説明

通信装置

【課題】中央装置が、防災情報管理装置(管理装置)からの防災情報を待たずに、緊急時に迅速かつ柔軟な緊急指令を送信できるようにする。
【解決手段】中央装置100は、防災情報管理装置200a,bからの防災情報を監視するとともに、列車400a〜400dからの緊急情報も監視する。中央装置100が防災情報または緊急情報を受信した場合、中央装置100の制御部(判断部)は、その情報を分析し、緊急指令の内容及び緊急指令を通知する範囲を決定し、緊急音声記憶部(記憶部)が記憶した緊急音声信号を読み出して、列車400a〜400dに対して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の通信システムには、音声の伝達を前提とし、音声信号を送受信する構成となっているものがある。
また、音声通信とデータ通信との双方が可能である通信システムにおいても、通常、音声通信を行うチャネルとデータ通信を行うチャネルとを別々に設けている。
しかし、音声通信を行うチャネルとデータ通信を行うチャネルとを別々に設けると、チャネルの利用効率が悪くなるので、例えば、特許文献1に記載の方式により、チャネルの有効活用を図っている。
【0003】
一方、防災情報等、緊急性を要する情報は、データ通信によって表示装置に表示するよりも、音声によるほうが、操作者の注意を喚起できて好ましい。
例えば、列車と中央装置とが通信する列車無線システムにおいては、列車を緊急に停止させる必要が生じた場合、音声通信によって伝達した音声により、運転士の注意を喚起する。
【0004】
このような場合には、中央装置の操作者(指令員)の判断を待っている余裕がないこともあるため、中央装置とは別に防災情報管理装置を設け、中央装置が防災情報管理装置から緊急情報を受信した場合には、中央装置はあらかじめ記憶した音声データを送信することにより、指令員からの指令がなくとも、自動的に列車に対する音声通信による指令を送信する。
【特許文献1】特開2004−222061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地震発生その他の理由により、中央装置と防災情報管理装置との間の通信に障害が生じた場合には、中央装置が防災情報管理装置からの緊急情報を受信できないので、自動的に緊急指令を送信することができない。
このように、本来、最も緊急性を要する場合に、いかに迅速に緊急指令を送信するかが課題となる。
【0006】
また、緊急情報の種類によっては、送信すべき緊急指令の内容や、緊急指令を送信すべき列車の範囲が異なるので、それに対応した柔軟なシステムが求められる。
【0007】
本発明は、例えば、上記のような課題を解決し、既存の音声による通信システムを用いつつ、緊急情報を迅速かつ柔軟に送信できる通信装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信装置は、
通信局と音声信号による通信を行い、
緊急情報を管理する管理装置が送信した緊急情報を受信し、受信した緊急情報に基づいて、記憶した緊急音声信号を通信局に対して送信する通信装置において、
緊急音声信号を記憶する記憶部と、
通信局が音声信号と混在させて送信した緊急情報を受信する受信部と、
通信局に対して音声信号を送信する送信部と、
上記受信部が受信した緊急情報に基づいて、上記記憶部が記憶した緊急音声信号を上記送信部に送信させるか否かを判断し、上記記憶部が記憶した緊急音声信号を上記送信部に送信させると判断した場合に、上記記憶部が記憶した緊急音声信号を上記送信部に送信させる判断部と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、管理装置との通信に障害が生じ、通信装置が、管理装置からの緊急情報を受信できない場合でも、通信局からの緊急情報に基づいて、緊急音声信号を通信局に対して自動的に送信するので、緊急時において、迅速かつ柔軟に緊急音声信号を送信できるとの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1を、図1〜図4を用いて説明する。
【0011】
図1は、この実施の形態における列車無線システム500の全体構成の一例を示すシステム構成図である。
列車無線システム500は、中央装置100(通信装置の一例)、防災情報管理装置200a〜200b(管理装置の一例)、基地局300a〜300b、列車400a〜400dを有する。
【0012】
中央装置100は、基地局300を介して、列車400と通信をする。中央装置100と基地局300との間は有線接続、基地局300と列車400との間は無線接続である。
