運転支援システム及び運転支援管理センター
【課題】走行環境に即した実現性の高い運転支援を容易に実現することのできる運転支援システム及び運転支援管理センターを提供する。
【解決手段】管理センター200の運転履歴データベース220には、車両操作に関する情報を含んだ車両情報が該当する経路情報に関連付けされて運転履歴として登録される。また、車載システム100及び管理センター200は、運転支援の対象とする車両の走行経路を特定するとともに、この特定した走行経路に対応する運転履歴を運転履歴データベース220から抽出する運転教示部を備える。そして、運転教示部は、運転履歴データベース220から抽出した運転履歴に基づき、ドライバに対する運転教示を行う。
【解決手段】管理センター200の運転履歴データベース220には、車両操作に関する情報を含んだ車両情報が該当する経路情報に関連付けされて運転履歴として登録される。また、車載システム100及び管理センター200は、運転支援の対象とする車両の走行経路を特定するとともに、この特定した走行経路に対応する運転履歴を運転履歴データベース220から抽出する運転教示部を備える。そして、運転教示部は、運転履歴データベース220から抽出した運転履歴に基づき、ドライバに対する運転教示を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の運転を支援する運転支援システムでは、交差点や一時停止位置、カーブ、前方車両の接近等といった車両の減速制御が必要となる交通情報を車載カメラやナビゲーションシステムにより取得している。そして、この取得された車両周辺の交通情報に基づいて、音声による減速案内や半強制的な制動力を付与することによる減速支援を行うことにより、ドライバに対する運転支援が行われる。そして通常、このような運転支援に際しては、模擬コース等の所定の走行モデルのもとで測定された一般のドライバの交通情報の認知、判断、運転操作といった各種運転行動で或る走行パターンを平均化した標準走行パターンが用いられることが多い。
【0003】
ところが、交差点や一時停止位置等に向かう車両の走行パターンは、道路のカーブの曲率、道路の幅や傾斜等の多種多様な交通要素が存在する道路環境やドライバ固有の癖や運転技量等の各種要素に応じて変化することから、こうした要素が反映されるドライバの走行パターンに上記一般化された標準走行パターンを適合させることは難しい。このため、所定の走行モデルで一般化された標準走行パターンに基づきドライバに対する運転支援を行ったとしても、必ずしもドライバの意図に沿った運転支援が行われるとは限らず、ドライバに違和感を与えることすらあった。
【0004】
そこで従来、例えば特許文献1に記載の運転支援システムでは、運転支援の対象とするドライバの運転技量を評価するとともに、この評価結果に応じた評価項目のもとにドライバによる省燃費運転が達成されているか否かを評価するようにしている。具体的には、支援対象とする車両のエンジンの回転数及び車速及び燃料流量等の走行データを検出、解析することにより、支援対象とするドライバの省燃費運転の習熟度を評価している。そして、この評価結果に基づいてドライバが省燃費運転の習熟者もしくは初心者であるか否かが判定され、この判定結果に応じた省燃費運転評価が行われる。こうして、ドライバの運転技量に応じた省燃費運転評価が行われることにより、習熟者には厳格な省燃費運転評価が課される一方、初心者には寛容な省燃費運転評価が課されるようになる。そして、この運転支援システムでは、こうした評価結果に応じた運転支援がドライバに提供されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−144684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記運転支援システムにより運転支援の対象とするドライバの運転技量を評価し、運転技量に応じた評価を行ったとしても、結局のところ、こうした評価結果に基づき提供される運転支援とはあくまで、上記走行モデルで一様に生成された標準の走行パターンに基づいたものでしかない。すなわち、多種多様な交通要素が存在する実際の走行環境、例えば燃費を考慮した緩やかな加速運転を行うことが困難な経路や燃費を考慮した運転を運転技量に拘らず容易に行うことができる経路等であっても、ドライバにはこうした走行環境が反映されていない減速案内等の運転支援が行われることとなる。また、実際の走行環境に即した走行パターンを生成すべく模擬コースのパターンを増やしたとしても、
実際の走行環境に存在する多種多様な交通要素を全て考慮することは困難であり、実際の走行環境に即した運転支援を実現するには至っていない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、走行環境に即した実現性の高い運転支援を容易に実現することのできる運転支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、車両の運転を支援する運転支援システムにおいて、車両操作に関する情報を含んだ車両情報が該当する経路情報に関連付けされて運転履歴として登録される運転履歴データベースと、運転支援の対象とする車両の走行経路を特定するとともに、該特定した走行経路に対応する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を運転支援のためのガイドとして前記運転支援の対象とする車両のドライバに教示する運転教示部とを備えることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、運転履歴データベースには、或る走行経路での速度や加速度、減速度、ステアリング操作、燃料情報等をはじめとする車両情報に、その車両情報に対応する経路情報が関連付けられた情報が登録される。すなわち、運転履歴データベースには、多種多様な交通要素が存在する道路を、或るドライバの車両操作のもとに実際に走行した車両の運転履歴、換言すれば、多種多様な交通要素を考慮して行われた車両操作などの走行データを含んだ情報が登録される。そして、ドライバに対する運転支援に際しては、同ドライバが走行しようとする走行経路に対応する走行経路での運転履歴として、例えば同ドライバが走行しようとする走行経路と同一の走行経路や類似する走行経路における運転履歴が上記運転履歴データベースから抽出される。その後、この抽出された運転履歴に関する情報が、運転支援のためのガイドとして運転支援の対象とするドライバに教示される。そのため、運転支援の対象とする車両のドライバには、自らが走行する走行経路や同走行経路に類似する走行経路で実際に行われた車両操作に基づいた実現性の高い運転支援が行われることとなる。また、こうした運転支援に用いられる情報とは、各々の走行経路を走行したドライバの運転履歴であることから、上述した模擬コースを用いることなく各々のドライバの運転履歴の登録として生成することが可能であり、運転支援の対象とするドライバに教示すべき走行モデルを容易に生成することが可能となる。これにより、多種多様な交通要素が反映された実際の走行環境に即した実現性の高い運転支援を容易に実現することができるようになる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示することを要旨とする。
【0011】
車両の走行パターン、すなわちドライバの運転操作傾向とは、ドライバ固有の癖によって相違することから、運転支援の対象とするドライバの意図に即した運転を教示する上では、ドライバ固有の癖を考慮した運転支援を行うことが望ましい。そこで、上記構成によるように、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出し、この抽出した運転履歴に関する情報を同ドライバに教示することとすれば、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の癖に類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報がドライバに教示されるようになる。これにより、運転支援の対象とするドライバの各々に固有の癖に応じた運転教示が行われるようになり、ドライバの意図に即した的確な運転支援が実現されるようになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の運転支援システムにおいて、前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転履歴は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価されて運転レベルが判定されるものであり、前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記運転履歴の確率密度を前記評価項目毎に推定して前記運転履歴の分布を求めるとともに、該求めた運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両のドライバの運転支援に用いることを要旨とする。
【0013】
通常、上記評価項目としての或る走行経路における燃費、旅行時間、車両操作の安全性とは、道路勾配、道路線形等の静的周囲状況、及び自車両の前方車両や後方車両との車間距離、渋滞状況等の動的周囲状況等の走行環境パラメータといった要因によって変化する。また、こうした評価項目は、ステアリングやアクセル開度、車速度、加速度等の走行状態をはじめとする車両状態等の車両パラメータといった様々な要因によっても変化する。そして、上記評価項目に与える影響の大きさも、こうした要因毎に相違する。すなわち、或るドライバにおいては、例えば或る走行経路での燃費が低く(悪く)なる主要因として、上記変数としてのカーブ(道路線形)における運転技量が低いことが挙げられる。このため、このドライバに対しては、カーブにおける運転技量を高めることが、燃費を効果的に改善することに繋がる。一方、他のドライバにおいては、例えば安全性の高い車両操作を行えない主要因として、道路勾配でのアクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量が過剰であることが挙げられる。そして、このドライバに対しては、上記変数としての道路勾配におけるアクセルペダル及びブレーキペダルの踏込み量を改善することが、安全性の高い車両操作の実現に繋がる。
【0014】
そこで、上記構成ではまず、上記変数の各々について推定された確率密度に基づき運転履歴の分布をそれぞれ評価項目毎に求めるとともに、この求めた運転履歴の分布のうちで運転レベルが高いグループの分布と運転レベルが低いグループの分布との乖離が大きくなる変数を特定する。そして、例えば、燃費を評価項目としたときにおいて、車両の走行速度を変数「X1」、車両の加速度を変数「X2」として、運転履歴の確率密度をそれぞれ推定して運転履歴の分布を求める。この結果、変数「X2」についての運転履歴の方が変数「X1」についての運転履歴よりも、運転レベルの高いグループの分布と低いグループの分布との乖離が大きいときには、変数「X2」、すなわち加速度の方が走行速度よりも燃費に与える影響が大きく、各々のドライバの運転レベルの相違する主要因として特定される。そして、例えば、この特定された加速度に関する情報を燃費の改善に必要な主要素として、加速度を変数としたときの運転レベルの高いグループの運転履歴の中から加速度に関する情報を抽出する。こうして、この抽出した情報を、運転支援の対象とする車両のドライバに教示する。これにより、各々のドライバの運転レベルが相違する主要因、換言すれば、運転レベルを改善すべき主要素に基づいた運転支援をドライバに行うことができるようになり、ドライバの運転レベルを効果的に改善させることが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、前記変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する要素が共通する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示することを要旨とする。
【0016】
例えば、上記車両の平均速度が「50km/h」未満であることを示す変数が「Z1」であり、平均速度が「50km/h」以上であることを示す変数が「Z2」であり、曲率が所定数以上のカーブを示す変数が「A」であったとする。そして、この場合には、こうした変数が共通する運転履歴とは、変数によって示される様々な要素が共通した運転履歴、すなわち、走行環境や運転操作傾向が類似する運転履歴である可能性が高い。そこで、上記構成によれば、上記変数が共通するか否かの判定を通じて、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を抽出することが可能となる。これにより、ドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を、同運転履歴に含まれる様々な要素を用いて上記運転履歴データベースから抽出することが可能となる。また、これにより、共通する変数の有無といったより簡易な処理のもとに、ドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出することが可能となり、上記運転教示にかかる円滑化が図られるようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の単位時間当りの変化量が少ない運転履歴ほど運転レベルが高いものとして判定するものであり、当該判定結果に基づき前記運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0018】
例えば、上記変数としての自車両と前方車両との車間距離や、カーブでのヨーレートの単位時間あたりの変化量が小さい場合には、車両の挙動が小さく、円滑な車両操作が行われている、すなわち運転レベルが高いと判定することが可能である。そこで、上記構成によるように、上記変数の変化量に基づいて運転レベルを判定し、この判定結果に基づき運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を運転履歴データベースから抽出して同抽出した運転履歴に基づく運転教示を行うこととすれば、同ドライバよりも円滑な車両操作を含んだ運転履歴に基づく運転教示を行うことが可能となる。
【0019】
また、この発明は、上記請求項2、4の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバよりも運転レベルが高い運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバよりも運転レベルが高い運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記判定された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、ドライバに教示すべき運転履歴として、同ドライバに運転レベルが近似する運転履歴に関する情報が上記運転履歴データベースから抽出される。これにより、ドライバの運転レベルに近似する運転履歴に基づく運転支援が可能となり、こうした運転支援を通じてドライバの運転レベルの段階的な向上が図られるようになる。
【0022】
また、この発明も、上記請求項2、4の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴がその特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類されて登録されるものであり、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向を特定するとともに、該特定した運転操作傾向との特徴量が類似する運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0024】
例えば、車両の状態が停止状態から走行状態に遷移したときには、停止状態から走行状態に遷移して所定時間経過後のアクセルの踏込み量は、「5%」、「10%」、「15%」といったようにドライバ固有の癖によって変化する傾向にあり、こうした癖はその他の車両操作にも反映されることが多い。すなわち、ドライバの運転操作傾向とは、所定の条件に基づき分類することが可能である。そこで、上記構成では、各々のドライバの運転履歴をドライバの運転操作傾向毎に予め分類して上記運転履歴データベースに登録するとともに、運転支援の対象とするドライバの運転操作傾向がいずれのパターンに該当するかを特定して該特定された運転操作傾向に類似する運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出する。これにより、運転支援の対象とするドライバ固有の癖に類似する運転操作傾向を容易に抽出することが可能となり、ドライバ固有の癖に応じた運転支援をより容易に実現することが可能となる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項2に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転履歴データベースに登録された運転履歴の中からその特徴量に基づいて運転操作パターンを生成するためのクラスタリングを行うとともに、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作が前記クラスタリングした運転操作パターンのいずれのパターンに近いかを判定して、当該ドライバの運転操作傾向との特徴量が類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報を抽出することを要旨とする。
【0026】
上記構成によれば、運転教示部による運転履歴の抽出に際し、運転履歴データベースに登録された運転履歴が、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量、燃費の推移等を示す特徴量に基づいて適宜クラスタリングされる。このため、運転履歴データベースに登録されている各運転履歴の特徴量に応じて、複数種の運転操作パターンが自動的に生成されるようになる。そのため、運転履歴データベースに登録されている運転履歴を条件付けして複数種の運転操作パターンを規定する必要もなく、運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを自動的に生成することが可能となる。これにより、各々の運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを柔軟に生成することが可能となり、ひいては、運転支援の対象とするドライバ固有の癖(運転操作パターン)に応じた運転履歴を的確に抽出、教示することが可能となる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項1または2または7または8のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴が、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価される運転レベル毎に層別されて登録されるものであり、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルを前記評価項目の少なくとも1つに基づき判定するとともに、該判定した運転レベルよりもレベルの高い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0028】
ドライバの運転技量、すなわち運転レベルとは様々であり、運転レベルが高いドライバに標準の運転レベルの運転教示を行ったとしてもその有効性は低い。また、ドライバの運転レベルとは通常、或る走行経路での燃費や旅行時間、急減速や急加速の有無等の車両操作の安全性に大きく反映され、それらの要素を評価項目としてドライバの運転レベルを評
価することが可能である。そこで、上記構成によるように、複数種の運転履歴を上記評価項目に基づき運転レベル毎に層別して上記運転履歴データベースに登録するとともに、この層別されて登録された運転履歴の中から運転支援の対象とするドライバよりも運転レベルの高い運転履歴を抽出することとすれば、ドライバにはその運転レベルに拘らず自己の運転レベルよりも高い運転履歴に関する情報が教示されることとなる。これにより、ドライバの運転レベルが低い場合であれ、高い場合であれ、上記評価項目を向上させることのできる運転教示を通じて、有効性の高い運転支援が実現されるようになる。
【0029】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記判定した運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0030】
初心者のドライバ等、運転レベルが低いドライバに対して高度な運転操作が要求される運転教示を行ったとしても、その実現は困難であり運転支援としての有効性は低い。そこで、上記構成によるように、ドライバに教示すべき運転履歴に関する情報として、運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベースから抽出することとすれば、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルの次に高い運転レベルの運転履歴に関する情報が教示されることとなる。これにより、運転支援の対象とするドライバの運転レベルに拘らず、その運転レベルに応じて同運転レベルを高めることを可能な運転支援が無理なく行われるようになる。
【0031】
また、この発明は、上記請求項2、7、8の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバの運転レベルの次に高い運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0032】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記層別された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0033】
上記構成によれば、ドライバに教示すべき運転履歴として、同ドライバが属する運転レベルの層よりも高い運転レベルの運転履歴のうちで同ドライバの運転レベルに最も近い運転履歴に関する情報が、上記運転履歴データベースから抽出される。これにより、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルの次に運転レベルが高く、且つ、同ドライバの運転レベルに最も近い運転履歴に関する情報に基づく運転支援が行われる。これにより、ドライバの運転レベルにより近い運転レベルに基づく運転支援が可能となり、運転支援を通じた運転レベルの段階的な向上が図られるようになる。
【0034】
また、この発明も、上記請求項2、7、8の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0035】
請求項12に記載の発明は、請求項7〜11のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の
動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転履歴は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価されて運転レベルが判定されるものであり、前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記運転履歴の確率密度を前記評価項目毎に推定して前記運転履歴の分布を求めるとともに、該求めた運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両のドライバの運転支援に用いることを要旨とする。
【0036】
通常、上記評価項目としての或る走行経路における燃費、旅行時間、車両操作の安全性とは、道路勾配、道路線形等の静的周囲状況、及び自車両の前方車両や後方車両との車間距離、渋滞状況等の動的周囲状況等の走行環境パラメータといった要因によって変化する。また、こうした評価項目は、ステアリングやアクセル開度、車速度、加速度等の走行状態をはじめとする車両状態等の車両パラメータといった様々な要因によっても変化する。そして、上記評価項目に与える影響の大きさも、こうした要因毎に相違する。すなわち、或るドライバにおいては、例えば或る走行経路での燃費が低く(悪く)なる主要因として、上記変数としてのカーブ(道路線形)における運転技量が低いことが挙げられる。このため、このドライバに対しては、カーブにおける運転技量を高めることが、燃費を効果的に改善することに繋がる。一方、他のドライバにおいては、例えば安全性の高い車両操作を行えない主要因として、道路勾配でのアクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量が過剰であることが挙げられる。そして、このドライバに対しては、上記変数としての道路勾配におけるアクセルペダル及びブレーキペダルの踏込み量を改善することが、安全性の高い車両操作の実現に繋がる。
【0037】
そこで、上記構成ではまず、上記変数の各々について推定された確率密度に基づき運転履歴の分布をそれぞれ評価項目毎に求めるとともに、この求めた運転履歴の分布のうちで運転レベルが高いグループの分布と運転レベルが低いグループの分布との乖離が大きくなる変数を特定する。そして、例えば、燃費を評価項目としたときにおいて、車両の走行速度を変数「X1」、車両の加速度を変数「X2」として、運転履歴の確率密度をそれぞれ推定して運転履歴の分布を求める。この結果、変数「X2」についての運転履歴の方が変数「X1」についての運転履歴よりも、運転レベルの高いグループの分布と低いグループの分布との乖離が大きいときには、変数「X2」、すなわち加速度の方が走行速度よりも燃費に与える影響が大きく、各々のドライバの運転レベルの相違する主要因として特定される。そして、例えば、この特定された加速度に関する情報を燃費の改善に必要な主要素として、加速度を変数としたときの運転レベルの高いグループの運転履歴の中から加速度に関する情報を抽出する。こうして、この抽出した情報を、運転支援の対象とする車両のドライバに教示する。これにより、各々のドライバの運転レベルが相違する主要因、換言すれば、運転レベルを改善すべき主要素に基づいた運転支援をドライバに行うことができるようになり、ドライバの運転レベルを効果的に改善させることが可能となる。
【0038】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報が登録されるものであり、前記運転教示部は、前記特定した走行経路の特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として前記運転履歴に関する情報を各々抽出し、各々抽出した運転履歴に関する情報を合成してドライバに教示することを要旨とする。
【0039】
例えば、各々のドライバの運転レベルとは、カーブでの運転レベルが高いドライバや、道路勾配での運転レベルが高いドライバ等、要素毎にドライバ固有の運転レベルも相違する。そこで、上記構成では、或る走行経路での一時停止位置、交差点等の交通要素や曲率半径の大きい特定のカーブ、渋滞の頻度の高い時間帯等の各要素を単位として、それら各種要素毎にドライバに対して運転教示すべき運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベースから抽出する。そして、或る走行経路での運転支援として、上記運転履歴データベースから抽出された走行履歴に関する情報が組み合わされ、合成された運転履歴に関する情報に基づく運転教示がドライバに対して行われる。これにより、複数種の運転履歴を有効に活用してそれら運転履歴に基づく運転支援を行うことが可能となる。
【0040】
また、この発明は、特に請求項2、4〜11に記載の発明に適用して特に有効であり、この場合には、ドライバの運転レベルや固有の癖に応じた運転履歴に関する情報が適宜合成されて上記運転履歴データベースから抽出されてドライバに教示されることとなる。これにより、ドライバの運転レベルや固有の癖により近い走行モデルに基づいた運転支援が可能となる。
【0041】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転支援の対象となる車両は、前記運転教示部により抽出される運転履歴を表示する表示装置を備え、前記運転支援の教示を前記表示装置に対する画像出力として行うことを要旨とする。
【0042】
上記構成によれば、例えばカーナビゲーションシステムを構成する表示画面に対するテキスト案内やレーダーチャートによる案内として、運転履歴に基づく運転教示が行われる。これにより、既存のカーナビゲーションシステム等の表示装置を用いて、視覚を通じた運転教示を行うことができるようになる。
【0043】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて前記運転支援の教示を行うことを要旨とする。
【0044】
上記構成によるように、上記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて上記運転支援の教示を行うこととすれば、ドライバに対する運転教示が自動運転や半強制的な制動力の付与を通じて行われる。これにより、体感を通じた運転教示を行うことが可能となる。
【0045】
請求項16に記載の発明は、請求項1〜15のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベース及び前記運転教示部は、前記車両情報が収集されるプローブ情報通信システムの管理センターに設けられ、前記管理センターは、前記運転支援の対象とする車両からの要求に応じてドライバに教示すべき運転履歴に関する情報を該当する車両に配信することを要旨とする。
【0046】
上記構成によれば、車両情報が上記管理センターに適宜収集される。このため、様々なドライバの車両操作が反映された車両情報を容易に収集させることができるようになるとともに、こうした車両情報を管理センターで一括して管理することが可能となる。
【0047】
また、本発明は、請求項2、4〜11、13にかかる発明に適用して特に有効であり、この場合には、その相乗効果として、ドライバに教示すべき運転履歴に関する情報の選定範囲が拡大されるようになる。このため、上記管理センターに収集される大量の運転履歴のなかから運転支援対象とするドライバの癖や運転レベルにより近い運転履歴に関する情報を選択、教示することが可能となる。これにより、ドライバに対する運転支援を上記運
転履歴に関する情報に基づき行う上で、よりドライバの意図に沿った運転支援を実現することが可能となる。
【0048】
請求項17に記載の発明は、車両の運転を支援する運転支援システムにおいて、複数種の車両操作に関する情報を含んだ車両情報の履歴である運転履歴が登録された運転履歴データベースと、運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルを、該ドライバの運転履歴に含んだ単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つを評価項目として判定するとともに、該判定した評価項目に基づく運転レベルよりも運転レベルの高い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を運転支援のためのガイドとして前記運転支援の対象とする車両のドライバに教示する運転教示部とを備えることを要旨とする。
【0049】
上記構成によれば、運転履歴データベースには、或る走行経路での速度や加速度、減速度、ステアリング操作、燃料情報等をはじめとする車両情報に、その車両情報に対応する経路情報が関連付けられた情報が登録される。すなわち、運転履歴データベースには、多種多様な交通要素が存在する道路を、或るドライバの車両操作のもとに実際に走行した車両の運転履歴、換言すれば、多種多様な交通要素を考慮して行われた車両操作などの走行データを含んだ情報が登録される。
【0050】
そして、ドライバに対する運転支援に際してはまず、運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルが、燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つを評価項目として判定される。すなわち、ドライバの運転技量、換言すれば、ドライバの運転レベルとは様々であり、運転レベルが高いドライバに標準の運転レベルの運転教示を行ったとしてもその有効性は低い。また、ドライバの運転レベルとは通常、燃費、旅行時間、急減速や急加速の有無等の車両操作の安全性に大きく反映され、それらの要素を評価項目としてドライバの運転レベルを評価することが可能である。そこで、上記構成では、運転支援に先立ち運転支援の対象とするドライバの運転レベルが、燃費の高低、或る走行経路における旅行時間の長短、さらには急加速や急減速等のない安全性の高い車両操作が行われたか否か等を指標として多観点から判定される。そして、この判定結果に基づき、同判定に用いられた評価項目に基づく運転レベルよりも運転レベルの高い運転履歴に関する情報が上記運転履歴データベースから抽出され、この抽出された運転履歴に関する情報が運転支援の対象とするドライバに運転支援のためのガイドとして教示される。また、こうした複数の評価項目を用いてドライバの運転レベルを特定し、同特定した運転レベルに沿った行うことにより、ドライバの習熟度といった1つの指標に限られることなくドライバの運転レベルを多観点から評価することが可能となる。そのため、運転支援の対象とする車両のドライバには、各評価項目に基づき自己の運転レベルとの対比のもとに抽出された運転履歴に関する情報が教示されることとなる。すなわち、目標とすべき走行モデルが運転支援の対象とする車両の運転レベルに応じて提供されることとなる。これにより、ドライバの運転レベルを多観点から評価した評価結果に基づく運転支援が実現可能となる。
【0051】
また、上記構成によれば、運転支援の対象とする車両のドライバには、自らが走行する走行経路や同走行経路に類似する走行経路で実際に行われた車両操作に基づく実現性の高い運転支援が行われることとなる。さらに、こうした運転支援に用いられる情報とは、各々の走行経路を走行したドライバの運転履歴であることから、上述した模擬コースを用いることなく各々のドライバの運転履歴の登録として生成することが可能であり、運転支援の対象とするドライバに教示すべき走行モデルを容易に生成することが可能となる。これにより、多種多様な交通要素が反映された実際の走行環境に即した実現性の高い運転支援を容易に実現することができるようになる。
