説明

車載型世話実行装置、方法及びプログラム

【課題】運転者が一々指示を出さなくても、車載型世話実行装置40の方から運転者に気配りして、運転者の望む処置を自発的に行う。
【解決手段】気持ち察知手段42は、センサ41が検出する各種状況に基づき、運転者の常識的気持ちを察知する。処置実行手段43は、気持ち察知手段42が察知した気持ちに応える処置を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者に気配りして世話を実施する装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、擬人化されたエージェントを画像表示し(特許文献1の図4)、該エージェントの容姿、服装及び持ち物等の形態を車両状況に応じて変更するとともに(特許文献1の段落0078)、及び運転者からエージェントへの「○○○番に電話してくれ。」とか「この辺のレストランを表示してくれ。」とかの呼び掛けを音声認識すること(特許文献1の段落0059)を開示する。
【特許文献1】特開平11−272640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のエージェント装置では、エージェントが車両状況に応じた形態で運転者に対応してくれるものの、運転者は、自分のして貰いたいことをして貰うためには、エージェントに対して、一々発声して、指示を出さなければならず、手間がかかる。
【0004】
一方、運転者が、車の運転中に取る行動や、道路状況及び運転環境に起因する気持ちは、個人差が小さい。例えば、道路が渋滞していれば、イライラしてくるし、単調な高速道路を走っていれば、眠くなったり、集中力が低下したりする。車内の気温が低ければ、寒いと感じて、エアコンを入れる。
【0005】
本発明の目的は、運転者が一々指示を出さなくても、運転者に対して気配りして、その要望に応える車載型世話実行装置、方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、車両に配備されたセンサの検知信号から現在の状況を把握し、その状況下における運転者の気持ちを察知するようにする。そして、察知した気持ちに応える処置を実行する。
【0007】
本発明の車載型世話実行装置は次のものを備えている。
車両に装備され状況を検出する1以上のセンサ、
1以上のセンサから検出された各状況に基づき運転者の気持ちを察知する気持ち察知手段、及び
察知した気持ちに応える処置を実行する処置実行手段。
【0008】
本発明の車載型世話実行方法は次のステップを備えている。
車両に装備され状況を検出する1以上のセンサから検出された各状況に基づき運転者の気持ちを察知するステップ、及び
察知した気持ちに応える処置を実行するステップ。
【0009】
本発明のプログラムは、本発明の車載型世話実行装置の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両配備センサに基づき検知した状況に基づき運転者の気持ちを察知して、察知した気持ちに応える処置を実行するので、運転者は、一々、指示を出す手間を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1はカーナビゲーション装置10の模式図である。カーナビゲーション装置10は、GPSモジュール11、VICS(Vehicle Information and Communication System)モジュール12、TVチューナ13及びハードディスク装置14を含む。GPSモジュール11は、GPS衛星からの電波に基づき自車位置を検出する。VICSモジュール12は、FM多重放送等から道路渋滞情報を受信する。
【0012】
TVチューナ13は、VHFやUHFのテレビ放送電波に係るビデオ及びオーディオ信号を出力する。ハードディスク装置14は、地図データベース15を含むとともに、CD等からダビングした楽曲データ等を適宜書き込み及び読み出し自在になっている。CD/DVDドライブ18は、運転席前方のコンソール等、運転者から手の届く位置に配設され、音楽や地図データベース用のCDやDVDを適宜、セット自在になっている。各種センサ19は、例えば、車室内の気温を検出する気温センサ、燃料タンクの燃料の残量を検出する燃料センサ、車速を検出する車速センサ、運転開始からの走行時間を測定する時間センサ、現在の日時と曜日と時刻とを検出する日時センサ、及び車両の重量を検出する重量センサ等である。
【0013】
処理及び制御装置21は、CPUを含み、GPSモジュール11、VICSモジュール12、TVチューナ13、ハードディスク装置14、CD/DVDドライブ18及び各種センサ19からのデータ及び信号を受け取り、各種の処理を実行する。画像生成器22は、処理及び制御装置21から入力されるデータに基づき画像表示信号を生成して、モニタ23に出力する。D/A変換器25は、処理及び制御装置21からデジタルオーディオ信号を受け、それをアナログオーディオ信号へ変換して、スピーカ26へ出力する。
