説明

通信ネットワークにおける使用のための発振器、周波数シンセサイザ及びネットワークノード

本開示は、周波数シンセサイザ内での周波数の生成における使用のための発振器であって、少なくとも1つの巻きを伴って金属線ループを形成する第1の誘導素子と、前記第1の誘導素子との間で第1の共振回路を形成するように構成され、少なくとも1つの第1の接続端子を通じて前記第1の誘導素子と接続される第1の容量回路と、を備え、前記第1の容量回路は、少なくとも1つの容量素子、並びに、発振を確立し及び維持するように構成される電子コンポーネント配置を含む、発振器に関する。当該発振器は、少なくとも1つの容量素子と電子コンポーネントの配置とを含む第2の容量回路が、前記第1の誘導素子との間で第2の共振回路を形成するように構成され、前記第1の容量回路の前記第1の接続端子に対して前記第1の誘導素子の反対側に位置する少なくとも1つの第2の接続端子を通じて前記第1の誘導素子と接続されることと、前記第1及び第2の共振回路が実質的に同等の周波数にチューニングされることと、を特徴とする。本発明は、周波数シンセサイザ及び通信ネットワーク内での使用のためのネットワークノードにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、周波数合成に関し、より具体的には、周波数の生成における使用のための発振器に関する。また、本発明は、周波数の生成を実行するためのそうした発振器を含む周波数シンセサイザ、及び、例えば基地局といった、通信ネットワークにおける使用のためのネットワークノードに関する。
【背景技術】
【0002】
周波数シンセサイザは、一般的には、特定の周波数を有するリファレンス信号からの何らかの周波数範囲を生成するための電気的システムとして説明され得る。周波数シンセサイザは、例えば、無線送受信機、モバイル電話又はセルラー電話、無線基地局(RBS)、衛星送受信機、GPSシステムなどの多くの異なる種類のデバイスにおいて見出され得る。
【0003】
例えばモバイル無線アプリケーションにおいて、データを送受信する際に使用される信号は、通常は、PLL(phase-locked loop)を含む周波数シンセサイザにより生成される。PLL周波数シンセサイザは、例えば、入力としてある周波数を有するリファレンス信号を有し、及び、当該PLL周波数シンセサイザから出力される出力信号を分割することにより比較信号を生成し得るプログラマブルカウンタを有し得る。PLL周波数シンセサイザからの出力信号は、やはり当該PLL周波数シンセサイザ内に含まれる発振器から出力される。PLL周波数シンセサイザは、さらに、入力されるリファレンス信号の位相とプログラマブルカウンタからの比較信号の位相とを比較するための位相比較器を含み、その位相差に依存して出力信号を生成し得る。この出力信号から、制御信号(例えば、チューニング電圧)が生成され発振器への入力として使用され得る。それは、当該発振器が特定の周波数及び特定のノイズ特性を有する出力信号、即ち、当該PLLシンセサイザから出力される出力信号を生成して出力するためである。
【0004】
しかしながら、出力信号のノイズ性能について低い要件を伴う他のアプリケーションと対照的に、出力信号のノイズ性能について高い要件を有するアプリケーションのためにPLL及び当該PLL内に含まれる発振器が設計される場合には、当該PLL及び当該発振器は、異なる技術を用いて設計される。出力信号のノイズ性能について高い要件を伴うアプリケーションの例は、例えば、基地局(例えば無線基地局(RBS))などのネットワーク装置あるいはノードである。出力信号のノイズ性能について低い要件を伴うアプリケーションの例は、例えば、モバイル電話アプリケーションなどの端末装置である。PLLは、通常は集積回路(IC)として設計され、一方で、発振器は、例えば抵抗、キャパシタ、インダクタなどの個別(discrete)電子コンポーネントを用いて設計される。これは、とりわけ、集積回路上で発振器を実装すると、今日の市場における多くの既存の及び新たに現れつつあるアプリケーションのノイズ性能についての高い要件を、PLLから出力される出力信号の信号対雑音比が満たせない結果となってしまうためである。
【0005】
しかしながら、集積されたPLL回路及び個別の発振器などの異なる技術を用いて周波数シンセサイザを形成することは、小型化の観点からのコンパクトな解決策を可能としないことに加え、製造の立場からの特にコスト効率の高い解決策を提供しない。これらは、様々な通信アプリケーション及び無線デバイスなどの現代の設計における検討事項である。
【発明の概要】
【0006】
ノイズ性能が改善されたコスト効率の高い発振器を実現することが望ましいことが、発明者により認識されている。言い換えれば、発明者は、改善されたノイズ性能を伴う発振器を実現することが有益であることを認識した。
【0007】
これは、周波数シンセサイザ内での周波数の生成における使用のための発振器であって、少なくとも1つの巻きを伴って金属線ループを形成する第1の誘導素子と、上記第1の誘導素子との間で第1の共振回路を形成するように構成され、少なくとも1つの第1の接続端子を通じて上記第1の誘導素子と接続される第1の容量回路と、を備え、上記第1の容量回路は、少なくとも1つの容量素子、並びに、発振を確立し及び維持するように構成される電子コンポーネント配置を含み、少なくとも1つの容量素子と電子コンポーネントの配置とを含む第2の容量回路が、上記第1の誘導素子との間で第2の共振回路を形成するように構成され、上記第1の容量回路の上記第1の接続端子に対して上記第1の誘導素子の反対側に位置する少なくとも1つの第2の接続端子を通じて上記第1の誘導素子と接続されることと、上記第1及び第2の共振回路が実質的に同等の周波数、即ち同等の又は略同等の周波数にチューニングされることと、を特徴とする発振器により達成される。これに関し、第1及び第2の共振回路が必ずしも正確に同じ周波数にチューニングされなくてもよいことが、読者により理解されるべきである。ある程度の許容範囲が存在する。従って、所望の効果を達成するために、第1及び第2の共振回路は略同じ周波数にチューニングされることで十分である。
【0008】
