説明

透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物

【課題】 線膨張係数が小さく、かつ熱衝撃によるクラックを生じない、LED用および光学レンズ用に適した透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物、およびLED用および光学レンズ用に適した硬化物を提供する。
【解決手段】 (A)(1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、30%までがフェニル基であってよく、残余がメチル基である直鎖状ポリオルガノシロキサンと(2)分子中に3個以上のアルケニル基を含む分岐状ポリオルガノシロキサンの(2)単独、または(1)と(2)からなるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン;(B)SiO4/2単位およびR(CHSiO1/2単位(式中、Rは、水素原子またはアルキル基を表す)からなるポリアルキルハイドロジェンシロキサン;ならびに(C)白金族金属化合物を含む、透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物;ならびにその硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加反応によって硬化して、透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物に関し、特に、硬化して、高い硬さおよび低い熱膨張係数を示し、熱衝撃に強く、発光ダイオード(以下、LEDという)の封止剤、レンズなどの光学的用途に適した透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物に関する。また、本発明は、このようなポリオルガノシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化物、特に光学用およびLED用に好適な硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂およびシリコーンゴムは、その中間の物性を示すポリマーを含め、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性などに加えて、透明なものが得られるため、各種の光学用途に用いられている。特に、LEDの封止、保護、レンズなどの用途に、硬化して、高い硬さを有し、透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物が有用である。特許文献1には、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有する分岐状シロキサンを、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンで架橋して得られる樹脂状硬化物が、LEDの保護、接着、波長変更・調整、レンズに用いられることが開示されている。また、特許文献2には、ケイ素原子に結合した1価の炭化水素基の80%以上がメチル基であり、アルケニル基を有するベースポリマーを、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンで架橋して得られる樹脂状硬化物が、同様の用途に用いられることが開示されている。
【0003】
また、LED以外においても、透明性とともに耐熱性と耐衝撃性を必要とする光学的レンズとしても、このような硬化物は有用である。特許文献3には、ケイ素原子に結合した1価の炭化水素基の20%以上がフェニル基であり、アルケニル基を有するベースポリマーを、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンで架橋して得られる樹脂状硬化物が、電気・電子をはじめ各種分野の用途に用いられることが開示されている。
【0004】
このような樹脂状硬化物は、硬さが必要である。硬化物に必要な硬さを与えるために架橋密度を上げる目的で、ベースポリマーおよび架橋剤の少なくとも一部として、分岐状シロキサン骨格を有するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンおよびポリオルガノハイドロジェンシロキサンを用いても、後者の量が多いと耐熱性が低く、これを避けるために全体の分岐度を下げると、熱膨張が大きくなって、LEDのケースなどに用いられるプラスチックとの線膨張係数の差が大きく、そのため、熱履歴による内部ひずみが大きくなり、成形した部品やレンズに亀裂が発生する。
【0005】
【特許文献1】特開2004−186168号公報
【特許文献2】特開2004−221308号公報
