説明

載置台

【課題】トッププレートの表面抵抗を低下させて安定した測定結果を得ることができると共に製造コストを低減することができ、更に、トッププレートに高電圧を印加してもトッププレートを下側の部材から電気的に確実に絶縁し、トッププレートからのリーク電流を確実に防止することができる載置台を提供する。
【解決手段】載置台20は、半導体ウエハの載置面を有する無酸素銅からなるトッププレート21と、このトッププレート21の下面21A及び側面21Bの下部を連続的に被覆するアルミナからなる絶縁皮膜22と、この絶縁皮膜22と接触するように配置され且つ無酸素銅からなる冷却ジャケット(下部板状体)23と、を備え、アルミナは、純度が99.99重量%以上で、トッププレート21の下面21Aでは0.4mm以上で1.0mm未満の厚さに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被検査体の電気的特性検査を行う際に、被検査体を載置する載置台に関し、更に詳しくは、例えば安定した印加電圧を得ることができる載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
検査装置は、一般に、被検査体(例えば、半導体ウエハ)を搬送するローダ室と、ローダ室から搬送された半導体ウエハの電気的特性検査を行うプローバ室と、を備えている。プローバ室は、半導体ウエハを載置する移動可能な載置台と、載置台の上方に配置されたプローブカードと、半導体ウエハとプローブカードの複数のプローブとのアライメントを行うアライメント機構と、を備え、アライメント後の半導体ウエハと複数のプローブとを電気的に接触させ、テスタからの検査用信号に基づいて所定の電気的特性検査を行う。
【0003】
載置台は、例えば図3及び図4の(a)に示すように、半導体ウエハ(図示せず)を載置するトッププレート1と、このトッププレート1の下面に絶縁シート2を介して配置された冷却ジャケット3及び面ヒータ4と、面ヒータ4の下面に隙間を介して配置された絶縁体5と、トッププレート1上に半導体ウエハを吸着固定する吸着手段と、を備え、XYステージ(図示せず)上に昇降可能に配置されている。冷却ジャケット3及び面ヒータ4は、トッププレート1より小径に形成されて、それぞれの外周面にはリング部材6が配置されている。このリング部材6は、冷却ジャケット3及び面ヒータ4の外周面に密着し、外径がトッププレート1の外径と実質的に同一径に形成されている。また、絶縁体5の外周縁部にはリング状突起5Aが全周に亘って形成され、このリング状突起5Aがリング部材6と密着している。半導体ウエハの検査を行う時には、半導体ウエハはトップレート1上に吸着固定され、載置台がXYステージを介してX、Y方向へ移動すると共に昇降機構を介して半導体ウエハを昇降させ、半導体ウエハとプローブカードの複数のプローブとが電気的に接触し、所定の電気的特性検査が行われる。
【0004】
ところで、トッププレート1は、図4の(b)に示すように、例えば純度99.5重量%のアルミナ等のセラミックス焼結体1Aと、このセラミック焼結体1Aの上下両面に形成された金、ニッケル等の導電性金属からなる第1、第2導電体膜1B、1Cと、を有している。第1、第2導電体膜1B、1Cは、いずれも例えばイオンプレーティング等によって第1、第2電極として形成されている。そこで、以下では、第1導電体膜1Bを第1電極1B、第2導電体膜1Cを第2電極1Cとして説明する。第1、第2電極1B、1Cは、それぞれテスタ側に接続され、テスタ側から所定の検査用信号が印加される。また、絶縁シート2は、例えばシリコンゴム等の耐熱性樹脂によって形成され、冷却ジャケット3をトッププレート1から電気的に絶縁している。冷却ジャケット3及びリング状部材6は、銅等の導電性金属によって形成され、第2電極1Cと同様に検査用信号が印加される。この冷却ジャケット3の内部に冷媒が循環する流路3Aが形成され、冷媒が冷却ジャケット3A内を循環する間にトッププレート1を介して半導体ウエハを冷却する。絶縁体5は、ジルコンコージライト等のセラミック焼結体によって形成されている。
【0005】
而して、半導体ウエハの電気的特性検査を行う場合には、トッププレート1上に半導体ウエハを載置し、載置台がX、Y及びZ方向に移動し、半導体ウエハに形成された電極パッドとプローブ(図示せず)とを電気的に接触させて所定の検査を行う。この際、プローブカードのプローブから検査用電圧を印加すると共に第1電極1Bにバイアス電圧を印加して、例えばC−V法等による容量測定等を行う。
【0006】
