説明

車載用表示システム

【課題】表示部自体に故障が発生した場合に、その故障発生を通知するための表示手段を別途設けることなく、ドライバに対して通知を行うことができる車載用表示システムを提供する。
【解決手段】制御部及び映像セレクタ部は、単一又は複数の映像出力機器等より出力される映像信号が、定常的な出力状態から切り換えられる間に、表示部に黒色画像信号を一定時間挿入出力する(ステップS6)。制御部は、表示部に表示される画像が、黒色画像と、映像出力機器より出力される映像信号の画像との間で変化する場合に、表示部に生じる電気的信号の変化状態よって表示部の異常を判定すると(ステップS7:異常)、バックライト部を点滅させて異常の報知を行う(ステップS16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の映像信号出力手段より出力される映像信号を切り換えて、表示部に表示させる車載用表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバの運転を支援するための情報を、車室内に配置される1つ以上の表示部に表示させる車載表示機器では、例えばミラーでは死角となる範囲をカバーするように、カメラにより撮像した車両周辺の映像等を表示させるものが普及している。これらの表示内容は、ドライバ並びに同乗者の安全を図ったり、安心を提供することに直結するため、ドライバに対して、正確な情報を表示させるべき場面で確実に表示できる、という信頼性が大変重要となる。
【0003】
また、カメラから車載表示機器に入力される映像信号が途絶したり、車載表示機器自体に内部回路の異常などが発生し、画像が表示できない状態に陥った場合には、ドライバに対してその旨を通知することも安全上必要である。しかしながら、表示機器に異常が発生すると、上記のような通知を行う手段自体が失われることになる。
例えば特許文献1には、映像機器において、映像を表示する画面とは別に機器の状態を表示する表示部を備え、映像機器について特定の異常状態を検出すると電源をオフし、電源をオフしたことを表示部に表示する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−130700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、異常状態の発生を通知するための表示部を別個に設ける必要があるため、その分だけコストアップすることになる。また、前記表示部自体に故障が発生した場合は、上述のように、やはり通知を行う手段自体が失われてしまうことになる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、表示部自体に故障が発生した場合に、その故障発生を通知するための表示手段を別途設けることなく、ドライバに対して通知を行うことができる車載用表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車載用表示システムによれば、画像信号挿入手段は、映像信号が映像信号出力手段より定常的に出力されるまでの間,及び/又は映像信号が定常的な出力状態から切り換えられる間に、表示部に単一色画像信号を一定時間挿入出力する。そして、異常判定手段は、表示部に表示される画像が、単一色の画像と、映像信号出力手段により出力される映像信号の画像との間で変化する場合に、表示部に生じる電気的信号の変化及び/又は光学的信号の変化状態より表示部の異常を判定すると、報知手段は、表示部用光源の発光状態を変化させることで異常の報知を行う。したがって、故障発生を通知するための表示手段を別途設けずとも、通常とは異なる表示部用光源の発光状態,すなわち表示部の表示状態により、異常の報知を行うことができる。
【0007】
請求項2記載の車載用表示システムによれば、画像信号挿入手段によって挿入される単一色画像信号を黒色画像信号とする。すなわち、表示部が正常であれば、通常の映像を表示させている状態から黒色画像を表示する状態に切り替わると、電気的又は光学的信号の変化が顕著になる。したがって、表示部が故障した場合には、その変化が小さくなることで異常判定をより容易に行うことができる。
【0008】
請求項3記載の車載用表示システムによれば、画像信号挿入手段は、電源が投入されて、映像信号出力手段より出力される映像信号の画像が、表示部に最初に表示されるまでの間に単一色画像信号を挿入出力する。したがって、電源が投入される毎に異常判定を行うことができる。
【0009】
請求項4記載の車載用表示システムによれば、画像信号挿入手段は、映像信号出力手段の1つにおいて出力される映像信号のソースが切り換えられる間に、単一色画像信号を挿入出力する。したがって、映像信号出力手段が1つだけ配置されている場合に異常判定を行うことができる。
