説明

輪郭強調装置

【課題】ざらつきや黒つぶれを防止しつつ、輝度信号のエッジ強調を行う。
【解決手段】ノイズ除去部33は、3×3フィルタを用いて、入力輝度信号Y0からノイズを除去したノイズ除去信号F1を生成する。エッジ抽出部35は、5×5フィルタを用いて、入力輝度信号Y0のエッジを抽出し、各画素の広範囲エッジ成分E2を得る。ゲイン調整部45において第1調整部38は、入力輝度信号Y0の輝度値に応じて、各画素の初期ゲインK1を設定する。第2調整部39は、各画素の広範囲エッジ成分E2の値に応じて、初期ゲインK1を調整し、修正ゲインK2を得る。乗算器37は、広範囲エッジ成分E2に修正ゲインK2を乗じ、調整済エッジ成分F2を得る。加算器36は、ノイズ除去信号F1と調整済エッジ成分F2とを加算して各画素の処理済輝度信号Y’を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡スコープ等の撮像装置で得られた画像に対して輪郭強調を行うための輪郭強調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置において撮像素子で得られた画像信号は、一般的に、画像の特徴を強調するために輪郭強調が施された上でモニタ等に表示される。輪郭強調は、例えば周辺画素と輝度差が相対的に大きい画素の輝度信号を相対的に大きく強調し、これにより撮影対象物の輪郭を明瞭に表示する。
【0003】
内視鏡装置では、照明光を殆ど反射しない管腔内部や、照明光を多く反射する水が溜まった部分が撮影されるため、例えば1つの撮影画像上に暗部、高輝度部、及び低輝度部が表示されることがある。これら暗部、高輝度部、及び低輝度部においては、輪郭強調によってノイズが増幅され、画面上にざらつきが表わされることがある。また、高輝度部は輪郭強調によって、その周辺部に黒つぶれが発生することがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、ノイズ増幅を抑えつつ、輪郭強調を行うための輪郭強調装置が開示される。この輪郭強調装置では、比較的広い画素領域(例えば、5×5)が参照されるエッジ強調によって、輝度信号からエッジ成分が抽出されるとともに、比較的狭い画素領域(3×3)が参照されて、輝度信号からノイズが除去されてノイズ除去信号が得られる。そして、これらエッジ成分及びノイズ除去信号が加算されて、処理済輝度信号が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−288942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のようにエッジ成分にノイズ除去信号を加算しただけでは、撮影画像上に発生するざらつきや黒つぶれを十分に防止することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、内視鏡スコープ等で得られた撮影画像で発生するざらつきや黒つぶれ等を、有効に防止することが可能な輪郭強調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る輪郭強調装置は、注目画素、及び微小領域において注目画素の周辺に位置する第1の周辺画素の輝度信号を用いて、注目画素のノイズ除去信号を生成するノイズ除去手段と、注目画素、及び微小領域より広い広範囲領域において注目画素の周辺に位置する第2の周辺画素の輝度信号を用いて注目画素の広範囲エッジ成分を検出するエッジ抽出手段と、広範囲エッジ成分のゲインを調整するゲイン調整手段と、ノイズ除去信号とゲイン調整された広範囲エッジ成分とを加算して注目画素の処理済輝度信号を生成する加算手段とを備え、ゲイン調整手段は、相対的に中輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインを相対的に大きく設定し、相対的に低輝度又は高輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインを相対的に小さく設定することを特徴とする。
【0009】
相対的に低輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインは、注目画素の輝度値が高いほど大きく設定されるとともに、相対的に高輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインは、注目画素の輝度値が高いほど小さく設定されることが好ましい。
