説明

運転支援装置

【課題】車両の経路案内において過剰な案内出力を防止すること。
【解決手段】状況判定部22は、地図データ、走行予定経路、走行車線、走行速度、走行履歴、運転者情報、同乗者、車内の音、オーディオ装置2の動作状態、灯火系40および車両制御系50の動作状態が示す状況から、音声通知の必要性を判断する。その結果、音声通知の必要性が無い場合には、音声出力を抑制した簡易通知を実行し、必要な場合には音声通知を伴う詳細な通知を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報提供によって車両の運転を支援する運転支援装置に関し、特に過剰な案内出力を防止する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、右左折などの運転操作が必要な交差点を事前に通知することで運転操作を支援する運転支援装置、所謂ナビゲーション装置が実現されている。さらに近年では、交差点の通過時に車両周辺を監視し、危険通知を行なうことで、安全な通行を支援する技術も考案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、交差点の右折時に対向車や歩行者を監視し、監視結果に基づいて安全性を判断し、運転者に対する通知や車両制御を実行する技術を公開している。
【0004】
また、特許文献2は、交差点前のレーン変更時、変更による他車との衝突可能性を判断し、安全に車線変更が可能であることが確認されてから車線変更の案内を行なう技術を公開している。
【0005】
【特許文献1】特開2001−52297号公報
【特許文献2】特開2004−185504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように従来では、いかに必要な情報を収集し、多くの情報を運転者に提供するかに注力されてきた。しかしながら、過剰な情報を運転者に対して提供すると、運転者や同乗者に不快感(煩わしさ)を与えるのみならず、車両から提供される情報に対する運転者の注意が低下し、必要な情報を運転者が見過ごす場合も考えられる。
【0007】
さらに、同一の場所であっても、自車両の状況によって通知の必要性は異なる。例えば、運転者が初めて走行する場所では、交差点の存在自体を予め通知することが求められる。しかし、運転者がその場所を熟知している(自宅周辺などの)場合には、交差点の存在自体を通知する必要はない。
【0008】
特に、車載オーディオ装置などが音声出力をしている場合には、音声出力を遮って運転者が既に承知している内容を通知すると、運転者の不快感は大きなものとなる。また、同乗者との会話を行なっている場合や、子供が寝ている場合などにも、音声出力による通知は控えることが望ましい。
【0009】
ところが、従来の技術はこのような点について考慮されておらず、過剰な情報提供を行なう場合があるという問題点があった。そのため、状況に適応して提供する情報を選択することのできる運転支援装置の実現が重要な課題となっていた。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、課題を解決するためになされたものであり、状況に適応して提供する情報を選択し、過剰な案内出力を防止する運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明に係る運転支援装置は、情報提供によって車両の運転を支援する運転支援装置であって、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう経路案内手段と、運転者に関する情報、同乗者に関する情報、自車両の状態、車載装置の動作状態のうち少なくともいずれか一つに基づいて、前記経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定する抑制判定手段と、前記抑制判定手段による判定結果に基づいて前記経路案内出力の内容を制御する出力制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この請求項1の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、運転者に関する情報、同乗者に関する情報、自車両の状態、車載装置の動作状態のうち少なくともいずれか一つに基づいて、経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定し、判定結果に基づいて前記経路案内出力の内容を制御する。
【0013】
また、請求項2の発明に係る運転支援装置は、請求項1の発明において、前記抑制判定手段は、前記自車両の状態として位置情報を取得し、自車両の位置が予め登録された範囲内である場合に前記経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする。
【0014】
この請求項2の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、自車両の状態として位置情報を取得し、自車両の位置が予め登録された範囲内であるならば経路案内出力の抑制が必要であると判定する。
【0015】
また、請求項3の発明に係る運転支援装置は、請求項1または2の発明において、前記抑制判定手段は、前記自車両の状態として自車両の走行履歴を取得し、前記走行履歴に基づいて経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定することを特徴とする。