また、例えば特許文献1、2にこの種の載置台が記載されている。特許文献1の載置台は、トッププレートが石英、ポリテトラフルオロエチレン等の絶縁材によって形成され、その上面に金蒸着等によって形成された導電体層が形成され、その下面にシールド部材が配置されている。特許文献2には絶縁材料からなるトッププレートの上面にのみ導電体膜が形成された載置台が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−138745
【特許文献2】特開昭62−291937
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の図3及び図4に示す載置台は、トッププレート1がセラミック焼結体1Aを主体によって形成され、このセラミック焼結体1Aの上下両面にイオンプレーティングによって第1、第2電極1B、1Cが形成されているため、セラミック焼結体1Aを一定の品質に維持することが難しく、その表面に形成された第1、2電極1B、1Cが1μm程度と極めて薄く表面抵抗が高くなり、半導体ウエハの電気的特性の測定結果に誤差を生じる虞があった。また、トッププレート1は、セラミック焼結体1Aを主体に形成され、しかもその表面に第1、第2電極1B、1Cをイオンプレーティングして形成されているため、トッププレート1の製造コストが高いという問題もあった。第1、第2電極1B、1Cの表面抵抗を低くするために、第1、第2電極を無電解メッキや電解メッキによって厚くする方法もあるが、この場合には高温測定時の温度変化によりセラミック焼結体1Aから剥離する虞があった。
【0009】
一方、特許文献1、2の技術の場合にもトッププレートが絶縁材料とその上面に形成された導電体膜とからなるため、導電体膜の表面抵抗が高く、測定結果に悪影響を及ぼす虞がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、トッププレート(上部板状体)の表面抵抗を低下させて安定した測定結果を得ることができると共に製造コストを低減することができ、更に、トッププレートに高電圧を印加してもトッププレートを下側の部材から電気的に確実に絶縁し、トッププレートからのリーク電流を確実に防止することができる載置台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載の載置台は、被検査体を載置する載置台において、上記被検査体の載置面を有する導電性材料からなる上部板状体と、この上部板状体の上記載置面とは反対側の面及び側面の少なくとも下部を連続的に被覆する電気絶縁材料からなる絶縁皮膜と、この絶縁皮膜と接触するように配置され且つ導電性材料からなる下部板状体と、を備え、上記電気的絶縁性材料は、純度が99.99重量%以上のアルミナで、上記上部板状体の下面では0.4以上1.0mm未満の厚さに形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の載置台は、請求項1に記載の発明において、上記絶縁皮膜は、絶縁性無機材料によって含浸処理されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の載置台は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記絶縁性皮膜は、溶射により形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の載置台は、請求項3に記載の発明において、上記溶射は、大気プラズマ溶射であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項5に記載の載置台は、請求項1〜請求項4に記載の発明において、上記上部板状体と上記絶縁皮膜の間に、これら両者の熱膨張係数の間にある熱膨張係数を有する中間層が介在することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項6に記載の載置台は、請求項5に記載の発明において、上記中間層は、ニッケルとアルミニウムを主成分とする合金からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トッププレート(上部板状体)の表面抵抗を低下させて安定した測定結果を得ることができると共に製造コストを低減することができ、更に、トッププレートに高電圧を印加してもトッププレートを下側の部材から電気的に確実に絶縁し、トッププレートからのリーク電流を確実に防止することができる載置台を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1、図2に示す実施形態に基づいて本発明を説明する。尚、各図中、図1は本発明の載置台の一実施形態を適用した検査装置の構造の一例を部分的に破断して示す正面図、図2の(a)〜(c)はいずれも図1に示す検査装置に適用された載置台を示す図で、(a)はその断面図、(b)は載置台の絶縁皮膜の一部を拡大して示す断面図、(c)は載置台の一部を拡大して示す断面図である。
