説明

較正方法およびそのような較正方法を用いるリソグラフィ装置

【課題】高速かつ信頼性の高い、リソグラフィ装置のステージ位置を較正するユーザフレンドリな改良型較正方法を提供する
【解決手段】ステージ位置を較正する較正方法が、パターニングデバイスのパターンを基板上に投影すること、投影パターンの結果として生じる位置を測定すること、および被測定位置からステージ位置の較正を導出することを含み、測定の間に、基板が、基板の中心軸の周りで、回転開始位置から少なくとも1つの他の回転位置に向かって回転させられ、投影パターンの位置が、基板の少なくとも2つの異なる回転位置のそれぞれについて測定され、投影の間に生じるパターンの位置の投影偏移と測定の間に生じるパターンの位置の測定偏移との少なくとも一方が、基板の異なる回転位置のそれぞれで測定された投影パターンの位置を平均することによって求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、リソグラフィ装置用の較正方法およびそのような較正方法を用いるリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常は基板のターゲット部分上に付ける機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造時に使用することができる。そのような場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用し、ICの個々の層に形成しようとする回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えば、シリコンウェーハ)上の(例えば、ダイの一部、1つのダイ、またはいくつかのダイを含む)ターゲット部分上に転写することができる。パターンの転写は、一般に、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層上への結像による。一般に、単一の基板は、連続してパターニングされる、網状の隣り合うターゲット部分を含むことになる。従来のリソグラフィ装置には、パターン全体を一度にターゲット部分上に露光することによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、所与の方向(「スキャン」方向)で放射ビームを介してパターンをスキャンし、一方、この方向に対して平行または逆平行で基板を同期スキャンすることによって、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとが含まれる。パターンを基板上にインプリントすることによってパターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0003】
[0003] リソグラフィ装置内の(基板ステージまたはマスクステージなどの)ステージの位置を測定するために、位置測定システムを使用することが知られている。例えば、エンコーダ測定システムを使用することが提案されている。これに対しては、リソグラフィ装置の基準構造に接続することのできる(例えば2次元の)エンコーダグリッドが利用され、エンコーダセンサヘッドがステージに、グリッドに対するステージの位置を追跡するために接続される。
【0004】
[0004] 位置測定システムを較正するために、現在のところ、複数回の較正が実施されている。エンコーダ測定システムの場合には、グリッド誤差が、例えば、ステージを移動させている間にエンコーダシステムにより測定されたデータを用いることによって較正される。較正ウェーハを使用することもできる。
【0005】
[0005] 現在の較正方法には、いくつかの欠点がある。具体的には、現在の較正方法には、あまりにも多くの時間がかかりすぎる。システムの迅速な微調整は可能とはなり得ない。現時点では、満足のいく結果をもたらすことのできる高速な微調整較正テストは利用できない。例えば、エンコーダ測定システムの場合、完全なグリッド較正には、数時間、または数日かかることさえある。このことが、グリッドを(再)較正する必要があるたびに、またグリッド較正の妥当性を評価するためにグリッド検証テストが必要になるたびに、リソグラフィ装置の許容できない長期の停止を招く。さらに、現在の手法は、ウェーハのクランプ変形を考慮に入れていない。その結果、較正されない一部の中周波クランプ誤差が残存して、装置のオーバーレイ性能が低下する恐れがある。最後に、較正ウェーハを用いる較正テストは、使用される較正ウェーハの品質にあまりにも強く依存しすぎる(すなわち、較正ウェーハを用いる較正テストは絶対較正ではなく相対較正である)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] 本発明は、前述の欠点を少なくとも一部克服し、または有用な代替手段を提供することを目的とする。具体的には、本発明は、高速かつ信頼性の高い、リソグラフィ装置のステージ位置を較正するユーザフレンドリな改良型較正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] 本発明の一実施形態によれば、リソグラフィ装置のステージのステージ位置を較正する較正方法であって、パターニングデバイスのパターンが、投影システムによって基板上のターゲット位置内に投影される投影工程、基板上での投影パターンの結果として生じる位置が、位置測定システムによって測定される測定工程、および投影パターンの被測定位置からステージ位置の較正を導出することを含み、測定工程中、基板が、基板の中心軸の周りで、回転開始位置から少なくとも1つの他の回転位置に向かって回転させられ、投影パターンの位置が、基板の少なくとも2つの異なる回転位置のそれぞれについて測定され、パターンが、基板の中心軸の周りで回転対称であり、投影工程中に生じるパターンの位置の投影偏移と測定工程中に生じるパターンの位置の測定偏移の少なくとも一方が、基板の異なる回転位置のそれぞれに対する投影パターンの被測定位置を平均することによって求められる方法が提供される。
【0008】
