発生しているFETを特定できた場合には(ステップS13:YES)、制御可能領域特定部41は、制御可能領域特定処理を行なう(ステップS14)。具体的には、制御可能領域特定部41は、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を特定する。制御可能領域特定処理の詳細については、後述する。
【0059】
制御可能領域特定処理によって「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」が特定されると、制御可能領域特定部41および短絡故障時用駆動部43は、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」のうち、現在の電気角が属する領域に対応したモータ制御を行なう(ステップS15)。具体的には、現在の電気角が「可能領域」または「不定領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は電動モータ18を駆動する。現在の電気角が「不可領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は電動モータ18を駆動しない。ステップS15の処理の詳細については、後述する。
【0060】
前記ステップS11において、短絡故障したFETが既に特定されていると判別された場合には(ステップS11:YES)、制御可能領域特定部41は、制御可能領域が既に特定されていると判断し、ステップS15に移行する。
前記ステップS12の短絡故障FETの特定処理(一次判定処理および二次判定処理)について説明する。
【0061】
図12は、一次判定処理の手順を示すフローチャートである。
制御可能領域特定部41は、各相の相電圧V,V,Vを取得する(ステップS21)。そして、いずれかの相電圧が所定のグランドレベルVG(たとえば0.5[V])以下であるという第1条件を満たしているか否かを判別する(ステップS22)。第1条件を満たしている場合には(ステップS22:YES)、制御可能領域特定部41は、いずれかの相のローサイドFETが短絡故障であると判定する(ステップS23)。
【0062】
第1条件を満たしていないと判別された場合には(ステップS22:NO)、制御可能領域特定部41は、いずれかの相電圧が所定の電源レベルVB(たとえば5.0[V])以上であるという第2条件を満たしているか否かを判別する(ステップS24)。第2条件を満たしている場合には(ステップS24:YES)、制御可能領域特定部41は、いずれかの相のハイサイドFETが短絡故障であると判定する(ステップS25)。
【0063】
第2条件を満たしていないと判別された場合には(ステップS24:NO)、つまり、第1条件および第2条件のいずれをも満たしていない場合には、制御可能領域特定部41は、短絡故障が発生していないと判別する(ステップS26)。
図13は、二次判定処理の手順を示すフローチャートである。
制御可能領域特定部41は、運転者によってステアリングホイール2が操作されるのを待つ(ステップS31)。運転者によってステアリングホイール2が操作されたか否かは、たとえば、回転角センサ52によって検出される電動モータ18のロータの回転角(またはロータの回転角から演算される操舵角)が変化しているか否かを監視することによって判別することができる。なお、運転者によってステアリングホイール2が操作されたか否かを、舵角センサ24によって検出される操舵角が変化しているか否かを監視することによって判別するようにしてもよい。
【0064】
運転者によってステアリングホイール2が操作されたことが検出されると(ステップS31:YES)、制御可能領域特定部41は、U相、V相およびW相の相電流I,I,Iのうちの2つの相電流を取得する(ステップS32)。この実施形態では、制御可能領域特定部41は、たとえば、U相とW相の相電流I,Iを取得するものとする。
この後、制御可能領域特定部41は、短絡故障が発生しているFETがハイサイドFETであると特定されているか、ローサイドFETであると特定されているかを判別する(ステップS33)。
【0065】
短絡故障が発生しているFETがハイサイドFETであると特定されている場合には、制御可能領域特定部41は、ステップS34に移行し、2つの相電流I,Iの符号の組み合わせに基づいて短絡故障相を特定する(ステップS34〜S37)。つまり、制御可能領域特定部41は、図9に示される短絡故障FETの位置と、2つの相電流の符号の組合せとの対応関係とに基づいて、短絡故障相を特定する。
【0066】
この場合、短絡故障が発生しているFETがハイサイドFETであるので、U相の相電流Iが正でありかつW相の相電流Iが負である場合には、制御可能領域特定部41は、短絡故障相がU相であると特定する(ステップS34,S35)。U相の相電流Iが負でありかつW相の相電流Iが負である場合には、制御可能領域特定部41は、短絡故障相がV相であると特定する(ステップS34,S36)。U相の相電流Iが負でありかつW相の相電流Iが正である場合には、制御可能領域特定部41は、短絡故障相がW相であると特定する(ステップS34,S37)。これにより、短絡故障が発生している一つのFET31を特定することができる。
【0067】
前記ステップS33において、短絡故障が発生しているFETがローサイドFETであると特定されている場合には、制御可能領域特定部41は、ステップS38に移行し、2つの相電流I,Iの符号の組み合わせに基づいて短絡故障相を特定する(ステップS38〜S41)。
