説明

車両盗難防止システム

【課題】 使用者の利便性とセキュリティ性を両立させることが可能な車両盗難防止システムを提供する。
【解決手段】 車両盗難に関する盗難関係事項を検出する車載機器と通信回線で接続され、車載機器を搭載した車両の盗難防止に関して複数のセキュリティレベルを有する車両盗難防止サービスを提供する管理センタを備える車両盗難防止システムであって、車両の使用スケジュールを取得するスケジュール取得手段と、現在日時から、使用スケジュールに含まれる車両が次に使用される日時までの時間を算出する時間算出手段と、算出された時間に基づいてセキュリティレベルを設定するセキュリティレベル設定手段と、を有することを特徴とする車両盗難防止システムとして提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報通信を用いた車両盗難防止サービスを提供する車両盗難防止システムに関し、特に複数のセキュリティレベルを有する車両盗難防止システム関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の使用者は、所有する車両を盗難から守るため、盗難防止装置を装着するなど自衛手段により被害発生を抑えている。さらに盗難発生時の被害を減らすために盗難保険に加入する。ところが、近年では車両盗難の手口が巧妙になり、車両に盗難防止を装着するだけでは盗難を有効に防止できなくなっている。
【0003】
また、使用者は任意に選ぶ駐車場所での過去の盗難発生状況を知ることができないため、使用者が盗難防止装置のセキュリティレベルを設定した場合に、駐車場所の盗難発生レベルに対してセキュリティレベル設定値が低過ぎることがある。さらに、使用者は、短時間の駐車のつもりで、盗難防止装置を作動させない場合がある。
【0004】
そこで、駐車場所の車両盗難情報に基づいて、セキュリティレベルを設定する車両盗難防止システムが提案されている。具体的には、管理センターが提供する車両盗難情報防止サービスに複数のセキュリティレベルを用意し、盗難発生レベルが高い場所では、セキュリティレベルを高くして異常発生検出レベルを上げて検出しやすくし、逆に低い場所では検出レベルを下げて検出し難くすることにより、状況に応じて最適なセキュリティレベルを設定しようとするものである。(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−085676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の例では、基本的には検出レベルを変えるものであり、車両そのもののロック解除の難易度を変えるものではない。つまり、盗難されている行為の検出レベルを変えるだけで、車両自体のセキュリティ解除の難しさのレベルを変えるものではないため、手際良く作業を進められたら、警備員や警察官が来る前に盗難される恐れがある。とはいえ、闇雲にセキュリティレベルを高くしてセキュリティ解除を困難にすればするほど、盗難されにくくはなるが使用者にとっては使い難くなって利便性が悪くなるという問題がある。
【0007】
上記問題を背景として、本発明の課題は、使用者の利便性とセキュリティ性を両立させることが可能な車両盗難防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための車両盗難防止システムを提供するものである。即ち、請求項1によれば、車両盗難に関する盗難関係事項を検出する車載機器と通信回線で接続され、車載機器を搭載した車両の盗難防止に関して複数のセキュリティレベルを有する車両盗難防止サービスを提供する管理センタを備える車両盗難防止システムであって、車両の使用スケジュールを取得するスケジュール取得手段と、現在日時から、使用スケジュールに含まれる車両が次に使用される日時までの時間を算出する時間算出手段と、算出された時間に基づいてセキュリティレベルを設定するセキュリティレベル設定手段と、を有することを特徴とする車両盗難防止システムとして構成される。
【0009】
本発明は、車の利用状況(スケジュール)に応じて、車の施錠、始動の制限条件などを変化させ、不正な車両の使用・盗難を防止するものである。上記構成によって、使用者が次に車両を使用するまでに時間が短い場合にはセキュリティレベルを低くすることにより、利便性を高めることができ、使用者が車両を当分使用しない場合にはセキュリティレベルを高くすることにより、車両への侵入(あるいは車両の盗難)をいち早く検出することが可能な状態とすることができ、セキュリティ性を高めることが可能となる。よって、使用者の利便性とセキュリティ性を両立させることが可能となる。
【0010】