同じ又は略同じ周波数にチューニングされる(即ち、マッチングされる)第1及び第2の容量回路を動作させて反対側から同じ誘導素子に同時に給電させ、その同じ誘導素子と共に第1及び第2の共振回路を生成させることにより、第1及び第2の容量回路は、各エンドから見込まれる、誘導素子からのより低いインダクタンスを経験し得る。その理由は、容量回路の端子と発振器の仮想接地点の位置との間の誘導素子の金属線ループの長さが、同じ誘導素子に給電する単一の容量回路と比較して、誘導素子に給電する第1及び第2の容量回路の各々について半分となり得るという事実である。この低減されたインダクタンスによって、第1及び第2の共振回路に供給され得る電流量は、第1及び第2の容量回路の電圧制限を超過することなく増加し得ることになる。第1及び第2の共振回路に提供される電流量が増加すれば、共振回路の各々に供給される電力は増加する。そして、それにより、発振器の位相ノイズ性能の改善度を高めることができる。
【0009】
マッチングされる第1及び第2の容量回路は、別位相で発振するように構成されてよい。この別位相モードにおいて、第1及び第2の容量回路は、誘導素子と共に単一の容量回路のみを用いる他の解決策と比較して、半分のインダクタンスを経験し得る。それにより、単一の容量回路を用いる解決策において使用されるものよりも2倍の電流量を、第1及び第2の容量回路の各々に給電し得ることになる。よって、共振回路に供給され得る電流の合計量は、単一の容量回路のみを用いる他の解決策の共振回路に供給され得る電流の合計量の4倍である。誘導素子の金属線ループの物理的なサイズは単一の容量回路のみを用いる他の解決策と比較して変わらないままであってよいため、誘導素子は同じQ値を維持し得る。よって、誘導素子のQ値を変えずに発振器へ4倍多い電力を給電することを可能とすることにより、単一の容量回路のみを用いる他の解決策と比較して、この場合、位相ノイズ性能を6dB改善することができる。
【0010】
上で説明した発振器の他の利点は、発振器の第1の誘導素子、第1の容量回路、及び第2の容量回路を集積回路(IC)として形成及び作製し、同一のダイ上に集積することが可能となることである。これにより、発振器を製造し及び作製する際に個別の電子コンポーネントを用いる必要性及びコストが除去される。また、有利な点として、発振器を他のコンポーネントと共に単一の集積チップ上に実装して、例えば高度に集積されたコスト効率の高い単一チップの周波数シンセサイザを形成することが可能となる。発振器をIC回路として集積することにより、例えば、低減されたコスト、高められた柔軟性などの多くの利点を実現することができる。また、それぞれ異なる性能、制約及び許容性(tolerances)などを持ついくつもの個別の電子コンポーネントを有する代わりに、単一のIC回路あるいはダイにおいて全体としての解決策を有することにより、ロバスト性のより高い解決策も提供される。さらに、例えば、異なる周波数帯を選択可能とするように、異なる値を有する様々なICコンポーネント(例えば、第1及び第2の容量回路内の容量素子のセットなど)を追加することにより、プログラム可能なシステムを構築することも容易となる。
【0011】
さらに、上記発振器は、上記第1及び第2の容量回路の間に位置する上記第1の誘導素子の第1の側の第1の点と、上記第1及び第2の容量回路の間に位置する上記第1の誘導素子の他の側の第2の点と、の間に、電気的な接続を提供するように適合される誘導素子間接続部、をさらに備え、上記第1の誘導素子の上記第1及び第2の点は、上記第1及び第2の容量回路の双方から実質的に等しい距離に位置してもよい。誘導素子をまたいで対称的な電子接続を誘導素子間接続部に提供させることにより、発振器は、2つの安定的な発振モードで構成されるようにより、発振器がより広い周波数レンジを扱い、及び/又は、同じ周波数レンジをカバーするために第1及び第2の共振回路内で必要とされる容量素子の数を低減することが可能となる。
【0012】
上述したように第1及び第2の容量回路が誘導素子間接続部を共有することの利点は、発振器が2つの安定的な発振モードの間で切り替えを行うことが可能となることである。第1及び第2の容量回路は、つまり、互いに同位相又は別位相で発振するように、即ち、同位相モードで又は別位相モードで位相ロックされるように構成され得る。第1及び第2の容量回路が同位相モードで位相ロックされる場合、第1及び第2の容量回路は、同時に誘導素子の同じ側へ電流を給電し、そして誘導素子の他の側へ給電を同時に振動させるように構成され、よって、同位相の発振が獲得される。第1及び第2の容量回路が別位相モードで位相ロックされる場合、第1及び第2の容量回路は、同時に誘導素子の反対側へ電流を給電し、そして誘導素子のそれぞれ他の側へ給電を同時に振動させるように構成され、よって、別位相の発振が獲得される。これにより、発振器がその時点で2つの安定的な発振モードのいずれに設定されるかに依存し、発振器が2つの異なる周波数帯で動作する(デュアルモード)ことが可能となる。また、発振器の柔軟性及び性能の増加ももたらされ、例えばそれにより、一般に行われているように発振器の共振回路へMIM(metal insulator metal)キャパシタを切り替える際に通常は想定されるような損失を伴うことなく、発振器の周波数を変更することが可能となる。
【0013】
上述したように第1及び第2の容量回路が誘導素子間接続部を共有することの別の利点は、発振モードを変更することにより発振器の周波数レンジを変更し得るために、所与の周波数レンジをカバーするために必要とされる可変キャパシタンスの量を低減することができることである。即ち、所与の周波数レンジをカバーするために第1及び第2の容量回路内に可変キャパシタンスのある量を有しなければならない代わりに、発振器は、所与の周波数レンジをカバーするために、第1及び第2の共振回路の同位相モード及び別位相モード及び想定される2つの共振周波数を使用し得る。同様に、発振器の周波数レンジの増加が望まれる場合には、それは発振器内でデュアルモードを用いることにより行われてよく、従って、第1及び第2の容量回路内の可変キャパシタンスの量を増加させなくてよい。これが有利である理由は、容量回路内で使用される可変キャパシタンスの量がより多いほど、容量回路のQ値はより劣化し、これは結果として発振器のノイズ性能にマイナスの影響を及ぼすためである。さらに、第1及び第2の容量回路のキャパシタンスは、動的に制御されるように構成されてもよい。この動的な制御は、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタなどのスイッチの使用によるなどして、様々な手法で行われてよい。
【0014】