【特許文献3】特開平11−001619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、線膨張係数が小さく、かつ熱衝撃によるクラックを生じない、LED用および光学レンズ用に適した硬化物を与える硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することである。本発明のもう一つの目的は、上記の特性を有し、LED用および光学レンズ用に適した硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、ベースポリマーとして、分岐状アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンと必要に応じて直鎖状アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンを特定の比率範囲で用い、架橋剤として特定のシロキサン骨格構造を有する分岐状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを用いて、付加反応によって硬化させることにより、その課題を達成しうることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)(1)ケイ素原子に結合した有機基中、分子中に2個以上のR1(式中、R1は、アルケニル基を表す)を含有し、30%までがフェニル基であってよく、残余がメチル基であり、23℃における粘度が10〜10,000mm2/sである直鎖状ポリオルガノシロキサン (A)の0〜60重量%;および
(2)SiO4/2単位およびR(CHSiO1/2単位(式中、Rは、Rまたはメチル基を表す)からなり、分子中に3個以上の、ケイ素原子に結合したRを含む分岐状ポリオルガノシロキサン (A)の40〜100重量%
からなるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン;
(B)SiO4/2単位およびR(CHSiO1/2単位(式中、Rは、水素原子またはアルキル基を表す)からなり、分子中に3個以上の、ケイ素原子に結合した水素原子を含むポリアルキルハイドロジェンシロキサン (A)に存在するR1個に対するケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5〜2.0個になる量;ならびに
(C)白金族金属化合物 白金系金属原子を、(A)に対して0.1〜1,000重量ppm含有する量
を含む光学用硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、上記の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を、硬化させて得られる光学用硬化物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、線膨張係数が小さく、かつ熱衝撃によるクラックを生じない、そして光学用レンズとして充分な硬さと透明性を有する硬化物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)ベースポリマー、(B)架橋剤および(C)硬化触媒を含み、(A)のアルケニル基と(B)のケイ素−水素結合との間の付加反応(ヒドロシリル化反応)によって硬化して、硬化物を与える。
【0012】
(A)ベースポリマーは、(1)直鎖状ポリオルガノシロキサン0〜60重量%、好ましくは0〜40重量%;および(2)SiO4/2単位と、R(CHSiO1/2単位(式中、Rは、前述のとおりである)とからなる分岐状ポリオルガノシロキサン40〜100重量%、好ましくは60〜100重量%からなるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンである。このようにアルケニル基を有する(2)分岐状ポリオルガノシロキサンを単独で用いるか、(1)直鎖状と(2)分岐状のポリオルガノシロキサンを組み合わせて用いることにより、硬化物に優れた機械的性質、特に適度の硬さ、低い線膨張係数、および耐熱衝撃性を付与することができる。(1)が60重量%を越え、(2)が40重量%未満では、機械的強度が弱く、線膨張係数が大きい硬化物しか得られない。また、硬化物に優れた機械的性質を与え、かつ組成物の調製や硬化の際の成形が容易な液状物として扱うには、(1)が5〜35重量%、(2)が65〜95重量%であるか、(2)を単独で用いる場合には、その性状が液状のものを用いることがさらに好ましい。
【0013】
アルケニル基R1としては、ビニル、アリル、3−ブテニル、5−ヘキセニルなどが例示され、合成が容易で、また硬化前の組成物の流動性や、硬化後の組成物の耐熱性を損ねないという点から、ビニル基が最も好ましい。Rが存在する個々のシロキサン単位におけるR1の數は、合成が容易なことから、1が好ましい。
【0014】