【0052】
請求項18に記載の発明は、請求項17に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示することを要旨とする。
【0053】
車両の走行パターン、すなわちドライバの運転操作傾向とは、ドライバ固有の癖によって相違することから、運転支援の対象とするドライバの意図に即した運転を教示する上では、ドライバ固有の癖を考慮した運転支援を行うことが望ましい。そこで、上記構成によるように、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出し、この抽出した運転履歴に関する情報を同ドライバに教示することとすれば、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の癖に類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報がドライバに教示されるようになる。これにより、運転支援の対象とするドライバの各々に固有の癖に応じた運転教示が行われるようになり、ドライバの意図に即した的確な運転支援が実現されるようになる。
【0054】
請求項19に記載の発明は、請求項18に記載の運転支援システムにおいて、前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記評価項目に基づき分類した運転履歴の確率密度からその分布を推定するとともに、該推定した運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両の運転支援に用いることを要旨とする。
【0055】
通常、上記評価項目としての或る走行経路における燃費、旅行時間、車両操作の安全性とは、道路勾配、道路線形等の静的周囲状況、及び自車両の前方車両や後方車両との車間距離、渋滞状況等の動的周囲状況等の走行環境パラメータといった要因によって変化する。また、こうした評価項目は、ステアリングやアクセル開度、車速度、加速度等の走行状態をはじめとする車両状態等の車両パラメータといった様々な要因によっても変化する。そして、上記評価項目に与える影響の大きさも、こうした要因毎に相違する。すなわち、あるドライバにおいては、例えば或る走行経路での燃費が低く(悪く)なる主要因として、上記変数としてのカーブ(道路線形)における運転技量が低いことが挙げられる。このため、このドライバに対しては、カーブにおける運転技量を高めることが、燃費を効果的に改善することに繋がる。一方、他のドライバにおいては、例えば安全性の高い車両操作を行えない主要因として、道路勾配でのアクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量が過剰であることが挙げられる。そして、このドライバに対しては、上記変数としての道路勾配におけるアクセルペダル及びブレーキペダルの踏込み量を改善することが、安全性の高い車両操作の実現に繋がる。
【0056】
そこで、上記構成ではまず、上記変数の各々について推定された確率密度に基づき運転履歴の分布をそれぞれ評価項目毎に求めるとともに、この求めた運転履歴の分布のうちで運転レベルが高いグループの分布と運転レベルが低いグループの分布との乖離が大きくなる変数を特定する。そして、例えば、燃費を評価項目としたときにおいて、走行速度を変数「X1」、車両の加速度を変数「X2」として、運転履歴の確率密度をそれぞれ推定して運転履歴の分布を求める。この結果、変数「X2」についての運転履歴の方が変数「X1」についての運転履歴よりも、運転レベルの高いグループの分布と低いグループの分布との乖離が大きいときには、変数「X2」、すなわち加速度の方が車両の走行速度よりも燃費に与える影響が大きく、各々のドライバの運転レベルの相違する主要因として特定さ
れる。そして、例えば、この特定された加速度に関する情報を燃費の改善に必要な主要素として、加速度を変数としたときの運転レベルの高いグループの運転履歴の中から加速度に関する情報を抽出する。こうして、この抽出した情報を、運転支援の対象とする車両のドライバに教示する。これにより、各々のドライバの運転レベルが相違する主要因、換言すれば、運転レベルを改善すべき主要素に基づいた運転支援をドライバに行うことができるようになり、ドライバの運転レベルを効果的に改善させることが可能となる。
【0057】
請求項20に記載の発明は、請求項19に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、前記変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する要素が共通する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示することを要旨とする。
【0058】
例えば、上記車両の平均速度が「50km/h」未満であることを示す変数が「Z1」であり、平均速度が「50km/h」以上であることを示す変数が「Z2」であり、曲率が所定数以上のカーブを示す変数が「A」であったとする。そして、この場合には、こうした変数が共通する運転履歴とは、変数によって示される様々な要素が共通した運転履歴、すなわち、走行環境や運転操作傾向が類似する運転履歴である可能性が高い。そこで、上記構成によれば、上記変数が共通するか否かの判定を通じて、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を抽出することが可能となる。これにより、ドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を、同運転履歴に含まれる様々な要素を用いて上記運転履歴データベースから抽出することが可能となる。また、これにより、共通する変数の有無といったより簡易な処理のもとに、ドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出することが可能となり、上記運転教示にかかる円滑化が図られるようになる。
【0059】
請求項21に記載の発明は、請求項19または20に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の単位時間当りの変化量が少ない運転履歴ほど運転レベルが高いものとして判定するものであり、当該判定結果に基づき前記運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0060】
例えば、上記変数としての自車両と前方車両との距離や、カーブでのヨーレートの単位時間あたりの変化量が小さい場合には、車両の挙動が小さく、円滑な車両操作が行われているために運転レベルが高いと判定することが可能である。そこで、上記構成によるように、上記変数の変化量に基づいて運転レベルを判定し、この判定結果に基づき運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を運転履歴データベースから抽出して同抽出した運転履歴に基づく運転教示を行うこととすれば、同ドライバよりも円滑な車両操作を含んだ運転履歴に基づく運転教示を行うことが可能となる。
【0061】
また、この発明は、上記請求項18、20の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバよりも運転レベルが高い運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバよりも運転レベルが高い運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0062】
請求項22に記載の発明は、請求項21に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記判定された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出することを
要旨とする。
【0063】
上記構成によれば、ドライバに教示すべき運転履歴として、同ドライバに運転レベルが近似する運転履歴に関する情報が上記運転履歴データベースから抽出される。これにより、ドライバの運転レベルに近似する運転履歴に基づく運転支援が可能となり、こうした運転支援を通じてドライバの運転レベルの段階的な向上が図られるようになる。
【0064】
また、この発明も、上記請求項18、20の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0065】
請求項23に記載の発明は、請求項18に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴がその特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類されて登録されるものであり、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向を特定するとともに、該特定した運転操作傾向との特徴量が類似する運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0066】
例えば、車両の状態が停止状態から走行状態に遷移したときには、停止状態から走行状態に遷移して所定時間経過後のアクセルの踏込み量は、「5%」、「10%」、「15%」といったようにドライバ固有の癖によって変化する傾向にあり、こうした癖はその他の車両操作にも反映されることが多い。すなわち、ドライバの運転操作傾向とは、所定の条件に基づき分類することが可能である。そこで、上記構成では、各々のドライバの運転履歴をドライバの運転操作傾向毎に予め分類して上記運転履歴データベースに登録するとともに、運転支援の対象とするドライバの運転操作傾向がいずれのパターンに該当するかを特定して該特定された運転操作傾向に類似する運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出する。これにより、運転支援の対象とするドライバ固有の癖に類似する運転操作傾向を容易に抽出することが可能となり、ドライバ固有の癖に応じた運転支援をより容易に実現することが可能となる。
【0067】
請求項24に記載の発明は、請求項18に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転履歴データベースに登録された運転履歴の中からその特徴量に基づいて運転操作パターンを生成するためのクラスタリングを行うとともに、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転支援が前記クラスタリングした運転操作パターンのいずれのパターンに近いかを判定して、当該ドライバの類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報を抽出することを要旨とする。
【0068】
上記構成によれば、運転教示部による運転履歴の抽出に際し、運転履歴データベースに登録された運転履歴が、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量、燃費の推移等を示す特徴量に基づいて適宜クラスタリングされる。このため、運転履歴データベースに登録されている各運転履歴の特徴量に応じて、複数種の運転操作パターンが自動的に生成されるようになる。そのため、運転履歴データベースに登録されている運転履歴を条件付けして複数種の運転操作パターンを規定する必要もなく、運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを自動的に生成することが可能となる。これにより、各々の運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを柔軟に生成することが可能となり、ひいては、運転支援の対象とするドライバ固有の癖(運転操作パターン)に応じた運転履歴を的確に抽出、教示することが可能となる。
【0069】
請求項25に記載の発明は、請求項17または18または23または24のいずれか一
項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴が、前記評価項目のうちの少なくとも1つに基づき評価された運転レベル毎に層別されて登録されるものであり、前記運転教示部は、前記運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0070】
上記構成によるように、複数種の運転履歴を上記評価項目に基づき運転レベル毎に予め層別して上記運転履歴データベースに登録することとすれば、運転支援の対象とするドライバが属する運転レベルを容易に判定することができるようになるともに、この判定された運転レベルよりも運転レベルの高い運転履歴を容易に抽出することができるようになる。
【0071】
請求項26に記載の発明は、請求項25に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記判定した運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0072】
初心者のドライバ等、運転レベルが低いドライバに対して高度な運転操作が要求される運転教示を行ったとしても、その実現は困難であり運転支援としての有効性は低い。そこで、上記構成によるように、ドライバに教示すべき運転履歴に関する情報として、運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベースから抽出することとすれば、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルの次に高い運転レベルの運転履歴に関する情報が教示されることとなる。これにより、運転支援の対象とするドライバの運転レベルに拘らず、その運転レベルに応じて同運転レベルを高めることを可能な運転支援が無理なく行われるようになる。
【0073】
また、この発明は、上記請求項18、23、24の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバの運転レベルの次に高い運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0074】
請求項27に記載の発明は、請求項26に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記層別された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0075】
上記構成によれば、ドライバに教示すべき運転履歴として、同ドライバが属する運転レベルの層よりも高い運転レベルの運転履歴のうちで同ドライバの運転レベルに最も近い運転履歴に関する情報が、上記運転履歴データベースから抽出される。このため、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルの次に運転レベルが高く、且つ、同ドライバの運転レベルに最も近い運転履歴に関する情報に基づく運転支援が行われる。これにより、ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転支援が可能となり、こうした運転支援を通じてドライバの運転レベルの段階的な向上が図られるようになる。
【0076】
また、この発明も、上記請求項18、23、24の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライ
バの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0077】
請求項28に記載の発明は、請求項23〜27のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記評価項目に基づき分類した運転履歴の確率密度からその分布を推定するとともに、該推定した運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両の運転支援に用いることを要旨とする。
【0078】
通常、上記評価項目としての或る走行経路における燃費、旅行時間、車両操作の安全性とは、道路勾配、道路線形等の静的周囲状況、及び自車両の前方車両や後方車両との車間距離、渋滞状況等の動的周囲状況等の走行環境パラメータや、ステアリングやアクセル開度、車速度、加速度等の走行状態をはじめとする車両状態等の車両パラメータといった様々な要因によって変化する。また、上記評価項目に与える影響の大きさも、こうした要因毎に相違する。すなわち、或るドライバにおいては、例えば或る走行経路での燃費が低く(悪く)なる主要因として、上記変数としてのカーブ(道路線形)における運転技量が低いことが挙げられる。このため、このドライバに対しては、カーブにおける運転技量を高めることが燃費を効果的に改善することに繋がる。一方、他のドライバにおいては、例えば安全性の高い車両操作を行えない主要因として、道路勾配でのアクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量が過剰であることが挙げられる。そして、このドライバに対しては、上記変数としての道路勾配におけるアクセルペダル及びブレーキペダルの踏込み量を改善することが安全性の高い車両操作の実現に繋がる。
【0079】
そこで、上記構成ではまず、上記変数の各々について推定された確率密度に基づき運転履歴の分布をそれぞれ評価項目毎に求めるとともに、この求めた運転履歴の分布のうちで運転レベルが高いグループの分布と運転レベルが低いグループの分布との乖離が大きくなる変数を特定する。そして、例えば、評価項目を燃費としたときにおいて、車両の走行速度を変数「X1」、車両の加速度を変数「X2」として、それぞれ運転履歴の確率密度を推定して運転履歴の分布を求める。この結果、変数「X2」についての運転履歴の方が変数「X1」についての運転履歴よりも、運転レベルの高いグループの分布と低いグループの分布との乖離が大きいときには、変数「X2」、すなわち車両の加速度の方が走行速度よりも燃費に与える影響が大きく、各々のドライバの運転レベルの相違する主要因として特定される。そして、この特定された車両の加速度に関する情報を、燃費を改善すべき要素として、例えば加速度を変数としたときの運転レベルの高いグループの運転履歴の中から加速度に関する情報を抽出する。こうして、この抽出した情報を、運転支援の対象とする車両のドライバに教示する。これにより、各々のドライバの運転レベルが相違する主要因、換言すれば、運転レベルを改善すべき主要素に基づいた運転支援をドライバに行うことができるようになり、ドライバの運転レベルを効果的に改善させることが可能となる。
【0080】
請求項29に記載の発明は、請求項17〜28のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報が登録されるものであり、前記運転教示部は、前記車両の走行経路の特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として前記運転履歴に関する情報を各々抽出し、各々抽出した運転履歴に関する情報を合成してドライバに教示することを要旨とする。
【0081】
例えば、各々のドライバの運転レベルとは、カーブでの運転レベルが高いドライバや道路勾配での運転レベルが高いドライバ等、要素毎にドライバ固有の運転レベルも相違する。そこで、上記構成では、或る走行経路での一時停止位置、交差点等の交通要素や曲率半径の大きい特定のカーブ、渋滞の頻度の高い時間帯等の各要素を単位として、それら各種要素毎にドライバに対して運転教示すべき運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベースから抽出する。そして、或る走行経路での運転支援として、上記運転履歴データベースから抽出された走行履歴に関する情報が組み合わされ、合成された運転履歴に関する情報に基づく運転教示がドライバに対して行われる。これにより、複数種の運転履歴を有効に活用してそれら運転履歴に基づく運転支援を行うことが可能となる。
【0082】
また、この発明は、特に請求項18、20〜27に記載の発明に適用して特に有効であり、この場合には、ドライバの運転レベルや固有の癖に応じた運転履歴に関する情報が適宜合成されて上記運転履歴データベースから抽出されてドライバに教示されることとなる。これにより、ドライバの運転レベルや固有の癖により近い走行モデルに基づいた運転支援が可能となる。
【0083】
請求項30に記載の発明は、請求項17〜29のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転支援の対象となる車両は、前記運転教示部により抽出される運転履歴を表示する表示装置を備え、前記運転支援の教示を前記表示装置に対する画像出力として行うことを要旨とする。
【0084】
上記構成によれば、例えばカーナビゲーションシステムを構成する表示画面に対するテキスト案内やレーダーチャートによる案内として、運転履歴に基づく運転教示が行われる。これにより、既存のカーナビゲーションシステム等の表示装置を用いて、視覚を通じた運転教示を行うことができるようになる。
【0085】
請求項31に記載の発明は、請求項17〜30のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて前記運転支援の教示を行うことを要旨とする。
【0086】
上記構成によるように、上記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて上記運転支援の教示を行うこととすれば、ドライバに対する運転教示が自動運転や半強制的な制動力の付与を通じて行われる。これにより、体感を通じた運転教示を行うことが可能となる。
【0087】
請求項32に記載の発明は、請求項17〜31のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベース及び前記運転教示部は、前記車両情報が収集されるプローブ情報通信システムの管理センターに設けられ、前記管理センターは、前記運転支援の対象とする車両からの要求に応じてドライバに教示すべき運転履歴に関する情報を該当する車両に配信することを要旨とする。
【0088】
上記構成によれば、車両情報が上記管理センターに適宜収集される。このため、様々なドライバの車両操作が反映された車両情報を容易に収集させることができるようになるとともに、こうした車両情報を管理センターで一括して管理することが可能となる。
【0089】
また、本発明は、請求項18、20〜27、29にかかる発明に適用して特に有効であり、この場合には、その相乗効果として、ドライバに教示すべき運転履歴に関する情報の選定範囲が拡大されるようになる。このため、上記管理センターに収集される大量の運転履歴のなかから運転支援対象とするドライバの癖や運転レベルにより近い運転履歴に関す
る情報を選択、教示することが可能となる。これにより、ドライバに対する運転支援を上記運転履歴に関する情報に基づき行う上で、よりドライバの意図に沿った運転支援を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明にかかる運転支援システムの第1の実施形態について、その概略構成を示すブロック図。
【図2】運転履歴データベースに登録されて、運転操作傾向毎に分類されるとともに運転レベル毎に層別された運転履歴の一例を示す図。
【図3】本実施の形態の運転支援手順を示すフローチャート。
【図4】運転履歴が取得される走行経路の一例を示す図。
【図5】(a)は、複数の車両操作のもとに収集された運転履歴データの一例を示した図。(b)は、同運転履歴データのうち、燃費についての各変数との関係の一例を示した図。
【図6】(a)は、変数X1に基づきカーネル密度推定された燃費に対する運転履歴の分布の一例を示す図。(b)は、変数X2に基づきカーネル密度推定された燃費に対する運転履歴の分布の一例を示す図。
【図7】変数としての車両パラメータ及び走行環境パラメータ毎の分離度の判定結果を示す図。
【図8】本発明にかかる運転支援システムの第2の実施形態について、類似運転操作傾向の抽出処理手順を示す図。
【図9】同実施例について、近似レベル操作情報の選択手順を示す図。
【図10】(a)及び(b)は、本発明にかかる運転支援システムの他の実施形態について、クラスタリング手法に基づく運転履歴の分類態様の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0091】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる運転支援システムを具体化した第1の実施の形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0092】
図1に示すように、本実施の形態の運転支援システムは、車両に搭載される車載システム100と、プローブ情報通信システムを構成して道路上を走行する車両の車両情報(プローブ情報)を収集し且つ管理する管理センター200とを備えている。
【0093】
このうち車載システム100は、車両の運転操作に関する情報や各種走行データを含んだ車両操作情報を取得する車両操作情報取得部110と、自車両の位置や自車両が走行した経路等に関する経路情報を取得するための経路情報取得部120とを備えている。車載システム100はさらに、車両操作情報取得部110や経路情報取得部120から送信されるデータを受信するデータ受信部130を備えている。
【0094】
このうち車両操作情報取得部110は、アクセルセンサ111、ブレーキセンサ112、加速度センサ(Gセンサ)113、ジャイロセンサ114、操舵角センサ115、及び車速センサ116等の各種センサやエンジンECU117によって構成されている。これら各種センサ111〜116及びエンジンECU117は、例えばCAN(Control Area Network)などの車載ネットワークを介して、様々なセンサの検出結果を集約するデータ受信部130に電気的に接続されている。
【0095】
アクセルセンサ111は、ドライバによるアクセルペダル操作によって変化するアクセル開度を検出し、この検出したアクセルの開度に応じた信号を、データ受信部130に送信する。ブレーキセンサ112は、ドライバによるブレーキペダル操作の有無を検出し、
この検出した操作の有無に応じた信号を、データ受信部130に送信する。加速度センサ113は、車両加速度を検出し、この検出した加速度に応じた信号を、データ受信部130に送信する。ジャイロセンサ114は、車両進行方向を検出し、この検出した進行方向に応じた信号を、データ受信部130に送信する。操舵角センサ115は、検出したステアリング操舵角変化量に基づいて操舵角を算出し、この算出した操舵角に応じた信号を、データ受信部130に送信する。車速センサ116は、車輪回転速度を検出し、この検出した回転速度に応じた信号を、データ受信部130に送信する。エンジンECU117は、燃料の噴射量を決定する燃料噴射信号をデータ受信部130に送信する。こうして、データ受信部130には、各センサ111〜116及びエンジンECU117による検出結果が自車両の車両操作情報として入力される。
【0096】
また、経路情報取得部120は、GPS121、カーナビゲーションシステム122、ヨーレートセンサ123、ミリ波レーダー124、操舵角センサ115、及び車速センサ116によって構成されている。
【0097】
GPS121は、車両の絶対位置を検出するためのGPS衛星信号を受信し、この受信したGPS衛星信号に基づき車両の緯度経度を検出し、この検出した車両の緯度経度情報を、データ受信部130に送信する。
【0098】
カーナビゲーションシステム122は、出発地点から目標地点までの推奨経路等をドライバに案内するシステムであり、車両の運転域に対応する道路地図データを有している。この道路地図データは、地図に関する情報であり、地図表示用データ、誘導データ(交差点名称、道路名称、方面名称、方向ガイド施設情報)などから構成される。地図表示用データは、道路や道路地図の背景を表示するためのデータである。誘導データは、交差点の名称などから構成されるデータであり、推奨経路に基づき、運転者などに推奨経路を誘導する際に用いられる。また、こうした道路地図データには、緯度経度に関する情報や、連続する道路を交差点や信号機等を基準に区画される区間である走行リンクに関する情報が登録されている。そして、カーナビゲーションシステム122は、自車両の緯度経度情報を、データ受信部130に適宜送信する。また、カーナビゲーションシステム122は、例えば自車両が走行している経路の渋滞状況等に関する情報を交通情報センター等から取得して、この取得した情報を自車両周辺の動的周囲状況としてデータ受信部130に送信する。なお、本実施の形態では、こうしたカーナビゲーションシステム122に登録された道路地図データや上記GPS121により取得される緯度経度情報に基づき、自車両が走行した経路の道路勾配や道路線形等の静的周囲状況に関する情報が取得される。
【0099】
ヨーレートセンサ123は、車両の旋回方向への回転角の変化速度であるヨーレートを検出し、この検出したヨーレートに応じた信号を、CANなどの車載ネットワークを介して、データ受信部130に送信する。ミリ波レーダー124は、自車両の前方に存在する前方車両や後方に存在する後方車両の存在や、自車両から前方車両や後方車両までの距離を検出して、この検出した信号を自車両の動的周囲状況を示す情報としてデータ受信部130に送信する。
【0100】
データ受信部130は、それぞれ受信した信号、すなわち自車両の車両操作情報及び経路情報を、それら各情報が処理される車両情報処理部140に送信する。なお、データ受信部130は、各信号を受信した時間を該当する信号の取得時間として記録する。これにより、ドライバによって或る車両操作が行われた時間や、自車両が或る走行経路を走行した時間帯が特定可能とされている。
【0101】
また、データ受信部130は、ドライバにより上記カーナビゲーションシステム122に対して目標地点が設定され出発地点から目標地点までの推奨経路が選択されると、この
選択された経路に関する情報を、ドライバに運転教示を行うための運転教示データが生成される運転教示データ生成部170に送信する。
【0102】
車両情報処理部140は、データ受信部130から入力されたうちの経路情報に基づき、自車両の走行経路を特定する走行経路特定部141と、自車両の車両操作情報を処理して上記管理センター200に計上するための計上データを生成する計上データ生成部142とを備えている。
【0103】
このうち走行経路特定部141は、GPS121、カーナビゲーションシステム122、ヨーレートセンサ123、操舵角センサ115、及び車速センサ116から、データ受信部130を介して受信した情報に基づき、自車両の位置や自車両が走行した走行経路等を特定する。なお、こうした走行経路の特定は、例えば、GPS121から取得された緯度経度、カーナビゲーションシステム122に登録されている地図データに基づく走行リンク、「10m」〜「100m」といった所定の距離等を単位として行われる。そして、走行経路特定部141は、この特定した走行経路に関する情報を、上記データ受信部130が受信した車両操作情報とともに計上データ生成部142に送信する。
【0104】
一方、計上データ生成部142は、自車両の単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費を算出する燃費情報算出部142aを備えている。この燃費情報算出部142aは、アクセルセンサ111の検出結果に基づくアクセルペダルの踏込量や、上記エンジンECU117等から入力される燃料噴射信号等に基づき、自車両の燃費に関する情報である燃費情報を算出する。そして、車両情報処理部140は、この燃費情報算出部142aにより算出された燃費情報に、該当する車両操作情報と自車両の識別のための車両IDとを関連付け、それら燃費情報及び車両操作情報及び車両IDが関連付けられた情報を自車両の車両情報とする。
【0105】
また、車両情報処理部140は、自車両の車両情報に上記特定された走行経路に関する情報を関連付けて紐付けする情報紐付部142bを備えている。この情報紐付部142bは、走行リンク単位や例えば「10m」等の所定の距離単位で、該当する走行経路に上記車両情報を関連付ける。これにより、例えば、自車両が走行した或る区間の走行経路に関する情報には、同走行経路での燃費、及び同走行経路を走行する際に要した旅行時間、及び同走行経路を走行する際に行われたステアリング操作やブレーキ操作等の運転操作に関する情報、及び同走行経路の走行時刻に関する情報等が関連付けられることとなる。
【0106】
そして、計上データ生成部142は、走行経路に関する情報に該当する車両情報が関連付けられた情報を、上記管理センター200に計上すべき自車両の運転履歴として、無線送信部150を介して管理センター200に送信する。なお、計上データ生成部142は、運転履歴に関する情報の送信を、例えば車両の走行が終了する都度実行する。また、車載システム100は、自車両のドライバに運転教示する際に用いる情報を取得すべく、同情報の要求として管理センター200に対する問い合せを適宜行う。
【0107】
一方、管理センター200は、こうした車載システム100から送信された運転履歴に関する情報を受信する無線受信部210と、同無線受信部210が受信した運転履歴に関する情報を登録する運転履歴データベース220とを備えている。
【0108】
このうち運転履歴データベース220では、上記車載システム100を備えた各車両から送信される複数種の運転履歴が、各々の特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類されて登録される。すなわち、車載システム100を備えた各車両から送信される運転履歴とは、各々のドライバ固有の癖が反映された運転操作傾向を有しており、運転履歴データベース220には、各車両から送信される運転履歴がこうした運転操作傾向の別に適宜分類さ
れて登録される。なお、本実施の形態では、停止状態から走行状態に遷移して所定時間経過後のアクセルの踏込み量が、「0%」以上且つ「5%」未満の運転履歴がパターンA、「5%」以上且つ「10%」未満の運転履歴がパターンB、「10%」以上且つ「15%」未満の運転履歴がパターンCとして分類される。
【0109】