【0010】
また、ゲイン調整手段によって相対的に低輝度であると定められる輝度値の範囲は、相対的に高輝度であると定められる輝度値の範囲よりも広いほうが良い。さらに、ゲイン調整手段によって相対的に中輝度であると定められる輝度値の範囲は、相対的に低輝度であると定められる輝度値の範囲よりも広いほうが良い。
【0011】
ゲイン調整手段は、相対的に低輝度であって、かつ輝度値が所定値より低い注目画素の広範囲エッジ成分のゲインを0に設定することが好ましい。一方、相対的に中輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインを1に設定するとともに、相対的に低輝度又は高輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインを1未満に設定する。
【0012】
ゲイン調整手段は、注目画素が、その注目画素の周辺に位置する周辺画素の輝度よりも輝度が低い場合、例えば注目画素のゲインに1未満の係数を乗じることにより、注目画素のゲインを小さくするゲイン調整も行うことが好ましい。この場合、注目画素が周辺画素の輝度より低いか否かは、広範囲エッジ成分を用いて判断することが好ましい。すなわちゲイン調整手段は、上記広範囲エッジ成分が0未満である場合に、その注目画素のゲインを小さくすることが好ましい。
【0013】
本発明に係る別の態様の輪郭強調装置は、注目画素、及び微小領域において注目画素の周辺に位置する第1の周辺画素の輝度信号を用いて、注目画素のノイズ除去信号を生成するノイズ除去手段と、注目画素、及び微小領域より広い広範囲領域において注目画素の周辺に位置する第2の周辺画素の輝度信号を用いて注目画素の広範囲エッジ成分を検出するエッジ抽出手段と、広範囲エッジ成分のゲイン調整を行うゲイン調整手段と、ノイズ除去信号とゲイン調整された広範囲エッジ成分とを加算して注目画素の処理済輝度信号を生成する加算手段とを備え、上記ゲイン調整手段は、注目画素の周辺に位置する周辺画素の輝度よりも輝度が低い注目画素のゲインを相対的に小さくするとともに、周辺画素の輝度よりも輝度が高い注目画素のゲインを相対的に大きくすることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る輪郭強調方法は、注目画素、及び微小領域において注目画素の周辺に位置する第1の周辺画素の輝度信号を用いて、注目画素のノイズ除去信号を生成するノイズ除去ステップと、注目画素、及び微小領域より広い広範囲領域において注目画素の周辺に位置する第2の周辺画素の輝度信号を用いて注目画素の広範囲エッジ成分を検出するエッジ抽出ステップと、広範囲エッジ成分のゲインを調整するゲイン調整ステップと、ノイズ除去信号とゲイン調整された広範囲エッジ成分とを加算して注目画素の処理済輝度信号を生成する加算ステップとを備え、ゲイン調整ステップでは、相対的に中輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインが相対的に大きく設定され、相対的に低輝度又は高輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインが相対的に小さく設定されることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る別の態様の輪郭強調方法は、注目画素、及び微小領域において注目画素の周辺に位置する第1の周辺画素の輝度信号を用いて、注目画素のノイズ除去信号を生成するノイズ除去ステップと、注目画素、及び微小領域より広い広範囲領域において注目画素の周辺に位置する第2の周辺画素の輝度信号を用いて注目画素の広範囲エッジ成分を検出するエッジ抽出ステップと、広範囲エッジ成分のゲイン調整を行うゲイン調整ステップと、ノイズ除去信号とゲイン調整された広範囲エッジ成分とを加算して注目画素の処理済輝度信号を生成する加算ステップとを備え、ゲイン調整ステップでは、注目画素の周辺に位置する周辺画素の輝度よりも輝度が低い注目画素のゲインが相対的に小さくされるとともに、周辺画素の輝度よりも輝度が高い注目画素のゲインが相対的に大きくされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、輝度信号のノイズを除去しつつ、各注目画素の輝度値に応じてエッジ成分のゲインを調整することにより、撮影画像上のざらつきや黒つぶれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における内視鏡システムのブロック図である。