(1)アルケニル基含直鎖状ポリオルガノシロキサンは、23℃における粘度が10〜10,000mm2/sであり、好ましくは50〜1,000mm2/sである。10mm2/s未満では揮発しやすく、硬化反応中に組成物の組成を安定に保持できない。一方、10,000mm2/sを越えると、充分な硬さを有する硬化物が得られない。Rは、分子中に少なくとも2個存在する。Rは、分子末端に存在する方が高い反応性を示すので、Rのうち2個は、両末端に存在することが好ましい。ケイ素原子に結合する残余の有機基は、(1)に比較的低い粘度を与えて取扱いを容易にし、かつ硬化物にポリオルガノシロキサン固有の物性をバランスよく付与することから、メチル基が用いられるが、耐熱性および/もしくは耐寒性、または硬さを高める目的で、ケイ素原子に結合した有機基の30%まで、好ましくは20%までの範囲で、フェニル基が存在してもよい。フェニル基が30%を越えると、他のポリシロキサン成分、特に(2)アルケニル基含有分岐状ポリオルガノシロキサンとの相溶性が悪く、光学的に均質な硬化物を与えない。
【0015】
(2)アルケニル基含分岐状ポリオルガノシロキサンは、前述の(1)とともに、本発明の組成物のベースポリマーとなり、特に硬化後の組成物に優れた機械的強度を与えるとともに、線膨張係数を下げる成分である。特に、本発明の組成物のように低いH/Vi領域(後述)を選択する場合に、優れた機械的強度を有するゴム状弾性体を得るためには不可欠な成分である。この(B)成分は、SiO4/2単位とR(CHSiO1/2単位(式中、Rは、前述のとおりである)からなり、特に硬化反応において架橋点となるように、R中、1分子あたり少なくとも3個のRが存在する。硬化した組成物に、優れた機械的強度を与えるには、R(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位の比率が、モル比として1:0.55〜1:3の、常温で樹脂状固体ないし高粘性液状のものが好ましく、1:0.8〜1:2の範囲のものがさらに好ましい。なお、(2)は、固体ないし粘稠な半固体の場合は、共加水分解の段階から有機溶媒の溶液として取扱い、他の成分と混合した段階で、溶媒を留去するのが実際的である。なお、オルガノクロロシラン類とアルコキシシラン類を共加水分解・縮合させる方法によって得られる(2)成分には、シラノール基やアルコキシ基のようなケイ素官能基が存在するが、本発明においては、水酸化カリウムのようなアルカリ性物質で処理することにより、上記ケイ素官能基を縮合させて、ケイ素官能基が存在しないものを用いることが、成形の際の優れた離型性が得られることから好ましい。
【0016】
(B)架橋剤は、分子中にSi−H結合を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、該Si−H結合と(A)ベースポリマーのアルケニル基との間のヒドロシリル化反応によって硬化物を与える。硬化物に高い架橋密度を与え、それによって硬化物に高い硬度と低い線膨張係数を付与することから、SiO4/2単位とR(CHSiO1/2単位(式中、Rは、前述のとおりである)からなる分岐状ポリメチルハイドロジェンシロキサンが選択され、取扱いやすい適切な粘度を有しつつ、上記の目的を達成することから、R(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位の比率が、SiO2単位1モルに対してR(CHSiO1/2単位1.5〜2.2モルが好ましく、1.8〜2.1モルがさらに好ましい。典型的には、[R(CHSiO1/2[SiO4/2または[R(CHSiO1/210[SiO4/2のように、4〜5個のQ単位が環状シロキサン骨格を形成し、各Q単位に2個のM’単位が結合しているものが、特に好ましい。
【0017】
(B)成分中のRに含まれる、ケイ素原子に直接結合した水素原子の數は、(B)成分全体として、平均1分子当たり3個以上である。平均3個未満では、必要な硬さの硬化物を得るために充分な架橋密度が得られない。Rの残余は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルのような直鎖状または分枝状のアルキル基であり、1種でも、2種以上の混成でもよい。(B)成分の粘度を過度に上げることなく、また硬化物に耐熱性をはじめとするシロキサンの特徴をバランスよく付与するために、アルキル基はメチルが最も好ましい。
【0018】
(B)成分の量は、(A)に存在するR1個に対するケイ素原子に結合した水素原子の数の比(H/Vi)が0.5〜2.0になる量、好ましくは0.7〜1.8になる量である。H/Viが0.5未満では充分な物理的性質を有する硬化物が得られず、2.0を越えると、硬化物中に残存するSi−H結合が多くなり、加熱により重縮合反応が生じ、もろくなるために熱履歴によってクラックを生じやすく、耐熱性が悪くなる。
【0019】