[0008] 一代替実施形態によれば、リソグラフィ装置のステージのステージ位置を較正する較正方法であって、パターニングデバイスのパターンが、投影システムによって基板上のターゲット位置内に投影される投影工程、基板上での投影パターンの結果として生じる位置が、位置測定システムによって測定される測定工程、および投影パターンの被測定位置からステージ位置の較正を導出することを含み、投影工程中、基板が、基板の中心軸の周りで、回転開始位置から少なくとも1つの他の回転位置に向かって回転させられ、パターンの投影が、基板の少なくとも2つの異なる回転位置のそれぞれについて行われ、それらのパターンがともに、基板の中心軸の周りで回転対称に投影され、測定工程中、投影パターンのそれぞれについて、基板が、基板の中心軸の周りで、回転開始位置に向かって回転させられ、投影パターンのそれぞれの位置が、基板のこの同じ回転開始位置において測定され、投影工程中に生じるパターンの位置の投影偏移と測定工程中に生じるパターンの位置の測定偏移の少なくとも一方が、基板の同じ回転位置における投影パターンの被測定位置を平均することによって求められる方法が提供される。
【0009】
[0009] 本発明の別の実施形態では、放射ビームを調整するように構成された照明システムと、放射ビームの断面内にパターンを付与して、パターン付き放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するように構築されたサポートと、基板を保持するように構築された基板テーブルと、パターン付き放射ビームを基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、リソグラフィ装置の動作を制御するための制御システムとを含み、制御システムが、本発明の一態様による較正方法を実施するようにリソグラフィ装置を動作させるように構成される、リソグラフィ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[0010] 次に、本発明の諸実施形態を、ほんの一例として、対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照して説明する。
【0011】
【図1】[0011]本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を示す図である。
【図2】[0012](a)及び(b)は、基板上の回転対称露光パターンのレイアウトを示す図である。
【図3】[0013](a)乃至(e)は、測定偏移の推定値を平均で出すための回転読出し情報を示す図である。
【図4】[0014](a)乃至(e)は、露光偏移の推定値を平均で出すための逆回転読出し情報を示す図である。
【図5】[0015](a)及び(b)は、クランプ変形の露光への影響を示す図である。
【図6】[0016](a)及び(b)は、クランプ変形の測定への影響を示す図である。
【図7a】[0017]クランプ変形に関する0度での読出し情報と90度での読出し情報の差異を示す図である。
【図7b】[0017]クランプ変形に関する0度での読出し情報と90度での読出し情報の差異を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0018] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。本装置は、放射ビームB(例えば、UV放射または任意の他の適切な放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、かつ特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1の位置決めデバイスPMに接続されたパターニングデバイスサポートまたはマスクサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTを含む。本装置は、また、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、かつ特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2の位置決めデバイスPWに接続された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTすなわち「基板サポート」を含む。本装置は、さらに、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つまたは複数のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSを含む。
【0013】
[0019] この照明システムは、放射を導くか、整形するか、あるいは制御するために、屈折タイプ、反射タイプ、磁気タイプ、電磁タイプ、静電タイプなど様々なタイプの光学コンポーネント、または他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらの任意の組合せを含んでよい。
【0014】
[0020] パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計、および、例えばパターニングデバイスが真空環境中で保持されるかどうかなど他の条件によって決まる形でパターニングデバイスを保持する。パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスを保持するために、機械クランプ技法、真空クランプ技法、静電クランプ技法、または他のクランプ技法を用いることができる。パターニングデバイスサポートは、例えばフレームまたはテーブルでよく、必要に応じて固定式または可動式でよい。パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスが、例えば投影システムに対して確実に所望の位置にあるようにすることができる。本明細書における用語「レチクル」または「マスク」のいかなる使用も、より一般的な用語「パターニングデバイス」と同義と見なされてよい。
【0015】
[0021] 本明細書で用いられる用語「パターニングデバイス」は、基板のターゲット部分にパターンを生成するために放射ビームの断面内にパターンを与えるのに使用できる任意のデバイスを指すものと広く解釈されたい。放射ビームに与えられたパターンは、例えば、パターンが位相シフトフィーチャ、すなわちいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分の所望のパターンに正確に一致しない場合があることに留意されたい。一般に、放射ビームに与えられたパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイス中の特定の機能層に一致することになる。
【0016】