中央装置100と列車400との間の通信は、原則として音声信号によるが、データ信号を多重化処理して送受信することにより、同じチャネルでデータ通信も可能な構成となっている。
【0013】
防災情報管理装置200は、防災情報を管理する。例えば、沿線に設置した震度計が地震を感知した場合、その情報は防災情報管理装置200に集められる。
防災情報管理装置200は、集めた情報に基づいて、列車に対して緊急指令を発する必要があるか否かを判断する。
防災情報管理装置200が緊急指令を発する必要があると判断した場合、中央装置100に対して、防災情報を送信する。
【0014】
基地局300は、中央装置100と列車400との間の通信を中継する。
基地局300は、無線通信の到達範囲に基づき、それぞれ担当エリアを分担している。基地局300aはエリア350aを、基地局300bはエリア350bを、それぞれ担当する。
例えば、列車400bは、現在、基地局300aの担当エリアであるエリア350a内にいるので、基地局300aが中央装置100との通信を中継する。
【0015】
列車400は、基地局300を介して、中央装置100と通信をする。
列車400は、路線450上を移動する。例えば、列車400cは路線450b上を移動する。列車400cは、現在、基地局300bの担当エリアであるエリア350b内にいるので、基地局300bが中央装置100との通信を中継しているが、列車400cが基地局300aの担当エリアであるエリア350aに移動した場合には、基地局300aが中央装置100との通信を中継する。
上述したように、列車400と中央装置100との間の通信は、音声通信だけでなくデータ通信も可能な構成となっている。そこで、列車400は、各種センサーが検知した情報を、データ通信により、中央装置100に対して送信する。
例えば、現在の列車の位置や速度等のデータや、事故の発生を検知した等という情報などの各種のデータを送信する。
列車400が送信するデータのうち、列車が緊急停止した等、他の列車の運行に影響を与える可能性のあるデータを、ここでは緊急情報と呼ぶことにする。
【0016】
図2は、この実施の形態における中央装置100のハードウェア構成の一例を示すハードウェア構成図である。
図2において、中央装置100は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)911を備えている。CPU911は、バス912を介してROM(Read Only Memory)913、RAM(Random Access Memory)914、通信ボード915、CRT(Cathode Ray Tube)表示装置901、キーボード(K/B)902、マウス903、FDD(Flexible Disk Drive)904、磁気ディスク装置920、コンパクトディスク装置(CDD)905、プリンタ装置906、スキャナ装置907と接続されている。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、磁気ディスク装置920は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置あるいは記憶部の一例である。
通信ボード915は、LAN等を介して、防災情報管理装置200及び基地局300に接続している。通信ボード915は、それ以外に、FAX機、電話器等に接続されていてもよい。
例えば、通信ボード915、K/B902、スキャナ装置907、FDD904などは、入力部の一例である。
また、例えば、通信ボード915、CRT表示装置901などは、出力部の一例である。
【0017】
ここで、通信ボード915は、LANに限らず、直接、インターネット、或いはISDN等のWAN(ワイドエリアネットワーク)に接続されていても構わない。直接、インターネット、或いはISDN等のWANに接続されている場合、中央装置100は、インターネット、或いはISDN等のWANに接続され、ゲートウェイは不用となる。
磁気ディスク装置920には、オペレーティングシステム(OS)921、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923は、CPU911、OS921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0018】
