説明

車両運転ログ処理システムと車両運転ログ処理プログラム

【課題】無駄なく効率のよい車両運転ログの管理が可能となる車両運転ログ処理技術を提供する。
【解決手段】車両運転ログ処理システムは、車両運転中の操作状況及び車両状況の一方または双方を含む運転状況情報を取得する運転状況情報取得部42と、車両主電源のONからOFFまでの期間において取得される運転状況情報の少なくとも一部のデータからなる車両運転ログを順次生成するログ生成部43と、順次生成された車両運転ログが同一走行に属するかを運転状況情報を用いて判定するログ同一性判定部44と、ログ同一性判定部による判定結果に基づいて車両運転ログを連結するログ加工部45と、同一走行単位で仕分けられた車両運転ログを格納するログ格納部と13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転中の種々の運転状況を車両運転ログとして記録する車両運転ログ処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両運転ログ処理技術の1つとして、車両等の移動体において蓄積した情報を、効率よく処理するために、移動体の位置を示す移動体位置情報と、移動体位置情報が示す位置に移動体が位置した時刻を示す時刻情報とを受信する受信手段と、移動体が移動する移動区分の終端となる移動区分終端位置を特定する移動区分終端位置特定手段と、前記受信手段により受信された移動体位置情報と時刻情報とから、前記移動区分終端位置特定手段により特定された移動区分終端位置での移動体の進行方向を認識する進行方向認識手段と、前記進行方向認識手段により認識された進行方向を示す進行方向情報と、前記移動区分における移動体の移動情報とを対応付けて蓄積する蓄積手段とを備える移動情報処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この移動情報処理装置で取り扱われる走行ログは、カーナビゲーションシステムにおいて車両の位置を日時とともに、一定時間間隔で記録したものであり、車両位置の他に、車両に発生した事象、例えば、エンジンの始動(power on)、停止(Power off)等も記録されており、さらに、走行ログは車両の1運行を単位として単位走行ログに分割される。ここでの車両の1運行とは、車両のエンジンが始動してカーナビゲーションシステムの電源が投入されてからエンジンが停止してカーナビゲーションシステムの電源が遮断されるまでであり、したがって、単位走行ログは、走行ログをエンジンの始動、停止があった時間で分割することにより生成される。従って、エンジンの始動と停止が短い間隔で繰り返されると、大量の単位走行ログが生成されることになり、その取り扱いがわずらわしいものとなる。
【0003】
さらに、16ms毎にバッテリ情報更新プログラムを実行し、イグニッションオフとなった場合、バッテリ情報センタにバッテリ電圧、バッテリ電流、バッテリ液温度等の充放電特性やバッテリ既存容量、バッテリ交換日時等のバッテリ情報及び車種・グレード等の車両情報を送信するバッテリ情報管理システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。このバッテリ情報管理システムでは、センタがバッテリの規格外れ、バッテリ容量の既存容量からの変化、バッテリ不良、バッテリ寿命等を判断してバッテリ管理装置1に通知するとともに、バッテリ容量に応じた修正プログラムを配信する。ここでも、各車両は、直前のイグニッションオンからイグニッションオフまでの間の充放電特性を不揮発性メモリから読み出し、通信部を介してセンタに送信するとともに、バッテリ既存容量、バッテリ交換日時及び車両情報を通信部を介してセンタに送信しているので、そのバッテリ状態に関するログはイグニッションオンからイグニッションオフまでの期間を一単位として生成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−32275号公報(段落番号0006−0007、0068−0071、図8)
【特許文献2】特開2007−228657号公報(段落番号0034−0035、要約、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術のように、車両運転ログをエンジンの始動から停止までの期間、あるいはイグニッションオンからイグニッションオフまでの期間を一単位として生成した場合、その期間が短く、頻繁に繰り返されるような場合、一単位つまり一纏めの車両運転ログが大量に生成されるという不都合が生じる。その不都合を回避するため、短い期間で一纏めにされた車両運転ログを破棄する構成を採用した場合、正確な車両運転情報が得られなくなるという別な問題が生じる。