[0022] パターニングデバイスは透過型または反射型でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィにおいて周知であり、マスクタイプとして、バイナリ、レベンソン型(alternating)位相シフトおよびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどの他に様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例は、それぞれが入ってくる放射ビームを様々な方向に反射するように個々に傾斜させることができる、小さなミラーのマトリクス配置を使用する。傾けられたミラーが、ミラーマトリクスによって反射される放射ビーム内にパターンを与える。
【0017】
[0023] 本明細書で使用する用語「投影システム」は、使用される露光放射、あるいは液浸液の使用または真空の使用など他の要因に合わせて適宜、屈折式、反射式、反射屈折式、磁気式、電磁式、および静電式光学システム、またはそれらのどのような組合せも含めたどのようなタイプの投影システムをも包含するものとして広く解釈されたい。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用することがあればそれは、より一般的な用語「投影システム」と同義と見なすことができる。
【0018】
[0024] 本明細書で記述されるように、装置は透過タイプ(例えば透過型マスクを使用するタイプ)である。あるいは、装置は反射タイプ(例えば上記で言及されたプログラマブルミラーアレイを使用するタイプまたは反射型マスクを使用するタイプ)でよい。
【0019】
[0025] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)またはそれ以上の基板テーブルまたは「基板サポート」(および/または複数のマスクテーブルまたは「マスクサポート」)を有するタイプでよい。そのような「マルチステージ」機では、追加のテーブルまたはサポートが並行して使用され得るが、あるいは1つまたは複数のテーブルまたはサポートが露光に使用されている間に、1つまたは複数の他のテーブルまたはサポート上で準備工程が行われ得る。
【0020】
[0026] リソグラフィ装置はまた、投影システムと基板の間の空間を満たすように、比較的高い屈折率を有する液体、例えば水によって基板の少なくとも一部分を覆うことができるタイプのものとすることができる。また、液浸液は、リソグラフィ装置内の他の空間、例えば、マスクと投影システムの間に与えることもできる。液浸技法は、投影システムの開口数を増大するために使用することができる。本明細書で使用される「液浸」という用語は、基板など、ある構造を液体内に沈めなければならないことを意味しておらず、液体が、露光中に投影システムと基板の間に位置することを意味するにすぎない。
【0021】
[0027] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えばこの放射源がエキシマレーザであるとき、放射源とリソグラフィ装置は別体でよい。そのような例では、放射源がリソグラフィ装置の一部を形成するとは見なされず、放射ビームは、放射源SOからイルミネータILまで、例えば適当な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDを用いて通される。他の例では、例えば放射源が水銀灯であるとき、放射源はリソグラフィ装置の一体型部品でよい。放射源SOおよびイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDも一緒に、放射システムと呼ばれてよい。
【0022】
[0028] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調節するように構成されたアジャスタADを含んでよい。一般に、少なくともイルミネータの瞳面内強度分布の外側および/または内側半径範囲(一般にそれぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)は調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOなど様々な他のコンポーネントを含んでよい。イルミネータは、放射ビームがその横断面において所望の均一性および強度分布を有するように調節するのに使用されてよい。
【0023】
[0029] 放射ビームBは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MT上に保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MA上に入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。放射ビームBは、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを通って投影システムPSを通過し、投影システムPSが、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。基板テーブルWTは、第2の位置決めデバイスPWおよび位置センサIF(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダまたは容量センサ)を用いて、例えば放射ビームBの経路内へ個別のターゲット部分Cを位置決めするように正確に移動させることができる。同様に、第1の位置決めデバイスPMおよび別の位置センサ(図1には明示されていない)は、例えばマスクライブラリから機械的に取り出した後、またはスキャン中に、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えばマスク)MAを正確に位置決めするのに使用することができる。一般に、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTの移動は、第1の位置決めデバイスPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現することができる。同様に、基板テーブルWTまたは「基板サポート」の移動は、第2ポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使用して実現することができる。ステッパの場合には(スキャナとは対照的に)、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTがショートストロークアクチュエータのみに接続されてよく、あるいは固定されてよい。パターニングデバイス(例えばマスク)MAおよび基板Wは、パターニングデバイスのアライメントマークM1、M2および基板のアライメントマークP1、P2を使用して位置合わせさせることができる。図示された基板アライメントマークは専用ターゲット部分を占めるが、ターゲット部分の間のスペースに配置されてもよい(スクライブラインアライメントマークとして既知である)。同様に、パターニングデバイス(例えばマスク)MA上に複数のダイが与えられる状況では、パターニングデバイスのアライメントマークはダイ間に配置されてよい。
