説明

透光封止用硬化性樹脂組成物、樹脂封止発光素子及びその製造方法

【課題】高い屈折率を有しかつ可視光透過性に優れた樹脂により封止された、光の取り出し効率を従来より高めることが可能な発光素子及びその製造方法並びにそのための樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ガラスマトリックス中で金属酸化物を結晶化させた後にガラスマトリックス成分を除去することによって得られる、平均一次粒子径が5〜50nmの誘電体結晶微粒子と、エポキシ樹脂及び硬化性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂とを含有することを特徴とする発光素子の透光封止用の硬化性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いて封止された樹脂封止発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を透光封止するための硬化性樹脂組成物、樹脂封止発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白色の発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下LEDという)、有機LED(以下OLEDという)、半導体レーザダイオード(LD)等の半導体発光チップ(以下、発光チップという)を光源として用いる発光素子(固体照明素子)の研究開発が盛んに行われている。このような発光素子は、蛍光灯や白熱電球と異なり、環境を汚染するおそれのある水銀を含有せず、熱線を発生しないため消費電力が少なく、かつ長寿命といった特徴を持つことから、環境に優しい技術として大きな注目を集めている。
【0003】
しかしながら、発光効率の低さが問題視されている。LED等を構成する半導体の屈折率は非常に大きく、例えばGaN系の場合2.5〜3.0程度である。したがって、LEDから放出される光の取り出し効率を高めるには、屈折率の高い材料でLEDを被覆する必要がある。しかし、現在、この被覆に用いられる樹脂の屈折率は硬化性シリコーン樹脂で1.4〜1.5、エポキシ樹脂で1.5〜1.6と低いため、光半導体のPN接合部や活性層で発光した光は、発光チップ部分と樹脂部分の界面で全反射されて内部で損失を生じやすく、充分な取り出し効率が得られないという問題があった。
【0004】
LEDからの光の取り出し効率を高めるため、樹脂の屈折率を高める試みが数多くなされている。樹脂の屈折率を高める手法としては、絶縁物のなかでも屈折率の高い酸化チタンを添加する方法が最も一般的であるが、酸化チタンは可視光領域に吸収があるため、固体照明素子への使用には不向きである。これ以外の手法としては、数平均粒子径が50nm以下の微粒子状の酸化亜鉛結晶や酸化セリウム結晶を添加する方法(特許文献1)、シリカとチタンとの複合酸化物を添加する方法(特許文献2)等が提案されているが、いずれの方法によっても、LED被覆用の樹脂に要求される程度に高い屈折率(1.7程度)は実現されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2003−147090(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−120229(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記したような従来技術の問題点に鑑み、光の取り出し効率を従来より高めることが可能な、高い屈折率を有し可視光透過性に優れた(硬化した)樹脂により封止された発光素子を製造するための、硬化性樹脂の組成物、及び該硬化性樹脂の組成物を用いて封止された樹脂封止発光素子並びにその製造方法を提供することを目的とする。また、光学素子封止用に使用される、該硬化性樹脂組成物と有機溶媒とを含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の構成を有することを特徴とするものである。
【0008】
(1):ガラスマトリックス中で金属酸化物を結晶化させた後にガラスマトリックス成分を除去することによって得られる、平均一次粒子径が5〜50nmの誘電体結晶微粒子と、エポキシ樹脂及び硬化性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂とを含有することを特徴とする発光素子の透光封止用の硬化性樹脂組成物。
【0009】
(2):前記誘電体結晶微粒子が、一般式PbZr1−xTi、BaTi1−xZr、Ba1−xSrTiO、(Bi1―xLaTi12、(Sr1−xBiTa[0≦x≦1]及びそれら相互の固溶体からなる群より選ばれる1種以上の誘電体結晶微粒子である(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
(3):前記誘電体結晶微粒子がCeOである(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
(4):前記誘電体結晶微粒子がZrOである(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
