説明

車両用経路計算装置

【課題】ユーザの走行経験をより効果的に経路計算に反映し、ユーザにとって違和感の少ない経路を探索することが可能な車両用経路計算装置を提供する。
【解決手段】車両が道路を走行した際に、各道路(各リンク)ごとに走行状況を示す走行状況データを外部メモリ9に記憶する。走行状況データが記憶された各リンクの走り易さを評価し、その評価結果に応じて、ユーザが走り易いと感じた評価される道路(リンク)のコストを下げ、逆に走りにくいと感じた道路(リンク)のコストを上げる。このようにして、走行状況データにより評価される走り易さを考慮して、リンクに対して付与するコストを決定する。このように決定されたリンクコスト及びノードコストが最小となる経路を探索することにより、ユーザが妥当と考える経路を探索することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用ナビゲーション装置に用いられ、所望の目的地までの経路を計算する車両用経路計算装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ナビゲーション装置は、一般的に経路計算機能を備えており、ユーザが目的地を設定することにより、その目的地までの最適な経路を計算する。具体的には、リンク長,道路種別,道路幅などの静的な情報を考慮して、個々の道路に対応するリンクにコストを付与し、さらに右左折、直進の種類に応じて、交差点に対応するノードにもコストを付与する。そして、ユーザが設定した目的地と現在地とを、最小のリンクコスト及びノードコストで接続する経路を最適経路として計算する。また、VICS等から各道路の渋滞情報を得た場合、この動的な情報を用いてリンクのコストを変化されることもある。このようにして目的地までの経路を計算することにより、目的地まで、最小時間や最短距離で到達可能な経路を得ることができる。
【0003】
さらに、特許文献1には、過去の走行履歴情報を利用して最短経路を探索・設定するナビゲーション装置が記載されている。この特許文献1のナビゲーション装置では、ノード及びリンク情報から、最短と予想される走行経路案をいくつか割り出す。そして、その走行経路案のリンク毎に、予想走行時間を算出する。さらに、予想走行時間を算出したリンクについて、走行履歴が記憶されているか否かを判定し、記憶されていれば、実走行時間を読み出す。実走行時間は予想走行時間と比較され、より短い方が選択されて、各走行経路案の全体の走行時間が計算される。そして、最も短い走行時間の走行経路案が最終的に選択される。
【特許文献1】特開2002−310696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1に記載のナビゲーション装置では、まず、ノード及びリンク情報から最短と予想される走行経路案をいくつか割り出す。その後、走行履歴情報を利用して各走行経路案の走行時間が計算される。このため、走行経路の決定に際して、走行履歴情報が効果的に利用されておらず、設定される経路にユーザが違和感を覚える場合があるとの問題があった。
【0005】
例えば、ユーザが、最短と予想される走行経路案の一部の道路及びその周辺の道路について走行経験があり、走行経路案の一部として示された道路よりも、その周辺の道路を利用したほうが短時間で走行できた場合など、提供された経路に違和感を覚えることが考えられる。この場合、ユーザは経路に従って走行しないことが多い。そして、ナビゲーション装置が自動再探索機能を備えている場合には、経路を逸脱するごとに頻繁に音声案内が変更されることになり、結果として、ユーザに不快感を与えるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、ユーザの走行経験をより効果的に経路計算に反映し、ユーザにとって違和感の少ない経路を探索することが可能な車両用経路計算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車両用経路計算装置は、
道路を複数のリンクによって示した道路地図データを記憶する道路地図データ記憶手段と、
少なくともリンクに対してコストを付与するとともに、そのコストの合計値が小さくなるように2つの地点間を結ぶ経路を探索する経路探索手段とを備えた車両用経路計算装置であって、
車両が道路を走行した際に、その道路に対応するリンクに関連付けて、実際の走行状況を示す走行状況データを記憶する記憶手段を備え、
経路探索手段は、記憶手段が記憶する走行状況データを考慮して、リンクに対して付与するコストを決定することを特徴とする。
【0008】
このように、請求項1に記載の車両用経路計算装置では、車両の実際の走行状況を示す走行状況データを記憶するとともに、その走行状況を考慮してリンクに対して付与するコストを決定する。このため、従来のナビゲーション装置のように、車両の走行履歴情報とは無関係に、ノード及びリンク情報から走行経路(案)が設定されてしまうことがなく、実際の走行経験が反映された経路が探索できる。つまり、実際に走行した時の状況を考慮して、その道路に対応するリンクのコストを決定するので、ユーザが走り易いと感じた道路のコストを下げ、逆に走りにくいと感じた道路のコストを上げることができ、これにより、ユーザにとって違和感の少ない経路を探索できる。
