説明

車載用電力変換装置の冷却装置および鉄道車両用電力変換装置

【課題】小型化および性能の向上を図ることができる車載用電力変換装置の提供。
【解決手段】冷却装置20は、放熱ベース14の放熱面が冷却風の流れにほぼ沿うように配置された車載用電力変換装置10の冷却に用いられる。冷媒6が収納された沸騰容器1の底面は、車載用電力変換装置10の放熱面に熱的に接触している。沸騰容器1から冷媒を流出する蒸気パイプ4aは、沸騰容器1の上面であって冷却風の流れの風下側に設けられる。熱交換器21に設けられた複数の伝熱管3は、沸騰容器1の上面に対向するとともに、該上面に沿って冷却風の風下側から風上側に延在するように配置され、蒸気パイプ4aの冷媒を冷却風の風上側へと導く。また、伝熱管3の外周面には、冷却風を熱交換器21の沸騰容器1に対向しない側から沸騰容器1に対向する側へ通過させる複数の放熱フィン2が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車,あるいは鉄道車両など搭載される車載用電力変換装置の冷却装置、および、鉄道車両用電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車,あるいは鉄道車両においては,車両の動力源としてモータを搭載し,モータに供給する電力を制御するための,インバータなどの電力変換装置が備えられている。電力変換装置は,IGBTなどの電力用半導体を含むパワーモジュールとそのパワーモジュールを駆動する駆動回路,それらを制御する制御回路,および電流平滑化のためのコンデンサを備えている。
【0003】
これらの回路に用いられる電子部品は高温に弱いため冷却する必要がある。大容量で発熱量が大きい電力変換装置では,冷却液を循環させる液冷構造の冷却器や,密閉容器中で冷媒が気液二相状態となるよう充填される,通称「沸騰冷却」と呼ばれる方式を採用する冷却装置を備えるものもが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3646474号明細書
【特許文献2】特許第3513846号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却装置は、冷却対象の上部に設けられた熱交換器に対して、さらに上方から送風機によって冷却風を送風する構成のため、送風機を含めた高さ方向の寸法が大きくなり、電気自動車のボンネット内に収納可能に構成するのは困難であった。また、熱交換器への流入空気の流れ方向が沸騰容器の上面に対して垂直なのに対し,流出空気は沸騰容器の上面に対して略平行となることから,空気の流れを略直角に曲げるための流体の抵抗が発生してしまうことで風量が低下し,冷却性能を損なうという課題もあった。
【0006】
また、特許文献2には車載用電力変換装置の冷却装置が記載されているが、車両前方から後方へと流れる冷却風を冷媒熱交換器に導くようにしている。しかしながら、冷媒放熱器が電力変換装置に対して垂直に設けられているため、ボンネット高さ方向が大きくなりやすいという欠点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、放熱面が冷却風の流れにほぼ沿うように配置された車載用電力変換装置の冷却装置であって、冷媒が収納され、底面が車載用電力変換装置の放熱面に熱的に接触している冷媒槽と、冷媒槽の上面であって冷却風の流れの風下側に設けられて、該冷媒槽から冷媒を流出する第1の配管と、冷媒槽の上面に対向するとともに、該上面に沿って冷却風の風下側から風上側に延在するように配置された複数の第2の配管を有し、第1の配管の冷媒を複数の第2の配管により冷却風の風上側へと導く熱交換器と、熱交換器の冷媒を冷媒槽へ戻す手段と、を備え、熱交換器は、第2の配管の外周面に設けられて、冷却風を該熱交換器の冷媒槽に対向しない側から冷媒槽に対向する側へ通過させる複数の放熱フィンを有することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の車載用電力変換装置の冷却装置において、冷却装置は、冷媒槽内の冷媒が電力変換装置からの熱により沸騰蒸発する沸騰冷却方式の冷却装置であって、冷媒槽の上面の冷却風の流れの風上側に設けられて、複数の第2の配管の冷媒を冷媒槽へ戻す、第1の配管よりも短い第3の配管を、熱交換器の冷媒を前記冷媒槽へ戻す手段として設け、複数の放熱フィンの傾きを冷却風の流れに対して平行に設定したことを特徴とする。