上記プログラム群923には、以下に述べる実施の形態の説明において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群924には、以下に述べる実施の形態の説明において、「〜の判定結果」、「〜の計算結果」、「〜の処理結果」として説明するものが、「〜ファイル」として記憶されている。
また、以下に述べる実施の形態の説明において説明するフローチャートの矢印の部分は主としてデータの入出力を示し、そのデータの入出力のためにデータは、RAM914もしくは磁気ディスク装置920、FD(Flexible Disk)、光ディスク、CD(コンパクトディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)等のその他の記録媒体に記録される。あるいは、信号線やその他の伝送媒体により伝送される。
【0019】
また、以下に述べる実施の形態の説明において「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、ハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。
【0020】
また、以下に述べる実施の形態を実施するプログラムは、また、RAM914もしくは磁気ディスク装置920、FD(Flexible Disk)、光ディスク、CD(コンパクトディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)等のその他の記録媒体による記録装置を用いて記憶されても構わない。
【0021】
図3は、この実施の形態における中央装置100の機能ブロックの構成の一例を示すブロック構成図である。
中央装置100は、防災情報管理装置接続部121、防災情報受信部122、基地局接続部131、多重化処理部135、緊急情報受信部132(受信部の一例)、音声信号受信部133、音声信号送信部134(送信部の一例)、制御部141(判断部の一例)、表示部142、音声出力部143、音声入力部144、緊急音声記憶部154(記憶部の一例)を有する。
【0022】
防災情報管理装置接続部121は、防災情報管理装置200が送信した信号を取得する。
防災情報受信部122は、防災情報管理装置接続部121が取得した信号から、防災情報を受信する。
基地局接続部131は、基地局300が送信した信号を取得し、また、基地局300へ信号を通知する。
多重化処理部135は、基地局接続部131が基地局300から取得した信号(音声信号とデータ信号の混在する信号)を処理し、音声信号とデータ信号に分離する。また、音声信号送信部134が通知した音声信号と、図示していないデータ信号送信部が通知したデータ信号とを多重化処理する。
緊急情報受信部132は、多重化処理部135が分離したデータ信号のうち、列車400が送信した緊急信号を受信する。
音声信号受信部133は、多重化処理部135が分離した音声信号を受信する。
【0023】
制御部141(判断部の一例)は、通知された情報・信号を処理し、各部を制御する。制御部141の動作については、後述する。
【0024】
表示部142は、制御部141が通知したデータを、例えば、CRT表示装置901等に表示し、司令員に伝達する。
音声出力部143は、制御部141が通知した音声信号により、例えば、スピーカー等から音声を出力し、司令員に伝達する。
音声入力部144は、例えば、マイク等により、司令員の音声を取得し、音声信号に変換する。
緊急音声記憶部154(記憶部の一例)は、緊急時に列車に通知する緊急指令(音声ガイダンス)の音声信号(緊急音声信号)を記憶している。緊急音声記憶部154は、音声信号の波形データをそのまま記憶していてもよい。あるいは、緊急指令メッセージを文字列として記憶し、必要な場合に、記憶した文字列に基づいて音声信号を合成してもよい。
【0025】
次に、動作の詳細について説明する。
【0026】
図4は、この実施の形態における制御部141の制御の流れの一例を示すフローチャート図である。
【0027】
起動時等の通常時において、制御部141は通常時ルーチンをS11から実行する。
【0028】
S11において、制御部141は、防災情報受信部122が防災情報管理装置200からの防災情報を受信したか否かを判断する。防災情報を受信した場合には、緊急時ルーチンへ進む。防災情報を受信していない場合には、S12へ進む。
【0029】
S12において、制御部141は、緊急情報受信部132が列車400からの緊急情報を受信したか否かを判断する。緊急情報を受信した場合には、緊急時ルーチンへ進む。緊急情報を受信していない場合には、S13に進む。
【0030】
S13において、制御部141は、通常時の処理を行う。