また、本実施の形態の運転履歴データベース220では、各車両から送信された複数種の運転履歴が、出発地点から目的地点に至るまでの燃費、旅行時間、車両操作の安全性が評価項目とされてそれぞれ評価される運転レベル毎に層別されて登録される。すなわち、車載システム100を備えた各車両から送信される運転履歴とは、各々のドライバの運転レベルによって相違するものであり、こうした運転履歴が反映される燃費及び旅行時間及び車両操作の安全性も相違する。そこで本実施の形態では、上記運転履歴データベース220には、こうした評価項目に応じて運転履歴に関する情報が適宜層別されて登録される。これにより、燃費が評価項目とされたときには、燃費が高い運転履歴ほど運転レベルが高く、燃費が低い運転履歴ほど運転レベルが低いものとして、上記運転履歴が2以上の運転レベルに層別される。こうして、例えば、燃費が「5km/l」未満の運転履歴が運転レベル1、燃費が「5km/l」以上且つ「10km/l」未満の運転履歴が運転レベル2、燃費が「10km/l」以上の運転履歴が運転レベル3として層別される。これにより、図2に例示するように、運転履歴データベース220では、複数種の車両操作に基づく運転履歴が、パターンA〜パターンC毎に分類されるとともに運転レベル1〜運転レベル3毎に層別されて登録されることとなる。同様に、旅行時間が評価項目とされたときには、共通もしくは類似する走行経路を走行する際に要した旅行時間が短い運転履歴ほど運転レベルが高く、旅行時間が長い運転履歴ほど運転レベルが低いものとして上記運転履歴が2以上の運転レベルに層別される。また同様に、安全性が評価項目とされたときには、例えば緩やかな加速操作や減速操作が行われている運転履歴ほど運転レベルが高く、急な加速操作や急な減速操作が行われている運転履歴ほど運転レベルが低いものとして上記運転履歴が2以上の運転レベルに層別される。
【0110】
また、管理センター200は、上記運転履歴データベース220に登録された運転履歴の分布を求める運転分布算出部230を備えている。この運転分布算出部230は、カーネル密度推定等の手法により運転履歴データベース220に登録された運転履歴の確率密度を推定し、この推定結果から運転レベルが高い運転履歴の分布と運転レベルが低い運転履歴の分布とを求める。なお、こうした運転履歴の分布は、例えば上記走行リンクや特定の地点を単位として求められる。
【0111】
なお、本実施の形態では、静的周囲状況及び動的周囲状況及び車両状態に関する情報の各々を変数として、評価項目毎の運転履歴の確率密度が推定される。また、こうした運転履歴の分布は、上記評価項目毎にそれぞれの変数に基づき求められる。こうして、例えば、燃費が評価項目とされたときには、燃費が高いために運転レベルが高くなる運転履歴の分布と燃費が低いために運転レベルが低くなる運転履歴の分布とが求められる。そして、こうした運転分布算出部230により求められた運転履歴の分布結果は、運転レベルが「高」及び「低」とされた運転履歴の分布が相違する要因を特定する要因特定部240に入力される。
【0112】
要因特定部240は、上記運転分布算出部230により求められた運転履歴の分布結果を変数毎に対比して、運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルが「低」であり、且つ、運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を求める。そして、要因特定部240は、この求めた変数を上記運転レベルが相違する要因として特定する。ここでは、例えば、評価項目を燃費したときの運転履歴の確率密度が変数としてのカーブ及び加速度について推定されたとする。そして、「加速度」を変数として推定された運転履歴の分布の方が、「カーブ」を変数として
推定された運転履歴の分布よりも運転レベルが「高」及び「低」とされた運転履歴の分布の乖離が大きいときには、「加速度」に関する車両操作が、上記分布が求められた運転履歴において燃費が相違する要因として特定される。要因特定部240は、こうして各評価項目において運転レベルが相違する要因を特定すると、この特定した要因(変数)に関する情報を、運転教示に用いる情報を仮保存するための教示用データベース250に出力する。
【0113】
なお、本実施の形態では、運転履歴データベース220と教示用データベース250とによって、上記運転履歴データベースが構成される。
また、管理センター200は、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴を、上記運転履歴データベース220から抽出する類似操作情報抽出部260を備えている。この類似操作情報抽出部260は、例えば、運転支援の対象とする車両の車載システム100から問い合せがあると、同問い合わせのあった車両の車両ID等に基づき、同車両のドライバの運転履歴を上記運転履歴データベース220から検索する。こうして、上記問い合せがあった車両の運転履歴が検索されると、この検索された運転履歴が属する運転操作傾向のグループに含まれる運転履歴が、上記層別された運転レベルに関する情報とともに上記運転履歴データベース220から抽出される。
【0114】
なお、本実施の形態では、こうした運転履歴の抽出が、特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として行われる。すなわち、各々のドライバの運転レベルや運転操作傾向とは、カーブでの運転レベルが高いドライバや道路勾配での運転レベルが高いドライバ等、要素毎に相違する。また、同一の走行経路であっても、渋滞の発生しやすい時間帯や車両の走行台数が少ない時間帯があり、こうした時間帯によって変化する走行環境によってもドライバの車両操作は相違する。そこで、類似操作情報抽出部260は、一時停止位置、交差点等の交通要素や曲率半径の大きい特定のカーブ、渋滞の頻度の高い時間帯等の各要素を単位として、上記運転履歴データベース220から該当する運転履歴を抽出する。
【0115】
そして、類似操作情報抽出部260は、この抽出した運転操作傾向が類似するグループの運転履歴に関する情報を、運転支援の対象とする車両のドライバに近似する運転レベルの運転履歴を選択する近似レベル操作情報選択部270に出力する。この近似レベル操作情報選択部270は、例えば、運転支援の対象とする車両のドライバの次に運転レベルが高い層に属する運転履歴の中から、同ドライバに運転レベルが近似する運転履歴を選択する。そして、近似レベル操作情報選択部270は、この選択した運転履歴に関する情報を、上記問い合わせのあった車両のドライバの運転教示に用いる情報として、上記教示用データベース250に出力する。
【0116】
こうして、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似して且つ運転レベルが近似する1乃至複数の運転履歴が、特定の地点や特定の交通要素、時間帯等を単位として教示用データベース250に仮保存されることとなる。そして、こうして仮保存された運転履歴に関する情報と上記運転レベルが相違する要因として特定された変数に関する情報とが、無線送信部280を介して上記問い合わせのあった車両の車載システム100に配信される。
【0117】
一方、車載システム100では、上記問い合わせの結果として管理センター200から配信された運転履歴に関する情報が無線受信部160にて受信されると、この受信された運転履歴に関する情報が上記運転教示データ生成部170に取り込まれる。
【0118】
運転教示データ生成部170は、管理センター200から配信された運転履歴に関する
情報と上記特定された変数に関する情報とを取得すると、それら取得した各情報と上記カーナビゲーションシステム122を通じて選択された推奨経路に関する情報とに基づいて、運転教示データを生成する。具体的には、運転教示データ生成部170はまず、管理センター200から配信された運転履歴の中から、ドライバにより選択された推奨経路中に存在するカーブや道路勾配等の交通要素と共通もしくは類似する交通要素を含んだ運転履歴を選択する。
【0119】
そして、運転教示データ生成部170は、この選択した運転履歴に関する情報に基づき、上記評価項目を改善するための運転教示データを生成する。例えば、上記変数によって示される要因として上記評価項目が「燃費」であるときの「カーブ」が特定されているとする。このときには、運転教示データ生成部170は、上記運転履歴に関する情報のうちカーブでのステアリング操作や加速・減速操作等を示す情報を参照し、こうした車両操作を再現するために必要なテキストデータや運転傾向を示すレーダーチャート等の画像データを生成する。また同様に、運転教示データ生成部170は、運転教示データとして、上記運転履歴に関する情報のうちカーブでのステアリング操作や加速・減速操作等を示す情報を参照し、こうした車両操作を再現可能な車両の駆動系の制御量に関するデータを生成する。
【0120】
また、例えば、上記変数によって示される要因として、上記評価項目が「安全性」であるときの「道路勾配」及び「アクセルペダルの踏込み量」が特定されているとする。このときには、運転教示データ生成部170は、上記運転履歴に関する情報のうち道路勾配でのアクセル操作等を示す情報を参照し、こうした車両操作を再現するために必要な画像データや車両の駆動系の制御量に関するデータを生成する。
【0121】
そして、こうして適宜生成された運転教示データが、自車両が或る目的地点に至るまでの経路中に存在する交通要素に各々関連付けられる。こうして、運転教示データ生成部170では、或る目的地点に至るまでの経路において、自車両のドライバに運転操作傾向が類似し且つ運転レベルが近似する複数のドライバによる複数の車両操作に基づく運転履歴が組み合わされ、合成された運転教示データが生成される。そして、こうした運転教示データ生成部170により生成された画像データが表示装置180に出力されるとともに、駆動系の制御量に関するデータが駆動系制御装置190に出力される。
【0122】
なお、本実施の形態では、運転教示データ生成部170、運転分布算出部230、要因特定部240、類似操作情報抽出部260、近似レベル操作情報選択部270によって上記運転教示部が構成される。
【0123】
表示装置180は、例えば液晶ディスプレイによって構成され、車室内のセンターコンソール付近に設置される。この表示装置180は、運転教示データ生成部170から入力されたテキストやレーダーチャートを画像出力することにより、ドライバに減速操作やステアリング操作等をガイドする。これにより、例えば、自車両が交差点やカーブに侵入する際には、減速開始位置(減速タイミング)やアクセルペダルの踏込み量、ステアリングの操作加減等がドライバに案内される。
【0124】
また、駆動系制御装置190は、自車両のエンジン制御装置やブレーキ制御装置、ステアリング制御装置等、車両の駆動系を制御する装置である。そして、駆動系制御装置190は、運転教示データ生成部170から入力された運転教示データに基づいて、ブレーキやステアリング等の駆動系に対する半強制的な制動力の付与や自動運転を実行する。
【0125】
こうして、自車両のドライバには、実際の走行経路を走行した車両の運転履歴に基づいて、同ドライバに運転操作傾向が類似し、同ドライバよりも運転レベルが高く且つ近似す
る内容の運転教示が行われるようになる。なお、こうした運転教示に用いられる運転教示データとは、各々の走行経路を走行したドライバの運転履歴である。このため、上述した模擬コースを用いることなく各々のドライバの運転履歴の登録として生成することが可能となり、運転支援の対象とするドライバに教示すべき走行モデルを容易に生成することが可能となる。
【0126】
以下、本実施の形態の運転支援システムの動作について図3〜図7を参照して説明する。
図3に示すように、本実施の運転支援システムではまず、ステップS100において、上記運転履歴データベース220から或る地点の運転履歴が抽出される。これにより、例えば、図4に示す走行経路において、同走行経路中に存在するカーブC1を含んだ区間Sec1における運転履歴が抽出される。なお、こうして抽出される運転履歴は、区間Sec1を走行した複数種の車両から得られた複数種の運転履歴に関する情報である。すなわち、図5(a)に例示するように、区間Sec1における運転履歴は例えば三次元のデータとして構成されており、奥行きをもった複数の横軸によって、評価項目としての燃費及び旅行時間及び加速度によって示される安全性等がそれぞれ示されている。また、縦軸においては、上記変数としての道路勾配や道路線形等の静的周囲状況、及び自車両の前方車両や後方車両との車間距離、渋滞状況等の動的周囲状況等の走行環境パラメータがそれぞれ対応している。縦軸においては、この他、ステアリングやアクセル開度、車速度、加速度等の車両状態(走行状態)等の車両パラメータといった様々な要因が対応しており、こうしたパラメータの各々がそれぞれ変数に該当する。そして、例えば、燃費を横軸として上記運転履歴を観察した場合には、図5(b)に示すように、同燃費に対応する運転履歴データが二次元で表現される。
【0127】
そして、図3に示すステップS101において、例えば、カーネル密度推定手法を用いて、上記抽出した区間Sec1での運転履歴の確率密度が評価項目毎に推定される。こうして、図5(b)に例示するように、変数「X1」としての「カーブ」についての燃費に対する運転履歴の分布や、変数「X2」としての「加速度」についての燃費に対する運転履歴の分布が適宜算出される。これにより、図6(a)及び(b)に例示する運転履歴の分布が順次求められる。
【0128】
すなわち、変数「X1」としての「カーブ」について求められた運転履歴は、図6(a)に示すように、例えば、燃費が相対的に低いために運転レベルが低いとされるグループの分布L1と、燃費が相対的に高いために運転レベルが高いとされるグループの分布L2とに分割される。また、図6(b)に示すように、変数「X2」としての「加速度」について求められた運転履歴も、例えば、燃費が相対的に低いために運転レベルが低いとされるグループの分布L3と、燃費が相対的に高いために運転レベルが高いとされるグループの分布L4とに分割される。こうして、全ての変数についての運転履歴の分布が評価項目毎に求められることとなる。なお、こうしたステップS100、S101が、運転履歴の分布を求める分布算出処理となる。
【0129】
次いで、ステップS102〜ステップS106では、各運転履歴の運転レベルが相違する要因を特定する要因特定処理が実行される。この要因特定処理ではまず、整数iを用いて変数毎の運転履歴の分布の差が求められる。なお、整数iは、上記変数の最大数を「n」としたとき、以下の条件(イ)を満たす数である。
【0130】
1≦i≦n …(イ)
そして、本要因特定処理ではまず、ステップS102において、整数iに「1」がセッ
トされる。その後、上記変数のうちで整数i=1に対応する変数「X1」について、運転支援の対象とする車両のドライバAの運転レベルが属する分布と、同ドライバが属する分布よりも運転レベルの高い分布との分離度が求められる(ステップS103)。この分離度としては、例えば、図6(a)に例示するように2つの分布L1及びL2の最大値の差R1が求められる。
【0131】
そして、続くステップS104では、整数iが整数nに達したか否か、すなわち、全ての変数について運転履歴の分布の分離度が求められたか否かが判断される。こうして、整数iが整数nに到達するまで同様の処理が繰り返されることにより、X1〜Xnまでの全ての変数について運転履歴の分布の分離度が求められるようになる(ステップS103〜S105)。すなわち、変数X1〜Xnによって示される全てのパラメータについて、運転履歴の分布の分離度が求められるようになる。
【0132】
こうして、整数iが順次加算されて整数nに到達すると、図6(a)及び(b)に例示するように、運転支援の対象とする車両のドライバAが属する分布と同分布よりも運転レベルの高い分布との分離度が、所定の閾値R0以上となる変数が特定される(ステップS106)。すなわち、ここでの例では、変数X1については、図6(a)に例示するように2つの分布L1及びL2のピーク値の差R1が閾値R0未満であることから、変数X1は上記要因として特定されないこととなる。一方、変数X2については、図6(b)に例示するように2つの分布L3及びL4のピーク値の差R2が閾値R0以上であることから、変数X2がドライバAの運転レベルを改善すべき要因の1つとして特定される。
【0133】
そして、こうした処理が評価項目毎に行われることにより、例えば図7に示すように、運転支援の対象とする車両のドライバAが同ドライバAよりも運転レベルの高いグループと運転レベルが相違する要因が適宜特定されることとなる。
【0134】
そして、続くステップS107では、運転支援の対象とする車両のドライバAと運転操作傾向が類似する運転履歴を抽出する類似運転操作傾向抽出処理が実行される。この処理では、先の図2に示した態様で運転操作傾向の別に分類されている運転履歴の中から、ドライバAと運転操作傾向が類似する運転履歴が、上記運転履歴データベース220から抽出される。ここでの例では、図2に示されるように、ドライバAの運転操作傾向がパターンAに該当することから、グループA1及びグループA2及びグループA3の運転履歴が抽出される。
【0135】
そして、続くステップS108〜S110では、運転支援の対象とする車両のドライバAよりも運転レベルが高く、且つ同ドライバAに運転レベルが近似する運転履歴を選択する近似レベル操作情報選択処理が実行される。
【0136】
この近似レベル操作情報選択処理ではまず、ステップS108において、ドライバAに運転操作傾向が類似する運転履歴として抽出されたグループA1及びグループA2及びグループA3の運転履歴のうち、ドライバAよりも運転レベルが高い層の運転履歴が選択される。すなわち、図2に示す例では、運転レベル1の層に属するドライバAよりも運転レベルが高い運転履歴として、グループA2及びグループA3の運転履歴が選択される。
【0137】
そして、続くステップS109では、上記ステップS108において選択された運転履歴の中から、ドライバAの次に運転レベルが高い層に属する運転履歴が選択される。すなわち、図2に示す例では、運転レベル1の層に属するドライバAの次に運転レベルが高い層に属する運転履歴として、グループA2の運転履歴が選択される。
【0138】
次いで、ステップS110では、グループA2の運転履歴のうちでドライバAに運転レ
ベルが近似する運転履歴が選択される。すなわち、図2に示される例では、運転レベル2の層に属するグループA2の運転履歴のうちで、ドライバAの運転履歴に運転レベルが近似するドライバBの運転履歴が選択される。
【0139】
こうして、運転支援の対象とする車両のドライバAに運転操作傾向が類似し、同ドライバよりも運転レベルが高く且つ近似する運転履歴が選択されることとなる。そして、こうした処理が、例えば、先の図4に示した走行経路において、区間Sec1〜区間Sec3といった所定の区間、所定の曲率のカーブ等の交通要素、渋滞の発生する頻度が高い時間帯等を単位として行われる。これにより、ドライバAに運転操作傾向が類似し、同ドライバよりも運転レベルが高く且つ近似する複数の運転履歴が適宜選択されることとなる。
【0140】
そして、続くステップS111〜ステップS113では、上記選択された運転履歴に基づいて、運転支援の対象とする車両のドライバAに運転教示を実行する運転教示処理が実行される。
【0141】
この運転教示処理ではまず、ステップS111において、ドライバに運転教示すべき項目が決定される。ここでは、例えば、上記要因特定処理において特定された要因を改善するために必要な項目がドライバに運転教示すべき項目として決定される。これにより、先の図7に示したように、例えば、燃費を改善するための要因として特定された加速度、アクセル開度、道路線形、車間距離等に関する車両操作が運転教示すべき項目として選定される。
【0142】
こうして、運転教示すべき項目が決定されると、ドライバAが走行する推奨経路と上記決定された運転教示項目とに応じて上記選択された運転履歴が適宜組み合わされることにより、ドライバAに教示すべき運転教示データが生成される(ステップS112)。そして、この生成された運転教示データに基づく運転教示が、上記表示装置180や駆動系制御装置190を介して実行される。これにより、ドライバAには、同ドライバAに類似し、同ドライバAよりも運転レベルが高く且つ近似する運転履歴に基づく運転教示が行われるようになる。
【0143】
以上説明したように、本実施の形態にかかる運転支援システムによれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)道路上を実際に走行する各車両から各走行経路における運転履歴を、該当する経路情報とともに収集することとした。そして、この収集した運転履歴を上記運転履歴データベース220に登録するとともに、この登録した運転履歴を運転支援の対象とする車両のドライバに対する運転教示に用いることとした。このため、同ドライバには、実際の道路環境下で実際に行われた車両操作が反映された運転履歴に基づいた運転教示が行われることとなる。これにより、運転支援の対象とする車両のドライバには、自らが走行する走行経路や同走行経路に類似する走行経路で実際に行われた車両操作に基づく実現性の高い運転支援が行われるようになる。また、上記運転教示データは、各々の走行経路を走行したドライバの運転履歴に基づき生成されたデータであるから、運転支援の対象とするドライバに教示すべき走行モデルを容易に生成することが可能となる。これにより、多種多様な交通要素が反映された実際の走行環境に即した実現性の高い運転支援を容易に実現することができるようになる。
【0144】
(2)運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出し、この抽出した運転履歴に基づき生成された運転教示データを用いてドライバに対する運転教示を行うこととした。このため、運転支援の対象とする車両のドライバには、同ドライバ固有の癖に応じた運転教示が行われることとなり、ドライバの意図に即した的確な運転支援が実現されるようになる
。
【0145】
(3)上記運転履歴データベース220に、複数種の運転履歴をその特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類して登録することとした。そして、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向を特定するとともに、この特定した運転操作傾向との特徴量が類似する運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベース220から抽出することとした。これにより、運転支援の対象とするドライバ固有の癖に類似する運転操作傾向を容易に抽出することが可能となり、ドライバ固有の癖に応じた運転支援をより容易に実現することが可能となる。
【0146】
(4)上記運転履歴データベース220に、各車両から送信された複数種の運転履歴を、燃費、旅行時間、車両操作の安全性のそれぞれを評価項目として評価して運転レベル毎に層別して登録することとした。そして、運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルを上記評価項目の少なくとも1つに基づき判定するとともに、この判定した運転レベルよりもレベルの高い運転履歴に関する情報を上記層別された運転履歴データベースから抽出することとした。このため、運転支援の対象とする車両のドライバには、その運転レベルに拘らず自己の運転レベルよりも高い運転履歴に関する情報が教示されることとなる。これにより、ドライバの運転レベルが低い場合であれ、高い場合であれ、上記評価項目を向上させることのできる運転教示を行うことが可能となり、有効性の高い運転支援が実現されるようになる。
【0147】
(5)上記運転教示に際し、運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を、上記運転履歴データベース220から抽出された運転履歴の中から選定することとした。そして、この選定した運転履歴に基づいて、運転支援の対象とする車両のドライバに対する運転教示を行うこととした。このため、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルの次に高い運転レベルの運転履歴に関する情報が教示されることとなる。これにより、運転支援の対象とするドライバの運転レベルに拘らず、その運転レベルに応じて同運転レベルを高めることを可能な運転支援が無理なく行われるようになる。また、これにより、上記(2)との相乗効果として、ドライバには、同ドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報がドライバに教示されることとなり、効果的な運転支援が実現可能となる。
【0148】
(6)上記運転教示に際し、上記運転レベル毎に層別された運転履歴のうちで運転支援の対象とする車両のドライバAの運転レベル1に近いドライバBの運転履歴を選択することとした。そして、この選択した運転履歴に基づいて、ドライバAに対する運転教示を行うこととした。これにより、運転支援の対象とされる車両のドライバの運転レベルに近似する運転レベルに基づく運転支援が可能となり、運転支援を通じた運転レベルの段階的な向上が図られるようになる。また、これにより、上記(2)との相乗効果として、運転支援の対象とされる車両のドライバには、同ドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転教示が行われるようになり、より効果的な運転支援が実現可能となる。
【0149】
(7)上記静的周囲状況及び動的周囲状況及び車両状態に関する情報の各々を変数として、上記運転履歴データベース220に登録された運転履歴の確率密度を推定することとした。そして、この推定結果として求まる運転履歴の分布に基づく運転履歴の分布の分離度(乖離)に基づき上記運転レベルが相違する要因を特定し、この特定した要因を上記評価項目を改善すべき要素として上記運転教示に用いることとした。これにより、各々のドライバの運転レベルが相違する主要因、換言すれば、運転レベルを改善すべき主要素に基づいた運転支援を行うことができるようになり、運転支援の対象とする車両のドライバの
運転レベルを効果的に改善させることが可能となる。
【0150】
(8)上記運転履歴データベース220に、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報を登録することとした。また、特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として合成された運転履歴を用いて、上記運転教示に用いられる運転教示データを生成することとした。これにより、複数種の運転履歴を有効に活用してそれら運転履歴に基づく運転支援を行うことが可能となる。また、これにより、上記(2)〜(6)との相乗効果として、運転教示に用いられる運転履歴の選定範囲が拡大され、ドライバの運転レベルや固有の癖により近い走行モデルに基づいた運転支援が実現可能となる。
【0151】
(9)上記運転支援の教示を、運転支援の対象とする車両に搭載された上記表示装置180に対する画像出力として行うこととした。これにより、既存のカーナビゲーションシステム等の表示装置を用いて、視覚を通じた運転教示を行うことが可能となる。
【0152】
(10)上記運転支援の教示を、上記駆動系制御装置190による車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて行うこととした。これにより、体感を通じた運転教示を行うことが可能となり、より効果的な運転支援が実現される。
【0153】
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかる運転支援システムを具体化した第2の実施の形態を図8及び図9を参照して説明する。なお、この第2の実施の形態は、上記運転履歴データベース220での運転レベル別、パターン別の登録を割愛したものであり、その基本的な構成は先の第1の実施の形態と共通になっている。
【0154】
図8は、本実施の形態の類似操作情報抽出部260による類似運転操作傾向の抽出手順を示している。また、図9は、本実施の形態の近似レベル操作情報選択部270による近似レベル操作情報の選択手順を示している。
【0155】
まず、本実施の形態では、先の図1に示した運転履歴データベース220には、運転レベル毎の層別とパターン毎の分類とが行われることなく各ドライバの運転履歴が適宜登録される。
【0156】
そして、本実施の形態の類似操作情報抽出部260は、図8に示すように、運転レベルが相違する要因として特定された変数が運転支援の対象とする車両のドライバAの運転履歴と共通する運転履歴を、上記運転履歴データベース220から抽出する。
【0157】
ここでの例では、運転支援の対象とする車両のドライバAの運転履歴には、変数「X11」、「X12」、「X16」等によって示される静的周囲状況、動的周囲状況、及び車両状態に関する情報が含まれている。例えば、変数「X11」は、静的周囲状況として曲率が所定値以上のカーブに関する情報を示しており、変数「X12」は、平均車速度が「40km/h」以上、「60km/h」未満であることを示している。すなわち、こうした変数によって、ドライバAの運転履歴が取得されたときの静的周囲状況及び動的周囲状況及び車両状態に関する詳細な項目が表されており、変数が共通している運転履歴ほど、静的周囲状況及び動的周囲状況及び車両状態の各々が共通する運転履歴となっている。
【0158】
そして、図8の例では、ドライバC、ドライバF、ドライバH、ドライバ..の運転履歴が、ドライバAの運転履歴に含まれている変数「X11」、「X12」、「X16」等を含んでいる。よって、本実施の形態の類似操作情報抽出部260は、運転支援の対象とする車両のドライバAの運転操作傾向に類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴として、ドライバC、ドライバF、ドライバH、ドライバ..の運転履歴を上記運転履歴データベ
ース220から適宜抽出する。そして、この抽出された結果が、上記近似レベル操作情報選択部270に入力される。
【0159】
本実施の形態の近似レベル操作情報選択部270は、図9に例示するように、上記類似操作情報抽出部260によって抽出された運転履歴のうち、例えば上記要因特定部240により運転レベルが相違する要因として特定された変数「X16」によって示される情報の単位時間当りの変化量を算出する。ここでの例では、「X16」は、例えば、自車両と前方車両との車間距離に関する情報を示している。なお、この変化量の算出の対象となる変数としては、上記動的周囲状況もしくは車両状態を示す変数が対象とされる。そして、近似レベル操作情報選択部270は、こうした変数によって示される情報の変化量に基づいて、上記類似操作情報抽出部260にて運転操作傾向が類似するとされたドライバA、ドライバC、ドライバF、ドライバH、ドライバM、ドライバS、..の運転履歴の運転レベルを判定する。すなわち、上記変数によって示される情報が動的周囲状況のうちの自車両と前方車両との車間距離に関する情報であるときには、車間距離の単位時間あたりの変化量が小さいほど、安定した車両操作が行われているために運転レベルが高いと判定することが可能である。また、上記変数によって示される情報が車両状態のうちのカーブでのヨーレートに関する情報であるときには、ヨーレートの単位時間あたりの変化量が小さいほど、車両の挙動が小さく円滑な車両操作が行われていると判定することが可能である。
【0160】
そして、こうした原理のもとに、「X16」によって示される車間距離の変化量が、運転操作傾向が類似するとされたドライバA、ドライバC、ドライバF、ドライバH、ドライバM、ドライバS、..の各運転履歴について算出される。この結果、図9に示すように、運転支援の対象とする車両のドライバAの運転履歴のうちの車間距離の変化量である「5m/min」よりも変化量が少なく且つ同変化量「5m/min」に近似する変化量を含んだ運転履歴として、車間距離の変化量が「4.5m/min」であるドライバSの運転履歴が特定される。
【0161】
こうして、この特定されたドライバSの運転履歴が、運転支援の対象とするドライバAの運転履歴に運転操作傾向が類似し、ドライバAよりも運転レベルが高く且つ同運転レベルが近似する運転履歴であるとして、上記教示用データベース250に仮登録される。そして、こうした処理が運転支援の対象とする走行経路での走行リンクや交通要素毎に行われることにより、先の第1の実施の形態と同様、上記特定されたドライバS、ドライバ..といった複数のドライバの運転履歴を用いた運転教示がドライバAに行われるようになる。
【0162】
以上説明したように、本実施の形態にかかる運転支援システムによれば、前記(1)、(2)、(7)〜(10)に準じた効果が得られるとともに、前記(3)〜(6)に代えて以下の効果が得られるようになる。
【0163】
(3A)運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、上記変数によって示される静的周囲状況もしくは動的周囲状況もしくは車両状態に関する要素が共通する運転履歴を、運転履歴データベース220から抽出することとした。そして、この抽出した運転履歴に基づいて、ドライバに対する運転支援を行うこととした。これにより、ドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を、同運転履歴に含まれる車間距離やヨーレート等をはじめとする様々な要素を用いて上記運転履歴データベース220から抽出することが可能となる。また、これにより、共通する変数の有無の判定といったより簡易な処理のもとに、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を抽出することが可能となり、上記運転教示にかかる円滑化が図られるようになる。
【0164】
(4A)上記運転レベルの判定を、上記変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の単位時間当りの変化量に基づいて行うこととした。これにより、変数によって示される自車両と前方車両との車間距離やカーブでのヨーレートといった要素のばらつきの大きさ、すなわち、車両挙動の大小を基準として、円滑な車両操作が行われているか否かを判定することが可能となる。
【0165】