【図2】輪郭強調ブロックをさらに詳細に示すブロック図である。
【図3】微小領域における画素を示すための図である。
【図4】第1フィルタのオペレータを示すための図である。
【図5】広範囲領域における画素を示すための図である。
【図6】第2フィルタのオペレータを示すための図である。
【図7】ルックアップテーブルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態である画像輪郭強調装置を備えた内視鏡システムを示す。内視鏡システムは、スコープ10およびプロセッサ20から構成される。スコープ10は被写体から画像信号を得るための撮像装置であり、プロセッサ20はスコープ10によって得られた画像信号を処理して観察画像として出力するための画像処理装置である。
【0019】
スコープ10は、イメージセンサ11を有し、イメージセンサ11では被写体からの光によって画像が結像され、結像画像からアナログ画像信号が生成される。イメージセンサ11は、タイミングジェネレータ16によって画像信号の読込・読出タイミングが制御される。
【0020】
アナログ画像信号は、AFE(アナログフロントエンド)12でデジタル信号に変換され、次いで色補間ブロック13で色補間が行われる。色補間が行われたアナログ画像信号は、マトリックス変換ブロック14でマトリックス変換が施され、RGB信号としてYC変換ブロック15に入力される。RGB信号は、YC変換ブロック15において、輝度信号Yと色差信号Cb、Crに変換される。輝度信号Y及び色差信号Cb、Crは、プロセッサ20に送られる。
【0021】
プロセッサ20はCPU21を有し、CPU21によってプロセッサ20内の各ブロックの動作が制御される。プロセッサ20に送られた輝度信号Y及び色差信号Cb、Crは、ノイズ除去ブロック22でLPF(ローパスフィルタ)等によって色ノイズの除去が施された後、輝度信号Yが輪郭強調ブロック23で後述するエッジ強調が施される。色差信号Cb、Crは、輪郭強調ブロック23で輪郭強調は施されない。
【0022】
色差信号Cb、Cr、及びエッジ強調が施された輝度信号Yは、RGB変換ブロック24でRGB信号に変換される。RGB信号は、スケール調整ブロック25で画像サイズが調整された後、カラーマネージメントブロック26で出力機器に応じた色調整が行われ、モニタ27又はプリンタ28に観察画像として出力される。
【0023】
図2は、輪郭強調ブロック23の詳細を示すブロック図である。輪郭強調ブロック23は、ノイズ除去部33、エッジ抽出部35、ゲイン調整部45、及び加算器36を備える。なお、以下の説明においては、輪郭強調ブロック23に入力された輝度信号Yは、入力輝度信号Y0とすると共に、輪郭強調ブロック23においてエッジ強調が施された輝度信号Yを処理済輝度信号Y’として説明する。
【0024】
ノイズ除去部33は、第1ラインメモリブロック41、第1フィルタ31、及び減算器32を備える。入力輝度信号Y0は、ノイズ除去部33において、画素毎に順次第1ラインメモリブロック41及び減算器32に入力される。第1ラインメモリブロック41は、3×3領域の入力輝度信号Y0が第1フィルタ31に同時に入力可能なように、少なくとも3ライン分の入力輝度信号Y0を一時的に格納する。
【0025】
第1フィルタ31には、図3に示すように、第1ラインメモリブロック41から各画素(注目画素P0)を中心とした3×3領域(微小領域)R1内の入力輝度信号Y0が順次入力される。すなわち、第1フィルタ31には、各注目画素P0、及び微小領域R1においてその注目画素P0の周辺に位置する周辺画素の入力輝度信号Y0が、同じタイミングで第1フィルタ31に入力される。
【0026】
第1フィルタ31は、入力された注目画素P0及びその周辺画素に関する入力輝度信号Y0を用いて、エッジ強調を行い、注目画素P0のエッジ成分(微小範囲エッジ成分E1)を抽出する。第1フィルタ31は、図3、4に示すように、入力された周辺画素のうち、注目画素P0の垂直方向及び鉛直方向に位置する第1特定周辺画素P1の入力輝度信号Y0を用いてエッジ強調を行うラプラシアンフィルタであって、2次微分によって注目画素P0の微小範囲エッジ成分E1を検出する。