例えば、音声入力部144が変換した音声信号を、音声信号送信部134に送り、列車400に対して送信させる。
あるいは、音声信号受信部133が列車400から受信した音声信号を、音声出力部143に送り、スピーカーから音声を出力させる。
あるいは、列車が送信した音声信号から、多重化処理部135が分離したデータに基づいて、表示部142に、各種データを表示させる。
制御部141は、S13の処理が終わると、S11に戻る。
【0031】
緊急時ルーチンでは、まず、S21において、制御部141は、受信した防災情報または緊急情報に基づいて、緊急指令を発する必要があるか否かを判断する。緊急指令を発する必要がない場合には、通常時ルーチンへ戻る。緊急指令を発する必要がある場合には、S22に進む。
例えば、列車400が地震を検知した場合、検知した地震の震度が小さければ、緊急指令を発する必要はない。
制御部141は、あらかじめその判断基準を記憶しておき、その判断基準に基づいて、緊急指令を発する必要があるか否かを判断する。
【0032】
S22において、制御部141は、緊急音声記憶部154から緊急音声信号を読み出す。S22の処理が終わると、S23に進む。
【0033】
S23において、制御部141は、緊急音声記憶部154から読み出した緊急音声信号を、音声信号送信部134に送り、列車400に対して送信させる。S23の処理が終わると、通常時ルーチンへ戻る。
【0034】
列車400においては、緊急音声信号も、通常時の音声信号と同様に受信し、再生する。したがって、列車400の乗務員は、指令員が声による指令をした場合と同様に、音声による指令を受ける。
【0035】
これにより、列車400の乗務員は、指令を確実に受けることとなり、緊急事態に対処できる。
【0036】
また、この緊急音声信号は、指令員の操作にかかわらず自動的に送信するので、指令員が情報を判断して指令を出す場合と比べて、迅速な対応が可能である。したがって、一刻を争う事態である場合などに有効である。
【0037】
さらに、防災情報管理装置200からの防災情報だけでなく、列車400からの緊急情報に基づいて、緊急音声信号を送信するので、より迅速な対応が可能となる。
例えば、災害等により、防災情報管理装置200との通信に障害が発生した場合、防災情報管理装置200から防災情報を受信することができない。このような場合でも、指令員の判断を待たずに、列車400からの緊急情報に基づいて、緊急音声信号を送信できる。
また、緊急事態の発生を列車400が最初に検知した場合には、その情報を中央装置100が直接受けて対処するので、防災情報管理装置200を経由する場合よりも、迅速な対応が可能である。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態2を、図1〜図5を用いて説明する。
この実施の形態における列車無線システム500の全体構成、中央装置100のハードウェア構成及び機能ブロック構成は、実施の形態1で図1〜図3を用いて説明したものと同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0039】
この実施の形態では、緊急情報の内容に基づいて、緊急指令を発するか否かを判断するだけでなく、緊急指令の内容を変える場合について説明する。
【0040】
図5は、この実施の形態における制御部141の制御の流れの一例を示すフローチャート図である。
【0041】
制御部141の制御の流れにおいて、S22が実施の形態1と異なる。
【0042】
緊急音声記憶部154は、複数の緊急音声信号を記憶している。緊急事態の種別に対応して、例えば、地震の場合、人身事故の場合、故障の場合などで、緊急指令の内容を変える必要があるので、それぞれの場合についての緊急指令に対応する緊急音声信号を記憶している。
【0043】
S22において、制御部141は、受信した緊急情報の内容を判断し、その内容に対応した緊急音声信号を、緊急音声記憶部154から読み出す。
例えば、緊急音声記憶部154が、記憶した緊急音声信号に対応する緊急事態の種別を記憶しておき、制御部141は、緊急情報から判断した緊急事態の種別と一致する種別に対応した緊急音声信号を、緊急音声記憶部154から読み出す。
【0044】
それ以外については、実施の形態1で図4を用いて説明したものと同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0045】
このように、この実施の形態によれば、列車400からの緊急情報の内容に基づいて、送信する緊急指令の内容を変えるので、状況に応じた柔軟な対応が可能となる。
【0046】
実施の形態3.