(5):前記誘電体結晶微粒子と、前記樹脂成分の含有比率が、質量比で[誘電体結晶微粒子]/[硬化性樹脂]=5/95〜50/50である(1)〜(4)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
(6):(1)〜(5)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物と有機溶媒を含む、発光素子の透光封止用に使用される組成物。
【0013】
(7):(1)〜(5)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物で光が透過する開口部が封止された樹脂封止発光素子。
【0014】
(8):基板の上に配線が形成されてなる回路基板上に、発光チップを設置して前記配線と電気的に接続し、(1)〜(5)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物で前記発光チップを被覆した後、前記硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることを特徴とする樹脂封止発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、屈折率が高く、可視光透過性に優れた樹脂により透光封止された発光素子が得られる。特に、LEDから放出される光の取り出し効率を高くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明において透光封止とは、発光チップから出た光が封止材(本発明における硬化性樹脂組成物の硬化物)を透過して発光素子から出射するように、発光チップの少なくとも光出射面を封止材で覆うことをいう。発光チップは発光素子の(光学的)開口部の基板上に設置、配線されていることより、封止材は発光チップを被覆するとともに光学素子の開口部を埋めていることが好ましい。その場合、封止材は、発光チップの少なくとも光出射面に接してそれを被覆するように、発光チップを埋め込んでいる。封止材は発光光を透過させるものであることより無色透明であることが好ましいが、発光チップの発光光の色を調整するために着色されていてもよい(たとえば、着色発光光を白色光に調整するために発光光の補色の色に着色することができる)。
【0017】
また、本発明における硬化性樹脂組成物(硬化性樹脂を含有する組成物)は硬化して上記封止材となる組成物をいう。したがって、硬化性樹脂硬化前に除去される溶媒等の成分は含まない。一方、本発明における上記硬化性樹脂組成物と有機溶媒を含む(発光素子の透光封止用に使用される)組成物とは、上記封止材には含まれない成分(溶媒)を含む組成物をいい、封止を行う工程で発光チップの上記硬化性樹脂組成物による被覆や発光素子開口部への上記硬化性樹脂組成物の充填等を容易にするために使用される組成物である。
【0018】
図1は、本発明の形態により製造される樹脂封止発光素子の断面図である。図1に示すように、樹脂封止発光素子1は、配線4が形成された回路基板3と、発光チップとしての半導体LEDチップ7と、配線4と半導体LEDチップ7とを電気的に接続するワイヤー6とを有する。ここで、半導体LEDチップ7は発光素子1の開口部を埋めている樹脂(硬化性樹脂組成物の硬化物)2によって被覆されている。半導体LEDチップ7から放出される光の取り出し効率を高くするためには、樹脂2の屈折率と、半導体LEDチップ7の構成材料との屈折率の差が少ないほうがよい。
【0019】
樹脂封止発光装置1は、具体的には、次のようにして製造される。
まず、回路基板3上に、2つの配線4のパターンを作製する(第1の工程)。次いで、半導体LEDチップ7を1つの配線4上に実装し、半導体LEDチップ7の該配線4と反対側の面にボンディングパット5を積層した後、該ボンディングパット5と他方の配線4とを、ワイヤー6により接続する(第2の工程)。さらに、隙間部分に硬化性樹脂組成物を充填し、加熱硬化させて樹脂2を形成する(第3の工程)。第3の工程の後、発光光の取り出し効率をさらに向上させる目的で、樹脂2の上にレンズを形成してもよい。
【0020】
本実施の形態における半導体LEDチップ7としては、所望の発光色に応じて種々の材料を用いることができる。例えば、赤色であればAl0.35Ga0.65As、緑色であればGaP、青色であればGaN及びInGaN等の窒化物半導体が挙げられる。
【0021】
本発明において、樹脂2は、ガラスマトリックス中で金属酸化物を結晶化させた後にガラスマトリックス成分を除去することによって得られる、平均一次粒子径が5〜50nmの誘電体結晶微粒子と、エポキシ樹脂及び硬化性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂とを含有する樹脂組成物を加熱硬化させたものである。
【0022】
まず、本発明において、誘電体結晶微粒子は、樹脂2の屈折率を調整するフィラーとなる成分である。フィラーとしては、結晶形状、結晶系を維持しやすいことから、結晶格子欠陥が少なく、高純度で組成が均一な結晶性の高いものが望まれる。本発明においては、高い結晶性を有し、結晶格子欠陥の少ない微粒子を作製できることから、ガラスマトリックス中で誘電体結晶となる金属酸化物を結晶化させた後ガラスマトリックス成分を除去することによって得られる微粒子を用いる。すなわち、ガラス母材融液中に誘電体結晶として結晶化させる金属酸化物成分を溶解させておき、融液を急速冷却してガラス化させた後、再度加熱アニールを行うことで母材中に微結晶を析出させるガラス結晶化法により得られる微粒子である。析出した微結晶は、ガラスマトリックスを適宜の薬液等によって溶解させることにより微粒子として取り出される。