【0009】
請求項2に記載したように、経路探索手段は、道路種別ごとに、車両の走行状況に関する基準値を設定しておき、走行状況データとその基準値との比較結果に基づいて、リンクに対して付与するコストを増減することが好ましい。このように、車両の走行状況に関する基準値を設定し、実際の走行状況を示す走行状況データと比較することにより、ユーザが走り易いと感じたか否かを判別できる。例えば車両の平均走行速度が基準値よりも高い場合には、その道路をスムーズに走行できたとみなすことができ、この場合、ユーザは、その道路を走りやすい道路と感じることが多い。ただし、車両の走行状況は、道路種別が異なると、大きく変化する。例えば、高速道路と一般道路、一般道路においても国道と市街地道路では、車両の走行状況は大きく異なるのが通常である。このため、上述した基準値は、道路種別ごとに分けて設定することが好ましい。
【0010】
走行状況データは、請求項3に記載のように、平均速度、最高速度、停止回数、走行所要時間、平均燃費の少なくとも1つを含むことが好ましい。これらのパラメータは、いずれも、走行経験がある道路について、ユーザがいずれの道路を走行するのが妥当かを判断するために、考慮することが多い項目である。従って、これらのパラメータのいずれかを走行状況データとして用いることにより、ユーザが妥当と感じる経路を探索する可能性を高めることができる。
【0011】
請求項4に記載したように、車両が同じ道路を複数回走行した場合、記憶手段は、走行状況データを平均化して記憶することが好ましい。これにより、同じ道路を複数回走行する場合に、その複数回の走行状況をすべて加味した走行状況データを得ることができる。
【0012】
請求項5に記載したように、走行状況データは、車両が道路を走行した際の時間的情報を含み、その時間的情報に基づいて、分類して記憶されることが好ましい。その時間的情報としては、請求項6に記載したように、車両が道路を走行した時刻、日付、曜日の少なくとも1つであることが好ましい。車両が実際に走行する際の走行状況は、各道路における交通量等の影響を受ける。その交通量等は、時刻(時間帯)、日付、曜日などの時間的情報に応じて大きく変化する。そのため、実走行状況データは、時刻(時間帯)、日付、曜日などの時間的情報に基づいて、分類して記憶されることが好ましいのである。
【0013】
請求項7に記載したように、記憶手段に記憶された走行状況データは、ユーザによって編集可能であることが好ましい。車両の走行状況を計測中に、所要のため車を停車させた場合などは、計測された走行状況データが実際の走行状況とは大きく異なってしまう。このような場合、その走行状況データの削除等の編集ができると、走行状況データの精度を高めることができる。
【0014】
さらに、請求項8に記載したように、車両が複数のユーザによって共同使用される場合、記憶手段には、ユーザごとに独立した走行状況データが記憶されることが好ましい。複数人のユーザが車両を共同して使用する場合、ユーザごとに走行経験のある道路は異なり、その結果、妥当と考える経路も異なると考えられるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態における車両用経路計算装置に関して図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、車両用経路計算装置をナビゲーション装置に適用した例について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係わる車両用ナビゲーション装置20の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態の車両用ナビゲーション装置20は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、外部メモリ9、表示装置10、VICS受信機11、リモコンセンサ12、燃料計測器14及びこれらに接続された制御回路としてのナビゲーションECU8を備えている。
【0017】
ナビゲーションECU8は通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。ROMには、ナビゲーションECU8が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が所定の演算処理を実行する。
【0018】
位置検出器1は、いずれも周知の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、走行距離を算出するための車速(距離)センサ4、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機5を有している。これらは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器1を上述した内の一部で構成しても良い。
【0019】
地図データ入力器6は、ノードデータ及びリンクデータからなる道路データ、地形等を示す背景データ、地名等を表示するための文字データなどからなる、地図を描画するために必要な地図データをナビゲーションECU8に入力する装置である。この地図データ入力器6は、地図データを記憶する記憶媒体を備え、その記憶媒体としては、記憶するデータ量からCD−ROMやDVD−ROM等を用いるのが一般的であるが、メモリカードやハードディスクなどの書き換え可能な媒体を用いてもよい。