実施の形態3を、図1〜図6を用いて説明する。
この実施の形態における列車無線システム500の全体構成、中央装置100のハードウェア構成及び機能ブロック構成は、実施の形態1で図1〜図3を用いて説明したものと同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0047】
この実施の形態では、緊急情報の内容に基づいて、緊急指令の内容を変えるだけでなく、緊急指令を送信する列車400の範囲を変える場合について説明する。
【0048】
図6は、この実施の形態における制御部141の制御の流れの一例を示すフローチャート図である。
【0049】
制御部141の制御の流れにおいて、S23が実施の形態2と異なる。
【0050】
S23において、制御部141は、緊急事態の内容を判断し、その内容に基づいて、どの範囲の列車400に対して緊急指令を発するかを判断する。
【0051】
例えば、地震の場合には、全列車400a〜400dを対象にして緊急指令を発する必要がある。
これに対し、例えば、路線450bにいる列車400aが故障によって停止した場合には、同じ路線450bにいる列車400cに緊急指令を発する必要があるが、違う路線450aにいる列車400b,dには緊急指令を発する必要はない。
あるいは、沿線で火事が発生した場合には、その付近を通過するすべての列車400を対象にして緊急指令を発する必要がある。
【0052】
制御部141は、このように、緊急事態の内容に応じて緊急指令を発する列車400の範囲をあらかじめ記憶しておく。そして、これに基づいて、どの範囲の列車400に対して緊急指令を発するかを判断する。
【0053】
この例において、基地局300は2つあり、それぞれ担当するエリアが定まっている。 このように、複数の基地局300が路線の全範囲を分担し、それぞれの通信可能範囲を担当する構成となっている場合、緊急情報を中継した基地局から、緊急事態の発生した場所を、ある程度特定することができる。
【0054】
例えば、列車400cが緊急情報を送信したとする。列車400cは、現在、基地局300bの担当エリアであるエリア350bにいる場合、この緊急情報は基地局300bが中継して、中央装置100に通知する。したがって、他の情報を参照しなくても、基地局300bの担当エリア内で緊急事態が発生していることがわかる。
したがって、制御部141がその付近にいる列車400に対して緊急指令を発すると判断した場合には、基地局300bの担当エリア350bにいる列車400を対象とすればよい。
【0055】
制御部141は、このようにして判断した送信範囲を、緊急音声信号の送信先として指定し、緊急音声信号を音声信号送信部134に送信させる。
【0056】
例えば、上記の場合であれば、制御部141は、基地局300bの担当エリア350bにいる列車400を送信先とすると判断したので、緊急音声信号を音声信号送信部134に送信させるとき、基地局300bに対してのみ送信し、基地局300aに対しては送信しない。
これにより、基地局300bの担当エリアであるエリア350b内にいる列車400c,dには緊急指令が伝わり、それ以外のエリアにいる列車400a,bには緊急指令が伝わらない。
【0057】
あるいは、緊急情報を受信した基地局と担当エリアが隣接する基地局に対して、緊急音声信号を送信し、それ以外の基地局には送信しない構成としてもよい。
【0058】
あるいは、多重化処理部135が、送信先に関するデータを緊急音声信号に多重化し、これを基地局300を介して列車400に送信することとしてもよい。この場合、列車400の側で、自身が緊急音声信号の送信先として指定されているかを判断し、指定されている場合には、緊急音声信号から緊急指令の音声を再生する。また、指定されていない場合には、再生しない。
そうすれば、基地局の担当エリアよりも細かい範囲、あるいは、基地局の担当エリアとは異なる範囲の列車400を指定して、緊急指令を発することができる。
【0059】
このように、この実施の形態によれば、列車400からの緊急情報の内容に基づいて、緊急音声信号を送信する列車400の範囲を変えるので、状況に応じた柔軟な対応が可能となる。
【0060】
実施の形態4.
