車体構造
【課題】相手車両のバンパビームが車体後部に乗り上げることを防ぐことができる車体構造を提供する。
【解決手段】車体構造10は、後輪17の車体前方側にリヤサイドドア13が設けられ、リヤサイドドア13に車体前後方向に延出されたリヤドアビーム21が設けられている。車体構造10は、リヤホイールアーチ33から車体後方に向けて延出されるとともに、リヤドアビーム21の延長線25上に設けられたサイドメンバアッパー56と、サイドメンバアッパー56の後部67からリヤホイールアーチ33の下後部33cへ向けて下り勾配に延出されたサイドメンバロアー57とを備えている。
【解決手段】車体構造10は、後輪17の車体前方側にリヤサイドドア13が設けられ、リヤサイドドア13に車体前後方向に延出されたリヤドアビーム21が設けられている。車体構造10は、リヤホイールアーチ33から車体後方に向けて延出されるとともに、リヤドアビーム21の延長線25上に設けられたサイドメンバアッパー56と、サイドメンバアッパー56の後部67からリヤホイールアーチ33の下後部33cへ向けて下り勾配に延出されたサイドメンバロアー57とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪の車体前方側にサイドドアが設けられ、サイドドアに車体前後方向に延出されたドアビームが設けられた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体構造のなかには、車体前後方向にリヤフレームが延出され、リヤフレームの上方にアッパフレームがアーチ状に設けられ、アッパフレームの後端部がリヤフレームの後端部に連結されたものが知られている。
アーチ状のアッパフレームを設けることで、相手車両(具体的には、バンパビームが高い位置に配置された相手車両)が車体後方から衝突した場合に、相手車両のバンパビームをアッパフレームで支えることが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1361140号明細書(EP1361140A2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、相手車両のバンパビームがアーチ状のアッパフレームに衝突した場合、アッパフレームが折れ曲がることが考えられる。
アッパフレームが折り曲げられた場合、折り曲げられたアッパフレーム(すなわち、車体後部)に相手車両のバンパビームが乗り上げる虞がある。
【0005】
本発明は、相手車両のバンパビームが車体後部に乗り上げることを防ぐことができる車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、後輪の車体前方側にサイドドアが設けられ、前記サイドドアに車体前後方向に延出されたドアビームが設けられた車体構造において、前記後輪の上方に設けたリヤホイールアーチから車体後方に向けて延出されるとともに、前記ドアビームの延長線上に設けられたサイドメンバアッパーと、前記サイドメンバアッパーの後部から前記リヤホイールアーチの後部へ向けて下り勾配に延出されたサイドメンバロアーと、を備え、前記サイドメンバアッパーおよび前記サイドメンバロアーで二股に分岐した補強フレームを形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記サイドメンバアッパーおよび前記ドアビーム間で、かつ、前記ドアビームの延長線上に、給油用のフィラーパイプを保護するフィラーガードが介装されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記サイドドアを閉じた状態で前記ドアビームの後方に、サイドドアを閉じた状態に保持するストライカが設けられ、前記ストライカおよび前記フィラーガード間で、かつ、前記ドアビームの延長線上に、前記ストライカに荷重を伝達可能なストライカ伝達部材が介装されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4は、前記サイドドアはリヤサイドドア、前記ドアビームは前記リヤサイドドアに設けられたリヤドアビームであり、前記リヤサイドドアの車体前方にフロントサイドドアが設けられ、前記フロントサイドドアに車体前後方向に延出されたフロントドアビームが設けられ、前記フロントドアビームは、後端部が前記リヤドアビームの前端部近傍に配置されるとともに、前記リヤドアビームの延長線上に設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項5は、前記サイドメンバロアーの車幅方向中心側に、車体前後方向に向けてリヤフレームが延出され、前記リヤフレームおよび前記サイドメンバロアーの前部が、車幅方向に向けて延出された連結フレームで連結されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、リヤホイールアーチから車体後方に向けてサイドメンバアッパーを延ばし、サイドメンバアッパーをドアビームの延長線上に設けた。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、車体後部に作用した荷重の一部をサイドメンバアッパーを経てドアビームに伝えることができる。
これにより、ドアビームで荷重の一部を効率よく支えることができ車室が変形することを防ぐことができる。
【0012】
また、サイドメンバアッパーの後部からリヤホイールアーチの後部へ向けてサイドメンバロアーを下り勾配に延ばした。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、下り勾配のサイドメンバロアーでバンパビームを受けることができる。
これにより、下り勾配のサイドメンバロアーでバンパビームを下方に向けて案内することができ、バンパビームが車体後部(具体的には、後輪)に乗り上げることを防ぐことができる。
【0013】
さらに、サイドメンバロアーにバンパビームが当たってサイドメンバロアーが変形することでサイドメンバロアーの後端部が下がる。
ここで、サイドメンバロアーはサイドメンバアッパーの後部から延出されている。
よって、サイドメンバロアーの後端部が下がることで、サイドメンバアッパーの後端部を下方に下げることができる。
【0014】
サイドメンバアッパーの後端部を下げることで、サイドメンバアッパーの後端部が相手車両(具体的には、フロントサイドフレーム)に上方から当たり、バンパビームを下方に押し下げる。
相手車両(フロントサイドフレーム)が下方に押し下げられることで、相手車両のバルクヘッドロアーがリヤフレームに上方から当たる。
【0015】
ここで、バルクヘッドロアーは、冷却部材(例えばラジエータ)などを支える剛性の高い部材である。
これにより、剛性の高いバルクヘッドロアーをリヤフレームに上方から当て、リヤフレームを変形させて衝突エネルギーを吸収することができる。
【0016】
一方、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームと同じ高さに配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、通常の車体構造と同様に、リヤフレームで衝突エネルギーを支えることができる。
【0017】
また、車体構造に補強フレーム(サイドメンバアッパーおよびサイドメンバロアー)を備えることで、車体構造の剛性を高めることができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、サイドメンバアッパーおよびドアビーム間で、かつ、ドアビームの延長線上にフィラーガードを介装(介在)した。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、車体後部に作用した荷重の一部をサイドメンバアッパーおよびフィラーガードを経てドアビームに伝えることができる。
これにより、ドアビームで荷重の一部を効率よく支えることができ車室が変形することを防ぐことができる。
【0019】
さらに、サイドメンバアッパーおよびドアビーム間にフィラーガードを介装することで、フィラーガードで給油用のフィラーパイプを保護することができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、ドアビームの後方にストライカを設け、ストライカおよびフィラーガード間で、かつ、ドアビームの延長線上にストライカ伝達部材を介装(介在)した。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、車体後部に作用した荷重の一部をサイドメンバアッパー、フィラーガード、ストライカ伝達部材およびストライカを経てドアビームに伝えることができる。