【0010】
請求項5記載の車載用表示システムによれば、映像信号出力手段が複数存在する場合に、画像信号挿入手段は、それらより出力される映像信号が、何れか1つから他の1つに切り換えられる間に単一色画像信号を挿入出力する。したがって、映像信号出力手段が複数配置されている場合に異常判定を行うことができる。
【0011】
請求項6記載の車載用表示システムによれば、異常判定手段は、表示部に通電される駆動電流を検出する電流検出手段を備え、駆動電流の変化が所定値未満である場合に異常を判定する。すなわち、表示部が正常である場合の駆動電流は、映像信号出力手段より出力される映像信号が表示されている状態と、単一色画像信号が表示されている状態とで大きく変化するが、異常が発生するとその変化が小さくなる。したがって、駆動電流の変化に基づいて異常判定を確実に行うことができる。
【0012】
請求項7記載の車載用表示システムによれば、異常判定手段は、表示部内に配置される発光状態検出手段により、表示部の発光状態の変化が所定値未満である場合に異常を判定する。すなわち、表示部が正常である場合の発光状態は、請求項6の駆動電流の場合と同様に、映像信号出力手段より出力される映像信号が表示されている状態と、単一色画像信号が表示されている状態とで大きく変化するが、異常が発生するとその変化が小さくなる。したがって、発光状態の変化に基づいて異常判定を確実に行うことができる。
【0013】
請求項8記載の車載用表示システムによれば、異常判定手段は、表示部に入射する外光による影響の有無を判別する外光判別手段によって、外光による影響が無いと判別された場合に異常を判定する。すなわち、車室内における表示部の配置状態によっては、入射する外光の影響を強く受ける場合もある。したがって、外光による影響が無いと判別された場合に表示部の発光状態の変化に基づく異常を判定すれば、より正確に判定を行うことができる。
【0014】
請求項9記載の車載用表示システムによれば、外光判別手段は、時刻情報に基づいて外光による影響の有無を判別する。例えば昼間の時間帯などは表示部に外光が入射し易くなると想定されるので、その時間帯では異常判定を回避することで誤判定を防止できる。
【0015】
請求項10記載の車載用表示システムによれば、外光判別手段は、外部の車両用ナビゲーション装置より与えられる自車両の現在位置及び地図データ情報に基づいて外光による影響の有無を判別する。例えば車両がトンネルや地下道路などを走行している場合には、表示部に外光が入射し難くなると想定されるので、そのような期間に異常を判定することで、判定を正確に行うことができる。
【0016】
請求項11記載の車載用表示システムによれば、単一色画像信号を黒色画像信号とした場合に、異常判定手段は、外光判別手段によって外光による影響が有ると判別された場合に異常を判定する。すなわち、表示部に外光が入射している状態から、表示部に黒色画像信号を表示させると、その表示により入射する外光を遮光することができるので、発光状態検出手段がそのような状態変化を検出できなければ異常を判定できる。
【0017】
請求項12記載の車載用表示システムによれば、報知手段は、表示部用光源を、所定間隔で点滅させて報知を行う。したがって、通常とは異なる光源の発光状態により、異常報知を車両の乗員に判り易く行うことができる。
【0018】
請求項13記載の車載用表示システムによれば、報知手段は、表示部用光源を構成する、複数の単位光源の一部のみ発光させて報知を行う。この場合、表示部における表示領域の一部のみが暗くなるので、異常報知を車両の乗員に判り易く行うことができる。
【0019】
請求項14記載の車載用表示システムによれば、報知手段は、異常判定手段が異常を判定すると、当該判定の情報を、通信手段を介して他の車載機器にも送信する。したがって、例えば他の車載機器が備えている報知手段を利用することで、異なる形態でも異常報知を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施例であり、制御部を中心とする処理内容を示すフローチャート
【図2】映像ソースが切替えられる間に黒色画像が挿入される場合の表示部の画面イメージを示す図
【図3】制御部がステップS6,S7の判断を行う場合のタイミングを示す図
【図4】車載用表示システムの電気的構成を示す機能ブロック図
【図5】表示部の電気的構成を示す図
【図6】反転駆動方式におけるコモン電流の変化状態を示す図
【図7】各映像出力機器の配置状態を示す車両の平面図
【図8】第2実施例であり、表示部及び検出回路を中心とする回路構成を示す図
