説明

連続熱処理装置

【課題】加熱処理時に被処理材を挟持した状態で行うことで熱処理時間の短縮が図れると共に被処理材の変形を少なくできる連続熱処理装置を提供する。
【解決手段】連続熱処理装置は、被処理材1を挟持可能に形成された熱伝導率の高い材料で構成された伝熱体21dと、該伝熱体の外周に取付けられたヒーター21cと、該ヒーターの外周に取付けられた熱反射板21bと、該熱反射板の外周を覆う断熱材21aとから構成した加熱手段21を含み、該加熱手段の前記伝熱部に対して所定時間毎に被処理材を供給して該被処理材を熱処理を行い、熱処理が行われた被処理材を冷却部Cに供給して恒温冷却し、続いて鍛圧成型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車部品であるベアリングを大量に、しかも連続して熱処理を行うのに適した連続熱処理装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は連続熱処理装置として特開平5−25554号公報(特許文献1)に開示されている発明を出願している。この装置は、圧延または引抜き処理された金属体を還元雰囲気中あるいは不活性ガス雰囲気中で連続加熱装置で処理を行い、加熱処理された前記金属体をセラミックス板で面接触させた状態で冷却装置で冷却するとう構造である。
【0003】
また、熱処理装置としては、図2に示す構造の装置がある。この装置は図面において前後方向に長い煉瓦で構成されている台部aと、該台部aの上方に中心部に空洞が形成されるようにアルミナウールで構成された断熱部bと、該断熱部bによって形成された空洞の底部を除く内周部に取付けられたセラミックで構成された輻射板cと、該輻射板cの長手方向を横切る方向の上下に取付けられた多数のヒーターdと、該上下のヒーターdの間に位置するように配置され、内部に被処理物が収容されるマッフルeとより構成されている。そして、前記覆い部bの外周および台部aの外周はケースによって覆われている。なお、支持管fは前記ヒーターdを支持するための管である。
【特許文献1】特開平5−25554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この熱処理装置にあってはマッフルe内に被処理材を通過させ、該被処理材の熱処理を行うものであるが、マッフルe内の被処理材はヒーターdに通電し炉内の空気あるいは雰囲気を熱伝導体としてマッフルeが加熱状態なることによって加熱される。そして、熱伝導体としはヒーターdからの直接の熱と、ヒーターdからの熱が輻射板cによって反射されて対流となった輻射熱とである。
【0005】
ところで、このような熱伝導体による被処理材の熱処理にあっては、熱処理に時間が掛り、また、被処理材はマッフルe内を非拘束状態で通過するのみであるため加熱時に変形し易く、さらに、断熱部bの体積が大きいために高価な耐火断熱材を大量に使用することになりコストが高くなるといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、加熱処理時に被処理材を挟持した状態で行うことで熱処理時間の短縮が図れると共に被処理材の変形を少なくできる連続熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための連続熱処理装置は、被処理材を挟持可能に形成された熱伝導率の高い材料で構成された伝熱体と、該伝熱体の外周に取付けられたヒーターと、該ヒーターの外周に取付けられた熱反射板と、該熱反射板の外周を覆う断熱材とから構成した加熱手段を含み、該加熱手段の前記伝熱部に対して所定時間毎に被処理材を供給して該被処理材を熱処理を行い、熱処理が行われた被処理材を冷却部に供給して冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱処理時に被処理材を高熱伝導率の材料で挟持した状態で行うことで熱処理時間の短縮が図れ、さらに、外部への熱放出を止めることで大きな省エネルギー効果を奏し、被処理材の変形を少なくできるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、順次供給される被処理材を重ねた状態で熱伝導率の高い伝熱体で挟持し、前記被処理材を伝熱体内において熱処理する。
【実施例】
【0010】
以下、本発明に係る連続熱処理装置の一実施例を図1と共に説明する。