【0023】
かかるガラスマトリックス中で結晶化させた微粒子は、従来の溶液法(金属酸化物の含水物、又は金属の水酸化物を介して酸化物を得る方法)で得られた微粒子と比較して微粒子端面への水酸基などの残留が少なく、結晶格子欠陥が少ない。また、かかる方法を採用すると微粒子形態の制御が容易であり、アニール処理の条件等によって比較的異方性の大きい微粒子を作製しやすく、アスペクト比の大きい粒子が得られ易いという特徴も併せ有している。
【0024】
上記ガラス母材としては、ホウ酸系、リン酸系、ケイ酸系等が使用できるが、溶融性や目的酸化物との複合化合物の製造のし易さやマトリックスの溶離の容易性等の点から、ホウ酸系のガラス母材が好ましく用いられる。
【0025】
以下に、誘電体結晶微粒子の製造をチタン酸バリウム微粒子を作製する方法を例にとって具体的に説明すると、次の〔1〕〜〔4〕の工程で誘電体結晶微粒子を得ることができる。
【0026】
〔1〕ガラス形成成分(例えば、酸化ホウ素)と、目的とする誘電体となる金属酸化物(例えば、酸化バリウムと酸化チタン)とを混合し、1200℃以上の温度で全体を溶融させる[溶融]。
【0027】
〔2〕溶融ガラスを急速冷却させることによって誘電体組成の金属イオンを含むガラスを得る[ガラス化]。
【0028】
〔3〕550℃〜700℃程度の温度でアニール処理を行うことでガラス中に誘電体の結晶核を形成させ、アニール条件を制御して所定の粒子径まで結晶を成長させる[結晶化]。
【0029】
〔4〕酸、水、あるいはその混合物によりガラス母材成分(例えば、酸化ホウ素)を取り除き誘電体結晶微粒子(例えば、BaTiO)を得る[リーチング]。
【0030】
上記一連の工程によれば、アニール温度領域において非常に粘度の高いガラスを母材として誘電体の結晶化を行っているため、誘電体結晶微粒子の粒子径や粒子形態の制御が容易であり、また結晶性の高い結晶微粒子が得られるという特徴がある。
【0031】
本発明においては、誘電体結晶微粒子の平均一次粒子径を5nm以上とすることで、硬化性樹脂組成物中に誘電体結晶微粒子が凝集したり、増粘が生じることを防止できる結果、樹脂2中に誘電体結晶微粒子が均一に分散し、樹脂2の高屈折率化を実現できる。一方、平均一次粒子径が50nm以下であることで、樹脂2の可視光透過性を損なうことなく、屈折率を高められる。また、硬化性樹脂組成物中に誘電体結晶微粒子を均一に分散できるので、樹脂2中に均質に分散できる。誘電体結晶微粒子の平均一次粒子径は、10〜50nmであることが好ましい。
さらには、誘電体結晶微粒子の平均一次粒子径が40nm、さらには20nm以下であることが好ましい。なぜならば、誘電体結晶微粒子の平均一次粒子径が小さいことにより、樹脂2に入射する光を散乱により損失することなく、樹脂2の屈折率を高められるからである。
【0032】
また、硬化性樹脂組成物中の誘電体結晶微粒子の含有割合は硬化性樹脂に対して5〜50質量%とすると好ましい。上記含有割合を5質量%以上とすることで、樹脂2の屈折率を高められる。一方、上記含有割合を50質量%以下とすることで、硬化性樹脂組成物の増粘の発生を抑えられ、樹脂2の可視光透過率を損なうことなく、樹脂2を高屈折率にできる。
【0033】
ここで、誘電体の例としては、一般式ABOで表されるペロブスカイト型の結晶構造を有する金属酸化物誘電体又は層状ペロブスカイト型の結晶構造を有する金属酸化物誘電体が挙げられる。なかでも、金属酸化物誘電体として一般式Ba1−xSrTiO、BaTi1−xZr、(Bi1―xLaTi12、(Sr1−xBiTa、PbZr1−xTi[0≦x≦1]及びそれら相互の固溶体からなる群より選ばれる1種以上を用いると、優れた誘電特性が得られるため好ましい。また、上記以外にPb(Mg1/3Nb2/3)O、PbTiO、PbZrO、Ba1−xSrTiO[0≦x≦1]及びそれら相互の固溶体からなる群より選ばれる1種以上の金属酸化物誘電体、一般式(Bi2+(Am−1Ti3.5m−0.52−[AはBi又はBiとLaであってLa/Biの原子比が0〜0.5であり、mは1〜5の整数である。]、一般式Sr1−nBi2+nTa[0≦n≦0.8]等も好適に用いられる。
【0034】
また、金属酸化物誘電体としてCeOを用いれば、紫外領域に吸収帯を有しかつ可視領域における吸収が少ないため、樹脂2の可視光透過性を高くでき好ましい。
さらに、金属酸化物誘電体としてZrOを用いれば、紫外領域(波長360nm程度)に吸収帯を有しかつ可視領域、とりわけ近紫外可視領域(波長400〜450nm程度)における吸収が少ないため、樹脂2の可視光透過性を近紫外領域まで高く維持でき好ましい。
【0035】
さらに、上記誘電体結晶微粒子は、硬化性樹脂組成物中での分散性や保存安定性を向上させる目的や、光触媒活性の発現を防止する等の目的に応じて界面活性剤、分散剤、カップリング剤等により表面処理を行ってもよい。
【0036】
次に、エポキシ樹脂及び硬化性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂は、誘電体結晶微粒子の結合剤及び可とう性付与剤としての働きを有する成分である。硬化性樹脂としてエポキシ樹脂及び/又は硬化性シリコーン樹脂を用いることで、樹脂2を作製する際の成形性に優れるほか、硬化物である樹脂2を耐熱性と機械的強度とのバランスに優れかつ接着力、耐光性、耐湿性、耐食性及び屈折率に優れた封止材にできる。
