転がり軸受ユニット
【課題】 剛性や回転精度を損なうことなく、コストの低減および小型化を図ること
【解決手段】 同軸上に配置された内輪１２と外輪１４との間の円環状空間に周方向に間隔をあけて複数個の転動体１６を内蔵する転がり軸受１０と、転がり軸受１０の内輪１２に嵌合された状態で接着されるシャフト３と、転がり軸受１０の外輪１４を嵌合させた状態で接着される嵌合孔７を有するスリーブ５と、内輪１２の軸方向の一端を突き当てる間座９と、スリーブ５の嵌合孔７の内面から半径方向内方に延びる保持部２１と、間座９と保持部２１との間に転動可能に配置される複数のボール１１とを備える転がり軸受ユニット１を提供する。
【解決手段】 同軸上に配置された内輪１２と外輪１４との間の円環状空間に周方向に間隔をあけて複数個の転動体１６を内蔵する転がり軸受１０と、転がり軸受１０の内輪１２に嵌合された状態で接着されるシャフト３と、転がり軸受１０の外輪１４を嵌合させた状態で接着される嵌合孔７を有するスリーブ５と、内輪１２の軸方向の一端を突き当てる間座９と、スリーブ５の嵌合孔７の内面から半径方向内方に延びる保持部２１と、間座９と保持部２１との間に転動可能に配置される複数のボール１１とを備える転がり軸受ユニット１を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、転がり軸受ユニットに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
一般に、転がり軸受ユニットは、内側部材である円筒状の内筒と、この内筒の周囲に配置された外側部材である円筒状の外筒と、これら内筒と外筒とを相対的に回転自在に支持する一対の玉軸受とを備えている。そして、一対の玉軸受は、内輪と外輪とこれら内輪と外輪との間に転動自在に設けられた複数個の玉とからそれぞれ構成されており、軸方向に所定の間隔をあけて配置されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
特許文献１の転がり軸受ユニットによれば、上下の玉軸受の外輪の間にリング状の間座を挿入することで各玉軸受の間隔を保ち、内輪を軸方向に押圧することができるようになっている。そして、予圧がかけられた状態で、一対の玉軸受を外筒の内面に塗布された接着剤によって接着することにより、２つの転がり軸受の内外輪と玉との隙間をなくし、転がり軸受ユニットの剛性を確保し回転精度を向上させるようになっている。
【特許文献１】特開２００２−２５７１３４号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、特許文献１の転がり軸受ユニットは、玉軸受を２個使用するため、玉軸受の分だけコストが高くなるという不都合がある。また、２つの玉軸受を軸方向に間隔をあけて配置するため、その分スペースが必要となり小型化を図ることが難しいという不都合がある。
【０００５】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、剛性や回転精度を損なうことなく、コストの低減および小型化を図ることができる転がり軸受ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
同軸上に配置された内輪と外輪との間の円環状空間に周方向に間隔をあけて複数個の転動体を内蔵する転がり軸受と、該転がり軸受の前記内輪に嵌合された状態で接着される第１の部材と、前記転がり軸受の前記外輪を嵌合させた状態で接着される嵌合孔を有する第２の部材と、前記内輪の軸方向の一端を突き当てるリング状部材と、前記第２の部材の前記嵌合孔の内面から半径方向内方に延びる保持部と、前記リング状部材と前記保持部との間に転動可能に配置される複数のボールとを備える転がり軸受ユニットを提供する。
【０００７】
本発明によれば、第１の部材と第２の部材とが、両者の間に配置された転がり軸受によって相対的に回転可能に支持される。また、第１の部材の外面に接着された内輪は、リング状部材およびボールを介して第２の部材に設けられた保持部によって軸方向に支持される。
【０００８】
したがって、第１の部材と第２の部材とを相対的に回転させると、転がり軸受の内外輪間で転動体が転動させられることでラジアル方向に支持され、かつ、リング状部材と保持部との間でボールが転動させられることでスラスト方向にも支持される。これにより、第１の部材と第２の部材とを円滑に相対的に回転させることができる。