【図9】液晶画面部の一画素分の断面構造を模式的に示す図
【図10】図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施例)
以下、第1実施例について図1ないし図7を参照して説明する。図4は、車載用表示システムの構成を示す機能ブロック図である。車載用表示システム1は、複数の映像出力機器(映像信号出力手段)2と、車載用表示装置3とで構成されている。図7は、これらの配置状態を示す車両の平面図であり、映像出力機器2は、車両周辺の画像を撮像するため車室外に設置されており、車載用表示装置3は、車室内のダッシュボード上に配置されている。尚、図4では、複数の映像出力機器2うち2つだけ(A,B)を図示している。
【0022】
映像出力機器2は、例えばCMOSイメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)などで構成されるカメラであり、上記のように配置されることで、車両に配置されているミラーや、ドライバの視野から死角となるエリアの画像を撮像する。車載用表示装置3の映像入力部4A,4Bは、映像出力機器2A,2Bより出力されるシリアルの画像データをパラレルデータに変換すると、そのデータを映像セレクタ部(画像信号挿入手段)5に出力する。また、映像入力部4A,4Bは、映像出力機器2A,2Bからの映像信号が途絶したことを判別すると、入力断検出信号を制御部(画像信号挿入手段,異常判定手段,報知手段)6に出力する。
【0023】
映像セレクタ部(画像信号挿入手段)5は、車載用表示装置3に内蔵されている図示しない映像出力機器より出力される映像ソース、例えばデジタルTVやDVDプレーヤより出力される映像信号を表示部7に出力する。また、映像セレクタ部5は、制御部6より出力される映像セレクト信号に応じて、映像入力部4A,4Bの何れか一方より出力される画像データ(それぞれ、映像信号(1),(2)とする)や、上記内蔵の映像出力機器からの映像ソース,その他、表示部7が図示しないナビゲーション装置の表示部としても兼用されている場合は、ナビゲーション装置本体より与えられる映像ソースを選択する(したがって、映像セレクタ部5自身や、上記ナビゲーション装置も映像信号出力手段に対応する)。そして、その画像データを高画質化処理したり、制御部6より与えられる制御信号に応じて拡大,縮小,合成等の処理を行うと、表示部7に出力する。
【0024】
制御部6は、例えばマイクロコンピュータで構成され、車載用表示装置3の全体を制御する。そして、映像セレクタ部5が入力される画像データを切り替える間の期間に、表示部7に黒色画像(単一色画像)を表示させるための映像信号及びコモン信号を出力するようになっている。表示部7は、例えばアクティブマトリクス方式の液晶表示デバイスや、そのデバイスを駆動するための走査電極側駆動回路や信号電極側駆動回路などを備えて構成されている。
【0025】
映像切替え入力部8は、車載用表示装置3の外部より与えられる(例えば、ユーザの操作による)映像切替え信号を受信して、制御部6に出力する。制御部6は、上述したように、上記映像切替え信号に基づいて映像セレクタ部5に映像セレクト信号を出力する。また、制御部6は、映像セレクタ部5が表示部7に出力する映像信号のソースを切り替える間の期間に、表示部7に、画面全体を黒色にする黒色画像を表示させるための制御信号を、映像セレクタ部5に出力するようになっている。すると、映像セレクタ部5は黒色画像を表示させるための映像信号を表示部7に出力する。
車両LAN信号入出力部(通信手段)9は、車載用表示装置3の外部から車両LAN通信信号を受信すると、制御部6に対して制御コマンドを出力する。また、制御部6は、車両LAN信号入出力部9を介して、車両LANで接続されている他の車載機器に通信信号を送信する。
【0026】
(制御用)電源部10は、車両のバッテリからの電源を受けて例えば5V程度の電源を生成し、制御部6や表示部7等の各構成要素に供給する。また、バックライト用電源部11は、例えばスイッチング電源回路で構成され、同じくバッテリからの電源を受けて昇圧動作を行い、例えば13V〜18V程度の電源を生成してバックライト部(表示部用光源)12に供給する。そして、バックライト用電源部11の動作は、制御部6より与えられる制御信号により制御されるようになっている。バックライト部12は、表示部7の背面側に配置される光源であり、背面から光を当てて照明することで表示部7の画面表示をユーザに視認させる。
検出回路(電流検出手段,異常判定手段)13は、映像セレクタ部5が表示部7に出力する映像信号のソースを切り替える間に黒色画像を挿入表示させる場合、画像信号の変化に基づく電気的信号の変化に応じて表示部7の異常や故障を検出する。