請求項2によれば、本発明の車両盗難防止システムは、車両の使用者がセキュリティレベルを変更するためのセキュリティレベル変更手段を有する構成をとることができる。本構成によって、使用者の都合により、使用者が次に車両を使用するまでに時間が短い場合でもセキュリティレベルを高くしたり、使用者が車両を当分使用しない場合でもセキュリティレベルを低くすることができ、使用者の状況に応じた木目の細かいセキュリティレベルの設定が可能となる。
【0011】
請求項3によれば、本発明の車両盗難防止システムは、設定されたセキュリティレベルに応じて、セキュリティレベルが設定された状態を解除する解除条件を設定する解除条件設定手段と、車両の状態を検出する状態検出手段と検出された車両の状態が解除条件と一致するかを判定する条件判定手段と、検出された車両の状態が解除条件と一致した場合にセキュリティレベルが設定された状態を解除するセキュリティレベル解除手段と、を有する構成をとることができる。本構成によって、例えば通常のキーでは開錠できないセキュリティレベルを設定すれば、不正に入手あるいは作成された合鍵では開錠できないので、車両への侵入および車両の盗難を防止することができる。
【0012】
請求項4によれば、本発明の車両盗難防止システムは、車両への侵入を検出する侵入検出手段と、設定されたセキュリティレベルに応じて、車両への侵入を検出するための条件を設定する侵入検出条件設定手段と、車両の状態が車両への侵入を検出するための条件と一致した場合に車両に侵入されたと判定する侵入判定手段とを有する構成をとることができる。本構成によって、車両への侵入を的確に判定することができ、セキュリティ性を高めることが可能となる。
【0013】
請求項5によれば、本発明の車両盗難防止システム車両に侵入されたと判定された場合に、車両の使用者にその旨を報知する報知手段を有する構成をとることができる。本構成によって、車両の使用者は車両から遠く離れていてもいち早く車両への侵入を知ることが可能となり、警察等への通報等の対応も迅速に行なうことが可能となる。さらに、設定されたセキュリティレベルに応じて、車両への侵入を検出するための条件が設定されていれば、車両への侵入を誤って検出したことによる報知もなくなり、車両侵入の検出精度を向上することが可能となる。
【0014】
請求項6によれば、本発明の車両盗難防止システムは、車両の使用者かどうかを判定する使用者判定手段を有し、解除条件に車両の使用者であると判定されることを含む構成をとることができる。本構成によって、車両の使用者でない場合はセキュリティレベルが解除されないため、セキュリティ性がさらに高まり車両への侵入および車両の盗難を防止することができる。
【0015】
請求項7によれば、本発明の車両盗難防止システムは、車両の使用者かどうかを判定する使用者判定手段を有し、車両への侵入を検出するための条件に車両の使用者でないと判定されることを含む構成をとることができる。本構成によって、車両への侵入を誤って検出することなく的確に判定することができ、セキュリティ性をさらに高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
使用者の利便性とセキュリティ性を両立させる車両盗難防止システムを提供するという目的を、車の利用状況(スケジュール)に応じて、車の施錠、始動の制限条件などを変化させ、不正な車両の使用・盗難を防止する車両盗難防止システムにより実現した。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施の形態である車両盗難防止システムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、車両盗難防止システムの全体構成を示すブロック図であって、車両に搭載される車載機器100と、車載機器100の搭載車両における盗難防止に関する管理を行なう車両盗難防止管理センタ(以下、管理センタと略称)200と、車両ユーザ(使用者)400の所持する、携帯電話等の携帯端末401(本発明のセキュリティレベル変更手段,スケジュール取得手段)あるいはパーソナルコンピュータ(以下、PCと略称)402(本発明のセキュリティレベル変更手段,スケジュール取得手段)とを備えている。
【0018】
車載機器100と管理センタ200とは、それぞれの通信装置116,通信装置202を介してネットワーク接続され、互いに通信可能に構成されている。車載機器100は、各種センサ信号,画像データ等のデータを管理センタ200に送信することができる。また、管理センタ200は、通信装置202を介して携帯端末401あるいはPC402とネットワーク通信可能になっており、管理センタ200から携帯端末401あるいはPC402にメッセージ送信を行なうことができる。また、携帯端末401あるいはPC402から、管理センタ200を介して車載機器100の遠隔操作を行なうことができるように構成されている。なお、接続可能なネットワークは、公衆回線網,インターネット等、特に制約を設けるものではない。
【0019】