請求項3の発明による鉄道車両用電力変換装置は、鉄道車両の床下に設けられて冷却風を送風する送風装置と、請求項2に記載の冷却装置を冷却風の流れに沿って2つ配置して成る冷却ユニットと、冷却ユニットのいずれか一方の冷却装置により冷却され、給電された交流電力を直流電力に変換するコンバータユニットと、冷却ユニットの他方の冷却装置により冷却され、コンバータユニットから出力された直流電力を交流電力に変換して走行用モータに供給するインバータユニットと、を備え、冷却ユニットの風上側に配置された冷却装置の熱交換器を通過した冷却風が、冷却ユニットの風下側に配置された冷却装置の熱交換器に流入しないように、2つの冷却装置の各熱交換器を冷却風の流れに垂直な方向に互いにずらして配置したことを特徴とする。
請求項4の発明による鉄道車両用電力変換装置は、鉄道車両の床下に設けられて、給電された交流電力を一旦直流電力に変換した後に再び交流電力に変換して走行用モータに供給する電力変換ユニットと、電力変換ユニットの放熱面に取り付けられる請求項2に記載の冷却装置と、冷却装置の熱交換に冷却風を送風する送風装置と、を備えたことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項2に記載の車載用電力変換装置の冷却装置において、車載用電力変換装置は、鉄道車両の床下に放熱面が垂直となるように設けられ、第3の配管が第1の配管よりも垂直方向下側に配置されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1に記載の車載用電力変換装置の冷却装置において、熱交換器の冷媒を冷媒槽へ戻す手段として、冷媒を冷媒槽と熱交換器との間で循環させる循環ポンプを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車載用電力変換装置を冷却する冷却装置において、小型化および性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による車載用電力変換装置の冷却装置の第1の実施の形態を示す図。
【図2】冷却装置20を車両前方側から見た図。
【図3】図2のA1−A1断面図。
【図4】図3のA2−A2断面図。
【図5】放熱フィン2の取り付け部の形状を示す図。
【図6】対向流の場合と並行流の場合の冷媒温度を概念的に示す図。
【図7】冷媒強制循環方式の冷却装置120を示す図である。
【図8】本実施形態による冷却装置の第3の実施の形態示を示す図。
【図9】第3の実施の形態の第1の変形例を示す図。
【図10】第3の実施の形態の第2の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は、本発明による車載用電力変換装置の冷却装置の第1の実施の形態を示す図であって、冷却装置を電気自動車に適用した場合を示す。図1は、本実施形態の電力変換装置を含む電気自動車の全部ボンネット部分を車両側面から見た図である。電気自動車1001のボンネットの内部には、車両走行用モータ104を駆動するための電力変換装置10が設けられている。後述するように、電力変換装置10には、インバータ回路等を構成する電子部品が設けられている。電力変換装置10には、電力変換装置10を冷却するための冷却装置20が設けられている。冷却装置20の車両後方側には、冷却装置20に対して冷却風を供給するための送風機103が設けられている。なお、本実施の形態では冷却風を送風機103で発生させているが、走行中に車両前方から取り入れられる走行風を冷却風として利用しても良い。電力変換装置10は、配線短縮による軽量化および耐ノイズ性向上の観点から、車両走行用モータ104に近接した位置、例えば、車両走行用モータ104の略上部に配置される。
【0011】
105は車内空調向けエアコンの熱交換ユニットである。ここでは図示していないが、車両走行用モータ104からも大量の熱が発生するため、車両走行用モータ104を冷却するための冷却装置もボンネット内に収納されている。このように、電気自動車のボンネットの内部には,周囲外気を取り込んでの冷却あるいは熱交換が必要なコンポーネントが多く実装される一方,周囲外気は,車両前面の限られた部分から取り込むことから,冷却装置を小型化しながら,できるだけ多くの冷却風量を確保することが重要となる。