追加的に、上記発振器は、少なくとも1つの巻きを伴って金属線ループを形成し、上記第1の誘導素子と並列に上記第1の容量回路に接続される第2の誘導素子と、少なくとも1つの巻きを伴って金属線ループを形成し、上記第1の誘導素子と並列に上記第2の容量回路に接続される第3の誘導素子と、をさらに備えてもよい。上述した第2及び第3の誘導素子を有する利点は、第1及び第2の共振回路により経験されるインダクタンスがさらに低減されることであり、それにより、第1及び第2の共振回路により一層高い電流が供給され、結果として、発振器のノイズ性能がより改善され得る。これは、発振器内の容量回路の電圧制限を超過することなく行われる。
【0015】
上記発振器のさらなる利点は、それを、周波数を生成するための位相ロックループ(PLL)と上で説明したような当該発振器とを含む周波数シンセサイザ内で使用し得ることである。また、上記周波数シンセサイザは、PLL及び上記発振器を同一のダイ上に集積することにより、発振器を伴う集積された単一チップの周波数シンセサイザとして構成されてよもい。
【0016】
上記発振器のまた別の利点は、通信ネットワーク内での使用のためのネットワークノードにおいてそれを使用し得ることである。当該ネットワークノードは、上述した通りの、発振器、及び/又は周波数シンセサイザを備え得る。当該ネットワークノードは、移動体基地局であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の目的、利点及び効果並びに特徴は、次の添付図面と共に読めば、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。
【0018】
【図1】発振器を例示している。
【図2】図1に例示した発振器の等価電子回路表現を示している。
【図3】本発明の一実施形態に係る発振器を例示している。
【図4】図3に例示した本発明の実施形態に係る発振器の等価電子回路表現を示している。
【図5】本発明の他の実施形態に係る発振器を例示している。
【図6】図5に例示した本発明の実施形態に係る発振器の等価電子回路表現を示している。
【図7】本発明のさらなる実施形態に係る発振器を例示している。
【図8】図7に例示した本発明の実施形態に係る発振器の等価電子回路表現を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、典型的な電圧制御発振器(VCO)を例示している。電圧制御発振器(VCO)は、チューニング電圧(Vtune)に従ってその出力周波数を変化させる、可変周波数発振回路である。周波数の可変のレンジは、その特有の目的に従って決定される。VCOは、外部装置から供給され得るチューニング電圧に従って決定される周波数で発振する出力信号を生成し得る。周波数シンセサイザにおける使用のケースでは、このチューニング電圧は、既に上で説明したような位相ロックループ(PLL)の位相検出器からの出力信号に基づき得る。
【0020】
図1において、VCO10は、誘導素子11及び容量回路12を備える。VCO10の誘導素子11及び容量素子12は、併せて共振回路を形成する。VCO10の容量回路12は、チューニング電圧端子(図示せず)及び出力端子(図示せず)と共に構成されてよく、当該チューニング電圧端子を通じてチューニング電圧が受け付けられるように構成され、VCO10からの出力が当該出力端子から出力されるように構成される。
【0021】
VCO10において、誘導素子11は、金属線ループ(metal trace loop)として作製され得る。誘導素子11の金属線ループは、1つ以上の巻き(turn)を含む。誘導素子11を電子回路内で使用するために、電子接続端子15が当該金属線ループに接続され得る。誘導素子11のインダクタ値は、例えば、金属線ループの長さ、サイズ及び形状などの物理的特性によって決定され得る。当該インダクタ値は、金属線ループの物理的なサイズをより小さく作製することによって縮小され得る。誘導素子11内で小さいインダクタ値が望ましい理由は、VCO10が特定の電圧レベルに制限されることが多く、電圧の許容量に制限を有し得る容量回路12の容量素子及び電子コンポーネントが破壊されないように、電圧の揺れを低く保つ必要があるためである。但し、金属線ループのサイズが小さ過ぎれば、誘導素子11のQ値が劣化し得る。これは、逆方向に流れる電流が互いに近くなって金属線ループの巻きをまたがる電磁的結合がより大きくなるためである。この金属線ループをまたがる電磁的結合又は逆行作用は、誘導素子11のインダクタンス値を減少させ得るが、その損失はやはり誘導素子11のQ値を劣化させ得るという帰結を導き得ることは変わらない。よって、改善されたノイズ性能を伴う発振器の実現に挑むにあたり、誘導素子11の金属線ループのサイズについての制約及び制限が存在する。
【0022】
容量回路12は、電子接続端子15を通じて、誘導素子11と接続される。よって、VCO10は、並列に結合される誘導素子11及び容量回路12からなる共振回路の共振周波数で発振するように構成される。容量回路12の電子接続端子15からの反対側において、誘導素子11の仮想接地点14にて仮想的な接地を配置することができる。仮想接地点14は、ここでは、DC供給電圧(VCC)を受け付けるようにも構成され得る。容量回路12は、標準的には、例えば、チューニング電圧に従って共振回路の共振周波数をシフトさせるための可変キャパシタ(バラクタ)、並びに、VCO10内の発振を確立し及び維持するように構成される電子コンポーネントの構成、などの1つ又は複数の容量素子を含む。容量回路12の電子コンポーネントの構成は、例えば、負性抵抗コンポーネントを生成するように構成されるNPNトランジスタの十字に結合される差動ペアと、容量回路12内のNPNトランジスタから電流Iを引き出すように構成される電流源13と、を含み得る。
【0023】
図2は、図1に例示したVCO10の概略的な電子回路表現を示している。ここでは、誘導素子11はインダクタLによって表現され、容量回路12は可変キャパシタCによって表現されている。仮想接地点14もまた示されている。発振は共振回路、即ち図2のLC回路内で確立されるため、電流は、可変キャパシタCの第1の側から第1のインダクタLを通じて仮想接地点14に向けて、及び仮想接地点14から第2のインダクタLを通じて可変キャパシタCの第2の側に向けて流れる。これは、図2において実線で描かれた矢印により例示されている。そして、共振回路の固有の性質によって電流の方向を振動させることができ、それにより、電流は、可変キャパシタCの第2の側から第2のインダクタLを通じて仮想接地点14に向けて、及び仮想接地点14から第1のインダクタLを通じて可変キャパシタCの第1の側に向けて流れ得る。これは、図2において破線の矢印により例示されている。よって、共振回路は、仮想接地点14の周辺にて、その共振周波数で前後に振動する(共振する)ことにより、電気的なエネルギーを保存することができる。図2のLC回路の共振周波数fは、式(1)に従って決定される。