図1に示すように、車載機器100は、盗難防止のための監視機能として、車両周辺に近づくものを超音波や電波等で検出する周辺監視センサ101(本発明の状態検出手段,侵入検出手段)、車室内および車両周辺を撮影するカメラ102(本発明の状態検出手段,侵入検出手段)、車室内および車両周辺の音を検出するマイク103(本発明の状態検出手段,侵入検出手段)、車両所有者を認識できる認識センサ104等を備えている。さらに、車載機器100は、各種データを記憶できるメモリ105、盗難可能性が高い状況で警報を発生するアラーム106(本発明の報知手段)を備えている。アラーム106による警報としては、警報機124によるブザー吹鳴,ハザード(ハザードランプ)125の点滅,室内灯の点滅,ホーンの吹鳴を行なうことができる。
【0020】
認識センサ104(本発明の使用者判定手段)は、ドアノブ等に取り付けられた図示しない指紋照合器により検出される指紋,マイク103から入力された音声から検出される声紋,カメラ102で撮影される網膜あるいはアイリス(虹彩)の画像,顔の形,掌の血管のパターン等により使用者であるかを判定する。ドアノブ等に取り付けられた図示しない体脂肪率測定器により測定される体脂肪率より使用者であるかを判定してもよい。判定の基準となるデータは、予めメモリ105に記憶しておく。
【0021】
また、車両に押圧によって接点抵抗(接点容量でもよい)が変化する感圧接点をシート内に複数分散配置したシート状の感圧面型接触センサと指紋照合器を設け、該面型接触センサに手を押し当てた際の押圧状態および指紋,掌紋によって使用者であるかを判定してもよい。さらに、車両に通常のマイク(103)の他に骨伝導マイクを設け、通常の音声である気導音と骨伝導音とにより使用者であるかを判定してもよい。骨伝導マイクは耳か耳下の顎骨などに当てて使用するもので、その基本構成は周知であるため詳細な説明は省略する。
【0022】
また、上記の認識センサ104を携帯端末401に設け、認識センサ104からのデータを管理センタ200を経由して車載機器100に送信し、車載機器100が受信したデータをメモリ105に記憶されている基準データと比較することにより使用者であるかを判定してもよい。
【0023】
メモリ105(本発明の解除条件設定手段,侵入検出条件設定手段)は車両盗難防止システムの動作に必要なデータを記憶するもので、車両が駐車状態(イグニッションスイッチがオフ状態)でも記憶内容を保持するためにフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。上記の認識センサ104によって使用者であるか否かを判定するための基準データもメモリ105に記憶される。
【0024】
また、車載機器100は、車両の現在位置を検出するGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)107(本発明の駐車場所検出手段)を備えている。GPS107の他に、周知の地磁気センサ,ジャイロスコープ,距離センサ,ステアリングの回転センサ,および各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。これらのセンサは性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成してもよい。
【0025】
また、車載機器100は、IDコードの照合によりエンジンの始動を許可するイモビライザ108、電波,超音波,車体の振動,窓ガラスの割れ等により車室内への侵入者の有無を検出する侵入センサ109(本発明の状態検出手段,侵入検出手段)、ワイヤレスキー,スマートキー等の電子キー110、ドアの開閉,ドアロックの施錠/開錠,トランク・ボンネットの開閉,窓の開閉等のボデーに関する各種制御を行なうボデーECU111、エンジンに関する各種制御を行なうエンジンECU112等を備えている。
【0026】
セキュリティECU114(本発明の時間算出手段,条件判定手段,侵入判定手段,セキュリティレベル設定手段,セキュリティレベル解除手段)は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU,ROM,RAM,入出力回路であるI/Oおよびこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。また、外部機器,センサ等とのデータ・信号の遣り取りを行なうための処理回路も備えられている。CPUは、ROMおよびRAMに記憶された制御プログラムおよびデータにより制御を行なう。セキュリティECU114は、外部機器,センサ等から入力されるデータ・信号に基づいてセキュリティレベルの変更,警報出力等の処理を行なう。セキュリティECU114はエンジン制御を行なうエンジンECU112に対して、エンジンの停止,エンジン始動の許可/禁止の指令を送ることができ、エンジンECU112もセキュリティECU114からの指令に基づいてエンジン制御を行なう。
