説明

透明樹脂板の連続的製造方法

【課題】外観が良好であり、安全な透明樹脂板の連続的製造方法を提供する。
【解決手段】移送される帯状体にメチルメタクリレートを30質量%以上含有する重合性液体を供給し、前記帯状体上に展延した前記重合性液体の上に活性エネルギー線透過性フィルムを繰り出しながら被せ、前記フィルムの上から照射強度1mW/cm〜30mW/cmの活性エネルギー線を照射して前記重合性液体を硬化させる透明樹脂板の連続的製造方法であって、
前記重合性液体の帯状体への供給部、および活性エネルギー線透過性フィルム繰り出し部を非密閉型クリーンブース内に配設し、前記クリーンブース上方からクリーンブース内へクリーンエアを、特定の換気回数となるように供給し、かつ排気風量に対する供給風量の比Xが特定範囲となるように供給する透明樹脂板の連続的製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂板の連続的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯型ゲーム機、カーナビゲーションシステム、ポータブルAV機器等に代表される小型ディスプレイにおいて、画像の精細度が近年、劇的な進歩を見せており、これらディスプレイの表面を保護する透明樹脂シートも、これまで以上に高い透明性と光学歪の少なさを求められるようになってきている。
【0003】
透明樹脂の一つとして使用されるメタクリル樹脂は、その加工の容易さ、取り扱い易さ、軽量、安価などの特長に加え、高い透明性、複屈折の少なさなどから、光ディスク、ピックアップレンズ、液晶ディスプレイ用の光学フィルムなど、様々な光学用途に用いられている。
【0004】
特に、携帯電話に関しては、世界的な筐体薄型化の流れを背景とし、筐体パーツの精度はμmオーダーで問われる時代になってきており、ディスプレイ部分の保護板の原材料である透明樹脂シートの表面欠陥等についての許容値が年々厳しくなっている。
【0005】
透明樹脂シートを得る方法として、移送される下部支持シート上に光重合性モノマー組成物を供給し、その上に下部支持シートと同速度で同一方向に移送される上部支持シートを積層した後、光重合性モノマー組成物に活性線を照射して硬化させる連続的製造方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら特許文献1には、樹脂表面に付着する異物を抑制することに関しては何ら記載されていない。
【0006】
微小な塵、埃の混入による異物欠陥に対して、走行するシート状物に塗工を行う塗工装置を非密閉型のクリーンブース内部に設けることが提案されている(特許文献2)。このようなクリーンブースを用いる場合、塗工物であるメタクリル樹脂原料の重合性液体は、その一部が可燃性ガスとして徐々に揮発しクリーンブース内に蓄積する可能性があり、安全性に留意する必要がある。可燃性ガスを排気するため、クリーンブース内の換気回数を多くすると、クリーンブース内の可燃性ガス濃度は低下するが、クリーンエアの流れが乱れて、樹脂原料の重合性液体が固化する際、その流れの影響により、得られる樹脂板の表面外観が悪化するという問題があった。特許文献2には、クリーンブース内の清浄度と換気回数の関係については記載されているが、クリーンエアの塗工物への影響防止及び可燃性ガスの滞留防止を同時に達成させることに関しては全く開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−011742号公報
【特許文献2】特開2006−255559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、外観が良好な樹脂板を安全に製造し提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、移送される帯状体にメチルメタクリレートを30質量%以上含有する重合性液体を供給し、前記帯状体上に展延した前記重合性液体の上に活性エネルギー線透過性フィルムを繰り出しながら被せ、前記フィルムの上から照射強度1mW/cm〜30mW/cmの活性エネルギー線を照射して前記重合性液体を硬化させる透明樹脂板の連続的製造方法であって、
前記重合性液体の帯状体への供給部、および活性エネルギー線透過性フィルム繰り出し部を非密閉型クリーンブース内に配設し、前記クリーンブース上方からクリーンブース内へクリーンエアを、前記クリーンブース内容積の換気回数が5〜150回/hrの範囲となるように供給し、かつ前記クリーンブース下方から排気する風量に対する前記クリーンブース上方から供給する風量の比Xが1.05〜1.25となるように供給する透明樹脂板の連続的製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、外観が良好な樹脂板を得ることができ、製造時における可燃性ガス濃度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を実施するための設備の一例を示す概略構成図である。
【図2】樹脂板サンプル1
【図3】樹脂板サンプル2
【図4】樹脂板サンプル3
【図5】樹脂板サンプル4
【図6】樹脂板サンプル5