【0027】
図5は、表示部7の電気的構成を示すものである。映像セレクタ部5からは、表示部7に対して、映像信号と共にタイミング信号(垂直同期信号),ゲート信号及びコモン信号が出力される。タイミング信号及び映像信号は信号電極駆動回路14に出力され、ゲート信号は走査電極駆動回路15に出力され、コモン信号はコモン電極16aに出力される。
【0028】
液晶画面部16は、対向する一対のガラス基板(図5では図示せず)の一方のガラス基板表面に複数の画素電極16b(透明電極、図示せず)がマトリクス状に形成され、他方のガラス基板表面に一つのコモン電極(透明電極)16aが形成され、対向するガラス基板間にTN型の液晶16cが注入されて構成されている。画素電極が形成されたガラス基板には、画素電極にドレインを接続した薄膜トランジスタ(TFT)16dが各画素電極と対をなして形成されている。
マトリクスの各行には走査線16eが設けられ、行方向に並ぶTFT16dのゲートが共通の走査線16eに接続され、マトリクスの各列方向には信号線16fが設けられ、列方向に並ぶTFT16dのソースが共通の信号線16fに接続されている。また、TFT16d内に生じる寄生容量16gを、図5では、液晶16cに並列接続されたコンデンサのシンボルで示している。
【0029】
走査電極駆動回路15は、入力されるゲート信号に基づいて、液晶画面部16の最上行から各走査線16eに一定間隔でパルス状のゲート信号を順次印加し、各行毎に順次TFT16dをオンオフさせる。ここで、液晶表示部16の最上行から最下行の走査線16eまで1回走査するのに要する時間が1フレーム周期(垂直同期周期)となる。また、信号電極駆動回路14は、入力されるタイミング信号に基づいて、各行のTFT16dのオンに同期させながら全信号線16fに映像信号を印加する。また、コモン電極16aにはコモン信号が印加される。これにより、画素電極16b,コモン電極16a間に電荷が蓄積されて液晶16cに電圧が印加されると、各画素毎に液晶分子の配列が変化してバックライトの透過特性が変化し、液晶画面部16に映像が表示される。尚、液晶画面部16は、電極間に印加する電圧の極性を、1フレーム周期毎に反転させる反転駆動方式で制御されている(図6参照)。
【0030】
検出回路13は、コモン電極16aに挿入された検出用抵抗13aと、その検出用抵抗13aの端子電圧を差動増幅する増幅回路13b(簡略化してオペアンプのみで示す)とで構成されている。すなわち、検出回路13は、液晶画面部16に映像が表示される場合に、コモン電極16aに通電される駆動電流(コモン電流)に応じた検出用抵抗13aの端子電圧を差動増幅する。そして、増幅回路13bにより増幅された電圧信号は制御部6の入力端子に与えられ、内部のA/D変換回路によってA/D変換される。
【0031】
図1は、制御部6を中心とする処理内容を示すフローチャートである。車両のバッテリから電源が投入されると(ステップS1,ACC ON)、外部機器や車載用表示装置3の内部回路について、初期設定等の立ち上げ処理が行われる(ステップS2)。続いて、制御部6は、映像入力部4A,4Bからの映像信号(1),(2)の入力があるか否かを判断し(ステップS3,S4)、何れからも入力があれば、それらの映像信号の入力状態は正常と判断する(ステップS5)。
【0032】
そして、制御部6は、映像切替え入力部8を介して映像切替え信号が入力されたことをトリガとして、映像ソースの切替えに伴う黒色画像の挿入期間の前後に、表示部7の正常/異常を判定する(ステップS6,S7)。ここで、図2は、映像ソースが切替えられる間に黒色画像が挿入される場合の表示部7の画面イメージを示す。この例では、最初にナビゲーション装置より与えられる地図の画像(映像1)が表示されており、黒色画像が挿入された後、映像出力機器2Bからの画像(車両後方の映像,映像2)に切り換えられた状態を示している。
【0033】
また、図3は、制御部6がステップS6,S7の判断を行う場合のタイミングを示す。(a)は映像セレクタ部5が表示部7に対して出力する垂直同期信号であり、(b)は映像信号である。(c)は制御部6が検出回路13の出力信号を参照して判定を行うタイミング(検出)を示しており、(a)に示す垂直同期信号から、若干遅れたタイミングで周期的に検出を行う。図3(b)に示すように、通常の映像信号(ソース)が切り換えられる間は黒色画像が挿入され続けるが、通常映像信号と黒色画像とが切り替わる間の電流変化によって、制御部6により正常/異常が判定される。
【0034】