(5A)上記運転教示に用いる運転履歴として、上記変数の変化量が近似する運転履歴を用いることとした。これにより、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づいた運転教示が行われることとなり、ひいては、同ドライバの運転レベルに見合った運転支援が行われるようになる。また、上記(3A)との相乗効果として、運転支援の対象とする車両のドライバには、同ドライバに運転操作傾向が類似し、同ドライバよりも運転レベルが高く、且つ同運転レベルが近似する運転履歴に基づいた運転教示が行われることとなる。これにより、運転支援の対象とする車両のドライバには、実現性が極めて高い運転教示が行われることとなり、同ドライバの意図に沿った的確な運転支援が行われるようになる。
【0166】
(6A)上記変数の変化量に基づく運転レベルの判定に際し、上記運転レベルが相違する要因として特定された変数を用いることとした。これにより、運転レベルが相違する主要因となる要素を利用して、同運転レベルを向上させるために効果的な運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出することが可能となる。
【0167】
なお、上記各実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記第2の実施の形態では、上記変数の変化量に基づく運転レベルの判定に際し、上記運転レベルが相違する要因として特定された変数を用いることとした。これに限らず、上記要因として特定されていない変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の変化量に基づいて上記運転教示に用いる運転履歴の運転レベルを判定することも可能である。またこの他、各運転履歴が含んでいる全ての変数について変化量を求め、この変化量の平均値に基づいて上記運転レベルを判定することも可能である。
【0168】
・上記第2の実施の形態では、上記運転教示に用いる運転履歴として、上記変数によって示される項目の変化量が近似する運転履歴を用いることとした。これに限らず、上記運転教示に用いる運転履歴として、上記変数によって示される項目の変化量が近似しない運転履歴を用いることも可能である。またこの他、上記評価項目に反する車両操作を教示する上では、運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルの低い運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出して、この抽出した運転履歴を上記運転教示に用いることも可能である。
【0169】
・上記第2の実施の形態では、上記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、同ドライバの運転履歴に含まれている変数が共通する運転履歴を、上記運転履歴データベース220から抽出することとした。これに限らず、上記要因特定部240により運転レベルが相違する要因として特定された変数が共通する運転履歴を、運転操作傾向が類似する運転履歴として上記運転履歴データベース220から抽出することも可能である。
【0170】
・上記運転教示データを、上記車載システム100を構成する運転教示データ生成部170にて生成することとした。これに限らず、上記運転教示データを上記管理センター200で予め生成し、同生成した運転教示データを管理センター200から車載システム100に配信するようにしてもよい。この場合には、例えば、カーナビゲーションシステム122を通じて出発地点から目標地点までの推奨経路が設定されると、この設定された推
奨経路が上記問い合せとして車載システム100から管理センター200に送信される。そして、管理センター200では、車載システム100から受信した推奨経路に関する情報に基づき、同推奨経路や同推奨経路中に存在する交通要素、運転支援の対象とされる車両が同推奨経路を走行する時間帯等を特定する。その後、管理センター200は、こうした推奨経路についての運転教示データを生成し、この生成した運転教示データを上記問い合せのあった車載システム100に配信する。そして、この車載システム100では、この配信された運転教示データを用いた運転教示が行われることとなる。なお、この構成であれ、上述した(1)〜(10)、(3A)〜(6A)に準じた効果を得ることは可能である。
【0171】
・上記車載システム100から管理センター200への車両情報の送信に際し、自車両の車両情報に同車両の車両IDを付すこととした。そして、運転履歴データベース220では、運転支援の対象とする車両の車載システム100から上記問い合せがあると、同問い合わせのあった車両の車両ID等に基づき、同車両のドライバの運転履歴を上記運転履歴データベース220から検索し、この検索した運転履歴を用いて上記運転教示を行うこととした。これに限らず、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向や運転レベルさえ把握できればよく、運転支援の対象とする車両から管理センター200に適宜送信される車両情報に基づき、同ドライバに教示すべき運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出するようにしてもよい。この場合には、自車両の車両情報の送信が管理センター200に対する問い合せとして機能する。そして、車載システム100では、この問い合せの応答として管理センター200から配信される運転教示データに基づく運転教示が行われることとなる。
【0172】
・上記車載システム100から管理センター200に送信する車両情報として、上記車両操作情報取得部110にて取得された情報の形式を変換することなく、同情報を車載システム100から管理センター200に送信することとした。これに限らず、例えば、上記車両操作情報取得部110にて取得された情報を、走行リンクや所定の距離を単位として、アクセル開度の分布を示すデータや加速度の分布を示すデータに変換するようにしてもよい。この場合には、車載システム100と管理センター200との間で授受されるデータ量を削減することが可能となる。なお、こうしたデータ変換は、例えば、車載システム100と管理センター200との間での通信制約や図3に示した各処理、運転教示に際してドライバに教示すべき情報量等に基づいて行うことが可能である。
【0173】
・上記運転履歴の確率密度を、カーネル密度推定によって推定することとした。これに限らず、例えば混合正規分布によって上記運転履歴の確率密度を推定することが可能である。この場合には、運転履歴の確率密度を求める上で、確率密度の算出に要する計算時間が短縮されるようになる。この他、運転履歴の確率密度を推定可能な手法であればよく、任意の手法を採用することが可能である。
【0174】
・上記分布算出処理のステップS100において、或る地点の運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出して同抽出した運転履歴の分布を求めることとした。これに限らず、例えば、特定の時間帯や所定の曲率を有したカーブや交差点等の交通要素、特定の車種等を単位として上記運転履歴データベース220の中から運転履歴を抽出し、同抽出した運転履歴の分布を求めるようにしてもよい。そして、この求めた運転履歴の分布に基づく上記要因特定処理を実行してもよい。
【0175】
・上記運転履歴データベース220に、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報を登録することとした。そして、上記特定された走行経路の特定の地点、特定の交通要素、特定の時間帯を単位として運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベース220から各々抽出し、各々抽出した運転履歴に関する情報を合成して上記運転教示データを生成
することとした。これに限らず、上記運転履歴データベース220に登録する運転履歴とは、一台の車両の車両操作に基づく一の運転履歴であってもよく、一の運転履歴に基づき上記運転教示を行うことも可能である。要は、或るドライバの車両操作による運転履歴に基づいてドライバに対する運転教示を行うものであれば、本発明の適用は可能である。
【0176】
・上記実施の形態では、図6に例示したように、運転履歴が2つの分布に分割されることを前提とした。これに限らず、運転履歴の分布態様は上記運転履歴データベース220に登録された運転履歴の運転レベルによって変化するものであり、運転履歴が1の分布として表現される、もしくは3以上に分割された分布として表現されることは勿論である。
【0177】
・上記運転教示に際し、上記運転レベルが相違する要因として特定された変数によって示される静的周囲状況もしくは動的周囲状況もしくは車両状態に関する情報を、該当する評価項目を改善すべき要素として上記対象とする車両のドライバの運転支援に用いることとした。これに限らず、全ての変数によって示される静的周囲状況もしくは動的周囲状況もしくは車両状態に関する情報を、該当する評価項目を改善すべき要素として上記対象とする車両のドライバの運転支援に用いるようにしてもよい。また、上記変数としては、車両操作に基づく運転履歴に包含される要素を示す情報であればよく、任意の要素を設定することが可能である。この他、或るドライバの車両操作による運転履歴に基づいてドライバに対する運転教示を行うものであれば本発明の適用は可能であり、上記変数を用いることなく上記運転教示データを生成するようにしてもよい。
【0178】
・またこの他、例えば、運転支援の対象とする車両において、同車両のドライバが上記カーナビゲーションシステム122等を通じて上記運転教示項目を選択可能な構成とし、ドライバにより選択された運転教示項目に応じた運転教示を行うようにしてもよい。また、同様に、運転支援の対象とする車両において、同車両のドライバが上記カーナビゲーションシステム122等を通じて上記評価項目を選択可能な構成とし、ドライバにより選択された評価項目における運転レベルを向上するために必要な運転教示を行うようにしてもよい。
【0179】
・上記第1の実施の形態では、上記運転教示に用いる運転履歴として、上記運転レベル毎に層別された運転履歴のうち、運転支援の対象とする車両のドライバAの次に運転レベルが高い層に属し、且つ同ドライバの運転レベルに近いドライバBの運転履歴を、上記層別された運転履歴データベース220(教示用データベース250)から抽出して同抽出した運転履歴に基づき上記運転教示データを生成することとした。これに限らず、上記運転教示に用いる運転履歴としては、運転支援の対象とする車両のドライバAが属するグループA1の次に運転レベルが高い層であるグループA2の中から抽出されたものであればよく、グループA2の中で中間に位置する運転履歴や、グループA3側に近い運転履歴を抽出することも可能である。
【0180】
・上記第1の実施の形態では、上記運転教示に用いる運転履歴として、運転支援の対象とする車両のドライバAの属する層(グループA1)の運転レベルの次に運転レベルの高い層(グループA2)に属する運転履歴に関する情報を、上記層別された運転履歴データベースから抽出することとした。これに限らず、例えば、上記運転教示に用いる運転履歴として、運転支援の対象とする車両のドライバAの属する層(グループA1)よりも運転レベルが2以上高い層(グループA3)に属する運転履歴に関する情報を上記層別された運転履歴データベースから抽出するようにしてもよい。
【0181】
・上記第1の実施の形態では、上記運転教示に用いる運転履歴として、運転支援の対象とする車両のドライバAよりも運転レベルの高い層に属する運転履歴を上記運転履歴データベース220(教示用データベース250)から抽出することとした。これに限らず、
上記運転教示に用いる運転履歴として、運転支援の対象とする車両のドライバAが属する層(グループA1)の中から、同ドライバAよりも運転レベルの高い運転履歴を抽出するようにしてもよい。またこの他、上記評価項目に反する車両操作を教示する上では、同ドライバAよりも運転レベルの低い運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出して、この抽出した運転履歴を上記運転教示に用いることも可能である。
【0182】
・上記第1の実施の形態では、上記運転履歴データベース220に、燃費、旅行時間、安全性の少なくとも1つを評価項目として評価して運転レベル毎に層別して複数種の運転履歴を登録することとした。これに限らず、例えば、上記運転履歴を単位として運転履歴毎に運転レベル1〜運転レベルNといった態様で運転レベルを適宜付与して、同運転レベルが付与された運転履歴を上記運転履歴データベース220に登録するようにしてもよい。
【0183】
・上記第1の実施の形態では、上記運転履歴を運転レベル毎に層別して上記運転履歴データベース220に登録することとしたが、運転履歴を運転レベル毎に層別することなく上記運転履歴データベース220に登録することも可能である。この場合には、運転支援の対象とするドライバの運転レベルと同ドライバに教示すべき運転履歴の運転レベルとの判定を、例えば、上記運転履歴の分布に基づき行うようにしてもよい。すなわち、この場合には、上記変数について求められた運転履歴の分布が2つの分布に分割されたとき、運転支援の対象とするドライバの運転履歴がいずれの分布に属するかによって上記運転レベルの判定が行われる。またこの他、運転履歴データベース220に登録された運転履歴のうち、上記評価項目に基づいて、例えば上位「30%」とされた運転履歴のグループを運転レベル「高」とし、下位「70%」とされた運転履歴のグループを運転レベル「低」とすることも可能である。
【0184】
・上記第1の実施の形態では、上記運転操作傾向の分類を、車両状態が停止状態から走行状態に遷移して所定時間経過後のアクセルの踏込み量に基づいて行うこととした。これに限らず、例えば、一時停止位置や交差点等において減速操作を開始するタイミングや、自車両と前方車両との車間距離等に基づいて、上記運転操作傾向を分類することも可能である。要は、ドライバ固有の癖が反映される要素であれば、運転操作傾向を分類する際の基準として採用することが可能である。
【0185】
・上記運転履歴データベース220に、運転履歴の特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類して複数種の運転履歴を登録することとした。これに限らず、運転操作傾向の別に分類することなく、複数種の運転履歴を運転履歴データベース220に登録するようにしてもよい。そして例えば、上記運転教示部により、上記運転履歴データベース220に登録された運転履歴の中からその特徴量に基づいて運転操作パターンを生成するためのクラスタリングを行うようにしてもよい。そして、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作が上記クラスタリングした運転操作パターンのいずれのパターンに近いかを判定して、当該ドライバの運転操作傾向との特徴量が類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報を抽出することも可能である。この場合には、運転教示部による運転履歴の抽出に際し、運転履歴データベースに登録された運転履歴が、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量、燃費の推移等を示す特徴量に基づいて適宜クラスタリングされる。この結果、例えば図10(a)及び(b)に示す態様で運転履歴が順次グループ化され、複数種の運転操作パターンが自動的に生成されるようになる。そのため、運転履歴データベースに登録されている運転履歴を条件付けして複数種の運転操作パターンを予め規定する必要もなく、運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを自動的に生成することが可能となる。これにより、各々の運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを柔軟に生成することが可能となり、ひいては、運転支援の対象とするドライバ固有の癖(運転操作パターン)に応じた運転履歴を的確に抽出、教示することが可能となる。なお、運転支援の対象と
する車両のドライバの運転操作傾向に近いパターンの運転履歴としては、例えば、運転支援の対象とする車両のドライバAの運転履歴の代表的な特徴点との距離が近いパターンに属する運転履歴が選択される。またこの他、例えば、或る値の特徴パラメータの値の時間変化の離散データ群について最尤判定を通じて判定することが可能である。要は、運転支援の対象とするドライバの運転操作傾向に類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出することさえできればよく、任意の手法を採用することが可能である。
【0186】
・上記運転教示に用いる運転履歴として、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を、上記運転履歴データベース220から抽出することとした。そして、この抽出した運転履歴に基づいて上記運転教示を行うこととした。これに限らず、上記運転教示に用いる運転履歴としては、或る走行経路を実際に走行した車両の運転履歴であればよく、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似しない運転操作を含んだ運転履歴であってもよい。
【0187】
・上記運転履歴データベースを、運転履歴データベース220及び教示用データベース250によって構成することとした。これに限らず、上記運転履歴データベースを1つのデータベースによって構成することとし、このデータベースに対する運転履歴の登録、同データベースからの運転履歴の抽出等を行うようにしてもよい。
【0188】
・上記運転履歴の運転レベルを評価する評価項目として、燃費、旅行時間、安全性を用いることとした。この他、例えば、スムーズな車両操作、すなわち車両操作の円滑さ等を上記運転レベルの評価項目としてもよい。要は、ドライバの運転レベルが反映される項目であれば上記評価項目として採用することは可能である。
【0189】
・上記運転履歴データベースと上記運転教示部の一部とを、上記車両情報が収集されるプローブ情報通信システムの管理センター200に設けることとした。これに限らず、例えば、上記運転履歴データベースと上記運転教示部とを、センター機能を備えた車両に搭載する構成としてもよい。そして、このセンター機能を備えた車両と運転支援の対象となる車両等との車車間通信を通じて上記車両情報の収集及び運転教示データの送受信を行うようにしてもよい。
【0190】
・上記運転教示を、上記表示装置180に対する画像出力として行うこととした。また、上記運転教示を、上記駆動系制御装置190による車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて行うこととした。これに限らず、例えば、上記運転支援の対象とする車両に音声装置を設けるとともに、この音声装置による音声案内として上記運転教示を行うようにしてもよい。またこの他、上記運転教示を、スマートフォン等の携帯機器を通じて行うことも可能である。要は、上記運転教示が出力態様とは、ドライバに運転教示を認知させることが可能なものであればよく、任意の手法、装置を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0191】
100…車載システム、110…車両操作情報取得部、111…アクセルセンサ、112…ブレーキセンサ、113…加速度センサ、114…ジャイロセンサ、115…操舵角センサ、116…車速センサ、117…エンジンECU、120…経路情報取得部、121…GPS、122…カーナビゲーションシステム、123…ヨーレートセンサ、124…ミリ波レーダー、130…データ受信部、140…車両情報処理部、141…走行経路特定部、142…計上データ生成部、142a…燃費情報算出部、142b…情報紐付部、150…無線送信部、160…無線受信部、170…運転教示データ生成部、180…表示装置、190…駆動系制御装置、200…管理センター、210…無線受信部、220…運転履歴データベース、230…運転分布算出部、240…要因特定部、250…教
示用データベース、260…類似操作情報抽出部、270…近似レベル操作情報選択部、280…無線送信部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の運転を支援する運転支援システムでは、交差点や一時停止位置、カーブ、前方車両の接近等といった車両の減速制御が必要となる交通情報を車載カメラやナビゲーションシステムにより取得している。そして、この取得された車両周辺の交通情報に基づいて、音声による減速案内や半強制的な制動力を付与することによる減速支援を行うことにより、ドライバに対する運転支援が行われる。そして通常、このような運転支援に際しては、模擬コース等の所定の走行モデルのもとで測定された一般のドライバの交通情報の認知、判断、運転操作といった各種運転行動で或る走行パターンを平均化した標準走行パターンが用いられることが多い。
【0003】
ところが、交差点や一時停止位置等に向かう車両の走行パターンは、道路のカーブの曲率、道路の幅や傾斜等の多種多様な交通要素が存在する道路環境やドライバ固有の癖や運転技量等の各種要素に応じて変化することから、こうした要素が反映されるドライバの走行パターンに上記一般化された標準走行パターンを適合させることは難しい。このため、所定の走行モデルで一般化された標準走行パターンに基づきドライバに対する運転支援を行ったとしても、必ずしもドライバの意図に沿った運転支援が行われるとは限らず、ドライバに違和感を与えることすらあった。
【0004】
そこで従来、例えば特許文献1に記載の運転支援システムでは、運転支援の対象とするドライバの運転技量を評価するとともに、この評価結果に応じた評価項目のもとにドライバによる省燃費運転が達成されているか否かを評価するようにしている。具体的には、支援対象とする車両のエンジンの回転数及び車速及び燃料流量等の走行データを検出、解析することにより、支援対象とするドライバの省燃費運転の習熟度を評価している。そして、この評価結果に基づいてドライバが省燃費運転の習熟者もしくは初心者であるか否かが判定され、この判定結果に応じた省燃費運転評価が行われる。こうして、ドライバの運転技量に応じた省燃費運転評価が行われることにより、習熟者には厳格な省燃費運転評価が課される一方、初心者には寛容な省燃費運転評価が課されるようになる。そして、この運転支援システムでは、こうした評価結果に応じた運転支援がドライバに提供されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−144684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記運転支援システムにより運転支援の対象とするドライバの運転技量を評価し、運転技量に応じた評価を行ったとしても、結局のところ、こうした評価結果に基づき提供される運転支援とはあくまで、上記走行モデルで一様に生成された標準の走行パターンに基づいたものでしかない。すなわち、多種多様な交通要素が存在する実際の走行環境、例えば燃費を考慮した緩やかな加速運転を行うことが困難な経路や燃費を考慮した運転を運転技量に拘らず容易に行うことができる経路等であっても、ドライバにはこうした走行環境が反映されていない減速案内等の運転支援が行われることとなる。また、実際の走行環境に即した走行パターンを生成すべく模擬コースのパターンを増やしたとしても、
実際の走行環境に存在する多種多様な交通要素を全て考慮することは困難であり、実際の走行環境に即した運転支援を実現するには至っていない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、走行環境に即した実現性の高い運転支援を容易に実現することのできる運転支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、車両の運転を支援する運転支援システムにおいて、車両操作に関する情報を含んだ車両情報が該当する経路情報に関連付けされて運転履歴として登録される運転履歴データベースと、運転支援の対象とする車両の走行経路を特定するとともに、該特定した走行経路に対応する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を運転支援のためのガイドとして前記運転支援の対象とする車両のドライバに教示する運転教示部とを備えることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、運転履歴データベースには、或る走行経路での速度や加速度、減速度、ステアリング操作、燃料情報等をはじめとする車両情報に、その車両情報に対応する経路情報が関連付けられた情報が登録される。すなわち、運転履歴データベースには、多種多様な交通要素が存在する道路を、或るドライバの車両操作のもとに実際に走行した車両の運転履歴、換言すれば、多種多様な交通要素を考慮して行われた車両操作などの走行データを含んだ情報が登録される。そして、ドライバに対する運転支援に際しては、同ドライバが走行しようとする走行経路に対応する走行経路での運転履歴として、例えば同ドライバが走行しようとする走行経路と同一の走行経路や類似する走行経路における運転履歴が上記運転履歴データベースから抽出される。その後、この抽出された運転履歴に関する情報が、運転支援のためのガイドとして運転支援の対象とするドライバに教示される。そのため、運転支援の対象とする車両のドライバには、自らが走行する走行経路や同走行経路に類似する走行経路で実際に行われた車両操作に基づいた実現性の高い運転支援が行われることとなる。また、こうした運転支援に用いられる情報とは、各々の走行経路を走行したドライバの運転履歴であることから、上述した模擬コースを用いることなく各々のドライバの運転履歴の登録として生成することが可能であり、運転支援の対象とするドライバに教示すべき走行モデルを容易に生成することが可能となる。これにより、多種多様な交通要素が反映された実際の走行環境に即した実現性の高い運転支援を容易に実現することができるようになる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示することを要旨とする。
【0011】
車両の走行パターン、すなわちドライバの運転操作傾向とは、ドライバ固有の癖によって相違することから、運転支援の対象とするドライバの意図に即した運転を教示する上では、ドライバ固有の癖を考慮した運転支援を行うことが望ましい。そこで、上記構成によるように、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出し、この抽出した運転履歴に関する情報を同ドライバに教示することとすれば、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の癖に類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報がドライバに教示されるようになる。これにより、運転支援の対象とするドライバの各々に固有の癖に応じた運転教示が行われるようになり、ドライバの意図に即した的確な運転支援が実現されるようになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の運転支援システムにおいて、前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転履歴は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価されて運転レベルが判定されるものであり、前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記運転履歴の確率密度を前記評価項目毎に推定して前記運転履歴の分布を求めるとともに、該求めた運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両のドライバの運転支援に用いることを要旨とする。
【0013】
通常、上記評価項目としての或る走行経路における燃費、旅行時間、車両操作の安全性とは、道路勾配、道路線形等の静的周囲状況、及び自車両の前方車両や後方車両との車間距離、渋滞状況等の動的周囲状況等の走行環境パラメータといった要因によって変化する。また、こうした評価項目は、ステアリングやアクセル開度、車速度、加速度等の走行状態をはじめとする車両状態等の車両パラメータといった様々な要因によっても変化する。そして、上記評価項目に与える影響の大きさも、こうした要因毎に相違する。すなわち、或るドライバにおいては、例えば或る走行経路での燃費が低く(悪く)なる主要因として、上記変数としてのカーブ(道路線形)における運転技量が低いことが挙げられる。このため、このドライバに対しては、カーブにおける運転技量を高めることが、燃費を効果的に改善することに繋がる。一方、他のドライバにおいては、例えば安全性の高い車両操作を行えない主要因として、道路勾配でのアクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量が過剰であることが挙げられる。そして、このドライバに対しては、上記変数としての道路勾配におけるアクセルペダル及びブレーキペダルの踏込み量を改善することが、安全性の高い車両操作の実現に繋がる。
【0014】
そこで、上記構成ではまず、上記変数の各々について推定された確率密度に基づき運転履歴の分布をそれぞれ評価項目毎に求めるとともに、この求めた運転履歴の分布のうちで運転レベルが高いグループの分布と運転レベルが低いグループの分布との乖離が大きくなる変数を特定する。そして、例えば、燃費を評価項目としたときにおいて、車両の走行速度を変数「X1」、車両の加速度を変数「X2」として、運転履歴の確率密度をそれぞれ推定して運転履歴の分布を求める。この結果、変数「X2」についての運転履歴の方が変数「X1」についての運転履歴よりも、運転レベルの高いグループの分布と低いグループの分布との乖離が大きいときには、変数「X2」、すなわち加速度の方が走行速度よりも燃費に与える影響が大きく、各々のドライバの運転レベルの相違する主要因として特定される。そして、例えば、この特定された加速度に関する情報を燃費の改善に必要な主要素として、加速度を変数としたときの運転レベルの高いグループの運転履歴の中から加速度に関する情報を抽出する。こうして、この抽出した情報を、運転支援の対象とする車両のドライバに教示する。これにより、各々のドライバの運転レベルが相違する主要因、換言すれば、運転レベルを改善すべき主要素に基づいた運転支援をドライバに行うことができるようになり、ドライバの運転レベルを効果的に改善させることが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、前記変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する要素が共通する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示することを要旨とする。
【0016】
例えば、上記車両の平均速度が「50km/h」未満であることを示す変数が「Z1」であり、平均速度が「50km/h」以上であることを示す変数が「Z2」であり、曲率が所定数以上のカーブを示す変数が「A」であったとする。そして、この場合には、こうした変数が共通する運転履歴とは、変数によって示される様々な要素が共通した運転履歴、すなわち、走行環境や運転操作傾向が類似する運転履歴である可能性が高い。そこで、上記構成によれば、上記変数が共通するか否かの判定を通じて、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を抽出することが可能となる。これにより、ドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を、同運転履歴に含まれる様々な要素を用いて上記運転履歴データベースから抽出することが可能となる。また、これにより、共通する変数の有無といったより簡易な処理のもとに、ドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出することが可能となり、上記運転教示にかかる円滑化が図られるようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の単位時間当りの変化量が少ない運転履歴ほど運転レベルが高いものとして判定するものであり、当該判定結果に基づき前記運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0018】
例えば、上記変数としての自車両と前方車両との車間距離や、カーブでのヨーレートの単位時間あたりの変化量が小さい場合には、車両の挙動が小さく、円滑な車両操作が行われている、すなわち運転レベルが高いと判定することが可能である。そこで、上記構成によるように、上記変数の変化量に基づいて運転レベルを判定し、この判定結果に基づき運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を運転履歴データベースから抽出して同抽出した運転履歴に基づく運転教示を行うこととすれば、同ドライバよりも円滑な車両操作を含んだ運転履歴に基づく運転教示を行うことが可能となる。
【0019】
また、この発明は、上記請求項2、4の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバよりも運転レベルが高い運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバよりも運転レベルが高い運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記判定された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、ドライバに教示すべき運転履歴として、同ドライバに運転レベルが近似する運転履歴に関する情報が上記運転履歴データベースから抽出される。これにより、ドライバの運転レベルに近似する運転履歴に基づく運転支援が可能となり、こうした運転支援を通じてドライバの運転レベルの段階的な向上が図られるようになる。
【0022】
また、この発明も、上記請求項2、4の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴がその特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類されて登録されるものであり、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向を特定するとともに、該特定した運転操作傾向との特徴量が類似する運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0024】