【0016】
この請求項3の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、自車両の状態として自車両の走行履歴を取得し、走行履歴に基づいて経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定する。
【0017】
また、請求項4の発明に係る運転支援装置は、請求項3の発明において、前記抑制判定手段は、前記運転者を識別して運転者に対応した走行履歴を取得し、当該運転者の走行履歴に基づいて経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定することを特徴とする。
【0018】
この請求項4の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、運転者を識別して運転者に対応した走行履歴を取得し、当該運転者の走行履歴に基づいて経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定する。
【0019】
また、請求項5の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜4のいずれか一つの発明において、前記抑制判定手段は、座席状態を検知して同乗者の有無を識別し、同乗者が居る場合に経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする。
【0020】
この請求項5の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、座席状態を検知して同乗者の有無を識別し、同乗者が居るならば経路案内出力の抑制が必要であると判定する。
【0021】
また、請求項6の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜5のいずれか一つの発明において、前記抑制判定手段は、チャイルドシートが設置されている場合に経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする。
【0022】
この請求項6の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、チャイルドシートが設置されているならば経路案内出力の抑制が必要であると判定する。
【0023】
また、請求項7の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜6のいずれか一つの発明において、前記抑制判定手段は、前記車載装置が音声出力を実行中である場合に経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする。
【0024】
この請求項7の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、車載装置が音声出力を実行中であるならば経路案内出力の抑制が必要であると判定する。
【0025】
また、請求項8の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜7のいずれか一つの発明において、車室内の音を収集する集音手段をさらに備え、前記抑制判定手段は、前記集音手段が集音した車室内の音の音量が所定値以上である場合に経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする。
【0026】
この請求項8の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、車室内の音の音量が所定値以上であるならば経路案内出力の抑制が必要であると判定する。
【0027】
また、請求項9の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜8のいずれか一つの発明において、前記抑制判定手段は、自車両の状態が走行すべき経路に適応している場合に経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする。
【0028】
この請求項9の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、自車両の状態が走行すべき経路に適応しているならば経路案内出力の抑制が必要であると判定する。
【0029】
また、請求項10の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜9のいずれか一つの発明において、前記出力制御手段は、経路案内出力の抑制が必要である場合に音声出力の音量を低下することを特徴とする。
【0030】
この請求項10の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、運転者に関する情報、同乗者に関する情報、自車両の状態、車載装置の動作状態のうち少なくともいずれか一つに基づいて、経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定し、経路案内出力の抑制が必要であるならば音声出力の音量を低下する。
【0031】
また、請求項11の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜10のいずれか一つの発明において、前記出力制御手段は、経路案内出力の抑制が必要である場合に音声出力を抑止することを特徴とする。