また、転がり軸受を１つしか用いないので、コストが低減するとともに、軸方向のスペースを小さくして転がり軸受ユニットの小型化を図ることができる。
【０００９】
上記発明においては、前記ボールが前記嵌合孔の周方向に所定の間隔をあけて３以上配置されていることとしてもよい。
このような構成によれば、複数のボールによって転がり軸受の内輪の一端を安定して支持することができる。したがって、第１の部材と第２の部材との振れを防ぐことができ、回転精度を確保し易くすることができる。
【００１０】
上記発明においては、前記転がり軸受の前記外輪が、前記リング部材に向けて軸方向に押圧された状態で前記第２の部材の前記嵌合孔と接着されていることとしてもよい。
このような構成によれば、転がり軸受に予圧がかけられて内外輪と転動体との隙間がなくなるので、転がり軸受ユニットの剛性および回転精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、剛性や回転精度を損なうことなく、コストの低減および小型化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の一実施形態に係る転がり軸受ユニットについて、図面を参照して説明する。
図１に示すように、本実施形態に係る転がり軸受ユニット１は、例えば、スイングアーム用の転がり軸受ユニットである。この転がり軸受ユニット１は、転がり軸受１０と、この転がり軸受１０に嵌合されるシャフト（第１の部材）３と、転がり軸受１０を嵌合させる嵌合孔７を有する円筒状のスリーブ（第２の部材）５と、転がり軸受１０と同軸に配置されるリング状の間座（リング状部材）９と、この間座９と嵌合孔７の軸方向の端面との間に配置されるボール１１とを備えている。ボール１１は、例えば、周方向に間隔をあけて４個備えられている。
【００１３】
転がり軸受１０は、シャフト３とスリーブ５とを相対的に回転させるためのものである。転がり軸受１０は、同軸上に配置された内輪１２および外輪１４と、これら内輪１２と外輪１４との間の円環状空間に周方向に間隔をあけて内蔵される複数個の転動体１６とを備えている。これらの内輪１２の外周面には、深溝型若しくはアンギュラ型の内輪軌道が設けられ、また、外輪１４の内周面には、深溝型若しくはアンギュラ型の外輪軌道が設けられている。
【００１４】
シャフト３は、略円筒状部材であって、一端に軸方向に延びるネジ孔１３、他端に軸方向に突出する雄ねじ形成用の突起１５を備えている。シャフト３の前記他端には、全周にわたって半径方向外方に突出する鍔状のフランジ部１７が設けられている。
【００１５】
シャフト３には、フランジ部１７側から順に転がり軸受１０および間座９が嵌め込まれている。転がり軸受１０の内輪１２の一方の端面がフランジ部１７に突き当てられ、内輪１２の他方の端面に間座９が突き当てられている。また、シャフト３の外周面と転がり軸受１０の内輪１２とは接着剤により接着されている。
【００１６】
スリーブ５の嵌合孔７の内面は、軸方向に沿って一方向に内径寸法が段階的に小さくなる段付形状となっており、転がり軸受１０の外径寸法と同じ内径寸法を有する嵌合部１９と、軸方向の端面において半径方向内方に突出する内鍔状の保持部２１とを備えている。
【００１７】
嵌合部１９の軸方向の長さは、転がり軸受１０の軸方向の長さより長く形成されている。保持部２１には、図２に示されるように、それぞれボール１１を部分的に収容する４つの凹部２３が設けられている。これら４つの凹部２３は、所定の間隔をあけて周方向に等間隔に設けられており、それぞれボール１１を転動可能に収容するようになっている。
【００１８】
嵌合孔７には、保持部２１側から各凹部２３に一部分が収容されたボール１１、間座９および転がり軸受１０の内輪１２が順に突き当てられた状態で軸方向に沿って配置され、保持部２１、ボール１１および間座９により、転がり軸受１０の内輪１２の軸方向の端面が回転可能に支持されている。
【００１９】
また、嵌合孔７の内周面と転がり軸受１０の外輪１４とは、外輪１４が間座９に向けて軸方向に押圧された状態で接着剤により接着されている。これにより、転がり軸受１０には予圧がかけられた状態となり、内輪１２および外輪１４と転動体１６とが隙間なく接触させられている。
【００２０】
以下、このように構成される本実施形態の転がり軸受ユニット１の製造方法について説明する。
