説明

通信システム

【課題】車車間通信を実行するものでありながら、車車間通信に用いられる電波の与干渉による緊急警報放送の受信妨害を、回避すること或いは極力抑えることが容易である通信システムを提供する。
【解決手段】車車間通信としての情報送信を実行する通信装置と、緊急警報放送が放送中であるか否かを表す識別情報を受信する路側機と、を有する通信システムであって、前記路側機は、前記識別情報に基づいて、前記情報送信の可否または前記情報送信の方式を制御するための制御情報を生成し、前記通信装置に送信するものであり、前記通信装置は、前記路側機から受信した制御情報に基づいて、前記情報送信の可否または前記情報送信の方式を変更する通信システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車車間通信を行う通信装置が備えられた、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通事故の抑制などを目的として、ITS[Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム]の研究開発が進んでいる。またITSを構築するための要素として、車車間通信や路車間通信の実用化が急がれている。
【0003】
車車間通信は、走行中の車同士で、位置情報などの送受信が行われるものであり、2012年頃のサービス開始が予定されている。車車間通信によれば、周辺の他の車の走行状況が把握されるため、衝突事故などを極力回避することが可能となる。なお、車車間通信で使用される周波数帯域としては、720MHz帯が予定されている。
【0004】
また路車間通信は、路側機と車との間で情報の送受信(特に、路側機から車への情報送信)が行われるものである。路車間通信によれば、例えば路側機を介して、交通管制センターと各車との通信が可能である。これにより、各車の運転者に対して交通情報を提供することが可能となる。
【0005】
また一方で、地上デジタル放送(DTV放送)等においては、地震などの緊急事態の発生時に、緊急警報放送(EWS)が実施される。緊急警報放送が実施されると、例えば、DTV放送の番組映像に緊急事態の内容を示すテロップが挿入される。これにより視聴者は、緊急事態の発生をいち早く認識し、適切な対応をとる事が可能となる。
【0006】
なお特許文献1には、受信された緊急警報放送用起動フラグに基づいて、緊急警報放送の放送開始が検出されると、主電源が自動的に入る受信機が開示されている。当該受信機によれば、待機電力ができるだけ抑えられつつ、緊急警報放送の受信が可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−295053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した通り、車車間通信は、交通事故の抑制などに効果を発揮するものであるが、通信媒体として電波が用いられるため、他目的で用いられる電波への干渉(与干渉)が問題となり得る。特に、DTV放送における放送波の周波数帯域と、車車間通信に用いられる電波の周波数帯域との間には、5MHz程度のガードバンドが設けられているに過ぎない。
【0009】
そのため車車間通信がなされると、その車の内部や近辺においては、車車間通信に用いられる電波の与干渉によって、DTV放送の適切な受信が阻害される可能性も否めない。特に、緊急警報放送が放送中であるときに、デジタルテレビ放送の受信が阻害されると、視聴者に対して緊急事態を適切に報知することができなくなる。
【0010】
この場合、視聴者が、緊急事態に適切に対応できなくなることも想定され、極めて重大な問題となりかねない。なおDTV放送の受像端末等は、車内に設置される場合や、携帯型である場合も多いことを考慮すると、このような問題が起こることは十分に想定される。
【0011】
本発明は上述した問題点に鑑み、車車間通信を実行するものでありながら、車車間通信に用いられる電波の与干渉による緊急警報放送の受信妨害を回避すること、或いは極力抑えることが容易である通信システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る通信システムは、車車間通信としての情報送信を実行する通信装置と、緊急警報放送が放送中であるか否かを表す識別情報を受信する路側機と、を有する通信システムであって、前記路側機は、前記識別情報に基づいて、前記情報送信の可否または前記情報送信の方式を制御するための制御情報を生成し、前記通信装置に送信するものであり、前記通信装置は、前記路側機から受信した制御情報に基づいて、前記情報送信の可否または前記情報送信の方式を変更する構成とする。
【0013】