【0019】
まず、本実施形態の載置台を備えた検査装置について図1及び図2を参照しながら説明する。検査装置は、例えば図1に示すように、半導体ウエハWの電気的特性検査を行うプローバ室10と、プローバ室10に半導体ウエハWを搬送するローダ室(図示せず)と、を備えている。
【0020】
プローバ室10は、図1に示すように、半導体ウエハWを載置する載置台20と、載置台20をX、Y方向へ移動させるXYテーブル30と、載置台20の上方に配置されたプローブカード40と、プローブカード40の複数のプローブ41と載置台20上の半導体ウエハWの複数の電極パッド(図示せず)とのアライメントを行うアライメント機構(図示せず)と、プローブカード40の上面の複数の端子電極と電気的に接続されたテストヘッド50と、を備え、アライメント機構によって載置台20上の半導体ウエハWの複数の電極パッドとプローブカード40の複数のプローブ15Aとのアライメントを行った後、複数のプローブ41と複数の電極パッドとを電気的に接触させて半導体ウエハWの電気的特性検査を行う。電気的特性検査を行う時には、テスタ(図示せず)からテストヘッド50を介してプローブカード40の複数のプローブ41へ高周波信号等の検査用信号を印加すると共に載置台20の載置面にバイアス電圧を印加して、C−V法による容量測定等の電気的特性検査を行う。
【0021】
載置台20は、例えば図2の(a)に示すように、例えば半導体ウエハWを載置面で真空吸着できる上部板状体(トッププレート)21と、トッププレート21の載置面とは反対側の面(下面)21A及び側面21Bの上部近傍までを連続的に被覆する電気絶縁材料からなる絶縁皮膜22と、この絶縁皮膜22と接触するように配置され且つ導電性材料からなる下部板状体(冷却ジャケット)23と、冷却ジャケット23の下面全面に密着する面ヒータ24と、面ヒータ24の下方に配置された絶縁体25と、これらの部材を一体的に昇降させる昇降機構(図示せず)と、を備えている。また、トッププレート21から絶縁体25に至る部材は、所定の角度範囲内で一体的にθ方向へ回転可能になっている。
【0022】
而して、トッププレート21は、導電性材料によって形成されている。導電性材料は、導電性金属であれば特に制限されない。トッププレート21の導電性材料としては、例えば電導性に優れた無酸素銅が好ましい。トッププレート21の厚さは、半導体ウエハWの大きさにもよるが、例えば300mm径の半導体ウエハW用のトッププレート21は、検査用の高周波信号等に対する低抵抗性と機械的強度を確保するため、厚さが少なくとも10mmあることが好ましい。本実施形態では、トッププレート21は、例えば14.8mmの厚さに形成されている。側面21Bを被覆する絶縁皮膜22は、トッププレート21の無垢の面と冷却ジャケット23との間でのリーク電流を防止するため、下面21Aから10mm以上離して形成されていることが好ましい。
【0023】
また、無酸素銅からなるトッププレート21の表面にはニッケル、アルミニウム等の酸化し難い金属の無電解めっきによりめっき層(図示せず)が施されていることが好ましい。このめっき層によりトッププレート21の無酸素銅に対して耐酸化性が付与され、トッププレート21としての電気的特性を長時間に渡って維持することができる。めっき層は、無酸素銅の酸化を防止することができれば、その厚さは特に制限されない。本実施形態では、めっき層は例えば3μmの厚さに形成されている。
【0024】
このトッププレート21は、図2の(a)に示すようにテストヘッド50に同軸ケーブル51の中心導体51Aを介して電気的に接続されている。そして、検査時にプローブ41から半導体ウエハWの電極パッドに検査用信号を印加すると同時にテストヘッド50からトッププレート21に検査用信号を印加し、C−V法等により半導体ウエハWの所定の容量測定等を行う。トッププレート21を上述の厚さにすることで、トッププレート21の表面抵抗が小さくなるため、テストヘッド50から印加された検査用信号が安定し、信頼性の高い検査を行うことができる。
【0025】
また、トッププレート21の上面にはウエハ吸着用の第1の溝21Cが同心円状に複数形成され、これらの溝21Cは互いに径方向に形成されたウエハ吸着用の第2の溝(図示せず)によって互いに連結されている。各第1の溝21Cの底部にはトッププレート21の内部に形成された排気用の通路(図示せず)が複数箇所で開口し、排気用の通路に接続された排気装置によってトッププレート21上の半導体ウエハWを真空吸着し、半導体ウエハWをトッププレート21上に固定するようにしてある。
【0026】