本発明の目的は、無駄なく効率のよい車両運転ログの管理が可能となる車両運転ログ処理技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両運転ログ処理システムの特徴構成は、車両運転中の操作状況及び車両状況の一方または双方を含む運転状況情報を取得する運転状況情報取得部と、車両主電源のONからOFFまでの期間において取得される前記運転状況情報の少なくとも一部のデータを一纏めにして車両運転ログを順次生成するログ生成部と、前記運転状況情報を用いて、前記ログ生成部で順次生成された車両運転ログが同一走行に属するものであるかどうかを判定するログ同一性判定部と、前記ログ同一性判定部による判定結果に基づいて前記車両運転ログを連結するログ加工部と、同一走行単位で仕分けられた前記車両運転ログを格納するログ格納部とを備える。
【0007】
この特徴構成によれば、ログ生成部によって順次生成される車両運転ログは、当該車両運転ログが同一走行に属するものであるかどうかという、ログ同一性判定部によって行われる判定の結果に基づいて、その前後の車両運転ログが互いに連結されて一纏めにされるか、あるいはその時点で車両運転ログを区分けし、その前後の車両運転ログは別々に一纏めにされるので、従来のように、単純に主電源ON/OFFなどの特定のイベントが発生することで自動的に車両運転ログが区分けされることで、纏められた車両運転ログが多量に生じるといった従来の不都合は回避される。
【0008】
また、本発明に係る車両運転ログ処理システムにおける特徴構成として、生成順に連続する車両運転ログの間で生じている車両主電源のOFF時間の長さまたは車両エンジンの停止時間の長さに基づいて当該車両運転ログが同一走行に属するかどうかを判定することも好適である。これは、短時間の主電源OFFは、同一走行中における特定施設(ガソリンスタンドやコンビニなど)への立ち寄り等であると想定されるからである。また、アイドリングストップ機能を有する自動車などでは、頻繁にエンジンが停止されることがあり、単純にエンジンON/OFFのイベント発生を車両運転ログの区分けに用いると、不要に車両運転ログが区分けされてしまうことになる。上記特徴構成によれば、車両主電源のOFF時間の長さエンジンの停止時間の長さに基づいてその前後の車両運転ログが同一走行に属するかどうかを、つまり車両運転ログを一纏めにするかあるいは区分けするかどうかを判定するので、ガソリンスタンドなどへの単なる立ち寄りによる車両主電源のOFFやアイドリングストップによる短いエンジン停止が発生するたびに、車両運転ログが自動的に区分けられるという不都合は回避される。
【0009】
また、本発明に係る車両運転ログ処理システムにおける特徴構成として、車両の自車位置情報を取得する自車位置情報取得部が備えられ、前記ログ同一性判定部は前記自車位置情報から得られる自車位置と地図上の特定の車両存在場所に基づいて車両運転ログが同一走行に属するかどうかを判定することも好適である。この特徴構成によれば、車両が停止して走行の継続が一時的に中断したとしても、その時点での車両存在場所によっては、走行が継続しているとみなすことができる。その結果、無用に操作ログが区分けされるような不都合は回避される。
【0010】
また、本発明に係る車両運転ログ処理システムにおける特徴構成として、生成順に連続する車両運転ログの間で生じている車両主電源のOFF状態が道路上で生じている場合には当該車両運転ログが同一走行に属すると判定するものとすることも好適である。この特徴構成では、車両主電源のOFF状態が道路上で生じている場合には車両が停止しているとしても、特定の出発地点から特定の目的地点まで走行するといった同一走行であるとみなされるので、このような主電源OFFのタイミングでは車両運転ログを区分けしないことで、無用に操作ログの区分けを抑制することができる。また、必ずしも車両が道路上で停止していなくとも、それに類する場所、例えば、ガソリンスタンドやコンビニやレストランなど車両の走行継続のための利用施設内で停止している場合にもその前後の走行は同一走行であるとみなすことができる。このため、生成順に連続する車両運転ログの間で生じている車両主電源のOFF状態が車両の走行継続のための利用施設内で生じている場合には当該車両運転ログが同一走行に属すると判定するものとすることも好適である。
【0011】
また、本発明に係る車両運転ログ処理システムにおける特徴構成として、車両運転者を証明するユーザ認証情報を取得するユーザ認証情報取得部がさらに備えられ、前記ログ同一性判定部は、前記ユーザ認証情報から運転者の同一性を判定し、同一運転者の運転走行を、生成順に連続する複数の車両運転ログが同一走行に属するとみなすための条件とすることも好適である。この特徴構成によれば、運転者の交代に基づいて車両運転ログを区分けすることができる。その結果、ユーザ別の車両運転ログを個別に管理できるという利点が得られる。その際、運転席からの離席に続いて実施された運転席への着席を検知した時に、前記車両運転者を示すユーザ認証情報を取得するように構成することで、確実に運転者の交代を確実に把握することができ、ユーザ別に車両運転ログを区分けすることができる。