これにより、ドアビームで荷重の一部を効率よく支えることができ車室が変形することを防ぐことができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、フロントドアビームの後端部を前記リヤドアビームの前端部近傍に配置するとともに、フロントドアビームをリヤドアビームの延長線上に設けた。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、車体後部に作用した荷重の一部をサイドメンバアッパー、フィラーガード、ストライカ伝達部材およびストライカ、リヤドアビームおよびフロントドアビームに伝えることができる。
【0022】
これにより、リヤドアビームおよびフロントドアビームで荷重の一部を効率よく支えて車室が変形することを防ぐことができる。
したがって、車室が変形することを防ぐために、トランクルームを構成するフレームの剛性を必要以上に高める必要がないので、トランクルームのスペースが損なわれることがない。
【0023】
請求項5に係る発明では、サイドメンバロアーの前部を連結フレームでリヤフレームに連結した。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、サイドメンバロアーでバンパビームを確実に受けることができる。
これにより、相手車両(フロントサイドフレーム)を一層確実に下方に押し下げることができ、かつ、リヤフレームを一層良好に変形させて衝突エネルギーを一層良好に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る車体構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体構造の要部を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る車体構造を示す側面図である。
【図4】本発明に係る補強フレームを示す分解斜視図である。
【図5】本発明に係るサイドメンバを示す分解斜視図である。
【図6】本発明に係る連結フレームを上方から見た状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る連結フレームを下方から見た状態を示す斜視図である。
【図8】図6の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係る車体構造の後部に作用した荷重をサイドメンバアッパー、リヤドアビームおよびフロントドアビームに伝える例を説明する図である。
【図10】本発明に係る車体構造の後部に衝突した相手車両のバンパビームが上方に乗り上げることを防止する例を説明する図である。
【図11】本発明に係る車体構造の後部に衝突した相手車両の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0026】
実施例に係る車体構造10について説明する。
図1に示すように、車体構造10は、車体フレーム11と、車体フレーム11の後開口部12に開閉自在に設けられたリヤサイドドア(サイドドア)13と、車体フレーム11の前開口部14に開閉自在に設けられたフロントサイドドア(サイドドア)15と、車体フレーム11の前部に設けられた前輪16と、車体フレーム11の後部に設けられた後輪17とを備えている。
【0027】
リヤサイドドア13は、後輪17の車体前方側に開閉自在に設けられ、補強用のリヤドアビーム(ドアビーム)21と、リヤドア用施錠部(図示せず)が設けられている。
リヤドアビーム21は、リヤサイドドア13の前端部13aおよび後端部13bに渡って掛け渡され、リヤサイドドア13で後開口部12を閉じた状態において車体前後方向に延出されている。
リヤドア用施錠部は、リヤサイドドア13で後開口部12を閉じた状態において、後述する後ストライカ(ストライカ)74(図2参照)に係止可能な部材である。
【0028】
フロントサイドドア15は、リヤサイドドア13の車体前方に備えられ、補強用のフロントドアビーム23と、フロントドア用施錠部(図示せず)が設けられている。
フロントドアビーム23は、フロントサイドドア15の前端部15aおよび後端部15bに渡って掛け渡され、フロントサイドドア15で前開口部14を閉じた状態において車体前後方向に延出されている。
【0029】
このフロントドアビーム23は、後端部23aがリヤドアビーム21の前端部21a近傍に配置されるとともに、リヤドアビーム21の延長線25上に設けられている。
フロントドア用施錠部は、フロントサイドドア15で前開口部14を閉じた状態において、前ストライカ(図示せず)に係止可能な部材である。
【0030】
図2、図3に示すように、車体フレーム11は、車体前後方向に延出されたリヤフレーム31と、リヤフレーム31に設けられたフロアパネル32と、フロアパネル32およびリヤフレーム31に設けられたリヤホイールアーチ(リヤホイールハウス)33と、リヤホイールアーチ33の上方に設けられたリヤピラー34と、リヤピラー34から車体後方に向けて延出されたリヤメンバー35と、リヤメンバー35の後端部35aおよびリヤフレーム31の後端部31aに設けられたリヤクロスメンバー36と、リヤフレーム31の後端部に設けられたリヤバンパビーム37とを備えている。
【0031】
また、車体フレーム11は、リヤホイールアーチ33の上部33aに設けられたダンパスチフナ38と、リヤホイールアーチ33内に収納されたフィラーパイプ39と、リヤホイールアーチ33に設けられた補強フレーム40とを備えている。
【0032】
リヤフレーム31は、リヤホイールアーチ33の内壁42(図6参照)に沿って車体前後方向に延出され、車体フレーム11の骨格を形成する部材である。
換言すれば、リヤフレーム31は、補強フレーム40に対して車幅方向中心側に設けられ、かつ、車体前後方向に向けて延出されている。
【0033】
フロアパネル32は、リヤフレーム31に設けられ、フロアパネル32の外側部32aが補強フレーム40の下方まで張り出されている。
リヤホイールアーチ33は、後輪17の上方に設けられ、半円弧状に形成されている。リヤホイールアーチ33の上部33aにダンパスチフナ38が設けられている。
【0034】
ダンパスチフナ38は、リヤホイールアーチ33の上部33aおよびリヤピラー34を連結する骨材である。
ダンパスチフナ38は、側壁44、前壁45、後壁46で閉断面略コ字状に形成されている。このダンパスチフナ38は、リヤホイールアーチ33の上部33aに下端部38aが設けられるとともに、リヤピラー34に上端部38bが設けられている。
【0035】
図4に示すように、補強フレーム40は、リヤホイールアーチ33に設けられたサイドメンバ51と、サイドメンバ51の車体前方側に設けられたフィラーガード52と、フィラーガード52の車体前方側に設けられたストライカ伝達部材53と、サイドメンバ51をリヤフレーム31に連結する連結フレーム54(図6、図7参照)とを備えている。
【0036】
図5に示すように、サイドメンバ51は、略扇形状に形成されたサイド平坦パネル61と、サイド平坦パネル61に接合されたサイド膨出パネル62とを備えている。
サイド平坦パネル61は、略扇形状に形成された平坦な板材である。
サイド膨出パネル62は、リヤホイールアーチ33(図2参照)から車体後方に向けて延出された膨出パネルアッパー63と、膨出パネルアッパー63の後部63aに設けられた膨出パネルロアー64とを備えている。
【0037】
膨出パネルアッパー63は、断面略コ字状(詳しくは、いわゆる、ハット状)に形成され、サイド平坦パネル61の上辺61aに沿って上下のフランジ63b,63cが接合されることで、閉断面のサイドメンバアッパー56(図8参照)が形成されている。
また、膨出パネルロアー64は、断面略コ字状(詳しくは、いわゆる、ハット状)に形成され、サイド平坦パネル61の下辺61bに沿って上下のフランジ64a,64bが接合されることで、閉断面のサイドメンバロアー57(図8参照)が形成されている。
【0038】
すなわち、サイドメンバ51は、リヤホイールアーチ33から車体後方に向けて延出されたサイドメンバアッパー56(図4参照)と、サイドメンバアッパー56の後部67に設けられたサイドメンバロアー57(図4参照)とを備えている。
図4に示すように、サイドメンバ51は、サイドメンバアッパー56およびサイドメンバロアー57が二股に分岐されている。
【0039】
図3、図4に示すように、サイドメンバアッパー56は、ダンパスチフナ38の後壁46およびリヤホイールアーチ33の上後部33bに前端部56aが接合され、リヤクロスメンバー36に後端部56bが連結されることで、リヤドアビーム21の延長線25(図3参照)上に設けられている。
【0040】
サイドメンバアッパー56は、前部66が下方に張り出されている。