【0027】
微小範囲エッジ成分E1は減算器32に入力され、減算器32では、各注目画素P0について、入力輝度信号Y0から微小範囲エッジ成分E1が減ぜられて、各注目画素P0のノイズ除去信号F1が生成される。
【0028】
エッジ抽出部35は、第2ラインメモリブロック42と第2のフィルタ34を備える。エッジ抽出部35に入力された入力輝度信号Y0は、画素毎に順次、第2ラインメモリブロック42に入力され、第2ラインメモリブロック42に一時的に格納される。第2ラインメモリブロック42は、5×5領域の入力輝度信号Y0が第2フィルタ34に同時に入力可能なように、少なくとも5ライン分の入力輝度信号Y0を格納する。
【0029】
第2フィルタ34には、図5に示すように、第2ラインメモリブロック42から各画素(注目画素P0)を中心とした5×5領域(広範囲領域)R2内の入力輝度信号Y0が順次入力される。すなわち、第2フィルタ34には、各注目画素P0、及び広範囲領域R2においてその注目画素P0の周辺に位置する周辺画素の入力輝度信号Y0が、同じタイミングで第2フィルタ34に入力される。
【0030】
第2フィルタ34は、入力された注目画素P0及びその周辺画素の入力輝度信号Y0を用いて、エッジ強調を行い、注目画素P0のエッジ成分(広範囲エッジ成分E2)を抽出する。本実施形態において第2フィルタ34は、図6に示す5×5ラプラシアンフィルタであって、2次微分によって広範囲エッジ成分E2を検出する。このように、エッジ強調部35では、微小領域R1より広い広範囲領域R2において注目画素P0の周辺に位置する第2の周辺画素が用いられて、エッジ強調が行われる。
【0031】
ここで、第2フィルタ34は、広範囲領域R2内の周辺画素のうち、特定の画素(第2特定周辺画素P2)の入力輝度信号Y0を用いてエッジ強調を行うものである。第2特定周辺画素P2は、図5、6から明らかなように、注目画素P0に対して垂直方向及び水平方向に位置する画素、及び注目画素P0を中心とする3×3領域において注目画素P0の斜め四方に位置する画素である。なお、第2フィルタ34は、図6から明らかなように、他の周辺画素P2よりも、注目画素P0に近接する周辺画素P2(3×3領域内で垂直方向及び水平方向に位置する画素)の輝度値を、より強く参照するものである。
【0032】
ゲイン調整部45は、第1及び第2調整部38、39、乗算器37、及びルックアップテーブル(以下、LUTとする)を格納するメモリ40を備え、広範囲エッジ成分E2のゲイン調整を行う。
【0033】
図7は、LUTを示すグラフであって、横軸を入力輝度信号Y0の輝度値、縦軸を初期ゲインK1としたものである。LUTは、図7に示すように、各輝度値と、その各輝度値に対応した初期ゲインK1の値の関係を示すものである。なお、図7では、入力輝度信号Y0が10ビットで、初期ゲインK1が0〜1で示される。
【0034】
図2に示すように第1調整部38には、各注目画素の入力輝度信号Y0が順次入力される。第1調整部38は、その入力輝度信号Y0の輝度値に対応した値をLUTから読み出し、その値を各注目画素の初期ゲインK1として第2調整部39に出力する。
【0035】
図7に示すようにLUTでは、輝度値1〜20では初期ゲインK1が0に定められる。輝度値が20を超えると、輝度値が大きくなる毎に初期ゲインK1は0より漸次大きく定められ、輝度値200で1まで大きくなり、輝度値200〜1000では、初期ゲインK1は1に維持される。輝度値が1000を超えると、輝度値が大きくなる毎に初期ゲインK1は1から漸次小さくなり、輝度値(最大値)1024で初期ゲインK1は約0.6となる。
【0036】
したがって、第1調整部38では、輝度値が199以下であって、注目画素P0が相対的に低輝度と判断された場合、その注目画素P0の初期ゲインK1は0以上1未満に設定される。このとき、注目画素P0がさらに輝度値20以下となって実質的に暗部とみなされる場合には、初期ゲインK1は0に設定される。また、注目画素P0の輝度値が20より大きい場合には、輝度値が高いほど初期ゲインK1は大きい値に設定される。
【0037】