例えば、車両の状態が停止状態から走行状態に遷移したときには、停止状態から走行状態に遷移して所定時間経過後のアクセルの踏込み量は、「5%」、「10%」、「15%」といったようにドライバ固有の癖によって変化する傾向にあり、こうした癖はその他の車両操作にも反映されることが多い。すなわち、ドライバの運転操作傾向とは、所定の条件に基づき分類することが可能である。そこで、上記構成では、各々のドライバの運転履歴をドライバの運転操作傾向毎に予め分類して上記運転履歴データベースに登録するとともに、運転支援の対象とするドライバの運転操作傾向がいずれのパターンに該当するかを特定して該特定された運転操作傾向に類似する運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出する。これにより、運転支援の対象とするドライバ固有の癖に類似する運転操作傾向を容易に抽出することが可能となり、ドライバ固有の癖に応じた運転支援をより容易に実現することが可能となる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項2に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転履歴データベースに登録された運転履歴の中からその特徴量に基づいて運転操作パターンを生成するためのクラスタリングを行うとともに、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作が前記クラスタリングした運転操作パターンのいずれのパターンに近いかを判定して、当該ドライバの運転操作傾向との特徴量が類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報を抽出することを要旨とする。
【0026】
上記構成によれば、運転教示部による運転履歴の抽出に際し、運転履歴データベースに登録された運転履歴が、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量、燃費の推移等を示す特徴量に基づいて適宜クラスタリングされる。このため、運転履歴データベースに登録されている各運転履歴の特徴量に応じて、複数種の運転操作パターンが自動的に生成されるようになる。そのため、運転履歴データベースに登録されている運転履歴を条件付けして複数種の運転操作パターンを規定する必要もなく、運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを自動的に生成することが可能となる。これにより、各々の運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを柔軟に生成することが可能となり、ひいては、運転支援の対象とするドライバ固有の癖(運転操作パターン)に応じた運転履歴を的確に抽出、教示することが可能となる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項1または2または7または8のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴が、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価される運転レベル毎に層別されて登録されるものであり、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルを前記評価項目の少なくとも1つに基づき判定するとともに、該判定した運転レベルよりもレベルの高い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0028】
ドライバの運転技量、すなわち運転レベルとは様々であり、運転レベルが高いドライバに標準の運転レベルの運転教示を行ったとしてもその有効性は低い。また、ドライバの運転レベルとは通常、或る走行経路での燃費や旅行時間、急減速や急加速の有無等の車両操作の安全性に大きく反映され、それらの要素を評価項目としてドライバの運転レベルを評
価することが可能である。そこで、上記構成によるように、複数種の運転履歴を上記評価項目に基づき運転レベル毎に層別して上記運転履歴データベースに登録するとともに、この層別されて登録された運転履歴の中から運転支援の対象とするドライバよりも運転レベルの高い運転履歴を抽出することとすれば、ドライバにはその運転レベルに拘らず自己の運転レベルよりも高い運転履歴に関する情報が教示されることとなる。これにより、ドライバの運転レベルが低い場合であれ、高い場合であれ、上記評価項目を向上させることのできる運転教示を通じて、有効性の高い運転支援が実現されるようになる。
【0029】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記判定した運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0030】
初心者のドライバ等、運転レベルが低いドライバに対して高度な運転操作が要求される運転教示を行ったとしても、その実現は困難であり運転支援としての有効性は低い。そこで、上記構成によるように、ドライバに教示すべき運転履歴に関する情報として、運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベースから抽出することとすれば、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルの次に高い運転レベルの運転履歴に関する情報が教示されることとなる。これにより、運転支援の対象とするドライバの運転レベルに拘らず、その運転レベルに応じて同運転レベルを高めることを可能な運転支援が無理なく行われるようになる。
【0031】
また、この発明は、上記請求項2、7、8の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバの運転レベルの次に高い運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0032】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記層別された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0033】
上記構成によれば、ドライバに教示すべき運転履歴として、同ドライバが属する運転レベルの層よりも高い運転レベルの運転履歴のうちで同ドライバの運転レベルに最も近い運転履歴に関する情報が、上記運転履歴データベースから抽出される。これにより、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルの次に運転レベルが高く、且つ、同ドライバの運転レベルに最も近い運転履歴に関する情報に基づく運転支援が行われる。これにより、ドライバの運転レベルにより近い運転レベルに基づく運転支援が可能となり、運転支援を通じた運転レベルの段階的な向上が図られるようになる。
【0034】
また、この発明も、上記請求項2、7、8の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0035】
請求項12に記載の発明は、請求項7〜11のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の
動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転履歴は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価されて運転レベルが判定されるものであり、前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記運転履歴の確率密度を前記評価項目毎に推定して前記運転履歴の分布を求めるとともに、該求めた運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両のドライバの運転支援に用いることを要旨とする。
【0036】
通常、上記評価項目としての或る走行経路における燃費、旅行時間、車両操作の安全性とは、道路勾配、道路線形等の静的周囲状況、及び自車両の前方車両や後方車両との車間距離、渋滞状況等の動的周囲状況等の走行環境パラメータといった要因によって変化する。また、こうした評価項目は、ステアリングやアクセル開度、車速度、加速度等の走行状態をはじめとする車両状態等の車両パラメータといった様々な要因によっても変化する。そして、上記評価項目に与える影響の大きさも、こうした要因毎に相違する。すなわち、或るドライバにおいては、例えば或る走行経路での燃費が低く(悪く)なる主要因として、上記変数としてのカーブ(道路線形)における運転技量が低いことが挙げられる。このため、このドライバに対しては、カーブにおける運転技量を高めることが、燃費を効果的に改善することに繋がる。一方、他のドライバにおいては、例えば安全性の高い車両操作を行えない主要因として、道路勾配でのアクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量が過剰であることが挙げられる。そして、このドライバに対しては、上記変数としての道路勾配におけるアクセルペダル及びブレーキペダルの踏込み量を改善することが、安全性の高い車両操作の実現に繋がる。
【0037】
そこで、上記構成ではまず、上記変数の各々について推定された確率密度に基づき運転履歴の分布をそれぞれ評価項目毎に求めるとともに、この求めた運転履歴の分布のうちで運転レベルが高いグループの分布と運転レベルが低いグループの分布との乖離が大きくなる変数を特定する。そして、例えば、燃費を評価項目としたときにおいて、車両の走行速度を変数「X1」、車両の加速度を変数「X2」として、運転履歴の確率密度をそれぞれ推定して運転履歴の分布を求める。この結果、変数「X2」についての運転履歴の方が変数「X1」についての運転履歴よりも、運転レベルの高いグループの分布と低いグループの分布との乖離が大きいときには、変数「X2」、すなわち加速度の方が走行速度よりも燃費に与える影響が大きく、各々のドライバの運転レベルの相違する主要因として特定される。そして、例えば、この特定された加速度に関する情報を燃費の改善に必要な主要素として、加速度を変数としたときの運転レベルの高いグループの運転履歴の中から加速度に関する情報を抽出する。こうして、この抽出した情報を、運転支援の対象とする車両のドライバに教示する。これにより、各々のドライバの運転レベルが相違する主要因、換言すれば、運転レベルを改善すべき主要素に基づいた運転支援をドライバに行うことができるようになり、ドライバの運転レベルを効果的に改善させることが可能となる。
【0038】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報が登録されるものであり、前記運転教示部は、前記特定した走行経路の特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として前記運転履歴に関する情報を各々抽出し、各々抽出した運転履歴に関する情報を合成してドライバに教示することを要旨とする。
【0039】
例えば、各々のドライバの運転レベルとは、カーブでの運転レベルが高いドライバや、道路勾配での運転レベルが高いドライバ等、要素毎にドライバ固有の運転レベルも相違する。そこで、上記構成では、或る走行経路での一時停止位置、交差点等の交通要素や曲率半径の大きい特定のカーブ、渋滞の頻度の高い時間帯等の各要素を単位として、それら各種要素毎にドライバに対して運転教示すべき運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベースから抽出する。そして、或る走行経路での運転支援として、上記運転履歴データベースから抽出された走行履歴に関する情報が組み合わされ、合成された運転履歴に関する情報に基づく運転教示がドライバに対して行われる。これにより、複数種の運転履歴を有効に活用してそれら運転履歴に基づく運転支援を行うことが可能となる。
【0040】
また、この発明は、特に請求項2、4〜11に記載の発明に適用して特に有効であり、この場合には、ドライバの運転レベルや固有の癖に応じた運転履歴に関する情報が適宜合成されて上記運転履歴データベースから抽出されてドライバに教示されることとなる。これにより、ドライバの運転レベルや固有の癖により近い走行モデルに基づいた運転支援が可能となる。
【0041】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転支援の対象となる車両は、前記運転教示部により抽出される運転履歴を表示する表示装置を備え、前記運転支援の教示を前記表示装置に対する画像出力として行うことを要旨とする。
【0042】
上記構成によれば、例えばカーナビゲーションシステムを構成する表示画面に対するテキスト案内やレーダーチャートによる案内として、運転履歴に基づく運転教示が行われる。これにより、既存のカーナビゲーションシステム等の表示装置を用いて、視覚を通じた運転教示を行うことができるようになる。
【0043】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて前記運転支援の教示を行うことを要旨とする。
【0044】
上記構成によるように、上記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて上記運転支援の教示を行うこととすれば、ドライバに対する運転教示が自動運転や半強制的な制動力の付与を通じて行われる。これにより、体感を通じた運転教示を行うことが可能となる。
【0045】
請求項16に記載の発明は、請求項1〜15のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベース及び前記運転教示部は、前記車両情報が収集されるプローブ情報通信システムの管理センターに設けられ、前記管理センターは、前記運転支援の対象とする車両からの要求に応じてドライバに教示すべき運転履歴に関する情報を該当する車両に配信することを要旨とする。
【0046】
上記構成によれば、車両情報が上記管理センターに適宜収集される。このため、様々なドライバの車両操作が反映された車両情報を容易に収集させることができるようになるとともに、こうした車両情報を管理センターで一括して管理することが可能となる。
【0047】
また、本発明は、請求項2、4〜11、13にかかる発明に適用して特に有効であり、この場合には、その相乗効果として、ドライバに教示すべき運転履歴に関する情報の選定範囲が拡大されるようになる。このため、上記管理センターに収集される大量の運転履歴のなかから運転支援対象とするドライバの癖や運転レベルにより近い運転履歴に関する情報を選択、教示することが可能となる。これにより、ドライバに対する運転支援を上記運
転履歴に関する情報に基づき行う上で、よりドライバの意図に沿った運転支援を実現することが可能となる。
【0048】
請求項17に記載の発明は、車両の運転を支援する運転支援システムにおいて、複数種の車両操作に関する情報を含んだ車両情報の履歴である運転履歴が登録された運転履歴データベースと、運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルを、該ドライバの運転履歴に含んだ単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つを評価項目として判定するとともに、該判定した評価項目に基づく運転レベルよりも運転レベルの高い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を運転支援のためのガイドとして前記運転支援の対象とする車両のドライバに教示する運転教示部とを備えることを要旨とする。
【0049】
上記構成によれば、運転履歴データベースには、或る走行経路での速度や加速度、減速度、ステアリング操作、燃料情報等をはじめとする車両情報に、その車両情報に対応する経路情報が関連付けられた情報が登録される。すなわち、運転履歴データベースには、多種多様な交通要素が存在する道路を、或るドライバの車両操作のもとに実際に走行した車両の運転履歴、換言すれば、多種多様な交通要素を考慮して行われた車両操作などの走行データを含んだ情報が登録される。
【0050】
そして、ドライバに対する運転支援に際してはまず、運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルが、燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つを評価項目として判定される。すなわち、ドライバの運転技量、換言すれば、ドライバの運転レベルとは様々であり、運転レベルが高いドライバに標準の運転レベルの運転教示を行ったとしてもその有効性は低い。また、ドライバの運転レベルとは通常、燃費、旅行時間、急減速や急加速の有無等の車両操作の安全性に大きく反映され、それらの要素を評価項目としてドライバの運転レベルを評価することが可能である。そこで、上記構成では、運転支援に先立ち運転支援の対象とするドライバの運転レベルが、燃費の高低、或る走行経路における旅行時間の長短、さらには急加速や急減速等のない安全性の高い車両操作が行われたか否か等を指標として多観点から判定される。そして、この判定結果に基づき、同判定に用いられた評価項目に基づく運転レベルよりも運転レベルの高い運転履歴に関する情報が上記運転履歴データベースから抽出され、この抽出された運転履歴に関する情報が運転支援の対象とするドライバに運転支援のためのガイドとして教示される。また、こうした複数の評価項目を用いてドライバの運転レベルを特定し、同特定した運転レベルに沿った行うことにより、ドライバの習熟度といった1つの指標に限られることなくドライバの運転レベルを多観点から評価することが可能となる。そのため、運転支援の対象とする車両のドライバには、各評価項目に基づき自己の運転レベルとの対比のもとに抽出された運転履歴に関する情報が教示されることとなる。すなわち、目標とすべき走行モデルが運転支援の対象とする車両の運転レベルに応じて提供されることとなる。これにより、ドライバの運転レベルを多観点から評価した評価結果に基づく運転支援が実現可能となる。
【0051】
また、上記構成によれば、運転支援の対象とする車両のドライバには、自らが走行する走行経路や同走行経路に類似する走行経路で実際に行われた車両操作に基づく実現性の高い運転支援が行われることとなる。さらに、こうした運転支援に用いられる情報とは、各々の走行経路を走行したドライバの運転履歴であることから、上述した模擬コースを用いることなく各々のドライバの運転履歴の登録として生成することが可能であり、運転支援の対象とするドライバに教示すべき走行モデルを容易に生成することが可能となる。これにより、多種多様な交通要素が反映された実際の走行環境に即した実現性の高い運転支援を容易に実現することができるようになる。
【0052】
請求項18に記載の発明は、請求項17に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示することを要旨とする。
【0053】
車両の走行パターン、すなわちドライバの運転操作傾向とは、ドライバ固有の癖によって相違することから、運転支援の対象とするドライバの意図に即した運転を教示する上では、ドライバ固有の癖を考慮した運転支援を行うことが望ましい。そこで、上記構成によるように、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出し、この抽出した運転履歴に関する情報を同ドライバに教示することとすれば、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の癖に類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報がドライバに教示されるようになる。これにより、運転支援の対象とするドライバの各々に固有の癖に応じた運転教示が行われるようになり、ドライバの意図に即した的確な運転支援が実現されるようになる。
【0054】
請求項19に記載の発明は、請求項18に記載の運転支援システムにおいて、前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記評価項目に基づき分類した運転履歴の確率密度からその分布を推定するとともに、該推定した運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両の運転支援に用いることを要旨とする。
【0055】
通常、上記評価項目としての或る走行経路における燃費、旅行時間、車両操作の安全性とは、道路勾配、道路線形等の静的周囲状況、及び自車両の前方車両や後方車両との車間距離、渋滞状況等の動的周囲状況等の走行環境パラメータといった要因によって変化する。また、こうした評価項目は、ステアリングやアクセル開度、車速度、加速度等の走行状態をはじめとする車両状態等の車両パラメータといった様々な要因によっても変化する。そして、上記評価項目に与える影響の大きさも、こうした要因毎に相違する。すなわち、あるドライバにおいては、例えば或る走行経路での燃費が低く(悪く)なる主要因として、上記変数としてのカーブ(道路線形)における運転技量が低いことが挙げられる。このため、このドライバに対しては、カーブにおける運転技量を高めることが、燃費を効果的に改善することに繋がる。一方、他のドライバにおいては、例えば安全性の高い車両操作を行えない主要因として、道路勾配でのアクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量が過剰であることが挙げられる。そして、このドライバに対しては、上記変数としての道路勾配におけるアクセルペダル及びブレーキペダルの踏込み量を改善することが、安全性の高い車両操作の実現に繋がる。
【0056】
そこで、上記構成ではまず、上記変数の各々について推定された確率密度に基づき運転履歴の分布をそれぞれ評価項目毎に求めるとともに、この求めた運転履歴の分布のうちで運転レベルが高いグループの分布と運転レベルが低いグループの分布との乖離が大きくなる変数を特定する。そして、例えば、燃費を評価項目としたときにおいて、走行速度を変数「X1」、車両の加速度を変数「X2」として、運転履歴の確率密度をそれぞれ推定して運転履歴の分布を求める。この結果、変数「X2」についての運転履歴の方が変数「X1」についての運転履歴よりも、運転レベルの高いグループの分布と低いグループの分布との乖離が大きいときには、変数「X2」、すなわち加速度の方が車両の走行速度よりも燃費に与える影響が大きく、各々のドライバの運転レベルの相違する主要因として特定さ
れる。そして、例えば、この特定された加速度に関する情報を燃費の改善に必要な主要素として、加速度を変数としたときの運転レベルの高いグループの運転履歴の中から加速度に関する情報を抽出する。こうして、この抽出した情報を、運転支援の対象とする車両のドライバに教示する。これにより、各々のドライバの運転レベルが相違する主要因、換言すれば、運転レベルを改善すべき主要素に基づいた運転支援をドライバに行うことができるようになり、ドライバの運転レベルを効果的に改善させることが可能となる。
【0057】
請求項20に記載の発明は、請求項19に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、前記変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する要素が共通する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示することを要旨とする。
【0058】
例えば、上記車両の平均速度が「50km/h」未満であることを示す変数が「Z1」であり、平均速度が「50km/h」以上であることを示す変数が「Z2」であり、曲率が所定数以上のカーブを示す変数が「A」であったとする。そして、この場合には、こうした変数が共通する運転履歴とは、変数によって示される様々な要素が共通した運転履歴、すなわち、走行環境や運転操作傾向が類似する運転履歴である可能性が高い。そこで、上記構成によれば、上記変数が共通するか否かの判定を通じて、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を抽出することが可能となる。これにより、ドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を、同運転履歴に含まれる様々な要素を用いて上記運転履歴データベースから抽出することが可能となる。また、これにより、共通する変数の有無といったより簡易な処理のもとに、ドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出することが可能となり、上記運転教示にかかる円滑化が図られるようになる。
【0059】
請求項21に記載の発明は、請求項19または20に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の単位時間当りの変化量が少ない運転履歴ほど運転レベルが高いものとして判定するものであり、当該判定結果に基づき前記運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0060】
例えば、上記変数としての自車両と前方車両との距離や、カーブでのヨーレートの単位時間あたりの変化量が小さい場合には、車両の挙動が小さく、円滑な車両操作が行われているために運転レベルが高いと判定することが可能である。そこで、上記構成によるように、上記変数の変化量に基づいて運転レベルを判定し、この判定結果に基づき運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を運転履歴データベースから抽出して同抽出した運転履歴に基づく運転教示を行うこととすれば、同ドライバよりも円滑な車両操作を含んだ運転履歴に基づく運転教示を行うことが可能となる。
【0061】
また、この発明は、上記請求項18、20の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバよりも運転レベルが高い運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバよりも運転レベルが高い運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0062】
請求項22に記載の発明は、請求項21に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記判定された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出することを
要旨とする。
【0063】
上記構成によれば、ドライバに教示すべき運転履歴として、同ドライバに運転レベルが近似する運転履歴に関する情報が上記運転履歴データベースから抽出される。これにより、ドライバの運転レベルに近似する運転履歴に基づく運転支援が可能となり、こうした運転支援を通じてドライバの運転レベルの段階的な向上が図られるようになる。
【0064】
また、この発明も、上記請求項18、20の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0065】
請求項23に記載の発明は、請求項18に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴がその特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類されて登録されるものであり、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向を特定するとともに、該特定した運転操作傾向との特徴量が類似する運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0066】
例えば、車両の状態が停止状態から走行状態に遷移したときには、停止状態から走行状態に遷移して所定時間経過後のアクセルの踏込み量は、「5%」、「10%」、「15%」といったようにドライバ固有の癖によって変化する傾向にあり、こうした癖はその他の車両操作にも反映されることが多い。すなわち、ドライバの運転操作傾向とは、所定の条件に基づき分類することが可能である。そこで、上記構成では、各々のドライバの運転履歴をドライバの運転操作傾向毎に予め分類して上記運転履歴データベースに登録するとともに、運転支援の対象とするドライバの運転操作傾向がいずれのパターンに該当するかを特定して該特定された運転操作傾向に類似する運転履歴を上記運転履歴データベースから抽出する。これにより、運転支援の対象とするドライバ固有の癖に類似する運転操作傾向を容易に抽出することが可能となり、ドライバ固有の癖に応じた運転支援をより容易に実現することが可能となる。
【0067】
請求項24に記載の発明は、請求項18に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転履歴データベースに登録された運転履歴の中からその特徴量に基づいて運転操作パターンを生成するためのクラスタリングを行うとともに、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転支援が前記クラスタリングした運転操作パターンのいずれのパターンに近いかを判定して、当該ドライバの類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報を抽出することを要旨とする。
【0068】
上記構成によれば、運転教示部による運転履歴の抽出に際し、運転履歴データベースに登録された運転履歴が、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量、燃費の推移等を示す特徴量に基づいて適宜クラスタリングされる。このため、運転履歴データベースに登録されている各運転履歴の特徴量に応じて、複数種の運転操作パターンが自動的に生成されるようになる。そのため、運転履歴データベースに登録されている運転履歴を条件付けして複数種の運転操作パターンを規定する必要もなく、運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを自動的に生成することが可能となる。これにより、各々の運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを柔軟に生成することが可能となり、ひいては、運転支援の対象とするドライバ固有の癖(運転操作パターン)に応じた運転履歴を的確に抽出、教示することが可能となる。
【0069】
請求項25に記載の発明は、請求項17または18または23または24のいずれか一
項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴が、前記評価項目のうちの少なくとも1つに基づき評価された運転レベル毎に層別されて登録されるものであり、前記運転教示部は、前記運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0070】
上記構成によるように、複数種の運転履歴を上記評価項目に基づき運転レベル毎に予め層別して上記運転履歴データベースに登録することとすれば、運転支援の対象とするドライバが属する運転レベルを容易に判定することができるようになるともに、この判定された運転レベルよりも運転レベルの高い運転履歴を容易に抽出することができるようになる。
【0071】
請求項26に記載の発明は、請求項25に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記判定した運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0072】
初心者のドライバ等、運転レベルが低いドライバに対して高度な運転操作が要求される運転教示を行ったとしても、その実現は困難であり運転支援としての有効性は低い。そこで、上記構成によるように、ドライバに教示すべき運転履歴に関する情報として、運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベースから抽出することとすれば、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルの次に高い運転レベルの運転履歴に関する情報が教示されることとなる。これにより、運転支援の対象とするドライバの運転レベルに拘らず、その運転レベルに応じて同運転レベルを高めることを可能な運転支援が無理なく行われるようになる。
【0073】
また、この発明は、上記請求項18、23、24の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライバの運転レベルの次に高い運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0074】
請求項27に記載の発明は、請求項26に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記層別された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出することを要旨とする。
【0075】
上記構成によれば、ドライバに教示すべき運転履歴として、同ドライバが属する運転レベルの層よりも高い運転レベルの運転履歴のうちで同ドライバの運転レベルに最も近い運転履歴に関する情報が、上記運転履歴データベースから抽出される。このため、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルの次に運転レベルが高く、且つ、同ドライバの運転レベルに最も近い運転履歴に関する情報に基づく運転支援が行われる。これにより、ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転支援が可能となり、こうした運転支援を通じてドライバの運転レベルの段階的な向上が図られるようになる。
【0076】
また、この発明も、上記請求項18、23、24の発明に適用して特に有効であり、この場合には、運転支援の対象とする車両のドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に関する情報がドライバに教示される。これにより、ドライバには、自己の運転操作傾向に類似していながら同ドライ