この場合、短絡故障が発生しているFETがローサイドFETであるので、U相の相電流Iが負でありかつW相の相電流Iが正である場合には、制御可能領域特定部41は、短絡故障相がU相であると特定する(ステップS38,S39)。U相の相電流Iが正でありかつW相の相電流Iが正である場合には、制御可能領域特定部41は、短絡故障相がV相であると特定する(ステップS38,S40)。U相の相電流Iが正でありかつW相の相電流Iが負である場合には、制御可能領域特定部41は、短絡故障相がW相であると特定する(ステップS38,S41)。これにより、短絡故障が発生している一つのFET31を特定することができる。 前記ステップS14の制御可能領域特定処理について説明する。
【0068】
電動モータ18の回転方向には、正転方向(CW:clockwise)と逆転方向(CCW:counter clockwise)とがある。正転方向と逆転方向とでは、短絡故障が発生したFETが同じであっても各相の誘起電圧波形が異なるために制御可能領域が異なる。
電動モータ18の回転方向(CW,CCW)およびFET別に、各FETが短絡故障した場合に対応する「不可領域」、「可能領域」および「不定領域」を記憶したマップがあらかじめ作成されて、不揮発性メモリに格納されている。
【0069】
図14は、このようなマップの内容例を示している。図14において、CWおよびCCWは、FETに短絡故障が発生したときの電動モータ18の回転方向を表しており、CWは正転方向を、CCWは逆転方向を表している。U,V,W、上段および下段は、短絡故障したFETの位置を表している。つまり、U,V,Wは、短絡故障したFETに対応する相を表している。上段は、短絡故障したFETが上段FET(ハイサイドFET)であることを表し、下段は、短絡故障したFETが下段FET(ローサイドFET)であることを表している。このようなマップは、理論値または計測データに基づいて作成される。
【0070】
制御可能領域特定部41は、電動モータ18の回転方向と、短絡故障したFET31の位置と、前記マップとに基づいて、制御可能領域を特定する。電動モータ18の回転方向は、回転角センサ52によって検出される電気角の変化に基づいて特定することができる。たとえば、電気角が増加する方向に変化しているときには、電動モータ18の回転方向が正転方向(CW)であると特定され、電気角が減少している方向に変化しているときには、電動モータ18の回転方向が逆転方向(CCW)であると特定される。
【0071】
マップを、理論値に基づいて作成する場合について説明する。図15は、通常駆動時の各相の誘起電圧波形V,V,Vおよび電気角θの理論値(シミュレーション値)を示している。この例では、回転方向は、正転方向(CW)である。また、この例では、通常駆動時において、U相の誘起電圧波形が正から負へと変化する点が電気角θの0°として設定されている。
【0072】
通常駆動時の各相の誘起電圧の理論値V,V,Vは、振幅をEとすると、次式(1)で表される。
=E・sinθ
=E・sin(θ−(2/3)π)
=E・sin(θ+(2/3)π) …(1)
図16Aは、V相のローサイドFET31VLが短絡故障したと仮定した場合の、電気角θに対する各相の誘起電圧波形V’,V’,V’の理論値(シミュレーション値)を示している。この例では、電動モータ18の回転方向は、正転方向(CW)であると仮定している。V相のローサイドFET31VLが短絡故障したと仮定した場合の、各相の誘起電圧V’,V’,V’の理論値は、通常駆動時の各相の誘起電圧の理論値V,V,Vを用いて次式(2)で表される。
【0073】
’=V−V
’=0
’=V−V …(2)
図16Aに示されるような理論値に基づいて、V相のローサイドFET31VLが短絡故障した場合の制御可能領域が予め求められる。具体的には、正常相(U相,V相)の両方の誘起電圧V’,V’が、短絡故障相(V相)の誘起電圧V’(図16Aの例では0)より大きくなる電気角領域(この例では、150°〜270°)が「可能領域」として求められる。特に、「可能領域」のうち、U相の誘起電圧V’がW相の誘起電圧V’以上となる領域(この例では、210°〜270°)が「可能領域(U)」として求められ、W相の誘起電圧V’がU相の誘起電圧V’より大きくなる領域(この例では、150°〜210°)が「可能領域(W)」として求められる。また、正常相(U相,V相)の両方の誘起電圧V’,V’が、短絡故障相(V相)の誘起電圧V’以下となる電気角領域(この例では、330°〜90°)が「不可領域」として求められる。
【0074】
そして、「可能領域」と「不可領域」の中間の電気角領域(90°〜150°,270°〜330°)が「不定領域」として求められる。特に、「不定領域」のうち、U相の誘起電圧V’が短絡故障相(V相)の誘起電圧V’より大きくなる電気角領域(270°〜330°)が「不定領域(U)」として求められ、W相の誘起電圧V’が短絡故障相(V相)の誘起電圧V’より大きくなる電気角領域(90°〜150°)が「不定領域(W)」として求められる。
【0075】
図16Bは、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障したと仮定した場合の、電気角θに対する各相の誘起電圧波形V’,V’,V’の理論値(シミュレーション値)を示している。この例では、電動モータ18の回転方向は、正転方向(CW)であると仮定している。図16Bに示されるような理論値に基づいて、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障した場合の制御可能領域が予め求められる。
【0076】