本構成によれば、緊急警報放送の放送中において、車車間通信の禁止、或いは、電波干渉が低減する方式が採用されるようにすれば、車車間通信に用いられる電波の与干渉による緊急警報放送の受信妨害を回避すること、或いは極力抑えることが可能となる。
【0014】
また上記構成としてより具体的には、前記路側機は、前記識別情報に基づいて緊急警報放送が放送中であると判別したときに、前記制御情報として、前記情報送信を不可とするための情報を生成して送信し、前記通信装置は、前記路側機から受信した制御情報に基づいて、前記情報送信を不可とする構成としてもよい。
【0015】
本構成によれば、車車間通信の電波干渉による緊急警報放送の受信妨害を、回避することが可能となる。
【0016】
また上記構成としてより具体的には、前記路側機は、前記識別情報に基づいて緊急警報放送が放送中であると判別したときに、前記制御情報として、前記情報送信の送信強度を低減させるための情報を生成して送信し、前記通信装置は、前記路側機から受信した制御情報に基づいて、前記情報送信の送信強度を低減させる構成としてもよい。
【0017】
本構成によれば、緊急警報放送の放送中においても車車間通信を実行可能としつつ、車車間通信の電波干渉による緊急警報放送の受信妨害を、極力抑えることが可能となる。
【0018】
また上記構成としてより具体的には、前記通信装置は、所定内容の情報を、設定された周期で繰返し送信することによって、前記情報送信を実行するものであり、前記路側機は、前記識別情報に基づいて緊急警報放送が放送中であると判別したときに、前記制御情報として、該周期を増加させるための情報を生成して送信し、さらに前記通信装置は、前記路側機から受信した制御情報に基づいて、該周期を増加させる構成としてもよい。
【0019】
本構成によれば、緊急警報放送の放送中においても車車間通信を実行可能としつつ、車車間通信の電波干渉による緊急警報放送の受信妨害を、極力抑えることが可能となる。
【0020】
また上記構成において、前記路側機は、前記識別情報に基づいて緊急警報放送が放送中でないと判別したときに、前記制御情報として、前記情報送信を可能とするための情報を生成して送信し、前記通信装置は、前記情報送信を不可とした後、前記路側機から受信した制御情報に基づいて、該情報送信を可能とする構成としてもよい。本構成によれば、緊急警報放送の放送が終了したときに、車車間通信を再度実行させることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
上述した通り、本発明に係る通信システムによれば、緊急警報放送の放送中において、車車間通信の禁止、或いは、電波干渉が低減する方式が採用されるようにすれば、車車間通信の電波干渉による緊急警報放送の受信妨害を回避すること、或いは極力抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る路側機の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る通信装置の構成図である。
【図4】実施例1の通信システムにおいて実行される処理の流れ図である。
【図5】実施例2の通信システムにおいて実行される処理の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について、実施例1および実施例2の各々を挙げて説明する。
【0024】
[実施例1]
先ず本発明の一実施形態(実施例1)について、車車間通信および路車間通信が実行される通信システムを挙げて、以下に説明する。図1は、当該通信システムの構成図である。本図に示すように、通信システム9は、DTV放送局1、路側機2、交通情報管理サーバ3、および通信装置4などを有している。
【0025】
DTV放送局1は、DTV放送(地上デジタル放送)を継続的に無線放送するものである。なおDTV放送の情報には、テレビ番組の内容を表す番組情報の他、伝送制御データであるTMCC[Transmission and Multiplexing Configuration and Control]情報なども含まれている。
【0026】
そしてTMCC情報には、緊急警報放送が放送中であるか否かを表す、緊急警報放送用起動フラグの情報(以下、「フラグ情報」と略記することがある)が含まれている。緊急警報放送は、地震発生のような緊急事態が発生したときに、通常時の放送に重畳して放送されるものであり、視聴者へ緊急事態発生を報知するために実施される。またフラグ情報は、2通りの状態(本願では「ON」および「OFF」の状態と称する)の何れかに設定されるものであり、「ON」の状態のときは、緊急警報放送が放送中であることを示し、「OFF」の状態のときは、緊急警報放送が放送中ではないことを示す。
【0027】
路側機2は、例えば道路沿いに所定間隔で設置されるものであり、主に、交通情報管理サーバ3と通信装置4における通信の中継局として機能する。また、詳しくは後述するが、路側機2は、DTV放送を受信してフラグ情報の状態を検出し、この検出結果に基づいた制御情報を通信装置4に送信する機能も有している。