まず、図３に示すように、スリーブ５にボール１１、間座９および転がり軸受１０の順に組付けた組立体３１を組立てる。具体的には、図４に示すように、スリーブ５の保持部２１の各凹部２３にボール１１をそれぞれ転動可能に配置する。続いて、図５に示すように、その上から間座９を嵌め込み、ボール１１に間座９を突き当てる。
【００２１】
そして、嵌合孔７の内周面の転がり軸受１０の外輪１４に対応する位置に接着剤を塗布し、図６に示すように、転がり軸受１０を嵌合孔７に挿入して外輪１４を嵌合部１９に嵌合させる。
【００２２】
次に、転がり軸受１０の外輪１４と嵌合孔７の内周面とが完全に接着する前に、図７に示すように、転がり軸受１０と略同じ外径寸法の円筒部分を軸方向の先端に有する予圧治具３３を用いて転がり軸受１０に予圧をかける。具体的には、予圧治具３３の円筒部分の先端を転がり軸受１０の外輪１４の軸方向の端面に接触させ、外輪１４を間座９に向けて軸方向に押圧する。
【００２３】
この場合に、転がり軸受１０の内輪１２が、間座９およびボール１１を介してスリーブ５に設けられた保持部２１によって軸方向に支持されており、かつ、嵌合部１９の軸方向の長さが転がり軸受１０の軸方向の長さより長いので、内輪１２の軸方向の位置を固定しつつ外輪１４を軸方向にずらすことができる。
【００２４】
したがって、転がり軸受１０の外輪１４を軸方向に押圧するだけで、内輪１２および外輪１４と各転動体１６との隙間をなくし、転がり軸受１０に予圧をかけることができる。これにより、簡易な方法で転がり軸受１０に予圧をかけて、転がり軸受ユニット１の剛性確保および回転精度の向上を図ることが可能になる。
【００２５】
そして、予圧治具３３により外輪１４を軸方向に押圧した状態で、転がり軸受１０の外輪１４と嵌合部１９の内周面とを完全に接着させる。接着により予圧をかけた状態に維持されるので、予圧抜けを防ぎ、転がり軸受ユニット１の回転精度の悪化を防止することが可能になる。この状態で組立体３１が完成する。
【００２６】
次に、組立体３１にシャフト３を嵌合させる。具体的には、シャフト３の外周面の転がり軸受１０の内輪１２に対応する位置に接着剤を塗布する。このシャフト３をスリーブ５の嵌合孔７に挿入し、スリーブ５に嵌め込まれている転がり軸受１０の内輪１２と間座９にシャフト３を嵌合させる。そして、シャフト３のフランジ部１７に転がり軸受１０の内輪１２の一方の端面を突き当て、内輪１２の他方の端面を間座９に突き当てた状態で、内輪１２とシャフト３の外周面とを接着する。これにより、本実施形態に係る転がり軸受ユニット１が製造される。
【００２７】
このようにして製造された転がり軸受ユニット１によれば、シャフト３とスリーブ５とを相対的に回転させると、転がり軸受１０の内外輪間で転動体１６が転動させられることでラジアル方向に支持され、かつ、間座９と保持部２１との間でボール１１が転動させられることでスラスト方向にも支持される。これにより、シャフト３とスリーブ５とを円滑に相対的に回転させることができる。また、４つのボール１１により、転がり軸受１０の内輪１２の一端が安定して支持される。したがって、シャフト３とスリーブ５との振れを防ぎ、回転精度を確保し易くすることができる。
【００２８】
また、転がり軸受１０を１つしか用いなくても、転がり軸受１０の内輪１２の軸方向の一端を回転可能に支持して転がり軸受１０に予圧をかけることができ、剛性や回転精度を確保することができる。さらに、転がり軸受１０を１つにしたことで、コストが低減するとともに、軸方向のスペースを小さくして転がり軸受ユニット１の小型化を図ることができる。
【００２９】
なお、本実施形態においては、４つのボール１１を例示して説明したが、転がり軸受１０の内輪１２の一端を安定して支持することができればよく、例えば、ボール１１の数を３つにしたり、５つ以上にしたりすることとしてもよい。
また、本実施形態においてはボール１１を保持部２１の凹部２３に収容することとしたが、ボール１１が互いに接触したり嵌合時にボール１１が保持部２１から脱落したりしないように一定の間隔に保ちながら転動可能に配置させることができればよく、例えば、リテーナを採用してボール１１を保持することとしてもよい。
【００３０】