【0012】
図2,3は本実施の形態における冷却装置を示す図であり、図2は電力変換装置10に取り付けられた冷却装置20を車両前方側から見た図、図3は図2のA1−A1断面図である。10は冷却対象である電力変換装置であり、20は冷却装置である。
【0013】
図2,3に示すように、冷却装置20は、沸騰容器1、沸騰容器1の上面に立設された一対の蒸気パイプ4aおよび一対の液戻りパイプ4b、蒸気パイプ4aに接続された蒸気ヘッダ5a、液戻りパイプ4bに接続された液戻りヘッダ5b、蒸気ヘッダ5aと液戻りヘッダ5bとの間に接続された複数の伝熱管3、および、複数の伝熱管3に架け渡すように取り付けられた複数の放熱フィン2を備えている。なお、液戻りパイプ4bは、冷媒蒸気が流れる蒸気パイプ4aよりも内径が細くなっている。本実施の形態では、伝熱管3および放熱フィン2が熱交換器21を構成している。
【0014】
図3に示すように、液戻りパイプ4bは蒸気パイプ4aよりも短く設定されており、冷却風の風上側に設けられた液戻りヘッダ5bは、風下側に設けられた蒸気ヘッダ5aよりも位置が低い。そのため、複数の伝熱管3は、風上側が低くなるように傾斜することになる。複数の伝熱管3に架け渡された放熱フィン2の各々は、傾きがほぼ水平となるように、すなわち、冷却風の流れに対して平行となるように配置されている。冷却装置20内には冷媒6が封入されており、冷却装置20内において冷媒6は気液二相状態となっている。沸騰冷却型の冷媒6としては、例えば純水やフッ素系冷媒などが用いられる。
【0015】
図4は図3のA2−A2断面図であり、図5は放熱フィン2の取り付け部の形状を示す図である。伝熱管3は円筒管が用いられているが、図4では斜めに断面されているため、伝熱管3の断面は長円形状になっている。放熱フィン2には長孔形状の切り欠き2bが複数形成されており、それらの切り欠き2b内に各伝熱管3が挿入されるように取り付けられる。
【0016】
切り欠き2bには、放熱フィン2よりも厚いU字形状のカラー2aが設けられており、ロー付け等によりこのカラー2aの部分が伝熱管3と接合される。その結果、放熱フィン2と伝熱管3とが熱的に良好に接続されることになる。また、放熱フィン2に伝熱管挿入用の切り欠き2bを設けているため、大量の放熱フィン2を、角度がばらつかないように揃えながら、短時間で容易に接合可能とすることができる。
【0017】
電力変換装置10は、車両に搭載されたバッテリ(不図示)からの直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を車両走行用モータ104に供給する。図3に示すように、電力変換装置10には、インバータ回路を構成するパワー半導体素子を有するパワーモジュール11、パワーモジュール11を駆動制御する駆動制御回路12、平滑用のコンデンサモジュール203等が設けられている。それらの電子部品は、電力変換装置10の放熱ベース14と熱的に接触しており、発生した熱は放熱ベース14を介して沸騰容器1に伝熱される。なお、図示していないが、電力変換装置10には、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータや、制御用の油圧ポンプを駆動するモータ等の補機用モータを駆動するための補機用パワーモジュールも含まれている。
【0018】
図3を参照して、冷却装置20の冷却動作の概略を説明する。冷却装置20は、いわゆる沸騰冷却方式を採用しており、沸騰容器1内において液体の状態にある冷媒6は、電力変換装置10からの熱により蒸発あるいは沸騰して蒸気となり、その潜熱による発生熱が吸収される。沸騰容器1で発生した蒸気は、蒸気パイプ4a内を上昇して蒸気ヘッダ5aに流入する。なお、液戻りヘッダ5bに液体の冷媒が溜まっていない時点においては、沸騰容器1内の冷媒蒸気の一部が液戻りパイプ4bから液戻りヘッダ5bに流れるが、蒸気パイプ4aを流れる冷媒蒸気の量に比べれば非常に少ない。
【0019】
蒸気ヘッダ5aに流入した冷媒蒸気は、蒸気ヘッダ5aに接続された複数の伝熱管3のそれぞれに流入し、伝熱管3内を他端方向(液戻りヘッダ5bの方向)へと流れる。ここで、蒸気ヘッダ5aを液戻りヘッダ5bに対し上方に取り付けることにより、重力差を用いて伝熱管3内で凝縮した冷媒の流れ方向を液戻りヘッダ側に誘導し、流れを一方向に限定することができる。