【0028】
ここで路側機2の構成について、図2を参照しながら、より詳細に説明する。本図に示すように路側機2は、アンテナ21、送受信切替部22、DTV受信部23、フラグ情報検出部24、演算制御部25、路側機情報送信部26、および交通情報受信部27などを備えている。
【0029】
送受信切替部22は、演算制御部25の指示に応じて、アンテナ21の接続先を、DTV受信部23と路側機情報送信部26の何れかに切替える。なお、当該接続先がDTV受信部23であるときは、DTV放送の送信が可能となる一方、当該接続先が路側機情報送信部26であるときは、路側機情報の送信が可能となる。
【0030】
DTV受信部23は、アンテナ21を用いて、DTV放送局1によって放送されるDTV放送を継続的に無線受信する。受信された情報(TMCC情報を含む)は、後段側のフラグ情報検出部24に伝送される。
【0031】
フラグ情報検出部24は、DTV受信部23から伝送されるTMCC情報を解析し、フラグ情報の状態を継続的に検出する。当該検出の結果は、演算制御部25に伝送される。
【0032】
演算制御部25は、例えばCPUによって形成されており、各種情報に基づいた演算や、路側機2における各部の制御を行う。これにより演算制御部25は、路側機2の機能を発揮するために必要な各種処理(路側機情報の生成や送信など)を実行する。
【0033】
路側機情報送信部26は、演算制御部25から受取った路側機情報を表す信号に、変調処理(例えば、OFDM変調)を施し、アンテナ21を用いて外部(各通信装置4)に送信する。当該送信に用いられる電波としては、5.8GHzの周波数帯域のものが用いられる。
【0034】
交通情報受信部27は、通信網を介して接続されている交通情報管理サーバ3から、随時、交通情報を受信する。受信された交通情報は、演算制御部25に伝送される。
【0035】
図1に戻り、交通情報管理サーバ3は、交通管制センター等に設置されており、各種の交通情報(リアルタイムの渋滞情報や事故情報など)を管理する。また交通情報管理サーバ3は、例えばインターネットによる通信網を介して、各路側機2に接続されている。これにより、交通情報を各路側機2に伝送することが可能となっている。
【0036】
通信装置4は、四輪自動車などの車5に搭載されて使用される。また通信装置4は、車車間通信、すなわち、自機を搭載した車(「自車」と称する)の走行状況等を表す情報(自車情報)の送信や、自車の周辺を走行する他の車(「他車」と称する)の走行状況等を表す情報(他車情報)の受信などを実行する。
【0037】
すなわち、複数の通信装置4がそれぞれ異なる車5に搭載され、何れかの通信装置4が自車情報を送信すると、他の通信装置4は、当該情報を他車情報として受信することになる。また通信装置4は、路車間通信、すなわち、路側機2から送信される路側機情報の受信をも実行する。
【0038】
ここで通信装置4の構成について、図3を参照しながら、より詳細に説明する。本図に示すように通信装置4は、路側機情報受信アンテナ41、路側機情報受信部42、演算制御部43、車情報送受信用アンテナ44、送受信切替部45、自車情報送信部46、他車情報受信部47、走行状況検出部48、および情報表示部49などを備えている。
【0039】
路側機情報受信部42は、路側機情報受信アンテナ41を用いて、路側機2から送信される路側機情報を継続的に無線受信する。受信された情報は、演算制御部43に伝送される。
【0040】
演算制御部43は、例えばCPUによって形成されており、各種情報に基づいた演算や、通信装置4における各部の制御を行う。これにより演算制御部43は、通信装置4の機能を発揮するために必要な各種処理を実行する。なお、車車間通信に関わる処理の具体的な内容については、改めて説明する。
【0041】
送受信切替部45は、演算制御部43の指示に応じて、車情報送受信用アンテナ44の接続先を、自車情報送信部46と他車情報受信部47の何れかに切替える。なお、当該接続先が自車情報送信部46であるときは、自車情報の送信が可能となる一方、当該接続先が他車情報受信部47であるときは、他車情報の受信が可能となる。
【0042】
自車情報送信部46は、演算制御部43から受取った自車情報を表す信号に、変調処理(例えば、OFDM変調)を施し、車情報送受信用アンテナ44を用いて外部(他車に搭載された通信装置)に向けた送信(電波を用いた無線送信)を実行する。当該送信に用いられる電波としては、720MHzの周波数帯域のものが用いられる。
【0043】
他車情報受信部47は、車情報送受信用アンテナ44を介して、外部から他車情報を表す信号を受信する。そして当該信号に復調処理を施して、演算制御部43に伝送する。
【0044】