具体的には、正常相(U相,V相)の両方の誘起電圧V’,V’が、短絡故障相(V相)の誘起電圧V’より小さくなる電気角領域(この例では、330°〜90°)が「可能領域」として求められる。特に、「可能領域」のうち、U相の誘起電圧V’がW相の誘起電圧V’以下となる領域(この例では、30°〜90°)が「可能領域(U)」として求められ、W相の誘起電圧V’がU相の誘起電圧V’より小さくなる領域(この例では、330°〜30°)が「可能領域(W)」として求められる。また、正常相(U相,V相)の両方の誘起電圧V’,V’が、短絡故障相(V相)の誘起電圧V’以上となる電気角領域(この例では、150°〜270°)が「不可領域」として求められる。
【0077】
「可能領域」と「不可領域」の中間の電気角領域(90°〜150°,270°〜330°)が「不定領域」として求められる。特に、「不定領域」のうち、U相の誘起電圧V’が短絡故障相(V相)の誘起電圧V’より小さくなる電気角領域(90°〜150°)が「不定領域(U)」として求められ、W相の誘起電圧V’が短絡故障相(V相)の誘起電圧V’より小さくなる電気角領域(270°〜330°)が「不定領域(W)」として求められる。
【0078】
同様にして、電動モータ18の回転方向が正転方向(CW)である場合において、U相のローサイドFET31ULが短絡故障した場合の各領域、U相のハイサイドFETUHが短絡故障した場合の各領域、W相のローサイドFETWLが短絡故障した場合の各領域およびW相のローサイドFETWLが短絡故障した場合の各領域が求められる。このようにして求められた各領域に基づいて、電動モータ18の回転方向が正転方向(CW)である場合のマップが予め作成される。また、同様な方法により、電動モータ18の回転方向が逆転方向(CCW)である場合のマップが予め作成される。これにより、図14に示すようなマップが得られる。
【0079】
次に、図11のステップS15のモータ制御処理について説明する。このモータ制御処理においては、制御可能領域特定部41は、まず、現在の電気角が属している領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)を判別する。そして、現在の電気角が属している領域に応じて、短絡故障時用駆動部43を制御する。
現在の電気角が「不可領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は電動モータ18を駆動しない。現在の電気角が「可能領域」に属している場合または「不定領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は、電動モータ18を駆動する。たとえば、現在の電気角が「可能領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は、120°矩形駆動方式、120°片側PWM駆動方式等によって、電動モータ18を駆動する。また、現在の電気角が「不定領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は、矩形波駆動方式、120°矩形駆動方式等によって、電動モータ18を駆動する。
【0080】
以下、現在の電気角が「可能領域」または「不定領域」に属している場合に、120°矩形駆動方式によって、電動モータ18を駆動する場合について説明する。
図17は、120°矩形駆動方式において各FET31がオン状態にされるタイミングを説明するための説明図である。図17には、通常時において電動モータ18を駆動した場合の電気角θに対する各相の誘起電圧波形V,V,Vが示されているとともに、通常時において電動モータ18を120°矩形駆動する場合の電気角θに対する各FET31のオン・オフのタイミングが示されている。図17では、電動モータ18の回転方向は正転方向であると仮定している。
【0081】
各FET31のオン・オフのタイミングを表す帯状のタイミング図のうち、上段はハイサイドFETに対するオン・オフのタイミングを表し、下段はローサイドFETに対するオン・オフのタイミングを表している。360゜の電気角範囲が、60°毎の6つの小領域に分割されている。そして、各小領域には、オン状態にされるFETに対応する相を表す文字(U,V,W)が記入されている。
【0082】
このタイミング図によれば、通常時に120°矩形駆動方式で電動モータ18を駆動する場合、各小領域とその小領域においてオンされるFET31との関係は、次のようになる。
330°〜 30°:V相のハイサイドFET31VH,W相のローサイドFET31WL
30°〜 90°:V相のハイサイドFET31VH,U相のローサイドFET31UL
90°〜150°:W相のハイサイドFET31WH,U相のローサイドFET31UL
150°〜210°:W相のハイサイドFET31WH,V相のローサイドFET31VL
210°〜270°:U相のハイサイドFET31UH,V相のローサイドFET31VL
270°〜330°:U相のハイサイドFET31UH,W相のローサイドFET31WL
6個のFET31のうちの1つに短絡故障が発生した場合には、短絡故障時用駆動部43は、現在の電気角が「可能領域」または「不定領域」にあるときには、前記タイミング図において現在の電気角に対してオン状態となるべき2つのFETをオンさせる。たとえば、V相のローサイドFET31VLが短絡故障した場合には、電動モータ18の回転方向が正転方向であるとすると、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」は、次のようになる。
【0083】
「可能領域(U)」:210°〜270°
「可能領域(W)」:150°〜210°
「不定領域(U)」:270°〜330°
「不定領域(W)」:90°〜150°
「不可領域」:330°〜90°