すなわち、図6に示すように、液晶画面部16に映像が表示される場合、コモン電極16aには液晶16c及び寄生容量16gを充電する電流が流れるが(一点鎖線)、黒色画像を表示させる場合は、その電流値が通常の映像ソースの場合よりも大きな値を示す(実線)。すなわち、黒色画像を表示させるには、バックライト光を遮光させるため液晶16cにより高い電圧を印加して、充電電流が大きくなるからである。
【0035】
したがって、制御部6は、検出回路13より与えられる電圧信号をA/D変換して読み込むと、そのデータ値を所定の閾値と比較することでステップS7の判定を行う。つまり、黒色画像を表示した場合の電流値が閾値未満であれば「異常」と判定する。この場合の閾値は、通常の映像ソースが表示される場合の平均的な電流値と、黒色画像が表示された場合の電流値との中間あたりに設定しておく。尚、検出回路13は、交流的に変化するコモン電流の一方の極性について検出を行えば良い。
【0036】
再び、図1を参照する。表示部7の動作が正常であれば、映像切替え信号に応じて映像信号(1),(2)の何れかを、映像セレクタ部5を介して選択する(ステップS8〜S10)。尚、この場合の選択切替えにおいても黒画挿入が行われる。それから、制御部6は、バックライト用電源部11から電源を供給させてバックライト部12を点灯させて(ステップS11)、表示部7に通常の表示動作を行わせる(ステップS12)。
一方、ステップS7において、表示部7の動作が異常であると判断すると、制御部6は、バックライト用電源部11から電源を断続的に供給させて(ステップS15)、バックライト部12を点滅させる(すなわち、発光状態を変化させる)ことで(ステップS16)ユーザ(車両の乗員)に対して異常状態の報知を行う(ステップS17)。
【0037】
尚、この場合、図4に破線で示すように、バックライト部12が2つの単位光源12A,12Bに分けて構成されており、これら2つの単位光源12A,12Bによって表示部7にバックライト光を照射するようになっているとする。そして、バックライト用電源部11が、単位光源12A,12Bにそれぞれ独立に駆動電源を供給可能となっており、例えば単位光源12Bを消灯させて単位光源12Aだけを点灯させれば(部分的点灯)、表示部7の表示は、画面の約1/2が暗くなり、残りの1/2でしか正常に行われなくなる。したがって、このような表示形態で、ステップS17における異常状態の報知を行うこともできる。
【0038】
また、ステップS3又はS4において、映像入力部4A,4Bの何れかより入力断検出信号が出力された場合には、制御部6は、映像信号(1),(2)の入力異常が生じたと判断する(ステップS13)。そして、車両LAN信号入出力部9を介して外部機器に異常の発生を報知する信号を出力する(ステップS14)。例えば、車両側のECUを介して、インストルメントパネルの警告ランプを点灯させるなどして異常報知を行うことも可能である。それから、ステップS15〜S17を実行して、バックライト部12による異常報知も併せて行うようにする。尚、ステップS14については、ステップS7で異常が判定された場合も実行して、外部機器に異常の発生を報知しても良い。
また、映像信号(1),(2)については、映像入力部4A,4Bのように独立した機器により出力されるものに限らず、単一の機器より出力される映像信号が、非連続的に切り替わる場合の前後の映像を映像信号(1),(2)として、同様に異常判定を行うこともできる。
【0039】
以上のように本実施例によれば、制御部6及び映像セレクタ部5は、単一又は複数の映像出力機器2等より出力される映像信号が、定常的な出力状態から切り換えられる間に、表示部7に黒色画像信号を一定時間挿入出力する。そして、制御部6は、表示部7に表示される画像が、黒色画像と、映像出力機器2等より出力される映像信号の画像との間で変化する場合に、表示部7に生じる電気的信号の変化状態よって表示部7の異常を判定すると、バックライト部12を点滅させて(或いは単位光源12A,12Bの一方だけを点灯させて)異常の報知を行うようにした。
【0040】
したがって、故障発生を通知するための表示手段を別途設けずとも、通常とは異なるバックライト部12の発光状態,すなわち表示部7の表示状態により、異常報知を車両の乗員に判り易く行うことができる。また、映像出力機器2等が1つの場合,複数の場合の何れでも表示部7の異常判定を行うことができる。
またこの場合、表示部7に挿入する単一色画像信号を黒色画像とすることで、表示部7が正常であれば、通常の映像を表示させている状態から黒色画像を表示する状態に切り替わると、電気的信号の変化が顕著になる。したがって、表示部7が故障した場合には、その変化が小さくなることで異常判定をより容易に行うことができる。
【0041】