走行状況検出部48は、例えばGPSシステムや加速度センサなどを備えており、演算制御部43の指示に応じて、自車の走行状況に関わる各種の情報を検出する。なお、検出される情報としては、自車の走行速度や現在位置の情報などが挙げられる。
【0045】
情報表示部49は、ディスプレイを備えており、演算制御部43の指示に応じて、自車および他車の走行状況に関わる情報を表示する。より具体的には、自車および他車の現在位置を示す地図情報や、走行速度および走行方向を示す文字情報などを表示する。これにより運転者は、例えば衝突事故のおそれがある危険な状況を回避することができ、より安全な運転を行うことが可能となる。またこれらの走行状況に関わる情報が、音声等として出力されるようにしても構わない。
【0046】
次に、通信システム9において実行される、車車間通信に関わる処理の具体的な内容について、図4に示すフローチャートを参照しながら、以下に説明する。
【0047】
まず路側機2においては、フラグ情報検出部24によって、最新のフラグ情報が検出され、演算制御部25に伝送される。これを受けて演算制御部25は、当該フラグ情報に基づいて、車車間通信としての情報送信の可否を制御するための制御情報を生成する(ステップS1)。
【0048】
すなわち演算制御部25は、フラグ情報が「OFF」の状態であれば(緊急警報放送が放送中でないと判断すれば)、「送信可能」を表す制御情報を生成し、フラグ情報が「ON」の状態であれば(緊急警報放送が放送中であると判断すれば)、「送信不可」を表す制御情報を生成する。そして当該制御情報を含んだ路側機情報を生成して、通信装置4に無線送信し(ステップS2)、ステップS1の処理に戻る。なお、交通情報管理サーバ3から交通情報を受信している場合は、当該交通情報も含まれるように、路側機情報が生成される。
【0049】
一方、通信装置4における演算制御部43は、走行状況検出部48に自車の走行状況を検出させ、この検出された情報を取得する。そして演算制御部43は、当該取得された情報に基づいて、情報表示部49における表示内容を更新する(ステップS11)。これにより、自車の走行状況に関する表示の内容が、最新のものに更新される。
【0050】
また更に、演算制御部43は、路側機情報受信部42によって受信された最新の路側機情報を参照し、当該路側機情報に含まれている制御情報の状態を判別する(ステップS12、S13)。
【0051】
その結果、「送信不可」が示されている場合は(ステップS13のY)、演算制御部43は、ステップS14の処理に進まず、ステップS11の処理を繰り返す。これにより、緊急警報放送の放送中は、ステップS14以降の処理が実行されず、ひいては、自車情報の送信(ステップS15を参照)が実行されないようになっている。
【0052】
一方、「送信可能」が示されている場合は(ステップS13のN)、演算制御部43は、自車情報を送信すべきタイミングが到来したかを判断する(ステップS14)。より具体的には、演算制御部43は、不図示のカウンタ回路等を用いて、前回の自車情報の送信時から予め設定された時間(例えば100ms)が経過しているかを判断する。そして、経過している場合には、自車情報を送信すべきタイミングが到来したと判断される。これにより自車情報は、当該設定された時間の周期(送信周期)で、繰返し送信されるようになっている。
【0053】
そして、自車情報を送信すべきタイミングが到来したと判断された場合は(ステップS14のY)、自車情報が新たに生成され、外部に送信される(ステップS15)。より具体的には、演算制御部43は、直前のステップS11の処理によって検出された情報を用いて、所定内容の情報が含まれる自車情報を生成する。なお自車情報には、自車の走行状況(自車の走行速度や、自車の現在位置など)および、自車に固有の車両ID(ユーザ等によって、通信装置4に予め登録されている)の情報などが含まれる。
【0054】
そして演算制御部43は、生成された自車情報を自車情報送信部46に伝送し、当該情報を、外部(他車に搭載された通信装置)へ送信させる。なお、当該送信が実行される直前には、車情報送受信用アンテナ44が自車情報送信部46に接続されるように、送受信切替部45が制御される。また当該送信の実行直後には、車情報送受信用アンテナ44が他車情報受信部47に接続されるように、送受信切替部45が制御される。またステップS15の処理の実行後は、ステップS11の処理が繰り返される。
【0055】
一方で、自車情報を送信すべきタイミングが到来していないと判断された場合には(ステップS14のN)、演算制御部43は、他車情報受信部47によって他車情報が新たに受信されているか否かを判断する(ステップS16)。その結果、受信されていると判断された場合には(ステップS16のY)、演算制御部43は、当該受信された情報に基づいて、情報表示部49における表示内容を更新する(ステップS17)。
【0056】