【0037】
本発明において、エポキシ樹脂は、ポリエポキシドからなる主剤(エポキシ樹脂と通称されるもの。以下、A成分ともいう)と硬化剤(B成分)によって構成される。
上記A成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。これらエポキシ樹脂主剤の中でも、透明性及び耐変色性に優れるという点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを用いることが好ましい。
【0038】
このようなエポキシ樹脂主剤としては、例えば、商品名:エピコート827(油化シェルエポキシ社製)、商品名:D.E.R.331J(ダウケミカル日本社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名:エピコート807(油化シェルエポキシ社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂主剤は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
上記B成分としては、エポキシ樹脂用硬化剤として通常知られているものがいずれも使用でき、例えば、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤があげられる。上記酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。これら酸無水物系硬化剤の中でも、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。これらの硬化剤は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。硬化剤の好ましい添加量はその種類によって大きく異なるが、製造工程にあわせて選択される硬化時間に合わせて適宜選択できる。
【0040】
一方、硬化性シリコーン樹脂は、耐熱性、耐候性、耐湿性、電気特性等が優れ、比較的弾性率が小さいので、電気、電子、精密機器等の材料として多用されている。硬化性シリコーン樹脂のシラノール基は、誘電体結晶微粒子表面と親和性があるため、誘電体結晶微粒子及び硬化性シリコーン樹脂の混合を均一かつ自在に制御できる。その結果、誘電体結晶微粒子及び硬化性シリコーン樹脂の特性を十分発現できる硬化性樹脂組成物が得られ、該組成物(後述する部分重合シリコーン樹脂を含有するものも含む)は、発光素子の透光封止用として好適である。本発明の硬化性樹脂組成物によれば、発光素子の透光封止を低温で行うことができ、接着強度が強く、接着加工性に優れ、かつ長期にわたって機械的耐熱性が高く、耐ガスリーク性がよく、気密保持性が高く、耐熱寸法安定性がよい等、多数の特性を合わせもつ。
【0041】
一般に硬化性シリコーン樹脂は、2官能ケイ素モノマー(RSi−X)と3官能ケイ素モノマー(RSi−X)から製造され、場合により1官能ケイ素モノマー(RSi−X)や4官能ケイ素モノマー(Si−X)が併用されることがある。ここで、Rは結合末端が炭素原子である有機基を示す。
【0042】
硬化性シリコーン樹脂としては、硬化性のメチルシリコーン樹脂又はメチルフェニルシリコーン樹脂を用いることが好ましい。ここで硬化性のメチルシリコーン樹脂とは、上記有機基Rとしてメチル基を含む硬化性のシリコーン樹脂であり、硬化性のメチルフェニルシリコーン樹脂とは、上記有機基Rとしてメチル基とフェニル基の両者を含む硬化性のシリコーン樹脂である。硬化性のメチルシリコーン樹脂又は硬化性のメチルフェニルシリコーン樹脂を用いることにより、硬化物中に炭化水素基が結合したSi原子を有する酸化ケイ素が生じ、この酸化ケイ素はSiOと比較して柔軟であるため、それがバインダーとなっている樹脂2も柔軟性に優れ、クラックが生じにくく、高い屈折率及び可視光透過性を維持できるものと考えられる。なお、Si原子に結合した炭化水素基は加熱硬化の際にその一部分が熱分解して消失する可能性もあるが、本発明の組成物を用いれば、低温による透光封止が可能であるため、加熱硬化温度下では炭化水素基の大部分が残存するものと考えられる。
【0043】
硬化性のシリコーン樹脂においては、Rは炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基又はフェニル基であることがより好ましい。Xは、水酸基、又はアルコキシ基、塩素原子等の加水分解可能な基である。硬化性シリコーン樹脂においては、Xは加水分解されて水酸基となっていることが好ましい。硬化性シリコーン樹脂は、これらのモノマーを部分的に加水分解共縮合して得られる共重合体であり、Xが加水分解されて生成したシラノール基を有する。この硬化性シリコーン樹脂は、そのシラノール基によりさらに縮合が可能であり(硬化可能であり)、硬化させることによりシラノール基の縮合が進んで不溶、不融の硬化物となる。硬化物は2官能ケイ素単位(RSiO)と3官能ケイ素単位(RSiO3/2)からなり、場合によって1官能ケイ素単位(RSiO1/2)や4官能性のケイ素単位(SiO)を有する。硬化性シリコーン樹脂における各ケイ素単位は、これら硬化物の各ケイ素単位とともに、Xが加水分解されて生成し、シリコーン樹脂の硬化性に寄与するシラノール基を含んだ各ケイ素単位をも意味する。例えば、シラノール基を有する2官能ケイ素単位は(RSi(OH)−)で表され、シラノール基を有する3官能ケイ素単位は(RSi(OH)−)や(RSi(OH)=)で表される。また、硬化性シリコーン樹脂における各ケイ素単位のモル比は原料である各ケイ素モノマーのモル比に等しいと考えられる。