また、制御部6は、検出回路13が検出するコモン電流の変化が所定値未満である場合に異常を判定するので、コモン電流の変化に基づいて異常判定を確実に行うことができる。更に、制御部6は、表示部7の異常を判定すると、当該判定の情報を、車両LAN信号入出力9を介して他の車載機器にも送信するので、例えば他の車載機器が備えている、インストルメントパネルのLED等を報知手段として利用することで、異なる形態でも異常報知を行うことが可能となる。
【0042】
(第2実施例)
図8ないし図10は第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。第2実施例の検出回路は、映像ソースからの通常映像信号と黒色画像信号との切り換わりにおいて、表示部7の各画素について発光状態が変化するレベルを評価して異常を判定する構成となっている。
【0043】
図8は、表示部7及び検出回路(発光状態検出手段,異常判定手段)21を中心とする回路構成を示す。表示部7については、液晶画面部16の一画素分だけ示している。検出回路21は、各画素に対応して配置されるフォトダイオード21D(検出回路の一部を構成する)のアノードにX座標側の検出線を接続し、カソードにY座標側の検出線を接続しており、これらのアノード,カソード間に逆バイアス電圧を印加している。そして、画素(液晶16c)が発光するとフォトダイオード(光センサ,受光素子,発光状態検出手段)21Dに逆電流が流れるので、検出回路21は逆電流が流れたことに基づいて発光を検知する。
【0044】
この場合、検出回路21は、外光の影響を受けることがないよう制御部6より検出許可信号が与えられている期間に、映像セレクタ部5が表示部7について行う映像表示処理に同期して各画素の発光検出を行う。黒色画像が表示される期間は、全ての画素が発光しないことになる。そして、黒色画像表示期間に1個以上の画素について発光が検出されると異常と判定しても良いが、例えば液晶画面部16の全画素の5〜10%程度に発光が検出された場合に異常と判定しても良い。また、検出結果は、例えば検出回路21が不良画素数をカウントした結果を制御部6に出力しても良いし、検出回路21が検出動作を行っている間に、随時判定結果データを例えばパラレルに出力しても良い。
【0045】
図9は、液晶画面部16の一画素分の断面構造を模式的に示したものである。バックライト部12側のTFTガラス22には、遮光層23上に、TFT16dと共にフォトダイオード21Dが予め作り込まれている。図中下方側に位置するTFTガラス22の内面と上方側に位置するCF(Color Filter)ガラス24の内面とには、それぞれ画素電極16bとコモン電極16aとが形成されており、それらの間に液晶16cの層が配置されている。
【0046】
また、CF(Color Filter)ガラス24の内面側で、TFT16d及びフォトダイオード21Dが形成されている部位と対向する部分にも遮光層25が形成されている。そして、遮光層25のフォトダイオード21Dに対向する部位には、反射層26が形成されている。反射層26は、画素電極16bを透過したバックライト光を下方へ反射させて、フォトダイオード21Dに受光させるために配置されている。尚、このように、フォトダイオード21DをTFT16dと同じ側に形成することで、液晶画面部16の製造工程が簡単になる。
【0047】
次に、第2実施例の作用について図10を参照して説明する。図10に示すフローチャートは図1に示したものに、ステップS21〜S25を追加したものである。ステップS1,S2を実行すると、制御部6は、例えば自身が内蔵するリアルタイムクロックより現在時刻情報を取得すると共に、ナビゲーション装置と通信することで、GPS(Global Positioning System)を用いた位置情報(道路情報を含む)を取得する(ステップS21)。そして、取得したそれらの情報に基づいて、表示部7に外光が入射し得る状態にあるか否かを判断する(ステップS22,外光判別手段)。
【0048】
すなわち、現在時刻より昼間/夜間の時間帯かを判断し、夜間であれば表示部7に外光の入射はないと判断できる。また、昼間であっても、位置情報により自車両の現在位置がトンネルの内部などである場合は、表示部7に入射する外光は、無視できるレベルであると判断できる。ステップS22において、外光の入射が無い(「無視できる」を含む)と判断すると、以降は第1実施例と同様に、ステップS3〜S17を実行する。この場合、ステップS6,S7における判断は、上述したように、黒色画像挿入期間における各画素の発光の有無によって行う。
【0049】