これにより、サイドメンバアッパー56の前端部56aに、ダンパスチフナ38の後壁46に接合される上前端56cと、リヤホイールアーチ33の上後部33bに接合される傾斜前端56dとを備えている。
【0041】
ダンパスチフナ38の後壁46に上前端56cを設けるとともに、リヤホイールアーチ33の上後部33bに傾斜前端56dを設けることで、前端部56aの接合代を大きく確保できる。
よって、ダンパスチフナ38の後壁46およびリヤホイールアーチ33の上後部33bに、サイドメンバアッパー56の前端部56aを強固に取り付けることができる。
なお、サイドメンバアッパー56の前部66には軽量化用の穴66aが形成されている。
【0042】
サイドメンバアッパー56をリヤドアビーム21の延長線25(図3参照)上に設けることで、サイドメンバアッパー56の後端部56bが、リヤバンパビーム37に対して高さH(図3参照)分高い位置に配置されている。
【0043】
サイドメンバロアー57は、サイドメンバアッパー56の後部67からリヤホイールアーチ33の下後部(後部)33cへ向けて下り勾配に延出され、前端部57aがリヤホイールアーチ33の下後部33cに設けられている。
【0044】
このサイドメンバロアー57は、前部68が下方に大きく張り出されている。
これにより、サイドメンバロアー57の前端部57aに、リヤホイールアーチ33の下後部33cに接合される下前端57bと、フロアパネル32に接合される水平前端57cとを備えている。
【0045】
リヤホイールアーチ33の下後部33cに下前端57bを設けるとともに、フロアパネル32に水平前端57cを設けることで、前端部57aの接合代を大きく確保できる。
よって、リヤホイールアーチ33の下後部33cおよびフロアパネル32に、サイドメンバロアー57の前端部57aを強固に取り付けることができる。
サイドメンバロアー57の前部68には軽量化用の穴68aが形成されている。
【0046】
さらに、サイドメンバアッパー56の前端部56aをリヤホイールアーチ33の上後部33bに設けるとともに、サイドメンバロアー57の前端部57aをリヤホイールアーチ33の下後部33cに設けることで、サイドメンバアッパー56、サイドメンバロアー57およびリヤホイールアーチ33で略三角形が形成される。
これにより、サイドメンバ51をリヤホイールアーチ33に一層強固に取り付けることができる。
【0047】
このように、車体構造10にサイドメンバ51(サイドメンバアッパー56およびサイドメンバロアー57)を備えることで、車体構造10の剛性を高めることができる。
【0048】
フィラーガード52は、サイドメンバアッパー56の車体前方側、すなわち、サイドメンバアッパー56およびストライカ伝達部材53間(具体的には、ダンパスチフナ38の前壁45および後壁46間)で、かつ、リヤドアビーム21の延長線25上に介装(介在)されている。
フィラーガード52は、断面略コ字状に形成されたガード部71と、ガード部71の開口を塞ぐカバー部72とを備えている。
【0049】
このフィラーガード52は、ガード部71およびカバー部72で閉断面に形成されている。
フィラーガード52の前端部52aがダンパスチフナ38の前壁45に接合され、フィラーガード52の後端部52bがダンパスチフナ38の後壁46に接合されている。
【0050】
このフィラーガード52は、給油用のフィラーパイプ39に対して車体幅方向外側に設けられている。
このように、フィラーガード52をフィラーパイプ39の車体幅方向外側に設けることで、フィラーパイプ39をフィラーガード52で保護することができる。
フィラーパイプ39は、図示しない燃料タンクに燃料を給油するためのパイプである。
【0051】
ストライカ伝達部材53は、フィラーガード52の車体前方側、すなわち、後ストライカ74およびフィラーガード52間で、かつ、リヤドアビーム21の延長線25上に介装(介在)されている。
【0052】
ストライカ伝達部材53は、ダンパスチフナ38やリヤホイールアーチ33に対向する後端部53aが開口されたボックス状に形成されている。
ストライカ伝達部材53の後端部53aは、ダンパスチフナ38の前壁45に接合される後端53bと、リヤホイールアーチ33の上前部33dに接合される後傾斜端53cとを備えている。
すなわち、ストライカ伝達部材53を、ダンパスチフナ38の前壁45およびリヤホイールアーチ33の上前部33dに接合することで後端部53aの開口が閉塞されて閉断面状に形成されている。
【0053】
このストライカ伝達部材53は、後ストライカ74に荷重を伝達可能な部材である。
後ストライカ74は、車体フレーム11の後開口部12のうち後部位12aにストライカ伝達部材53を介して設けられている。
後部位12aは、リヤサイドドア13を閉じた状態で、リヤドアビーム21の後方に位置する部位である。
この後ストライカ74は、リヤサイドドア13を閉じた状態で、リヤサイドドア13の施錠部(図示せず)が係止して、リヤサイドドア13を閉じた状態に保持する部材である。
【0054】
図6〜図8に示すように、連結フレーム54は、リヤフレーム31およびサイドメンバロアー57の前部68間に車幅方向に向けて延出され、リヤフレーム31およびサイドメンバロアー57の前部68を連結する部材である。
この連結フレーム54は、フロアパネル32の上面32bに設けられた上連結フレーム81と、フロアパネル32の下面32cに設けられた下連結フレーム82とを備えている。
【0055】
図6に示す上連結フレーム81は、リヤフレーム31に内端部81aが接合され、サイドメンバロアー57の前部68(図7参照)およびリヤホイールアーチ33の下後部33cに外端部81bが接合されている。
この上連結フレーム81は、下部81cが開口された断面略コ字状に形成され、一対の下部フランジ84をフロアパネル32に接合することで閉断面に形成されている。
【0056】
図7に示す下連結フレーム82は、リヤフレーム31に内端部82aが接合され、フロアパネル32の外側部32aに外端部82bが接合されている。
この下連結フレーム82は、上部82c(図8参照)が開口された断面略コ字状に形成され、一対の上部フランジ85(車体後方側の上部フランジ85のみを図示する)をフロアパネル32に接合することで閉断面に形成されている。
【0057】
このように、車体構造10に補強フレーム40を備えることで、車体構造10の剛性を高めることができる。
なお、サイドメンバロアー57の前部68を連結フレーム54でリヤフレーム31に連結する理由については図10(b)で詳説する。
【0058】
つぎに、車体構造10の後部(以下、「車体後部」という)10aに相手車両90(フロントバンパビーム91が車体構造10のリヤバンパビーム37より高い位置に配置された車両)が衝突した例を図9〜図11に基づいて説明する。
まず、車体後部10aに作用した荷重をサイドメンバアッパー56、リヤドアビーム21およびフロントドアビーム23に伝える例を図9に基づいて説明する。
【0059】
図9(a)に示すように、リヤホイールアーチ33から車体後方に向けてサイドメンバアッパー56が延出され、サイドメンバアッパー56はリヤドアビーム21やフロントドアビーム23(図9(b)参照)の延長線25上に設けられている。
さらに、サイドメンバアッパー56の後端部56bは、リヤバンパビーム37に対して高さH分高い位置に配置されている。
【0060】
相手車両90のフロントバンパビーム91が車体後部10aに衝突する。相手車両90のフロントバンパビーム91は、車体構造10のリヤバンパビーム37より高い位置に配置されている。
よって、相手車両90のフロントバンパビーム91が車体後部10aに衝突した場合、車体後部10aに作用した荷重Fの一部がサイドメンバアッパー56に荷重F1として伝わる。
【0061】
サイドメンバアッパー56に伝わった荷重F1は、フィラーガード52、ストライカ伝達部材53、後ストライカ74およびリヤドア用施錠部(図示せず)を経てリヤドアビーム21に伝えられる。
【0062】
図9(b)に示すように、リヤドアビーム21に伝えられた荷重F1は、フロントドアビーム23に伝えられる。
これにより、リヤドアビーム21およびフロントドアビーム23で荷重F1を効率よく支えることができ、車室95が変形することを防ぐことができる。
したがって、車室95が変形することを防ぐために、トランクルーム96を構成するフレームの剛性を必要以上に高める必要がないので、トランクルーム96のスペースが損なわれることがない。
【0063】
つぎに、車体構造10の後部(車体後部)10aに衝突した相手車両90のバンパビーム91が上方に乗り上げることを防止する例を図10〜図11に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、サイドメンバアッパー56の後部67からリヤホイールアーチ33の下後部33cへ向けてサイドメンバロアー57が下り勾配に延出されている。