【0044】
また、硬化性シリコーン樹脂を、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等で変性して使用することもできる。しかし変性する樹脂の量は少ないものが好ましく、硬化性シリコーン樹脂としては実質的に変性されていない硬化性シリコーン樹脂が好ましい。
【0045】
本発明の樹脂組成物において、硬化性シリコーン樹脂は、(2官能ケイ素単位と3官能ケイ素単位の合計)に対する2官能ケイ素単位のモル比(単に、2官能ケイ素単位のモル比ともいう)が0.05〜0.55であることが好ましい。
【0046】
硬化性シリコーン樹脂は、例えばメチルフェニルシリコーン樹脂の場合、ジクロロジメチルシランとトリクロロフェニルシランとを加水分解共縮合させる方法、ジクロロジフェニルシランとトリクロロメチルシランとを加水分解共縮合させる方法等によって製造される。硬化性シリコーン樹脂の2官能ケイ素単位のモル比は、0.2〜0.4であることがより好ましい。また、この硬化性シリコーン樹脂は実質的に2官能ケイ素単位と3官能ケイ素単位のみからなるものが好ましい。このような硬化性シリコーン樹脂は、250℃以上の高温に長時間保持しても、容易に分解、変色することがなく、耐熱性にも優れる。
【0047】
硬化性シリコーン樹脂は、通常、有機溶媒に溶解した溶液(ワニス)で輸送、保管等の取り扱いを受ける。本発明の硬化性樹脂組成物は、このワニスを用いて製造することができる。ワニスの溶媒や別途配合された有機溶媒を含む(発光素子の透光封止用に使用される)組成物は、流動性を有するペースト状の組成物となる。
【0048】
硬化性シリコーン樹脂は、樹脂組成物中で部分的に重合させたシリコーン樹脂(単に、部分重合シリコーン樹脂ともいう)として存在させることができる。部分重合シリコーン樹脂は、原料の硬化性シリコーン樹脂の脱水縮合反応がある程度進行しているので、原料の硬化性シリコーン樹脂に比較して、発光素子を封止する時の水分の発生が少なく、したがって部分重合シリコーン樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、発光素子を封止して硬化する際に、原料のシリコーン樹脂に比較して気泡発生のおそれがより少なくなり、気密性を向上させることができる。また、部分重合シリコーン樹脂は、原料の硬化性シリコーン樹脂に比較して高粘度液体ないし溶融粘度の高い固体であり、本発明の硬化性樹脂組成物を成形体とする場合に適した性質を有する。例えば、発光素子の所定部位に配置した硬化性樹脂組成物の成形体を硬化させる際に、シリコーン樹脂が流動して所定部位からはみ出すおそれが少なくなる。
【0049】
なお、部分重合シリコーン樹脂は、その原料である硬化性シリコーン樹脂の硬化が部分的に進んだ状態にある硬化性シリコーン樹脂である。本発明における硬化性シリコーン樹脂とは、部分重合シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン樹脂を意味するとともに、この部分重合シリコーン樹脂をも意味する。以下、本発明の樹脂組成物の製造段階で、特に硬化性シリコーン樹脂の部分的な重合を行ったものを部分重合シリコーン樹脂という。
【0050】
硬化性シリコーン樹脂の部分的な重合は、通常、原料のシリコーン樹脂の加熱による硬化反応が完全に終了しない程度で停止することにより行われる。例えば、通常の硬化反応の場合よりも低温で加熱する、通常の硬化に必要な時間よりも短時間加熱する、等の方法で原料の硬化性シリコーン樹脂を部分的に硬化して得られる。硬化性シリコーン樹脂の部分的な重合を行うには、例えば120℃〜180℃の温度で重合を行い、架橋反応が進行しないところで反応を停止する。原料の硬化性シリコーン樹脂の部分的な重合は、樹脂のみの段階で、又は誘電体結晶微粒子が存在する組成物中で、あるいはその組成物製造の過程で行うことができる。
【0051】
硬化性シリコーン樹脂の脱水縮合による硬化は、通常、加熱のみで進行し、該樹脂のシラノール基同士の脱水縮合反応と、該樹脂のシラノール基と誘電体結晶微粒子表面のシラノール基の脱水縮合反応により、溶剤に不溶の硬化物が形成される。例えば、発光素子に塗布された樹脂組成物は、140℃以上、好ましくは180℃〜300℃の温度で1〜120分間加熱するのみで該樹脂が硬化し、不溶化して、樹脂2の硬化樹脂成分となる。本発明の(発光素子の透光封止用に使用される)組成物は有機溶媒を含み、該有機溶媒やワニスの溶媒(以下、有機溶媒等という)は加熱の初期に揮発除去され、さらに有機物等の非耐熱性物質が存在する場合は、硬化の際に揮発除去又は分解除去される。但し、安定した硬化を行うためには、有機溶媒等の揮発除去(乾燥)は、樹脂組成物を硬化させる前に、より低い温度で実施することが好ましい。このような有機溶媒等の揮発除去は、有機溶媒等の種類にもよるが、たとえば100〜140℃の温度で30〜60分実施する。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物中には、上記エポキシ樹脂と硬化性シリコーン樹脂以外の他の硬化性樹脂や硬化性化合物を、エポキシ樹脂と硬化性シリコーン樹脂の総量に対して比較的少ない量、含んでいてもよい。他の硬化性樹脂や硬化性化合物としては、硬化性シリコーン樹脂以外の硬化性ケイ素化合物が好ましい。この硬化性ケイ素化合物としては、例えばシランカップリング剤やそのオリゴマー等が挙げられる。シランカップリング剤は前記2官能加水分解性シランや3官能加水分解性シランにおける炭化水素基の1つが官能基含有有機基(該有機基はケイ素原子と炭素−ケイ素結合で結合)に置換した構造を有するケイ素化合物である。そのオリゴマーは前記と同様にシランカップリング剤を部分加水分解縮合させて得られるものである。また、互いに反応性の官能基を有する2種のシランカップリング剤の反応物も使用できる。