また、本実施形態においては、転がり軸受１０の内輪１２とボール１１との間に間座９を挟むことを例示して説明したが、シャフト３とともに回転する内輪１２の軸方向の力を受け止めることができればよく、例えば、シャフト３に半径方向外方に突出し転がり軸受１０の内輪１２の軸方向の端面を突き当てる突き当て面を有する凸部を設けることとしてもよい。この場合、フランジ部１７がないシャフトや、フランジ部１７が取付可能のシャフトを採用して、転がり軸受１０の内輪１２にシャフトを嵌合させることとすればよい。
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】本発明の一実施形態に係る転がり軸受ユニットの全体の概略を示す断面図である。
【図２】本発明の一実施形態に係る転がり軸受ユニットのスリーブを上から見た図である。
【図３】図２のスリーブにボール、間座、転がり軸受を取り付ける様子を示す断面図である。
【図４】図２のスリーブの凹部にボールを部分的に収容させた状態を示す図である。
【図５】図４のスリーブに間座を嵌め込ませた状態を示す図である。
【図６】図５のスリーブに転がり軸受を嵌合させた状態を示す図である。
【図７】図６の転がり軸受に予圧をかける様子を示す図である。
【符号の説明】
【００３２】
１ 転がり軸受ユニット
３ シャフト（第１の部材）
５ スリーブ（第２の部材）
７ 嵌合孔
９ 間座（リング状部材）
１０ 転がり軸受
１１ ボール
１２ 内輪
１４ 外輪
１６ 転動体
２１ 保持部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、転がり軸受ユニットに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
一般に、転がり軸受ユニットは、内側部材である円筒状の内筒と、この内筒の周囲に配置された外側部材である円筒状の外筒と、これら内筒と外筒とを相対的に回転自在に支持する一対の玉軸受とを備えている。そして、一対の玉軸受は、内輪と外輪とこれら内輪と外輪との間に転動自在に設けられた複数個の玉とからそれぞれ構成されており、軸方向に所定の間隔をあけて配置されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
特許文献１の転がり軸受ユニットによれば、上下の玉軸受の外輪の間にリング状の間座を挿入することで各玉軸受の間隔を保ち、内輪を軸方向に押圧することができるようになっている。そして、予圧がかけられた状態で、一対の玉軸受を外筒の内面に塗布された接着剤によって接着することにより、２つの転がり軸受の内外輪と玉との隙間をなくし、転がり軸受ユニットの剛性を確保し回転精度を向上させるようになっている。
【特許文献１】特開２００２−２５７１３４号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、特許文献１の転がり軸受ユニットは、玉軸受を２個使用するため、玉軸受の分だけコストが高くなるという不都合がある。また、２つの玉軸受を軸方向に間隔をあけて配置するため、その分スペースが必要となり小型化を図ることが難しいという不都合がある。
【０００５】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、剛性や回転精度を損なうことなく、コストの低減および小型化を図ることができる転がり軸受ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
同軸上に配置された内輪と外輪との間の円環状空間に周方向に間隔をあけて複数個の転動体を内蔵する転がり軸受と、該転がり軸受の前記内輪に嵌合された状態で接着される第１の部材と、前記転がり軸受の前記外輪を嵌合させた状態で接着される嵌合孔を有する第２の部材と、前記内輪の軸方向の一端を突き当てるリング状部材と、前記第２の部材の前記嵌合孔の内面から半径方向内方に延びる保持部と、前記リング状部材と前記保持部との間に転動可能に配置される複数のボールとを備える転がり軸受ユニットを提供する。
【０００７】
本発明によれば、第１の部材と第２の部材とが、両者の間に配置された転がり軸受によって相対的に回転可能に支持される。また、第１の部材の外面に接着された内輪は、リング状部材およびボールを介して第２の部材に設けられた保持部によって軸方向に支持される。
【０００８】
したがって、第１の部材と第２の部材とを相対的に回転させると、転がり軸受の内外輪間で転動体が転動させられることでラジアル方向に支持され、かつ、リング状部材と保持部との間でボールが転動させられることでスラスト方向にも支持される。これにより、第１の部材と第２の部材とを円滑に相対的に回転させることができる。