絶縁皮膜22は、電気絶縁材料によって形成されている。電気絶縁材料は、検査時にトッププレート21と冷却ジャケット23の間を電気的に確実に絶縁できる材料であれば特に制限されないが、高絶縁性、高耐電圧性及び高耐熱性の材料が好ましい。このような電気絶縁材料としては、例えば非金属の無機材料が好ましく、中でもアルミナ、イットリア等のセラミックスが好ましい。例えばアルミナ、イットリアであれば、それぞれの純度が99.99重量%以上のものが好ましい。例えば従来技術では、純度99.5重量%のアルミナ焼結体で実現していた耐電圧性を、純度99.99重量%以上のアルミナの溶射皮膜で実現することができる。
【0027】
絶縁皮膜22は、トッププレート21の底面21A及び側面21Bで同一の厚さに形成されていることが好ましい。絶縁皮膜22がトッププレート21の側面21Bの上端近傍まで形成されていることにより、トッププレート21の無垢の側面を導電性材料からなる冷却ジャケット23から遠ざけて、トッププレート21に高電圧が印加された場合でもトッププレート21から冷却ジャケット23側へのリーク電流を確実に防止し、トッププレート21の電位を安定化することができる。この絶縁皮膜22は、種々の手法によって形成することができるが、例えば溶射技術によって形成されていることが好ましい。絶縁皮膜22がアルミナ溶射によって形成されている場合には、アルミナ溶射膜のマイクロクラックへシリカ(SiO)を含浸させて、絶縁皮膜22の表面での吸湿性を抑制することが好ましい。絶縁皮膜22は、溶射技術以外にも、塗布や蒸着によっても形成することができる。
【0028】
絶縁皮膜22の厚さは、検査時にトッププレート21と冷却ジャケット23間の電気的に確実に絶縁できる厚さであれば特に制限されないが、例えば0.4mm以上で1.0mm未満の範囲が好ましい。0.4mm未満になると耐電圧性が低下し、1.0mmを超えると必要以上の耐電圧のオーバースペックになってコスト的に高くなる。本実施形態では、絶縁皮膜22は、純度99.99重量%以上のアルミナで例えば0.7mmの厚さに形成されている。この場合には、実験により、250℃で12KVでも絶縁破壊がないことを確認されている。
【0029】
また、図2の(b)に示すように絶縁皮膜22にはトッププレート21との中間層22Aが形成されている。この中間層22Aは、トッププレート21の熱膨張係数と絶縁皮膜22の熱膨張係数の間の熱膨張係数を有する無機材料であり、高温時の熱膨張による絶縁皮膜22の割れを防止している。中間層22Aの無機材料としては、例えばニッケルとアルミニウムを主成分とする合金等の金属材料が好ましい。中間層22Aの厚さは、60〜90μmの範囲が好ましい。中間層22Aの厚さがこの範囲を逸脱するとトッププレート21と絶縁皮膜22との間の熱膨張差を緩和する機能が低下する。本実施形態では、中間層22Aは、例えば60μmの厚さに形成されている。
【0030】
冷却ジャケット23は、上述のように導電性材料によってトッププレート21より小径に形成されている。導電性材料は、導電性のある金属であれば特に制限されない。冷却ジャケット23の導電性材料としては、例えば無酸素銅が好ましい。この冷却ジャケット23には同軸ケーブル51の外部導体が接続され、冷却ジャケット23は、トッププレート21と同じ検査用信号が印加され、トッププレート21から電流がリークしないようにしてある。冷却ジャケット23の厚さは、半導体ウエハWの大きさによって好ましい範囲が異なる。本実施形態では、冷却ジャケット23は、10.0mmの厚さに形成されている。
【0031】
冷却ジャケット23の下面には冷媒の流路23Aとなる溝が形成され、冷却ジャケット23の下面には冷却ジャケット23と同一径に形成された面ヒータ24が被覆されている。面ヒータ24によって被覆された冷却ジャケット23の溝が冷媒の流路23として形成され、冷媒タンク(図示せず)の冷媒が供給部23Bを介して冷却ジャケット23の流路23A内を循環してトッププレート21を冷却し、半導体ウエハWの低温検査をするようにしてある。また、面ヒータ24がトッププレート21を加熱し、半導体ウエハWの高温検査を行うようにしてある。
【0032】
冷却ジャケット23と面ヒータ24の外周には導電性材料からなるリング部材25が配置されている。このリング25は内周面が冷却ジャケット23及び面ヒータ24の外周面と密着し、その外径がトッププレート21の外径と同一径に形成されている。面ヒータ24の下方には隙間を介して絶縁体25が配置されている。絶縁体25の外周縁部にはリング状突起25Aが形成され、このリング状突起25Aの上面がリング部材26の下面と密着し、面ヒータ24と絶縁体25の上面との間に所定の隙間を形成している。この絶縁体25は面ヒータ24側と熱的に遮断すると共に電気的に遮断している。絶縁体25は、従来と同様に例えばアルミナ等のセラミックスによって形成されている。本実施形態では、リング状突起25Aは、例えば8.54mmの高さに形成され、絶縁体25は、例えば10.9mmの厚さに形成されている。