【0024】
【数1】

【0025】
よって、可変キャパシタCの容量を変化させることにより、共振周波数fは変化し得る。上述したように、VCO10は、共振回路のキャパシタンスを変化させるために受け付けられるチューニング電圧に反応する可変キャパシタ(バラクタ)を使用して、受け付けた当該チューニング電圧に従って共振回路の共振周波数fをシフトさせ得る。
【0026】
しかしながら、上述したVCO10の実装に付随する欠点がある。第1に、VCO10の発振器出力の信号対雑音比は、集積回路(IC)上で実装される場合に、ある通信ネットワークアプリケーションの性能要件を充足しない。その要件は、例えば、移動体無線基地局アプリケーション又は同等のネットワーク装置若しくはノードにおける信号の所望の信号対雑音比などである。これは、集積回路(IC)上でのVCO10の実装が、個別電子コンポーネントを用いた実装よりも、誘導素子11及び容量回路12において、より高い損失及び劣化したQ値をもたらし得るためである。特定の周波数での発振を実現し、VCO10内で生じ得る損失を克服するためには、VCO10へより多くのエネルギーが入力される必要がある。しかし、これは容量回路12の電圧の制限を超える結果となり得ることから、そうした実装は実行可能ではない。
【0027】
この課題は、既に言及したように、通常の個別の電子コンポーネント、即ち抵抗、キャパシタ、インダクタなどを用いてVCO10を設計することにより解決され得る。しかしながら、個別の電子コンポーネントは、設定値を有し、よって、良好な性能を提供するために、設計される周波数帯についてVCO10を最適化するように選択されなければならない。さらに、VCO10が特定の狭い周波数帯に制限されることになる。これでは、VCO10の周波数帯の変更のために個別の電子コンポーネントの全くの再設計及び交換が必要となることから、あまり柔軟な解決策を提供しない。また、個別の電子コンポーネントを用いた電子回路の設計(又は再設計)、ハンドリング及び製造が高価なプロセスであることから、この解決策のコスト効率はあまり高くない。さらに、それは、個別の電子コンポーネントが集積回路上に実装されるコンポーネントよりも多くの物理的空間を要することから、小型化の観点からもあまり有益な解決策ではない。
【0028】
本発明の様々な実施形態の特徴によれば、これら課題を、実質的に同じ周波数にチューニングされる2つの容量回路に互いに反対側から同じ誘導素子へ同時に給電させることにより解決することができる。これにより、より低いインダクタンスを経験し得る2つの共振回路を生み出すことができ、誘導素子のQ値の劣化をもたらし得る改変を行う必要性なく、2つの回路へ供給される電流量が増加され得ることを意味する。そして、これにより、発振器の位相ノイズ性能をより大きく改善することが可能となり得る。利点をもたらす本発明の例示的な実施形態は、図3〜図8を参照しながら以下により詳細に説明される。また、以下の実施形態では電圧制御発振器(VCO)のみが言及されるが、同様の利点を達成するために同等の特徴を他の発振器が使用してもよいことが理解されるであろうという点にも留意すべきである。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る発振器30を例示している。発振器30は、誘導素子31、第1の容量回路32A及び第2の容量回路32Bを備える。誘導素子31は、金属線ループとして作製され、1つ以上の巻きを含み得る。誘導素子31並びに第1及び第2の容量回路32A、32Bは、電子接続端子35A、35Bを含み、それらは、誘導素子31の金属線ループを第1及び第2の容量回路32A、32Bとそれぞれ電気的に接続するように構成され得る。電子接続端子35Bは、電子接続端子35Aが第1の容量回路32Aを金属線ループと接続するように構成される場所から誘導素子31上の実質的に反対側で、第2の容量回路32Bを当該金属線ループと接続するように構成される。そして、第1の容量回路32Aによって誘導素子31と共に第1の共振回路が形成され、誘導素子31及び第2の容量回路32Bによって第2の共振回路が形成される。
【0030】
なお、誘導素子31は、図1及び図2を参照しながら説明したVCO10の誘導素子11と同等の物理的サイズと同等のQ値とを有してよい。また、第1の容量回路32A及び第2の容量回路32Bは、共に、図1及び図2を参照しながら説明したVCO10の容量回路12と同一又は実質的に同様であってよい。発振器30の第1及び第2の容量回路32A、32Bは、チューニング電圧を受け付けるように構成され得るチューニング電圧端子(図示せず)、並びに発振器30の第1及び第2の共振回路の共振周波数で出力信号が出力され得る出力端子(図示せず)をも含み得る。
【0031】
第1及び第2の容量回路32A、32Bは、共に、反対側から、誘導素子31の同じ金属線ループへ給電するように構成される。当該第1及び第2の共振回路、即ち容量回路32Aを伴う誘導素子31及び容量回路32Bを伴う誘導素子31は、それぞれ、ここでは、実質的に同じ周波数にチューニングされ、即ち、同じ共振周波数にマッチングされる。また、マッチングされた第1及び第2の容量回路32A、32Bは、互いに別位相(out-of-phase)で、誘導素子31の金属線ループに給電するように、位相ロックされる。別位相との用語は、第1及び第2の容量回路32A、32Bが、それぞれ、同じタイミングで誘導素子31の反対側へ電流を供給し、同時に誘導素子の他の側への給電を振動させる(swing to feed)ように構成されるというように定義され得る。また、誘導素子31の金属線ループの実質的に互いに反対側であって、第1及び第2の容量回路32A、32Bの電子接続端子35A、35Bの双方から実質的に等しい距離にある誘導素子31の仮想接地点34に、仮想的な接地が配置され得る。仮想接地点34は、ここでは、DC供給電力(VCC)を受け付けるように構成され得る。以下のように、本実施形態の利点は、図1〜図2のVCO10を基準として、最もよく例示され説明される。