【0012】
さらに、本発明は、上述した車両運転ログ処理システムの主要な機能を作り出す車両運転ログ処理プログラムも権利対象としている。そのような車両運転ログ処理プログラムは、車両運転中の操作状況及び車両状況の一方または双方を含む運転状況情報を取得する運転状況情報取得機能と、車両主電源のONからOFFまでの期間において取得される前記運転状況情報の少なくとも一部のデータを一纏めにして車両運転ログを順次生成するログ生成機能と、前記運転状況情報を用いて、前記ログ生成部で順次生成された車両運転ログが同一走行に属するものであるかどうかを判定するログ同一性判定機能と、前記ログ同一性判定部による判定結果に基づいて前記車両運転ログを連結するログ加工機能と、同一走行単位で仕分けられた前記車両運転ログを格納する機能とをコンピュータに実現させる。当然ながら、このような車両運転ログ処理プログラムも上述した車両運転ログ処理システムで述べた作用効果を得ることができ、さらにその好適な形態例として述べたいくつかの付加的技術をプログラムとして組み込むことも可能である。
【0013】
上述した車両運転ログ処理システムにおける各構成要素は、車両に搭載されるナビゲーション装置と、このナビゲーション装置との間で情報交換を行う車両運転ログ処理サーバとに振り分けることも可能である。このような、いわゆるサーバ・クライアントシステムのような構成を採用すると、多数の車両に搭載されたナビゲーション装置から送られてくる車両運転ログを一元管理できるという利点が得られる。例えば、そのような、車両に搭載されるナビゲーション装置との間で情報交換を行う、本発明による車両運転ログ処理サーバは、車両主電源のONからOFFまでの期間において取得される、車両運転中の操作状況及び車両状況の一方または双方を含む運転状況情報の少なくとも一部のデータからなる車両運転ログを各車両に搭載された車載器からデータ通信回線を通じて受信する受信部と、前記車両運転ログの内容に基づいて前記車両運転ログが同一走行に属するものであるかどうかを判定するログ同一性判定部と、前記ログ同一性判定部による判定結果に基づいて前記車両運転ログを連結するログ加工部と、同一走行単位で仕分けられた前記車両運転ログを格納するログ格納部とを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の車両運転ログ処理システムとして自動車に組み込まれた車両運転ログコントローラの第1の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、車両運転ログ処理コントローラ40、及び車両運転ログ処理コントローラ40との間で車載LANを通じてデータ伝送を行うナビゲーションコントローラ20と運転状況検出コントローラ30とからなるシステムの概略ブロック図を示している。
【0015】
ナビゲーションコントローラ20は、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)21、方位情報を出力するジャイロセンサ22、加速度情報を出力する加速度センサ24などからの信号入力に応じて自車位置情報を生成する自車位置情報生成機能、当該自車位置情報と地図データベース21に記憶された地図情報とに基づいて目的地までの経路をモニタ11aやスピーカ11bを通じて案内する機能などを備えている。また、ナビゲーションコントローラ20には、ユーザによる操作入力を受け付けるタッチパネルやスイッチなどの操作入力部12が接続されている。ナビゲーションコントローラ20は、車両運転ログ処理コントローラ40に対して自車が地図上のどの位置に存在しているかを示す自車位置情報を出力する。なお、この自車位置情報は、日時管理部10によって生成される日時コードと関係付けることが可能である。
【0016】
運転状況検出コントローラ30は、車速センサ31、操舵角センサ32、シフト位置検出センサ33、ブレーキセンサ34、アクセルセンサ35、燃料センサ36などのセンサが接続されている。車速センサ31は、車両の車輪に取り付けられたアクティブ車輪速センサからなり、車輪の回転速度を検出して速度信号として出力する。操舵角センサ32は、ステアリング装置の内部に取り付けられており、ステアリングホイールを転舵した場合の舵角を検出して操舵角信号として出力する。シフト位置検出センサ33、シフトレバーに内蔵され、シフト位置が「P(パーキング)」、「N(ニュートラル)」、「R(リバース)」、「D(ドライブ)」、「2(2速)」、「L(ロー)」のいずれの位置となっているかを検出する。ブレーキセンサ34は運転者のブレーキ操作量を検出し、アクセルセンサ35は運転者のアクセル操作量を検出する。燃料センサ36は、燃料消費量を検出する。運転状況検出コントローラ30は、これらのセンサ群からの信号入力に基づいて、車両の運転中の操作状況(アクセル開度やブレーキ操作など)及び車両状況(燃費や車速など)の一方または双方を含む運転状況情報を生成し、車両運転ログ処理コントローラ40に出力する。なお、この運転状況情報も、日時管理部10によって生成される日時コードと関係付けることが可能である。