【0033】
また、図2の(c)に示すように上記の各部材には貫通孔20Aが複数箇所(例えば、3箇所)に周方向等間隔を空けて形成され、これらの貫通孔20Aにピン27が昇降可能に配置されている。これらのピン27は、トッププレート21の載置面において半導体ウエハWを昇降させ、ローダ室との間で半導体ウエハWの受け渡しを行うようにしている。尚、28はブッシュである。
【0034】
次に、動作について説明する。プローバ室10内で載置台20がローダ室からプリアライメントされた半導体ウエハWを受け取ると、ピン27が下降してウエハWをトッププレート21上に載置すると、排気装置が駆動して半導体ウエハWをトッププレート21の載置面に吸着固定する。次いで、XYテーブル30が作動して載置台20がX方向及びY方向へ移動し、アライメント機構を介して半導体ウエハWとプローブカード40のプローブ41とのアライメントを行う。
【0035】
然る後、載置台20がプローブ41の真下へ移動し、昇降機構を介してトッププレート21等が一体的に上昇し、半導体ウエハWの電極パッドとプローブ41とが接触し、更にトッププレート21がオーバードライブされて半導体ウエハWの電極パッドとプローブ41とが電気的に接触する。この状態でテストヘッド50からプローブ41を介して半導体ウエハWへ高周波信号を印加すると共にトッププレート21へ検査用信号を印加する。
【0036】
この時、トッププレート21は、無酸素銅によって所定の厚さに形成されて表面抵抗が低いため、トッププレート21には所望の検査用信号が印加され、0Vの電圧であっても電位が安定し、C−V法等による容量測定等の電気的特性検査を確実且つ安定的に行うことができる。また、トッププレート21の側面21Bは上端近傍まで絶縁皮膜22によって被覆されているため、トッププレート21に高電圧を印加してもトッププレート21から冷却ジャケット23へのリーク電流を防止することができ、安定した検査を行うことができ、信頼性を高めることができる。また、絶縁皮膜22は極めて耐電圧性が高いため、トッププレート21に高電圧の検査用信号を印加しても絶縁皮膜22が絶縁破壊することもない。
【0037】
半導体ウエハWの検査を終了した後、載置台20はローダ室側へ移動し、検査済みの半導体ウエハをローダ室へ引き渡すと共に次の半導体ウエハを受け取って上述の検査を繰り返す。
【0038】
以上説明したように本実施形態によれば、半導体ウエハWの載置面を有する無酸素銅からなるトッププレート21と、このトッププレート21の下面21A及び側面21Bの下部を連続的に被覆するアルミナからなる絶縁皮膜22と、この絶縁皮膜22と接触するように配置され且つ無酸素銅からなる冷却ジャケット23と、冷却ジャケット23の下面に密着する面ヒータ24と、を備え、アルミナは、純度が99.99重量%以上で、トッププレート21の下面21Aでは0.4mm以上で1.0mm未満の厚さに形成されているため、トッププレート21の表面抵抗が低く、トッププレート21に低電圧から高電圧まで如何なるバイアス電圧を印加しても安定した電位を得ることができ、しかも250℃の高温で12KVの高い直流電圧でも絶縁破壊しない高い耐電圧性を得ることができ、高温検査であってもトッププレート21からのリーク電流を確実に防止して、安定した信頼性の高いC−V法等による容量測定等の電気的特性検査を高い信頼性を持って行うことができる。
【0039】
この際、絶縁皮膜22は極めて高い絶縁性を有し、しかもトッププレート21の下面21Aは勿論のこと側面21Bの上端近傍まで被覆しているため、高電圧を印加しても絶縁破壊することがなく、しかもトッププレート21から冷却ジャケット23へのリーク電流を防止することができ、高電圧を印加するパワーデバイス等であっても信頼性の高い検査を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、絶縁皮膜22が大気プラズマ溶射によって形成されているため、緻密な微細構造を持つ皮膜として形成され、更に、絶縁皮膜22にはシリカが含浸処理されているため、電気的絶縁性を更に高めることができる。また、トッププレート21と絶縁皮膜22の間に、これら両者21、22と中間の熱膨張係数を有する中間層22Aが介在するため、高温検査による大きな温度変化があっても絶縁皮膜22にひび割れを生じる虞がない。更に、中間層22Aは、ニッケルとアルミニウムを主成分とする合金によって60〜90μmの厚さに形成されているため、絶縁皮膜22のひび割れをより確実に防止することができる。
【実施例】
【0041】
実施例1