【0032】
この請求項11の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、運転者に関する情報、同乗者に関する情報、自車両の状態、車載装置の動作状態のうち少なくともいずれか一つに基づいて、経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定し、経路案内出力の抑制が必要であるならば音声出力を抑止する。
【0033】
また、請求項12の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜11のいずれか一つの発明において、前記出力制御手段によって前記経路案内出力が抑制された場合に少なくとも表示態様を変更するインジケータをさらに備えたことを特徴とする。
【0034】
この請求項12の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、運転者に関する情報、同乗者に関する情報、自車両の状態、車載装置の動作状態のうち少なくともいずれか一つに基づいて経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定し、経路案内出力の抑制が必要であるならば音声出力を抑止するとともに、インジケータの表示態様を変更する。
【発明の効果】
【0035】
請求項1の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、運転者に関する情報、同乗者に関する情報、自車両の状態、車載装置の動作状態のうち少なくともいずれか一つに基づいて、経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定し、判定結果に基づいて前記経路案内出力の内容を制御するので、状況に適応して提供する情報を選択し、過剰な案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0036】
また、請求項2の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、自車両の状態として位置情報を取得し、自車両の位置が予め登録された範囲内であるならば経路案内出力の抑制が必要であると判定するので、自車両が所定の範囲内に位置する場合に過剰な案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0037】
また、請求項3の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、自車両の状態として自車両の走行履歴を取得し、走行履歴に基づいて経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定するので、過去に走行した場所における過剰な案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0038】
また、請求項4の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、運転者を識別して運転者に対応した走行履歴を取得し、当該運転者の走行履歴に基づいて経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定するので、運転者が過去に走行した場所における過剰な案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0039】
また、請求項5の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、座席状態を検知して同乗者の有無を識別し、同乗者が居るならば経路案内出力の抑制が必要であると判定するので、同乗者がいる場合に過剰な案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0040】
また、請求項6の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、チャイルドシートが設置されているならば経路案内出力の抑制が必要であると判定するので、子供が乗車している場合に過剰な案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0041】
また、請求項7の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、車載装置が音声出力を実行中であるならば経路案内出力の抑制が必要であると判定するので、他の音声出力を実行中における過剰な案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0042】
また、請求項8の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、車室内の音の音量が所定値以上であるならば経路案内出力の抑制が必要であると判定するので、車内の状況に適応して過剰な案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0043】