【0053】
シランカップリング剤における官能基としては、アミノ基、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、メルカプト基、塩素原子等が挙げられる。具体的なシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
なお、硬化性樹脂組成物中に上記誘電体結晶微粒子、硬化性樹脂以外に、他の成分を有していてもよい。他の成分としては硬化性樹脂組成物中に溶解しうる化合物であることが好ましいが、樹脂2の屈折率及び可視光透過性を損なわない範囲であれば、固体微粒子等の非溶解性の成分であって組成物中に安定的に分散しうるものが含まれていてもよい。具体的には蛍光物質や、硬化性のシリコーン樹脂の硬化温度を下げるための硬化触媒、第4級アンモニウム塩、アルミニウム、チタン等のキレート類、各種のアミン類もしくはその塩類等が例示される。これら他の成分としては、樹脂2に機能性を与える成分であることが好ましい。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物における誘電体結晶微粒子と硬化性樹脂の含有比率は、質量比で[誘電体結晶微粒子]/[硬化性樹脂]=5/95〜50/50とすることが好ましい。上記含有比率を5/95以上とすることで、樹脂2を緻密かつ耐久性に優れた被膜としたまま、屈折率を高められる。一方、上記含有比率を50/50以下とすることで、誘電体結晶微粒子と硬化性樹脂との分散性、親和性を保持しやすくなり、樹脂2中のクラックの発生や、樹脂2内部への水分等のリークを防止できる。また、樹脂2と半導体LEDチップ7との接着強度を保てる。好ましい含有比率は20/80〜40/60である。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化して樹脂2となる組成物である。この硬化性樹脂組成物で発光チップを被覆することを容易とするために、好ましくは発光素子の発光チップが設置された開口部を埋めることを容易とするために、硬化性樹脂組成物に有機溶媒を含有させて流動性の組成物とすることが好ましい。硬化性樹脂が液状や低融点固体の場合は有機溶媒は必ずしも必要としないが、封止工程における硬化性樹脂組成物の取扱い性を向上させるためには有機溶媒を含有した組成物にして使用することが好ましい。また、この有機溶媒を含む組成物にはさらに樹脂2には含まれない成分(硬化性樹脂の硬化前に除去される成分や硬化後に加熱分解等で除去される成分)が含まれていてもよく、また、樹脂2中の成分としては必要ではないが、有機溶媒を含む組成物の取り扱い性を改良する成分(レベリング剤等)を含んでいてもよい。
【0057】
上記有機溶媒を含む、本発明の発光素子の透光封止用に使用される組成物は、前記誘電体結晶微粒子と、エポキシ樹脂及び硬化性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂と有機溶媒とを必須成分として含有する組成物である。この組成物は好ましくはペースト状の組成物であることが好ましい。有機溶媒が少ない場合、常温で固体で容易に加熱流動化しうる組成物であってもよい。この組成物を使用して発光チップを被覆し、乾燥等で有機溶媒を除去し、発光チップ上に前記硬化性樹脂組成物の被覆層を形成し、その後硬化性樹脂を硬化して発光チップを発光素子内に封止する(封止された発光素子とする)。
【0058】
この有機溶媒としては、前記硬化性樹脂を溶解可能なものを使用することが好ましいが、樹脂成分を溶解可能な範囲であれば、前記硬化性樹脂を溶解可能な溶媒と、前記硬化性樹脂の溶解性が低い溶媒とを混合して用いてもよい。有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類が、前記硬化性樹脂の溶解性、特に硬化性シリコーン樹脂の溶解性に優れる点で好ましく用いられる。また、上記の有機溶媒のうち2種類以上を混合して用いてもよいことはもちろんである。さらに、有機溶媒として、又は有機溶媒の一部として、前記硬化性シリコーン樹脂ワニスの溶媒(トルエンやキシレン等)を使用できる。
【0059】
本発明の上記組成物中の固形分濃度は1〜60質量%が好ましい。ここで固形分とは上記組成物中の揮発性成分(有機溶媒等の塗膜乾燥時に除去される成分)を除いた成分の合計含有量をいう。固形分濃度が1質量%以上であることで、充分な厚さの樹脂2を効率よく形成することができる。一方、固形分濃度が60質量%以下であることにより、硬化性樹脂を組成物中に溶解でき、組成物の安定性を維持できる。
【0060】