本発明で用いられる(C)成分の白金系触媒は、(A)成分のアルケニル基と(B)成分のヒドロシリル基との間の付加反応を促進させるための触媒である。白金族金属化合物としては、白金、ロジウム、パラジウムのような白金族金属原子の化合物が用いられ、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールの反応生成物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ケトン錯体、白金−ホスフィン錯体のような白金化合物;ロジウム−ホスフィン錯体、ロジウム−スルフィド錯体のようなロジウム化合物;パラジウム−ホスフィン錯体のようなパラジウム化合物などが例示される。これらのうち、(A)成分への溶解性がよく、触媒活性が良好な点から、白金−ビニルシロキサン錯体が好ましい。
【0020】
(C)成分の配合量は、優れた硬化速度が得られることから、(A)成分に対して、白金族金属原子換算で通常0.1〜1,000重量ppmであり、好ましくは0.5〜200重量ppmである。
【0021】
本発明の組成物に、硬化前の段階で適度の流動性を与え、硬化物にその用途に応じて要求される高い機械的強度を付与するために、硬化物の透明性などの特徴を損なわない範囲で、微粉末の無機質充填剤を添加してもよい。このような無機質充填剤としては、煙霧質シリカ、アークシリカのような乾式微粉末シリカが例示され、煙霧質シリカが好ましい。また、透明性を上げるために、このようなシリカの表面を、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンのようなシラザン化合物;オクタメチルシクロテトラシロキサンのようなポリオルガノシロキサンなどで処理して用いることが好ましい。これらの充填剤の添加量は、組成物の使用目的を損なわないかぎり限定されない。
【0022】
さらに、本発明の組成物には、硬化物の硬さや透明性などの本発明の目的を損なわないかぎり、必要に応じて、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールのようなアセチレン化合物、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのような、環ケイ素原子にビニル基が結合したビニル基含有環状シロキサンなどの硬化遅延剤;セリウム化合物のような無色の耐熱性向上剤など、各種の添加剤を配合してもよい。また用途によっては、本発明の組成物を、トルエン、キシレンのような有機溶媒に溶解ないし分散させて用いてもよい。
【0023】
(A)成分のうち(1)は、たとえば水酸化カリウムのようなアルカリ性触媒の存在下に、所望量のアルケニル基と、必要に応じてフェニル基を与えるように、直鎖状シロキサンオリゴマーと環状シロキサンオリゴマーを平衡化して製造することができる。(A)成分のうち(2)と(B)成分は、それぞれSiO4/2単位の原料となるケイ素化合物、たとえばテトラエトキシシランまたはその部分縮合物を、目的物に相当するトリオルガノクロロシランおよび/またはジオルガノハイドロジェンクロロシランと共加水分解・縮合させて、製造することができる。(2)の場合には、トルエン、キシレンのような有機溶媒中で共加水分解を行ってもよい。
【0024】
本発明の組成物は、(A)〜(C)成分、およびさらに必要に応じて配合される他の成分を、万能混練機、ニーダーなどの混合手段によって均一に混練して調製することができる。なお、(A)成分のうち(2)は、前述のように好ましくは固体ないし半固体の樹脂状物である。したがって、取扱いを容易にするために、共加水分解をトルエン、キシレンなどの有機溶媒の存在下に行い、以後の工程を有機溶媒溶液として進め、(1)と混合した後、減圧加熱により溶媒を留去して、(A)成分を形成させてもよい。また、安定に長期間貯蔵するために、(B)成分と(C)成分を別途の容器に保存し、たとえば(A)成分の一部および(C)成分を含む主剤部と、(A)成分の残部および(B)成分を含む硬化剤部を、それぞれ別の容器に保存しておき、使用直前に混合し、減圧で脱泡して使用に供してもよい。
【0025】
本発明のポリオルガノシロキサン組成物を、使用すべき部位に注入、滴下、流延、注型、容器からの押出しなどの方法により、またはトランスファー成形や射出成形による一体成形によって、LEDのような対象物と組み合わせ、室温で放置または加熱して硬化させることにより、硬化物を得ることができる。
【0026】
本発明の組成物を硬化させて得られる光学的硬化物は、線膨張係数が通常3.0×10-4/K以下、好ましくは2.5×10-4/K以下である。このように線膨張係数を低くすることにより、レンズなどをLEDや光学器械などの部品に固定した後の熱履歴や熱衝撃による内部ひずみが緩和され、レンズなどの亀裂を防ぐことができる。
【0027】
本発明の組成物を硬化させて得られる光学的硬化物は、JIS K6253のタイプAデュロメータによる硬さが通常80以上、好ましくはタイプDデュロメータによる硬さが30以上、さらに好ましくは同40以上の硬度を有し、機械的強度があり、表面に傷がつきにくく、またゴミなどが付着しにくい。また、線膨張係数が低く、かつ温度履歴によるクラックを生じない。したがって、これを成形し、必要に応じてさらに加工することにより、各種の光学的用途、特に発光ダイオード用および光学レンズ用に用いることができる。