【0024】
[0030] 図示される装置は、以下のモードの少なくとも1つにおいて使用することが可能である。
1. ステップモードでは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」および基板テーブルWTまたは「基板サポート」が、実質的に静止状態に保たれ、放射ビームに与えられたパターン全体が、一度でターゲット部分C上に投影される(すなわち単一静的露光)。次いで、基板テーブルWTまたは「基板サポート」は、別のターゲット部分Cを露光することが可能となるようにX方向および/またはY方向にシフトされる。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズが、単一静的露光においてイメージングされるターゲット部分Cのサイズを限定する。
2. スキャンモードでは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」および基板テーブルWTまたは「基板サポート」が、同期してスキャンされ、放射ビームに与えられたパターンが、ターゲット部分C上に投影される(すなわち単一動的露光)。パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」に対する基板テーブルWTまたは「基板サポート」の速度および方向は、投影システムPSの拡大率(縮小率)および像反転特性により決定することができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズが、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャニング方向の)幅を限定し、スキャニング動作の長さが、ターゲット部分の(スキャニング方向の)高さを決定する。
3. 別のモードでは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」が、プログラマブルパターニングデバイスを保持しつつ実質的に静止状態に保たれ、基板テーブルWTまたは「基板サポート」が、移動されまたはスキャンされるとともに、放射ビームに与えられたパターンが、ターゲット部分C上に投影される。このモードでは、一般的にはパルス放射源が使用され、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTまたは「基板サポート」の各移動の後で、またはスキャン中の連続放射パルスの間に、必要に応じて更新される。この作動モードは、上述のタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に応用することが可能である。
【0025】
[0031] 上述の使用モードの組合せおよび/または変形、または全く異なる使用モードを使用することもできる。
【0026】
[0032] リソグラフィ装置、特にその1つまたは複数の、例えば図1の基板テーブルWTの位置センサIFのような位置測定システムが、その初回の使用の前に較正され、使用中にしばしば再較正または検証される。図1に示す位置測定システムに代わる位置測定システムとして、(例えば2次元)エンコーダ測定システムを含むタイプを使用することも知られている。このエンコーダ測定システムは、リソグラフィ装置の基準構造に接続されるエンコーダグリッドを含むことができ、一方、エンコーダセンサヘッドが、装置の可動基板テーブルWTになど、装置の可動ステージに接続される。したがって、エンコーダヘッドは、基板上のターゲット位置へのパターンの投影中に、エンコーダグリッドに対する基板テーブルWTの位置を追跡することができる。その結果、エンコーダ測定システムのエンコーダグリッドのような、位置測定システムの一部分の不正確さ、誤差、および他の類の偏移が、投影工程中に基板W上に形成されるパターンのオーバーレイエラーのような偏移になることがある。基板W上のパターンはその後、パターンが例えばリソグラフィ装置のアライメントセンサによって読み出される測定工程内で測定することができる。次いで、アライメントセンサの出力信号が、パターンの測定されたラインおよび/またはドットに対応する信号をもたらし、したがって、パターンのそうしたラインおよび/またはドットの任意の偏移についての情報をもたらすことができる。こうした偏移の1つ目の重要な原因は、投影工程中の位置測定システムの上述の偏移である。こうした偏移の2つ目の重要な原因は、測定工程中の位置測定システムの偏移である。これらの偏移に対する1つまたは複数の位置測定システムの較正は、アライメントセンサ出力信号のような測定結果を用いて実施することができる。
【0027】
[0033] 以下では、基板テーブルWTの較正のためにエンコーダタイプの位置測定システムを較正する、本発明による較正方法の一実施形態について説明する。本方法は、パターンが基板W上の様々な位置に露光される投影手順から開始する。パターン全体で、図2aから分かるように回転下で対称なレイアウトを有する像を成す。露光パターン自体も回転下で対称であり、例えば、図2bに示すように単一の中心パターンを含んでも、図2cに示すように、そのような中心パターンと、そのパターンの中心軸の周りでxおよび/またはy方向に等距離に配置された複数のサブパターンとの組合せを含んでもよい。他の回転対称パターンおよび/または像も可能である。投影手順は、基板Wを測定システムの露光エンコーダグリッドに対して毎回位置決めすることにより実施されるため、この露光エンコーダグリッドの偏移(Eで表す)が、パターンと共に基板W上に自動的にコピーされる。続いて、較正方法は、投影パターンが読み出される測定を実施する動作を含む。その動作により、基板W上でのパターンの位置が、測定エンコーダグリッドに対して測定される。したがって、この測定エンコーダグリッドの偏移(Mで表す)が、測定結果内に自動的に含まれる。