したがって、現在の電気角が「不可領域」である330°〜90°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は短絡故障したFET以外のFETの全てをオフ状態とする。この場合には、電動モータ18は駆動されない。
【0084】
現在の電気角が「不定領域(W)」である90°〜150°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図17のタイミング図に従って、W相のハイサイドFET31WHとU相のローサイドFET31ULとをオンさせる。この場合には、図2または図3を参照して、電源33からW相のハイサイドFET31WHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18W,18U,18V)を経由した後、U相のローサイドFET31ULおよびV相のローサイドFET(故障FET)31VLを介して接地34へと流れる。これにより、電動モータ18が駆動され、アシスト力が発生する。
【0085】
現在の電気角が「可能領域(W)」である150°〜210の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図17のタイミング図に従って、W相のハイサイドFET31WHとV相のローサイドFET(故障FET)31VLとをオンさせる。この場合には、電源33からW相のハイサイドFET31WHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18W,18V)を経由した後、V相のローサイドFET(故障FET)31VLを介して接地34へと流れる。これにより、電動モータ18が駆動され、アシスト力が発生する。
【0086】
現在の電気角が「可能領域(U)」である210°〜270°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図17のタイミング図に従って、U相のハイサイドFET31UHとV相のローサイドFET(故障FET)31VLとをオンさせる。この場合には、電源33からU相のハイサイドFET31UHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18U,18V)を経由した後、V相のローサイドFET(故障FET)31VLを介して接地34へと流れる。これにより、電動モータ18が駆動され、アシスト力が発生する。
【0087】
現在の電気角が「不定領域(U)」である270°〜330°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図17のタイミング図に従って、U相のハイサイドFET31UHとW相のローサイドFET31WLをオンさせる。この場合には、電源33からU相のハイサイドFET31UHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18U,18W,18V)を経由した後、W相のローサイドFET31WLおよびV相のローサイドFET(故障FET)31VLを介して接地34へと流れる。
【0088】
一方、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障した場合には、電動モータ18の回転方向が正転方向であるとすると、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」は、次のようになる。
「可能領域(W)」:330°〜30°
「可能領域(U)」:30°〜90°
「不定領域(U)」:90°〜150°
「不定領域(W)」:270°〜330°
「不可領域」:150°〜270°
したがって、現在の電気角が「可能領域(W)」である330°〜30°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図17のタイミング図に従って、V相のハイサイドFET(故障FET)31VHとW相のローサイドFET31WLとをオンさせる。この場合には、図2または図4を参照して、電源33からV相のハイサイドFET(故障FET)31VHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18V,18W)を経由した後、W相のローサイドFET31WLを介して接地34へと流れる。
【0089】
現在の電気角が「可能領域(U)」である30°〜90°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図17のタイミング図に従って、V相のハイサイドFET(故障FET)31VHとU相のローサイドFET31ULとをオンさせる。この場合には、電源33からV相のハイサイドFET(故障FET)31VHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18V,18U)を経由した後、W相のローサイドFET31ULを介して接地34へと流れる。
【0090】
現在の電気角が「不定領域(U)」である90°〜150°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図17のタイミング図に従って、W相のハイサイドFET31WHとU相のローサイドFET31ULとをオンさせる。この場合には、電源33からW相のハイサイドFET31WHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18W,18Uを経由した後、U相のローサイドFET31を介して接地34へと流れるとともに、電源33からV相のハイサイドFET(故障FET)31VHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18V,18U)を経由した後、U相のローサイドFET31を介して接地34へと流れる。