【0064】
相手車両90のフロントバンパビーム91が車体後部10aに衝突する。相手車両90のフロントバンパビーム91は、車体構造10のリヤバンパビーム37より高い位置に配置されている。
よって、相手車両90のフロントバンパビーム91がリヤバンパビーム37の上方に矢印Aの如く侵入する。
【0065】
図10(b)に示すように、侵入した相手車両90のフロントバンパビーム91が、下り勾配のサイドメンバロアー57に当接する。
すなわち、侵入した相手車両90のフロントバンパビーム91を、下り勾配のサイドメンバロアー57で受けることができる。
【0066】
よって、フロントバンパビーム91を下り勾配のサイドメンバロアー57で矢印Bの如く下方に向けて案内することができる。
これにより、フロントバンパビーム91が車体後部(具体的には、後輪17(図9(b)参照))に乗り上げることを防ぐことができる。
【0067】
図11に示すように、サイドメンバロアー57にフロントバンパビーム91が当たってサイドメンバロアー57が変形することでサイドメンバロアー57の後端部57dが矢印Cの如く下がる。
ここで、サイドメンバロアー57はサイドメンバアッパー56の後部67から延出されている。
よって、サイドメンバロアー57の後端部57dが下がることで、サイドメンバアッパー56の後端部67aを矢印Cの如く下方に下げることができる。
【0068】
サイドメンバアッパー56の後端部67aを下方に下げることで、サイドメンバアッパー56の後端部67aが相手車両(具体的には、フロントサイドフレーム)90に上方から当たり、相手車両(フロントサイドフレーム)90を下方に押し下げる。
相手車両(フロントサイドフレーム)90が下方に押し下げられることで、相手車両90のバルクヘッドロアー92がリヤフレーム31に上方から当たる。
【0069】
このバルクヘッドロアー92は、冷却部材(例えばラジエータ)などを支える剛性の高い部材である。
これにより、剛性の高いバルクヘッドロアー92をリヤフレーム31に上方から当てることで、リヤフレーム31を変形させて衝突エネルギーを吸収することができる。
【0070】
ここで、図6〜図8に示すように、サイドメンバロアー57の前部68が連結フレーム54でリヤフレーム31に連結されている。
よって、相手車両90のフロントバンパビーム91が車体後部10aに衝突した場合、図10(b)に示すサイドメンバロアー57でフロントバンパビーム91を一層確実に受けることができる。
【0071】
これにより、相手車両(フロントサイドフレーム)90を一層確実に下方に押し下げることができ、かつ、リヤフレーム31を一層良好に変形させて衝突エネルギーを一層確実に吸収することができる。
【0072】
図9(a)に戻って、車体後部10aに衝突する相手車両90のフロントバンパビーム91が、車体構造10のリヤバンパビーム37と同じ高さに配置されている場合を例に説明する。
リヤバンパビーム37と同じ高さに配置されたフロントバンパビーム91が車体後部10aに衝突した場合、相手車両90のフロントバンパビーム91が車体構造10のリヤバンパビーム37に当接する。
【0073】
よって、フロントバンパビーム91がリヤバンパビーム37に衝突することにより作用する荷重Fは、リヤバンパビーム37で一部が吸収され、残りの荷重がリヤフレーム31に伝えられる。
リヤフレーム31に伝えられた荷重は、リヤフレーム31で好適に支えられる。
【0074】
このように、相手車両90のフロントバンパビーム91が車体構造10のリヤバンパビーム37と同じ高さに配置されている場合には、車体構造10は、通常の車体構造と同様に、リヤフレーム31で衝突エネルギーを好適に支えることができる。
【0075】
なお、本発明に係る車体構造10は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、サイドドアとしてフロントサイドドア15およびリヤサイドドア13を備えた車体構造10について説明したが、これに限らないで、フロントサイドドア15のみを備えた車体構造に適用することも可能である。
【0076】
また、前記実施例では、サイドメンバアッパー56およびリヤドアビーム21間にフィラーガード52およびストライカ伝達部材53を介装した例について説明したが、これに限らないで、フィラーガード52およびストライカ伝達部材53のいずれか一方を介装させることも可能である。
この場合、例えば、サイドメンバアッパー56を車体前方に向けて延出することで、サイドメンバアッパー56およびリヤドアビーム21を連続的に構成することが可能である。
【0077】
さらに、サイドメンバアッパー56およびリヤドアビーム21間にフィラーガード52およびストライカ伝達部材53の両方を介装させずに、サイドメンバアッパー56を車体前方に向けて延出することも可能である。
このように、サイドメンバアッパー56を車体前方に向けて延出することで、サイドメンバアッパー56およびリヤドアビーム21を連続的に構成することが可能である。
【0078】
加えて、前記実施例では、後ストライカ74をストライカ伝達部材53を介して後開口部12の後部位12aに設けた例について説明したが、これに限らないで、後ストライカ74を後開口部12の後部位12aに直接設けることも可能である。
【0079】
さらに、前記実施例で示した車体フレーム11、リヤサイドドア13、フロントサイドドア15、リヤドアビーム21、フロントドアビーム23、リヤホイールアーチ33、ダンパスチフナ38、フィラーパイプ39、補強フレーム40、サイドメンバ51、フィラーガード52、連結フレーム54、サイドメンバアッパー56、サイドメンバロアー57および後ストライカ74などの形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の車体構造は、後輪の車体前方側にサイドドアが設けられ、サイドドアに車体前後方向に延出されたドアビームが設けられた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0081】
10…車体構造、11…車体フレーム、13…リヤサイドドア(サイドドア)、15…フロントサイドドア(サイドドア)、17…後輪、21…リヤドアビーム(ドアビーム)、21a…リヤドアビームの前端部、23…フロントドアビーム、23a…フロントドアビームの後端部、25…延長線、33…リヤホイールアーチ、33c…リヤホイールアーチの下後部(後部)、38…ダンパスチフナ、39…フィラーパイプ、40…補強フレーム、51…サイドメンバ、52…フィラーガード、54…連結フレーム、56…サイドメンバアッパー、57…サイドメンバロアー、67…サイドメンバアッパーの後部、68…サイドメンバロアーの前部、74…後ストライカ(ストライカ)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪の車体前方側にサイドドアが設けられ、サイドドアに車体前後方向に延出されたドアビームが設けられた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体構造のなかには、車体前後方向にリヤフレームが延出され、リヤフレームの上方にアッパフレームがアーチ状に設けられ、アッパフレームの後端部がリヤフレームの後端部に連結されたものが知られている。
アーチ状のアッパフレームを設けることで、相手車両(具体的には、バンパビームが高い位置に配置された相手車両)が車体後方から衝突した場合に、相手車両のバンパビームをアッパフレームで支えることが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1361140号明細書(EP1361140A2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、相手車両のバンパビームがアーチ状のアッパフレームに衝突した場合、アッパフレームが折れ曲がることが考えられる。
アッパフレームが折り曲げられた場合、折り曲げられたアッパフレーム(すなわち、車体後部)に相手車両のバンパビームが乗り上げる虞がある。
【0005】