実施の形態4を、図1〜図3を用いて説明する。
この実施の形態における列車無線システム500の全体構成、中央装置100のハードウェア構成及び機能ブロック構成は、実施の形態1で図1〜図3を用いて説明したものと同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0061】
この実施の形態は、列車無線システムにおいて緊急時における地上装置と列車間の音声通信方式に関するものである。
【0062】
従来の列車無線システムの構成では、列車への音声通信制御を行う中央装置(通信装置の一例)は、防災情報の管理を行う防災情報管理装置(管理装置の一例)と接続する構成としている。
中央装置の防災情報受信部では、防災情報管理装置からの情報通知を受信し、その受信内容に従い、あらかじめ蓄積される音声再生処理部からの音声ガイダンスを列車に対して配信する構成としている。
【0063】
従来の中央装置は以上のように構成されているので、障害等の理由により防災情報管理装置からの情報通知がされない場合は、該当地域の列車へ音声情報を即時通知することができない。
また、緊急時の音声ガイダンスや配信先が固定されているなど、緊急内容に応じた音声配信ができない。
【0064】
この実施の形態は、このような課題を解決し、防災情報を管理する防災情報管理装置が障害の場合においても、各防災情報に対応する音声情報を列車400へ自動配信する。
さらに、列車固有の障害時など、音声配信するための条件を拡大するとともに、緊急内容に応じた音声配信を可能とする。
【0065】
そのため、緊急時に列車400から中央装置100へ情報を通知する手段をもたせ、中央装置100では基地局300を経由し列車400から受信した緊急情報を検出することで、緊急情報に対応するあらかじめ蓄積した音声情報を該当もしくは周辺エリアの列車400へ配信する。
さらに、列車400から通知する情報に要因情報をもたせることにより、中央装置100では各要因毎に対応する音声ガイダンスを配信することを可能とする。
【0066】
地震などの緊急時における中央装置100(地上装置ともいう)と列車400間の音声通信方式について説明する。
【0067】
中央装置100と列車400との間の通信は、基地局300を介して、フレーム信号に同期した信号フォーマットにより信号の受け渡しを行う。
列車400では、図示していない検出装置が、緊急事態の発生を検出する。例えば、加速度計が検知した加速度が正常か否かを判断し、異常な加速度を検知した場合、地震の発生と判断する。
検出装置は、検出した緊急事態を、図示していない緊急情報送信部に伝える。
緊急情報送信部は、これを緊急情報として、送信する。
図示していない列車多重化処理部は、緊急情報情報送信部が送信した緊急情報を、呼制御信号等の情報や音声信号と多重化処理をする。
図示していない列車無線通信部は、列車多重化処理部が処理した信号を、基地局300を介して中央装置100に対して送信する。すなわち、列車無線通信部は、列車多重化処理部が処理した信号を基地局300に無線送信し、基地局300がこれを中継して中央装置100に送信し、中央装置100に到達する。
【0068】
中央装置100では、基地局300を介して列車から送られる信号(緊急情報などのデータ、音声信号などを含む)を、基地局接続部131が受信処理する。
多重化処理部135は、受信データ信号のフレーム同期を検出し、受信したデータを、音声信号とデータ信号に分離する。
【0069】
緊急情報受信部132(受信部の一例)は、分離されたデータ信号のうちから、緊急情報を抽出して受信する。緊急情報受信部132内の(図示していない)列車緊急情報処理部は、列車から受信した緊急情報の受信判定を行い、正常に受信されたデータであれば、制御部141へ通知する。
【0070】
制御部141では、列車緊急情報処理部から通知された列車緊急情報の内容、及びデータ受信した基地局情報に基づいて、どのような緊急指令を発するか決定する。
制御部141は、決定した緊急指令に対応する音声ガイダンスを決定し、あらかじめ音声ガイダンスが蓄積されている緊急音声記憶部154から音声ガイダンスを読み出し、図示していない音声処理部に対して、再生する音声ガイダンスの出力を指示する。
【0071】
さらに、制御部141は図示していない回線処理部に対して、音声配信する基地局300への一斉配信が可能となるよう指示する。
回線処理部は、制御部141が指示した基地局に対して、回線が接続されるよう、基地局接続部131を制御する。
音声処理部で再生される音声ガイダンスは、多重化処理部135が多重化し、基地局接続部131により接続した基地局300に送信する。そして、基地局300を経由し列車400への一斉配信を行う。
【0072】
なお、列車400が通知する緊急信号に複数の要因を区別できる情報を含ませておき、制御部141があらかじめ記憶した条件に基づいて、各要因に対応する音声の配信、配信ゾーンの判定を行うこととしてもよい。
【0073】
すなわち、制御部141は、緊急情報を判定するとき、音声ガイダンスの配信をするか否か、する場合にはどの範囲に対して配信するか、などを判断する。