これにより、他車の走行状況に関する表示の内容が、最新のものに更新される。また、ステップS17の処理が実行された後、もしくは、他車情報が新たに受信されていない場合(ステップS16のN)には、ステップS11の処理が繰り返される。
【0057】
以上に説明した一連の処理を実行することにより、通信装置4は、通常時において自車および他車の走行状況をほぼリアルタイムに表示し、運転者に対して信頼性の高い情報を提供することが可能となっている。
【0058】
ただし、制御情報が「送信不可」を示す間(ステップS13のY)、換言すれば、緊急警報放送が放送中である間には、自車情報の送信が実行されないようになっている。そのためこの間は、他車の走行状況をリアルタイムに表示することは難しくなるものの、緊急警報放送の受信妨害は回避される。
【0059】
つまり、通信装置4の近傍にDTV放送の受像端末が存在する場合(例えば、DTV放送の受像端末を所持している人が、通信端末4を搭載した車の近傍に居る場合)であっても、車車間通信に用いられる電波が放送波に干渉する事態(与干渉)を、未然に防ぐことが可能となっている。これにより、当該受像端末による緊急警報放送の受信が妨害されないようになっている。
【0060】
なお先述したように、路車間通信においては5.8GHzの周波数帯域が用いられるが、車車間通信の場合と同じく、720MHzの周波数帯域を用いることも可能である。この場合、各通信装置4に「送信不可」を示す制御信号が送信された後は、路車間通信(路側機情報の送信)も停止されることが望ましい。これにより、路車間通信に用いられる電波の与干渉による緊急警報放送の受信妨害も、未然に防ぐことが可能である。
【0061】
[実施例2]
次に本発明の別の実施形態(実施例2)について、同じく、車車間通信および路車間通信が実行される通信システムを挙げて、以下に説明する。なお実施例2に係る通信装置は、フラグ情報の状態に応じて実行される処理の内容を除いては、基本的に実施例1のものと同等であるため、重複した説明を省略する場合がある。
【0062】
本実施例に係る通信装置4においては、自車情報の送信方式として、「通常方式」と「干渉低減方式」が、適宜切替えて採用できるようになっている。「通常方式」は、緊急警報放送が実施されていない状況での採用が想定されており、車車間通信における通信エリアの広さや通信速度等が重視された方式である。
【0063】
一方、「干渉低減方式」は、緊急警報放送が実施されている状況での採用が想定されており、車車間通信を可能としつつも、車車間通信に用いられる電波の与干渉の度合を、「通常方式」に比べて低減させることが可能な方式である。
【0064】
より具体的には、「干渉低減方式」は、自車情報の送信電波を発生させるための電力(送信電力)の設定が、「通常方式」に比べて低減されている。つまり、送信電波の強度が、比較的小さくなるように設定されている。これにより、「干渉低減方式」が採用されている間は、車車間通信の通信エリアが比較的狭くなるものの、与干渉の度合が低減し、通信装置4の近辺の受像端末等において緊急警報放送の受像が阻害される事態を、極力抑えることが可能となる。
【0065】
また「干渉低減方式」は、「通常方式」に比べて送信電力が低減される代わりに(もしくは、低減された上で)、送信周期が増加されるようにしても良い。一例としては、「通常方式」では送信周期が100msである場合に、「干渉低減方式」では、送信周期を400msとする。これにより、干渉低減方式が採用されている間は、車車間通信の通信速度(単位時間あたりの情報伝送量)が比較的小さくなるものの、与干渉の度合が低減し、通信装置4の近辺の受像端末等において緊急警報放送の受像が阻害される事態を、極力抑えることが可能となる。
【0066】
なお、「干渉低減方式」は上述したものに限定されず、車車間通信に用いられる電波の与干渉の度合が「通常方式」に比べて低減されるものであれば、その内容は問わない。
【0067】
次に、本実施例に係る通信システム9において実行される、車車間通信に関わる処理の具体的な内容について、図5に示すフローチャートを参照しながら、以下に説明する。
【0068】
路側機2においては、実施例1の場合と同様に、最新のフラグ情報が検出され、演算制御部25に伝送される。これを受けて演算制御部25は、フラグ情報に基づいて、車車間通信としての情報送信の方式を制御するための制御情報を生成する(ステップS1)。
【0069】
より具体的には、フラグ情報が「OFF」の状態であれば、「通常方式」を表す制御情報を生成し、フラグ情報が「ON」の状態であれば、「干渉低減方式」を表す制御情報を生成する。そして演算制御部25は、当該制御情報を含んだ路側機情報を生成し、通信装置4に無線送信する(ステップS2)。その後、ステップS1の処理が繰り返される。
【0070】