本発明は、相手車両のバンパビームが車体後部に乗り上げることを防ぐことができる車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、後輪の車体前方側にサイドドアが設けられ、前記サイドドアに車体前後方向に延出されたドアビームが設けられた車体構造において、前記後輪の上方に設けたリヤホイールアーチから車体後方に向けて延出されるとともに、前記ドアビームの延長線上に設けられたサイドメンバアッパーと、前記サイドメンバアッパーの後部から前記リヤホイールアーチの後部へ向けて下り勾配に延出されたサイドメンバロアーと、を備え、前記サイドメンバアッパーおよび前記サイドメンバロアーで二股に分岐した補強フレームを形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記サイドメンバアッパーおよび前記ドアビーム間で、かつ、前記ドアビームの延長線上に、給油用のフィラーパイプを保護するフィラーガードが介装されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記サイドドアを閉じた状態で前記ドアビームの後方に、サイドドアを閉じた状態に保持するストライカが設けられ、前記ストライカおよび前記フィラーガード間で、かつ、前記ドアビームの延長線上に、前記ストライカに荷重を伝達可能なストライカ伝達部材が介装されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4は、前記サイドドアはリヤサイドドア、前記ドアビームは前記リヤサイドドアに設けられたリヤドアビームであり、前記リヤサイドドアの車体前方にフロントサイドドアが設けられ、前記フロントサイドドアに車体前後方向に延出されたフロントドアビームが設けられ、前記フロントドアビームは、後端部が前記リヤドアビームの前端部近傍に配置されるとともに、前記リヤドアビームの延長線上に設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項5は、前記サイドメンバロアーの車幅方向中心側に、車体前後方向に向けてリヤフレームが延出され、前記リヤフレームおよび前記サイドメンバロアーの前部が、車幅方向に向けて延出された連結フレームで連結されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、リヤホイールアーチから車体後方に向けてサイドメンバアッパーを延ばし、サイドメンバアッパーをドアビームの延長線上に設けた。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、車体後部に作用した荷重の一部をサイドメンバアッパーを経てドアビームに伝えることができる。
これにより、ドアビームで荷重の一部を効率よく支えることができ車室が変形することを防ぐことができる。
【0012】
また、サイドメンバアッパーの後部からリヤホイールアーチの後部へ向けてサイドメンバロアーを下り勾配に延ばした。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、下り勾配のサイドメンバロアーでバンパビームを受けることができる。
これにより、下り勾配のサイドメンバロアーでバンパビームを下方に向けて案内することができ、バンパビームが車体後部(具体的には、後輪)に乗り上げることを防ぐことができる。
【0013】
さらに、サイドメンバロアーにバンパビームが当たってサイドメンバロアーが変形することでサイドメンバロアーの後端部が下がる。
ここで、サイドメンバロアーはサイドメンバアッパーの後部から延出されている。
よって、サイドメンバロアーの後端部が下がることで、サイドメンバアッパーの後端部を下方に下げることができる。
【0014】
サイドメンバアッパーの後端部を下げることで、サイドメンバアッパーの後端部が相手車両(具体的には、フロントサイドフレーム)に上方から当たり、バンパビームを下方に押し下げる。
相手車両(フロントサイドフレーム)が下方に押し下げられることで、相手車両のバルクヘッドロアーがリヤフレームに上方から当たる。
【0015】
ここで、バルクヘッドロアーは、冷却部材(例えばラジエータ)などを支える剛性の高い部材である。
これにより、剛性の高いバルクヘッドロアーをリヤフレームに上方から当て、リヤフレームを変形させて衝突エネルギーを吸収することができる。
【0016】
一方、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームと同じ高さに配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、通常の車体構造と同様に、リヤフレームで衝突エネルギーを支えることができる。
【0017】
また、車体構造に補強フレーム(サイドメンバアッパーおよびサイドメンバロアー)を備えることで、車体構造の剛性を高めることができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、サイドメンバアッパーおよびドアビーム間で、かつ、ドアビームの延長線上にフィラーガードを介装(介在)した。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、車体後部に作用した荷重の一部をサイドメンバアッパーおよびフィラーガードを経てドアビームに伝えることができる。
これにより、ドアビームで荷重の一部を効率よく支えることができ車室が変形することを防ぐことができる。
【0019】
さらに、サイドメンバアッパーおよびドアビーム間にフィラーガードを介装することで、フィラーガードで給油用のフィラーパイプを保護することができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、ドアビームの後方にストライカを設け、ストライカおよびフィラーガード間で、かつ、ドアビームの延長線上にストライカ伝達部材を介装(介在)した。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、車体後部に作用した荷重の一部をサイドメンバアッパー、フィラーガード、ストライカ伝達部材およびストライカを経てドアビームに伝えることができる。
これにより、ドアビームで荷重の一部を効率よく支えることができ車室が変形することを防ぐことができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、フロントドアビームの後端部を前記リヤドアビームの前端部近傍に配置するとともに、フロントドアビームをリヤドアビームの延長線上に設けた。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、車体後部に作用した荷重の一部をサイドメンバアッパー、フィラーガード、ストライカ伝達部材およびストライカ、リヤドアビームおよびフロントドアビームに伝えることができる。
【0022】
これにより、リヤドアビームおよびフロントドアビームで荷重の一部を効率よく支えて車室が変形することを防ぐことができる。
したがって、車室が変形することを防ぐために、トランクルームを構成するフレームの剛性を必要以上に高める必要がないので、トランクルームのスペースが損なわれることがない。
【0023】
請求項5に係る発明では、サイドメンバロアーの前部を連結フレームでリヤフレームに連結した。
よって、相手車両(バンパビームが車体構造のリヤバンパビームより高い位置に配置された車両)のバンパビームが車体後部に衝突した場合、サイドメンバロアーでバンパビームを確実に受けることができる。
これにより、相手車両(フロントサイドフレーム)を一層確実に下方に押し下げることができ、かつ、リヤフレームを一層良好に変形させて衝突エネルギーを一層良好に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る車体構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体構造の要部を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る車体構造を示す側面図である。
【図4】本発明に係る補強フレームを示す分解斜視図である。
【図5】本発明に係るサイドメンバを示す分解斜視図である。
【図6】本発明に係る連結フレームを上方から見た状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る連結フレームを下方から見た状態を示す斜視図である。
【図8】図6の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係る車体構造の後部に作用した荷重をサイドメンバアッパー、リヤドアビームおよびフロントドアビームに伝える例を説明する図である。
【図10】本発明に係る車体構造の後部に衝突した相手車両のバンパビームが上方に乗り上げることを防止する例を説明する図である。
【図11】本発明に係る車体構造の後部に衝突した相手車両の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0026】
実施例に係る車体構造10について説明する。