また、請求項9の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、自車両の状態が走行すべき経路に適応しているならば経路案内出力の抑制が必要であると判定するので、走行状態に適応して提供する情報を選択し、過剰な案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0044】
また、請求項10の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、運転者に関する情報、同乗者に関する情報、自車両の状態、車載装置の動作状態のうち少なくともいずれか一つに基づいて、経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定し、経路案内出力の抑制が必要であるならば音声出力の音量を低下するので、状況に適応して提供する情報を選択し、過剰な音量による案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0045】
また、請求項11の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、運転者に関する情報、同乗者に関する情報、自車両の状態、車載装置の動作状態のうち少なくともいずれか一つに基づいて、経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定し、経路案内出力の抑制が必要であるならば音声出力を抑止するので、過剰な案内出力を防止可能な運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0046】
また、請求項12の発明によれば運転支援装置は、運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう場合に、運転者に関する情報、同乗者に関する情報、自車両の状態、車載装置の動作状態のうち少なくともいずれか一つに基づいて経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定し、経路案内出力の抑制が必要であるならば音声出力を抑止するとともに、インジケータの表示態様を変更するので、過剰な案内出力を防止しつつ運転者の注意を促す運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る運転支援装置の好適な実施例であるナビゲーション装置について詳細に説明する。
【実施例】
【0048】
図1は、本発明の実施例であるナビゲーション装置の概要構成を示す概要構成図である。同図に示すように、ナビゲーション装置1はオーディオ装置2、車内通知系30、灯火系40、車両制御系50と接続する。
【0049】
オーディオ装置2は、ラジオやテレビなどの放送の受信によって、また、カセットテープ、CD、DVD、HDなどの記録媒体からの読み出しによって取得した音楽や映像を、車内通知系30を介して乗員(運転者および同乗者)に提供する。
【0050】
車内通知系30は、具体的には、映像出力に使用するディスプレイ31、音声出力に使用するスピーカ32、簡易な表示通知に使用するインジケータ33などを含み、オーディオ装置2、ナビゲーション装置1の他、各種車載機器に共用される。
【0051】
灯火系40は、自車両の前方の照明(前照灯)として機能するヘッドライト41、右左折の通知などに使用するウインカーランプ(方向指示灯)、また図示しないブレーキランプなどを含む。
【0052】
車両制御系50は、車両の動作制御を行なう装置群であり、アクセル操作に基づいてエンジンの動作を制御するエンジン制御機構51、ブレーキペダルの操作に基づいて車両の制動を行なうブレーキ制御機構52、ハンドル操作に基づいて車両の舵角を制御する舵角制御機構53などを含む。
【0053】
灯火系40および車両制御系50は、その動作状態(運転者による操作状態を含む)をナビゲーション装置1に出力する。また、車両制御系50は、ナビゲーション装置1からの制御を受ける。
【0054】
ナビゲーション装置1は、その内部にGPS(Global Positioning System)11、地図情報記憶部12、VICS(Vehicle Information and Communication System)通信部13、走行車線認識部14、走行速度取得部15、走行履歴記憶部16、運転者情報取得部17、同乗者認識部18、車内マイク19、経路設定部21、状況判定部22、通知制御部23および車両動作制御部24を有する。
【0055】
GPS11は、人工衛星との通信によって自車両の位置を特定する手段である。また、GPS11は自車両の位置を特定するために高精度の時刻情報を取得する。地図情報記憶部12は、道路の形状や周辺の施設を含む地図データを格納する記憶手段である。
【0056】
VICS通信部13は、道路に設置された路側通信装置と通信する通信手段であり、このVICS通信部13によって渋滞などの交通情報を取得することができる。また、走行車線認識部14は自車両の走行車線を認識する手段であり、走行速度取得部15は、車輪の回転速度などから自車両の走行速度を取得する手段である。
【0057】
走行履歴記憶部16は、自車両が過去に走行した経路を走行履歴データとして記憶する記憶部であり、この走行履歴データによって自車両が過去に走行した道路と走行頻度を判定することができる。
【0058】
運転者情報取得部17は、自車両の運転者に関する情報を取得する手段であり、例えば運転者が過去に走行した道路と走行頻度を取得することができる。具体的には、カードなどの記憶媒体に予め記憶させておき、走行開始時に読み取りを行なえば良い。