【0027】
車載機器100は、メモリ105に予め記憶された所定時間毎(例えば10分毎)に、車両の状態が正常である旨のデータを管理センタ200に送信するように構成されている。これにより、管理センタ200では、車載機器100より正常データが送信されなくなった場合には、駐車車両に何らかの異常が発生したと判断できる。また、管理センタ200が所定時間毎(例えば10分毎)に車載機器100に車両の状態を問い合わせ、車載機器100が車両の状態に関するデータを管理センタ200に送信するようにしてもよい。
【0028】
管理センタ200は、周知のコンピュータ,ワークステーション等で構成されるサーバ201、通信装置202、監視制御パネル203等を備えている。管理センタ200では、サーバ201で動作するプログラムによって、車載機器100より送信される各種データに基づいて監視制御パネル203により駐車車両の監視を行なう。また、管理センタ200では、車載機器100の遠隔操作を行なうことができるように構成されている。
【0029】
また、管理センタ200は、3つのデータベースA〜Cを備えている。データベースAには、車両盗難防止システムを使用する使用者とその車両に関するデータおよび車載機器100の作動状況に関するデータが格納されている。データベースBには、車両の駐車場所に関する情報、過去に車両盗難に関する車両盗難情報といったデータが格納されている。過去の盗難に関する情報としては、盗難発生の場所、時刻、車種、異常発生の内容、犯行内容(いたずら、車上荒らし、車両盗難等)、既遂あるいは未遂の区別等がある。データベースCには、車載機器100からの送信データに基づいて車両における異常発生を判断し、異常の内容を分析するために必要なデータが格納されている。
【0030】
図6はセキュリティレベルに対応した鍵の強固さレベル,解除方法,異常検出方法およびその閾値と異常を検出した場合の警報やセキュリティレベルの更新時間を組み合わせた例である。セキュリティレベルはレベル0からレベル4までの5段階あり、レベルの数値が大きくなるにつれてセキュリティレベルが高く(盗難されにくく)なる。以下に各セキュリティレベルの詳細について述べる。
【0031】
セキュリティレベル0はドアが無施錠状態で、ドアの開錠のための手段はなく、セキュリティレベルの解除方法もない。また、異常検出は行なわないため振動検出のための閾値も設定されない。よって、異常検出時の警報も行なわない。レベル0は最も危険な状態であるため、セキュリティレベルの更新間隔は30secに設定される。
【0032】
セキュリティレベル1はドアが施錠された状態で、ドアの開錠は通常のキーシリンダに挿入して施錠/開錠を行なうメカキーまたはワイヤレスキー等の電子キー110で行ない、メカキーまたは電子キー110によって開錠された場合にセキュリティレベルが解除される(レベル0になる)。また、異常検出方法としては侵入センサ109に含まれる振動センサが働いており、正常な開錠がされずに車両の振動が所定の閾値を超えた場合に異常を検出し、ハザードランプ125を点滅させて異常を知らせる。この振動検出のための閾値は最大(感度は最も悪く)に設定される。セキュリティレベルの更新間隔は5分に設定される。
【0033】
セキュリティレベル2はドアが施錠された状態で、かつ、電気式のドアロック用ラッチ(Eラッチ)121によりドアロック状態に固定される。ドアの開錠(Eラッチの解除)は周知のワイヤレスキー等の電子キー110のみ可能で、メカキーでは開錠できない。電子キー110によって開錠された場合にセキュリティレベルが解除される(レベル0になる)。また、異常検出方法としては振動センサと侵入センサ109に含まれるドアロックポジションスイッチが働いており、正常な開錠がされずに振動が発生したり、ドアロックポジションが開状態(異常アンロック)になった場合に異常を検出し、異常時にはハザードランプ125の点滅と警報機124に含まれるブザー吹鳴によって異常を知らせる。異常検出のための閾値は大程度であるが、セキュリティレベル1の場合より感度はよい。セキュリティレベルの更新間隔は1時間に設定される。
【0034】
セキュリティレベル3はドアが施錠され、かつ、ラッチ電気分断回路122によりドアロック用ラッチ(Eラッチ)121への電源供給が遮断され、機械的にも電気的にも施錠状態に固定された状態である。ドアの開錠は管理センタ200からの指令信号による開錠等の特殊操作のみにより可能で、メカキーおよび電子キー110では開錠できない。該特殊操作によって開錠された場合にセキュリティレベルが解除される(レベル0になる)。また、異常検出方法としては振動検出と異常アンロックと侵入センサ109に含まれる電流検出が働いており、正常な開錠がされずに振動が発生したり、ドアロックポジションが開状態になったり、またドアがオープンになって室内ランプ点灯等により電流が発生した場合に異常を検出し、異常時にはハザードランプ125の点滅と警報機124に含まれるブザー吹鳴に加え、ブザーよりも音量の大きいサイレン126の吹鳴によって異常を知らせる。異常検出のための閾値は中程度であるが、セキュリティレベル2の場合より感度はよい。セキュリティレベルの更新間隔は3時間に設定される。