【0028】
[0034] この例における露光エンコーダグリッドと測定エンコーダグリッドは、2つの異なるグリッドであることに留意されたい。というのも、基板Wが、基板W上へのパターンの投影が行われたところとは違う、リソグラフィ装置の別の部分で測定されるためである。例えば、基板上へのパターンの投影は、デュアルステージリソグラフィ装置の露光側で実施され、測定は測定側で実施される。測定手順を、それ自体の測定エンコーダグリッドを有する全く異なる装置において実施することも可能である。
【0029】
[0035] 本発明の一実施形態によれば、測定手順中に基板W上でのパターンの位置が数回測定される。まず第一に、基板W上でのパターンの位置は、基板Wの(0°のところの)第1の回転開始位置において測定される(図3aを参照されたい)。続いて、基板Wは、その中心軸Zの周りで(90°のところの)第2の回転位置に向かって90度の角度にわたって回転させられる。基板W上でのパターンの位置が、この第2の回転位置においても測定される(図3bを参照されたい)。次いで、基板Wは、(180°のところの)第3の回転位置に向かって90度の角度にわたって再度回転させられ、そこで、パターンの位置が再度測定され(図3cを参照されたい)、その後、基板Wは、最後に(270°のところの)第4の回転位置に向かって90度の角度にわたって回転させられ、そこで、パターンの位置の4度目の測定が行われる(図3dを参照されたい)。したがって、投影パターンの位置は、基板の4つの異なる回転位置のそれぞれについて、測定エンコーダグリッドに対して求められる。基板W上の回転対称パターンの4回の測定のどれもがそれぞれ、露光エンコーダグリッド偏移と測定エンコーダグリッド偏移の異なる組合せを生じさせる。例えば、0°での読出し情報であれば、E+Mについての情報をもたらし、90°での読出し情報であれば、E90+Mについての情報をもたらし、ただしE90は、90°の回転位置に向かって回転させられた露光エンコーダグリッド偏移を表しており、以下同様である。
【0030】
[0036] 本発明の一実施形態は、様々な回転読出し情報からのデータを適切に組み合わせることによって、露光グリッド偏移と測定グリッド偏移を互いに分離することができ、したがって、互いに適切に較正することができるという見識に基礎をおくものである。これは、以下のように行われる。
【0031】
[0037] 4つの回転読出し情報全ての平均をとることにより、測定エンコーダグリッド偏移Mの推定値Mestを得ることができる。これが可能なのは、図3a〜dから分かるように、全ての読出し情報が、同じ測定グリッド偏移Mをずっと含んでいるためである。基板Wが90度にわたって回転させられることは、測定グリッド偏移の方向および大きさに影響を及ぼさない。位置測定システムの測定エンコーダグリッドとセンサヘッドの位置が、基板テーブルWTに対して変わらないことがその理由である。基板Wだけが、基板テーブルWTに対して回転させられる。一方、露光グリッド偏移Eは、基板Wの回転と共に回転する。これは、投影パターン内のどんな偏移も、基板Wの回転と共に回転し、パターン自体のそうした偏移は、大部分は、露光エンコーダグリッドの偏移Eのため投影手順中に生じると想定されるためである。4つの回転位置は、中心軸Zの周りで対称であるため、測定された4つの回転露光グリッド偏移Eは、xおよびy方向で互いを実質的に平均する。このようにして、これらの偏移Eは、それぞれに対応する4つの測定値が加算されて、4で除算されたときに、合計結果上でノイズになる(図3eを参照されたい)。換言すれば、回転する偏移は、露光グリッド偏移Eであると見なされ、一方、回転しない偏移は、測定グリッド偏移Mであると見なされる。回転パターン読出し情報の平均をとることによって、偏移Mは変わらないままであるが、偏移Eは抑制されて、ノイズ様の信号をもたらす。したがって、測定グリッド偏移Mの推定値Mestが得られる。
【0032】
[0038] 同様に、露光グリッド偏移Eの推定値Eestを、露光グリッド偏移Eが同じ方向を共有するように測定データを回転させた後の読出し情報(いわゆる逆回転読出し情報)全ての平均をとることによって得ることができる。図4a〜eを参照されたい。図4aは、0°での読出し情報を示し、図4bは、0°に向かって90°逆回転させられたところでの読出し情報を示し、図4cは、0°に向かって180°逆回転させられたところでの読出し情報を示し、図4dは、0°に向かって270°逆回転させられたところでの読出し情報を示し、図4eは、露光グリッド推定値を示す。0°に向かって逆回転させられた基板の読出し情報の平均をとることにより、露光グリッド偏移Eは保たれるが、測定グリッド偏移Mは、組み合わされてノイズ様の信号をもたらす。したがって、露光グリッド偏移Eの推定値Eestが得られる。
【0033】
[0039] 続いて、投影および/または測定中のそれぞれに対応する基板テーブルWTの位置の適切な較正を導出するために、EおよびMの推定値を使用することができる。
【0034】
[0040] EおよびMの推定値EestおよびMestは、測定データから、並進、回転、および拡大のような任意の基板インターフィールド線形寄与(inter-field linear contribution)を最初にモデリングして除去することにより、向上させることができる。こうする理由は、様々な基板読出し情報間の任意の線形誤差が、実際は(露光または測定)エンコーダグリッド偏移であるか、それとも基板のアライメント誤差によるものであるかを区別することができないためである。これらのインターフィールド線形寄与を最初にモデリングして除去することによって、本発明の一実施形態による較正が、有利には、より高次の、または非線形のエンコーダグリッド寄与のみに注目する。
【0035】
[0041] EおよびMの推定値は、生じる可能性のある測定および/または露光エンコーダグリッドの任意の回転対称偏移を分離することにより、さらに向上させることもできる。回転対称偏移は、EおよびMの推定値内に見られる。これに伴う問題は、こうした回転対称偏移がEから生じているのか、それともMから生じているのかを、平均化手順が「見分ける」ことができないということである。したがって、こうした回転対称誤差は、EとMの推定値間で誤って分配される可能性が最も高い。換言すれば、平均化手順が、こうした回転対称誤差を求める際に曖昧さを導入する。回転対称誤差がない場合、EおよびMの推定値は正確であることに留意されたい。