【0014】
カーナビゲーション装置10の気配り的作動をその各実施例について説明する。なお、エージェントは、例えば、人物や、擬人化した動物若しくは植物等の画像として、モニタ23に表示される。また、以下の実施例において、エージェントの発声内容は、すべて一例である。
【0015】
実施例1:気温センサ(温度計)により得られた気温を基に、気温が、人に一般的に寒いと感じさせる低い温度であるならば、カーエアコンによる車室温上昇が必要であると判断する。そして、「今日は、寒いですね。エアコンを入れますか?」とエージェントに発声させながら、ナビ画面からエアコン設定画面に自動的に遷移させる。
【0016】
実施例2:ガソリンの残量計の情報からガソリンが少なくなってきたことを検知して、「ガソリンが少なくなっています。近くのガソリンスタンドをご案内しましょうか?」とエージェントに発声させながら、自動で最寄りのガソリンスタンドを検索してリスト表示する。
【0017】
実施例3:走り始めてからの時間を計測し、一般的に人の集中力が落ちる時間(2時間位)を越えて運転していたならば、運転者が疲れてくる頃と判断する。そして、「そろそろ休憩してはいかがですか? 近くのSAか道の駅、休憩ポイントをご案内しましょうか?」とエージェントに発声させつつ、自動で最寄りのSAや道の駅などを検索してリスト表示する。
【0018】
実施例4:車速が非常に低い状態がある程度、続いたならば、渋滞中でイライラしていると判断し、「渋滞が続いているようですね。リラックスできるような音楽をかけましようか?」とエージェントに発声させつつ、ナビ画面からAV画面に自動で遷移し、リラクゼーション音楽をジャンル検索して、リスト表示するか、又は自動再生する。もし渋滞中であるならば、渋滞停止中では多少の脇見は許容されると判断し、「渋滞中のようですね。現在地周辺のランドマークを解説しましょうか?」とエージェントに発声させながら、現在走行中の道路沿いの店やランドマークの解説を音声で行ったり、表示したりする。
【0019】
実施例5:走行している道路種別が高速道路で、道路形状が直線に近い状態が続いており、かつ、車速が70〜80km/h程度で一定しているようであれば、単調で退屈な運転状況であると、判断する。そして、眠くならないように、「単調な道路が続いてますね。眠くなってきませんか? ノリの良い音楽でもかけますか?」とエージェントに発声させながら、ナビ画面からAV画面に自動で遷移し、ノリの良い音楽をジャンル検索してリスト表示するか、自動再生する。
【0020】
実施例6:ジャイロセンサにより車の挙動が左右にふらついていることを検知したならば、居眠り運転の可能性ありと判断し、エージェントに、多少、大きな音量で「眠くなってませんか? 窓を開けましょう!」と発声させながら、運転席側の窓を自動で開ける。センサが雨を検知していた場合は、窓を開けるのではなく、多少大きな音で警告音を発したりする。
【0021】
上記実施例1〜6は、カーナビゲーション装置10におけるGPSモジュール11の現在地センサや、各種センサ19のみで判断できる作動の例示である。カーナビゲーション装置10を取り付けた時の初期設定において又はそれ以降において、運転者が、個人情報(自宅の場所、性別、年齢、家族構成、子供の数や年齢など)を設定することがある。カーナビゲーション装置10は、そのような個人情報も加味して、運転者の気持ちを察知し、該気持ちに応える処置を実行することができる。これにより、カーナビゲーション装置10は、気配りを一層深めた世話を運転者に施すことができる。以下、運転者の個人情報を加味した実施例について説明する。
【0022】
実施例7:現在の自車位置が、初期設定された自宅から遠距離にあり、かつ有名なランドマークの付近である場合は、運転者が観光に来ているかも知れないと判断する。そして、エージェントに、「近くに有名な○×滝があります。ちょっと寄っていきますか?」と発声させながら、そのランドマークまでのルートを自動探索し、案内する。
【0023】
実施例8:自車位置が初期設定された自宅と同じ位置に到着し、ある一定時間、車速が0の状態が続いたならば、運転者は、自宅に到着し、後は、もう車から降りるだけの状況と判断する。エージェントには、「お疲れ様でした。窓を閉め、AUDIOをOFFにします。」と発声させつつ、開いている窓を自動で閉め、AUDIOをOFFにし、ドアミラーを自動で閉じる。
【0024】
実施例9:カーナビゲーション装置10の電源がONにされた場所が、初期設定された自宅であり、かつ週末であり、車の重量増加分から複数人が乗っていると検知できた場合、家族ドライブに出発すると判断する。まず、「今日は家族でお出かけですか。」とエージェントに発声させる。次に、現在が昼の時間帯であるならば、「最寄りのファミレスをご案内しましょうか?」とエージェントに発声させる。また、初期設定された子供の年齢が低いならば、「遊園地をご案内しましょうか?」とエージェントに発声させる。そして、これと並行して、目的地へのお薦めのジャンル(レストラン又は遊園地)を検索してリスト表示する。