【0020】
各伝熱管3の外表面には、上述したように複数の放熱フィン2が固着されている。放熱フィン2を介して周囲の空気(冷却風)と熱交換することにより、冷媒蒸気は電力変換装置10から受け取った熱を冷却風へと放熱することになる。本実施の形態では、電力変換装置10および冷却装置20は、図1に示すように電気自動車1001のフロントボンネット内に設けられる。熱交換器21の後方に設けられた送風機103を動作させることで、熱交換器21の前方から後方へと流れる冷却風が形成される。そのため、図3に示すように冷却風が、蒸気ヘッダ5b側から蒸気ヘッダ5a側へと吹き付けられることになる。なお、送風機103に代えてまたは加えて、走行風取り入れ口を冷却装置20の前方に設けて、車両走行時の走行風を冷却風として利用しても良い。
【0021】
冷媒蒸気は伝熱管3における熱交換で放熱することにより凝縮して液体となり、傾斜した伝熱管3を流れ落ちて液戻りヘッダ5bに集められる。液戻りヘッダ5bに集められた液体冷媒は、液戻りパイプ4bを通って沸騰容器1へ戻る。沸騰容器1において冷媒が蒸発し伝熱管3において冷媒が凝縮するこのようなサイクルを繰り返すことにより、電力変換装置10で発生した熱が冷却風へ放熱される。
【0022】
図3に示す冷却装置20では、冷媒槽である沸騰容器1は冷却風の流れに対してほぼ平行に配置されている。そして、熱交換器21の一部を構成する複数の伝熱管3を、沸騰容器1の上面に対向する位置に、該上面に沿って冷却風の風下側から風上側に延在するように配置し、冷媒蒸気が各伝熱管3内を冷却風の風上側へと導かれるようにした。また、伝熱管3の延在方向と逆方向に流れる冷却風は、伝熱管3の外周面に設けられた放熱フィン2によって、伝熱管3の上側から伝熱管3の下側へと導かれる。すなわち、冷却風は、熱交換を、沸騰容器1に対向しない側から、沸騰容器1に対向する側へと通過する。
【0023】
放熱フィン2と伝熱管3とで構成される熱交換器21を上述のような構成とすることにより、車載用電力変換装置101の放熱面が冷却風の流れにほぼ沿うように配置されていても、熱交換器21において冷却風が流入し通過する面積を、沸騰容器1の面積とほぼ同程度とすることができ、熱交換器21の性能を確保しつつ、熱交換器21を含む冷却装置20の高さ方向寸法を小さくすることができる。
【0024】
本実施の形態の場合、沸騰冷却式の冷却装置20であるため、伝熱管3を風上側が低くなるように傾斜させて凝縮した冷媒を液戻りヘッダ5bに集めるようにしている。放熱フィン2は、冷却風の流れにほぼ平行となるように、傾斜した伝熱管3に対して傾けて設けられている。そのため、冷却風が放熱フィン2を通過する際の曲がりの抵抗がなくなり、風量を増加することが可能となる。また、伝熱管3に対して放熱フィン2が傾いているので、図4に示すように、放熱フィン2と伝熱管3との熱接触面積が大きくなるという利点を有している。さらに、図3に示す冷却装置20では、冷媒蒸気は、伝熱管3内を冷却風の流れに関して風下から風上へと流れるので、高温冷媒と低温冷媒(冷却風)とが対向流となり、熱交換性能をより向上させることができる。
【0025】
図6は、高温冷媒と低温冷媒とが対向流の場合と並行流の場合の冷媒温度を概念的に示したものである。図6(a)は並行流の場合を示し、図6(b)は対向流の場合を示す。いずれの場合も、縦軸が温度を表し、横軸が冷媒の流れ方向の位置を表している。高温冷媒は伝熱配管3内を流れる冷媒蒸気に対応し、低温冷媒は冷却風に対応する。温度TH1は高温冷媒の入り口温度であり、温度TL1は低温冷媒の入り口温度である。
【0026】
図6(a)に示す並行流の場合は、図3の状況において冷却風の風上(x=0)から風下(x=x1)の方向に冷媒蒸気が流れる場合に対応しており、高温冷媒の入り口(x=0)における高温冷媒と低温冷媒との温度差ΔT1は、ΔT1=TH1−TL1となっている。高温冷媒は低温冷媒との熱交換によって温度が低下し、逆に低温冷媒は温度が上昇する。そのため、高温冷媒の出口(x=x1)における温度差ΔT2=TH2−TL2は、上述したΔT1と比べて小さくなっている。
【0027】
一方、図6(b)に示す対向流の場合にも、高温冷媒の入り口(x=x1)における温度および低温冷媒の入り口(x=0)における温度は、それぞれ図6(a)に示す高温冷媒入り口温度TH1および低温冷媒入り口温度TL1と等しいとする。高温冷媒の温度は、低温冷媒との間の熱交換により低下し、出口においてTH2となる。低温冷媒の温度は、高温冷媒との間の熱交換により上昇し、出口においてTL2となる。