また、転がり軸受を１つしか用いないので、コストが低減するとともに、軸方向のスペースを小さくして転がり軸受ユニットの小型化を図ることができる。
【０００９】
上記発明においては、前記ボールが前記嵌合孔の周方向に所定の間隔をあけて３以上配置されていることとしてもよい。
このような構成によれば、複数のボールによって転がり軸受の内輪の一端を安定して支持することができる。したがって、第１の部材と第２の部材との振れを防ぐことができ、回転精度を確保し易くすることができる。
【００１０】
上記発明においては、前記転がり軸受の前記外輪が、前記リング部材に向けて軸方向に押圧された状態で前記第２の部材の前記嵌合孔と接着されていることとしてもよい。
このような構成によれば、転がり軸受に予圧がかけられて内外輪と転動体との隙間がなくなるので、転がり軸受ユニットの剛性および回転精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、剛性や回転精度を損なうことなく、コストの低減および小型化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の一実施形態に係る転がり軸受ユニットについて、図面を参照して説明する。
図１に示すように、本実施形態に係る転がり軸受ユニット１は、例えば、スイングアーム用の転がり軸受ユニットである。この転がり軸受ユニット１は、転がり軸受１０と、この転がり軸受１０に嵌合されるシャフト（第１の部材）３と、転がり軸受１０を嵌合させる嵌合孔７を有する円筒状のスリーブ（第２の部材）５と、転がり軸受１０と同軸に配置されるリング状の間座（リング状部材）９と、この間座９と嵌合孔７の軸方向の端面との間に配置されるボール１１とを備えている。ボール１１は、例えば、周方向に間隔をあけて４個備えられている。
【００１３】
転がり軸受１０は、シャフト３とスリーブ５とを相対的に回転させるためのものである。転がり軸受１０は、同軸上に配置された内輪１２および外輪１４と、これら内輪１２と外輪１４との間の円環状空間に周方向に間隔をあけて内蔵される複数個の転動体１６とを備えている。これらの内輪１２の外周面には、深溝型若しくはアンギュラ型の内輪軌道が設けられ、また、外輪１４の内周面には、深溝型若しくはアンギュラ型の外輪軌道が設けられている。
【００１４】
シャフト３は、略円筒状部材であって、一端に軸方向に延びるネジ孔１３、他端に軸方向に突出する雄ねじ形成用の突起１５を備えている。シャフト３の前記他端には、全周にわたって半径方向外方に突出する鍔状のフランジ部１７が設けられている。
【００１５】
シャフト３には、フランジ部１７側から順に転がり軸受１０および間座９が嵌め込まれている。転がり軸受１０の内輪１２の一方の端面がフランジ部１７に突き当てられ、内輪１２の他方の端面に間座９が突き当てられている。また、シャフト３の外周面と転がり軸受１０の内輪１２とは接着剤により接着されている。
【００１６】
スリーブ５の嵌合孔７の内面は、軸方向に沿って一方向に内径寸法が段階的に小さくなる段付形状となっており、転がり軸受１０の外径寸法と同じ内径寸法を有する嵌合部１９と、軸方向の端面において半径方向内方に突出する内鍔状の保持部２１とを備えている。
【００１７】
嵌合部１９の軸方向の長さは、転がり軸受１０の軸方向の長さより長く形成されている。保持部２１には、図２に示されるように、それぞれボール１１を部分的に収容する４つの凹部２３が設けられている。これら４つの凹部２３は、所定の間隔をあけて周方向に等間隔に設けられており、それぞれボール１１を転動可能に収容するようになっている。
【００１８】
嵌合孔７には、保持部２１側から各凹部２３に一部分が収容されたボール１１、間座９および転がり軸受１０の内輪１２が順に突き当てられた状態で軸方向に沿って配置され、保持部２１、ボール１１および間座９により、転がり軸受１０の内輪１２の軸方向の端面が回転可能に支持されている。
【００１９】
また、嵌合孔７の内周面と転がり軸受１０の外輪１４とは、外輪１４が間座９に向けて軸方向に押圧された状態で接着剤により接着されている。これにより、転がり軸受１０には予圧がかけられた状態となり、内輪１２および外輪１４と転動体１６とが隙間なく接触させられている。
【００２０】