【0020】
ここで、道路データにおける、ノードデータ及びリンクデータの構成について説明する。ノードデータは、複数の道路が交差、合流、分岐するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続する全てのリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種類、信号機の有無、規制情報等の各データから構成されている。
【0021】
一方、リンクデータは、道路毎に固有の番号を付したリンクID、リンク長、始点及び終点のノード座標、道路種別(高速道路,有料道路,国道,県道,細街路等)、道路幅員、車線数、リンク走行時間、法定制限速度等の各データから構成されている。すなわち、リンクデータのリンクとは、地図上の各道路を、交差点、分岐点などを示すノードにより複数に分割し、2つのノード間をリンクとして規定したものである。従って、始点及び終点のノード座標は、リンクの始端と終端の座標となる。
【0022】
これらのノードデータ及びリンクデータにより、地図上に道路を描画したり、ダイクストラ法等の公知の手法を用いて、出発地から目的地までの案内経路を算出することが可能になる。
【0023】
操作スイッチ群7は、例えば、後述する表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチとして構成され、各種入力に使用される。
【0024】
外部メモリ9は、例えばメモリカードやハードディスクドライブ(HDD)等の読み書き可能な記憶媒体が用いられ、テキストデータや画像データ等の各データの保存のために利用される。特に、本実施形態においては、車両が道路を走行する際に、その道路における実際の走行状況を示す走行状況データを外部メモリ9に記憶させる。この走行状況データの記憶処理については、後に詳細に説明する。
【0025】
表示装置10は、例えば液晶ディスプレイによって構成され、表示装置10の画面には、ナビゲーションECU8の処理により、例えば、位置検出器1から入力された車両の現在位置に対応する自車位置マークと、地図データ入力器6より入力された地図データによって生成される車両周辺の道路地図が表示される。
【0026】
VICS受信機10は、道路に敷設されたビーコンや各地のFM放送局を介して、VICSセンタから配信される道路交通情報を受信する装置である。受信した道路交通情報は、ナビゲーションECU8で処理し、例えば渋滞情報や規制情報は道路地図上に重ねて表示される。
【0027】
燃料計測器14は、車両の燃料噴射装置やエンジン制御装置などであり、単位時間当りの燃料消費量を計測して、その計測値をナビゲーションECU8に提供する。
【0028】
リモコンセンサ12は、リモートコントロール端末(以下、リモコンと称する)13からの操作信号を無線にて受信する。このリモコン13も、上記した操作スイッチ群7と同様に、各種の入力に使用される。例えば、本実施形態のナビゲーション装置20は経路案内機能を備えており、操作スイッチ群7又はリモコン13によって目的地が入力されると、現在位置(或いは、ユーザが指定した出発地)から目的地までの最適な経路を自動的に探索して案内経路を算出し、その案内経路に従って経路案内処理を行なう。この経路案内時には、表示装置10の画面に、案内経路が強調表示された道路地図が表示されたり、車両が案内交差点に接近した時には、その案内交差点の拡大案内図が表示されたりする。
【0029】
次に、車両が道路を走行した際に、実際の走行状況を示す走行状況データを記憶する記憶処理について、図2のフローチャートに基づいて説明する。なお、記憶された走行状況データは、目的地が設定されて、その目的地までの案内経路を探索する際に利用される。
【0030】
図2において、まずステップS100では、位置検出器1の各センサによって測定された位置データに基づいて、車両の現在位置を算出する。このとき、GPS受信機5による位置データは、上述の道路データの座標データ(緯度と経度)と同じ形態で取得される。また、地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、車速センサ4によって自車両の進行方向及び走行距離に関するデータが取得され、過去に算出、もしくは確定された車両位置を基準として、現在位置の座標データの算出を行なう(自立航法による座標データの算出)。なお、現在位置は、基本的には、自立航法により算出された座標データに基づいて求められる。ただし、GPS受信機5による位置データが取得されている場合には、両者を比較し、その差が所定距離以上である場合には、現在位置として、GPS受信機5による位置データを採用する。
【0031】
続いて、ステップS20では、ステップS10にて算出された車両の現在位置の座標に基づいて、車両周辺の地図データの読み込みを行なう。次に、ステップS30において、マップマッチング処理を行なう。
【0032】