【0035】
セキュリティレベル4はドアが施錠された状態で、ドアの開錠はカメラ102あるいは認識センサ104による使用者の生体認証のみ可能で、電子照合禁止回路123の動作によりメカキー,電子キー110,および上記特殊操作では開錠できない。該生体認証によって使用者であると判定された場合にセキュリティレベルが解除される(レベル0になる)。また、異常検出方法としては振動検出と異常アンロックと電流検出と車両監視が働いており、車両監視は車両に近づいて来る人物を周辺監視センサ101で監視しながらカメラ102で撮影した情報を定期的に管理センター送る。つまり、このレベル4では異常検出として直接見るという方法が追加される。これらの検出方法で異常と判定した場合には、ハザードランプ125の点滅と警報機124に含まれるブザー吹鳴とサイレン126の吹鳴に加え、通報装置127が通信装置116を介して管理センタ200に異常を通報する。異常検出のための閾値は5個のセキュリティレベルのうち最小で、原則としてセキュリティレベルを変化させない。セキュリティレベルの更新間隔は12時間に設定される。
【0036】
各々のセキュリティレベルにおける異常判定の条件は、現在のレベルよりも低いレベルの条件も含む。例えば、セキュリティレベル3の場合、電流値が所定の閾値を超えた場合の他に、侵入センサ109に含まれる振動センサによって検出される車両の振動が所定の閾値を超えた場合(レベル2の異常判定条件)、ドアがこじ開けられた場合あるいはメカキー・電子キー110以外の物でドアの開錠が行なわれた場合(レベル1の異常判定条件)にも異常と判定する。
【0037】
上述の例では、セキュリティレベルが解除する場合はレベル0になるよう構成されているが、レベルを1段階下げるようにしてもよい。
【0038】
上述したセキュリティレベルおよび解除条件,異常判定条件等はメモリ105に予め記憶されているものであるが、最新のものを管理センタ200からダウンロードするようにしてもよい。また、使用者が図示しない入力装置により車載機器100において設定可能としてもよい。さらに、携帯端末401あるいはPC402において設定した内容を管理センタ200経由で車載機器100に送るようにしてもよい。この場合、管理センタ200を経由せず、携帯端末401あるいはPC402から直接車載機器100に送るようにしてもよい。
【0039】
(スケジュール情報によるセキュリティレベル決定処理)
図7を用いて使用者の車両を使用するスケジュールに応じてセキュリティレベルを決定するセキュリティレベル決定処理について説明する。なお、本処理はセキュリティECU114に含まれる図示しないCPUで実行される制御プログラムにおいて他の処理とともに繰り返し実行される。
【0040】
車両が駐車状態となった場合(S501:YES)、車両の使用者のスケジュールを確認する(S502)。確認方法は以下の通りである。
【0041】
まず、車両が管理センタ200に対し車両の使用者のスケジュールを要求する。次いで、管理センタ200はデータベースAに登録されている該車両の使用者(携帯端末401あるいはPC402)に対して、使用者の位置情報およびスケジュール情報を要求する。使用者は管理センタ200からの要求を受信すると、携帯端末401あるいはPC402等で自身のスケジュールを確認し、次に車両を使用する日時(時刻のみでも可)および目的地を含むスケジュール情報を管理センタ200に送信する。そして、管理センタ200は受信した使用者のスケジュール情報を車両に送信する。
【0042】
なお、スケジュールは携帯端末401あるいはPC402に記憶されているもの、あるいは手帳に記録されているもののいずれを用いてもよい。また、スケジュールについては、今後一週間以内といったように、所定の期間の車両の使用予定を一括して送るようにしてもよい。
【0043】
次に、GPS107によって車両の現在位置情報を検出する(S503)。
【0044】
車両は検出した現在位置情報と使用者のスケジュール情報とを比較し、現在の駐車位置が使用者のスケジュール情報に含まれている目的地かどうかを調べ、現在の駐車位置が使用者のスケジュール情報に含まれている目的地である場合(S504:YES)は、スケジュール情報と現在日時とから、次に車両を使用する日時までの時間Tを算出する(S505)。なお、現在日時は、セキュリティECU114自体が直接計時をするためのRTC(Real Time Counter)を有する方法、GPS107により受信したGPS信号に含まれる現在時刻情報を用いる方法、車両用ナビゲーション装置等の他の車両搭載機器との通信によって時刻情報を取得する方法、あるいは、通信回線を用いた車両外部の施設・機器から時刻情報を取得する方法等により取得できる。そして、算出した時間Tに基づいて以下のようにセキュリティレベルを決定する。