【0032】
以下で言及される通例として図示される例において、明瞭さのために、図1〜図2のVCO10は、シングルエンド型(single-ended)のインダクタンスL=200pHを有するものと仮定する。シングルエンド型のインダクタンスとの用語は、ここでは、容量回路12から見た誘導素子11のインダクタンス、即ち仮想接地点14と容量回路12を誘導素子11に接続する電子接続端子15との間の誘導素子11の一方の側のインダクタンス(即ち、誘導素子11の金属線ループの半分のインダクタンス)をいう。さらに、この通例として図示される例において発振器30の誘導素子31は、ここでは、例示の目的のために、図1〜図2のVCO10の誘導素子11と同じ物理的サイズ及び同じQ値を有するものと仮定する。
【0033】
発振器30のマッチングされる第1及び第2の容量回路32A、32Bは、上述したように、別位相で発振するように設定される。第1及び第2の容量回路32A、32Bは、図1のVCO10内の誘導素子11の容量回路12と比較して、シングルエンド型となるような、誘導素子31のインダクタンスの半分のみを見込むことができる(即ち、図4では、通例として図示される例を基準として、L={L/2}=100pHである)。シングルエンド型のインダクタンスは、ここでは、仮想接地点34と容量回路32A、32Bを誘導素子31に接続する電子接続端子35A、35Bとの間の誘導素子31の一方の側のインダクタンス(即ち、誘導素子31の金属線ループの4分の1のインダクタンス)である。これは、電圧を増加させる必要なく、よって電圧の制限を超えることにより第1及び第2の容量回路32A、32Bの容量素子と電子コンポーネントとを破壊し又は燃焼させる潜在的なリスクを増加させる必要なく、図1〜図2のVCO10内の電流源13と比較して、電流源33A、33Bが第1及び第2の容量回路32A、32Bの各々から(即ち、第1及び第2の共振回路から)2倍大きい電流(2×I)を引き出すように構成され得ることを意味する。
【0034】
結果として、図1〜図2のVCO10に対して2倍高い電流(2×I)を引き出し得る2つの容量回路32A、32Bが存在するため、発振器30から引き出され得る電流の総量は図1〜図2のVCO10に対して4倍、即ち4×Iとなる。ここでは、図3の発振器30の誘導素子31は図1〜図2のVCO10内の誘導素子11と同じであり、図3の発振器30の誘導素子31の金属線ループの物理的なサイズは図1〜図2のVCO10内の誘導素子と同じであるものとする。これは、誘導素子31もまたVCO10内の誘導素子11と同じQ値をも有し得ることを意味する。よって、誘導素子31のQ値が劣化することなく、又は第1及び第2の容量回路32A、32Bの電圧の制限を超過することなく、図1〜図2のVCO10へ給電されるよりも4倍多い電力がここで図3の発振器30へ給電されることになる。これは、図1〜図2のVCO10と比較して、発振器30による出力信号内の位相ノイズを6dB改善することにつながる。なお、第1及び第2の容量回路32A、32Bが正確に同じ周波数にチューニングされると、発振器30において正確に6dBの位相ノイズの改善が達成される。ここで、同じ周波数に実質的にチューニングされる、との用語は、第1及び第2の容量回路32A、32Bが同じ周波数にチューニングされなければならないとしても、実際に第1及び第2の容量回路32A、32Bがチューニングされる周波数は全く同じにはならない可能性があることを表すために用いられる。第1及び第2の容量回路32A、32Bがチューニングされる周波数が全く同じではない場合、発振器30において達成される位相ノイズの改善は、正確に6dBではないであろう。
【0035】
図4は、図3を参照して説明した本発明の実施形態に係る発振器30の等価電子回路表現を示している。ここでは、誘導素子31はインダクタLにより表現され、第1及び第2の容量回路32A、32Bは可変キャパシタCにより表現される。仮想接地点34もまた示されている。インダクタLのインダクタ値は、図2に示したインダクタLのインダクタ値の半分とすることができる(即ち、通例としての図示される例を基準として、L=L/2=100pHである)。
【0036】
図4における実線及び破線の矢印は、共振回路に電流が供給された場合の発振器30内の電流の流れの方向を例示している。第1の電流は第1の可変キャパシタCからインダクタLの1つを介して電子回路の右側を流れ、同時に第2の電流は第2の可変キャパシタCからインダクタLの1つを介して電子回路の左側を流れ得る。それら電流は、仮想接地点34を通過し、第2のインダクタLを介して反対側の可変キャパシタCに向けて流れ得る。これは、図4において実線で描かれた矢印により例示されている。そして、共振回路の固有の性質によって電流の方向を振動させることができ、それにより、電流は、第2のインダクタLを介し、仮想接地点34を通過し、及び第1のインダクタLを介して、可変キャパシタCへ逆方向に流れ戻り得る。これは、図4において破線の矢印により例示されている。このように、発振器30の等価電子回路表現は、仮想接地点34の周辺にて、その共振周波数でどのように前後に振動する(発振する)かを例示しており、可変キャパシタCの別位相での発振、即ち図3の第1及び第2の容量回路32A、32Bが発振器30内で同時に電子回路の反対側に給電することも示している。
【0037】
図5は、本発明の他の実施形態に係る発振器50を例示している。発振器50は、図3〜図4を参照しながら説明した実施形態の発振器30と実質的に同じ要素を備えてよい。但し、発振器50は、追加的に、誘導素子間接続部(interconnection)51、及び同位相仮想接地点52を備える。誘導素子間接続部51は、誘導素子31の金属線ループの第1の側の第1の点と、誘導素子31の金属線ループの他の側の第2の点との間に位置する。当該第1及び第2の点は、誘導素子31上の、第1及び第2の容量回路32A、32Bの電子接続端子35A、35Bの間に位置する。さらに、第1及び第2の点は、第1の容量回路32Aの電子接続端子35A及び第2の容量回路32Bの電子接続端子35Bの双方から実質的に等しい距離に位置する。誘導素子間接続部51は、誘導素子31の金属線ループをまたいて電気的な接続を提供するように構成される。本実施形態において、ここでは、同位相仮想接地点52は、前の実施形態のような仮想接地点34の代わりに、DC供給電圧(VCC)を受け付けるように構成され、但し、発振器30が以下に説明する別位相モードで動作する場合には、仮想接地点34がDC供給電圧(VCC)を受け付けるように構成され得る