このマップマッチング処理では、例えば、ステップS10にて算出した現在位置と所定距離以内の道路、もしくは既に道路上にマッチングされている場合には、そのマッチング道路に接続された道路を車両が走行する可能性のある道路として選択する。そして、ステップS10にて過去に算出された複数個の現在位置と最新の現在位置とを連結して、走行軌跡を算出する。その走行軌跡の形状と、車両が走行する可能性のある道路の形状とを比較して、最も相関の高い道路を車両が走行している道路として推定する。
【0033】
なお、車両が走行している道路が推定されると、その道路上に車両位置が確定されるため、その確定位置が上述した自立航法による現在位置の算出に用いられることになる。また、ステップS10における現在位置の算出、及び上述した走行軌跡の算出は、GPS受信機5の位置データのみから行なっても良いし、自立航法の位置データのみから行なっても良い。
【0034】
マップマッチング処理によって車両が走行している道路が推定されると、ステップS40において、道路地図データを参照して、その道路のリンクIDを特定する。そして、ステップS50では、ステップS40にて特定したリンクIDに関連づけて、車両の実際の走行状況を示す走行状況データを外部メモリ9に記憶する。
【0035】
外部メモリ9に記憶する走行状況データの一例を、図3(a),(b)を用いて説明する。なお、図3(a)は、リンクIDがそれぞれA,B,Cの各道路を車両が走行した際の、走行時刻、車速、燃料消費量の変化を示すグラフであり、図3(b)は、リンクID=A,B,Cのそれぞれのリンクに関連付けて、外部メモリ9に保存する走行状況データを示している。
【0036】
図3(a)に示すように、車両が道路を走行する際には、走行時刻、車速、燃料消費量がそれぞれモニタされる。なお、走行時刻として、図3(a)では、実際の時刻ではなく、ナビゲーションECU8の内部において、時間をカウントするカウンタ値を示している。
【0037】
図3(a)において、リンクID=Aの道路に進入した時刻は100であり、リンクID=Aの道路に続くリンクID=Bの道路に進入した時刻は110である。さらに、リンクID=Cの道路に進入した時刻及び退出した時刻は、それぞれ150及び200である。このようにして、各リンクIDの道路への進入(退出)時刻から、各リンクIDの道路を走行するのに要した所要時間が算出できる。この所要時間が、図3(b)に示すように、走行状況データの1つとなる。
【0038】
また、車両の走行速度(車速)をモニタすることにより、各リンクIDの道路における平均車速を算出することができる。この平均車速も、走行状況データの1つとして、外部メモリ9に記憶される。ただし、平均車速は、上述した所要時間でリンク長を除算することによって求めることも可能である。
【0039】
さらに、車速に基づいて、各リンクIDの道路における最高速度及び車両の停止回数が算出される。車両の停止については、車速センサ4の検出精度を考慮し、例えば検出車速が5km/h以下となった場合に、車両が停止したとみなす。これらの最高速度及び停止回数も、走行状況データとして外部メモリに記憶される。
【0040】
さらに、燃料計測器14からの単位時間当りの燃料消費量に基づいて、各リンクIDの道路における平均燃費を算出する。すなわち、各リンクのリンク長を、そのリンクにおける燃料消費量の合計値で除算することにより、平均燃費を算出できる。この平均燃費も、走行状況データの1つとして外部メモリ9に記憶される。
【0041】
なお、外部メモリ9に、既に同じリンクIDに関連付けて走行状況データが記憶されている場合には、その走行状況データを読み出して、新たに取得した走行状況データと平均化する。そして、この平均化によって更新された走行状況データが、過去の走行状況データと置き換えられる。このようにすれば、車両が同じ道路を複数回走行する場合に、その複数回の走行状況をすべて加味した走行状況データを得ることができる。
【0042】
上述した走行状況データの記憶処理により、車両が走行を重ねるほど、外部メモリ9における走行状況データの蓄積量が増加する。特に、本実施形態では、走行状況データとして、所要時間、平均車速、最高速度、停止回数、及び平均燃費を用いている。これらのデータは、いずれも走行経験がある道路について、ユーザがいずれの道路を走行するのが妥当かを判断するために考慮することが多い項目である。従って、外部メモリ9に蓄積される走行状況データは、ユーザによる各道路の走行経験そのものを表す。このため、後述する経路探索・案内処理において、この走行状況データに基づいて、目的地までの経路を設定することにより、ユーザが過去の走行経験に基づいて妥当と判断する経路を高い確率で設定できる。
【0043】
次に、走行状況データに基づいて経路の探索を行なう経路探索・案内処理について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
図4のステップS110では、操作スイッチ群7もしくはリモコン13を用いて目的地が設定されたか否かを判定する。このとき、そして目的地の設定が行なわれたと判定されると、ステップS120の処理に進む。
【0045】
ステップS120では、道路地図データにおける、リンク長、道路種別、道路幅等を考慮して、各リンクの基本リンクコストを算出する。続くステップS130では、外部メモリ9に保存されている各リンクの走行状況データの読出しを行なう。そして、ステップS140において、読み出した走行状況データと、道路種別毎に決定された基準値とを比較することにより、走行状況データが記憶されている各リンクについて、ユーザが走り易いと感じたか否かを評価する。