なお、以下に説明する実施例では被処理材としてベアリングの内輪あるいは外輪を熱処理する装置として説明するが、被処理材としては大量生産される部材、例えば、自動車用部品における熱処理が必要な部品に応用することが可能である。
【0011】
本発明の連続熱処理装置は大きく分けると、被処理材1の熱処理を行う熱処理部A、該熱処理部Aに被処理材1を所定時間毎に1個づつ供給する被処理材供給部B、前記熱処理部Aによって熱処理された被処理材1を冷却する冷却部Cとより構成されている。
【0012】
熱処理部Aは被処理材1を熱処理する焼入れ室21と、被処理材供給部Bから供給される被処理材1を焼入れ室21に供給する被処理材供給室22と、焼入れ室2において熱処理された被処理台を次の工程である冷却部Cに供給する送り室23とから構成されている。
【0013】
焼入れ室21には、断熱材21aと、該断熱材21aの内周に取付けられた熱反射板21bと、該反射板21bの内周に取付けられたヒーター21cと、該ヒーター21cの内側に取付けられた熱伝導の高いグラファイトまたはボロンナイトライドからなる伝熱体(固定熱媒体)21dとからなる加熱手段21が収容されている。なお、加熱手段21は全体として円筒体に形成されると共に4分割されている。そして、各分割された加熱手段21は、焼入れ室2の外壁に取付けられた複数段の加圧用シリンダ22によって供給されてくる被処理材1を挟持したり開放したりする。
【0014】
前記焼入れ室21の下部に形成されている被処理材供給室22には、前記被処理材供給部Bから供給される被処理材1を前記加熱手段2の伝熱体21d内に押し上げながら1個づつ供給するための押上部22aと、該押上部22aがピストンに固定された押上シリンダ22bとから構成されている。
【0015】
前記焼入れ室21によって熱処理された被処理材を冷却部Cに供給する送り室23には、焼入れ室21内に前記押上シリンダ22bによって被処理材1が焼入れ室21内に供給される毎に熱処理が終了した被処理材1を冷却部Cに送るための送り出しシリンダ23aが炉外に取付けられている。
【0016】
前記被処理材供給部Bには前記焼入れ室21の下方と連通する被処理材供給室3が形成されており、入口部には焼入れ室21内の熱気が外部に漏れないようするためのシャッター31aが取付けられており、該シャッター31aはシリンダー31aによって開閉する構造となっている。また、被処理材供給室3内の底面には被処理材1がスムースに移動可能な供給路32が形成されており、この供給路32は前記シャッター31aより外部に延長されている。
【0017】
そして、外部に延長された供給路32の終端部には供給路32と直交する方向あるいは上方から供給される被処理材1をシャッター31aが開放された時に被処理材供給室3内に送り込むためのシリンダ33が取付けられている。
【0018】
前記冷却部Cには前記焼入れ室21の上方と連通する冷却室4が形成されており、出口部には冷気が外部に漏れないようにするためのシャッター41aが取付けられており、該シャッター41aはシリンダ41bによって開閉する行動となっている。また、冷却室3の上下には焼入れされた被処理材1を冷却するための冷却ジャケット42が上下に一対配置されている。そして、加熱処理が終わり前記送り出しシリンダ23aによって送られてくる被処理材1は冷却ジャケット42に接触状態で通過する間に塑性加工が行われ、次の被処理材1が冷却室4内に供給されるシャッター41aが開放されて外部に排出される。
【0019】
次に、前記した構成に基づいて動作を説明するに、作業開始時に供給路32に供給される被処理材1はシャッター31aが開放された状態時に次々と被処理材被処理材供給室3内に送られ、この送られた被処理材1は押上シリンダ22bによって上下動する押上部22aによって焼入れ室21の伝熱体21d内に押し込まれる。この状態時においてヒーター21cは通電状態となっている。
【0020】
そして、順次供給される被処理材1は分割された伝熱体21dによって挟持された状態で徐々に上方に押し上げられながら加熱される。この加熱において、伝熱体21dに熱伝導率の高いグラファイトを用い、かつ、該伝熱体21dの形状を被処理材1であるベアリングの内輪あるいは外輪(以下、単にベアリングという)の外周が合致するように構成することで、伝熱体21dの外周に配置されているヒーター21cよりの熱が直接作用し、従って、グラファイトからなる伝熱体21dとベアリングと接触する面積が1/4であっても、従来例で説明した連続熱処理装置の熱伝導率に対して715倍にもなり、所定の温度設定までに達する時間が極めて早くなるものである。