【0028】
たとえば、本発明の硬化性組成物を、LEDを搭載した基板に、LEDを封止するように、かつ気泡が残らないように、注型などの方法で送り込み、硬化させて、LEDを内包したレンズの成形品を作製することができる。また、あらかじめ各種の方法で成形したレンズをLED部品にセットし、LEDをそこに嵌め込むか、接着剤で固定することもできる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例において、部は重量部、組成の%は重量%を示し、粘度は23℃における粘度を示す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0030】
以下、シロキサン単位を、次のような記号で示す。
単位: (CH33SiO1/2
単位: (CH32HSiO1/2
単位: (CH32(CH2=CH)SiO1/2
D単位: −(CH32SiO−
単位: −(CH3)HSiO−
単位: −(CH3)(CH2=CH)SiO−
ff単位: −(C652SiO−
単位: SiO4/2(4官能性)
【0031】
実施例および比較例に、下記のベースポリマー、架橋剤、触媒およびシリカを用いた。
A−1:両末端がM単位で封鎖され、中間単位がD単位およびD単位からなり、中間単位の有機基中10%がビニル基であり、23℃における粘度が200mm2/sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサン;
A−2:両末端がM単位で封鎖され、中間単位がD単位からなり、23℃における粘度が200mm2/sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサン;
A−3:両末端がM単位で封鎖され、中間単位の10モル%がDff単位で、残余がD単位であり、23℃における粘度が300mm2/sである直鎖状ポリメチルビニルフェニルシロキサン;
A−4:両末端がM単位で封鎖され、中間単位の20モル%がDff単位、10モル%がD単位で、残余がD単位であり、23℃における粘度が4,000mm2/sである直鎖状ポリメチルビニルフェニルシロキサン;
A−5:M単位、M単位およびQ単位からなり、モル単位比がM58で示される分岐状の固体ポリメチルビニルシロキサンの60%キシレン溶液;
A−6:M単位、M単位およびQ単位からなり、モル単位比がM53.5で示される分岐状の液状ポリメチルビニルシロキサン;
B−1:M単位およびQ単位からなり、モル単位比がM8で示される分岐状ポリメチルハイドロジェンシロキサン;
B−2:平均単位式MD2020Mで示される直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン;
C−1:塩化白金酸をD4で示される環状シロキサンと加熱して調製され、白金含有量が2重量%である錯体;
S−1:ヘキサメチルジシラザンで表面処理を行った、比表面積300mm2/gの煙霧質シリカ。
また、硬化遅延剤として、1−エチニル−1−シクロヘキサノールを用いた。組成表では、ECHと略記する。
【0032】
実施例1〜6、比較例1〜3
減圧加熱装置および撹拌機を備えた容器に、A−5と他の(A)成分を仕込み、均一になるまで撹拌・混合した後、A−5に含まれるキシレンを140℃/667Pa{5mmHg}で留去して、液状の(A)成分混合物を調製した。万能混練機を用いて、表1に示す配合比になるように、前述の(A)成分混合物の一部および(C)触媒からなる主剤部;ならびに(A)成分混合物の残部、(B)架橋剤および硬化遅延剤を含む硬化剤部を、それぞれ調製した。なお、実施例4の組成物に配合したS−1は、主剤部と硬化剤部に1:1に配分した。また、主剤部と硬化剤部のそれぞれ合計量がほぼ重量比で1:1になるように、(A)成分の配分を行った。主剤部と硬化剤部を混合し、脱泡して、厚さ6mmのシート状に注型し、150℃のオーブン中で1時間加熱して硬化させた。無色透明で、若干の伸びを有する樹脂状の硬化物が得られた。
【0033】
実施例7
万能混錬機を用いて、表1に示す配合になるように、A−6の一部およびC−1からなる主剤部;ならびにA−6の残部、B−1および硬化遅延剤を含む硬化剤部を、それぞれ調製した。ただし、A−6は、主剤部と硬化剤部が重量比で1:1になるように配分した。主剤部と硬化剤部の混合、脱泡、注型および硬化を、実施例1と同様にして行い、無色透明で、若干の伸びを有する樹脂状の硬化物を得た。
【0034】
組成物の硬化性、および硬化物の物性の評価を、次のようにして行った。
(1)硬化性試験:(株)エーアンドディー社製、キュラストメータWR型により、150℃において、t10およびt90を測定した。
(2)硬さ:シートを23℃で24時間放置した後、JIS K6253により、タイプAデュロメータおよびタイプDデュロメータによって硬さを測定した。