本実施例では、大気プラズマ溶射法を用いて表1〜表4に示すように絶縁皮膜及び中間層(ニッケル・アルミニウム合金:熱膨張係数が11×10−6/℃)の目標膜厚をそれぞれ変化させて下面及び側面の下部に連続的に形成して、トッププレートを模したNo.1〜12の試料及びNo.21〜32の試料をテストピースとして作製した。但し、表1、表2の試料No.1〜12は中間層が60μmの場合を示し、表3、表4の試料No.21〜32は中間層が90μmの場合を示している。絶縁皮膜は目標膜厚を設定し、各目標膜厚について3つずつ試料を作製した。
【0042】
テストピース(無酸素銅:熱膨張係数が18×10−6/℃)に絶縁皮膜を形成する際には、予め準備されたテストピース(外径:30.5mm、厚さ:14.8mm)の底面及び側面の下部に連続的にニッケル及びアルミニウムを主成分とする合金粉末を用いて従来公知の大気プラズマ溶射を行って中間層を形成した。次いで、90%以上が10〜45μmの粒度範囲にあり、その中心粒径が14〜26μmのアルミナ粉末(純度:99.99重量%)を用いて大気プラズマ溶射を行って中間層の表面にアルミナ溶射膜(アルミナの熱膨張係数が5.9×10−6/℃)を形成した後、アルミナ溶射膜のマイクロクラックに対してシリカ(SiO)による含浸処理を施して吸湿性を低下させた。テストピース、中間層及び絶縁皮膜は、それぞれ18×10−6/℃、11×10−6/℃及び5.9×10−6/℃の熱膨張係数を有している。従って、中間層は、テストピースと絶縁皮膜の中間の熱膨張係数である。
【0043】
そして、No.1〜12の試料を表1に示す各温度までそれぞれ加熱した後、室温に戻してぞれぞれの絶縁皮膜の電気的絶縁性の評価を行い、その結果を表1に示した。また、試料No.1〜12を表2に示す各温度まで加熱し、それぞれの温度を維持したまま絶縁皮膜の電気的絶縁性の評価を行い、その結果を表2に示した。また、試料No.21〜32についても表1、表2に示す条件と同一要領で試験を行い、その結果を表3及び表4に示した。表1〜表4に示す結果から以下のことが判った。尚、以下の各表において、○印は耐電圧力が良好な結果を示している。
【0044】
表1、表2に示す試料No.1〜12(中間層:60μm)の試験結果によれば、絶縁皮膜が400μmの試料No.1〜3では200℃、250℃に加熱した後、常温下で12KVの直流電圧を印加して電気的絶縁性の試験を行っても絶縁破壊を生じ難いが、それ以上に加熱した後同様の試験を行うと絶縁破壊を起こした。
【0045】
これに対して、絶縁皮膜が700μmの試料No.4〜6、1000μmの試料No.7〜9、1500μmの試料No.10〜12の場合には表1、表2の結果が示すように、いずれも上記温度に加熱後室温に戻して同様に試験を行っても絶縁破壊することがなく、また、200℃、250℃に加熱し、その温度を維持したまま同様の試験を行うと、700μm、1500μmの場合には絶縁破壊をすることがなかった。しかし、1000μmの場合には上記二者より電気的絶縁性が低下し、200℃を維持したままでは11.9KV、250℃を維持したままでは10.3KVで絶縁破壊を起こした。また、これらの試料の場合には200℃、250℃に加熱し、それぞれの温度を維持したまま同様に試験を行うと全て絶縁破壊した。
【0046】
従って、絶縁皮膜は700μm程度が最も好ましく、400μmより厚く1000μm未満の範囲で条件によっては電気的絶縁性を確保できる。絶縁皮膜が400μmでは高温を維持すると絶縁破壊する虞があるため、400μm以下の膜厚は好ましくない。1000μm以上になると電気的絶縁性が良いが、コストが上昇し好ましくない。また、ニッケル・アルミニウム合金の中間層を60μmに設定することで、トッププレートと絶縁皮膜の熱膨張率の差を中間層によって緩和することができ、絶縁皮膜の性能を十分に活かせることができる。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
また、表3、表4に示す試料No.21〜32の試験結果によれば、絶縁皮膜が400μmの試料No.21〜23では常温下では12KVの直流電圧に対する絶縁性を有するものの、200℃、250℃加熱後の常温下での同様の絶縁性試験、及び200℃、250℃に維持したままの絶縁性試験のいずれも場合にも絶縁破壊を起こした。
【0050】
これに対して、絶縁皮膜が700μmの試料No.24〜26、1000μmの試料No.27〜29、1500μmの試料No.30〜32の場合には表3、表4の結果が示すように、いずれも上記温度に加熱後室温に戻して同様に試験を行っても絶縁破壊することがなかった。また、200℃、250℃に加熱し、その温度を維持したまま同様の試験を行っても700μm、1000μm、1500μmのいずれの場合にも10KVまでは絶縁破壊をすることがなかった。つまり、試料No.21〜32も、試料No.1〜12に準じた結果が得られた。