一方、通信装置4における演算制御部43は、走行状況検出部48に自車の走行状況を検出させ、この検出された情報を取得する。そして演算制御部43は、当該取得された情報に基づいて、情報表示部49における表示内容を更新する(ステップS21)。これにより、自車の走行状況に関する表示の内容が、最新のものに更新される。
【0071】
また更に、演算制御部43は、路側機情報受信部42によって受信された最新の路側機情報を参照し、当該路側機情報に含まれている制御情報の状態を判別する(ステップS22、S23)。
【0072】
その結果、「干渉低減方式」が示されている場合は(ステップS23のY)、演算制御部43は、自車情報の送信の方式を、干渉低減方式とする(ステップS24)。つまり現時点において、当該方式が「通常方式」に設定されている場合には、「干渉低減方式」に更新され、「干渉低減方式」に設定されている場合には、その設定が維持される。
【0073】
一方、「通常方式」が示されている場合は(ステップS23のN)、演算制御部43は、自車情報の送信の方式を、通常方式とする(ステップS25)。つまり現時点において、当該方式が「干渉低減方式」に設定されている場合には、「通常方式」に更新され、「通常方式」に設定されている場合には、その設定が維持される。
【0074】
ステップS24またはS25の処理がなされた後、演算制御部43は、先述したステップS14の処理の場合と同様に、自車情報を送信すべきタイミングが到来したかを判断する(ステップS26)。
【0075】
そして、自車情報を送信すべきタイミングが到来したと判断された場合は(ステップS26のY)、先述したステップS15の処理の場合と同様に、自車情報が新たに生成され、外部に送信される(ステップS27)。その後、ステップ21の処理が繰り返される。
【0076】
一方で、自車情報を送信すべきタイミングが到来していないと判断された場合には(ステップS26のN)、演算制御部43は、他車情報受信部47によって他車情報が新たに受信されているか否かを判断する(ステップS28)。その結果、受信されていると判断された場合には(ステップS28のY)、演算制御部43は、当該受信された情報に基づいて、情報表示部19における表示内容を更新する(ステップS29)。
【0077】
これにより、他車の走行状況に関する表示の内容が、最新のものに更新される。また、ステップS29の処理が実行された後、もしくは、他車情報が新たに受信されていない場合(ステップS28のN)には、ステップS21の処理が繰り返される。
【0078】
以上に説明した一連の処理を実行することにより、通信装置4は、自車および他車の走行状況をほぼリアルタイムに表示し、運転者に対して信頼性の高い情報を提供することが可能となっている。
【0079】
また、路側機情報に含まれる制御情報が「干渉低減方式」を示す間、換言すれば、緊急警報放送が放送中である間(ステップS23のY)には、自車情報の送信方式として、干渉低減方式が採用されるようになっている。そのためこの間は、車車間通信に用いられる電波の与干渉による緊急警報放送の受信妨害が、通常の車車間通信がなされる場合よりも抑えられる。
【0080】
[まとめ]
以上に説明した通り、本発明の実施形態に係る通信システム9は、車車間通信としての情報送信を実行する通信装置4と、緊急警報放送が放送中であるか否かを表すフラグ情報(識別情報)を受信する路側機2を備えている。
【0081】
そして実施例1に係る路側機2は、フラグ情報に基づいて、車車間通信としての情報送信の可否を制御するための制御情報を生成し、通信装置4に送信するものとなっている。また実施例1に係る通信装置4は、路側機2から受信した制御情報に基づいて、情報送信の可否を変更するようになっている。そのため、車車間通信に用いられる電波の与干渉による緊急警報放送の受信妨害を、回避することが可能となっている。
【0082】
なお、情報送信が不可とされた後、制御情報が「送信可能」を示すようになった場合には、再び情報送信が可能とされる。これにより、緊急警報放送の放送が終了したときには、車車間通信を再開させることが可能となっている。
【0083】
また実施例2に係る路側機2は、フラグ情報に基づいて、車車間通信としての情報送信の方式を制御するための制御情報を生成し、通信装置4に送信するものとなっている。そして実施例2に係る通信装置4は、路側機2から受信した制御情報に基づいて、情報送信の方式を変更するようになっている。そのため、緊急警報放送の放送中においても車車間通信を実行可能としつつ、車車間通信に用いられる電波の与干渉による緊急警報放送の受信妨害を、極力抑えることが可能となっている。
【0084】
また実施例1に係る通信装置4は、緊急警報放送の受信妨害を確実に回避することに重点を置く場合に、特に好適である。一方、実施例2に係る通信装置4は、緊急警報放送の受信妨害を極力抑えつつも、車車間通信を常時実行可能とすることに重点を置く場合に、特に好適である。