【0028】
高温冷媒から低温冷媒への熱移動は、それらの間の温度差に依存する。図6(a)に示す並行流の場合には、高温冷媒入り口での温度差ΔT1は大きいが、出口に近づくにつれて大きく変化し、出口付近の温度差ΔT1はかなり小さくなる。一方、図6(b)に示す対向流の場合には、高温冷媒の入り口から出口に渡って温度差が大きく変化することがない。そのため、入り口から出口までのトータルでの熱交換量を比較した場合、対向流の方が大きいことが知られている。
【0029】
本実施の形態では、冷却風の流れに対して、冷媒蒸気の流れが風下から風上に流れるように伝熱管3を配置したことで、冷媒蒸気と冷却風との関係を上述のような対向流となるようにした。その結果、熱交換器21における放熱性能(熱交換率)が向上し、冷却装置20の性能向上を図ることができる。
【0030】
−第2の実施の形態−
上述した第1の実施の形態では、沸騰冷却式の冷却装置20について説明したが、沸騰冷却方式でなくても本発明を適用することができる。図7に示す冷却装置120では、液体冷媒(例えば、冷却水)を循環ポンプ7により強制循環させる方式が採用されている。なお、図3に示す構成要素と同一の構成要素には同一符号を付した。電力変換装置10と冷媒との熱交換は、冷媒槽121によって行われる。冷媒槽121の上方には熱交換器21が設けられており、複数の伝熱管3は、冷却風の流れの風下側に配置された冷媒ヘッド5cと風上側に設けられた冷媒ヘッド5dを接続している。冷媒ヘッド5cは、冷媒配管4によって冷媒槽121の上面の風下側位置に接続されている。一方、冷媒ヘッド5dは、冷媒配管4および循環ポンプ7を介して冷媒槽121の風上側に接続されている。
【0031】
本実施の形態では、冷媒をポンプ7で強制循環させる方法を用いているので、伝熱管3を傾斜させる必要は無く、冷媒槽121に沿ってほぼ平行に配置されている。そのため、伝熱管3内の冷媒の流れと冷却風の流れとが対向流となり、熱交換率の向上を図ることができる。また、放熱フィン2は伝熱管3に対して斜めに固定されている。そのため、車両前方(図示左側)からの冷却風は放熱フィン2によって曲げられ、伝熱管3の上側から下側へと通過し、放熱フィン2からの放熱がより大きくなるような構成とされている。
【0032】
このように、放熱面が冷却風の流れにほぼ沿うように配置された車載用電力変換装置10を冷却する冷却装置において、熱交換器21を冷却風の流れにほぼ平行に配置するとともに、放熱フィン2によって冷却風が熱交換器21を通過するような構成としたので、高い冷却性を確保することができるとともに、冷却装置の高さ方向寸法を小さくすることができる。その結果、配置スペースの限られた車両ボンネット内に、冷却装置を容易に収納することができる。
【0033】
−第3の実施の形態−
図8は,本実施形態による冷却装置の第3の実施の形態示を示したものであり、鉄道車両の搭載される電力変換装置の冷却に適用したものである。鉄道車両においては,客室スペースを広げて乗客定員数を増やすために,電気鉄道車両(以下では、電気車と称する)を駆動する電力変換装置は客室床下部に設置されることが多い。そのため、実装において高さ方向の寸法が制限される。
【0034】
図8は、電気車を進行方向から見た断面概略図である。電気車の車体1003の床下には、電力変換装置が納められる筐体400が取付けられる。筐体400の一方の側面には吸気口401が設けられ、他方の側面には排気口402が設けられている。筐体400には、通風ダクト106が設けられており、通風ダクト106の一方の開口に送風機203が取り付けられ、他方の開口は排気口402に連通されている。送風機203は、給気口401から冷却風を吸込み、通風ダクト106を通して排気口402から排出するように設けられている。
【0035】
通風ダクト106の下部外側には、電力変換装置10が配置され、電力変換装置10の上側に設けられた冷却装置20は通風ダクト106内に配置されている。本実施の形態における冷却装置20も、図3に示した冷却装置20と同一構造の沸騰冷却方式の冷却装置である。電気車の場合には、供給された交流電力をコンバータで直流電力に変換した後にインバータで交流電力に変換するようにしているので、電力変換装置10にはコンバータユニットとインバータユニットとが設けられている。