【0021】
すなわち、伝熱体21dであるグラファイトの熱伝導率は230であるのに対し、他の金属、例えば、金が35、青銅が80、アルミが92であって被処理材1に対する加熱時間が短くなり、また、ベアリングは伝熱体21dに挟持された状態で下から上に徐々に移動する間に所定の温度に達することで、焼入れ時間の短縮が図れることになる。これは、金属であるベアリングの加熱時に結晶粒が成長することを抑え、次の塑性加工により、より細かい結晶を得ることが可能となる。また、ベアリングは伝熱体21dによって挟持されているため変形を抑えることも可能である。
【0022】
さらに、昇温速度が従来の加熱炉に比べ100〜800倍も早いので、被処理材1であるベアリングの結晶粒の成長が少なく細かい結晶のままで所定温度まで加熱することが可能となる。
【0023】
そして、焼入れが終了した被処理材1は送り出しシリンダ23aによって順次冷却室4内に送られ、熱伝導に優れた冷却ジャケット42に対して固定接触状態でオーステンパーを行うことで、油焼入れ等を行わなくとも水を使っての制御冷却が可能となり、熱処理設備の概念を大きく変えることができる。また、素早い加熱および制御冷却が行えることから、被処理材1のスーパーメタルには必要不可欠の装置である。
【0024】
また、炉内空間を小さくすることができるので、無酸化保護雰囲気に用いるガスの量が極めて少なくでき、さらに、ヒーター21cの外周の耐火物を小さくすることができるので、高価な耐火断熱材を用いる必要もないので安価に装置を製造することができ、かつ、炉外部への熱放出も極めて少なくすることができるので、省エネ効果も絶大で、また、全体構造を小さくすることが可能なので、熱処理装置の面積が極めて狭くでき、従って、熱処理装置の機械工場への導入も容易に行える。
【0025】
なお、前記したグラファイトである伝熱体21dの内部に温度センサを埋め込むことで、温度変化を速やかに捉えて精密の温度制御が行うことができ、最適な温度管理の元で恒温焼入れを行うことが可能である。
【0026】
また、前記した実施例にあっては、被処理材1の1/4を伝熱体21dによって挟持した場合によって説明したが、挟持する面積は1/4に限定されるものではない。さらに、実施例にあっては加熱手段21の形状を円筒形状としたが、被処理材1の形状に応じて変更し、伝熱体21dによって挟持可能な形状とすることは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例の連続熱処理装置の構成を示す構成図である。
【図2】従来例の連続熱処理装置の構成図である。
【符号の説明】
【0028】
A 熱処理部
B 被処理材供給部
C 冷却部
1 被処理材
21 加熱手段
21a 断熱材
21b 反射板
21c ヒーター
21d 伝熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理材を挟持可能に形成された熱伝導率の高い材料で構成された伝熱体と、該伝熱体の外周に取付けられたヒーターと、該ヒーターの外周に取付けられた熱反射板と、該熱反射板の外周を覆う断熱材とから構成した加熱手段を含み、該加熱手段の前記伝熱部に対して所定時間毎に被処理材を供給して該被処理材を熱処理を行い、熱処理が行われた被処理材を冷却部に供給して冷却することを特徴とする連続熱処理装置。
【請求項2】
前記伝熱体が、グラファイトまたはボロンナイトライドであることを特徴とする請求項1記載の連続熱処理装置。
【請求項3】
前記伝熱体内に温度センサを埋め込み、該伝熱体の温度変化を捕らえて電流制御を行うことを特徴とする請求項1または2記載の連続熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−133614(P2010−133614A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309163(P2008−309163)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000130466)株式会社サーマル (5)
【Fターム(参考)】