【0046】
例えば、平均車速が基準値よりも高い場合には、車両はその道路をスムーズに走行できたとみなすことができる。この場合、ユーザは、その道路を走りやすい道路と感じることが多い。このように、走行状況データを用いることにより、ユーザが走行経験のある道路について、ユーザの感覚に合致した走り易さの評価を行なうことができる。
【0047】
ただし、車両の走行状況は、道路種別が異なると、大きく変化する。例えば、高速道路と一般道路、一般道路においても国道と市街地道路では、車両の走行状況は大きく異なるのが通常である。このため、上述した基準値は、道路種別ごとに分けて設定する。
【0048】
なお、走行状況データと基準値との比較を行なって走り易さを評価する場合、その評価手法には、種々の手法が考えられる。
【0049】
例えば、走行状況データとして複数のデータを用いる場合には、それぞれの比較結果(基準値に対して大小を示す値や基準値との差)に係数を乗じた上で加算することにより、その複数のデータを総合的に勘案した評価を行なうことができる。
【0050】
また、ユーザによって、平均速度、最高速度、停止回数、燃費等の中でいずれのデータを重視するかを選択できるようにすることも可能である。その場合、重視されるデータの係数を、他のデータの係数よりも大きくすれば良い。さらに、重視されるデータ以外のデータの係数を0にするようにしても良い。この場合、ユーザによって選択された1種類のデータに基づいて、各リンクの走り易さが評価されることになる。
【0051】
なお、走行状況データにおける停止回数については、単位距離当りの停止回数を算出した上で、基準値と比較される。また、所要時間は、平均車速と相関するデータであるため、平均車速とのどちらかを用いれば良い。
【0052】
上述した手法により、走行状況データが記憶された各リンクの走り易さが評価され、その評価結果に応じて、ステップS120で算出した基本リンクコストを増減する。すなわち、ユーザが走り易いと感じた評価される道路(リンク)のコストを下げ、逆に走りにくいと感じた道路(リンク)のコストを上げる。このようにして、走行状況データにより評価される走り易さを考慮して、リンクに対して付与するコストを決定するのである。
【0053】
このとき、VICS受信機11によって受信された、渋滞発生箇所や規制情報をさらに加味して、各リンクに対して付与するコストを決定しても良い。
【0054】
ステップS150では、直進、右左折や進入不可等の形態に応じたノードコストを算出する。一般的には、直進≦左折<右折となるように、ノードコストを算出する。そして、ステップS160では、上述したリンクコスト及びノードコストの合計値が最小となる経路を、公知のダイクストラ法を用いて探索し、その探索した経路を表示装置10に表示する。
【0055】
ステップS170では、案内開始が指示されたか否かを判定する。すなわち、表示された探索経路をユーザが確認し、その上で、ユーザが表示された経路に従って経路案内を開始することを操作スイッチ群7等によって指示したか否かを判定する。この判定において、案内開始が指示されたと判定されると、ステップS180において、ステップS160にて探索・表示した経路に従った経路案内を開始する。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明による車両用経路計算装置は、上述した実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することができる。
【0057】
例えば、上述した実施形態では、同じリンクIDを持つ道路について、複数の走行状況データが得られた場合に、それらを単純に平均化するものであった。しかしながら、同じリンクIDを持つ道路について複数の走行状況データが得られたときに、時間的情報を考慮して、分類して記憶するようにしても良い。
【0058】
つまり、車両が実際に走行する際の走行状況は、各道路における交通量等の影響を受ける。その交通量等は、時刻(時間帯)、日付、曜日などの時間的情報に応じて大きく変化する。そのため、走行状況データは、時刻(時間帯)、日付、曜日などの時間的情報に基づいて、分類して記憶する。そして、経路を探索する際に、各リンクを通過する時刻(時間帯)、日付、曜日から、最も適した走行状況データを用いて、各リンクのコストを決定する。このようにすれば、走行状況データによって各リンクのコストを決定する際に、過去の経験をより正確に反映させることができる。なお、時間的情報で分類したときに、既に記憶されている走行状況データと同じ分類に属する走行状況データが得られた場合には、それらを平均化して記憶すれば良い。
【0059】
また、すべての走行状況データをそれぞれ別個に外部メモリ9に記憶するようにしても良い。このようにすると、走行状況データが記憶された各リンクについて、例えば走行所要時間に関する確率を求めることも可能である。例えば、複数の走行所要時間が記憶されている場合、その平均時間を求めるとともに、その平均時間以内で通過した確率を求めることができる。この確率は、例えば、案内経路全体のリンクについて平均化等を行なうことで、案内経路全体の走行所要時間及び確率を求めるために使用できる。さらに、全ての走行状況データを記憶することにより、例えば最悪値検索などを行なうことも可能となる。