【0036】
本実施の形態においても、熱交換器の熱交換率を高めることで冷却装置20の性能向上を図りつつ、冷却装置20の高さ寸法を小さくできる。そのため、電気車の車体1003の床下に設けられる筐体400の高さ寸法を抑えることができる。
【0037】
図9は、本実施の形態の第1の変形例を示す図である。第1の変形例では、コンバータユニットとインバータユニットをそれぞれ別の冷却装置で冷却するように構成した。コンバータユニット411およびインバータユニット412は、通風ダクト106の下部外側に図示左右方向に、すなわち冷却風の流れの方向に沿って並べられている。風上側に配置されたコンバータユニット411を冷却する冷却装置20Aは、図3に示した冷却装置20と同一構成を有している。一方、風下側に設けられたインバータユニット412の冷却装置20Bは、配管4a,4bの長さを冷却装置20Aの対応する配管よりも長くし、熱交換器21Bが、熱交換器21Aよりも上方となるように構成されている。
【0038】
そのため、通風ダクト106の下側を流れる冷却風は冷却器20Aの熱交換器21Aへと流入し、通風ダクト106の上側を流れる冷却風が、風下側に配置された冷却器20Bの熱交換器21Bに流入する。各熱交換器21A,21Bを通過して暖められた冷却風は、排気口402から排出される。
【0039】
このように、本実施の形態では、冷却風の流れに沿って2つの冷却装置20A,20Bが配置された場合であっても、熱交換器21A,21Bが流れ方向に重ならないように、流れに対して垂直な方向にずらすことで、いずれの熱交換器にも外気から導入された冷却風を直接流入させることができる。さらに、第1の実施の形態でも説明したように、熱交換器21A,21Bを冷却風の流れ方向に沿って配置したことにより、冷却装置の高さを小さくすることができ、通風ダクト106の高さ寸法を低減することができる。
【0040】
なお、図9に示す例では、風下側の冷却装置20Bの熱交換器21Bを上方にずらしたが、熱交換器21A,21Bのどちらを上方にずらしても構わない。また、図9では冷却装置を2つ並べて用いる場合を例に示したが、例えば、走行用モータのコンバータおよびインバータに加えて、空調用のインバータをさらに並列配置する場合などのように、3つ以上の場合にも同様に適用することができる。
【0041】
図10は、電気車に用いられる冷却装置の第2の変形例を示したものである。図10は電気車を進行方向から見た断面概略図であり、冷却装置20Cは、図3の冷却装置20と同一構成の冷却装置である。ただし、取り付け姿勢が図3の場合と異なっている。床下に設けられた電力変換装置10の放熱面(図3に示す放熱ベース14の表面)は、床に対して垂直に設けられており、冷却装置20Cの沸騰容器1も垂直に設けられている。そして、伝熱管3の沸騰容器1に対する高さは、図示下側で低く、図示上側で高くなるように構成されている。
【0042】
第2の変形例では、走行中は走行風が冷却風として利用されるが、停車中は自然対流による空気の流れによって冷却されるような構成になっている。走行風の流れは伝熱管3の延在方向に対して垂直となっているので、伝熱管3のいずれの位置においても同様の熱交換率となる。一方、停車中の空気の流れは、図示下側から上方へと流れるので、図3で説明した場合の冷却風と同様の関係になり、同様の効果を奏することができる。特に、第2の変形例の形態は、停車中でも冷却効果を発揮することができるので、空調装置の電力変換装置のように、電気車が停車中でも走行中と同様の発熱があるものについて効果的である。
【0043】
冷却装置20Cは熱交換器21Cが傾斜して設けられており、冷却装置20Cの図示左右方向の寸法を小さくすることができる。鉄道車両の場合には車両限界を超えないような寸法とする必要があるが、熱交換器21Cの高さを小さくできるとともに、熱交換器21Cの図示下側が内側に絞られるような傾斜構造となっているため、車両限界に沿うような外観形状が可能となる。
【0044】