【0017】
車両運転ログ処理コントローラ40は、ナビゲーションコントローラ20からの自車位置情報や運転状況検出コントローラ30からの運転状況情報を利用して、車両運転ログを生成するとともこの車両運転ログを必要に応じて加工し、ログ格納部13に格納し、データ通信部14を介して外部に転送する機能を有する。
【0018】
CPU等の演算処理装置を中核部材とする車両運転ログ処理コントローラ40は、図2に示すように、自車位置情報取得部41、運転状況情報取得部42、ログ生成部43、ログ同一性判定部44、ログ加工部45、ログフォーマット部46などの機能部を備えている。これらの機能部は、ハードウェア又はソフトウェア(プログラム)あるいはその両方により構築することができる。
【0019】
自車位置情報取得部41は、ナビゲーションコントローラ20から車両の自車位置情報を取得する。この自車位置情報から、自車位置と地図上の特定の車両存在場所(道路、ガソリンスタンド、レストランなど)を得ることができる。運転状況情報取得部42は、運転状況検出コントローラ30から車両運転中の操作状況や車両状況を表すデータを含む運転状況情報を取得する。操作状況データとして、操舵角、シフト位置、ブレーキ操作量、アクセル操作量、運転者着席/離席状態などが含まれる。車両状況データとしては、車速、加速度、燃費などが含まれる。
【0020】
ログ生成部43は、車両主電源のONからOFFまでの期間において取得される自車位置情報や運転状況情報の少なくとも一部のデータからなる車両運転ログを順次生成する。図3に模式的に示すように、予め決められている車両運転ログに記述されるべきイベントが発生する毎に車両運転ログが生成される。これらの順次生成されていく車両運転ログは、後で詳しく説明されるが、自動車の主電源ONとOFFのタイミングやエンジンON(駆動)とOFF(停止)のタイミングで区分けされ、ログ群として纏められるが、予め設定されている区分け要否条件に基づいて、区分けせずにそのタイミングの前後ログ群(または単独のログ)を一纏めにすることもある。
【0021】
ログ同一性判定部44は、自車位置情報や運転状況情報から読み出される情報に基づいて、ログ生成部43で順次生成されていく車両運転ログが同一走行に属するものであるかどうかを判定する。例えば、特定の出発地(例えば自宅)から特定の目的地(例えば、遊園地)までの走行は同一の走行とみなして、その間に生じたログ群を区分けせず、一纏めにする。つまり、このログ同一性判定部44で用いられる判定条件は、前述した区分け要否条件である。ログ加工部45は、ログ同一性判定部44による判定結果に基づいて隣り合う車両運転ログの間で区分けせず、互いを連結して一纏めのログ群とする。
【0022】
ログフォーマット部46は、必要に応じてログ加工部45によって加工された車両運転ログを、ログ格納部13に格納するか、またはデータ通信部14を介して外部に転送するか、あるいはその両方を行うために、所定のフォーマットに変換する。その際、例えば、車両運転ログはログ加工部45で一纏めにされた同一走行単位で、1ファイルとなるような形式が採用される。
【0023】
ログ同一性判定部44で用いられる同一性判定条件は、車両運転ログが特定の出発地から特定の目的地までの走行を意味する同一走行に属するものかどうかを判定するためのものであり、ここで採用されているいくつかの条件を以下に示す。
(1)
生成順に連続する車両運転ログの間で生じている車両主電源のOFF時間(主電源OFF時間、つまり主電源OFFから主電源ONまでの間隔)の長さまたは車両エンジンの停止時間(エンジンOFF時間、つまりエンジンOFFからエンジンONまでの間隔)の長さに基づいて当該車両運転ログ(またはログ群)が前記同一走行に属するかどうかを判定する。
(2)
生成順に連続する車両運転ログの間で生じている車両主電源のOFF状態または車両エンジンの停止状態が道路上で生じているかどうか(自車位置情報から得られる自車位置と地図から認識可能である)に基づいて車両運転ログが前記同一走行に属するかどうかを判定する。)
(3)
生成順に連続する車両運転ログの間で生じている車両主電源のOFF状態または車両エンジンの停止状態が車両の走行継続のための利用施設内で生じているかどうか(自車位置情報から得られる自車位置と地図から認識可能である)に基づいて車両運転ログが前記同一走行に属するかどうかを判定する。
上記(1)から(3)の条件を含む同一走行判定の個別条件は、それぞれ単独で用いてもよいし、組み合わせで用いてもよい。
【0024】