【0045】
T≦1分(t1)の場合(S506:YES)はセキュリティレベルSLをレベル0とし(507)、ドアロック120を開錠状態とする(S508)。
【0046】
1分(t1)<T≦30分(t2)の場合(S509:YES)はセキュリティレベルSLをレベル1とし(S510)、ドアロック120を施錠状態とする(S511)。
【0047】
30分(t2)<T≦1時間(t3)の場合(S512:YES)はセキュリティレベルSLをレベル2とし(S513)、ドアロック120を施錠状態とするとともにドアロック用ラッチ121もロック状態とする(ダブルロック施錠,S514)。
【0048】
1時間(t3)<T≦24時間(t4)の場合(S515:YES)はセキュリティレベルSLをレベル3とし(S516)、ラッチ電気分断回路122によりドアロック用ラッチ(Eラッチ)121への電源供給が遮断され、機械的にも電気的にも施錠状態に固定された状態とする(S517)。
【0049】
24時間(t4)<Tの場合(S515:NO)はセキュリティレベルSLをレベル4とし(S518)、電子照合禁止回路123の動作により通常の開錠操作では開錠できない状態とする(S519)。
【0050】
使用者の自宅の駐車場に車両を駐車して使用者も在宅しているが当分の間車両を使用しない場合、セキュリティレベルは高く設定されてしまう。この場合、洗車や車内の清掃を行なうには極めて不便となる。つまり、使用者のスケジュール情報のみでは的確にセキュリティレベルを設定できないことになる。そこで、使用者のスケジュール情報と位置情報を組み合わせて判断することにより、的確なセキュリティレベルの設定が可能となる。
【0051】
(車両と使用者との距離によるセキュリティレベル決定処理)
図2を用いて、車両と使用者との距離に応じてセキュリティレベルを決定するセキュリティレベル決定処理について説明する。なお、本処理はセキュリティECU114に含まれる図示しないCPUで実行される制御プログラムにおいて他の処理とともに繰り返し実行される。
【0052】
車両が駐車状態となった場合、車両の現在位置をGPS107によって検出する(S100)。次いで、該車両の使用者の現在位置を取得する(S101,詳細は後述)。そして、車両と使用者との距離Dを算出する(S102)。
【0053】
算出された距離Dから、以下のようにセキュリティレベルを決定する。
D≦5m(L1)の場合(S103:YES)はセキュリティレベルSLをレベル0とする(S104)。
【0054】
5m(L1)<D≦1Km(L2)の場合(S106:YES)はセキュリティレベルSLをレベル1とする(S107)。
【0055】
1Km(L2)<D≦50Km(L3)の場合(S109:YES)はセキュリティレベルSLをレベル2とする(S110)。
【0056】
50Km(L3)<D≦100Km(L4)の場合(S112:YES)はセキュリティレベルSLをレベル3とする(S113)。
【0057】
100Km(L4)<Dの場合(S112:NO)はセキュリティレベルSLをレベル4とする(S115)。
【0058】
(使用者の現在位置取得処理)
図3を用いて使用者の現在位置取得処理について説明する。なお、本処理は図2のフロー図のステップS101に相当するものである。また、本処理は、車載機器100においてはセキュリティECU114に含まれる図示しないCPUで実行される制御プログラムにおいて他の処理とともに繰り返し実行される。また、管理センタにおいてはサーバ201に格納されるプログラムにおいて他の処理とともに繰り返し実行される。
【0059】
カメラ102あるいは認識センサ104等により管理センタ200に問い合わせなくとも使用者の現在位置が特定できる(使用者が車両の近傍にいる)場合(S200:YES)は、使用者の現在位置データをメモリ105に格納する(S219)。一方、使用者の現在位置が特定できない場合(S200:NO)は、管理センタ200に問い合わせ要求を送信する(S210)。
【0060】
管理センタ200は車両からの問い合わせ要求を受信すると(S211)、データベースAに登録されている該車両の使用者(携帯端末401あるいはPC402)に対して、使用者の現在位置データを要求する(S212)。使用者は管理センタ200からの要求を受信すると(S213)、携帯端末401あるいはPC402等で自身の現在位置を算出し(S214)、算出した現在位置データを管理センタ200に送信する(S215)。
【0061】