【0051】
従って、中間層がニッケル・アルミニウム合金で60〜90μmの膜厚範囲の場合には、トッププレートと絶縁皮膜間の熱膨張率の差を中間層によって緩和して常温と高温間で温度サイクルがあっても絶縁皮膜にひび割れを起こすことなく、絶縁皮膜本来の高い電気的絶縁性を保持し、絶縁破壊することなく高温で高電圧を印加する試験を行えることが判った。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
実施例2
本実施例では、実施例1で用いられた純度:99.99重量%のアルミナ粉末に代えてやや純度の低いアルミナ粉末(純度:99.9重量%)を用いて絶縁皮膜を形成した以外は試料No.1〜12と同一要領で、表5及び表6に示すNo.41〜52の試料を作製し、実施例1と同様の試験を行い、その結果を表5及び表6に示した。
【0055】
表5、表6に示す試料No.41〜52の試験結果によれば、絶縁皮膜が400μmの試料No.41〜43はいずれも常温下でも12KVで絶縁破壊を起こした。これに対して、絶縁皮膜が700μmから1500μmの試料No.44〜52の場合には、常温下での12KVの直流電圧の印加による電気的絶縁性試験は勿論のこと、200℃、250℃及び300℃に加熱した後、常温に戻し、常温下で12KVの直流電圧の印加による電気的絶縁性試験でも絶縁破壊をしなかった。次いで、これらの試料を200℃に加熱し、その温度を維持したまま同様の電気的絶縁性試験を行ったところ、700μmの試料No.44は6.52KV、1000μmの試料No.47は6.93KV、1500μmの試料No.60、62はいずれも6.58KV、8.62KVで絶縁破壊を起こした。700μmの試料No.45について250℃に加熱し、その温度で同様の電気的絶縁性試験を行っても5.92KVで絶縁破壊を起こした。
【0056】
従って、アルミナの純度が99.99重量%未満に低下すると、ニッケル・アルミニウム合金からなる中間層を最適の膜厚範囲内に設定してトッププレートと絶縁皮膜の熱膨張差を緩和し、常温と高温との間の温度サイクルによる絶縁皮膜のひび割れを防止したとしても、絶縁皮膜自体の電気的絶縁性が低く、高温下で高電圧を印加する試験を行えないことが判った。
【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
実施例3
本実施例では、実施例1で用いられた60μmのNi−Alに代えてアルミニウム(熱膨張係数:23.5×10−6/℃)を用いて50μm厚の中間層を形成した以外は、実施例1と同一要領で表7及び表8に示すNo.61〜72の試料を作製し、実施例1と同様の試験を行い、その結果を表7及び表8に示した。
【0060】
表7、表8に示す試料No.61〜72の試験結果によれば、絶縁皮膜が400μmの試料No. 61〜62はいずれも常温下でも12KVで絶縁破壊を起こした。これに対して、絶縁皮膜が700μmから1500μmの試料No.64〜72の場合には、常温下での12KVの直流電圧の印加による電気的絶縁性試験は勿論のこと、200℃、250℃及び300℃に加熱した後、常温下で12KVの直流電圧の印加による電気的絶縁性試験でも絶縁破壊をしなかった。また、これらの試料を200℃に加熱し、その温度を維持したまま同様の電気的絶縁性試験をおこなっても、いずれも絶縁破壊をしなかった。しかし、これらの試料を250℃に加熱し、その温度を維持したまま同様の試験を行うと700μmの試料No.64、65の場合にはいずれも11KV前後の電圧で絶縁破壊を起こし、1000μmの場合には絶縁破壊をしないものもあり、1500μmの場合にはいずれも絶縁破壊をしなかった。
【0061】
従って、無酸素銅より熱膨張係数が大きいアルミニウムを中間層とすると、トッププレートと絶縁皮膜との熱膨張率の差を十分に緩和することができず、250℃以上でその影響が顕在化し始め、700〜900μmの絶縁皮膜ではひび割れを起こして電気的絶縁性が低下し、高温での高電圧を印加する試験には好ましくなく、かろうじてコスト高になる1000μmの絶縁皮膜のみが電気的絶縁性を維持できる。つまり、コスト面を考えれば、アルミニウムは中間層として好ましくないことが判った。
【0062】
【表7】

【0063】
【表8】

【0064】
実施例4
本実施例では、実施例1で用いられた60μmのNi−Alに代えて150μmの銅(熱膨張率:16.6×10−6/℃)を用いて中間層を形成した以外は、実施例1に準じて表9及び表10に示す絶縁皮膜をトッププレートに施し、実施例1と同一要領で試験を行い、その結果を表9及び表10に示した。
【0065】