(C1)上述したように本実施の形態では、図3に示すように、放熱ベース14の放熱面が冷却風の流れにほぼ沿うように配置された車載用電力変換装置10の冷却装置20であって、冷媒6が収納され、底面が車載用電力変換装置10の放熱面に熱的に接触している冷媒槽としての沸騰容器1と、沸騰容器1の上面であって冷却風の流れの風下側に設けられて、沸騰容器1から冷媒を流出する蒸気パイプ4aと、沸騰容器1の上面に対向するとともに、該上面に沿って冷却風の風下側から風上側に延在するように配置された複数の伝熱管3を有し、蒸気パイプ4aの冷媒を複数の伝熱管3により冷却風の風上側へと導く熱交換器21と、熱交換器21の冷媒を沸騰容器1へ戻す手段としての液戻りパイプ4bと、を備え、熱交換器21は、伝熱管3の外周面に設けられて、冷却風を熱交換器21の沸騰容器1に対向しない側から沸騰容器1に対向する側へ通過させる複数の放熱フィン2を有する。
【0045】
放熱フィン2と伝熱管3とで構成される熱交換器21を上述のような構成とすることにより、車載用電力変換装置101の放熱面が冷却風の流れにほぼ沿うように配置されていても、熱交換器21において冷却風が流入し通過する面積を、沸騰容器1の面積とほぼ同程度とすることができ、熱交換器21の性能を高性能に維持しつつ、熱交換器21を含む冷却装置20の高さ方向寸法を小さくすることができる。
【0046】
(C2)蒸気パイプ4aのよりも液戻りパイプ4bを短くすることにより熱交換器21を傾斜させ、複数の放熱フィン2の傾きを冷却風の流れに対して平行に設定することで、放熱フィン2による抵抗が減少し、風量を増加させることができる。
【0047】
(C3)図9に示すように、本実施の形態の鉄道車両用電力変換装置は、鉄道車両の床下に設けられて冷却風を送風する送風装置203と、図3に記載の冷却装置20を冷却風の流れに沿って2つ配置して成る冷却ユニット20A,20Bと、この冷却ユニットの一方の冷却装置20Aにより冷却され、給電された交流電力を直流電力に変換するコンバータユニット411と、冷却ユニットの他方の冷却装置20Bにより冷却され、コンバータユニット411から出力された直流電力を交流電力に変換して走行用モータに供給するインバータユニット412と、を備える。そして、冷却ユニットの風上側に配置された冷却装置20Aの熱交換器21Aを通過した冷却風が、冷却ユニットの風下側に配置された冷却装置20Bの熱交換器21Bに流入しないように、2つの冷却装置の各熱交換器21A,21Bを冷却風の流れに垂直な方向に互いにずらして配置した。
【0048】
熱交換器20Bは、熱交換器20Aに対して冷却風の流れに垂直な方向にずれているので、熱交換器20Aを通過した暖められた冷却風が流入するのを防止でき、送風機203からの冷却風が直接流入するので、風下側の熱交換器20Bも、風上側の熱交換器20Aと同様の熱交換率を達成することができる。
【0049】
(C4)図8に示す鉄道車両用電力変換装置は、鉄道車両1003の床下に設けられて、給電された交流電力を一旦直流電力に変換した後に再び交流電力に変換して走行用モータに供給する電力変換ユニットである電力変換装置10と、電力変換装置10の放熱面に取り付けられる請求項2に記載の冷却装置20と、冷却装置20の熱交換器に冷却風を送風する送風装置203と、を備える。冷却装置20は熱交換器が冷却風の流れに沿って傾斜して設けられ、放熱フィンの角度は流れに平行となっている。その結果。熱交換器の熱交換率を高めることで冷却装置20の性能向上を図りつつ、冷却装置20の高さ寸法を小さくできる。そのため、電気車の車体1003の床下に設けられる筐体400の高さ寸法を抑えることができる。
【0050】
(C5)また、電力変換装置10が図10に示すように鉄道車両1003の床下に放熱面が垂直となるように設けられ手いる場合、配管4bが配管4aよりも垂直方向下側に配置されるように、冷却装置20Cは配置されている。そのため、冷却装置20Cの図示左右方向の寸法を小さくすることができる。冷却装置20Cの一部が、車両限界の外側にはみ出すのを防止することができる。
【0051】
(C6)また、図7に示すように、熱交換器120の冷媒を冷媒槽121へ戻す手段として、冷媒を冷媒槽121と熱交換器120との間で循環させる循環ポンプ7を設けることにより、熱交換器120の傾斜角を小さくすることができ、傾斜角=0度とすることも可能である。そのため、冷却装置の高さ寸法を小さくすることができる。
【0052】