図1に示すように、車体構造10は、車体フレーム11と、車体フレーム11の後開口部12に開閉自在に設けられたリヤサイドドア(サイドドア)13と、車体フレーム11の前開口部14に開閉自在に設けられたフロントサイドドア(サイドドア)15と、車体フレーム11の前部に設けられた前輪16と、車体フレーム11の後部に設けられた後輪17とを備えている。
【0027】
リヤサイドドア13は、後輪17の車体前方側に開閉自在に設けられ、補強用のリヤドアビーム(ドアビーム)21と、リヤドア用施錠部(図示せず)が設けられている。
リヤドアビーム21は、リヤサイドドア13の前端部13aおよび後端部13bに渡って掛け渡され、リヤサイドドア13で後開口部12を閉じた状態において車体前後方向に延出されている。
リヤドア用施錠部は、リヤサイドドア13で後開口部12を閉じた状態において、後述する後ストライカ(ストライカ)74(図2参照)に係止可能な部材である。
【0028】
フロントサイドドア15は、リヤサイドドア13の車体前方に備えられ、補強用のフロントドアビーム23と、フロントドア用施錠部(図示せず)が設けられている。
フロントドアビーム23は、フロントサイドドア15の前端部15aおよび後端部15bに渡って掛け渡され、フロントサイドドア15で前開口部14を閉じた状態において車体前後方向に延出されている。
【0029】
このフロントドアビーム23は、後端部23aがリヤドアビーム21の前端部21a近傍に配置されるとともに、リヤドアビーム21の延長線25上に設けられている。
フロントドア用施錠部は、フロントサイドドア15で前開口部14を閉じた状態において、前ストライカ(図示せず)に係止可能な部材である。
【0030】
図2、図3に示すように、車体フレーム11は、車体前後方向に延出されたリヤフレーム31と、リヤフレーム31に設けられたフロアパネル32と、フロアパネル32およびリヤフレーム31に設けられたリヤホイールアーチ(リヤホイールハウス)33と、リヤホイールアーチ33の上方に設けられたリヤピラー34と、リヤピラー34から車体後方に向けて延出されたリヤメンバー35と、リヤメンバー35の後端部35aおよびリヤフレーム31の後端部31aに設けられたリヤクロスメンバー36と、リヤフレーム31の後端部に設けられたリヤバンパビーム37とを備えている。
【0031】
また、車体フレーム11は、リヤホイールアーチ33の上部33aに設けられたダンパスチフナ38と、リヤホイールアーチ33内に収納されたフィラーパイプ39と、リヤホイールアーチ33に設けられた補強フレーム40とを備えている。
【0032】
リヤフレーム31は、リヤホイールアーチ33の内壁42(図6参照)に沿って車体前後方向に延出され、車体フレーム11の骨格を形成する部材である。
換言すれば、リヤフレーム31は、補強フレーム40に対して車幅方向中心側に設けられ、かつ、車体前後方向に向けて延出されている。
【0033】
フロアパネル32は、リヤフレーム31に設けられ、フロアパネル32の外側部32aが補強フレーム40の下方まで張り出されている。
リヤホイールアーチ33は、後輪17の上方に設けられ、半円弧状に形成されている。リヤホイールアーチ33の上部33aにダンパスチフナ38が設けられている。
【0034】
ダンパスチフナ38は、リヤホイールアーチ33の上部33aおよびリヤピラー34を連結する骨材である。
ダンパスチフナ38は、側壁44、前壁45、後壁46で閉断面略コ字状に形成されている。このダンパスチフナ38は、リヤホイールアーチ33の上部33aに下端部38aが設けられるとともに、リヤピラー34に上端部38bが設けられている。
【0035】
図4に示すように、補強フレーム40は、リヤホイールアーチ33に設けられたサイドメンバ51と、サイドメンバ51の車体前方側に設けられたフィラーガード52と、フィラーガード52の車体前方側に設けられたストライカ伝達部材53と、サイドメンバ51をリヤフレーム31に連結する連結フレーム54(図6、図7参照)とを備えている。
【0036】
図5に示すように、サイドメンバ51は、略扇形状に形成されたサイド平坦パネル61と、サイド平坦パネル61に接合されたサイド膨出パネル62とを備えている。
サイド平坦パネル61は、略扇形状に形成された平坦な板材である。
サイド膨出パネル62は、リヤホイールアーチ33(図2参照)から車体後方に向けて延出された膨出パネルアッパー63と、膨出パネルアッパー63の後部63aに設けられた膨出パネルロアー64とを備えている。
【0037】
膨出パネルアッパー63は、断面略コ字状(詳しくは、いわゆる、ハット状)に形成され、サイド平坦パネル61の上辺61aに沿って上下のフランジ63b,63cが接合されることで、閉断面のサイドメンバアッパー56(図8参照)が形成されている。
また、膨出パネルロアー64は、断面略コ字状(詳しくは、いわゆる、ハット状)に形成され、サイド平坦パネル61の下辺61bに沿って上下のフランジ64a,64bが接合されることで、閉断面のサイドメンバロアー57(図8参照)が形成されている。
【0038】
すなわち、サイドメンバ51は、リヤホイールアーチ33から車体後方に向けて延出されたサイドメンバアッパー56(図4参照)と、サイドメンバアッパー56の後部67に設けられたサイドメンバロアー57(図4参照)とを備えている。
図4に示すように、サイドメンバ51は、サイドメンバアッパー56およびサイドメンバロアー57が二股に分岐されている。
【0039】
図3、図4に示すように、サイドメンバアッパー56は、ダンパスチフナ38の後壁46およびリヤホイールアーチ33の上後部33bに前端部56aが接合され、リヤクロスメンバー36に後端部56bが連結されることで、リヤドアビーム21の延長線25(図3参照)上に設けられている。
【0040】
サイドメンバアッパー56は、前部66が下方に張り出されている。
これにより、サイドメンバアッパー56の前端部56aに、ダンパスチフナ38の後壁46に接合される上前端56cと、リヤホイールアーチ33の上後部33bに接合される傾斜前端56dとを備えている。
【0041】
ダンパスチフナ38の後壁46に上前端56cを設けるとともに、リヤホイールアーチ33の上後部33bに傾斜前端56dを設けることで、前端部56aの接合代を大きく確保できる。
よって、ダンパスチフナ38の後壁46およびリヤホイールアーチ33の上後部33bに、サイドメンバアッパー56の前端部56aを強固に取り付けることができる。
なお、サイドメンバアッパー56の前部66には軽量化用の穴66aが形成されている。
【0042】
サイドメンバアッパー56をリヤドアビーム21の延長線25(図3参照)上に設けることで、サイドメンバアッパー56の後端部56bが、リヤバンパビーム37に対して高さH(図3参照)分高い位置に配置されている。
【0043】
サイドメンバロアー57は、サイドメンバアッパー56の後部67からリヤホイールアーチ33の下後部(後部)33cへ向けて下り勾配に延出され、前端部57aがリヤホイールアーチ33の下後部33cに設けられている。
【0044】
このサイドメンバロアー57は、前部68が下方に大きく張り出されている。
これにより、サイドメンバロアー57の前端部57aに、リヤホイールアーチ33の下後部33cに接合される下前端57bと、フロアパネル32に接合される水平前端57cとを備えている。
【0045】
リヤホイールアーチ33の下後部33cに下前端57bを設けるとともに、フロアパネル32に水平前端57cを設けることで、前端部57aの接合代を大きく確保できる。
よって、リヤホイールアーチ33の下後部33cおよびフロアパネル32に、サイドメンバロアー57の前端部57aを強固に取り付けることができる。
サイドメンバロアー57の前部68には軽量化用の穴68aが形成されている。
【0046】
さらに、サイドメンバアッパー56の前端部56aをリヤホイールアーチ33の上後部33bに設けるとともに、サイドメンバロアー57の前端部57aをリヤホイールアーチ33の下後部33cに設けることで、サイドメンバアッパー56、サイドメンバロアー57およびリヤホイールアーチ33で略三角形が形成される。
これにより、サイドメンバ51をリヤホイールアーチ33に一層強固に取り付けることができる。
【0047】
このように、車体構造10にサイドメンバ51(サイドメンバアッパー56およびサイドメンバロアー57)を備えることで、車体構造10の剛性を高めることができる。
【0048】
フィラーガード52は、サイドメンバアッパー56の車体前方側、すなわち、サイドメンバアッパー56およびストライカ伝達部材53間(具体的には、ダンパスチフナ38の前壁45および後壁46間)で、かつ、リヤドアビーム21の延長線25上に介装(介在)されている。
フィラーガード52は、断面略コ字状に形成されたガード部71と、ガード部71の開口を塞ぐカバー部72とを備えている。