【0036】
[0042] 本発明の別の態様は、エンコーダグリッドを求める精度に対するこうした回転対称偏移の影響力を、回転対称偏移の影響を適切な重み付け手順を用いて測定グリッドと露光グリッドの間で再分配することにより、低下させることを提案するものである。重み付け手順とは、EとMの間で回転対称偏移を再分配する方法である。これは次のように機能する。a)先に得られたEおよびMの推定値(これをE'およびM'で表すこととする)の4回の回転の平均をとることによって、合計回転対称偏移を推定することができる。これはR4(E+M)の形でもたらされ、ただしR4は、4回の回転の平均を表し、EおよびMは、この場合は、正確な露光グリッドおよび測定グリッドである。b)こうした合計並進対称誤差を、その一部をEの推定値に割り当て、残りをMの推定値に割り当てることによって再分配することができる。例えば、合計並進対称誤差を再分配する自然な方法は、偏移EおよびM自体の大きさに従うものである。したがって、Eが大きいほど、並進対称誤差のEに割り当てられる部分が多くなる。EおよびMの正確な大きさは、その推定値しかないため分からないことに留意されたい。しかし、比E対Mは、[E'-R4(M')]対[M'-R4(E')]という比によって、非常にうまく近似することができる。実際、[E'-R4(M')]は、正確なEのみに依存し、一方[M'-R4(E')]は、正確なMのみに依存することが分かる。
【0037】
[0043] 上述の重み付け手順に加えて、またはその代わりに、図2bに示すような追加のシフトしたサブパターンを使用して、回転対称偏移により導入される曖昧さを低減させることもできる。シフトしたサブパターンは、中心パターンと同じ偏移Eを有し、したがって、中心パターンと同じ回転対称偏移をEの中に有する。しかし、シフトしたサブパターンは、異なる偏移Mを有する。この情報を使用して、EとMの回転対称偏移を分離し、したがって、回転対称誤差によって導入される曖昧さを低減させることができる。サブパターンは、必要に応じて、基板Wの1回の回転または様々な回転において読み出すことができる。その後、分離された回転対称偏移の測定グリッド寄与および露光グリッド寄与を次いで区別して、較正中に帯同させることができる。この重み付けの例は、回転対称偏移の大きさが、純然たるエンコーダグリッド偏移の大きさに通常は比例することが明らかになったものである。しかし、他の重み付けも可能である。
【0038】
[0044] 追加のシフトしたサブパターンを使用して、投影中に生じる任意のRzグリッド偏移のマップを形成することもでき、ただしRzは露光中の回転誤差である。このようにして、任意のRz露光グリッド偏移に対する較正も実施することができる。この較正によって最適な結果を得ることができるようになるには、サブパターンのシフトが、好ましくは、典型的なグリッド偏移空間周波数よりも大きくなければならない。
【0039】
[0045] 本発明の一実施形態による較正方法の精度は、最終的には、推定値内の回転対称寄与の存在および大きさによって決まる。こうした寄与がない場合、本較正方法は正確である。しかし、典型的なエンコーダグリッド偏移EおよびMは、回転対称寄与がなくても、実際には、いくらかの回転対称寄与を含む推定値をもたらす。これは、本較正方法では有限回数の回転を使用するためである。したがって、回転読出し情報を平均することにより得られる推定値は、有限回のサンプリングのため、いくらかの非ゼロ回転対称成分を常に有する。このことが、グリッド推定値EおよびMの不正確さを招く。
・その不正確さは、回転数に反比例する。したがって、より多くの回転(回転読出し情報)が使用されるほど、グリッド推定値がより正確になる。
・その不正確さは、最良絶対エンコーダグリッド(測定または露光)に正比例する。このため、本方法は、微調整較正技法として適切なものになっている。大きなグリッドオーバーレイ偏移のあるシステムでは、それでもなお本方法をやはり使用して、エンコーダグリッドを正確に求めることができる。そうするためには、露光後の基板をさらに、十分に較正された測定エンコーダグリッドのある別のシステム上で読み出さなければならない。2つのシステムにおける読出し情報を比較することにより、正確なエンコーダグリッド推定値が得られる。
【0040】
[0046] シミュレーションおよび実際のテストデータから、4回の回転下での単一パターン露光読み出しの場合、エンコーダグリッド推定値が、エンコーダグリッド自体のオーバーレイ偏移の大きさの約25%の誤差のある絶対グリッドを再生させることが観測されている。これは、8nmのエンコーダグリッドを有するシステムの場合、本方法を用いた較正により、わずか2nmの解決できないグリッドが残ることを意味する。
【0041】
[0047] 本方法は、中〜低周波エンコーダグリッド偏移の比較的高速な較正/検証として使用することができる。そのため、本方法は、リソグラフィ装置の寿命の間または復旧中に生じるエンコーダグリッドの変形/ドリフトの高速な微調整補正としてかなり有用になる。これらの状況では、エンコーダグリッドの変化が、大半は中〜低周波の影響である。したがって、本発明の一実施形態による較正方法は、現状の完全なエンコーダグリッド再較正方法に比べて、多くの時間を節減することができる。一例として、4つの回転読出し情報を用いる1枚の基板の完全なテストであれば、約30分かかる。
【0042】
[0048] 本発明の一実施形態による較正方法の別の利点は、その方法が、現状の較正方法とは異なり、基板のクランプ/変形を感知できるということである。具体的には、基板のクランプ/変形に由来する露光グリッド偏移および測定グリッド偏移に対する統計的寄与を、大まかに推定することができる。この推定は、基板のクランプ/変形偏移が現れない0°での読出し情報と、ウェーハのクランプ/変形偏移が現れる回転読出し情報とを比較することにより行われる。図5aは、投影工程中のクランプ変形を示しており、図では、露光中に露光された像がEで示されており、クランプグリッド誤差がCで示されている。このクランプ変形の結果、図5bに示すように、投影パターン内に逆偏移が生じる。これと同じ影響が、図6aに示すように、測定工程中にも生じる場合があり、図では、図6a内のプリントされた像がMで示されており、結果として生じる影響が図6bに示されている。図7aでは、0°での読み出し中に、クランプ変形偏移が見られないことが分かる。というのも、露光されたウェーハ(加算の左)と測定ウェーハ(加算の右)の和をとる結果、クランプ/ウェーハ変形誤差を見ることができなくなるためである。一方、図7bは、他の回転位置での読み出し(図7bには90度での読み出しが示されている)中に、そのようなクランプ/ウェーハ変形の影響を明らかに見ることができることを示す。次いで、この情報を使用して、クランプ変形偏移の大きさを推定することができる。