本発明の上記組成物や硬化性樹脂組成物は、各成分を混合して得られる。混合の方法としては公知の技術を用いることができ、具体的にはボールミル、ジェットミル、ロールミル等が用いられる。
【0061】
上記で得られた硬化性樹脂組成物を用いて、発光チップを封止し、樹脂封止発光素子1とする。具体的には、基板の上に配線が形成されてなる配線基板上に、発光チップを設置して前記配線と電気的に接続し、前記硬化性樹脂組成物で発光チップを被覆した後、前記硬化性樹脂組成物を加熱硬化させる。このとき、硬化性樹脂組成物による被覆方法は特に限定されず、通常のトランスファー成形や注型等の公知のモールド方法を用いてもよい。また、加熱硬化に際しては、140℃以上、好ましくは180〜300℃で1〜120分間加熱することが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるわけではない。
【0063】
[BaTiO結晶微粒子の製造]
炭酸バリウム、酸化チタン(ルチル)及び酸化ホウ素を、BaO、TiO及びBとしてそれぞれ50.0、25.0及び25.0モル%となるよう秤量し、エタノール少量を用いて自動乳鉢でよく湿式混合した後乾燥させて原料粉末とした。得られた原料粉末を、融液滴下用のノズルのついた白金製容器(ロジウム10%含有)に充填し、ケイ化モリブデンを発熱体とした電気炉において1350℃で2時間加熱し、完全に溶融させた。次いで、ノズル部を加熱し、融液を電気炉の下に設置されたSUS316製の双ロール(ロール径150mm、ロール回転数50rpm、ロール表面温度30℃)に滴下しフレーク状固形物を得た。
【0064】
得られたフレーク状固形物は透明を呈し、粉末X線回折の結果、非晶質物質であることが確認された。このフレーク状固形物を、590℃で12時間加熱し、結晶化処理を行った。次いで、このフレーク粉を80℃に保った1mol/Lの酢酸水溶液中に添加し12時間撹拌したのち遠心分離、水洗浄、乾燥を行って白色粉末を得た。
【0065】
得られた白色粉末を粉末X線回折によって同定したところ、正方晶のチタン酸バリウム単相からなる粉末であり、透過型電子顕微鏡によって観察を行った結果、平均一次粒子径は30nmであった。
【0066】
[Ba0.6Sr0.4TiO結晶微粒子の製造]
炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、酸化チタン(ルチル)及び酸化ホウ素を、BaO、SrO、TiO及びBとしてそれぞれ40.0、10.0、20.0及び30.0モル%となるよう秤量し、エタノール少量を用いて自動乳鉢でよく湿式混合した後乾燥させて原料粉末とした。得られた原料粉末に対し、上記と同様にして溶融、冷却、結晶化処理を行ったものを1mol/Lの酢酸水溶液中に添加し、上記と同様に撹拌、遠心分離、水洗浄、乾燥を行って白色粉末を得た。
【0067】
得られた白色粉末を粉末X線回折によって同定したところ、立方晶のBa0.6Sr0.4TiO単相からなる粉末であり、透過型電子顕微鏡によって観察を行った結果、平均一次粒子径は30nmであった。
【0068】
[CeO結晶微粒子の製造]
酸化セリウム(CeO)、炭酸バリウム(BaCO)及び酸化ホウ素(B)を、それぞれCeO、RO及びBとしてそれぞれ25.0、25.0及び50.0モル%となるよう秤量し、エタノール少量を用いて自動乳鉢でよく湿式混合した後乾燥させて原料粉末とした。得られた原料粉末に対し、上記と同様にして溶融、冷却、結晶化処理を行ったものを1mol/Lの酢酸水溶液中に添加し、上記と同様に撹拌、遠心分離、水洗浄、乾燥を行って白色粉末を得た。
【0069】
得られた白色粉末を粉末X線回折によって同定したところ、CeO単相からなる粉末であり、透過型電子顕微鏡によって観察を行った結果、平均一次粒子径は25nmであった。
【0070】
[ZrO結晶微粒子の製造]
酸化ジルコニウム(ZrO)、炭酸バリウム(BaCO)及び酸化ホウ素(B)を、それぞれZrO、RO及びBとしてそれぞれ25.0、25.0及び50.0モル%となるよう秤量し、エタノール少量を用いて自動乳鉢でよく湿式混合した後乾燥させて原料粉末とした。得られた原料粉末に対し、上記と同様にして溶融、冷却、結晶化処理を行ったものを1mol/Lの酢酸水溶液中に添加し、上記と同様に撹拌、遠心分離、水洗浄、乾燥を行って白色粉末を得た。
【0071】
得られた白色粉末を粉末X線回折によって同定したところ、ZrO単相からなる粉末であり、透過型電子顕微鏡によって観察を行った結果、平均一次粒子径は15nmであった。
【0072】
[例1]
樹脂成分として、メチル基が1個結合したケイ素原子の割合が高い市販の硬化性メチルシリコーンレジン(GE東芝シリコーン社製、商品番号:TSR−127B)を用いた。該レジンと、上記で得られたBaTiO結晶微粒子の1−プロパノール分散液(5質量%)とを質量比で[BaTiO誘電体結晶微粒子]/[硬化性樹脂]=20/80の割合になるように混合して混合液を得た。
【0073】
上記で得られた混合液を、表面を清浄にした縦5cm、横5cm、厚さ0.7mmのガラス板(旭硝子製、商品名:AN100)の片方の面のほぼ全面に、スピンコート法(回転数:1000rpm)により20秒間塗布し、大気雰囲気の電気炉にて150℃で10分間乾燥させた。上記の塗布−乾燥からなるプロセスを5回繰り返した後、大気雰囲気の電気炉にて250℃で30分間加熱し、樹脂成分を加熱硬化して硬化物付きガラス板を得た。
【0074】
[例2]