【0049】
このフィラーガード52は、ガード部71およびカバー部72で閉断面に形成されている。
フィラーガード52の前端部52aがダンパスチフナ38の前壁45に接合され、フィラーガード52の後端部52bがダンパスチフナ38の後壁46に接合されている。
【0050】
このフィラーガード52は、給油用のフィラーパイプ39に対して車体幅方向外側に設けられている。
このように、フィラーガード52をフィラーパイプ39の車体幅方向外側に設けることで、フィラーパイプ39をフィラーガード52で保護することができる。
フィラーパイプ39は、図示しない燃料タンクに燃料を給油するためのパイプである。
【0051】
ストライカ伝達部材53は、フィラーガード52の車体前方側、すなわち、後ストライカ74およびフィラーガード52間で、かつ、リヤドアビーム21の延長線25上に介装(介在)されている。
【0052】
ストライカ伝達部材53は、ダンパスチフナ38やリヤホイールアーチ33に対向する後端部53aが開口されたボックス状に形成されている。
ストライカ伝達部材53の後端部53aは、ダンパスチフナ38の前壁45に接合される後端53bと、リヤホイールアーチ33の上前部33dに接合される後傾斜端53cとを備えている。
すなわち、ストライカ伝達部材53を、ダンパスチフナ38の前壁45およびリヤホイールアーチ33の上前部33dに接合することで後端部53aの開口が閉塞されて閉断面状に形成されている。
【0053】
このストライカ伝達部材53は、後ストライカ74に荷重を伝達可能な部材である。
後ストライカ74は、車体フレーム11の後開口部12のうち後部位12aにストライカ伝達部材53を介して設けられている。
後部位12aは、リヤサイドドア13を閉じた状態で、リヤドアビーム21の後方に位置する部位である。
この後ストライカ74は、リヤサイドドア13を閉じた状態で、リヤサイドドア13の施錠部(図示せず)が係止して、リヤサイドドア13を閉じた状態に保持する部材である。
【0054】
図6〜図8に示すように、連結フレーム54は、リヤフレーム31およびサイドメンバロアー57の前部68間に車幅方向に向けて延出され、リヤフレーム31およびサイドメンバロアー57の前部68を連結する部材である。
この連結フレーム54は、フロアパネル32の上面32bに設けられた上連結フレーム81と、フロアパネル32の下面32cに設けられた下連結フレーム82とを備えている。
【0055】
図6に示す上連結フレーム81は、リヤフレーム31に内端部81aが接合され、サイドメンバロアー57の前部68(図7参照)およびリヤホイールアーチ33の下後部33cに外端部81bが接合されている。
この上連結フレーム81は、下部81cが開口された断面略コ字状に形成され、一対の下部フランジ84をフロアパネル32に接合することで閉断面に形成されている。
【0056】
図7に示す下連結フレーム82は、リヤフレーム31に内端部82aが接合され、フロアパネル32の外側部32aに外端部82bが接合されている。
この下連結フレーム82は、上部82c(図8参照)が開口された断面略コ字状に形成され、一対の上部フランジ85(車体後方側の上部フランジ85のみを図示する)をフロアパネル32に接合することで閉断面に形成されている。
【0057】
このように、車体構造10に補強フレーム40を備えることで、車体構造10の剛性を高めることができる。
なお、サイドメンバロアー57の前部68を連結フレーム54でリヤフレーム31に連結する理由については図10(b)で詳説する。
【0058】
つぎに、車体構造10の後部(以下、「車体後部」という)10aに相手車両90(フロントバンパビーム91が車体構造10のリヤバンパビーム37より高い位置に配置された車両)が衝突した例を図9〜図11に基づいて説明する。
まず、車体後部10aに作用した荷重をサイドメンバアッパー56、リヤドアビーム21およびフロントドアビーム23に伝える例を図9に基づいて説明する。
【0059】
図9(a)に示すように、リヤホイールアーチ33から車体後方に向けてサイドメンバアッパー56が延出され、サイドメンバアッパー56はリヤドアビーム21やフロントドアビーム23(図9(b)参照)の延長線25上に設けられている。
さらに、サイドメンバアッパー56の後端部56bは、リヤバンパビーム37に対して高さH分高い位置に配置されている。
【0060】
相手車両90のフロントバンパビーム91が車体後部10aに衝突する。相手車両90のフロントバンパビーム91は、車体構造10のリヤバンパビーム37より高い位置に配置されている。
よって、相手車両90のフロントバンパビーム91が車体後部10aに衝突した場合、車体後部10aに作用した荷重Fの一部がサイドメンバアッパー56に荷重F1として伝わる。
【0061】
サイドメンバアッパー56に伝わった荷重F1は、フィラーガード52、ストライカ伝達部材53、後ストライカ74およびリヤドア用施錠部(図示せず)を経てリヤドアビーム21に伝えられる。
【0062】
図9(b)に示すように、リヤドアビーム21に伝えられた荷重F1は、フロントドアビーム23に伝えられる。
これにより、リヤドアビーム21およびフロントドアビーム23で荷重F1を効率よく支えることができ、車室95が変形することを防ぐことができる。
したがって、車室95が変形することを防ぐために、トランクルーム96を構成するフレームの剛性を必要以上に高める必要がないので、トランクルーム96のスペースが損なわれることがない。
【0063】
つぎに、車体構造10の後部(車体後部)10aに衝突した相手車両90のバンパビーム91が上方に乗り上げることを防止する例を図10〜図11に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、サイドメンバアッパー56の後部67からリヤホイールアーチ33の下後部33cへ向けてサイドメンバロアー57が下り勾配に延出されている。
【0064】
相手車両90のフロントバンパビーム91が車体後部10aに衝突する。相手車両90のフロントバンパビーム91は、車体構造10のリヤバンパビーム37より高い位置に配置されている。
よって、相手車両90のフロントバンパビーム91がリヤバンパビーム37の上方に矢印Aの如く侵入する。
【0065】
図10(b)に示すように、侵入した相手車両90のフロントバンパビーム91が、下り勾配のサイドメンバロアー57に当接する。
すなわち、侵入した相手車両90のフロントバンパビーム91を、下り勾配のサイドメンバロアー57で受けることができる。
【0066】
よって、フロントバンパビーム91を下り勾配のサイドメンバロアー57で矢印Bの如く下方に向けて案内することができる。
これにより、フロントバンパビーム91が車体後部(具体的には、後輪17(図9(b)参照))に乗り上げることを防ぐことができる。
【0067】
図11に示すように、サイドメンバロアー57にフロントバンパビーム91が当たってサイドメンバロアー57が変形することでサイドメンバロアー57の後端部57dが矢印Cの如く下がる。
ここで、サイドメンバロアー57はサイドメンバアッパー56の後部67から延出されている。
よって、サイドメンバロアー57の後端部57dが下がることで、サイドメンバアッパー56の後端部67aを矢印Cの如く下方に下げることができる。
【0068】
サイドメンバアッパー56の後端部67aを下方に下げることで、サイドメンバアッパー56の後端部67aが相手車両(具体的には、フロントサイドフレーム)90に上方から当たり、相手車両(フロントサイドフレーム)90を下方に押し下げる。
相手車両(フロントサイドフレーム)90が下方に押し下げられることで、相手車両90のバルクヘッドロアー92がリヤフレーム31に上方から当たる。
【0069】
このバルクヘッドロアー92は、冷却部材(例えばラジエータ)などを支える剛性の高い部材である。
これにより、剛性の高いバルクヘッドロアー92をリヤフレーム31に上方から当てることで、リヤフレーム31を変形させて衝突エネルギーを吸収することができる。
【0070】
ここで、図6〜図8に示すように、サイドメンバロアー57の前部68が連結フレーム54でリヤフレーム31に連結されている。
よって、相手車両90のフロントバンパビーム91が車体後部10aに衝突した場合、図10(b)に示すサイドメンバロアー57でフロントバンパビーム91を一層確実に受けることができる。
【0071】
これにより、相手車両(フロントサイドフレーム)90を一層確実に下方に押し下げることができ、かつ、リヤフレーム31を一層良好に変形させて衝突エネルギーを一層確実に吸収することができる。
【0072】
図9(a)に戻って、車体後部10aに衝突する相手車両90のフロントバンパビーム91が、車体構造10のリヤバンパビーム37と同じ高さに配置されている場合を例に説明する。