上述したように構成された車両運転コントローラ40による、車両運転ログの生成と加工(ログ区分け処理)に関する制御の一例を図4と図5のフローチャートを用いて以下に説明する。図4は、自動車の主電源(キースイッチ)がONされることにより車両運転ログの生成処理がスタートし、主電源がOFFされることにより車両運転ログの生成処理が終了する制御の流れを示している。図5は、車両運転ログの生成処理であるログ生成ルーチンにおける、上述した同一性判定条件に基づく車両運転ログの区分け処理の流れを示している。
【0025】
まず、主電源がONされると(#02)、前回の主電源OFFの時刻と今回の主電源ONの時刻とから主電源OFF時間を算出して、その主電源OFF時間と予め設定されている主電源OFF閾値:SH0とを比較する(#07)。この主電源OFF閾値:SH0は数時間以上の長時間に対応する値である。主電源OFF時間がこのような長時間でない場合(#07No分岐)、さらに主電源のOFF閾値:SH0より短い時間に対応する値である主電源OFF閾値:SH1とを比較する(#08)。主電源OFF時間が主電源OFF閾値:SH1より大きければ(#08Yes分岐)、さらに現在自車両が道路上であるかどうかを自車位置情報に含まれている自車位置と自車位置と地図上の特定の車両存在場所に基づいてチェックする(#09)。自車両が道路上でなければ(#74No分岐)、さらに現在自車両が設定された出発点から目的地までの移動経路の走行途中の場所、つまり移動経路に属する場所に位置しているかどうかをチェックする(#10)。このステップ#09と#10のチェックは、自車位置情報に含まれている自車位置と自車位置と地図上の特定の車両存在場所に基づいて行われる。例えば、車両が存在している場所が道路であれば、同一目的の走行のための移動中であるとみなすことができる。また、車両が存在している場所が道路から遠く離れていない、ガソリンスタンド、コンビニ、レストランなどの場合は、移動経路に属する場所とみなすことができる。従って、自車両が道路上であれば(#09Yes分岐)、また、自車両が道路上でなくとも(#09No分岐)、自車両が移動経路に属する場所に位置している場合(#10Yes分岐)、直前の車両運転ログ、つまり前回の主電源OFF時に作成された車両運転ログに対する区分け処理がキャンセルされる(#12)。これは、後で説明されるが、主電源OFF時のタイミングで生成されている車両運転ログはとりあえずそこで区分けされ、以後に生成される車両運転ログとは別個のログ群とされるが、主電源OFF時間(数分から1時間程度)が長くても、移動経路そのものである道路上または道路上でなくとも前述したような移動経路に属する場所で主電源OFFされた場合には同一走行とみなし、その走行に属することになるその前後の車両運転ログも一纏めにするためである。また、ステップ#08のチェックで、主電源OFF時間が主電源閾値:SH1以下の場合、つまり、主電源OFF時間がかなり短い場合(#08No分岐)、直接ステップ#12にジャンプして、この主電源OFFは特定の出発地から特定の目的地までの同一走行中に生じたものとみなして、その前後のイベントの発生に基づいて生成された車両運転ログをそこで区分けせず、一纏めとする。さらに、ステップ#07のチェックで、主電源OFF時間が長時間の場合(#07Yes分岐)、車両運転ログを区分けすることが好ましいので直接ステップ#12にジャンプする。
【0026】
次いで、車両運転ログの生成が開始される(#14)。つまり図5のログ生成ルーチンが実行される。このログ生成ルーチンの実行中は、主電源OFFがチェックされ(#16)、主電源がOFFされない限りログ生成ルーチンが実行され、主電源がOFFされると、その時点で車両運転ログに対する主電源OFF時の区分け処理がなされる(#18)。このログ区分け処理とは、図3で模式的に示されているように、主電源OFFのタイミングでそれまでに生成された車両運転ログと、次の主電源ONのタイミングから生成される車両運転ログとを区分けして別のログ群とする処理である。この区分け処理の後、ログの生成が中止、つまりログ生成ルーチンが停止される(#20)。
【0027】
主電源ONのタイミングから主電源OFFのタイミングまでの間で実行されるログ生成ルーチンでは、まずログ生成イベントが発生しているかどうかがチェックされる(#50)。例えば、エンジンOFFやシフトチェンジやアクセル・ブレーキなど任意のタイミングで発生するイベントや、燃費や走行距離などの経時的に発生するイベントがあるが、いずれにしてもログ化要因として設定されているイベントが発生すると、図3で模式的に示すように、そのイベント内容を記述した車両運転ログが生成される(#52)。
【0028】