バの運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転支援が行われるようになる。
【0077】
請求項28に記載の発明は、請求項23〜27のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記評価項目に基づき分類した運転履歴の確率密度からその分布を推定するとともに、該推定した運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両の運転支援に用いることを要旨とする。
【0078】
通常、上記評価項目としての或る走行経路における燃費、旅行時間、車両操作の安全性とは、道路勾配、道路線形等の静的周囲状況、及び自車両の前方車両や後方車両との車間距離、渋滞状況等の動的周囲状況等の走行環境パラメータや、ステアリングやアクセル開度、車速度、加速度等の走行状態をはじめとする車両状態等の車両パラメータといった様々な要因によって変化する。また、上記評価項目に与える影響の大きさも、こうした要因毎に相違する。すなわち、或るドライバにおいては、例えば或る走行経路での燃費が低く(悪く)なる主要因として、上記変数としてのカーブ(道路線形)における運転技量が低いことが挙げられる。このため、このドライバに対しては、カーブにおける運転技量を高めることが燃費を効果的に改善することに繋がる。一方、他のドライバにおいては、例えば安全性の高い車両操作を行えない主要因として、道路勾配でのアクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量が過剰であることが挙げられる。そして、このドライバに対しては、上記変数としての道路勾配におけるアクセルペダル及びブレーキペダルの踏込み量を改善することが安全性の高い車両操作の実現に繋がる。
【0079】
そこで、上記構成ではまず、上記変数の各々について推定された確率密度に基づき運転履歴の分布をそれぞれ評価項目毎に求めるとともに、この求めた運転履歴の分布のうちで運転レベルが高いグループの分布と運転レベルが低いグループの分布との乖離が大きくなる変数を特定する。そして、例えば、評価項目を燃費としたときにおいて、車両の走行速度を変数「X1」、車両の加速度を変数「X2」として、それぞれ運転履歴の確率密度を推定して運転履歴の分布を求める。この結果、変数「X2」についての運転履歴の方が変数「X1」についての運転履歴よりも、運転レベルの高いグループの分布と低いグループの分布との乖離が大きいときには、変数「X2」、すなわち車両の加速度の方が走行速度よりも燃費に与える影響が大きく、各々のドライバの運転レベルの相違する主要因として特定される。そして、この特定された車両の加速度に関する情報を、燃費を改善すべき要素として、例えば加速度を変数としたときの運転レベルの高いグループの運転履歴の中から加速度に関する情報を抽出する。こうして、この抽出した情報を、運転支援の対象とする車両のドライバに教示する。これにより、各々のドライバの運転レベルが相違する主要因、換言すれば、運転レベルを改善すべき主要素に基づいた運転支援をドライバに行うことができるようになり、ドライバの運転レベルを効果的に改善させることが可能となる。
【0080】
請求項29に記載の発明は、請求項17〜28のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベースは、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報が登録されるものであり、前記運転教示部は、前記車両の走行経路の特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として前記運転履歴に関する情報を各々抽出し、各々抽出した運転履歴に関する情報を合成してドライバに教示することを要旨とする。
【0081】
例えば、各々のドライバの運転レベルとは、カーブでの運転レベルが高いドライバや道路勾配での運転レベルが高いドライバ等、要素毎にドライバ固有の運転レベルも相違する。そこで、上記構成では、或る走行経路での一時停止位置、交差点等の交通要素や曲率半径の大きい特定のカーブ、渋滞の頻度の高い時間帯等の各要素を単位として、それら各種要素毎にドライバに対して運転教示すべき運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベースから抽出する。そして、或る走行経路での運転支援として、上記運転履歴データベースから抽出された走行履歴に関する情報が組み合わされ、合成された運転履歴に関する情報に基づく運転教示がドライバに対して行われる。これにより、複数種の運転履歴を有効に活用してそれら運転履歴に基づく運転支援を行うことが可能となる。
【0082】
また、この発明は、特に請求項18、20〜27に記載の発明に適用して特に有効であり、この場合には、ドライバの運転レベルや固有の癖に応じた運転履歴に関する情報が適宜合成されて上記運転履歴データベースから抽出されてドライバに教示されることとなる。これにより、ドライバの運転レベルや固有の癖により近い走行モデルに基づいた運転支援が可能となる。
【0083】
請求項30に記載の発明は、請求項17〜29のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転支援の対象となる車両は、前記運転教示部により抽出される運転履歴を表示する表示装置を備え、前記運転支援の教示を前記表示装置に対する画像出力として行うことを要旨とする。
【0084】
上記構成によれば、例えばカーナビゲーションシステムを構成する表示画面に対するテキスト案内やレーダーチャートによる案内として、運転履歴に基づく運転教示が行われる。これにより、既存のカーナビゲーションシステム等の表示装置を用いて、視覚を通じた運転教示を行うことができるようになる。
【0085】
請求項31に記載の発明は、請求項17〜30のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて前記運転支援の教示を行うことを要旨とする。
【0086】
上記構成によるように、上記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて上記運転支援の教示を行うこととすれば、ドライバに対する運転教示が自動運転や半強制的な制動力の付与を通じて行われる。これにより、体感を通じた運転教示を行うことが可能となる。
【0087】
請求項32に記載の発明は、請求項17〜31のいずれか一項に記載の運転支援システムにおいて、前記運転履歴データベース及び前記運転教示部は、前記車両情報が収集されるプローブ情報通信システムの管理センターに設けられ、前記管理センターは、前記運転支援の対象とする車両からの要求に応じてドライバに教示すべき運転履歴に関する情報を該当する車両に配信することを要旨とする。
【0088】
上記構成によれば、車両情報が上記管理センターに適宜収集される。このため、様々なドライバの車両操作が反映された車両情報を容易に収集させることができるようになるとともに、こうした車両情報を管理センターで一括して管理することが可能となる。
【0089】
また、本発明は、請求項18、20〜27、29にかかる発明に適用して特に有効であり、この場合には、その相乗効果として、ドライバに教示すべき運転履歴に関する情報の選定範囲が拡大されるようになる。このため、上記管理センターに収集される大量の運転履歴のなかから運転支援対象とするドライバの癖や運転レベルにより近い運転履歴に関す
る情報を選択、教示することが可能となる。これにより、ドライバに対する運転支援を上記運転履歴に関する情報に基づき行う上で、よりドライバの意図に沿った運転支援を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明にかかる運転支援システムの第1の実施形態について、その概略構成を示すブロック図。
【図2】運転履歴データベースに登録されて、運転操作傾向毎に分類されるとともに運転レベル毎に層別された運転履歴の一例を示す図。
【図3】本実施の形態の運転支援手順を示すフローチャート。
【図4】運転履歴が取得される走行経路の一例を示す図。
【図5】(a)は、複数の車両操作のもとに収集された運転履歴データの一例を示した図。(b)は、同運転履歴データのうち、燃費についての各変数との関係の一例を示した図。
【図6】(a)は、変数X1に基づきカーネル密度推定された燃費に対する運転履歴の分布の一例を示す図。(b)は、変数X2に基づきカーネル密度推定された燃費に対する運転履歴の分布の一例を示す図。
【図7】変数としての車両パラメータ及び走行環境パラメータ毎の分離度の判定結果を示す図。
【図8】本発明にかかる運転支援システムの第2の実施形態について、類似運転操作傾向の抽出処理手順を示す図。
【図9】同実施例について、近似レベル操作情報の選択手順を示す図。
【図10】(a)及び(b)は、本発明にかかる運転支援システムの他の実施形態について、クラスタリング手法に基づく運転履歴の分類態様の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0091】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる運転支援システムを具体化した第1の実施の形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0092】
図1に示すように、本実施の形態の運転支援システムは、車両に搭載される車載システム100と、プローブ情報通信システムを構成して道路上を走行する車両の車両情報(プローブ情報)を収集し且つ管理する管理センター200とを備えている。
【0093】
このうち車載システム100は、車両の運転操作に関する情報や各種走行データを含んだ車両操作情報を取得する車両操作情報取得部110と、自車両の位置や自車両が走行した経路等に関する経路情報を取得するための経路情報取得部120とを備えている。車載システム100はさらに、車両操作情報取得部110や経路情報取得部120から送信されるデータを受信するデータ受信部130を備えている。
【0094】
このうち車両操作情報取得部110は、アクセルセンサ111、ブレーキセンサ112、加速度センサ(Gセンサ)113、ジャイロセンサ114、操舵角センサ115、及び車速センサ116等の各種センサやエンジンECU117によって構成されている。これら各種センサ111〜116及びエンジンECU117は、例えばCAN(Control Area Network)などの車載ネットワークを介して、様々なセンサの検出結果を集約するデータ受信部130に電気的に接続されている。
【0095】
アクセルセンサ111は、ドライバによるアクセルペダル操作によって変化するアクセル開度を検出し、この検出したアクセルの開度に応じた信号を、データ受信部130に送信する。ブレーキセンサ112は、ドライバによるブレーキペダル操作の有無を検出し、
この検出した操作の有無に応じた信号を、データ受信部130に送信する。加速度センサ113は、車両加速度を検出し、この検出した加速度に応じた信号を、データ受信部130に送信する。ジャイロセンサ114は、車両進行方向を検出し、この検出した進行方向に応じた信号を、データ受信部130に送信する。操舵角センサ115は、検出したステアリング操舵角変化量に基づいて操舵角を算出し、この算出した操舵角に応じた信号を、データ受信部130に送信する。車速センサ116は、車輪回転速度を検出し、この検出した回転速度に応じた信号を、データ受信部130に送信する。エンジンECU117は、燃料の噴射量を決定する燃料噴射信号をデータ受信部130に送信する。こうして、データ受信部130には、各センサ111〜116及びエンジンECU117による検出結果が自車両の車両操作情報として入力される。
【0096】
また、経路情報取得部120は、GPS121、カーナビゲーションシステム122、ヨーレートセンサ123、ミリ波レーダー124、操舵角センサ115、及び車速センサ116によって構成されている。
【0097】
GPS121は、車両の絶対位置を検出するためのGPS衛星信号を受信し、この受信したGPS衛星信号に基づき車両の緯度経度を検出し、この検出した車両の緯度経度情報を、データ受信部130に送信する。
【0098】
カーナビゲーションシステム122は、出発地点から目標地点までの推奨経路等をドライバに案内するシステムであり、車両の運転域に対応する道路地図データを有している。この道路地図データは、地図に関する情報であり、地図表示用データ、誘導データ(交差点名称、道路名称、方面名称、方向ガイド施設情報)などから構成される。地図表示用データは、道路や道路地図の背景を表示するためのデータである。誘導データは、交差点の名称などから構成されるデータであり、推奨経路に基づき、運転者などに推奨経路を誘導する際に用いられる。また、こうした道路地図データには、緯度経度に関する情報や、連続する道路を交差点や信号機等を基準に区画される区間である走行リンクに関する情報が登録されている。そして、カーナビゲーションシステム122は、自車両の緯度経度情報を、データ受信部130に適宜送信する。また、カーナビゲーションシステム122は、例えば自車両が走行している経路の渋滞状況等に関する情報を交通情報センター等から取得して、この取得した情報を自車両周辺の動的周囲状況としてデータ受信部130に送信する。なお、本実施の形態では、こうしたカーナビゲーションシステム122に登録された道路地図データや上記GPS121により取得される緯度経度情報に基づき、自車両が走行した経路の道路勾配や道路線形等の静的周囲状況に関する情報が取得される。
【0099】
ヨーレートセンサ123は、車両の旋回方向への回転角の変化速度であるヨーレートを検出し、この検出したヨーレートに応じた信号を、CANなどの車載ネットワークを介して、データ受信部130に送信する。ミリ波レーダー124は、自車両の前方に存在する前方車両や後方に存在する後方車両の存在や、自車両から前方車両や後方車両までの距離を検出して、この検出した信号を自車両の動的周囲状況を示す情報としてデータ受信部130に送信する。
【0100】
データ受信部130は、それぞれ受信した信号、すなわち自車両の車両操作情報及び経路情報を、それら各情報が処理される車両情報処理部140に送信する。なお、データ受信部130は、各信号を受信した時間を該当する信号の取得時間として記録する。これにより、ドライバによって或る車両操作が行われた時間や、自車両が或る走行経路を走行した時間帯が特定可能とされている。
【0101】
また、データ受信部130は、ドライバにより上記カーナビゲーションシステム122に対して目標地点が設定され出発地点から目標地点までの推奨経路が選択されると、この
選択された経路に関する情報を、ドライバに運転教示を行うための運転教示データが生成される運転教示データ生成部170に送信する。
【0102】
車両情報処理部140は、データ受信部130から入力されたうちの経路情報に基づき、自車両の走行経路を特定する走行経路特定部141と、自車両の車両操作情報を処理して上記管理センター200に計上するための計上データを生成する計上データ生成部142とを備えている。
【0103】
このうち走行経路特定部141は、GPS121、カーナビゲーションシステム122、ヨーレートセンサ123、操舵角センサ115、及び車速センサ116から、データ受信部130を介して受信した情報に基づき、自車両の位置や自車両が走行した走行経路等を特定する。なお、こうした走行経路の特定は、例えば、GPS121から取得された緯度経度、カーナビゲーションシステム122に登録されている地図データに基づく走行リンク、「10m」〜「100m」といった所定の距離等を単位として行われる。そして、走行経路特定部141は、この特定した走行経路に関する情報を、上記データ受信部130が受信した車両操作情報とともに計上データ生成部142に送信する。
【0104】
一方、計上データ生成部142は、自車両の単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費を算出する燃費情報算出部142aを備えている。この燃費情報算出部142aは、アクセルセンサ111の検出結果に基づくアクセルペダルの踏込量や、上記エンジンECU117等から入力される燃料噴射信号等に基づき、自車両の燃費に関する情報である燃費情報を算出する。そして、車両情報処理部140は、この燃費情報算出部142aにより算出された燃費情報に、該当する車両操作情報と自車両の識別のための車両IDとを関連付け、それら燃費情報及び車両操作情報及び車両IDが関連付けられた情報を自車両の車両情報とする。
【0105】
また、車両情報処理部140は、自車両の車両情報に上記特定された走行経路に関する情報を関連付けて紐付けする情報紐付部142bを備えている。この情報紐付部142bは、走行リンク単位や例えば「10m」等の所定の距離単位で、該当する走行経路に上記車両情報を関連付ける。これにより、例えば、自車両が走行した或る区間の走行経路に関する情報には、同走行経路での燃費、及び同走行経路を走行する際に要した旅行時間、及び同走行経路を走行する際に行われたステアリング操作やブレーキ操作等の運転操作に関する情報、及び同走行経路の走行時刻に関する情報等が関連付けられることとなる。
【0106】
そして、計上データ生成部142は、走行経路に関する情報に該当する車両情報が関連付けられた情報を、上記管理センター200に計上すべき自車両の運転履歴として、無線送信部150を介して管理センター200に送信する。なお、計上データ生成部142は、運転履歴に関する情報の送信を、例えば車両の走行が終了する都度実行する。また、車載システム100は、自車両のドライバに運転教示する際に用いる情報を取得すべく、同情報の要求として管理センター200に対する問い合せを適宜行う。
【0107】
一方、管理センター200は、こうした車載システム100から送信された運転履歴に関する情報を受信する無線受信部210と、同無線受信部210が受信した運転履歴に関する情報を登録する運転履歴データベース220とを備えている。
【0108】
このうち運転履歴データベース220では、上記車載システム100を備えた各車両から送信される複数種の運転履歴が、各々の特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類されて登録される。すなわち、車載システム100を備えた各車両から送信される運転履歴とは、各々のドライバ固有の癖が反映された運転操作傾向を有しており、運転履歴データベース220には、各車両から送信される運転履歴がこうした運転操作傾向の別に適宜分類さ
れて登録される。なお、本実施の形態では、停止状態から走行状態に遷移して所定時間経過後のアクセルの踏込み量が、「0%」以上且つ「5%」未満の運転履歴がパターンA、「5%」以上且つ「10%」未満の運転履歴がパターンB、「10%」以上且つ「15%」未満の運転履歴がパターンCとして分類される。
【0109】
また、本実施の形態の運転履歴データベース220では、各車両から送信された複数種の運転履歴が、出発地点から目的地点に至るまでの燃費、旅行時間、車両操作の安全性が評価項目とされてそれぞれ評価される運転レベル毎に層別されて登録される。すなわち、車載システム100を備えた各車両から送信される運転履歴とは、各々のドライバの運転レベルによって相違するものであり、こうした運転履歴が反映される燃費及び旅行時間及び車両操作の安全性も相違する。そこで本実施の形態では、上記運転履歴データベース220には、こうした評価項目に応じて運転履歴に関する情報が適宜層別されて登録される。これにより、燃費が評価項目とされたときには、燃費が高い運転履歴ほど運転レベルが高く、燃費が低い運転履歴ほど運転レベルが低いものとして、上記運転履歴が2以上の運転レベルに層別される。こうして、例えば、燃費が「5km/l」未満の運転履歴が運転レベル1、燃費が「5km/l」以上且つ「10km/l」未満の運転履歴が運転レベル2、燃費が「10km/l」以上の運転履歴が運転レベル3として層別される。これにより、図2に例示するように、運転履歴データベース220では、複数種の車両操作に基づく運転履歴が、パターンA〜パターンC毎に分類されるとともに運転レベル1〜運転レベル3毎に層別されて登録されることとなる。同様に、旅行時間が評価項目とされたときには、共通もしくは類似する走行経路を走行する際に要した旅行時間が短い運転履歴ほど運転レベルが高く、旅行時間が長い運転履歴ほど運転レベルが低いものとして上記運転履歴が2以上の運転レベルに層別される。また同様に、安全性が評価項目とされたときには、例えば緩やかな加速操作や減速操作が行われている運転履歴ほど運転レベルが高く、急な加速操作や急な減速操作が行われている運転履歴ほど運転レベルが低いものとして上記運転履歴が2以上の運転レベルに層別される。
【0110】
また、管理センター200は、上記運転履歴データベース220に登録された運転履歴の分布を求める運転分布算出部230を備えている。この運転分布算出部230は、カーネル密度推定等の手法により運転履歴データベース220に登録された運転履歴の確率密度を推定し、この推定結果から運転レベルが高い運転履歴の分布と運転レベルが低い運転履歴の分布とを求める。なお、こうした運転履歴の分布は、例えば上記走行リンクや特定の地点を単位として求められる。
【0111】
なお、本実施の形態では、静的周囲状況及び動的周囲状況及び車両状態に関する情報の各々を変数として、評価項目毎の運転履歴の確率密度が推定される。また、こうした運転履歴の分布は、上記評価項目毎にそれぞれの変数に基づき求められる。こうして、例えば、燃費が評価項目とされたときには、燃費が高いために運転レベルが高くなる運転履歴の分布と燃費が低いために運転レベルが低くなる運転履歴の分布とが求められる。そして、こうした運転分布算出部230により求められた運転履歴の分布結果は、運転レベルが「高」及び「低」とされた運転履歴の分布が相違する要因を特定する要因特定部240に入力される。
【0112】
要因特定部240は、上記運転分布算出部230により求められた運転履歴の分布結果を変数毎に対比して、運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルが「低」であり、且つ、運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を求める。そして、要因特定部240は、この求めた変数を上記運転レベルが相違する要因として特定する。ここでは、例えば、評価項目を燃費したときの運転履歴の確率密度が変数としてのカーブ及び加速度について推定されたとする。そして、「加速度」を変数として推定された運転履歴の分布の方が、「カーブ」を変数として
推定された運転履歴の分布よりも運転レベルが「高」及び「低」とされた運転履歴の分布の乖離が大きいときには、「加速度」に関する車両操作が、上記分布が求められた運転履歴において燃費が相違する要因として特定される。要因特定部240は、こうして各評価項目において運転レベルが相違する要因を特定すると、この特定した要因(変数)に関する情報を、運転教示に用いる情報を仮保存するための教示用データベース250に出力する。
【0113】
なお、本実施の形態では、運転履歴データベース220と教示用データベース250とによって、上記運転履歴データベースが構成される。
また、管理センター200は、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴を、上記運転履歴データベース220から抽出する類似操作情報抽出部260を備えている。この類似操作情報抽出部260は、例えば、運転支援の対象とする車両の車載システム100から問い合せがあると、同問い合わせのあった車両の車両ID等に基づき、同車両のドライバの運転履歴を上記運転履歴データベース220から検索する。こうして、上記問い合せがあった車両の運転履歴が検索されると、この検索された運転履歴が属する運転操作傾向のグループに含まれる運転履歴が、上記層別された運転レベルに関する情報とともに上記運転履歴データベース220から抽出される。
【0114】
なお、本実施の形態では、こうした運転履歴の抽出が、特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として行われる。すなわち、各々のドライバの運転レベルや運転操作傾向とは、カーブでの運転レベルが高いドライバや道路勾配での運転レベルが高いドライバ等、要素毎に相違する。また、同一の走行経路であっても、渋滞の発生しやすい時間帯や車両の走行台数が少ない時間帯があり、こうした時間帯によって変化する走行環境によってもドライバの車両操作は相違する。そこで、類似操作情報抽出部260は、一時停止位置、交差点等の交通要素や曲率半径の大きい特定のカーブ、渋滞の頻度の高い時間帯等の各要素を単位として、上記運転履歴データベース220から該当する運転履歴を抽出する。
【0115】
そして、類似操作情報抽出部260は、この抽出した運転操作傾向が類似するグループの運転履歴に関する情報を、運転支援の対象とする車両のドライバに近似する運転レベルの運転履歴を選択する近似レベル操作情報選択部270に出力する。この近似レベル操作情報選択部270は、例えば、運転支援の対象とする車両のドライバの次に運転レベルが高い層に属する運転履歴の中から、同ドライバに運転レベルが近似する運転履歴を選択する。そして、近似レベル操作情報選択部270は、この選択した運転履歴に関する情報を、上記問い合わせのあった車両のドライバの運転教示に用いる情報として、上記教示用データベース250に出力する。
【0116】
こうして、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似して且つ運転レベルが近似する1乃至複数の運転履歴が、特定の地点や特定の交通要素、時間帯等を単位として教示用データベース250に仮保存されることとなる。そして、こうして仮保存された運転履歴に関する情報と上記運転レベルが相違する要因として特定された変数に関する情報とが、無線送信部280を介して上記問い合わせのあった車両の車載システム100に配信される。
【0117】
一方、車載システム100では、上記問い合わせの結果として管理センター200から配信された運転履歴に関する情報が無線受信部160にて受信されると、この受信された運転履歴に関する情報が上記運転教示データ生成部170に取り込まれる。
【0118】
運転教示データ生成部170は、管理センター200から配信された運転履歴に関する
情報と上記特定された変数に関する情報とを取得すると、それら取得した各情報と上記カーナビゲーションシステム122を通じて選択された推奨経路に関する情報とに基づいて、運転教示データを生成する。具体的には、運転教示データ生成部170はまず、管理センター200から配信された運転履歴の中から、ドライバにより選択された推奨経路中に存在するカーブや道路勾配等の交通要素と共通もしくは類似する交通要素を含んだ運転履歴を選択する。
【0119】
そして、運転教示データ生成部170は、この選択した運転履歴に関する情報に基づき、上記評価項目を改善するための運転教示データを生成する。例えば、上記変数によって示される要因として上記評価項目が「燃費」であるときの「カーブ」が特定されているとする。このときには、運転教示データ生成部170は、上記運転履歴に関する情報のうちカーブでのステアリング操作や加速・減速操作等を示す情報を参照し、こうした車両操作を再現するために必要なテキストデータや運転傾向を示すレーダーチャート等の画像データを生成する。また同様に、運転教示データ生成部170は、運転教示データとして、上記運転履歴に関する情報のうちカーブでのステアリング操作や加速・減速操作等を示す情報を参照し、こうした車両操作を再現可能な車両の駆動系の制御量に関するデータを生成する。
【0120】
また、例えば、上記変数によって示される要因として、上記評価項目が「安全性」であるときの「道路勾配」及び「アクセルペダルの踏込み量」が特定されているとする。このときには、運転教示データ生成部170は、上記運転履歴に関する情報のうち道路勾配でのアクセル操作等を示す情報を参照し、こうした車両操作を再現するために必要な画像データや車両の駆動系の制御量に関するデータを生成する。
【0121】
そして、こうして適宜生成された運転教示データが、自車両が或る目的地点に至るまでの経路中に存在する交通要素に各々関連付けられる。こうして、運転教示データ生成部170では、或る目的地点に至るまでの経路において、自車両のドライバに運転操作傾向が類似し且つ運転レベルが近似する複数のドライバによる複数の車両操作に基づく運転履歴が組み合わされ、合成された運転教示データが生成される。そして、こうした運転教示データ生成部170により生成された画像データが表示装置180に出力されるとともに、駆動系の制御量に関するデータが駆動系制御装置190に出力される。
【0122】
なお、本実施の形態では、運転教示データ生成部170、運転分布算出部230、要因特定部240、類似操作情報抽出部260、近似レベル操作情報選択部270によって上記運転教示部が構成される。
【0123】
表示装置180は、例えば液晶ディスプレイによって構成され、車室内のセンターコンソール付近に設置される。この表示装置180は、運転教示データ生成部170から入力されたテキストやレーダーチャートを画像出力することにより、ドライバに減速操作やステアリング操作等をガイドする。これにより、例えば、自車両が交差点やカーブに侵入する際には、減速開始位置(減速タイミング)やアクセルペダルの踏込み量、ステアリングの操作加減等がドライバに案内される。
【0124】
また、駆動系制御装置190は、自車両のエンジン制御装置やブレーキ制御装置、ステアリング制御装置等、車両の駆動系を制御する装置である。そして、駆動系制御装置190は、運転教示データ生成部170から入力された運転教示データに基づいて、ブレーキやステアリング等の駆動系に対する半強制的な制動力の付与や自動運転を実行する。
【0125】
こうして、自車両のドライバには、実際の走行経路を走行した車両の運転履歴に基づいて、同ドライバに運転操作傾向が類似し、同ドライバよりも運転レベルが高く且つ近似す
る内容の運転教示が行われるようになる。なお、こうした運転教示に用いられる運転教示データとは、各々の走行経路を走行したドライバの運転履歴である。このため、上述した模擬コースを用いることなく各々のドライバの運転履歴の登録として生成することが可能となり、運転支援の対象とするドライバに教示すべき走行モデルを容易に生成することが可能となる。
【0126】
以下、本実施の形態の運転支援システムの動作について図3〜図7を参照して説明する。
図3に示すように、本実施の運転支援システムではまず、ステップS100において、上記運転履歴データベース220から或る地点の運転履歴が抽出される。これにより、例えば、図4に示す走行経路において、同走行経路中に存在するカーブC1を含んだ区間Sec1における運転履歴が抽出される。なお、こうして抽出される運転履歴は、区間Sec1を走行した複数種の車両から得られた複数種の運転履歴に関する情報である。すなわち、図5(a)に例示するように、区間Sec1における運転履歴は例えば三次元のデータとして構成されており、奥行きをもった複数の横軸によって、評価項目としての燃費及び旅行時間及び加速度によって示される安全性等がそれぞれ示されている。また、縦軸においては、上記変数としての道路勾配や道路線形等の静的周囲状況、及び自車両の前方車両や後方車両との車間距離、渋滞状況等の動的周囲状況等の走行環境パラメータがそれぞれ対応している。縦軸においては、この他、ステアリングやアクセル開度、車速度、加速度等の車両状態(走行状態)等の車両パラメータといった様々な要因が対応しており、こうしたパラメータの各々がそれぞれ変数に該当する。そして、例えば、燃費を横軸として上記運転履歴を観察した場合には、図5(b)に示すように、同燃費に対応する運転履歴データが二次元で表現される。
【0127】
そして、図3に示すステップS101において、例えば、カーネル密度推定手法を用いて、上記抽出した区間Sec1での運転履歴の確率密度が評価項目毎に推定される。こうして、図5(b)に例示するように、変数「X1」としての「カーブ」についての燃費に対する運転履歴の分布や、変数「X2」としての「加速度」についての燃費に対する運転履歴の分布が適宜算出される。これにより、図6(a)及び(b)に例示する運転履歴の分布が順次求められる。
【0128】
すなわち、変数「X1」としての「カーブ」について求められた運転履歴は、図6(a)に示すように、例えば、燃費が相対的に低いために運転レベルが低いとされるグループの分布L1と、燃費が相対的に高いために運転レベルが高いとされるグループの分布L2とに分割される。また、図6(b)に示すように、変数「X2」としての「加速度」について求められた運転履歴も、例えば、燃費が相対的に低いために運転レベルが低いとされるグループの分布L3と、燃費が相対的に高いために運転レベルが高いとされるグループの分布L4とに分割される。こうして、全ての変数についての運転履歴の分布が評価項目毎に求められることとなる。なお、こうしたステップS100、S101が、運転履歴の分布を求める分布算出処理となる。
【0129】
次いで、ステップS102〜ステップS106では、各運転履歴の運転レベルが相違する要因を特定する要因特定処理が実行される。この要因特定処理ではまず、整数iを用いて変数毎の運転履歴の分布の差が求められる。なお、整数iは、上記変数の最大数を「n」としたとき、以下の条件(イ)を満たす数である。
【0130】
1≦i≦n …(イ)
そして、本要因特定処理ではまず、ステップS102において、整数iに「1」がセッ
トされる。その後、上記変数のうちで整数i=1に対応する変数「X1」について、運転支援の対象とする車両のドライバAの運転レベルが属する分布と、同ドライバが属する分布よりも運転レベルの高い分布との分離度が求められる(ステップS103)。この分離度としては、例えば、図6(a)に例示するように2つの分布L1及びL2の最大値の差R1が求められる。
【0131】
そして、続くステップS104では、整数iが整数nに達したか否か、すなわち、全ての変数について運転履歴の分布の分離度が求められたか否かが判断される。こうして、整数iが整数nに到達するまで同様の処理が繰り返されることにより、X1〜Xnまでの全ての変数について運転履歴の分布の分離度が求められるようになる(ステップS103〜S105)。すなわち、変数X1〜Xnによって示される全てのパラメータについて、運転履歴の分布の分離度が求められるようになる。
【0132】