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で使用する設備例を図1に示すが、これに限定されるものではない。
【0013】
移送される帯状体にメチルメタクリレートを30質量%以上含有する重合性液体を供給し、前記帯状体上に展延した前記重合性液体の上に活性エネルギー線透過性フィルムを繰り出しながら被せ、前記フィルムの上から照射強度1mW/cm〜30mW/cmの活性エネルギー線を照射して前記重合性液体を硬化させ、透明樹脂板を連続的に製造する。
【0014】
前記帯状体は、重合性液体の帯状体上での厚み均一性の観点から実質的に水平方向に移送されることが好ましい。また連続生産性の観点から帯状体は、エンドレスベルトであることが好ましい。帯状体の材質には特に制限は無く、例えば、樹脂、金属等を使用できる。金属としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。また、これら帯状体の重合性液体供給側の表面を研磨処理したものも使用できる。帯状体が水平状態での走行を維持するためには、高い剛性を有することが好ましい。特に金属製の帯状体は、一般に、薄くても比較的高い剛性を有するので好ましい。中でも耐久性の観点から、ステンレス鋼製であることが好ましい。また、製造設備の簡易化の観点から、帯状体を、活性エネルギー透過性フィルムとすることもできる。帯状体の厚さは、0.1mm以上であることが望ましい。また、帯状体の水平方向のフラット性を保つため、帯状体の走行方向に沿って張力をかけることもできる。
【0015】
重合性液体の帯状体への供給部、および活性エネルギー線透過性フィルム繰り出し部を非密閉型クリーンブース内に配設する。
【0016】
帯状体はクリーンブース内に配設することが好ましい。帯状体が水平に移送するエンドレスベルトである場合は、少なくともその上側ベルトをクリーンブース内に配設することが好ましい。
【0017】
前記クリーンブースの形状は、内部のクリーンエアの流れが大きく乱れないものであれば特に限定されないが、コンパクトなサイズにする方が経済的である。
【0018】
クリーンブースの構造材料としては、内部が確認できる透明樹脂が好ましく、例えばメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0019】
クリーンブース内へ吹き込むクリーンエアは、高性能フィルタを通したものが好ましい。高性能フィルタとは、直径3μmの粒子を99.97%以上捕集可能なフィルタのことをいう。高性能フィルタとしては、所望の清浄度を得ることのできる公知のフィルタから適宜選んで用いることができ、例えばHEPAフィルタ等が挙げられる。
【0020】
クリーンブース上方に配設したクリーンエア供給口からクリーンエアをクリーンブース内へ供給し、クリーンブース下方に配設した排気口から排気する。本クリーンブースは非密閉型であり、供給するクリーンエアの一部は排気口以外の開口部から排出される。クリーンエア供給口から供給されるクリーンエアを、前記クリーンブース内容積の換気回数が5〜150回/hrの範囲となるようにクリーンブース内へ吹き込む。換気回数が前記範囲内であれば外観良好な樹脂板が得られ、かつ可燃性ガスの滞留も無く製造時の安全も確保されるが、換気回数が5回/hr以下となるとクリーンブース内部の清浄度が十分ではなくなり樹脂板への異物混入等外観良好な樹脂板が得られない可能性が有り、かつ可燃性ガスの滞留の恐れがある。また換気回数が150回/hr以上であるとクリーンブース内のクリーンエアの流れが乱れて、樹脂原料の重合性液体が固化する際、その流れの影響により、得られる樹脂板の表面外観が悪化する。
【0021】
前記クリーンブース下方から排気する風量(排気風量)に対する前記クリーンブース上方から供給する風量(供給風量)の比Xが1.05〜1.25となるように風量を調整する。前記比Xが上記範囲内であれば外観良好な樹脂板が得られ、かつ可燃性ガスの滞留も無く運転上の安全も確保されるが、前記比Xが1.25を超えると排気風量が足りず可燃性ガスの滞留の恐れが有り、前記比Xが1.05未満であると排気風量が大きすぎてクリーンブース内の正圧が確保できなくなることで清浄度が十分ではなくなり樹脂板への異物混入等外観良好な樹脂板が得られない可能性が有る。この時風量の調整は、好ましくは送風機モーターにインバーターを接続し、周波数によりモーター回転数を調整し風量を調整する方法であるが、ダクト上に設けたダンパーの開度を調整することで風量を調整することも出来る。
【0022】
本発明で使用する重合性液体は、得られる樹脂板の光学性能、耐候性の観点から、メチルメタクリレートを30質量%以上含有するものである。本発明において使用されるメチルメタクリレート以外の重合性モノマーとしては、例えば、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物、N−フェニルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド、N−t-ブチルマレイミド等のマレイミド誘導体、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の窒素含有単量体、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、エチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート等の架橋剤などが挙げられ、これらの中から1種または複数種選定し使用される。ここで「(メタ)アクリ」とは「メタクリ」または「アクリ」のことをいう。