BaTiO結晶微粒子に代えて、上記で得られたBa0.6Sr0.4TiO結晶微粒子を使用した以外は例1と同様にして、硬化物付きガラス板を得た。
【0075】
[例3]
BaTiO結晶微粒子に代えて、上記で得られたCeO結晶微粒子を使用した以外は例1と同様にして、硬化物付きガラス板を得た。
【0076】
[例4(比較例)]
BaTiO結晶微粒子に代えて、水熱合成法で作製したBa0.7Sr0.3TiO微粒子(TPL社製)を使用した以外は例1と同様にして、硬化物付きガラス板を得た。
【0077】
[硬化物付きガラス板の評価]
例1〜4で得られた硬化物付きガラス板について、硬化物の層厚及び透過率を硬化物付きガラス板の透過率を以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
硬化物の層厚:触針式表面粗さ測定装置(Sloan社製、DekTak3)を用いて測定した。
透過率:分光光度計(日立製作所製、U−4100)を用いて測定した。
【0078】
【表1】

【0079】
本発明の樹脂組成物を用いて得られた例1〜3の硬化物は、例4と比較して高い可視光透過率を示す。これは、格子欠陥が少なく、可視光領域の吸収の少ない誘電体結晶微粒子を用いたためであると考えられる。
【0080】
[例5]
BaTiO結晶微粒子に代えて、上記で得られたZrO結晶微粒子を使用した以外は例1と同様にして、硬化物付きガラス板を得た。
得られた硬化物付きガラス板について、硬化物の層厚及び透過率を硬化物付きガラス板の透過率を例1〜4と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示されるとおり、本発明の樹脂組成物を用いて得られた例5の硬化物は、例4と比較して高い可視光透過率を示す。これは、格子欠陥が少なく、可視光領域の吸収の少ない誘電体結晶微粒子を用いたためであると考えられる。
特に、例5の硬化物は、低波長側(波長450nm)の可視光をほとんど吸収せず、非常に高い透過率を示す。そのため例5の硬化物は、白色LEDなどの短波長光発光素子の封止に好適に使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、屈折率が高く、可視光透過性に優れた樹脂により発光素子を封止できるので、LED、OLED、LD等の光半導体素子の封止に用いれば、光半導体素子から放出される光の取り出し効率を高くできると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の形態における発光素子の断面図。
【符号の説明】
【0085】
1:発光素子
2:樹脂
3:回路基板
4:配線
5:ボンディングパット
6:ワイヤー
7:半導体LEDチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスマトリックス中で金属酸化物を結晶化させた後にガラスマトリックス成分を除去することによって得られる、平均一次粒子径が5〜50nmの誘電体結晶微粒子と、エポキシ樹脂及び硬化性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂とを含有することを特徴とする発光素子の透光封止用の硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記誘電体結晶微粒子が、一般式PbZr1−xTi、BaTi1−xZr、Ba1−xSrTiO、(Bi1―xLaTi12、(Sr1−xBiTa[0≦x≦1]及びそれら相互の固溶体からなる群より選ばれる1種以上の誘電体結晶微粒子である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記誘電体結晶微粒子がCeOである請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記誘電体結晶微粒子がZrOである請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記誘電体結晶微粒子と、前記樹脂成分の含有比率が、質量比で[誘電体結晶微粒子]/[硬化性樹脂]=5/95〜50/50である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物と有機溶媒を含む、発光素子の透光封止用に使用される組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物で光が透過する開口部が封止された樹脂封止発光素子。
【請求項8】
基板の上に配線が形成されてなる回路基板上に、発光チップを設置して前記配線と電気的に接続し、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物で前記発光チップを被覆した後、前記硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることを特徴とする樹脂封止発光素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−231253(P2007−231253A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19278(P2007−19278)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】