こうして、整数iが順次加算されて整数nに到達すると、図6(a)及び(b)に例示するように、運転支援の対象とする車両のドライバAが属する分布と同分布よりも運転レベルの高い分布との分離度が、所定の閾値R0以上となる変数が特定される(ステップS106)。すなわち、ここでの例では、変数X1については、図6(a)に例示するように2つの分布L1及びL2のピーク値の差R1が閾値R0未満であることから、変数X1は上記要因として特定されないこととなる。一方、変数X2については、図6(b)に例示するように2つの分布L3及びL4のピーク値の差R2が閾値R0以上であることから、変数X2がドライバAの運転レベルを改善すべき要因の1つとして特定される。
【0133】
そして、こうした処理が評価項目毎に行われることにより、例えば図7に示すように、運転支援の対象とする車両のドライバAが同ドライバAよりも運転レベルの高いグループと運転レベルが相違する要因が適宜特定されることとなる。
【0134】
そして、続くステップS107では、運転支援の対象とする車両のドライバAと運転操作傾向が類似する運転履歴を抽出する類似運転操作傾向抽出処理が実行される。この処理では、先の図2に示した態様で運転操作傾向の別に分類されている運転履歴の中から、ドライバAと運転操作傾向が類似する運転履歴が、上記運転履歴データベース220から抽出される。ここでの例では、図2に示されるように、ドライバAの運転操作傾向がパターンAに該当することから、グループA1及びグループA2及びグループA3の運転履歴が抽出される。
【0135】
そして、続くステップS108〜S110では、運転支援の対象とする車両のドライバAよりも運転レベルが高く、且つ同ドライバAに運転レベルが近似する運転履歴を選択する近似レベル操作情報選択処理が実行される。
【0136】
この近似レベル操作情報選択処理ではまず、ステップS108において、ドライバAに運転操作傾向が類似する運転履歴として抽出されたグループA1及びグループA2及びグループA3の運転履歴のうち、ドライバAよりも運転レベルが高い層の運転履歴が選択される。すなわち、図2に示す例では、運転レベル1の層に属するドライバAよりも運転レベルが高い運転履歴として、グループA2及びグループA3の運転履歴が選択される。
【0137】
そして、続くステップS109では、上記ステップS108において選択された運転履歴の中から、ドライバAの次に運転レベルが高い層に属する運転履歴が選択される。すなわち、図2に示す例では、運転レベル1の層に属するドライバAの次に運転レベルが高い層に属する運転履歴として、グループA2の運転履歴が選択される。
【0138】
次いで、ステップS110では、グループA2の運転履歴のうちでドライバAに運転レ
ベルが近似する運転履歴が選択される。すなわち、図2に示される例では、運転レベル2の層に属するグループA2の運転履歴のうちで、ドライバAの運転履歴に運転レベルが近似するドライバBの運転履歴が選択される。
【0139】
こうして、運転支援の対象とする車両のドライバAに運転操作傾向が類似し、同ドライバよりも運転レベルが高く且つ近似する運転履歴が選択されることとなる。そして、こうした処理が、例えば、先の図4に示した走行経路において、区間Sec1〜区間Sec3といった所定の区間、所定の曲率のカーブ等の交通要素、渋滞の発生する頻度が高い時間帯等を単位として行われる。これにより、ドライバAに運転操作傾向が類似し、同ドライバよりも運転レベルが高く且つ近似する複数の運転履歴が適宜選択されることとなる。
【0140】
そして、続くステップS111〜ステップS113では、上記選択された運転履歴に基づいて、運転支援の対象とする車両のドライバAに運転教示を実行する運転教示処理が実行される。
【0141】
この運転教示処理ではまず、ステップS111において、ドライバに運転教示すべき項目が決定される。ここでは、例えば、上記要因特定処理において特定された要因を改善するために必要な項目がドライバに運転教示すべき項目として決定される。これにより、先の図7に示したように、例えば、燃費を改善するための要因として特定された加速度、アクセル開度、道路線形、車間距離等に関する車両操作が運転教示すべき項目として選定される。
【0142】
こうして、運転教示すべき項目が決定されると、ドライバAが走行する推奨経路と上記決定された運転教示項目とに応じて上記選択された運転履歴が適宜組み合わされることにより、ドライバAに教示すべき運転教示データが生成される(ステップS112)。そして、この生成された運転教示データに基づく運転教示が、上記表示装置180や駆動系制御装置190を介して実行される。これにより、ドライバAには、同ドライバAに類似し、同ドライバAよりも運転レベルが高く且つ近似する運転履歴に基づく運転教示が行われるようになる。
【0143】
以上説明したように、本実施の形態にかかる運転支援システムによれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)道路上を実際に走行する各車両から各走行経路における運転履歴を、該当する経路情報とともに収集することとした。そして、この収集した運転履歴を上記運転履歴データベース220に登録するとともに、この登録した運転履歴を運転支援の対象とする車両のドライバに対する運転教示に用いることとした。このため、同ドライバには、実際の道路環境下で実際に行われた車両操作が反映された運転履歴に基づいた運転教示が行われることとなる。これにより、運転支援の対象とする車両のドライバには、自らが走行する走行経路や同走行経路に類似する走行経路で実際に行われた車両操作に基づく実現性の高い運転支援が行われるようになる。また、上記運転教示データは、各々の走行経路を走行したドライバの運転履歴に基づき生成されたデータであるから、運転支援の対象とするドライバに教示すべき走行モデルを容易に生成することが可能となる。これにより、多種多様な交通要素が反映された実際の走行環境に即した実現性の高い運転支援を容易に実現することができるようになる。
【0144】
(2)運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出し、この抽出した運転履歴に基づき生成された運転教示データを用いてドライバに対する運転教示を行うこととした。このため、運転支援の対象とする車両のドライバには、同ドライバ固有の癖に応じた運転教示が行われることとなり、ドライバの意図に即した的確な運転支援が実現されるようになる
。
【0145】
(3)上記運転履歴データベース220に、複数種の運転履歴をその特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類して登録することとした。そして、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向を特定するとともに、この特定した運転操作傾向との特徴量が類似する運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベース220から抽出することとした。これにより、運転支援の対象とするドライバ固有の癖に類似する運転操作傾向を容易に抽出することが可能となり、ドライバ固有の癖に応じた運転支援をより容易に実現することが可能となる。
【0146】
(4)上記運転履歴データベース220に、各車両から送信された複数種の運転履歴を、燃費、旅行時間、車両操作の安全性のそれぞれを評価項目として評価して運転レベル毎に層別して登録することとした。そして、運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルを上記評価項目の少なくとも1つに基づき判定するとともに、この判定した運転レベルよりもレベルの高い運転履歴に関する情報を上記層別された運転履歴データベースから抽出することとした。このため、運転支援の対象とする車両のドライバには、その運転レベルに拘らず自己の運転レベルよりも高い運転履歴に関する情報が教示されることとなる。これにより、ドライバの運転レベルが低い場合であれ、高い場合であれ、上記評価項目を向上させることのできる運転教示を行うことが可能となり、有効性の高い運転支援が実現されるようになる。
【0147】
(5)上記運転教示に際し、運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を、上記運転履歴データベース220から抽出された運転履歴の中から選定することとした。そして、この選定した運転履歴に基づいて、運転支援の対象とする車両のドライバに対する運転教示を行うこととした。このため、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルの次に高い運転レベルの運転履歴に関する情報が教示されることとなる。これにより、運転支援の対象とするドライバの運転レベルに拘らず、その運転レベルに応じて同運転レベルを高めることを可能な運転支援が無理なく行われるようになる。また、これにより、上記(2)との相乗効果として、ドライバには、同ドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報がドライバに教示されることとなり、効果的な運転支援が実現可能となる。
【0148】
(6)上記運転教示に際し、上記運転レベル毎に層別された運転履歴のうちで運転支援の対象とする車両のドライバAの運転レベル1に近いドライバBの運転履歴を選択することとした。そして、この選択した運転履歴に基づいて、ドライバAに対する運転教示を行うこととした。これにより、運転支援の対象とされる車両のドライバの運転レベルに近似する運転レベルに基づく運転支援が可能となり、運転支援を通じた運転レベルの段階的な向上が図られるようになる。また、これにより、上記(2)との相乗効果として、運転支援の対象とされる車両のドライバには、同ドライバ固有の運転操作傾向に類似して、且つ、同ドライバに近似する運転レベルの運転履歴に基づく運転教示が行われるようになり、より効果的な運転支援が実現可能となる。
【0149】
(7)上記静的周囲状況及び動的周囲状況及び車両状態に関する情報の各々を変数として、上記運転履歴データベース220に登録された運転履歴の確率密度を推定することとした。そして、この推定結果として求まる運転履歴の分布に基づく運転履歴の分布の分離度(乖離)に基づき上記運転レベルが相違する要因を特定し、この特定した要因を上記評価項目を改善すべき要素として上記運転教示に用いることとした。これにより、各々のドライバの運転レベルが相違する主要因、換言すれば、運転レベルを改善すべき主要素に基づいた運転支援を行うことができるようになり、運転支援の対象とする車両のドライバの
運転レベルを効果的に改善させることが可能となる。
【0150】
(8)上記運転履歴データベース220に、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報を登録することとした。また、特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として合成された運転履歴を用いて、上記運転教示に用いられる運転教示データを生成することとした。これにより、複数種の運転履歴を有効に活用してそれら運転履歴に基づく運転支援を行うことが可能となる。また、これにより、上記(2)〜(6)との相乗効果として、運転教示に用いられる運転履歴の選定範囲が拡大され、ドライバの運転レベルや固有の癖により近い走行モデルに基づいた運転支援が実現可能となる。
【0151】
(9)上記運転支援の教示を、運転支援の対象とする車両に搭載された上記表示装置180に対する画像出力として行うこととした。これにより、既存のカーナビゲーションシステム等の表示装置を用いて、視覚を通じた運転教示を行うことが可能となる。
【0152】
(10)上記運転支援の教示を、上記駆動系制御装置190による車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて行うこととした。これにより、体感を通じた運転教示を行うことが可能となり、より効果的な運転支援が実現される。
【0153】
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかる運転支援システムを具体化した第2の実施の形態を図8及び図9を参照して説明する。なお、この第2の実施の形態は、上記運転履歴データベース220での運転レベル別、パターン別の登録を割愛したものであり、その基本的な構成は先の第1の実施の形態と共通になっている。
【0154】
図8は、本実施の形態の類似操作情報抽出部260による類似運転操作傾向の抽出手順を示している。また、図9は、本実施の形態の近似レベル操作情報選択部270による近似レベル操作情報の選択手順を示している。
【0155】
まず、本実施の形態では、先の図1に示した運転履歴データベース220には、運転レベル毎の層別とパターン毎の分類とが行われることなく各ドライバの運転履歴が適宜登録される。
【0156】
そして、本実施の形態の類似操作情報抽出部260は、図8に示すように、運転レベルが相違する要因として特定された変数が運転支援の対象とする車両のドライバAの運転履歴と共通する運転履歴を、上記運転履歴データベース220から抽出する。
【0157】
ここでの例では、運転支援の対象とする車両のドライバAの運転履歴には、変数「X11」、「X12」、「X16」等によって示される静的周囲状況、動的周囲状況、及び車両状態に関する情報が含まれている。例えば、変数「X11」は、静的周囲状況として曲率が所定値以上のカーブに関する情報を示しており、変数「X12」は、平均車速度が「40km/h」以上、「60km/h」未満であることを示している。すなわち、こうした変数によって、ドライバAの運転履歴が取得されたときの静的周囲状況及び動的周囲状況及び車両状態に関する詳細な項目が表されており、変数が共通している運転履歴ほど、静的周囲状況及び動的周囲状況及び車両状態の各々が共通する運転履歴となっている。
【0158】
そして、図8の例では、ドライバC、ドライバF、ドライバH、ドライバ..の運転履歴が、ドライバAの運転履歴に含まれている変数「X11」、「X12」、「X16」等を含んでいる。よって、本実施の形態の類似操作情報抽出部260は、運転支援の対象とする車両のドライバAの運転操作傾向に類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴として、ドライバC、ドライバF、ドライバH、ドライバ..の運転履歴を上記運転履歴データベ
ース220から適宜抽出する。そして、この抽出された結果が、上記近似レベル操作情報選択部270に入力される。
【0159】
本実施の形態の近似レベル操作情報選択部270は、図9に例示するように、上記類似操作情報抽出部260によって抽出された運転履歴のうち、例えば上記要因特定部240により運転レベルが相違する要因として特定された変数「X16」によって示される情報の単位時間当りの変化量を算出する。ここでの例では、「X16」は、例えば、自車両と前方車両との車間距離に関する情報を示している。なお、この変化量の算出の対象となる変数としては、上記動的周囲状況もしくは車両状態を示す変数が対象とされる。そして、近似レベル操作情報選択部270は、こうした変数によって示される情報の変化量に基づいて、上記類似操作情報抽出部260にて運転操作傾向が類似するとされたドライバA、ドライバC、ドライバF、ドライバH、ドライバM、ドライバS、..の運転履歴の運転レベルを判定する。すなわち、上記変数によって示される情報が動的周囲状況のうちの自車両と前方車両との車間距離に関する情報であるときには、車間距離の単位時間あたりの変化量が小さいほど、安定した車両操作が行われているために運転レベルが高いと判定することが可能である。また、上記変数によって示される情報が車両状態のうちのカーブでのヨーレートに関する情報であるときには、ヨーレートの単位時間あたりの変化量が小さいほど、車両の挙動が小さく円滑な車両操作が行われていると判定することが可能である。
【0160】
そして、こうした原理のもとに、「X16」によって示される車間距離の変化量が、運転操作傾向が類似するとされたドライバA、ドライバC、ドライバF、ドライバH、ドライバM、ドライバS、..の各運転履歴について算出される。この結果、図9に示すように、運転支援の対象とする車両のドライバAの運転履歴のうちの車間距離の変化量である「5m/min」よりも変化量が少なく且つ同変化量「5m/min」に近似する変化量を含んだ運転履歴として、車間距離の変化量が「4.5m/min」であるドライバSの運転履歴が特定される。
【0161】
こうして、この特定されたドライバSの運転履歴が、運転支援の対象とするドライバAの運転履歴に運転操作傾向が類似し、ドライバAよりも運転レベルが高く且つ同運転レベルが近似する運転履歴であるとして、上記教示用データベース250に仮登録される。そして、こうした処理が運転支援の対象とする走行経路での走行リンクや交通要素毎に行われることにより、先の第1の実施の形態と同様、上記特定されたドライバS、ドライバ..といった複数のドライバの運転履歴を用いた運転教示がドライバAに行われるようになる。
【0162】
以上説明したように、本実施の形態にかかる運転支援システムによれば、前記(1)、(2)、(7)〜(10)に準じた効果が得られるとともに、前記(3)〜(6)に代えて以下の効果が得られるようになる。
【0163】
(3A)運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、上記変数によって示される静的周囲状況もしくは動的周囲状況もしくは車両状態に関する要素が共通する運転履歴を、運転履歴データベース220から抽出することとした。そして、この抽出した運転履歴に基づいて、ドライバに対する運転支援を行うこととした。これにより、ドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を、同運転履歴に含まれる車間距離やヨーレート等をはじめとする様々な要素を用いて上記運転履歴データベース220から抽出することが可能となる。また、これにより、共通する変数の有無の判定といったより簡易な処理のもとに、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転履歴を抽出することが可能となり、上記運転教示にかかる円滑化が図られるようになる。
【0164】
(4A)上記運転レベルの判定を、上記変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の単位時間当りの変化量に基づいて行うこととした。これにより、変数によって示される自車両と前方車両との車間距離やカーブでのヨーレートといった要素のばらつきの大きさ、すなわち、車両挙動の大小を基準として、円滑な車両操作が行われているか否かを判定することが可能となる。
【0165】
(5A)上記運転教示に用いる運転履歴として、上記変数の変化量が近似する運転履歴を用いることとした。これにより、運転支援の対象とする車両のドライバには、自己の運転レベルに近似する運転レベルの運転履歴に基づいた運転教示が行われることとなり、ひいては、同ドライバの運転レベルに見合った運転支援が行われるようになる。また、上記(3A)との相乗効果として、運転支援の対象とする車両のドライバには、同ドライバに運転操作傾向が類似し、同ドライバよりも運転レベルが高く、且つ同運転レベルが近似する運転履歴に基づいた運転教示が行われることとなる。これにより、運転支援の対象とする車両のドライバには、実現性が極めて高い運転教示が行われることとなり、同ドライバの意図に沿った的確な運転支援が行われるようになる。
【0166】
(6A)上記変数の変化量に基づく運転レベルの判定に際し、上記運転レベルが相違する要因として特定された変数を用いることとした。これにより、運転レベルが相違する主要因となる要素を利用して、同運転レベルを向上させるために効果的な運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出することが可能となる。
【0167】
なお、上記各実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記第2の実施の形態では、上記変数の変化量に基づく運転レベルの判定に際し、上記運転レベルが相違する要因として特定された変数を用いることとした。これに限らず、上記要因として特定されていない変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の変化量に基づいて上記運転教示に用いる運転履歴の運転レベルを判定することも可能である。またこの他、各運転履歴が含んでいる全ての変数について変化量を求め、この変化量の平均値に基づいて上記運転レベルを判定することも可能である。
【0168】
・上記第2の実施の形態では、上記運転教示に用いる運転履歴として、上記変数によって示される項目の変化量が近似する運転履歴を用いることとした。これに限らず、上記運転教示に用いる運転履歴として、上記変数によって示される項目の変化量が近似しない運転履歴を用いることも可能である。またこの他、上記評価項目に反する車両操作を教示する上では、運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルの低い運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出して、この抽出した運転履歴を上記運転教示に用いることも可能である。
【0169】
・上記第2の実施の形態では、上記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、同ドライバの運転履歴に含まれている変数が共通する運転履歴を、上記運転履歴データベース220から抽出することとした。これに限らず、上記要因特定部240により運転レベルが相違する要因として特定された変数が共通する運転履歴を、運転操作傾向が類似する運転履歴として上記運転履歴データベース220から抽出することも可能である。
【0170】
・上記運転教示データを、上記車載システム100を構成する運転教示データ生成部170にて生成することとした。これに限らず、上記運転教示データを上記管理センター200で予め生成し、同生成した運転教示データを管理センター200から車載システム100に配信するようにしてもよい。この場合には、例えば、カーナビゲーションシステム122を通じて出発地点から目標地点までの推奨経路が設定されると、この設定された推
奨経路が上記問い合せとして車載システム100から管理センター200に送信される。そして、管理センター200では、車載システム100から受信した推奨経路に関する情報に基づき、同推奨経路や同推奨経路中に存在する交通要素、運転支援の対象とされる車両が同推奨経路を走行する時間帯等を特定する。その後、管理センター200は、こうした推奨経路についての運転教示データを生成し、この生成した運転教示データを上記問い合せのあった車載システム100に配信する。そして、この車載システム100では、この配信された運転教示データを用いた運転教示が行われることとなる。なお、この構成であれ、上述した(1)〜(10)、(3A)〜(6A)に準じた効果を得ることは可能である。
【0171】
・上記車載システム100から管理センター200への車両情報の送信に際し、自車両の車両情報に同車両の車両IDを付すこととした。そして、運転履歴データベース220では、運転支援の対象とする車両の車載システム100から上記問い合せがあると、同問い合わせのあった車両の車両ID等に基づき、同車両のドライバの運転履歴を上記運転履歴データベース220から検索し、この検索した運転履歴を用いて上記運転教示を行うこととした。これに限らず、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向や運転レベルさえ把握できればよく、運転支援の対象とする車両から管理センター200に適宜送信される車両情報に基づき、同ドライバに教示すべき運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出するようにしてもよい。この場合には、自車両の車両情報の送信が管理センター200に対する問い合せとして機能する。そして、車載システム100では、この問い合せの応答として管理センター200から配信される運転教示データに基づく運転教示が行われることとなる。
【0172】
・上記車載システム100から管理センター200に送信する車両情報として、上記車両操作情報取得部110にて取得された情報の形式を変換することなく、同情報を車載システム100から管理センター200に送信することとした。これに限らず、例えば、上記車両操作情報取得部110にて取得された情報を、走行リンクや所定の距離を単位として、アクセル開度の分布を示すデータや加速度の分布を示すデータに変換するようにしてもよい。この場合には、車載システム100と管理センター200との間で授受されるデータ量を削減することが可能となる。なお、こうしたデータ変換は、例えば、車載システム100と管理センター200との間での通信制約や図3に示した各処理、運転教示に際してドライバに教示すべき情報量等に基づいて行うことが可能である。
【0173】
・上記運転履歴の確率密度を、カーネル密度推定によって推定することとした。これに限らず、例えば混合正規分布によって上記運転履歴の確率密度を推定することが可能である。この場合には、運転履歴の確率密度を求める上で、確率密度の算出に要する計算時間が短縮されるようになる。この他、運転履歴の確率密度を推定可能な手法であればよく、任意の手法を採用することが可能である。
【0174】
・上記分布算出処理のステップS100において、或る地点の運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出して同抽出した運転履歴の分布を求めることとした。これに限らず、例えば、特定の時間帯や所定の曲率を有したカーブや交差点等の交通要素、特定の車種等を単位として上記運転履歴データベース220の中から運転履歴を抽出し、同抽出した運転履歴の分布を求めるようにしてもよい。そして、この求めた運転履歴の分布に基づく上記要因特定処理を実行してもよい。
【0175】
・上記運転履歴データベース220に、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報を登録することとした。そして、上記特定された走行経路の特定の地点、特定の交通要素、特定の時間帯を単位として運転履歴に関する情報を上記運転履歴データベース220から各々抽出し、各々抽出した運転履歴に関する情報を合成して上記運転教示データを生成
することとした。これに限らず、上記運転履歴データベース220に登録する運転履歴とは、一台の車両の車両操作に基づく一の運転履歴であってもよく、一の運転履歴に基づき上記運転教示を行うことも可能である。要は、或るドライバの車両操作による運転履歴に基づいてドライバに対する運転教示を行うものであれば、本発明の適用は可能である。
【0176】
・上記実施の形態では、図6に例示したように、運転履歴が2つの分布に分割されることを前提とした。これに限らず、運転履歴の分布態様は上記運転履歴データベース220に登録された運転履歴の運転レベルによって変化するものであり、運転履歴が1の分布として表現される、もしくは3以上に分割された分布として表現されることは勿論である。
【0177】
・上記運転教示に際し、上記運転レベルが相違する要因として特定された変数によって示される静的周囲状況もしくは動的周囲状況もしくは車両状態に関する情報を、該当する評価項目を改善すべき要素として上記対象とする車両のドライバの運転支援に用いることとした。これに限らず、全ての変数によって示される静的周囲状況もしくは動的周囲状況もしくは車両状態に関する情報を、該当する評価項目を改善すべき要素として上記対象とする車両のドライバの運転支援に用いるようにしてもよい。また、上記変数としては、車両操作に基づく運転履歴に包含される要素を示す情報であればよく、任意の要素を設定することが可能である。この他、或るドライバの車両操作による運転履歴に基づいてドライバに対する運転教示を行うものであれば本発明の適用は可能であり、上記変数を用いることなく上記運転教示データを生成するようにしてもよい。
【0178】
・またこの他、例えば、運転支援の対象とする車両において、同車両のドライバが上記カーナビゲーションシステム122等を通じて上記運転教示項目を選択可能な構成とし、ドライバにより選択された運転教示項目に応じた運転教示を行うようにしてもよい。また、同様に、運転支援の対象とする車両において、同車両のドライバが上記カーナビゲーションシステム122等を通じて上記評価項目を選択可能な構成とし、ドライバにより選択された評価項目における運転レベルを向上するために必要な運転教示を行うようにしてもよい。
【0179】
・上記第1の実施の形態では、上記運転教示に用いる運転履歴として、上記運転レベル毎に層別された運転履歴のうち、運転支援の対象とする車両のドライバAの次に運転レベルが高い層に属し、且つ同ドライバの運転レベルに近いドライバBの運転履歴を、上記層別された運転履歴データベース220(教示用データベース250)から抽出して同抽出した運転履歴に基づき上記運転教示データを生成することとした。これに限らず、上記運転教示に用いる運転履歴としては、運転支援の対象とする車両のドライバAが属するグループA1の次に運転レベルが高い層であるグループA2の中から抽出されたものであればよく、グループA2の中で中間に位置する運転履歴や、グループA3側に近い運転履歴を抽出することも可能である。
【0180】
・上記第1の実施の形態では、上記運転教示に用いる運転履歴として、運転支援の対象とする車両のドライバAの属する層(グループA1)の運転レベルの次に運転レベルの高い層(グループA2)に属する運転履歴に関する情報を、上記層別された運転履歴データベースから抽出することとした。これに限らず、例えば、上記運転教示に用いる運転履歴として、運転支援の対象とする車両のドライバAの属する層(グループA1)よりも運転レベルが2以上高い層(グループA3)に属する運転履歴に関する情報を上記層別された運転履歴データベースから抽出するようにしてもよい。
【0181】
・上記第1の実施の形態では、上記運転教示に用いる運転履歴として、運転支援の対象とする車両のドライバAよりも運転レベルの高い層に属する運転履歴を上記運転履歴データベース220(教示用データベース250)から抽出することとした。これに限らず、
上記運転教示に用いる運転履歴として、運転支援の対象とする車両のドライバAが属する層(グループA1)の中から、同ドライバAよりも運転レベルの高い運転履歴を抽出するようにしてもよい。またこの他、上記評価項目に反する車両操作を教示する上では、同ドライバAよりも運転レベルの低い運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出して、この抽出した運転履歴を上記運転教示に用いることも可能である。
【0182】
・上記第1の実施の形態では、上記運転履歴データベース220に、燃費、旅行時間、安全性の少なくとも1つを評価項目として評価して運転レベル毎に層別して複数種の運転履歴を登録することとした。これに限らず、例えば、上記運転履歴を単位として運転履歴毎に運転レベル1〜運転レベルNといった態様で運転レベルを適宜付与して、同運転レベルが付与された運転履歴を上記運転履歴データベース220に登録するようにしてもよい。
【0183】
・上記第1の実施の形態では、上記運転履歴を運転レベル毎に層別して上記運転履歴データベース220に登録することとしたが、運転履歴を運転レベル毎に層別することなく上記運転履歴データベース220に登録することも可能である。この場合には、運転支援の対象とするドライバの運転レベルと同ドライバに教示すべき運転履歴の運転レベルとの判定を、例えば、上記運転履歴の分布に基づき行うようにしてもよい。すなわち、この場合には、上記変数について求められた運転履歴の分布が2つの分布に分割されたとき、運転支援の対象とするドライバの運転履歴がいずれの分布に属するかによって上記運転レベルの判定が行われる。またこの他、運転履歴データベース220に登録された運転履歴のうち、上記評価項目に基づいて、例えば上位「30%」とされた運転履歴のグループを運転レベル「高」とし、下位「70%」とされた運転履歴のグループを運転レベル「低」とすることも可能である。
【0184】
・上記第1の実施の形態では、上記運転操作傾向の分類を、車両状態が停止状態から走行状態に遷移して所定時間経過後のアクセルの踏込み量に基づいて行うこととした。これに限らず、例えば、一時停止位置や交差点等において減速操作を開始するタイミングや、自車両と前方車両との車間距離等に基づいて、上記運転操作傾向を分類することも可能である。要は、ドライバ固有の癖が反映される要素であれば、運転操作傾向を分類する際の基準として採用することが可能である。
【0185】
・上記運転履歴データベース220に、運転履歴の特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類して複数種の運転履歴を登録することとした。これに限らず、運転操作傾向の別に分類することなく、複数種の運転履歴を運転履歴データベース220に登録するようにしてもよい。そして例えば、上記運転教示部により、上記運転履歴データベース220に登録された運転履歴の中からその特徴量に基づいて運転操作パターンを生成するためのクラスタリングを行うようにしてもよい。そして、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作が上記クラスタリングした運転操作パターンのいずれのパターンに近いかを判定して、当該ドライバの運転操作傾向との特徴量が類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報を抽出することも可能である。この場合には、運転教示部による運転履歴の抽出に際し、運転履歴データベースに登録された運転履歴が、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込み量、燃費の推移等を示す特徴量に基づいて適宜クラスタリングされる。この結果、例えば図10(a)及び(b)に示す態様で運転履歴が順次グループ化され、複数種の運転操作パターンが自動的に生成されるようになる。そのため、運転履歴データベースに登録されている運転履歴を条件付けして複数種の運転操作パターンを予め規定する必要もなく、運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを自動的に生成することが可能となる。これにより、各々の運転履歴の特徴量に応じた運転操作パターンを柔軟に生成することが可能となり、ひいては、運転支援の対象とするドライバ固有の癖(運転操作パターン)に応じた運転履歴を的確に抽出、教示することが可能となる。なお、運転支援の対象と