【0023】
前記重合性液体には、各種の活性エネルギー線分解重合開始剤を使用することができる。硬化した樹脂の透明性を阻害しない限り、特に制限されず、代表的には、アセトフェノン系またはベンゾフェノン系の活性エネルギー線活性重合開始剤が挙げられ、特に1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾインエチルエーテル等を用いることが好ましい。
【0024】
上記の活性エネルギー線分解重合開始剤は重合性液体100質量部に対し、通常0.01〜2質量部の割合で使用される。使用量が少ないと重合速度が上がらず、重合時間を多く要する結果となり、多いと得られる樹脂板の光学性能、耐候性に影響を及ぼすため好ましくは0.05〜1質量部の割合で使用される。
【0025】
本発明において使用される重合性液体に含有する任意の他の成分としては、熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、離型剤、重合禁止剤などを使用することができる。
【0026】
本発明において重合性液体を帯状体上に供給する方法としては、特に制限されるものではなく、通常の配管、ホースからの供給や、各種コーティング方法が使用できる。重合性液体を供給し、連続的にシート形状とするため、注入ダイにより重合性液体をシート状に供給する方法が好ましい。重合性液体をシート形状にする方法としては、前記ダイからの供給や、エンドレスベルト上に供給した重合性液体をロールと、エンドレスベルトを介したロールによって押し拡げる方法などもあり、これらを組み合わせた方法でも良い。
【0027】
本発明において使用される活性エネルギー線透過性フィルムについては、透明可撓性の合成樹脂フィルムにて構成され、重合時の熱によって軟化しないように100℃以上の軟化点を有するフィルムで構成されることが好ましい。前記記フィルムとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の合成樹脂フィルムが挙げられ、活性エネルギー線の透過性、表面性状の高さからポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、その厚みは剛性の観点から10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。コストの点からその厚みは300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0028】
また、活性エネルギー線透過性フィルムの重合性液体と接する側の表面は、製品として得られる樹脂板の表面に転写されるため、JIS B0601で規定する表面粗さ(Ra)としては100nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。
【0029】
本発明において照射する活性エネルギー線としては、X線、紫外線、電子線等が挙げられる。特に、紫外線が好ましい。
【0030】
紫外線は、各種紫外線照射装置により照射され、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、殺菌灯、ブラックライト、紫外LEDなどが使用できる。
【0031】
活性エネルギー線の照射強度としては、重合性液体に含有する活性エネルギー線分解重合開始剤濃度と照射時間との関係により決定されるが、本発明の重合性液体においては、モノマーの成長速度の観点から1mW/cm〜30mW/cmの範囲である。照射強度が弱すぎると重合開始剤の分解量が少ないことにより重合速度が遅くなり、逆に強すぎると、開始剤分解量を増やしても、本法での重合性液体ではモノマーの成長速度が追いつかず、停止反応に多くが消費されてしまうことで、樹脂板の分子量低下と、活性エネルギー線が過剰に照射されることによる樹脂板の黄変が起きてしまう。
【0032】
本発明において樹脂板の生産速度としては、0.5〜15m/minであることが好ましく、1〜10m/minであることがより好ましい。速度が遅すぎると、製品として得られる樹脂板の生産量が少なくなってしまう問題があり、速度が速すぎると必要重合時間を得るための活性エネルギー線照射区間が大きくなる。
【0033】
本発明において活性エネルギー線を照射して硬化させる際の温度条件としては、重合速度や粘性条件などにより選定できるが、重合性液体に活性エネルギー線を照射する際には、モノマーの沸点以下であることが好ましい。
【0034】
活性エネルギー線硬化後、残存モノマーを減少させる観点から、使用するモノマーとポリマーの組み合わせから得られるガラス転移温度Tg以上の温度に熱処理することも適宜可能であり、本発明では100℃以上の熱処理を行うことが好ましい。
【0035】