例えば、過去の走行状況データから、最長時間、最悪燃費、或いは最大停止回数が得られるので、これらを参考にして、複数の経路からの経路選択等を行なうことも可能になる。
【0060】
また、外部メモリ9に記憶される走行状況データは、ユーザによって編集可能に構成されても良い。例えば、車両の走行状況を計測中に、所要のため車をしばらく停車させた場合などは、計測された走行状況データが実際の走行状況とは大きく異なってしまう。このような場合、その走行状況データの削除や修正等の編集ができると、走行状況データの精度を高めることができる。
【0061】
さらに、車両が複数のユーザによって共同使用される場合、外部メモリ9には、ユーザごとに独立した走行状況データが記憶されることが好ましい。複数人のユーザが車両を共同して使用する場合、ユーザごとに走行経験のある道路は異なり、その結果、妥当と考える経路も異なると考えられるためである。この場合、例えば、複数人のユーザを登録可能なユーザ登録スイッチを設け、予めユーザ登録を行なうとともに、車両の運転開始時にいずれのユーザであるかを入力するようにすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係わる、車両用ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】車両が道路を走行した際に、実際の走行状況を示す走行状況データを記憶する記憶処理を示すフローチャートである。
【図3】(a)は、リンクIDがそれぞれA,B,Cの各道路を車両が走行した際の、走行時刻、車速、燃料消費量の変化を示すグラフであり、(b)は、リンクID=A,B,Cのそれぞれのリンクに関連付けて、外部メモリ9に保存する走行状況データを示す説明図である。
【図4】走行状況データに基づいて経路の探索を行なう経路探索・案内処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1…位置検出器
6…地図データ入力器
7…操作スイッチ群
8…ECU
9…外部メモリ
10…表示装置
11…VICS受信機
20…車両用ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を複数のリンクによって示した道路地図データを記憶する道路地図データ記憶手段と、
少なくとも前記リンクに対してコストを付与するとともに、そのコストの合計値が小さくなるように2つの地点間を結ぶ経路を探索する経路探索手段とを備えた車両用経路計算装置であって、
車両が前記道路を走行した際に、その道路に対応するリンクに関連付けて、実際の走行状況を示す走行状況データを記憶する記憶手段を備え、
前記経路探索手段は、前記記憶手段が記憶する走行状況データを考慮して、前記リンクに対して付与するコストを決定することを特徴とする車両用経路計算装置。
【請求項2】
前記経路探索手段は、道路種別ごとに、車両の走行状況に関する基準値を設定しておき、前記走行状況データとその基準値との比較結果に基づいて、前記リンクに対して付与するコストを増減することを特徴とする請求項1に記載の車両用経路計算装置。
【請求項3】
前記走行状況データは、平均速度、最高速度、停止回数、走行所要時間、平均燃費の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用経路計算装置。
【請求項4】
車両が同じ道路を複数回走行した場合、前記記憶手段は、前記走行状況データを平均化して記憶することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両用経路計算装置。
【請求項5】
前記走行状況データは、前記車両が道路を走行した際の時間的情報を含み、その時間的情報に基づいて、前記記憶手段に分類して記憶されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両用経路計算装置。
【請求項6】
前記時間的情報は、車両が道路を走行した時刻、日付、曜日の少なくとも1つであることを特徴とする請求項5に記載の車両用経路計算装置。
【請求項7】
前記記憶手段に記憶された走行状況データは、ユーザによって編集可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の車両用経路計算装置。
【請求項8】
車両が複数のユーザによって共同使用される場合、前記記憶手段には、ユーザごとに独立した走行状況データが記憶されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の車両用経路計算装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−23176(P2006−23176A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200990(P2004−200990)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】