【0038】
誘導素子間接続部51は、発振器50に、デュアルモードの機能性を提供する。発振器30のこのデュアルモードの機能性は、発振器50が同位相モード又は別位相モードという2つの安定発振モードのいずれかで動作することを可能とする。第1及び第2の容量回路32A、32Bが同位相モードで動作するように設定される場合、第1及び第2の容量回路32A、32Bは、誘導素子31の同じ側に同時に電流を給電するように構成され、そして誘導素子31の他の側に向けて同時に給電を振動させ、よって、発振器50において同位相の発振を実現する。一方、第1及び第2の容量回路32A、32Bが別位相モードで動作するように設定される場合、第1及び第2の容量回路32A、32Bは、誘導素子31の反対側に同時に電流を給電するように構成され、そして誘導素子31のそれぞれ別の側に同時に給電を振動させる。
【0039】
これら2つの安定発振モードは、2つの異なる共振周波数を有することができ、それら周波数は、別々の周波数レンジに関連付けられ得る。よって、前の実施形態において言及した利点に加えて、発振器50は、より広い合計の周波数帯をカバーすることができ、及び/又は、例えば図1〜図2のVCOなどの他の発振器と比較して、同じ周波数レンジをカバーしつつも第1及び第2の容量回路32A、32Bにおいて必要とされる可変キャパシタンスの量を発振器50において低減させることを可能とする。
【0040】
第1の例によれば、発振器50のマッチングされた第1及び第2の容量回路32A、32Bは、別位相モードで発振するように設定され得る。この別位相モードにおいて、発振器50の第1及び第2の共振回路は、前の実施形態において説明したのと同じように動作し得る。第1及び第2の容量回路32A、32Bは、図1〜図2のVCO10内の誘導素子11の容量回路12と比較して、シングルエンド型となるような、誘導素子31のインダクタンスの半分のみを見込むことができる(例えば、図6では、図示される例を基準として、L=L={L/2}=100pHである)。シングルエンド型のインダクタンスは、ここでも、仮想接地点34と容量回路32A、32Bを誘導素子31に接続する電子接続端子35A、35Bとの間の誘導素子31の一方の側のインダクタンス(即ち、誘導素子31の金属線ループの4分の1のインダクタンス)である。この別位相モードにおいて、誘導素子間接続部51は第1及び第2の共振回路には利用されず、仮想接地点34及び同位相仮想接地点52の双方が仮想的な接地(virtual ground)であると見なされてよい。
【0041】
第2の例によれば、発振器50のマッチングされた第1及び第2の容量回路32A、32Bは、同位相モードで発振するように設定され得る。この同位相モードにおいて、第1及び第2の容量回路32A、32Bは、上述したように同位相で発振することができる。第1及び第2の容量回路32A、32Bは、第1及び第2の容量回路32A、32Bが別位相で発振するように設定される第1の例と比較して、シングルエンド型となるような、より高いインダクタンスを見込むことができる。これは、この同位相モードにおいて、シングルエンド型のインダクタンスは、容量回路32A、32Bを誘導素子31に接続する電子接続端子35A、35Bと仮想接地点34との間の誘導素子の一方の側のインダクタンス(即ち、誘導素子31の金属線ループの4分の1のインダクタンス、例えば図6では、通例として図示される例を基準として、L=L={L/2}=100pH)のみではなく、仮想接地点34と誘導素子間接続部51の中央に位置する同位相仮想接地点52との間の誘導素子間接続部52のインダクタンス(例えば、図6におけるL)の2倍でもある。後者の理由は、第1及び第2の容量回路32A、32Bが同じ方向から誘導素子間接続部51に同時に給電するためである。
【0042】
上述した第1及び第2の例の双方において、第1及び第2の共振回路は、同位相モード及び別位相モードの2つの共振周波数のうちより低い方で発振することを選ぶであろう。これは、通常は同位相モードである。同位相モード及び別位相モードの共振周波数について周波数がより分離されるほど、第1及び第2の共振回路はより低い共振周波数を一層選択しがちとなる。同位相モード及び別位相モードの共振周波数が近い形で分離されている場合には、第1及び第2の共振回路は、実質的に同程度に2つのモードの任意の方で発振し易くなるであろう。よって、発振器50を、同位相又は別位相モードのいずれでも発振するように動的に制御することができる。第1及び第2の容量回路32A、32Bに同位相で発振させる際に第1及び第2の共振回路32A、32Bに感知されるインダクタンスは、第1及び第2の容量回路32A、32Bに別位相で発振させる際に第1及び第2の共振回路32A、32Bに感知されるインダクタンスよりも高い。
【0043】
図6は、図5に例示した本発明の実施形態に係る発振器50の等価電子回路表現を示している。ここでは、誘導素子31はインダクタLによって表現され、第1及び第2の容量回路32A、32Bは可変キャパシタCによって表現される。ここでは、誘導素子間接続部51は、インダクタLによって表現される。同位相仮想接地点52もまた示されている。インダクタLのインダクタ値は、図2に示したインダクタLのインダクタ値の半分、即ちL=L=L/2であり得る。インダクタLのインダクタ値は、実装固有であり、インダクタLとの関係において選択されてよく、通例として図示される例を基準とすると、L≒Lである。
【0044】
別位相モードでは、一般的に、誘導素子間接続部51がこのモードにおいて利用されないため、インダクタLを通って電流は流れず、よって、可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスはLのみ、即ち、通例として図示される例を基準として、(図4におけるLのように)L=100pFであり得る。図6において、実線及び破線で描かれた矢印は、別位相モードではなく、以下に説明される同位相モードにおける電流の方向を表している。別位相モードでは、共振回路に電流が供給される際の発振器50内の電流の方向は図4に関連して既に説明したものと同一であってよく、図4において実線及び破線の矢印により示されている。