本発明により得られる透明樹脂板の厚みは、規定されるものではないが0.1〜3mmであることが好ましい。樹脂板の厚みが厚すぎると重合発熱の除去が間に合わなくなり、未重合モノマーが沸騰し、樹脂板内に泡が発生しやすくなる。
【0036】
クリーンブース内の可燃性ガスは、メチルメタクリレートが主成分であり、安全性の観点から当該ガス濃度は、500ppm以下が好ましい。
【0037】
樹脂板の厚みは、0.1〜3mmの範囲とすることが好ましい。0.1mmより薄い板は本プロセスでの製造では生産効率が低下するためあまり現実的ではなく、また3mmより厚い板は本プロセス以外でも外観良好な板を得ることが可能で他のプロセスに対する優位性が失われるためである。
【0038】
重合性液体の硬化後に100℃以上の熱処理を行うことが好ましい。熱処理工程がなければ樹脂板内に未反応モノマーが多く残り樹脂板の物性が悪化してしまう。熱処理の方法としては150℃程度の熱風や、赤外線ヒーターを用いて加熱を行うことが好ましい。
【0039】
活性エネルギー線透過性フィルム繰り出し装置は、テンションピックアップと進行方向の逆トルクを発生させるモーター、及びパウダクラッチからなり、フィルムテンションを目標値一定になるようパウダクラッチの出力を制御する方法が好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
(樹脂板の外観)
シャドー試験による評価;光学歪、泡、異物等の表面欠陥
尚、シャドー試験とは、暗室にて樹脂板に45°の角度で光束2000 lmの光を透過させた像をスクリーン上に写すことで、通常肉眼では確認しにくい欠陥を強調して確認する評価方法である。
(可燃性ガス濃度の測定)
ガス濃度の測定はガステック社製ガス検知管(No.149メタクリル酸メチル)を用いた。
(実施例1)
メチルメタクリレートモノマー60質量部と、メチルメタクリレートポリマービーズ(三菱レイヨン社製、商品名;VHK000)40質量部を80℃で30分間かけて加熱溶解させた混合物100質量部に対し、紫外線分解重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア184)を0.5質量部、離型剤としてジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(三井サイアナミッド社製、商品名;エアロゾルOT−100)を0.05質量部添加し、光重合性液体を調整し(メチルメタクリレート含有量99.7%)、調合時の泡を抜くために50℃にて2時間静置させた後、常温まで自然冷却させた。
【0041】
図1に示されるのと同様の装置を使用し、エンドレスベルト7としては幅500mmのステンレス製エンドレスベルト(以下、「ステンレスベルト」と略す。)、活性エネルギー線透過性フィルムとしては幅500mmで厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、商品名;コスモシャイン A4100)、紫外線照射装置9として蛍光ランプ(東芝ライテック社製、形名;FL30S−BL)、加熱機構10については130℃熱風による加熱を使用した。
【0042】
ステンレスベルトと活性エネルギー線透過性フィルムの搬送速度を0.3m/minとし、ステンレスベルトテンションを1000kgf(単位幅あたりのテンション2000kgf/m)、フィルムのテンションを10kgf(単位幅あたりのテンション20kgf/m)として供給ダイ5から光重合性液体6を幅400mm、厚さ0.4mmのシート状に供給し、活性エネルギー線(紫外線)透過性フィルム2を被せた。
【0043】
図1に示すように、供給ダイ5及び活性エネルギー線透過性フィルム繰り出し部1をクリーンブース3で囲んだ。該クリーンブース3はSUS製アングルにポリカーボネート板を貼り付けたものを使用し、内容積は2.5mとした。クリーンブース3の上部にクリーンエア供給口4を、下部に排出口15を設けた。クリーンエア供給口4の側および排気口15の側にそれぞれブロワー(図示せず)を配設した。クリーンエア供給口4からHEPAフィルタ(図示せず)を通すことによりクリーンエアを供給した。クリーンブースへの供給風量=1.5m/min(換気回数36回/hr)、クリーンブースからの排気風量=1.4m/min(換気回数34回/hr)とした。したがって、クリーンブース下方から排気する風量に対するクリーンブース上方から供給する風量の比Xは1.07である。供給風量および排気風量は、ブロワーの回転数をインバータ制御により変えることにより調整した。なお、供給風量および排気風量は、供給口と排気口のそれぞれの開口面積と、供給口と排気口におけるそれぞれの風速(風速計により計測)から算出した。
【0044】
その後、紫外線照射装置9により5mW/cmの照射強度で10分間紫外線を照射し、後段加熱機構10により130℃にて5分間熱処理した後、90℃に空冷し、透明樹脂板からステンレスベルト及び活性エネルギー線透過性フィルムを剥離した(サンプル1)。
【0045】
得られた透明樹脂板はシャドー試験により評価した。
【0046】
本実施例で得られた樹脂板の表面は平滑で光学歪がなく、良好な外観の樹脂板が得られた。結果を図2に示す。
【0047】
また、透明樹脂板原料注入中、注入ダイより上方100mmの位置で可燃性ガス濃度の測定を行ったところガスは検知されず0ppmであった。