車両運転ログが生成されると、この生成された車両運転ログを最後として1つのログ群に纏めるためのログの区分け処理を行うかどうか、つまりログの同一性判定が、以下のステップで行われる。まず、エンジンONが発生したかどうかがチェックされる(#70)。エンジンONの発生ではない場合(#70No分岐)、車両運転ログの区分けを行う必要がないのでステップ#50にジャンプして、次のログ生成イベントの発生に備える。エンジンOFFの発生の場合(#70Yes分岐)、さらに前回のエンジンOFFの時刻と今回のエンジンONの時刻とからエンジンOFF時間を算出して、そのエンジンOFF時間と予めアイドリングストップ時間に対応させて設定されているエンジンOFF閾値:SH2とを比較する(#72)。エンジンOFF時間がエンジン閾値:SH2より小さければ(#72Yes分岐)、車両運転ログの区分けを行う必要がないのでステップ#50にジャンプする。エンジンOFF時間がエンジン閾値:SH2以上であれば(#72No分岐)、さらに現在自車両が道路上であるかどうかを自車位置情報に含まれている自車位置と自車位置と地図上の特定の車両存在場所に基づいてチェックする(#74)。自車両が道路上であれば(#74Yes分岐)、車両運転ログの区分けを行う必要がないのでステップ#50にジャンプする。自車両が道路上でなければ(#74No分岐)、さらに現在自車両が設定された出発点から目的地までの移動経路の走行途中の場所、つまり移動経路に属する場所に位置しているかどうかをチェックする(#76)。#76のチェックで、自車両が移動経路に属する場所に位置している場合(#76Yes分岐)、車両運転ログの区分けを行う必要がないのでステップ#50にジャンプする。自車両が移動経路に属する場所に位置していない場合(#76No分岐)、エンジンOFF時間が長く、かつ自車両の位置が道路上でも移動経路に属する場所でもないので、今回のエンジンONタイミングで車両運転ログに対するエンジンON時の区分け処理を実行して(#78)、ステップ#50に戻る。
【0029】
図4と図5のフローチャートに基づく車両運転ログ処理により、車両運転ログは原則としてとして自動車の主電源ON/OFFのタイミングやエンジンON(駆動)/OFF(停止)のタイミングで区分けされてログ群として纏められるが、予め設定されている区分け要否条件に基づいて、特定の出発地から特定の目的地までといった同一走行単位とみなされる走行経路で生成された車両運転ログは細切れに区分けされずに、一纏めの車両運転ログとして取り扱われることになる。
【0030】
次に、本発明による車両運転ログコントローラの第2の実施形態を、図6の概略ブロック図と図7の機能ブロック図を用いて説明する。上述した第1の実施形態での車両運転ログ処理は、運転者の交代などは考慮しないシングルユーザタイプであったが、この第2の実施形態での車両運転ログ処理は、車両運転ログを運転者別で区分するというマルチユーザタイプの車両運転ログ処理である。図6は図1に対応する概略ブロック図であり、図7は図2に対応する機能ブロック図である。図6と図7において、対応する図1と図2と同じ機能を示す機能部には同じ図番を付すことで、その詳細な説明は省略する。まず、図6の概略ブロック図が図1と異なる点は、運転者の離席/着席を検知するシートセンサ37と、指紋や虹彩、あるいは声や顔などの生体情報の特徴を検出する認証デバイス51と、この認証デバイス51からの検出信号に基づいて運転者としてのユーザを認証してユーザ認証情報を出力するユーザ認証コントローラ50が備えられていることである。従って、運転状況検出コントローラ30から車両運転ログコントローラ40に送られる運転状況情報には、運転者の離席/着席情報が含まれることになる。図7の機能ブロック図が図2と異なる点は、ユーザ認証コントローラ50から運転するユーザを示すユーザ認証情報を取得するユーザ認証情報取得部47が備えられていることである。これにより、ログ同一性判定部44は、ユーザ認証情報取得部47が取得したユーザ認証情報から運転者の同一性を判定し、同一運転者の運転走行を、生成順に連続する複数の車両運転ログが同一走行に属するための条件とすることができる。つまり、運転者が代わると、その時点で、車両運転ログは区分けされる。
【0031】
以下に、運転者の同一性を考慮した、車両運転ログ処理制御の一例を図8と図9のフローチャートを用いて以下に説明する。なお、図8は図4に対応するフローチャートで、図9は図5に対応するフローチャートである。図8と図9において、対応する図4と図5と同じ内容のステップには同じステップ番号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0032】
まず、主電源がONされると(#02)、ユーザ認証が完了しているかチェックされる(#04)。ユーザ認証が完了していると、ユーザ認証情報に基づいて、前回の主電源OFFまで運転していたユーザと同一人が運転するかどうかをチェックする(#06)。前回と同一ユーザであり、運転者が代わっていない場合(#06Yes分岐)、第1の実施形態と同様で、主電源OFF閾値:SH0を用いた主電源OFF時間のチェック(#07)、主電源OFF閾値:SH1を用いた主電源OFF時間のチェック(#08)、さらには自車両の位置する場所のチェック(#09と#10)による同一走行判定を行う。同一走行とみなされると、直前に車両運転ログに対して行われた区分け処理をキャンセルし(#12)、ログ生成を開始する(#14)。