【0025】
以上の実施例7〜9は、初期設定がある場合の作動例だが、これとは別に、又はこれに加えて、運転者の好みを学習させることにより、さらに的を得た世話を行うことが可能である。
【0026】
実施例10:例えば上記実施例1のエアコン設定を案内したとき、運転者が温度を15°Cに設定したとすれば、「この運転者は、寒いときはエアコン温度を15°Cに設定する。」ということを学習し、次回からは自動で15°Cに設定してエアコンをONにする。
【0027】
実施例11:例えば、上記実施例4,5において、運転者が、選択した音楽ジャンルが最初に提案したものと異なるならば、それを学習し、次回から同様の状況になった場合には、前回学習した音楽ジャンルの演奏を提案する。
【0028】
実施例12:例えば、上記実施例9において、運転者が全然違う場所を目的地設定したり、提案をキャンセルしたような場合は、的外れだったと学習し、次回から別の提案を行うようにする。
【0029】
図2は車載型世話実行装置40のブロック図である。前述のカーナビゲーション装置10は車載型世話実行装置40の一例である。車載型世話実行装置40は、センサ41、気持ち察知手段42及び処置実行手段43を備えている。センサ41は、1以上存在し、車両に装備され、状況を検出する。
【0030】
気持ち察知手段42は、1以上のセンサ41から検出された各状況に基づき運転者の気持ちを察知する。処置実行手段43は、察知した気持ちに応える処置を実行する。
【0031】
センサ41の具体例は、前述の各種センサ19であり、例えば、車速等の車両走行状態、気温や道路混雑等の車内又は車外の運転環境、又は現在の季節や日時等の時間を検出するものが含まれる。
【0032】
こうして、運転者は、一々、口頭や入力操作で、車両に対して指示を出すことなく、車載型世話実行装置40から種々のサービスの提供を受けることができる。
【0033】
好ましくは、車載型世話実行装置40は、さらに、個人情報記憶手段47を備える。個人情報記憶手段47は、運転者により入力された個人情報を記憶する。これに対して、気持ち察知手段42は、個人情報を加味して運転者の気持ちを察知する。
【0034】
個人情報は、例えば、車載型世話実行装置40を車両に取り付けた時等に、ユーザとしての運転者が、車載型世話実行装置40の使用に先立ち、入力する。前述の実施例7〜9は、個人情報を運転者の気持ちの察知に利用したものである。
【0035】
個人情報として、自宅位置だけでなく、例えば、性別、年齢、職業があり、気持ち察知手段42は、それらを加味して、同一の状況に対する運転者の気持ちを分析する。例えば、運転者が中年の女性であるならば、センサ41の検知信号に基づく現在の状況下に、その人ならどんな気持ちを抱くかを察知するようにする。なお、自宅位置は、単に、現在地との距離に利用することに限定されない。自宅が、北海道か沖縄か等のどの地域にあるか、大都市か地方都市か農山村地か等のどのような住居環境にあるか等、距離以外の察知因子として利用し、例えば、同一の状況下でも、北海道の運転者ならば、どのような気持ちを抱くかを考えて、気持ちを察知する。
【0036】
好ましくは、車載型世話実行装置40は、さらに、学習手段48を備えている。学習手段48は、処置実行手段43が実行した処置を運転者が変更又は取消した場合には、それを学習する。気持ち察知手段42は、学習手段48の学習結果に基づき運転者の気持ちを察知する。
【0037】
前述の実施例10〜12は、運転者の気持ちの察知の際に学習結果を利用するものである。具体的な学習としては、処置実行手段43が、運転者の気持ちに応えるものとして実行した処置を、運転者が変更した場合には、同一の状況に対しては、運転者は、変更後の処置又は該処置が属するジャンルが、運転者が所望している気持ちに対応していると学習する。また、処置実行手段43が、運転者の気持ちに応えるものとして実行した処置を、運転者が取り消した場合には、同一の状況に対しては、運転者は該処置はして貰いたくない気持ちであると学習する。
【0038】
気持ち察知手段42は、運転者が抱く気持ちに個人差の少ない状況に限定して、該状況に対する運転者の気持ちを察知する。このように、同一の状況に対する個人差の激しい気持ちは、人によっては、カーナビゲーション装置10による折角の世話が余計なお世話となる可能性が高まるので、これを排除し、運転者からの感謝が期待される、気持ちに個人差の少ない処置のみを実行する。
【0039】
なお、個人差が少ないかどうかは、通常、選択する察知因子により変化する。例えば、寒暖に対する気持ちは、男女差が少ないと判断すれば、性別を察知因子にすることなく、個人差は少ないと判断できる。また、行楽地の好みは、年齢差が大きいと考える場合には、運転者の年齢が不明であるときは、個人差が大きいと判断し、運転者の年齢が判明しているときは、年齢を察知因子として察知する気持ちは個人差が小さいと判断することができる。
【0040】