(実施例2)
クリーンブースへの供給風量=6m/min(換気回数144回/hr)、排気風量=5.6m/min(換気回数134回/hr)に変更し、それ以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た(サンプル2)。このとき、クリーンブース下方から排気する風量に対するクリーンブース上方から供給する風量の比Xは1.07である。
【0048】
得られた樹脂板をシャドー試験したところ、サンプル1と同様、樹脂板の表面は平滑で光学歪がなく、良好な外観の樹脂板が得られた。結果を図3に示す。
【0049】
また、透明樹脂板原料注入中、注入ダイより上方100mmの位置で可燃性ガス濃度の測定を行ったところガスは検知されず0ppmであった。
(比較例1)
クリーンブースからの排気風量をゼロ(換気回数0回/hr)に変更し、それ以外は実施例1と同様にして樹脂板を得た(サンプル3)。
【0050】
得られた樹脂板をシャドー試験したところ、サンプル1と同様、樹脂板の表面は平滑で光学歪がなく、良好な外観の樹脂板が得られた。結果を図4に示す。
しかし、透明樹脂板原料注入中、注入ダイより上方100mmの位置で可燃性ガス濃度の測定を行ったところガス濃度が500ppmという値を示した。
(比較例2)
クリーンブースからの排気風量=5.6m/min(換気回数134回/hr)に変更し、それ以外は実施例1と同様にして樹脂板を得た(サンプル4)。
【0051】
得られた樹脂板をシャドー試験したところ、サンプル1とは異なり、樹脂板には断続的に泡が入り外観の非常に悪い樹脂板となっていた。結果を図5に示す。
また、透明樹脂板原料注入中、注入ダイより上方100mmの位置で可燃性ガス濃度の測定を行ったところガスは検知されず0ppmであった。
(比較例3)
クリーンブースへの供給風量=6m/min(換気回数144回/hr)に変更し、それ以外は実施例1と同様にして樹脂板を得た(サンプル5)。
【0052】
得られた樹脂板をシャドー試験したところ、サンプル1とは異なり、樹脂板には断続的に泡が入っており、泡の入る度合いはサンプル4に比べると少なかったが外観の悪い樹脂板となっていた。結果を図6に示す。
また、透明樹脂板原料注入中、注入ダイより上方100mmの位置で可燃性ガス濃度の測定を行ったところガスは検知されず0ppmであった。
【0053】
以上の実施例、比較例の結果を表1にまとめる。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、透明樹脂板の製造方法として、広く適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 活性エネルギー線透過性フィルム繰り出し装置
2 活性エネルギー線透過性フィルム
3 クリーンブース
4 クリーンエア供給口
5 注入ダイ(供給部)
6 光重合性液体
7 エンドレスベルト
8 上面押し付けロール
8′ 下面押し付けロール
9 紫外線照射装置
10 加熱機構
11 活性エネルギー線透過性フィルム巻取り装置
12 樹脂板
13 主プーリ
14 主プーリ
15 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送される帯状体にメチルメタクリレートを30質量%以上含有する重合性液体を供給し、前記帯状体上に展延した前記重合性液体の上に活性エネルギー線透過性フィルムを繰り出しながら被せ、前記フィルムの上から照射強度1mW/cm〜30mW/cmの活性エネルギー線を照射して前記重合性液体を硬化させる透明樹脂板の連続的製造方法であって、
前記重合性液体の帯状体への供給部、および活性エネルギー線透過性フィルム繰り出し部を非密閉型クリーンブース内に配設し、前記クリーンブース上方からクリーンブース内へクリーンエアを、前記クリーンブース内容積の換気回数が5〜150回/hrの範囲となるように供給し、かつ前記クリーンブース下方から排気する風量に対する前記クリーンブース上方から供給する風量の比Xが1.05〜1.25となるように供給する透明樹脂板の連続的製造方法。
【請求項2】
透明樹脂板の厚みが0.1〜3mmである請求項1に記載の透明樹脂板の連続的製造方法。
【請求項3】
重合性液体の硬化後に100℃以上の熱処理を行う請求項1または2に記載の透明樹脂板の連続的製造方法。
【請求項4】
移送される帯状体がエンドレスベルトである請求項1〜3のいずれかに記載の透明樹脂板の連続的製造方法。
【請求項5】
移送される帯状体がステンレス鋼製のエンドレスベルトである請求項1〜4のいずれかに記載の透明樹脂板の連続的製造方法。
【請求項6】
移送される帯状体が活性エネルギー透過性フィルムである請求項項1〜5のいずれかに記載の透明樹脂板の連続的製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−240528(P2011−240528A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112427(P2010−112427)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】