一方、輝度値が200〜1000であって、注目画素P0が相対的に中輝度と判断された場合、その注目画素P0の初期ゲインK1は1に設定される。さらに、輝度値が1001以上であって、注目画素P0が相対的に高輝度と判断された場合、その注目画素P0の初期ゲインK1は1未満に設定される。このとき、初期ゲインK1は注目画素の輝度値が高いほど小さい値に設定される。
【0038】
なお、本実施形態のLUTでは、低輝度であると定められる範囲(低輝度範囲)は1〜199であって、高輝度であると定められる範囲(高輝度範囲:1001〜1024)よりも広い。さらに、中輝度であると定められる範囲は200〜1000であって、低輝度範囲よりも広い。そして、輝度値21以上の低輝度範囲(21〜199)における、輝度値の増加量に対する初期ゲインK1の増加量(増加率)は、高輝度範囲における輝度値の増加量に対する初期ゲインの減少量(減少率)よりも小さくなる。
【0039】
第2調整部39には、各注目画素P0についての初期ゲインK1及び広範囲エッジ成分E2が順次入力される。第2調整部39では、各注目画素P0の広範囲エッジ成分E2の値に応じて、初期ゲインK1がさらに調整され、修正ゲインK2として出力される。
【0040】
具体的には、広範囲エッジ成分E2が0未満である注目画素に関しては、初期ゲインK1に係数1/2が乗じられたものが修正ゲインK2として出力される。一方、広範囲エッジ成分が0以上である注目画素については、初期ゲインK1は調整されず、初期ゲインK1がそのまま修正ゲインK2として出力される。
【0041】
広範囲エッジ成分E2は、注目画素P0が、その周辺画素(本実施形態では、第2特定周辺画素P2)よりも輝度値が大きいかどうかを表すパラメータであって、エッジ成分E2が0未満である場合、注目画素P0の輝度は、周辺画素の輝度よりも小さいこととなる。一方、エッジ成分E2が0以上の場合、注目画素P0の輝度は周辺画素の輝度以上である。すなわち、第2調整部39では、注目画素P0の輝度が周辺画素より低い場合、その注目画素P0のゲインは相対的に小さくされるとともに、注目画素P0の輝度が周辺画素より高い場合、その注目画素P0のゲインは相対的に大きくされることになる。
【0042】
なお、広範囲エッジ成分E2は、上記したように第2特定周辺画素P2のうち、注目画素に近接する画素を強く参照し、近接しない画素を弱く参照したものである。そのため、広範囲エッジ成分E2は、第2特定周辺画素P2の輝度値の加重平均値が、注目画素P0の輝度値よりも大きいか否かを示すものである。
【0043】
修正ゲインK2は、同じ注目画素P0に関する広範囲エッジ成分E2と同じタイミングで乗算器37に入力される。乗算器37では、各注目画素P0について、広範囲エッジ成分E2に修正ゲインK2が乗ぜられ、調整済エッジ成分F2(=E2×K2)が得られる。
【0044】
加算器36には、調整済エッジ成分F2とともに、同じ注目画素P0に関するノイズ除去信号F1が同じタイミングで入力され、これらが加算されて、各注目画素P0の処理済輝度信号Y’が生成される。なお、色差信号Cb、Crはエッジ強調ブロック23では処理が行われずに、RGB変換ブロック24(図1参照)に入力され、RGB変換ブロック24では処理済輝度信号Y’及び色差信号Cb、CrからRGB信号が生成される。
【0045】
以上のように本実施形態では、第1調整部38において、相対的に高輝度及び低輝度の画素についてのゲインが相対的に小さくされ、これら画素のエッジ強調が抑えられている。このようにエッジ強調が抑えられると、ノイズ除去部33で輝度信号Y0のノイズが除去されることと相俟って、高輝度部及び低輝度部におけるざらつきが抑制される。一方、撮影対象の特徴が表されることが多い中輝度画素については、ゲインが相対的に大きくされるため、撮影対象は十分な輪郭強調が施されて明確に表示されることになる。
【0046】
また、低輝度部におけるざらつきは、輝度値が小さくなるほど大きくなり、輝度値が所定値以下であって暗部とみなされる部分では特に大きくなる。したがって本実施形態では、低輝度部において輝度値が小さいほどエッジ強調が抑えられ、かつ暗部でエッジ強調が掛けられないことにより、低輝度部におけるざらつきが適切に抑えられる。
【0047】