【0085】
なお、何れの実施例に係る通信システム9においても、路側機2によって、DTV放送信号(TMCCキャリア)からフラグ情報が検出され、各通信装置4に制御情報が送信されるようになっている。そのため、DTV放送信号からフラグ情報を検出するための機能が通信装置4に備えられていなくても、通信装置4は、情報送信の可否または方式をどのように変更すべきかを把握することが可能となっている。
【0086】
また制御情報は、車車間通信としての情報送信の可否または方式が制御可能である限り、その態様は問わない。例えば、制御情報が、フラグ情報をそのまま表す態様となっていても構わない。この場合、通信装置4に、フラグ情報が転送されると見ることもできる。
【0087】
また路側機2は、アンテナ21を介して、緊急警報放送が実施中であるか否かを表す識別情報(ここでは、フラグ情報)を取得するようになっているが、当該識別情報は、他の経路によって取得されるようになっていても構わない。例えば、インターネット等の通信網を介して、識別情報が取得されるようにしても構わない。
【0088】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。当該実施形態としては、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、車車間通信を実行する通信装置などにおいて利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 DTV放送局
2 路側機
3 交通情報管理サーバ
4 通信装置
5 車
21 アンテナ
22 送受信切替部
23 DTV受信部
24 フラグ情報検出部
25 演算制御部
26 路側機情報送信部
27 交通情報受信部
41 路側機情報受信アンテナ
42 路側機情報受信部
43 演算制御部
44 車情報送受信用アンテナ
45 送受信切替部
46 自車情報送信部
47 他車情報受信部
48 走行状況検出部
49 情報表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車車間通信としての情報送信を実行する通信装置と、
緊急警報放送が放送中であるか否かを表す識別情報を受信する路側機と、
を有する通信システムであって、
前記路側機は、
前記識別情報に基づいて、前記情報送信の可否または前記情報送信の方式を制御するための制御情報を生成し、前記通信装置に送信するものであり、
前記通信装置は、
前記路側機から受信した制御情報に基づいて、前記情報送信の可否または前記情報送信の方式を変更することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記路側機は、
前記識別情報に基づいて緊急警報放送が放送中であると判別したときに、前記制御情報として、前記情報送信を不可とするための情報を生成して送信し、
前記通信装置は、
前記路側機から受信した制御情報に基づいて、前記情報送信を不可とすることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記路側機は、
前記識別情報に基づいて緊急警報放送が放送中であると判別したときに、前記制御情報として、前記情報送信の送信強度を低減させるための情報を生成して送信し、
前記通信装置は、
前記路側機から受信した制御情報に基づいて、前記情報送信の送信強度を低減させることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記通信装置は、
所定内容の情報を、設定された周期で繰返し送信することによって、前記情報送信を実行するものであり、
前記路側機は、
前記識別情報に基づいて緊急警報放送が放送中であると判別したときに、前記制御情報として、該周期を増加させるための情報を生成して送信し、
さらに前記通信装置は、
前記路側機から受信した制御情報に基づいて、該周期を増加させることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記路側機は、
前記識別情報に基づいて緊急警報放送が放送中でないと判別したときに、前記制御情報として、前記情報送信を可能とするための情報を生成して送信し、
前記通信装置は、
前記情報送信を不可とした後、前記路側機から受信した制御情報に基づいて、該情報送信を可能とすることを特徴とする請求項2に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−244371(P2010−244371A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93516(P2009−93516)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】