【0033】
ステップ#06のチェックで、前回と同一ユーザでなく、運転者が代わっていた場合(#06No分岐)、直前の車両運転ログに対して行われた区分け処理を有効とみなし、ステップ#14にジャンプして、車両運転ログの生成、つまり図9のログ生成ルーチンを開始する。
【0034】
図9で示すログ生成ルーチンでは、ログ生成イベントが発生し(#50Yes分岐)、車両運転ログが生成されると(#52)、まず、運転者が離席したかどうかを、運転状況情報に含まれている運転者の離席/着席情報に基づいてチェックする(#60)。運転者の離席が発生していなければ(#60No分岐)、そのまま、第1の実施形態と同様で、ステップ#70からステップ#78の処理がなされる。運転者の離席が発生していた場合(#60Yes分岐)、さらに運転者の着席検出を待ち(#62)、さらに運転者の着席後に行われるユーザ認証の完了を待つ(#62)。ユーザ認証が完了すると、先ほどまで着席していたユーザと今新たに着席したユーザとが同一であるかどうかをチェックする(#66)。同一ユーザであれば(#66Yes分岐)、運転者が代わっていないので、第1の実施形態と同様で、ステップ#70からステップ#78の処理がなされる。同一ユーザでなく(#66NO分岐)、運転者が代わった場合、ステップ#52で生成された車両運転ログから別な走行が始まるとみなし、ステップ#78にジャンプし、車両運転ログに対するエンジンON時の区分け処理を実行する。
【0035】
図8と図9のフローチャートに基づく車両運転ログ処理により、車両運転ログは原則としてとして、運転者の交代のタイミング、自動車の主電源ON/OFFのタイミング、エンジンON(駆動)/OFF(停止)のタイミングで区分けされてログ群として纏められるが、予め設定されている区分け要否条件に基づいて、特定の出発地から特定の目的地までといった同一走行単位とみなされる走行経路で生成された車両運転ログは細切れに区分けされずに、一纏めの車両運転ログとして取り扱われることになる。
【0036】
〔その他の実施形態〕
(1)
上述した実施形態では、本発明による車両運転ログ処理システムは、当該システムを搭載している自動車において完結している、スタンドアローンタイプとして実現されている。これに代えて、本発明による車両運転ログ処理システムを、図10で模式的に示すようなサーバ・クライアントタイプで実現することができる。ここでは、上述した実施の形態での車両運転ログコントローラのうちのログ同一性判定部44とログ加工部45を取り除いた車両運転ログコントローラ140を含む車載器として各自動車に搭載されている車載ナビゲーション装置1と、この車載ナビゲーション装置1とデータ通信回線を介して接続可能な車両運転ログ処理サーバ100とから構成されている。
【0037】
ナビゲーションサーバ100では、多くの自動車に搭載されているナビゲーション装置1からデータ通信回線と受信部101を通じて随時入力される車両運転ログまたは車両運転ログ群がユーザ別にメモリ102に格納される。ナビゲーションサーバ100には、車両運転ログの内容に基づいて前記車両運転ログが同一走行に属するものであるかどうかを判定するログ同一性判定部144と、このログ同一性判定部144による判定結果に基づいて車両運転ログを連結するログ加工部145と、ユーザ別に同一走行単位で仕分けられた車両運転ログを格納するログ格納部113が備えられている。ログ同一性判定部144は先の実施形態でのログ同一性判定部44と実質的に同じ機能を有し、ログ加工部145は先の実施形態でのログ加工部45と実質的に同じ機能を有し、ログ格納部113は先の実施形態でのログ格納部13と実質的に同じ機能を有するので、詳しい説明は省略する。このようなクライアント・サーバタイプの車両運転ログ処理システムでは、多くのユーザの車両運転ログをユーザ別に一括して管理できるという利点が得られる。
(2)
上述した実施形態では、原則的には、主電源ON/OFF、エンジンON/OFF、さらには運転者の交代を車両運転ログの区分けのイベントとしていたが、その他の運転状況や自車位置を表すイベントを車両運転ログの区分けのイベントとしてもよい。
(3)
上述した実施形態では、主電源閾値:SH1やエンジン閾値:SH2を固定値としていたが、運転状況や自車位置などに応じて変動するダイナミック閾値としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る車両運転ログ処理システムの概略構成を示す概略ブロック図
【図2】車両運転ログ処理コントローラの機能ブロック図
【図3】車両運転ログの生成タイミングと区分けタイミングを説明する説明図
【図4】車両運転ログ処理の全体の流れを示すフローチャート