【0043】
[0049] 有利には、本発明の一実施形態による較正方法は、基準基板を使用しない。したがって、本方法は、そうした基準基板の偏移の影響を受けず、基準基板を適所に適時に得る上での時間を節減する。
【0044】
[0050] 図示の実施形態に加えて、多数の変形形態が可能である。例えば、本較正方法を他のステージ、および/または干渉計、1次元エンコーダ、2次元エンコーダ、干渉計/エンコーダの組合せ、誘導性、容量性など、他のタイプの位置測定システムを有するステージに適用することができる。検証および較正の方法を用いることに加えて、その方法を基準基板の形成に使用することも可能である。本発明の一実施形態による較正方法の結果を用いることにより、任意の露光エンコーダグリッド偏移を、その偏移を直接較正することで打ち消すことが可能になる。その後、露光された基板は、ほぼ理想的な絶対グリッドを有し、したがって基準基板として使用するのに適している。装置の測定側で引き起こされる誤差は、データから除去することができるため、基板上に実際に投影されるものが分かるようになる。これにより、基板の質が向上する。
【0045】
[0051] 対称パターンを露光して、それをN回の回転下で読み出す代わりに、等価な較正方法は、N個のパターンを、N回の回転下で、基板の中心軸の周りで対称に露光し、次いで、そのN個のパターンをそれぞれ、0度(回転開始位置)において読み出すというものである。したがってこの場合も、投影工程中に生じるパターンの位置の投影偏移と測定工程中に生じるパターンの位置の測定偏移の少なくとも一方を、基板の同じ回転位置における投影パターンの被測定位置を平均することによって、効果的に求めることができる。
【0046】
[0052] 上記の較正は、リソグラフィ装置内で、例えば、リソグラフィ装置の動作を制御するコントローラの適切なプログラミングによって実施することができる。適切なプログラミング命令によってプログラミングする代わりに、またはそれに加えて、コントローラを、本較正方法が実施されるように構成された状態にする、他の任意の方法を利用することもできる(例えば専用ハードウェアなど)。4回の回転の代わりに、別の回転回数を使用することも可能であり、例えば測定工程中に3つの回転位置、例として0°、60°、および120°などを使用することも可能である。1方向の較正しか必要ない場合、測定工程中の2つの異なる回転位置でも十分となり、具体的には0°および180°でも十分となり得る。しかし、好ましくは、十分な精度をもたらすことができるようにするために、少なくとも3つの回転位置が使用されることに留意されたい。測定工程中に4回よりも多くの回転を使用することも可能である。
【0047】
[0053] したがって、本発明の一実施形態によれば、高速かつ既存のリソグラフィ装置内で実施が容易な較正方法が得られる。本方法は、現在の方法に比べてより高速な、中〜低周波グリッドの較正/検証用の代替手段を提供する。本方法は特に、エンコーダグリッドの微調整に適しており、しばしば位置測定システムの完全な再較正が不必要であるか又はあまりにも多くの時間がかかりすぎる、リソグラフィ装置の比較的長期の停止後に非常に有用である。さらに、本方法は、基板のクランプ/変形によるエンコーダグリッド偏移を区別し、したがってその偏移に対して較正することができる。
【0048】
[0054] この説明において、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に具体的に言及することがあるが、本明細書に記載のリソグラフィ装置には、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用の誘導パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造など、他の適用分野があることを理解されたい。そのような代替適用分野の文脈では、本明細書において「ウェーハ」または「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、より一般的な用語である「基板」または「ターゲット部分」と同義と見なすことができることが、当業者には理解されよう。本明細書において言及される基板は、露光前または後に、例えばトラック(一般に、レジストの層を基板に与え、露光後のレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、および/またはインスペクションツール内で処理することができる。適用可能な場合、本明細書における開示は、そのような基板処理ツール、および他の基板処理ツールに適用することができる。さらに、例えば多層ICを形成するために、基板を2回以上処理することもでき、したがって、本明細書で使用される基板という用語は、複数の処理済みの層をすでに含む基板を指すこともある。
【0049】
[0055] 上記では、光リソグラフィの文脈における本発明の諸実施形態の使用に具体的に言及している可能性があるが、本発明は、他の適用分野、例えばインプリントリソグラフィで使用することができ、状況が許すならば、光リソグラフィに限定されないことが理解されよう。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが、基板上に形成されるパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジストの層へと押し込むことができ、その後すぐに、レジストが、電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組合せを印加することによって硬化される。レジストが硬化された後、パターニングデバイスは、レジスト中にパターンを残した状態でそこから移動される。
【0050】
[0056] 本明細書で使用される「放射」および「ビーム」という用語は、(例えば、365、248、193、157もしくは126nmの波長、またはその近くの波長を有する)紫外線(UV)放射、および(例えば、5〜20nmの範囲内の波長を有する)極端紫外線(EUV)放射、ならびにイオンビームまたは電子ビームなどの粒子ビームを含む、あらゆるタイプの電磁放射を包含する。
【0051】