【0059】
同乗者認識部18は、運転者以外の乗員の有無を認識する手段である。具体的には、座席に設けたシートセンサの出力から乗員が着座しているか否かを判定する。さらに、チャイルドシートが設置されている場合には、その座席に子供がいると判定する。
【0060】
車内マイク19は、自車両の車室内の音声を収集する集音手段である。車両の乗員が会話をしている場合やオーディオ装置2が音声出力を行なっている場合などには、この車内マイク19が所定値以上の音量を検出する。
【0061】
経路設定部21は、GPS11が特定した現在位置や地図情報記憶部12が記憶する地図データ、VICS通信部13が取得した交通情報などを用いて自車両の走行予定経路を設定し、自車両の位置に応じて経路案内出力を行なう。
【0062】
状況判定部22は、地図情報記憶部12、VICS通信部13、走行車線認識部14、走行速度取得部15、走行履歴記憶部16、運転者情報取得部17、同乗者認識部18、車内マイク19、経路設定部21、オーディオ装置2、灯火系40、車両制御系50の出力に基づいて状況の判定、すなわち、経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定する。さらに、状況判定部22は、車両の動作制御が必要であるか否かの判定を併せて行なう。
【0063】
通知制御部23は、車内通知系30を制御して経路案内出力を実行する制御部であり、その内部に通知方法選択部23a、情報量制御部23bおよび音量制御部23cを有する。
【0064】
通知方法選択部23aは、経路案内出力の抑制が必要でなければ、ディスプレイ31による表示出力とスピーカ32による音声出力とをともに選択し、詳細な通知を行なう。一方、経路案内出力の抑制が必要である場合、通知方法選択部23aは、スピーカ32による音声通知を選択せず、ディスプレイ31を用いた表示出力を選択して簡易な通知を行なう。
【0065】
また、音声通知を選択しない場合、ディスプレイ31の表示出力のみで通知を行なうこととすると、運転者が表示を見落とす(案内出力を行なっていること自体に気付かない)場合がある。そこで、インジケータ33を運転者の視認しやすい場所に設置し、案内出力の実行時に点灯することで、運転者の注意を喚起する。なお、インジケータは点滅、消灯など、運転者の注意を喚起可能であれば、任意の出力を使用可能である。
【0066】
情報量制御部23bは、案内出力によって運転者に提供する情報の量を制御する。例えば、運転者が熟知している場所での案内については、渋滞情報など動的な情報のみを通知し、運転者が初めて走行する場所では、交差点の存在、形状、車線の配置などを詳細に通知する。
【0067】
音量制御部23cは、スピーカからの音声出力を行なう場合に、その音量を調節する処理を行なう。例えば、チャイルドシートが装着されているならば子供が寝ている可能性があるので、音声出力の音量を小さくする。この時、車内マイク19が出力した車内音や、オーディオ装置2の操作状態から、車内が静かである場合にのみ音量を小さくすることとしてもよい。なお、通知制御部23が音声による案内を行なう場合であって、オーディオ装置2が音声出力を実行中である場合、通知制御部23はオーディオ装置2の動作に割り込み、オーディオ装置2からの音声出力を一時的に停止して案内音声を出力する。
【0068】
車両動作制御部24は、車両制御系50に介入して運転操作の支援や車両の挙動の制御を行なう処理部である。例えば、交差点への進入時に減速や車線変更が必要である場合にこの車両制御系50への介入を実行する。
【0069】
つづいて、ナビゲーション装置1の動作について図2を参照して説明する。運転者に対する経路の案内は、主要な交差点や右左折が必要な交差点に接近した場合に、段階的に実行することが一般的である。例えば、右折予定の交差点に接近した場合、交差点の700m手前で最初の通知(第1の通知)を行ない、さらに300m手前で2度目の通知(第2の通知)を行ない、交差点の直前で最終的な通知(第3の通知)を行なう。
【0070】
ここで、第1の通知は、右折が必要な交差点に接近していることを運転者に認識させることを目的とした通知(存在通知)である。そして、第2の通知は、右折に必要な準備、すなわち車線変更やウインカーランプ42の点灯、減速などを実行させることを目的とした通知(準備指示)である。さらに、第3の通知は、右折自体を実行させることを目的とした通知(行動指示)である。
【0071】
ところで運転者がこの道路を初めて走行するなど、地理に不案内である場合では第1〜第3の通知はそれぞれ利用価値が高い。しかし、自宅周辺や職場周辺など、運転者が熟知している場所では運転者が交差点の存在自体は認識しているので、第1の通知(存在通知)は不要となる。同様に、運転者が車線変更などの準備を完了している場合には、第2の通知(準備指示)は不要であり、運転者が右折などの行動を取る意思があるならば、第3の通知(行動指示)は不要となる。
【0072】
このような不要の通知(過剰な情報)を音声によって提供すると、運転者や同乗者に不快感(煩わしさ)を与える。特に、オーディオ装置2によって音楽やニュースなどを出力中であれば、運転者(もしくは同乗者)が希望する音声出力を中断することとなり、また、同乗者が居る場合(同乗者認識部18によって判別する)乗員間の会話を阻害する場合もある。さらに、車両から提供される情報に対する運転者の注意が低下し、必要な情報を運転者が見過ごす場合も考えられる。また、子供が寝ている場合などにも、音声出力による通知は控えることが望ましい。