【0045】
一方、同位相モードにおいて、電流は、双方の可変キャパシタCから電子回路の右側のインダクタLを通り、さらに仮想接地点52を通過しながらインダクタLを通り、電子回路の左側のインダクタLを通ってそれぞれの可変キャパシタCに向けて流れ戻る。これは、図6において実線で描かれた矢印により例示されている。共振回路の固有の性質によって電流の方向を振動させることができ、それにより、電流は、可変キャパシタCから電子回路の左側のインダクタLを通り、仮想接地点52を通過しながらインダクタLを同時に通り、電子回路の右側のインダクタLを通ってそれぞれの可変キャパシタCに向けて流れ戻る。これは、図6において破線の矢印により例示されている。これが可変キャパシタCの同位相の発振を例示しており、即ち、図5の第1及び第2の容量回路32A、32Bは発振器50内で同時に電子回路に同じ側から給電する。可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、L+2Lとなり得る。そして、通例として図示される例を基準とすると、可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、L+2L=L+2・0.4・L=1.8・L=180pFとなり得る。
【0046】
図7は、本発明のさらなる実施形態に係る発振器70を例示している。発振器70は、図3〜図4を参照しながら説明した実施形態における発振器30、又は図5〜図6を参照しながら説明した実施形態における発振器50と実質的に同じ要素を備え得る。但し、追加的に、発振器70は、第2及び第3の誘導素子71A,71Bを備える。第2及び第3の誘導素子71A,71Bは、少なくとも1つの巻きを伴う金属線ループを備え得る。第2の誘導素子71Aは、第2の誘導素子71Aが第1の誘導素子31と並列に連結されるように、電子接続端子73Aを通じて第1の容量回路32Aに接続され得る。また、第3の誘導素子71Bは、第3の誘導素子71Bが第1の誘導素子31と並列に連結されるように、電子接続端子73Bを通じて第2の容量回路32Bに接続され得る。また、第1及び第2の容量回路32A、32Bの電子接続端子73A、73Bからそれぞれ反対側の第2及び第3の誘導素子71A、71Bの各々の仮想接地点72A、72Bに、仮想的な接地が配置され得る。本実施形態では、同位相仮想接地点52及び仮想接地点72A、72Bは、DC供給電圧(VCC)を受け付けるように構成され得るが、仮想接地点34は、発振器70が以下に説明するように別位相モードで動作する場合にもDC供給電圧を受け付けるように構成され得る。
【0047】
上述したように、第2及び第3の誘導素子71A、71Bを有することにより、発振器70内の第1及び第2の共振回路32A、32Bにより経験されるインダクタンスをさらに低減することができる。よって、前の実施形態において言及した利点に加えて、第1及び第2の共振回路に一層高い電流を供給し得ることになり、結果として、発振器70内の容量回路32A、32Bの電圧制限を超過することなく、ノイズ性能をさらに改善し得る。
【0048】
図8は、図7に例示した発明の実施形態に係る発振器70の等価電子回路表現を示している。ここでは、誘導素子31はインダクタLによって表現され、第1及び第2の容量回路32A、32Bは可変キャパシタCによって表現される。ここでは、誘導素子間接続部51は、インダクタLによって表現され、第2及び第3の誘導素子71A、71BはインダクタLによって表現される。同位相仮想接地点52並びに第2及び第3の誘導素子71A、71Bについての仮想接地点72A、72Bもまた示されている。インダクタLのインダクタ値は、図2に示したインダクタLのインダクタ値の半分、即ちL=L=L=L/2であり得る。インダクタL及びインダクタLのインダクタ値は、実装固有であり、インダクタLとの関係において選択されてよい。通例として図示される例を基準とすると、インダクタLのインダクタ値はL≒0.4L(図6におけるLなど)として選択されてよく、インダクタLのインダクタ値はL≒1.4Lとして選択されてよい。
【0049】
別位相モードでは、一般的に、誘導素子間接続部51がこのモードにおいて利用されず、よってそれは仮想的な接地とみなされ得るため、インダクタLを通って電流は流れないであろう。共振回路に電力が供給される際の発振器70における電流の方向は、図4に関連して既に説明したものと同一であってよく、図4において実線及び破線の矢印により示されている。但し、別位相モードにおいて、電流は、第1の可変キャパシタCから電子回路の右側のインダクタLの1つを通って追加的に流れつつ、第2の可変キャパシタCから電子回路の左側のインダクタLの1つを通って同時に流れることができる。電流は、それぞれ仮想接地点72A、72Bを通過し、第2のインダクタLを通って可変キャパシタCに向けて流れ得る。共振回路の固有の性質によって電流の方向を振動させることができ、それにより、電流は、逆方向に第2のインダクタLを通って仮想接地点72A、72Bをそれぞれ通過し、電子回路のそれぞれ右側及び左側のインダクタLを通って可変キャパシタCへ流れ戻り得る。これが可変キャパシタCの別位相の発振を例示しており、即ち、図7の第1及び第2の容量回路32A、32Bは発振器70内で同時に電子回路の逆の側に給電する。可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、L||L、即ちLと並列に連結されるLとなり得る。通例として図示される例を基準とすると、可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、L||L=L||1.4L=100||140≒58pHとなる。
【0050】
同位相モードにおいて、共振回路に電力が供給される際の発振器70における電流の方向は、図6に関連して既に同位相モードにより説明したものと同一であってよく、図6において実線及び破線の矢印により示されている。電流は、追加的に、可変キャパシタCから電子回路の右側の第1のインダクタLを通り、それぞれ仮想接地点72A、72Bに向けて同時に流れ、電子回路の左側の第2のインダクタLを通って可変キャパシタCに向けて流れ戻り得る。共振回路の固有の性質によって電流の方向を振動させることができ、電流は、電子回路の左側の第2のインダクタLを通って仮想接地点72A、72Bをそれぞれ通過し、第1のインダクタLを通って可変キャパシタCへ流れ戻り得る。これが可変キャパシタCの同位相の発振を例示しており、即ち、図7の第1及び第2の容量回路32A、32Bは発振器70内で同時に電子回路の同じ側に給電する。可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、(L+2L)||L、即ちLと並列に連結される(L+2L)となり得る。通例として図示される例を基準とすると、可変キャパシタCにより見込まれるシングルエンド型のインダクタンスは、(L+2L)||L=(L+2・0.4・L)||1.4L=(L+0.8・L)||1.4L=1.8L||1.4L=180||140≒79pHとなる。