以下、このように構成される本実施形態の転がり軸受ユニット１の製造方法について説明する。
まず、図３に示すように、スリーブ５にボール１１、間座９および転がり軸受１０の順に組付けた組立体３１を組立てる。具体的には、図４に示すように、スリーブ５の保持部２１の各凹部２３にボール１１をそれぞれ転動可能に配置する。続いて、図５に示すように、その上から間座９を嵌め込み、ボール１１に間座９を突き当てる。
【００２１】
そして、嵌合孔７の内周面の転がり軸受１０の外輪１４に対応する位置に接着剤を塗布し、図６に示すように、転がり軸受１０を嵌合孔７に挿入して外輪１４を嵌合部１９に嵌合させる。
【００２２】
次に、転がり軸受１０の外輪１４と嵌合孔７の内周面とが完全に接着する前に、図７に示すように、転がり軸受１０と略同じ外径寸法の円筒部分を軸方向の先端に有する予圧治具３３を用いて転がり軸受１０に予圧をかける。具体的には、予圧治具３３の円筒部分の先端を転がり軸受１０の外輪１４の軸方向の端面に接触させ、外輪１４を間座９に向けて軸方向に押圧する。
【００２３】
この場合に、転がり軸受１０の内輪１２が、間座９およびボール１１を介してスリーブ５に設けられた保持部２１によって軸方向に支持されており、かつ、嵌合部１９の軸方向の長さが転がり軸受１０の軸方向の長さより長いので、内輪１２の軸方向の位置を固定しつつ外輪１４を軸方向にずらすことができる。
【００２４】
したがって、転がり軸受１０の外輪１４を軸方向に押圧するだけで、内輪１２および外輪１４と各転動体１６との隙間をなくし、転がり軸受１０に予圧をかけることができる。これにより、簡易な方法で転がり軸受１０に予圧をかけて、転がり軸受ユニット１の剛性確保および回転精度の向上を図ることが可能になる。
【００２５】
そして、予圧治具３３により外輪１４を軸方向に押圧した状態で、転がり軸受１０の外輪１４と嵌合部１９の内周面とを完全に接着させる。接着により予圧をかけた状態に維持されるので、予圧抜けを防ぎ、転がり軸受ユニット１の回転精度の悪化を防止することが可能になる。この状態で組立体３１が完成する。
【００２６】
次に、組立体３１にシャフト３を嵌合させる。具体的には、シャフト３の外周面の転がり軸受１０の内輪１２に対応する位置に接着剤を塗布する。このシャフト３をスリーブ５の嵌合孔７に挿入し、スリーブ５に嵌め込まれている転がり軸受１０の内輪１２と間座９にシャフト３を嵌合させる。そして、シャフト３のフランジ部１７に転がり軸受１０の内輪１２の一方の端面を突き当て、内輪１２の他方の端面を間座９に突き当てた状態で、内輪１２とシャフト３の外周面とを接着する。これにより、本実施形態に係る転がり軸受ユニット１が製造される。
【００２７】
このようにして製造された転がり軸受ユニット１によれば、シャフト３とスリーブ５とを相対的に回転させると、転がり軸受１０の内外輪間で転動体１６が転動させられることでラジアル方向に支持され、かつ、間座９と保持部２１との間でボール１１が転動させられることでスラスト方向にも支持される。これにより、シャフト３とスリーブ５とを円滑に相対的に回転させることができる。また、４つのボール１１により、転がり軸受１０の内輪１２の一端が安定して支持される。したがって、シャフト３とスリーブ５との振れを防ぎ、回転精度を確保し易くすることができる。
【００２８】
また、転がり軸受１０を１つしか用いなくても、転がり軸受１０の内輪１２の軸方向の一端を回転可能に支持して転がり軸受１０に予圧をかけることができ、剛性や回転精度を確保することができる。さらに、転がり軸受１０を１つにしたことで、コストが低減するとともに、軸方向のスペースを小さくして転がり軸受ユニット１の小型化を図ることができる。
【００２９】
なお、本実施形態においては、４つのボール１１を例示して説明したが、転がり軸受１０の内輪１２の一端を安定して支持することができればよく、例えば、ボール１１の数を３つにしたり、５つ以上にしたりすることとしてもよい。
また、本実施形態においてはボール１１を保持部２１の凹部２３に収容することとしたが、ボール１１が互いに接触したり嵌合時にボール１１が保持部２１から脱落したりしないように一定の間隔に保ちながら転動可能に配置させることができればよく、例えば、リテーナを採用してボール１１を保持することとしてもよい。
【００３０】