表9、表10に示すNo.81〜92の試料の試験結果によれば、絶縁皮膜が400μmのNo.81〜83の試料ではいずれも10KVで絶縁破壊を起こす確率が高く、200℃に加熱した後常温下で同様の試験を行ったところいずれも絶縁破壊を起こした。これに対して、絶縁皮膜が700μmから1500μmの試料No.85〜92の場合には、200℃、250℃及び300℃に加熱した後、常温下で12KVの直流電圧を印加して電気的絶縁性の試験を行っても絶縁破壊をしなかった。次いで、700〜900μmの試料を200℃に加熱し、その温度で同様の試験を行ったところ、1500μmのみが絶縁破壊を起こさなかった。250℃に加熱し、その温度で同様の試験を行ったところ、700〜900μmのいずれの試料も絶縁破壊を起こした。
【0066】
従って、中間層の熱膨張率がトッププレートの熱膨張率と絶縁皮膜の熱膨張率の間の値であっても、トッププレートの熱膨張率に近い場合には、温度サイクルがあっても常温下では絶縁皮膜の電気的絶縁性を保持できるものの、高温下では高電圧を印加する試験を行えないことが判った。
【0067】
【表9】

【0068】
【表10】

【0069】
また、上記各実施例の各試料において、300℃まで加熱し、その温度を維持したまま上述の絶縁性試験を行った結果、700〜1500μmのいずれも電気的絶縁性が極端に低下し、中間層を設けた場合であっても300℃の高温下で高電圧を印加する試験には適しないことを確認している。
【0070】
尚、本発明は、上記実施形態に何等制限されるものではなく、必要に応じて適宜設計変更することができる。また、上記実施形態では、絶縁皮膜を溶射技術によって形成する場合について説明したが、その他、塗布や蒸着等の手段によっても形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、検査装置の載置台に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の載置台の一実施形態を適用した検査装置の構造の一例を部分的に破断して示す正面図である。
【図2】(a)〜(c)はいずれも図1に示す検査装置に適用された載置台を示す図で、(a)はその断面図、(b)は載置台の絶縁皮膜の一部を拡大して示す断面図、(c)は載置台の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】従来の載置台の一例を示す分解斜視図である。
【図4】(a)、(b)はそれぞれ図1に示す載置台を示す断面図で、(a)はその右半分の断面図、(b)はトッププレートの断面を拡大して示す断面図ある。
【符号の説明】
【0073】
20 載置台
21 トッププレート(上部板状体)
21A 下面
21B 側面
21C 吸着用の溝
22 絶縁皮膜
22A 中間層
23 冷却ジャケット(下部板状体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体を載置する載置台において、上記被検査体の載置面を有する導電性材料からなる上部板状体と、この上部板状体の上記載置面とは反対側の面及び側面の少なくとも下部を連続的に被覆する電気絶縁材料からなる絶縁皮膜と、この絶縁皮膜と接触するように配置され且つ導電性材料からなる下部板状体と、を備え、上記電気絶縁性材料は、純度が99.99重量%以上のアルミナで、上記上部板状体の下面では0.4mm以上で1.0mm未満の厚さに形成されていることを特徴とする載置台。
【請求項2】
上記絶縁皮膜は、絶縁性無機材料によって含浸処理されていることを特徴とする請求項1に記載の載置台。
【請求項3】
上記絶縁性皮膜は、溶射により形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の載置台。
【請求項4】
上記溶射は、大気プラズマ溶射であることを特徴とする請求項3に記載の載置台。
【請求項5】
上記上部板状体と上記絶縁皮膜の間に、これら両者の熱膨張係数の間にある熱膨張係数を有する中間層が介在することを特徴とする請求項1〜請求項4に記載の載置台。
【請求項6】
上記中間層は、ニッケルとアルミニウムを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項5に記載の載置台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−80673(P2010−80673A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247296(P2008−247296)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000109875)トーカロ株式会社 (127)
【Fターム(参考)】