【0073】
そこで状況判定部22は、第1の通知に対して「現在位置が詳細通知の不要なエリア内であるか否か」を判定し、詳細通知の不要なエリア内であると判定した場合に経路案内出力(第1の通知)の抑制を行なう。
【0074】
具体的には、自宅や職場として登録された地点の近傍や、予め指定された範囲を詳細通知不要エリアとして設定する。また、走行履歴記憶部16が過去に頻繁に走行したことを記憶している場所についても詳細通知不要エリアとして設定することができる。
【0075】
なお詳細通知不要エリアは、運転者ごとに個別に設定することが好ましい。そこで、運転者情報取得部17によって運転者を識別し、運転者に対応した詳細通知不要エリアを使用して経路案内出力の抑制が必要であるか否かの判定を行なう。
【0076】
また状況判定部22は、第2の通知に対して「車線変更などの準備が完了しているか」を判定し、準備が完了していると判定した場合に経路案内出力(第2の通知)の抑制を行なう。
【0077】
具体的には、経路設定部21から自車両の走行予定経路と現在位置を取得し、地図情報記憶部12から取得した道路形状および走行車線認識部14から取得した現在の走行車線を用いて車線変更が必要であるか否か(完了しているか否か)を判定する。また、走行速度取得部15が取得した走行速度から減速が必要である否か(完了しているか否か)、灯火系40の出力から灯火系40の操作が必要であるか否か(完了しているか否か)をそれぞれ判定する。
【0078】
その結果、車線変更や減速など必要な操作が全て終了している場合に、状況判定部22は「準備が完了している」と判定する。
【0079】
同様に、状況判定部22は、第3の通知に対して「運転者が右折などの行動を取る意思があるか」を判定し、行動の意思があると判定した場合に経路案内出力(第2の通知)の抑制を行なう。
【0080】
具体的には、行動の意思の有無は走行レーンや速度、灯火系の状態から判定する。例えば、図2に示した状況下で、自車両C1が左側車線の走行を継続した場合、左側車線は左折専用であるので、「左折の意思あり」と判定する。一方、右側に車線変更した場合、直進と右折の双方が可能であるが、右ウインカーの点灯を継続して減速したならば、「右折の意思あり」と判定することができ、右ウインカーの点灯を終了したならば「直進の意思あり」と判定することができる。
【0081】
そして、状況判定部22は、図3に示すように、経路案内出力の抑制の必要が無い場合には音声と表示を用いた詳細通知を実行し、経路案内出力の抑制が必要であると判定した場合には、インジケータと表示を用いた(音声を用いない)簡易通知を実行する。
【0082】
つぎに、ナビゲーション装置1の処理動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。同図に示した処理フローは、ナビゲーション装置1が経路案内の必要性を検出した場合に開始される処理である。
【0083】
まず、自車両が第1の通知地点に到達する(ステップS101)と、状況判定部22は、現在位置が詳細通知不要エリア内であるか否かを判定する(ステップS102)。その結果、現在位置が詳細通知不要エリア内である場合(ステップS102,Yes)、状況判定部22は簡易通知を選択し(ステップS103)、詳細通知不要エリア内では無い場合(ステップS102,No)には詳細通知を選択する(ステップS110)。
【0084】
簡易通知(ステップS103)もしくは詳細通知(ステップS110)の終了後、自車両が第2の通知地点に到達したならば(ステップS104)、状況判定部22は準備が完了しているか否かを判定する(ステップS105)。その結果、準備が完了しているならば(ステップS105,Yes)、状況判定部22は簡易通知を選択し(ステップS106)、準備が完了していない場合(ステップS102,No)には詳細通知を選択する(ステップS112)。
【0085】
簡易通知(ステップS106)もしくは詳細通知(ステップS112)の終了後、自車両が第3の通知地点に到達したならば(ステップS107)、状況判定部22は運転者に行動意思があるか否かを判定する(ステップS108)。その結果、運転者に行動意思があると判定したならば(ステップS108,Yes)、状況判定部22は簡易通知を選択し(ステップS109)、準備が完了していない場合(ステップS108,No)には詳細通知を選択(ステップS113)して処理を終了する。
【0086】
運転者や自車両の状態などから状況を判定し、音声出力を抑止した簡易通知を必要に応じて行なうので、過剰な情報提供を防止し、運転者や同乗者の快適性を向上することができる。なお、自車両の状態によって誤った経路を選択する可能性のある場合や、事故が発生する可能性がある場合など、リスクが発生した場合には、音声出力を含めた詳細な通知を行なうことが望ましい。
【0087】
このリスクの重視について、車線変更などの右左折の準備を行なう場合を例に、図5を参照して説明する。右左折のための車線変更は、その交差点からある程度手前で完了している必要がある。
【0088】
この準備(車線変更)が完了しているべき地点を準備完了地点とすると、その手前に準備行為自体に要する距離が存在する。さらにその直前では、運転者は必要な運転操作を余裕が無い状況で実行せねばならないので、車両動作制御部24によって車両制御系50に介入し、運転操作の支援(サポート)を行なう。
【0089】