【0051】
上の説明は、本発明を実施するために現時点で予期される最良の形態についてのものである。当該説明は、限定的な意味で受け取られることを意図しておらず、ただ本発明の一般的な原理を説明する目的のためになされている。本発明の範囲は、公表される請求項を参照することによってのみ確定されるべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数シンセサイザ内での周波数の生成における使用のための発振器であって、
少なくとも1つの巻きを伴って金属線ループを形成する第1の誘導素子(31)と、
前記第1の誘導素子(31)との間で第1の共振回路(31,32A)を形成するように構成され、少なくとも1つの第1の接続端子(35A)を通じて前記第1の誘導素子(31)と接続される第1の容量回路(32A)と、
を備え、
前記第1の容量回路(32A)は、少なくとも1つの容量素子、並びに、発振を確立し及び維持するように構成される電子コンポーネント配置を含み、
少なくとも1つの容量素子と電子コンポーネントの配置とを含む第2の容量回路(32B)が、前記第1の誘導素子(31)との間で第2の共振回路(31,32B)を形成するように構成され、前記第1の容量回路(32A)の前記第1の接続端子(35A)に対して前記第1の誘導素子(31)の反対側に位置する少なくとも1つの第2の接続端子(35B)を通じて前記第1の誘導素子(31)と接続されることと、
前記第1及び第2の共振回路(31,32A;31,32B)が実質的に同等の周波数にチューニングされることと、
を特徴とする発振器(30,50,70)。
【請求項2】
前記第1及び第2の容量回路(32A,32B)の間に位置する前記第1の誘導素子(31)の第1の側の第1の点と、前記第1及び第2の容量回路(32A,32B)の間に位置する前記第1の誘導素子(31)の他の側の第2の点と、の間に、電気的な接続を提供するように適合される誘導素子間接続部(51)、をさらに備え、
前記第1の誘導素子(31)の前記第1及び第2の点は、前記第1及び第2の容量回路(32A,32B)の双方から実質的に等しい距離に位置する、
請求項1に記載の発振器(30,50,70)。
【請求項3】
少なくとも1つの巻きを伴って金属線ループを形成し、前記第1の誘導素子(31)と並列に前記第1の容量回路(32A)に接続される第2の誘導素子(71A)と、
少なくとも1つの巻きを伴って金属線ループを形成し、前記第1の誘導素子(31)と並列に前記第2の容量回路(32B)に接続される第3の誘導素子(71B)と、
をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の発振器(30,50,70)。
【請求項4】
前記第1の共振回路(31,32A)及び第2の共振回路(31,32B)は、別位相で発振するように位相ロックされる、請求項1に記載の発振器(30,50,70)。
【請求項5】
前記第1の共振回路(31,32A)及び第2の共振回路(31,32B)は、同位相で又は別位相で発振するように位相ロックされる、請求項2〜3のいずれか1項に記載の発振器(30,50,70)。
【請求項6】
前記第1及び第2の容量回路(32A,32B)内の可変キャパシタンスの量は、前記第1及び第2の共振回路(31,32A;31,32B)の同位相モード及び別位相モードの2つの共振周波数に関連する所望の周波数レンジに基づく、請求項5に記載の発振器(30,50,70)。
【請求項7】
前記第1及び第2の容量回路(32A,32B)のキャパシタンスは、動的に制御されるように構成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発振器(30,50,70)。
【請求項8】
前記第1の誘導素子(31)、前記第1の容量回路(32A)、前記第2の容量回路(32B)、前記誘導素子間接続部(51)、前記第2の誘導素子(71A)、及び/又は前記第3の誘導素子(71B)は、集積回路[IC]として形成され、同一のダイ上に集積される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発振器(30,50,70)。
【請求項9】
周波数を生成するための位相ロックループ[PLL]と、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の発振器(30,50,70)と、
を備える周波数シンセサイザ。
【請求項10】
前記PLL及び前記発振器(30,50,70)は、集積された単一チップ周波数シンセサイザを形成するように、同一のダイ上に集積される、請求項9に記載の周波数シンセサイザ。
【請求項11】
通信ネットワークにおける使用のためのネットワークノードであって、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の発振器(30,50,70)、及び/又は
請求項9〜10のいずれか1項に記載の周波数シンセサイザ、
を備えるネットワークノード。
【請求項12】
前記ネットワークノードは、基地局である、請求項11に記載のネットワークノード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−506378(P2013−506378A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532039(P2012−532039)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051080
【国際公開番号】WO2011/040846
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】