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1:沸騰容器、2:放熱フィン、2a:カラー、3:伝熱管、4:冷媒配管、4a:蒸気パイプ、4b:液戻りパイプ、5a:蒸気ヘッダ、5b:液戻りヘッダ、6:冷媒、7:循環ポンプ、10:電力変換装置、11:パワーモジュール、14:放熱ベース、20,20A,20B,20C,120:冷却装置、21,21A,21B,20C:熱交換器、103,203:送風機、104:車両走行用モータ、106:通風ダクト、121:冷媒槽、400:筐体、411:コンバータユニット、412:インバータユニット、1001:電気自動車、1003:車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱面が冷却風の流れにほぼ沿うように配置された車載用電力変換装置の冷却装置であって、
冷媒が収納され、底面が前記車載用電力変換装置の放熱面に熱的に接触している冷媒槽と、
前記冷媒槽の上面であって前記冷却風の流れの風下側に設けられて、該冷媒槽から前記冷媒を流出する第1の配管と、
前記冷媒槽の上面に対向するとともに、該上面に沿って前記冷却風の風下側から風上側に延在するように配置された複数の第2の配管を有し、前記第1の配管の冷媒を前記複数の第2の配管により前記冷却風の風上側へと導く熱交換器と、
前記熱交換器の冷媒を前記冷媒槽へ戻す手段と、を備え、
前記熱交換器は、前記第2の配管の外周面に設けられて、前記冷却風を該熱交換器の前記冷媒槽に対向しない側から前記冷媒槽に対向する側へ通過させる複数の放熱フィンを有することを特徴とする車載用電力変換装置の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用電力変換装置の冷却装置において、
前記冷却装置は、前記冷媒槽内の冷媒が電力変換装置からの熱により沸騰蒸発する沸騰冷却方式の冷却装置であって、
前記冷媒槽の上面の前記冷却風の流れの風上側に設けられて、前記複数の第2の配管の冷媒を前記冷媒槽へ戻す、前記第1の配管よりも短い第3の配管を、前記熱交換器の冷媒を前記冷媒槽へ戻す手段として設け、
前記複数の放熱フィンの傾きを前記冷却風の流れに対して平行に設定したことを特徴とする車載用電力変換装置の冷却装置。
【請求項3】
鉄道車両の床下に設けられて冷却風を送風する送風装置と、
請求項2に記載の冷却装置を前記冷却風の流れに沿って2つ配置して成る冷却ユニットと、
前記冷却ユニットのいずれか一方の冷却装置により冷却され、給電された交流電力を直流電力に変換するコンバータユニットと、
前記冷却ユニットの他方の冷却装置により冷却され、前記コンバータユニットから出力された直流電力を交流電力に変換して走行用モータに供給するインバータユニットと、を備え、
前記冷却ユニットの風上側に配置された冷却装置の熱交換器を通過した冷却風が、前記冷却ユニットの風下側に配置された冷却装置の熱交換器に流入しないように、前記2つの冷却装置の各熱交換器を前記冷却風の流れに垂直な方向に互いにずらして配置したことを特徴とする鉄道車両用電力変換装置。
【請求項4】
鉄道車両の床下に設けられて、給電された交流電力を一旦直流電力に変換した後に再び交流電力に変換して走行用モータに供給する電力変換ユニットと、
前記電力変換ユニットの放熱面に取り付けられる請求項2に記載の冷却装置と、
前記冷却装置の熱交換に冷却風を送風する送風装置と、を備えたことを特徴とする鉄道車両用電力変換装置。
【請求項5】
請求項2に記載の車載用電力変換装置の冷却装置において、
前記車載用電力変換装置は、鉄道車両の床下に前記放熱面が垂直となるように設けられ、
前記第3の配管が前記第1の配管よりも垂直方向下側に配置されていることを特徴とする車載用電力変換装置の冷却装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車載用電力変換装置の冷却装置において、
前記熱交換器の冷媒を前記冷媒槽へ戻す手段として、冷媒を前記冷媒槽と前記熱交換器との間で循環させる循環ポンプを設けたことを特徴とする車載用電力変換装置の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−54316(P2012−54316A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194030(P2010−194030)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】