また、ざらつきは、低輝度の場合、比較的広い輝度値範囲(例えば、0〜200程度)にわたって発生する一方、高輝度の場合には、飽和値(1024)付近でしか発生しない。そのため、本実施形態では、低輝度部において広い輝度範囲(輝度値:0〜200)にわたってエッジ強調が抑えられる一方、高輝度部では狭い輝度範囲(輝度値:1000〜1024)のみでエッジ強調が抑えられている。
【0048】
さらに第2調整部39では、注目画素P0が周辺画素よりも低輝度である場合、その注目画素P0のゲインは小さくされている。このようにゲインが小さくされると、ノイズ除去部33で輝度信号Y0のノイズが除去されていることと相俟って、高輝度部の周りで黒つぶれが発生しにくくなる。
【0049】
なお、撮影画像上に黒つぶれが発生しにくい場合等には、第2調整部39が省略され、第1調整部38から出力された初期ゲインK1が、広範囲エッジ成分E2に直接乗じられても良い。また、ざらつきが発生しにくい場合等には、第1調整部38が省略され、第2調整部39に入力される全てのゲインK1が1にされても良い。
【0050】
また、上記高輝度範囲、中輝度範囲、低輝度範囲の数値範囲は一例であって、他の数値範囲に定められても良い。さらに、ゲインK1、K2は、以上の説明では、0〜1に設定されるが、整数のパラメータとして設定されても良い。この場合ゲインK1、K2は、例えば8ピット(0〜256)のパラメータとして設定され、256で除したものが乗算器37に入力される。
【0051】
なお、本実施形態では、第1及び第2フィルタ31、34として、ラプラシアンフィルタ以外のフィルタが用いられても良く、例えば1次微分を行うためのフィルタが用いられても良い。また、ノイズ除去部で行われるノイズ除去としては、微小領域Rの輝度信号を用いてノイズを除去できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、微小領域R1の注目画素P0及び周辺画素P1の輝度信号の平均を求めることによってノイズが除去されても良い。またはその他のLPFが用いられても良い。
【符号の説明】
【0052】
33 ノイズ除去部
35 エッジ抽出部
38 第1調整部
39 第2調整部
45 ゲイン調整部
E1 微小範囲エッジ成分
E2 広範囲エッジ成分
F1 ノイズ除去信号
F2 処理済エッジ成分
P0 注目画素
P1 第1特定周辺画素
P2 第2特定周辺画素
R1 微小領域
R2 広範囲領域
Y0 入力輝度信号
Y’ 処理済輝度信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注目画素、及び微小領域において前記注目画素の周辺に位置する第1の周辺画素の輝度信号を用いて、前記注目画素のノイズ除去信号を生成するノイズ除去手段と、
前記注目画素、及び前記微小領域より広い広範囲領域において前記注目画素の周辺に位置する第2の周辺画素の輝度信号を用いて前記注目画素の広範囲エッジ成分を検出するエッジ抽出手段と、
前記広範囲エッジ成分のゲインを調整するゲイン調整手段と、
前記ノイズ除去信号とゲイン調整された広範囲エッジ成分とを加算して前記注目画素の処理済輝度信号を生成する加算手段とを備え、
前記ゲイン調整手段は、相対的に中輝度である注目画素の前記広範囲エッジ成分のゲインを相対的に大きく設定し、相対的に低輝度又は高輝度である注目画素の前記広範囲エッジ成分のゲインを相対的に小さく設定することを特徴とする輪郭強調装置。
【請求項2】
前記相対的に低輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインは、注目画素の輝度値が高いほど大きく設定されることを特徴とする請求項1に記載の輪郭強調装置。
【請求項3】
前記相対的に高輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインは、注目画素の輝度値が高いほど小さく設定されることを特徴とする請求項1に記載の輪郭強調装置。
【請求項4】
前記ゲイン調整手段によって相対的に低輝度であると定められる輝度値の範囲は、相対的に高輝度であると定められる輝度値の範囲よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の輪郭強調装置。
【請求項5】
前記ゲイン調整手段によって相対的に中輝度であると定められる輝度値の範囲は、相対的に低輝度であると定められる輝度値の範囲よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の輪郭強調装置。