する車両のドライバの運転操作傾向に近いパターンの運転履歴としては、例えば、運転支援の対象とする車両のドライバAの運転履歴の代表的な特徴点との距離が近いパターンに属する運転履歴が選択される。またこの他、例えば、或る値の特徴パラメータの値の時間変化の離散データ群について最尤判定を通じて判定することが可能である。要は、運転支援の対象とするドライバの運転操作傾向に類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴を上記運転履歴データベース220から抽出することさえできればよく、任意の手法を採用することが可能である。
【0186】
・上記運転教示に用いる運転履歴として、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を、上記運転履歴データベース220から抽出することとした。そして、この抽出した運転履歴に基づいて上記運転教示を行うこととした。これに限らず、上記運転教示に用いる運転履歴としては、或る走行経路を実際に走行した車両の運転履歴であればよく、運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似しない運転操作を含んだ運転履歴であってもよい。
【0187】
・上記運転履歴データベースを、運転履歴データベース220及び教示用データベース250によって構成することとした。これに限らず、上記運転履歴データベースを1つのデータベースによって構成することとし、このデータベースに対する運転履歴の登録、同データベースからの運転履歴の抽出等を行うようにしてもよい。
【0188】
・上記運転履歴の運転レベルを評価する評価項目として、燃費、旅行時間、安全性を用いることとした。この他、例えば、スムーズな車両操作、すなわち車両操作の円滑さ等を上記運転レベルの評価項目としてもよい。要は、ドライバの運転レベルが反映される項目であれば上記評価項目として採用することは可能である。
【0189】
・上記運転履歴データベースと上記運転教示部の一部とを、上記車両情報が収集されるプローブ情報通信システムの管理センター200に設けることとした。これに限らず、例えば、上記運転履歴データベースと上記運転教示部とを、センター機能を備えた車両に搭載する構成としてもよい。そして、このセンター機能を備えた車両と運転支援の対象となる車両等との車車間通信を通じて上記車両情報の収集及び運転教示データの送受信を行うようにしてもよい。
【0190】
・上記運転教示を、上記表示装置180に対する画像出力として行うこととした。また、上記運転教示を、上記駆動系制御装置190による車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて行うこととした。これに限らず、例えば、上記運転支援の対象とする車両に音声装置を設けるとともに、この音声装置による音声案内として上記運転教示を行うようにしてもよい。またこの他、上記運転教示を、スマートフォン等の携帯機器を通じて行うことも可能である。要は、上記運転教示が出力態様とは、ドライバに運転教示を認知させることが可能なものであればよく、任意の手法、装置を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0191】
100…車載システム、110…車両操作情報取得部、111…アクセルセンサ、112…ブレーキセンサ、113…加速度センサ、114…ジャイロセンサ、115…操舵角センサ、116…車速センサ、117…エンジンECU、120…経路情報取得部、121…GPS、122…カーナビゲーションシステム、123…ヨーレートセンサ、124…ミリ波レーダー、130…データ受信部、140…車両情報処理部、141…走行経路特定部、142…計上データ生成部、142a…燃費情報算出部、142b…情報紐付部、150…無線送信部、160…無線受信部、170…運転教示データ生成部、180…表示装置、190…駆動系制御装置、200…管理センター、210…無線受信部、220…運転履歴データベース、230…運転分布算出部、240…要因特定部、250…教
示用データベース、260…類似操作情報抽出部、270…近似レベル操作情報選択部、280…無線送信部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転を支援する運転支援システムにおいて、
車両操作に関する情報を含んだ車両情報が該当する経路情報に関連付けされて運転履歴として登録される運転履歴データベースと、
運転支援の対象とする車両の走行経路を特定するとともに、該特定した走行経路に対応する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を運転支援のためのガイドとして前記運転支援の対象とする車両のドライバに教示する運転教示部とを備える
ことを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示する
請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転履歴は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価されて運転レベルが判定されるものであり、
前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記運転履歴の確率密度を前記評価項目毎に推定して前記運転履歴の分布を求めるとともに、該求めた運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両のドライバの運転支援に用いる
請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、前記変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する要素が共通する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示する
請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記運転教示部は、前記変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の単位時間当りの変化量が少ない運転履歴ほど運転レベルが高いものとして判定するものであり、当該判定結果に基づき前記運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項3または4に記載の運転支援システム。
【請求項6】
前記運転教示部は、前記判定された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項5に記載の運転支援システム。
【請求項7】
前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴がその特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類されて登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向を特定す
るとともに、該特定した運転操作傾向との特徴量が類似する運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項8】
前記運転教示部は、前記運転履歴データベースに登録された運転履歴の中からその特徴量に基づいて運転操作パターンを生成するためのクラスタリングを行うとともに、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作が前記クラスタリングした運転操作パターンのいずれのパターンに近いかを判定して、当該ドライバの運転操作傾向との特徴量が類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報を抽出する
請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項9】
前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴が、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価される運転レベル毎に層別されて登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルを前記評価項目の少なくとも1つに基づき判定するとともに、該判定した運転レベルよりもレベルの高い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項1または2または7または8のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項10】
前記運転教示部は、前記判定した運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項9に記載の運転支援システム。
【請求項11】
前記運転教示部は、前記層別された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項10に記載の運転支援システム。
【請求項12】
前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転履歴は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価されて運転レベルが判定されるものであり、
前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記運転履歴の確率密度を前記評価項目毎に推定して前記運転履歴の分布を求めるとともに、該求めた運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両のドライバの運転支援に用いる
請求項7〜11のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項13】
前記運転履歴データベースは、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報が登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記特定した走行経路の特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として前記運転履歴に関する情報を各々抽出し、各々抽出した運転履歴に関する情報を合成してドライバに教示する
請求項1〜12のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項14】
前記運転支援の対象となる車両は、前記運転教示部により抽出される運転履歴を表示する表示装置を備え、前記運転支援の教示を前記表示装置に対する画像出力として行う
請求項1〜13のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項15】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて前記運転支援の教示を行う
請求項1〜14のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項16】
前記運転履歴データベース及び前記運転教示部は、前記車両情報が収集されるプローブ情報通信システムの管理センターに設けられ、
前記管理センターは、前記運転支援の対象とする車両からの要求に応じてドライバに教示すべき運転履歴に関する情報を該当する車両に配信する
請求項1〜15のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項17】
車両の運転を支援する運転支援システムにおいて、
複数種の車両操作に関する情報を含んだ車両情報の履歴である運転履歴が登録された運転履歴データベースと、
運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルを、該ドライバの運転履歴に含んだ単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つを評価項目として判定するとともに、該判定した評価項目に基づく運転レベルよりも運転レベルの高い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を運転支援のためのガイドとして前記運転支援の対象とする車両のドライバに教示する運転教示部とを備える
ことを特徴とする運転支援システム。
【請求項18】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示する
請求項17に記載の運転支援システム。
【請求項19】
前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、
前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記評価項目に基づき分類した運転履歴の確率密度からその分布を推定するとともに、該推定した運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両の運転支援に用いる
請求項18に記載の運転支援システム。
【請求項20】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、前記変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する要素が共通する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示する
請求項19に記載の運転支援システム。
【請求項21】
前記運転教示部は、前記変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の単位時間当りの変化量が少ない運転履歴ほど運転レベルが高いものとして判定するものであり、
当該判定結果に基づき前記運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項19または20に記載の運転支援システム。
【請求項22】
前記運転教示部は、前記判定された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項21に記載の運転支援システム。
【請求項23】
前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴がその特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類されて登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向を特定するとともに、該特定した運転操作傾向との特徴量が類似する運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項18に記載の運転支援システム。
【請求項24】
前記運転教示部は、前記運転履歴データベースに登録された運転履歴の中からその特徴量に基づいて運転操作パターンを生成するためのクラスタリングを行うとともに、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転支援が前記クラスタリングした運転操作パターンのいずれのパターンに近いかを判定して、当該ドライバの類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報を抽出する
請求項18に記載の運転支援システム。
【請求項25】
前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴が、前記評価項目のうちの少なくとも1つに基づき評価された運転レベル毎に層別されて登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項17または18または23または24のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項26】
前記運転教示部は、前記判定した運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項25に記載の運転支援システム。
【請求項27】
前記運転教示部は、前記層別された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項26に記載の運転支援システム。
【請求項28】
前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、
前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記運転履歴の確率密度を前記評価項目毎に推定して前記運転履歴の分布を求めるとともに、該求めた運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両のドライバの運転支援に用いる
請求項23〜27のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項29】
前記運転履歴データベースは、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報が登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記車両の走行経路の特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として前記運転履歴に関する情報を各々抽出し、各々抽出した運転履歴に関する情報を合成してドライバに教示する
請求項17〜28のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項30】
前記運転支援の対象となる車両は、前記運転教示部により抽出される運転履歴を表示する表示装置を備え、前記運転支援の教示を前記表示装置に対する画像出力として行う
請求項17〜29のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項31】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて前記運転支援の教示を行う
請求項17〜30のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項32】
前記運転履歴データベース及び前記運転教示部は、前記車両情報が収集されるプローブ情報通信システムの管理センターに設けられ、
前記管理センターは、前記運転支援の対象とする車両からの要求に応じてドライバに教示すべき運転履歴に関する情報を該当する車両に配信する
請求項17〜31のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項1】
車両の運転を支援する運転支援システムにおいて、
車両操作に関する情報を含んだ車両情報が該当する経路情報に関連付けされて運転履歴として登録される運転履歴データベースと、
運転支援の対象とする車両の走行経路を特定するとともに、該特定した走行経路に対応する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を運転支援のためのガイドとして前記運転支援の対象とする車両のドライバに教示する運転教示部とを備える
ことを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示する
請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転履歴は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価されて運転レベルが判定されるものであり、
前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記運転履歴の確率密度を前記評価項目毎に推定して前記運転履歴の分布を求めるとともに、該求めた運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両のドライバの運転支援に用いる
請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、前記変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する要素が共通する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示する
請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記運転教示部は、前記変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の単位時間当りの変化量が少ない運転履歴ほど運転レベルが高いものとして判定するものであり、当該判定結果に基づき前記運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項3または4に記載の運転支援システム。
【請求項6】
前記運転教示部は、前記判定された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項5に記載の運転支援システム。
【請求項7】
前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴がその特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類されて登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向を特定す
るとともに、該特定した運転操作傾向との特徴量が類似する運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項8】
前記運転教示部は、前記運転履歴データベースに登録された運転履歴の中からその特徴量に基づいて運転操作パターンを生成するためのクラスタリングを行うとともに、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作が前記クラスタリングした運転操作パターンのいずれのパターンに近いかを判定して、当該ドライバの運転操作傾向との特徴量が類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報を抽出する
請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項9】
前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴が、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価される運転レベル毎に層別されて登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルを前記評価項目の少なくとも1つに基づき判定するとともに、該判定した運転レベルよりもレベルの高い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項1または2または7または8のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項10】
前記運転教示部は、前記判定した運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項9に記載の運転支援システム。
【請求項11】
前記運転教示部は、前記層別された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項10に記載の運転支援システム。
【請求項12】
前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、前記運転履歴は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つが評価項目とされて評価されて運転レベルが判定されるものであり、
前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記運転履歴の確率密度を前記評価項目毎に推定して前記運転履歴の分布を求めるとともに、該求めた運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両のドライバの運転支援に用いる
請求項7〜11のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項13】
前記運転履歴データベースは、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報が登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記特定した走行経路の特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として前記運転履歴に関する情報を各々抽出し、各々抽出した運転履歴に関する情報を合成してドライバに教示する
請求項1〜12のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項14】
前記運転支援の対象となる車両は、前記運転教示部により抽出される運転履歴を表示する表示装置を備え、前記運転支援の教示を前記表示装置に対する画像出力として行う
請求項1〜13のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項15】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて前記運転支援の教示を行う
請求項1〜14のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項16】
前記運転履歴データベース及び前記運転教示部は、前記車両情報が収集されるプローブ情報通信システムの管理センターに設けられ、
前記管理センターは、前記運転支援の対象とする車両からの要求に応じてドライバに教示すべき運転履歴に関する情報を該当する車両に配信する
請求項1〜15のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項17】
車両の運転を支援する運転支援システムにおいて、
複数種の車両操作に関する情報を含んだ車両情報の履歴である運転履歴が登録された運転履歴データベースと、
運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルを、該ドライバの運転履歴に含んだ単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費もしくは旅行時間もしくは車両操作の安全性の少なくとも1つを評価項目として判定するとともに、該判定した評価項目に基づく運転レベルよりも運転レベルの高い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を運転支援のためのガイドとして前記運転支援の対象とする車両のドライバに教示する運転教示部とを備える
ことを特徴とする運転支援システム。
【請求項18】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示する
請求項17に記載の運転支援システム。
【請求項19】
前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、
前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記評価項目に基づき分類した運転履歴の確率密度からその分布を推定するとともに、該推定した運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両の運転支援に用いる
請求項18に記載の運転支援システム。
【請求項20】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向に類似する運転操作を含んだ運転履歴として、前記変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する要素が共通する運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出し、該抽出した運転履歴に関する情報を当該ドライバに教示する
請求項19に記載の運転支援システム。
【請求項21】
前記運転教示部は、前記変数によって示される動的周囲状況もしくは車両状態の単位時間当りの変化量が少ない運転履歴ほど運転レベルが高いものとして判定するものであり、
当該判定結果に基づき前記運転支援の対象とする車両のドライバよりも運転レベルが高いと判定された運転履歴を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項19または20に記載の運転支援システム。
【請求項22】
前記運転教示部は、前記判定された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項21に記載の運転支援システム。
【請求項23】
前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴がその特徴量に基づき運転操作傾向の別に分類されて登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転操作傾向を特定するとともに、該特定した運転操作傾向との特徴量が類似する運転履歴に関する情報を前記運転履歴データベースから抽出する
請求項18に記載の運転支援システム。
【請求項24】
前記運転教示部は、前記運転履歴データベースに登録された運転履歴の中からその特徴量に基づいて運転操作パターンを生成するためのクラスタリングを行うとともに、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転支援が前記クラスタリングした運転操作パターンのいずれのパターンに近いかを判定して、当該ドライバの類似する運転操作傾向を含んだ運転履歴に関する情報を抽出する
請求項18に記載の運転支援システム。
【請求項25】
前記運転履歴データベースは、複数種の運転履歴が、前記評価項目のうちの少なくとも1つに基づき評価された運転レベル毎に層別されて登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項17または18または23または24のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項26】
前記運転教示部は、前記判定した運転支援の対象とする車両のドライバの属する層の運転レベルの次に運転レベルの高い層に属する運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項25に記載の運転支援システム。
【請求項27】
前記運転教示部は、前記層別された運転履歴のうち、前記運転支援の対象とする車両のドライバの運転レベルに近い運転履歴に関する情報を前記層別された運転履歴データベースから抽出する
請求項26に記載の運転支援システム。
【請求項28】
前記車両情報には、車両周辺の静的な状況を示す静的周囲状況及び車両周辺の動的な状況を示す動的周囲状況及び車両状態に関する情報が含まれ、
前記運転教示部は、前記静的周囲状況及び前記動的周囲状況及び前記車両状態に関する情報の各々を変数として前記運転履歴の確率密度を前記評価項目毎に推定して前記運転履歴の分布を求めるとともに、該求めた運転履歴の分布のうちの前記評価項目に基づく運転レベルが「高」及び「低」とされた各運転履歴の分布の乖離が相対的に大きくなる1乃至複数の変数を前記運転レベルが相違する要因として特定し、該特定した変数によって示される前記静的周囲状況もしくは前記動的周囲状況もしくは前記車両状態に関する情報を該当する評価項目を改善すべき要素として前記対象とする車両のドライバの運転支援に用いる
請求項23〜27のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項29】
前記運転履歴データベースは、複数の車両の車両操作に基づく複数の車両情報が登録されるものであり、
前記運転教示部は、前記車両の走行経路の特定の地点もしくは特定の交通要素もしくは特定の時間帯を単位として前記運転履歴に関する情報を各々抽出し、各々抽出した運転履歴に関する情報を合成してドライバに教示する
請求項17〜28のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項30】
前記運転支援の対象となる車両は、前記運転教示部により抽出される運転履歴を表示する表示装置を備え、前記運転支援の教示を前記表示装置に対する画像出力として行う
請求項17〜29のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項31】
前記運転教示部は、前記運転支援の対象とする車両の駆動系に対する制動力の付与を通じて前記運転支援の教示を行う
請求項17〜30のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項32】
前記運転履歴データベース及び前記運転教示部は、前記車両情報が収集されるプローブ情報通信システムの管理センターに設けられ、
前記管理センターは、前記運転支援の対象とする車両からの要求に応じてドライバに教示すべき運転履歴に関する情報を該当する車両に配信する
請求項17〜31のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【公開番号】特開2012−113631(P2012−113631A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263900(P2010−263900)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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