一方、ステップS22において外光の入射が有ると判断すると、制御部6は、この外光を利用して異常判定を行う。すなわち、この時点で黒色画像を出力させて(ステップS23)、フォトダイオード21Dの出力状態を確認する(ステップS24)。外光が入射している状態で黒色画像を表示させると、図9に示すように、表示部7に入射する外光が液晶16cによって遮光される。したがって、この状態で外光が検出されなければステップS25で「正常」と判断してステップS3に移行し、外光が検出されると「異常」と判断してステップS15に移行する。
【0050】
以上のように第2実施例によれば、制御部6は、表示部7に配置され、フォトダイオード21Dを用いた検出回路21により、表示部7の発光状態の変化が所定値未満である場合に異常を判定する。すなわち、表示部7が正常である場合の各画素の発光状態は、第1実施例における駆動電流の場合と同様に、映像出力機器2等より出力される映像信号が表示されている状態と、黒色画像が表示されている状態とで大きく変化する。具体的には、黒色画像が表示されている場合の画素は発光しない(バックライトを遮光する)ので、その際にフォトダイオード21Dを介して発光状態が検出された場合に、異常判定を確実に行うことができる。
【0051】
また、制御部6は、表示部7に入射する外光による影響の有無を判別し、外光による影響が無いと判別された場合に異常を判定する。すなわち、車室内における表示部7の配置状態によっては、入射する外光の影響を強く受ける場合があるので、外光による影響が無いと判別された場合に表示部7の発光状態の変化に基づく異常を判定すれば、より正確に判定を行うことができる。
【0052】
この場合、制御部6は、時刻情報に基づいて外光による影響の有無を判別する。例えば昼間の時間帯などは表示部7に外光が入射し易くなると想定されるので、その時間帯では異常判定を回避することで誤判定を防止できる。また、制御部6は、外部の車両用ナビゲーション装置より与えられる自車両の現在位置及び地図データ情報に基づいて外光による影響の有無を判別する。例えば車両がトンネルや地下道路などを走行している場合には、表示部7に外光が入射し難くなると想定されるので、そのような期間に異常を判定することで、判定を正確に行うことができる。
【0053】
更に、制御部6は、電源が投入されて、映像出力機器2等より出力される映像信号の画像が表示部7に最初に表示されるまでの間に、外光の入射があると判定されると表示部7に黒色画像を挿入出力し、その際に、検出回路21が入射された外光を検出するか否かによって異常判定を行うようにした。したがって、この場合には、外光を利用して異常判定を行うことができる。
【0054】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
単一色画像は、黒色画像に限ることなく、その他の色の単一色画像でも良い。
映像信号が、映像出力機器2等より定常的に出力されるまでの間に黒色画像を挿入して、同様に異常判定を行っても良い。すなわち、図10に示すフローにおいて、ステップS21,S22を削除して、これらの代わりにステップS23を実行し、黒色画像から何れかの映像ソースが表示される場合の切り替え時に、ステップS7と同様の判断を行うようにすれば良い。
また、映像ソースが切り替わる場合に限らず、表示部7の故障検出を行う目的で、例えば決まった時刻毎に単一色画像を表示させて異常判定を行うようにしても良い。
第1実施例の構成において、第2実施例と同様に、電源投入時に異常判定を行っても良い。
【0055】
映像信号出力手段は、少なくとも1つあれば良い。
バックライト部を、3つ以上の単位光源で構成しても良い。
車両LAN信号入出力部9は、必要に応じて設ければ良い。
第2実施例において、フォトダイオード21DをCFガラス24側に形成しても良い。
フォトダイオード21Dに替えて、フォトトランジスタを用いても良い。
第2実施例の外光判別手段として、外光の照度を検出するための光センサを別途設けても良い。
また、第2実施例において、表示部7が、外光が入射し難い状態で設置されている場合は、外光による影響の有無を判別する処理を行わなくても良い。
第1,第2実施例を組み合わせて実施しても良い。
【符号の説明】
【0056】
図面中、1は車載用表示システム、2は映像出力機器(映像信号出力手段)、5は映像セレクタ部(画像信号挿入手段)、6は制御部(画像信号挿入手段,異常判定手段,報知手段,外光判別手段)、7は表示部、9は車両LAN信号入出力部(通信手段)、12はバックライト部(表示部用光源)、13は検出回路(電流検出手段,異常判定手段)、21は検出回路(発光状態検出手段,異常判定手段)、21Dはフォトダイオード(発光状態検出手段,異常判定手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、映像信号を出力する1つ以上の映像信号出力手段と、
車室内に配置され、前記映像信号出力手段により出力される映像信号に応じた画像を表示する表示部と、