図3は車載型世話実行方法50のフローチャートである。車載型世話実行方法50は、車載型世話実行装置40に適用され、S51,S52を備える。
【0041】
S51では、車両に装備され状況を検出する1以上のセンサ41から検出された各状況に基づき運転者の気持ちを察知する。S52では、察知した気持ちに応える処置を実行する。
【0042】
S51,S52の処理は、車載型世話実行装置40の気持ち察知手段42及び処置実行手段43の機能にそれぞれ対応している。したがって、気持ち察知手段42及び処置実行手段43の機能について述べた具体的態様はS51,S52の処理についての具体的態様としても適用可能である。車載型世話実行方法50では、また、車載型世話実行装置40の個人情報記憶手段47及び学習手段48の機能に対応する処理を実行するステップを適宜、追加可能である。個人情報記憶手段47及び学習手段48に対応するステップは、図2の車載型世話実行装置40において、個人情報記憶手段47及び学習手段48からの出力に対応する処理の流れが実現されるように、S51の前に配置される。個人情報記憶手段47及び学習手段48の追加に対して説明した気持ち察知手段42の機能の具体的態様は、個人情報記憶手段47及び学習手段48に対応するステップの追加に対するS51の処理の具体的態様として適用される。
【0043】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを車載型世話実行装置40の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、車載型世話実行方法50の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0044】
本発明を最良の形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で最良の形態における各構成要素を変形して具体化できる。また、最良の形態に開示されている複数の構成要素の便宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。本明細書が開示する発明には、最良の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除したり、異なる最良の形態に係る構成要素同士を組み合わせたものも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】カーナビゲーション装置の模式図である。
【図2】車載型世話実行装置のブロック図である。
【図3】車載型世話実行方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
40:車載型世話実行装置、41:センサ、42:気持ち察知手段、43:処置実行手段、47:個人情報記憶手段、48:学習手段、50:車載型世話実行方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装備され状況を検出する1以上のセンサ、
前記1以上のセンサから検出された各状況に基づき運転者の気持ちを察知する気持ち察知手段、及び
察知した気持ちに応える処置を実行する処置実行手段、
を備えることを特徴とする車載型世話実行装置。
【請求項2】
運転者により入力された個人情報を記憶する個人情報記憶手段、及び
個人情報を加味して運転者の気持ちを察知する前記気持ち察知手段、
を備えることを特徴とする請求項1記載の車載型世話実行装置。
【請求項3】
前記処置実行手段が実行した処置を運転者が変更又は取消した場合には、それを学習する学習手段、及び
前記学習手段の学習結果に基づき運転者の気持ちを察知する前記気持ち察知手段、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の車載型世話実行装置。
【請求項4】
運転者が抱く気持ちに個人差の少ない状況に限定して、該状況に対する運転者の気持ちを察知する前記気持ち察知手段、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車載型世話実行装置。
【請求項5】
車両に装備され状況を検出する1以上のセンサから検出された各状況に基づき運転者の気持ちを察知するステップ、及び
察知した気持ちに応える処置を実行するステップ、
を備えることを特徴とする車載型世話実行方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の車載型世話実行装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−203217(P2008−203217A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42818(P2007−42818)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】