現在位置の算出方法は、携帯端末401あるいはPC402以外の機器を用いてもよい。また、現在位置の確認を携帯端末401あるいはPC402で行なう場合、携帯端末401あるいはPC402に表示された現在位置データを自動的に管理センタ200で使用可能なデータ形式に書式変換した後に管理センタ200に送信するようにしてもよい。逆に、管理センタ200で書式変換を行なってもよい。
【0062】
管理センタ200は現在位置データを受信すると(S216)、該現在位置データを車両(車載機器100)へ送信する(S217)。車両は管理センタ200から現在位置データを受信すると(S218)、該現在位置データをメモリ105に格納する(S219)。
【0063】
使用者の現在位置の情報は、車両と携帯端末401あるいはPC402との通信により取得するようにしてもよい。即ち、車両が携帯端末401あるいはPC402に現在位置の問い合わせ要求を送信し、携帯端末401あるいはPC402が現在位置データを車両に返信するものである。
【0064】
(セキュリティレベル変更通知処理)
図4を用いて、車両と使用者の距離が変化し、それに応じてセキュリティレベルを変更した場合に、使用者へ通知する処理について説明する。なお、本セキュリティレベル変更通知処理は、車載機器100においてはセキュリティECU114に含まれる図示しないCPUで実行される制御プログラムにおいて他の処理とともに繰り返し実行される。また、管理センタにおいてはサーバ201に格納されるプログラムにおいて他の処理とともに繰り返し実行される。
【0065】
セキュリティレベル決定処理(図7参照)において、車両と使用者の距離が変化してセキュリティレベルが変更された場合(S400:YES)、車両は最新の(変更後の)セキュリティレベルを管理センタ200へ送信する(S401)。管理センタ200は最新のセキュリティレベルを受信すると(S402)、データベースAを参照して当該車両のセキュリティレベルが変更されたことを確認すると、データベースAを更新するとともに当該車両の使用者の携帯端末401あるいはPC402に対して最新のセキュリティレベルを送信する(S403)。
【0066】
携帯端末401あるいはPC402は、管理センタ200からの最新のセキュリティレベルを受信すると(S404)、図示しない表示器・スピーカ等により、セキュリティレベルが変化した旨を報知する(S405)。
【0067】
(セキュリティレベル遠隔指定処理)
図5を用いて、使用者の携帯機から任意にセキュリティレベルを指定する処理について説明する。また、本セキュリティレベル遠隔指定処理は、車両においてはセキュリティECU114に含まれる図示しないCPUで実行される制御プログラムにおいて他の処理とともに繰り返し実行される。また、管理センタにおいてはサーバ201に格納されるプログラムにおいて他の処理とともに繰り返し実行される。
【0068】
まず、車両の使用者が携帯端末401あるいはPC402において、新しいセキュリティレベルSを指定して管理センタ200に送信する(S300)。管理センタ200は車両の使用者が指定する新しいセキュリティレベルSを受信すると(S301)、データベースAを参照して使用者と車両との所有関係を確認し(S302)、該使用者によって登録されている車両(車載機器100)に指定された新しいセキュリティレベルSを送信する(S303)。
【0069】
車両は管理センタ200から受信(S304)した新しいセキュリティレベルSに基づいて、車両のセキュリティレベルSLをセットし(S306,S309、S312,S315,S318)、セキュリティレベルSLに応じた施錠処理を行なう(S307,S310、S313,S316,S319)。
【0070】
セキュリティレベルSLに対応するドアロック120の状態制御(S307,S310、S313,S316,S319)は図7を用いて説明した内容(S508,S511,S514,S517,S519)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0071】
新しいセキュリティレベルSが車両のセキュリティレベルSLと同じ場合(S317:NO)はセキュリティレベルSL変更せずに処理を終了する(S320)。
【0072】
上述の例は、管理センタ200を介してセキュリティレベルの指定を行なうものである、管理センタ200を介さずに直接、使用者が携帯端末401あるいはPC402を車両との通信によりセキュリティレベルの指定を行なう方法を用いてもよい。
【0073】
スケジュール情報によるセキュリティレベル決定処理と位置情報によるセキュリティレベル決定処理とから求められたセキュリティレベルのうち、安全を優先してレベルの高い方をセキュリティレベルとして用いる。
【0074】