この表示部に画像を表示させるために発光する表示部用光源と、
前記映像信号が前記映像信号出力手段より定常的に出力されるまでの間,及び/又は前記映像信号が定常的な出力状態から切り換えられる間に、前記表示部に単一色画像信号を一定時間挿入出力する画像信号挿入手段と、
前記表示部に表示される画像が、前記単一色の画像と、前記映像信号出力手段により出力される映像信号の画像との間で変化する場合に、前記表示部に生じる電気的信号の変化及び/又は光学的信号の変化状態より前記表示部の異常を判定する異常判定手段と、
この異常判定手段が前記異常を判定すると、前記表示部用光源の発光状態を変化させることで、前記異常の報知を行う報知手段とを備えたことを特徴とする車載用表示システム。
【請求項2】
前記画像信号挿入手段によって挿入される単一色画像信号は、黒色画像信号であることを特徴とする請求項1記載の車載用表示システム。
【請求項3】
前記画像信号挿入手段は、電源が投入されて、前記映像信号出力手段より出力される映像信号の画像が、前記表示部に最初に表示されるまでの間に前記単一色画像信号を挿入出力することを特徴とする請求項1又は2記載の車載用表示システム。
【請求項4】
前記画像信号挿入手段は、前記映像信号出力手段の1つにおいて出力される映像信号のソースが切り換えられる間に、前記単一色画像信号を挿入出力することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の車載用表示システム。
【請求項5】
前記映像信号出力手段が複数存在する場合、
前記画像信号挿入手段は、前記複数の前記映像信号出力手段より出力される映像信号が、何れか1つから他の1つに切り換えられる間に前記単一色画像信号を挿入出力することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の車載用表示システム。
【請求項6】
前記異常判定手段は、前記表示部に通電される駆動電流を検出する電流検出手段を備え、前記駆動電流の変化が所定値未満である場合に異常を判定することを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の車載用表示システム。
【請求項7】
前記異常判定手段は、前記表示部内に配置され、前記表示部の発光状態を検出する発光状態検出手段を備え、前記発光状態の変化が所定値未満である場合に異常を判定することを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の車載用表示システム。
【請求項8】
前記異常判定手段は、前記表示部に入射する外光による影響の有無を判別する外光判別手段を備え、前記外光による影響が無いと判別された場合に前記異常を判定することを特徴とする請求項7記載の車載用表示システム。
【請求項9】
前記外光判別手段は、時刻情報に基づいて前記外光による影響の有無を判別することを特徴とする請求項8記載の車載用表示システム。
【請求項10】
前記外光判別手段は、外部の車両用ナビゲーション装置より与えられる自車両の現在位置及び地図データ情報に基づいて、前記外光による影響の有無を判別することを特徴とする請求項8又は9記載の車載用表示システム。
【請求項11】
前記単一色画像信号を黒色画像信号として、
前記異常判定手段は、前記外光判別手段によって外光による影響が有ると判別された場合に、前記異常を判定することを特徴とする請求項8ないし10の何れかに記載の車載用表示システム。
【請求項12】
前記報知手段は、前記表示部用光源を、所定間隔で点滅させて報知を行うことを特徴とする請求項1ないし11の何れかに記載の車載用表示システム。
【請求項13】
前記表示部用光源が、複数の単位光源によって構成される場合、
前記報知手段は、前記表示部用光源を、一部のみ発光させて報知を行うことを特徴とする請求項1ないし11の何れかに記載の車載用表示システム。
【請求項14】
車両に搭載される他の車載機器との間で通信を行うための通信手段を備え、
前記報知手段は、前記異常判定手段が前記異常を判定すると、当該判定の情報を前記通信手段を介して前記他の車載機器にも送信することを特徴とする請求項1ないし13の何れかに記載の車載用表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−111028(P2011−111028A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268739(P2009−268739)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】