【請求項6】
前記ゲイン調整手段は、前記相対的に低輝度であって、かつ輝度値が所定値より低い注目画素の広範囲エッジ成分のゲインを0に設定することを特徴とする請求項1に記載の輪郭強調装置。
【請求項7】
前記ゲイン調整手段は、相対的に中輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインを1に設定するとともに、相対的に低輝度又は高輝度である注目画素の広範囲エッジ成分のゲインを1未満に設定することを特徴とする請求項1に記載の輪郭強調装置。
【請求項8】
前記ゲイン調整手段は、前記注目画素が、その注目画素の周辺に位置する周辺画素の輝度よりも輝度が低い場合、前記注目画素のゲインを小さくするゲイン調整も行うことを特徴とする請求項1に記載の輪郭強調装置。
【請求項9】
前記ゲイン調整手段は、前記注目画素が、その注目画素の周辺に位置する周辺画素の輝度よりも輝度が低い場合、前記注目画素のゲインに1未満の係数を乗じることを特徴とする請求項8に記載の輪郭強調装置。
【請求項10】
前記ゲイン調整手段は、前記広範囲エッジ成分が0未満である場合に、その注目画素のゲインを小さくすることを特徴とする請求項8に記載の輪郭強調装置。
【請求項11】
注目画素、及び微小領域において前記注目画素の周辺に位置する第1の周辺画素の輝度信号を用いて、前記注目画素のノイズ除去信号を生成するノイズ除去手段と、
前記注目画素、及び前記微小領域より広い広範囲領域において前記注目画素の周辺に位置する第2の周辺画素の輝度信号を用いて前記注目画素の広範囲エッジ成分を検出するエッジ抽出手段と、
前記広範囲エッジ成分のゲイン調整を行うゲイン調整手段と、
前記ノイズ除去信号とゲイン調整された広範囲エッジ成分とを加算して前記注目画素の処理済輝度信号を生成する加算手段とを備え、
前記ゲイン調整手段は、前記注目画素の周辺に位置する周辺画素の輝度よりも輝度が低い注目画素のゲインを相対的に小さくするとともに、前記周辺画素の輝度よりも輝度が高い注目画素のゲインを相対的に大きくすることを特徴とする輪郭強調装置。
【請求項12】
注目画素、及び微小領域において前記注目画素の周辺に位置する第1の周辺画素の輝度信号を用いて、前記注目画素のノイズ除去信号を生成するノイズ除去ステップと、
前記注目画素、及び前記微小領域より広い広範囲領域において前記注目画素の周辺に位置する第2の周辺画素の輝度信号を用いて前記注目画素の広範囲エッジ成分を検出するエッジ抽出ステップと、
前記広範囲エッジ成分のゲインを調整するゲイン調整ステップと、
前記ノイズ除去信号とゲイン調整された広範囲エッジ成分とを加算して前記注目画素の処理済輝度信号を生成する加算ステップとを備え、
前記ゲイン調整ステップでは、相対的に中輝度である注目画素の前記広範囲エッジ成分のゲインが相対的に大きく設定され、相対的に低輝度又は高輝度である注目画素の前記広範囲エッジ成分のゲインが相対的に小さく設定されることを特徴とする輪郭強調方法。
【請求項13】
注目画素、及び微小領域において前記注目画素の周辺に位置する第1の周辺画素の輝度信号を用いて、前記注目画素のノイズ除去信号を生成するノイズ除去ステップと、
前記注目画素、及び前記微小領域より広い広範囲領域において前記注目画素の周辺に位置する第2の周辺画素の輝度信号を用いて前記注目画素の広範囲エッジ成分を検出するエッジ抽出ステップと、
前記広範囲エッジ成分のゲイン調整を行うゲイン調整ステップと、
前記ノイズ除去信号とゲイン調整された広範囲エッジ成分とを加算して前記注目画素の処理済輝度信号を生成する加算ステップとを備え、
前記ゲイン調整ステップでは、前記注目画素の周辺に位置する周辺画素の輝度よりも輝度が低い注目画素のゲインが相対的に小さくされるとともに、前記周辺画素の輝度よりも輝度が高い注目画素のゲインが相対的に大きくされることを特徴とする輪郭強調方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−254214(P2011−254214A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125750(P2010−125750)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】