運転操作の支援までは必要ない状況であっても、準備完了地点までの距離が短くなってきた場合には、快適性を重視した通知(簡易通知)からリスクを重視した通知、すなわち音声出力を伴う詳細通知を実行し、運転者に対して注意を促す。
【0090】
上述してきたように、本実施例にかかるナビゲーション装置1は、状況に適応して提供する情報およびその内容を選択し、特に不要な場合には音声による出力を抑制するので、過剰な案内出力を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明にかかる車載情報提供装置は、車両の乗員に対する情報提供に有用であり、特に過剰な案内出力の防止に適している。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施例であるナビゲーション装置の概要構成を示す該要構成図である。
【図2】通知の具体例を説明する説明図である。
【図3】通知方法の選択について説明する説明図である。
【図4】図1に示したナビゲーション装置の処理動作を説明するフローチャートである。
【図5】快適性重視の通知とリスク重視の通知について説明する説明図である。
【符号の説明】
【0093】
1 ナビゲーション装置
11 GPS
12 地図情報記憶部
13 VICS通信部
14 走行車線認識部
15 走行速度取得部
16 走行履歴記憶部
17 運転者情報取得部
18 同乗者認識部
19 車内マイク
21 経路設定部
22 状況判定部
23 通知方法制御部
23a 通知方法選択部
23b 情報量制御部
23c 音量制御部
24 車両動作制御部
25 燃料残量判定部
30 車内通知系
31 ディスプレイ
32 スピーカ
33 インジケータ
40 灯火系
41 ヘッドライト
42 ウインカーランプ
50 車両制御系
51 エンジン制御機構
52 ブレーキ制御機構
53 舵角制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報提供によって車両の運転を支援する運転支援装置であって、
運転者に対して走行すべき経路を通知する経路案内出力を行なう経路案内手段と、
運転者に関する情報、同乗者に関する情報、自車両の状態、車載装置の動作状態のうち少なくともいずれか一つに基づいて、前記経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定する抑制判定手段と、
前記抑制判定手段による判定結果に基づいて前記経路案内出力の内容を制御する出力制御手段と、
を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記抑制判定手段は、前記自車両の状態として位置情報を取得し、自車両の位置が予め登録された範囲内である場合に前記経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記抑制判定手段は、前記自車両の状態として自車両の走行履歴を取得し、前記走行履歴に基づいて経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記抑制判定手段は、前記運転者を識別して運転者に対応した走行履歴を取得し、当該運転者の走行履歴に基づいて経路案内出力の抑制が必要であるか否かを判定することを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記抑制判定手段は、座席状態を検知して同乗者の有無を識別し、同乗者が居る場合に経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記抑制判定手段は、チャイルドシートが設置されている場合に経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記抑制判定手段は、前記車載装置が音声出力を実行中である場合に経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項8】
車室内の音を収集する集音手段をさらに備え、前記抑制判定手段は、前記集音手段が集音した車室内の音の音量が所定値以上である場合に経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記抑制判定手段は、自車両の状態が走行すべき経路に適応している場合に経路案内出力の抑制が必要であると判定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記出力制御手段は、経路案内出力の抑制が必要である場合に音声出力の音量を低下することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記出力制御手段は、経路案内出力の抑制が必要である場合に音声出力を抑止することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記出力制御手段によって前記経路案内出力が抑制された場合に少なくとも表示態様を変更するインジケータをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−214945(P2006−214945A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29782(P2005−29782)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】