(3)光透過率:23℃において、日立製作所製、スペクトロフォトメータU−3410型を使用し、石英セル中の未硬化試料(厚さ10mm)について、波長400nmおよび800nmの光の透過率を測定した。
(4)線膨張係数:SII社製、熱機械的分析装置TMA/SS6100型によって測定した。
(5)熱衝撃試験:シートを恒温槽に入れて、熱風を送って120℃に15分保ち、ついで冷凍機から冷空気を送って恒温槽を−40℃に15分保ち、これを1,000サイクル繰り返して、クラックの発生の有無を観察した。
【0035】
各実施例および比較例の配合比、ならびに組成物の硬化性と硬化物の物性は、表1に示すとおりであった。なお、配合中、A−4の量は、シロキサン分換算で示す。また、A−1〜A−4およびS−1は、それぞれ主剤と硬化剤に分けて配合したが、表1の組成は、その合計量を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜7で得られた、本発明の組成物から得られた硬化物は、いずれも低い線膨張係数を示し、また熱衝撃試験でクラックを生じなかった。また、煙霧質シリカを配合した実施例4を除いて、優れた光透過性を示した。実際には厚さ1mm程度で使用されることが多く、この数値は、実質的に充分な透明性を示すものである。それに対して、H/Viの高い比較例1の硬化物は、熱衝撃試験でクラックを生じ、H/Viの低い比較例2の硬化物は、高い線膨張係数を示した。また、架橋剤として直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサンを用いた比較例3では、満足すべき硬さの硬化物が得られなかった。
【0038】
なお、実施例1の組成物を流延し、得られた厚さ1mmの未硬化組成物の23℃における屈折率を、ATAGO社のアッベ屈折計によって測定したところ、1.413であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物およびその硬化物は、特に硬化物の高い硬さを生かして、透明性とともに耐熱性と耐衝撃性を必要とする各種の光学的レンズとして有用である。また、LEDの封止、保護、レンズなどに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(1)ケイ素原子に結合した有機基中、分子中に2個以上のR1(式中、R1は、アルケニル基を表す)を含有し、30%までがフェニル基であってよく、残余がメチル基であり、23℃における粘度が10〜10,000mm2/sである直鎖状ポリオルガノシロキサン (A)の0〜60重量%;および
(2)SiO4/2単位およびR(CHSiO1/2単位(式中、Rは、Rまたはメチル基を表す)からなり、分子中に3個以上の、ケイ素原子に結合したRを含む分岐状ポリオルガノシロキサン (A)の40〜100重量%
からなるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン;
(B)SiO4/2単位およびR(CHSiO1/2単位(式中、Rは、水素原子またはアルキル基を表す)からなり、分子中に3個以上の、ケイ素原子に結合した水素原子を含むポリアルキルハイドロジェンシロキサン (A)に存在するR1個に対するケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5〜2.0個になる量;ならびに
(C)白金族金属化合物 白金系金属原子を、(A)に対して0.1〜1,000重量ppm含有する量
を含む、透明な硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
が、ビニル基である、請求項1記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
のうちのアルキル基がメチルである、請求項1または2記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
(C)が、白金−ビニルシロキサン錯体である、請求項1〜3のいずれか一項記載のポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載のポリオルガノシロキサン組成物を、硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
線膨張係数が3.0x10−4/K以下である、請求項5記載の硬化物。
【請求項7】
光学レンズ用である、請求項5または6記載の硬化物。
【請求項8】
発光ダイオード用である、請求項5〜7のいずれか一項記載の硬化物。

【公開番号】特開2006−335857(P2006−335857A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161533(P2005−161533)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000221111)ジーイー東芝シリコーン株式会社 (257)
【Fターム(参考)】