【図5】ログ生成ルーチンを示すフローチャート
【図6】別形態の車両運転ログ処理システムの概略構成を示す概略ブロック図
【図7】別形態の車両運転ログ処理コントローラの機能ブロック図
【図8】別形態における車両運転ログ処理の全体の流れを示すフローチャート
【図9】別形態におけるログ生成ルーチンを示すフローチャート
【図10】クライアント・サーバタイプの車両運転ログ処理システムの概略構成を示す概略ブロック図
【符号の説明】
【0039】
40:車両運転ログコントローラ
41:自車位置情報取得部
42:運転状況情報取得部
47:ユーザ認証情報取得部
43:ログ生成部
44:ログ同一性判定部
45:ログ加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両運転中の操作状況及び車両状況の一方または双方を含む運転状況情報を取得する運転状況情報取得部と、
車両主電源のONからOFFまでの期間において取得される前記運転状況情報の少なくとも一部のデータからなる車両運転ログを順次生成するログ生成部と、
前記運転状況情報を用いて、前記ログ生成部で順次生成された車両運転ログが同一走行に属するものであるかどうかを判定するログ同一性判定部と、
前記ログ同一性判定部による判定結果に基づいて前記車両運転ログを連結するログ加工部と、
同一走行単位で仕分けられた前記車両運転ログを格納するログ格納部と、
を備える車両運転ログ処理システム。
【請求項2】
生成順に連続する車両運転ログの間で生じている車両主電源のOFF時間の長さまたは車両エンジンの停止時間の長さに基づいて当該車両運転ログが同一走行に属するかどうかを判定する請求項1に記載の車両運転ログ処理システム。
【請求項3】
車両の自車位置情報を取得する自車位置情報取得部が備えられ、前記ログ同一性判定部は前記自車位置情報から得られる自車位置と地図上の特定の車両存在場所に基づいて車両運転ログが同一走行に属するかどうかを判定する請求項1または2に記載の車両運転ログ処理システム。
【請求項4】
生成順に連続する車両運転ログの間で生じている車両主電源のOFF状態が道路上で生じている場合には当該車両運転ログが同一走行に属すると判定する請求項3に記載の車両運転ログ処理システム。
【請求項5】
生成順に連続する車両運転ログの間で生じている車両主電源のOFF状態が車両の走行継続のための利用施設内で生じている場合には当該車両運転ログが同一走行に属すると判定する請求項3または4に記載の車両運転ログ処理システム。
【請求項6】
車両運転者を示すユーザ認証情報を取得するユーザ認証情報取得部がさらに備えられ、前記ログ同一性判定部は、前記ユーザ認証情報から運転者の同一性を判定し、同一運転者の運転走行を、生成順に連続する複数の車両運転ログが同一走行に属するための条件とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両運転ログ処理システム。
【請求項7】
運転席からの離席に続く運転席への着席を検知した時に、前記車両運転者を示すユーザ認証情報を取得する請求項6に記載の車両運転ログ処理システム。
【請求項8】
車両運転中の操作状況及び車両状況の一方または双方を含む運転状況情報を取得する運転状況情報取得機能と、
車両主電源のONからOFFまでの期間において取得される前記運転状況情報の少なくとも一部のデータを一纏めにして車両運転ログを順次生成するログ生成機能と、
前記運転状況情報を用いて、前記ログ生成部で順次生成された車両運転ログが同一走行に属するものであるかどうかを判定するログ同一性判定機能と、
前記ログ同一性判定部による判定結果に基づいて前記車両運転ログを連結するログ加工機能と、
同一走行単位で仕分けられた前記車両運転ログを格納する機能と、
をコンピュータに実現させる車両運転ログ処理プログラム。
【請求項9】
車両主電源のONからOFFまでの期間において取得される、車両運転中の操作状況及び車両状況の一方または双方を含む運転状況情報の少なくとも一部のデータからなる車両運転ログを各車両に搭載された車載器からデータ通信回線を通じて受信する受信部と、
前記車両運転ログの内容に基づいて前記車両運転ログが同一走行に属するものであるかどうかを判定するログ同一性判定部と、
前記ログ同一性判定部による判定結果に基づいて前記車両運転ログを連結するログ加工部と、
同一走行単位で仕分けられた前記車両運転ログを格納するログ格納部と、
を備える車両運転ログ処理サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−152687(P2010−152687A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330678(P2008−330678)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】