また、使用者の利便性を優先してセキュリティレベルを設定してもよい。例えばセキュリティレベルがレベル1で、スケジュール上では車両の使用時間まで、まだ15分あったとしても、使用者が車両近くに居る場合には、レベル0に変更してもよい。同様に、スケジュール上では車両の使用時間まで、まだ1時間あったとしても、使用者が30分以内に車両に到着することが可能な距離にいる場合には、レベル1に変更してもよい。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】車両盗難防止システムの全体構成を示すブロック図。
【図2】使用者の位置情報からセキュリティレベル決定処理を説明するためのフロー図。
【図3】使用者の位置情報を取得する処理の詳細を説明するためのフロー図。
【図4】セキュリティレベルの変更を使用者に伝える処理を説明するためのフロー図。
【図5】使用者がセキュリティレベルの変更を行なう処理を説明するためのフロー図。
【図6】セキュリティレベルと解除方法,異常判定条件等の関係を示す図。
【図7】使用者のスケジュール情報からセキュリティレベル決定処理を説明するためのフロー図。
【符号の説明】
【0077】
100 車載機器
101 周辺監視センサ(状態検出手段,侵入検出手段)
102 カメラ(状態検出手段,侵入検出手段)
103 マイク(状態検出手段,侵入検出手段)
104 認識センサ(使用者判定手段)
105 メモリ(解除条件設定手段,侵入検出条件設定手段)
106 アラーム(報知手段)
107 GPS(駐車場所検出手段)
109 侵入センサ(状態検出手段,侵入検出手段)
110 電子キー
114 セキュリティECU(時間算出手段,条件判定手段,侵入判定手段,セキュリティレベル設定手段,セキュリティレベル解除手段)
124 警報機(報知手段)
125 ハザード(報知手段)
126 サイレン(報知手段)
127 通報装置(報知手段)
200 管理センタ
201 サーバ
400 ユーザ(使用者)
401 携帯端末(セキュリティレベル変更手段,スケジュール取得手段)
402 PC(パーソナルコンピュータ)(セキュリティレベル変更手段,スケジュール取得手段)
A,B,C データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両盗難に関する盗難関係事項を検出する車載機器と通信回線で接続され、前記車載機器を搭載した車両の盗難防止に関して複数のセキュリティレベルを有する車両盗難防止サービスを提供する管理センタを備える車両盗難防止システムであって、
前記車両の使用スケジュールを取得するスケジュール取得手段と、
現在日時から、前記使用スケジュールに含まれる前記車両が次に使用される日時までの時間を算出する時間算出手段と、
前記算出された時間に基づいて前記セキュリティレベルを設定するセキュリティレベル設定手段と、
を有することを特徴とする車両盗難防止システム。
【請求項2】
前記車両の使用者が前記セキュリティレベルを変更するためのセキュリティレベル変更手段を有するものである請求項1に記載の車両盗難防止システム。
【請求項3】
前記設定されたセキュリティレベルに応じて、前記セキュリティレベルが設定された状態を解除する解除条件を設定する解除条件設定手段と、
前記車両の状態を検出する状態検出手段と
前記検出された車両の状態が前記解除条件と一致するかを判定する条件判定手段と、
前記検出された車両の状態が前記解除条件と一致した場合に前記セキュリティレベルが設定された状態を解除するセキュリティレベル解除手段と、
を有するものである請求項1または2に記載の車両盗難防止システム。
【請求項4】
前記車両への侵入を検出する侵入検出手段と、
前記設定されたセキュリティレベルに応じて、前記車両への侵入を検出するための条件を設定する侵入検出条件設定手段と、
前記車両の状態が前記車両への侵入を検出するための条件と一致した場合に前記車両に侵入されたと判定する侵入判定手段と
を有するものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両盗難防止システム。
【請求項5】
前記車両に侵入されたと判定された場合に、前記車両の使用者にその旨を報知する報知手段を有するものである請求項4に記載の車両盗難防止システム。
【請求項6】
前記車両の使用者かどうかを判定する使用者判定手段を有し、前記解除条件に前記車両の使用者であると判定されることを含むものである請求項3に記載の車両盗難防止システム。
【請求項7】
前記車両の使用者かどうかを判定する使用者判定手段を有し、前記車両への侵入を検出するための条件に前記車両の使用者でないと判定されることを含むものである請求項4に記載の車両盗難防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−69504(P2006−69504A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258986(P2004−258986)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】