[0057] 「レンズ」という用語は、状況が許すならば、屈折式、反射式、磁気式、電磁式および静電式光学コンポーネントを含む種々のタイプの光学コンポーネントの中の任意の1つまたは組合せを意味し得る。
【0052】
[0058] 本発明の特定の実施形態が上述で説明されたが、本発明は説明されたもの以外の形態において実施し得ることが理解されよう。例えば、本発明は、上記で開示された方法を記述した機械読取可能命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、またはそのようなコンピュータプログラムを記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気または光ディスク)の形態をとってよい。
【0053】
[0059] 上記の説明は、限定するものではなく、例示のためのものである。したがって、添付の記載した特許請求の範囲に記載の範囲から逸脱することなく、説明した本発明に対して修正を行えることが、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置のステージのステージ位置を較正する較正方法であって、
パターニングデバイスのパターンを基板のターゲット位置上に投影すること、
前記基板上での前記投影パターンの位置を測定すること、および
測定された前記投影パターンの位置から前記ステージ位置の較正をすること、を含み、
前記測定の間、前記基板は、前記基板の中心軸の周りで、回転開始位置から少なくとも1つの他の回転位置に向かって回転させられ、前記投影パターンの位置が、前記基板の前記少なくとも2つの異なる回転位置のそれぞれについて測定され、
前記パターンが、前記基板の前記中心軸の周りで回転対称であり、
前記投影の間に生じる前記パターンの位置の投影偏移および/または前記測定の間に生じる前記パターンの位置の測定偏移が、前記基板の前記異なる回転位置のそれぞれの位置において測定された前記投影パターンの位置を平均することによって決定される、方法。
【請求項2】
前記測定の間に、前記基板が、前記基板の中心軸の周りで、回転開始位置から少なくとも2つの他の回転位置に向かって回転させられ、前記投影パターンの前記位置が、前記基板の前記少なくとも3つの異なる回転位置のそれぞれについて測定される、請求項1に記載の較正方法。
【請求項3】
前記測定の間に、前記基板が、前記基板の中心軸の周りで、回転開始位置から少なくとも3つの他の回転位置に向かって回転させられ、前記投影パターンの前記位置が、前記基板の前記少なくとも4つの異なる回転位置のそれぞれについて測定され、前記少なくとも4つの回転位置が、0、90、180、および270度の角度を含む、請求項2に記載の較正方法。
【請求項4】
前記投影偏移と前記測定偏移がどちらも、前記基板の前記異なる回転位置のそれぞれに対して測定された前記投影パターンの位置を平均することによって求められる、請求項1に記載の較正方法。
【請求項5】
前記パターンが、前記基板の前記中心軸内に中心がある回転対称中心パターンを備える、請求項1に記載の較正方法。
【請求項6】
前記パターンが、前記パターンの中心軸の周辺部で等距離に分割されたサブパターンからなる回転対称アセンブリを備える、請求項1に記載の較正方法。
【請求項7】
位置測定システムが、前記投影の間に、前記基板上に投影される前記パターンの前記ターゲット位置を決定するように構成され、前記投影偏移が、前記位置測定システムの偏移に関連付けられる、請求項1に記載の較正方法。
【請求項8】
前記位置測定システムが、露光グリッドを備え、前記投影偏移が、前記露光グリッドの偏移に関連付けられる、請求項7に記載の較正方法。
【請求項9】
位置測定システムが、前記基板上での前記投影パターンの位置を前記測定の間に求めるように構成され、前記測定偏移が、前記位置測定システムの偏移に関連付けられる、請求項1に記載の較正方法。
【請求項10】
前記位置測定システムが、測定グリッドを備え、前記測定偏移が、前記測定グリッドの偏移に関連付けられる、請求項9に記載の較正方法。
【請求項11】
リソグラフィ装置のステージのステージ位置を較正する較正方法であって、
パターニングデバイスのパターンを基板のターゲット位置上に投影すること、
前記基板上での前記投影パターンの位置を測定すること、および
測定された前記投影パターンの位置から前記ステージ位置の較正をすること、を含み、
前記投影の間、前記基板が、前記基板の中心軸の周りで、回転開始位置から少なくとも1つの他の回転位置に向かって回転させられ、パターンの前記投影が、前記基板の前記少なくとも2つの異なる回転位置のそれぞれについて行われ、
前記パターンがともに、前記基板の前記中心軸の周りで回転対称に投影され、
前記測定の間、前記投影パターンのそれぞれについて、前記基板が、前記基板の前記中心軸の周りで、前記回転開始位置に向かって回転させられ、前記投影パターンのそれぞれの前記位置が、前記基板の同じ回転開始位置において測定され、
前記投影の間に生じる前記パターンの前記位置の投影偏移および/または前期測定の間に生じる前記パターンの前記位置の測定偏移が、前記基板の同じ回転位置において測定された前記投影パターンの位置を平均することによって決定される方法。
【請求項12】
放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付き放射ビームを形成するパターニングデバイスを支持するサポートと、
基板を保持する基板テーブルと、
前記基板のターゲット部分上に前記パターン付き放射ビームを投影する投影システムと、
請求項1に記載の較正方法を実施するコントローラと
を備えるリソグラフィ装置。
【請求項13】
放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付き放射ビームを形成するパターニングデバイスを支持するサポートと、
基板を保持する基板テーブルと、
前記基板のターゲット部分上に前記パターン付き放射ビームを投影する投影システムと、
請求項11に記載の較正方法を実施するコントローラと
を備えるリソグラフィ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公開番号】特開2011−119665(P2011−119665A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−236004(P2010−236004)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】