また、本実施形態においては、転がり軸受１０の内輪１２とボール１１との間に間座９を挟むことを例示して説明したが、シャフト３とともに回転する内輪１２の軸方向の力を受け止めることができればよく、例えば、シャフト３に半径方向外方に突出し転がり軸受１０の内輪１２の軸方向の端面を突き当てる突き当て面を有する凸部を設けることとしてもよい。この場合、フランジ部１７がないシャフトや、フランジ部１７が取付可能のシャフトを採用して、転がり軸受１０の内輪１２にシャフトを嵌合させることとすればよい。
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】本発明の一実施形態に係る転がり軸受ユニットの全体の概略を示す断面図である。
【図２】本発明の一実施形態に係る転がり軸受ユニットのスリーブを上から見た図である。
【図３】図２のスリーブにボール、間座、転がり軸受を取り付ける様子を示す断面図である。
【図４】図２のスリーブの凹部にボールを部分的に収容させた状態を示す図である。
【図５】図４のスリーブに間座を嵌め込ませた状態を示す図である。
【図６】図５のスリーブに転がり軸受を嵌合させた状態を示す図である。
【図７】図６の転がり軸受に予圧をかける様子を示す図である。
【符号の説明】
【００３２】
１ 転がり軸受ユニット
３ シャフト（第１の部材）
５ スリーブ（第２の部材）
７ 嵌合孔
９ 間座（リング状部材）
１０ 転がり軸受
１１ ボール
１２ 内輪
１４ 外輪
１６ 転動体
２１ 保持部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
同軸上に配置された内輪と外輪との間の円環状空間に周方向に間隔をあけて複数個の転動体を内蔵する転がり軸受と、
該転がり軸受の前記内輪に嵌合された状態で接着される第１の部材と、
前記転がり軸受の前記外輪を嵌合させた状態で接着される嵌合孔を有する第２の部材と、
前記内輪の軸方向の一端を突き当てるリング状部材と、
前記第２の部材の前記嵌合孔の内面から半径方向内方に延びる保持部と、
前記リング状部材と前記保持部との間に転動可能に配置される複数のボールと
を備える転がり軸受ユニット。
【請求項２】
前記ボールが前記嵌合孔の周方向に所定の間隔をあけて３以上配置されている請求項１に記載の転がり軸受ユニット。
【請求項３】
前記転がり軸受の前記外輪が、前記リング部材に向けて軸方向に押圧された状態で前記第２の部材の前記嵌合孔と接着されている請求項１または請求項２に記載の転がり軸受ユニット。
【請求項１】
同軸上に配置された内輪と外輪との間の円環状空間に周方向に間隔をあけて複数個の転動体を内蔵する転がり軸受と、
該転がり軸受の前記内輪に嵌合された状態で接着される第１の部材と、
前記転がり軸受の前記外輪を嵌合させた状態で接着される嵌合孔を有する第２の部材と、
前記内輪の軸方向の一端を突き当てるリング状部材と、
前記第２の部材の前記嵌合孔の内面から半径方向内方に延びる保持部と、
前記リング状部材と前記保持部との間に転動可能に配置される複数のボールと
を備える転がり軸受ユニット。
【請求項２】
前記ボールが前記嵌合孔の周方向に所定の間隔をあけて３以上配置されている請求項１に記載の転がり軸受ユニット。
【請求項３】
前記転がり軸受の前記外輪が、前記リング部材に向けて軸方向に押圧された状態で前記第２の部材の前記嵌合孔と接着されている請求項１または請求項２に記載の転がり軸受ユニット。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２００９−１８０２６２（Ｐ２００９−１８０２６２Ａ）
【公開日】平成２１年８月１３日（２００９．８．１３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−１８５５７（Ｐ２００８−１８５５７）
【出願日】平成２０年１月３０日（２００８．１．３０）
【出願人】（３０５０１８７１９）エスアイアイ・マイクロプレシジョン株式会社 (29)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年８月１３日（２００９．８．１３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１月３０日（２００８．１．３０）
【出願人】（３０５０１８７１９）エスアイアイ・マイクロプレシジョン株式会社 (29)
【Ｆターム（参考）】
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