【0091】
現在の電気角が「不可領域」である150°〜270°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は短絡故障したFET以外のFETの全てをオフ状態とする。
現在の電気角が「不定領域(W)」である270°〜330°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図17のタイミング図に従って、U相のハイサイドFET31UHとW相のローサイドFET31WLとをオンさせる。この場合には、電源33からU相のハイサイドFET31UHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18U,18W)を経由した後、W相のローサイドFET31WLを介して接地34へと流れるとともに、電源33からV相のハイサイドFET(故障FET)31VHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18V,18W)を経由した後、W相のローサイドFET31WLを介して接地34へと流れる。
【0092】
上記実施の形態によれば、駆動回路30内の6つのFET31のうち、1つのFETに短絡故障が発生した場合に、短絡故障したFETを特定することが可能となる。
また、上記実施の形態によれば、駆動回路30内の6つのFET31のうち、1つのFETに短絡故障が発生した場合において、電動モータ18を駆動させることが可能な電気角領域(ロータ回転角領域)を、制御可能領域として特定できるようになる。これにより、現在の電気角が制御可能領域に属しているか否かを判定でき、現在の電気角が制御可能領域に属しているときに、電動モータ18を駆動させることができるようになる。この結果、1つのFETが゛短絡故障した場合にも、電動モータ18による操舵のアシストが可能となる。
【0093】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、二次判定処理において、制御可能領域特定部41は、U相とW相の相電流I,Iを用いて、短絡故障相を特定しているが、U相とW相の相電流I,Iの代わりに、U相とV相の相電流I,IまたはV相とW相の相電流I,Iを用いてもよい。
【0094】
なお、この発明は、電動パワーステアリング装置以外の用途に使用されている三相ブラシレスモータに対しても、適用することができる。
その他、この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0095】
18…電動モータ、30…駆動回路、31…FET、32…回生ダイオード、33…電源、34…接地、40…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよび界磁コイルを有する三相ブラシレスモータによって車両の舵取り機構に駆動力を付与する車両用操舵装置であって、
2個のスイッチング素子が直列に接続された直列回路を三相の各相に対応して3組備え、電源と接地との間においてそれらの直列回路が並列接続されており、各スイッチング素子に回生ダイオードが並列に接続されている駆動回路と、
前記三相ブラシレスモータに流れる3つの相電流のうち、少なくとも2つの相電流を検出するための電流検出手段と、
前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、全てのスイッチング素子をオフさせるための制御を行なうことにより、前記三相ブラシレスモータの駆動を停止させる停止制御手段と、
前記停止制御手段によって前記三相ブラシレスモータの駆動が停止されている状態において、短絡故障したスイッチング素子がハイサイドのスイッチング素子であるか、ローサイドのスイッチング素子であるかを特定する第1特定手段と、
前記車両を操向させるための操舵部材が操作されたときに、前記電流検出手段によって検出される2つの相電流それぞれの符号と、前記第1特定手段による特定結果とに基づいて、短絡故障したスイッチング素子が三相のうちのいずれの相のスイッチング素子であるかを特定する第2特定手段とを含む、車両用操舵装置。
【請求項2】
前記三相ブラシレスモータに印加される各相電圧を検出する電圧検出手段をさらに含み、
前記第1特定手段は、前記電圧検出手段によって検出される各相電圧に基づいて、短絡故障したスイッチング素子がハイサイドのスイッチング素子であるか、ローサイドのスイッチング素子であるかを特定するものである、請求項1に記載の車両用操舵装置。
【請求項3】
前記第1特定手段は、
前記電圧検出手段によって検出される各相電圧のうちのいずれかの相電圧が、所定の第1の閾値以下であるという第1条件を満たしているか否かを判別し、前記第1条件を満たしている場合には短絡故障したスイッチング素子がローサイドのスイッチング素子であると判定する手段と、
前記電圧検出手段によって検出される各相電圧のうちのいずれかの相電圧が、前記第1の閾値より大きい所定の第2の閾値以上であるという第2条件を満たしているか否かを判別し、前記第2条件を満たしている場合には短絡故障したスイッチング素子がハイサイドのスイッチング素子であると判定する手段とを含む、請求項2に記載の車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−81935(P2012−81935A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231941(P2010−231941)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】