例えば、要因Aの場合には音声配信処理は行わず、要因Bの場合は緊急信号を送信した列車と同一ゾーン向けの基地局に対して音声配信のため回線接続処理を行う。また要因Cの場合は、あらかじめデータ定義された複数ゾーン向けの基地局に対して音声配信のため回線接続処理を行う。
【0074】
これにより、障害等の理由により防災情報を管理する防災情報管理装置からの緊急情報が通知されない場合においても、列車400から通知される緊急情報を使用することで、同一ゾーンまたは他ゾーンに在線する列車400に対して、即時に音声ガイダンスを一斉配信することができる。
さらに、各列車個別に緊急事態が発生した場合においても、周辺列車へ状況に応じた音声ガイダンスを自動で一斉配信することができ、列車無線システム運用に関するサービスを向上させることができる。
【0075】
ここで説明した実施の形態は、以下の特徴を持つ。
【0076】
中央装置と基地局装置を介して中央装置と音声通信を行う列車装置で構成され、前記の中央装置では、緊急時に基地局装置を経由して列車から通知される緊急情報を検出する手段と、受信した緊急情報に対応する音声情報を該当もしくは周辺エリアの列車へ配信する手段を有する列車無線システムである。
【0077】
さらに、この列車無線システムにおいて、列車から通知する情報に要因情報をもたせ、中央装置では各要因毎に対応する音声情報を配信する列車無線システムである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施の形態1〜実施の形態4における列車無線システム500の全体構成の一例を示すシステム構成図。
【図2】実施の形態1〜実施の形態4における中央装置100のハードウェア構成の一例を示すハードウェア構成図。
【図3】実施の形態1〜実施の形態4における中央装置100の機能ブロックの構成の一例を示すブロック構成図。
【図4】実施の形態1における制御部141の制御の流れの一例を示すフローチャート図。
【図5】実施の形態2における制御部141の制御の流れの一例を示すフローチャート図。
【図6】実施の形態3における制御部141の制御の流れの一例を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0079】
100 中央装置、121 防災情報管理装置接続部、122 防災情報受信部、131 基地局接続部、132 緊急情報受信部、133 音声信号受信部、134 音声信号送信部、135 多重化処理部、141 制御部、142 表示部、143 音声出力部、144 音声入力部、154 緊急音声記憶部、200 防災情報管理装置、300 基地局、350 エリア、400 列車、450 路線、500 列車無線システム、901 CRT表示装置、902 K/B、903 マウス、904 FDD、905 CDD、906 プリンタ装置、907 スキャナ装置、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 磁気ディスク装置、921 OS、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信局と音声信号による通信を行い、
緊急情報を管理する管理装置が送信した緊急情報を受信し、受信した緊急情報に基づいて、記憶した緊急音声信号を通信局に対して送信する通信装置において、
緊急音声信号を記憶する記憶部と、
通信局が音声信号と混在させて送信した緊急情報を受信する受信部と、
通信局に対して音声信号を送信する送信部と、
上記受信部が受信した緊急情報に基づいて、上記記憶部が記憶した緊急音声信号を上記送信部に送信させるか否かを判断し、上記記憶部が記憶した緊急音声信号を上記送信部に送信させると判断した場合に、上記記憶部が記憶した緊急音声信号を上記送信部に送信させる判断部と、
を有する通信装置。
【請求項2】
上記記憶部は、複数の緊急音声信号を記憶し、
上記判断部は、
上記受信部が受信した緊急情報に基づいて、上記記憶部が記憶した複数の緊急音声信号から緊急音声信号を選択し、選択した緊急音声信号を上記送信部に送信させる
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
上記通信装置は、複数の通信局と通信を行い、
上記判断部は、
上記受信部が受信した緊急情報に基づいて、上記記憶部が記憶した緊急音声信号を上記送信部に送信させる通信局を選択し、選択した通信局に対して、上記記憶部が記憶した緊急音声信号を上記送信部に送信させる
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−339952(P2006−339952A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161103(P2005−161103)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】