リヤバンパビーム37と同じ高さに配置されたフロントバンパビーム91が車体後部10aに衝突した場合、相手車両90のフロントバンパビーム91が車体構造10のリヤバンパビーム37に当接する。
【0073】
よって、フロントバンパビーム91がリヤバンパビーム37に衝突することにより作用する荷重Fは、リヤバンパビーム37で一部が吸収され、残りの荷重がリヤフレーム31に伝えられる。
リヤフレーム31に伝えられた荷重は、リヤフレーム31で好適に支えられる。
【0074】
このように、相手車両90のフロントバンパビーム91が車体構造10のリヤバンパビーム37と同じ高さに配置されている場合には、車体構造10は、通常の車体構造と同様に、リヤフレーム31で衝突エネルギーを好適に支えることができる。
【0075】
なお、本発明に係る車体構造10は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、サイドドアとしてフロントサイドドア15およびリヤサイドドア13を備えた車体構造10について説明したが、これに限らないで、フロントサイドドア15のみを備えた車体構造に適用することも可能である。
【0076】
また、前記実施例では、サイドメンバアッパー56およびリヤドアビーム21間にフィラーガード52およびストライカ伝達部材53を介装した例について説明したが、これに限らないで、フィラーガード52およびストライカ伝達部材53のいずれか一方を介装させることも可能である。
この場合、例えば、サイドメンバアッパー56を車体前方に向けて延出することで、サイドメンバアッパー56およびリヤドアビーム21を連続的に構成することが可能である。
【0077】
さらに、サイドメンバアッパー56およびリヤドアビーム21間にフィラーガード52およびストライカ伝達部材53の両方を介装させずに、サイドメンバアッパー56を車体前方に向けて延出することも可能である。
このように、サイドメンバアッパー56を車体前方に向けて延出することで、サイドメンバアッパー56およびリヤドアビーム21を連続的に構成することが可能である。
【0078】
加えて、前記実施例では、後ストライカ74をストライカ伝達部材53を介して後開口部12の後部位12aに設けた例について説明したが、これに限らないで、後ストライカ74を後開口部12の後部位12aに直接設けることも可能である。
【0079】
さらに、前記実施例で示した車体フレーム11、リヤサイドドア13、フロントサイドドア15、リヤドアビーム21、フロントドアビーム23、リヤホイールアーチ33、ダンパスチフナ38、フィラーパイプ39、補強フレーム40、サイドメンバ51、フィラーガード52、連結フレーム54、サイドメンバアッパー56、サイドメンバロアー57および後ストライカ74などの形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の車体構造は、後輪の車体前方側にサイドドアが設けられ、サイドドアに車体前後方向に延出されたドアビームが設けられた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0081】
10…車体構造、11…車体フレーム、13…リヤサイドドア(サイドドア)、15…フロントサイドドア(サイドドア)、17…後輪、21…リヤドアビーム(ドアビーム)、21a…リヤドアビームの前端部、23…フロントドアビーム、23a…フロントドアビームの後端部、25…延長線、33…リヤホイールアーチ、33c…リヤホイールアーチの下後部(後部)、38…ダンパスチフナ、39…フィラーパイプ、40…補強フレーム、51…サイドメンバ、52…フィラーガード、54…連結フレーム、56…サイドメンバアッパー、57…サイドメンバロアー、67…サイドメンバアッパーの後部、68…サイドメンバロアーの前部、74…後ストライカ(ストライカ)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪の車体前方側にサイドドアが設けられ、前記サイドドアに車体前後方向に延出されたドアビームが設けられた車体構造において、
前記後輪の上方に設けたリヤホイールアーチから車体後方に向けて延出されるとともに、前記ドアビームの延長線上に設けられたサイドメンバアッパーと、
前記サイドメンバアッパーの後部から前記リヤホイールアーチの後部へ向けて下り勾配に延出されたサイドメンバロアーと、
を備え、
前記サイドメンバアッパーおよび前記サイドメンバロアーで二股に分岐した補強フレームを形成したことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記サイドメンバアッパーおよび前記ドアビーム間で、かつ、前記ドアビームの延長線上に、給油用のフィラーパイプを保護するフィラーガードが介装されたことを特徴とする請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記サイドドアを閉じた状態で前記ドアビームの後方に、サイドドアを閉じた状態に保持するストライカが設けられ、
前記ストライカおよび前記フィラーガード間で、かつ、前記ドアビームの延長線上に、前記ストライカに荷重を伝達可能なストライカ伝達部材が介装されたことを特徴とする請求項2記載の車体構造。
【請求項4】
前記サイドドアはリヤサイドドア、前記ドアビームは前記リヤサイドドアに設けられたリヤドアビームであり、
前記リヤサイドドアの車体前方にフロントサイドドアが設けられ、前記フロントサイドドアに車体前後方向に延出されたフロントドアビームが設けられ、
前記フロントドアビームは、後端部が前記リヤドアビームの前端部近傍に配置されるとともに、前記リヤドアビームの延長線上に設けられたことを特徴とする請求項3記載の車体構造。
【請求項5】
前記サイドメンバロアーの車幅方向中心側に、車体前後方向に向けてリヤフレームが延出され、
前記リヤフレームおよび前記サイドメンバロアーの前部が、車幅方向に向けて延出された連結フレームで連結されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車体構造。
【請求項1】
後輪の車体前方側にサイドドアが設けられ、前記サイドドアに車体前後方向に延出されたドアビームが設けられた車体構造において、
前記後輪の上方に設けたリヤホイールアーチから車体後方に向けて延出されるとともに、前記ドアビームの延長線上に設けられたサイドメンバアッパーと、
前記サイドメンバアッパーの後部から前記リヤホイールアーチの後部へ向けて下り勾配に延出されたサイドメンバロアーと、
を備え、
前記サイドメンバアッパーおよび前記サイドメンバロアーで二股に分岐した補強フレームを形成したことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記サイドメンバアッパーおよび前記ドアビーム間で、かつ、前記ドアビームの延長線上に、給油用のフィラーパイプを保護するフィラーガードが介装されたことを特徴とする請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記サイドドアを閉じた状態で前記ドアビームの後方に、サイドドアを閉じた状態に保持するストライカが設けられ、
前記ストライカおよび前記フィラーガード間で、かつ、前記ドアビームの延長線上に、前記ストライカに荷重を伝達可能なストライカ伝達部材が介装されたことを特徴とする請求項2記載の車体構造。
【請求項4】
前記サイドドアはリヤサイドドア、前記ドアビームは前記リヤサイドドアに設けられたリヤドアビームであり、
前記リヤサイドドアの車体前方にフロントサイドドアが設けられ、前記フロントサイドドアに車体前後方向に延出されたフロントドアビームが設けられ、
前記フロントドアビームは、後端部が前記リヤドアビームの前端部近傍に配置されるとともに、前記リヤドアビームの延長線上に設けられたことを特徴とする請求項3記載の車体構造。
【請求項5】
前記サイドメンバロアーの車幅方向中心側に、車体前後方向に向けてリヤフレームが延出され、
前記リヤフレームおよび前記サイドメンバロアーの前部が、車幅方向に向けて延出された連結フレームで連結されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−188973(P2010−188973A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38213(P2009−38213)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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