説明

過電流保護装置およびレーザ装置

【課題】所定の電流値以上の電流が流れることを検出すると、電源から遮断する過電流保護回路の偶発的な故障に起因して、所定の電流値以上の電流を継続して出力装置に流れるのを未然に防止することが可能な過電流保護装置を提供する。
【解決手段】この過電流保護装置5は、レーザ出力装置4に供給する電流値を監視するとともに過電流が流れた際に電流を遮断する過電流保護回路5aと、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かを確認するトランジスタ32(TR2)、抵抗33(R4)、接点RY1−3、接点RY1−2、電源23、接点RY1−1、および、フォトカプラ34(PHC1)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過電流保護装置およびレーザ装置に関し、特に、過電流保護回路を備えた過電流保護装置およびレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からレーザは、生産機械に多く利用され、生産機械で必要とされるレーザの最大出力を抑制することにより、レーザの安全性が確保されている。一方、レーザの最大出力を抑制するための出力制御を行うための制御プログラムの誤り、出力制御指令伝達時の誤りの発生、または、回路部品およびレーザ出力装置の偶発的な故障に起因して、レーザの最大出力が抑制できないという不都合がある。
【0003】
従来では、このような不都合を防止するために、電源供給電流路に過電流保護回路が設けられる過電流保護装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この過電流保護装置では、電圧源、スイッチ、過電流保護回路(ヒューズ、負荷電流検出用の抵抗)、および、負荷が直列に接続されている。また、負荷電流検出用の抵抗の両端には、トランジスタが設けられており、負荷電流検出用の抵抗の両端の電圧が所定の電圧値になった場合に、トランジスタがオンすることにより、ヒューズを溶断するように構成されている。そして、この過電流保護装置をレーザ出力装置に用いることにより、レーザ出力の増加に伴ってレーザ出力装置の消費電流が増加した場合に、ヒューズが溶断されることにより、電圧源からレーザ出力装置に供給される電力が遮断されて、レーザ出力が停止される。これにより、レーザの最大出力が抑制される。なお、この過電流保護装置では、抵抗およびコンデンサからなる時定数回路を介して過電流保護回路が動作されるように構成されており、電源投入時などの瞬間的な大電流(突入電流)によって、過電流保護回路が動作しない(ヒューズが溶断しない)ように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−343966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の過電流保護装置では、過電流が生じた場合(レーザ出力の増加に伴ってレーザ出力装置の消費電流が増加した場合)に、過電流保護回路に設けられるトランジスタなどの電気/電子部品が偶発的に故障することに起因して、ヒューズを溶断できなくなるという不都合がある。このため、所定の電流値以上の電流がレーザ出力装置に流れるという問題点がある。たとえば、過電流保護回路に設けられるトランジスタが偶発的な故障によりオン/オフの制御ができなくなった場合や、トランジスタが負荷電流検出用の抵抗両端の電圧を正しく検知できない場合には、ヒューズが溶断できなくなり、所定の電流値以上の電流値がレーザ出力装置に流れる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、所定の電流値以上の電流が流れることを検出すると、電源から遮断する過電流保護回路の偶発的な故障に起因して、所定の電流値以上の電流を継続して出力装置に流れるのを未然に防止することが可能な過電流保護装置およびレーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による過電流保護装置は、出力装置に供給する電流値を監視するとともに電流値が所定の電流値以上になったときに供給する電流を遮断する過電流保護回路と、過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認する動作確認手段とを備える。
【0008】
この第1の局面による過電流保護装置では、上記のように、過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認するための動作確認手段を備えることによって、動作確認手段により過電流保護回路が正常に動作できないことを検知することができるので、過電流保護回路の偶発的な故障に起因して、所定の電流値以上の電流が出力装置に流れるのを未然に防止することができる。
【0009】
この発明の第2の局面によるレーザ装置は、レーザ光を出力するレーザ出力部と、レーザ出力部に供給する電流値を監視するとともに電流値が所定の電流値以上になったときに供給する電流を遮断する過電流保護回路と、過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認するための動作確認手段とを含む過電流保護装置とを備える。
【0010】
この第2の局面によるレーザ装置では、上記のように、過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認するための動作確認手段を含む過電流保護装置を備えることによって、動作確認手段により過電流保護回路が正常に動作できないことを検知することができるので、過電流保護回路の偶発的な故障に起因して、所定の電流値以上の電流がレーザ出力部に流れるのを未然に防止するレーザ装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態によるレーザ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるレーザ装置のセルフテスト時の回路図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるレーザ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態によるレーザ装置の通常動作時の回路図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるレーザ装置のセルフテスト時の回路図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるレーザ装置のセルフテスト時にシャント抵抗に流れる電流を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態によるレーザ装置のセルフテスト時の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態によるレーザ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態によるレーザ装置のセルフテスト時の回路図である。
【図10】本発明の第3実施形態によるレーザ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の第4実施形態によるレーザ装置のセルフテスト時の回路図である。
【図12】本発明の第1および第3実施形態の変形例によるレーザ装置のトランジスタを小容量化するためのブリーダ抵抗の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、同一の構成については同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による過電流保護装置5が設けられるレーザ装置100の概略の構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、レーザ装置100は、AC電圧源1をオン/オフする電源スイッチ2と、AC電圧源1をDC電圧源に変換するAC/DCコンバータ3と、レーザ出力装置4と、AC/DCコンバータ3とレーザ出力装置4との間に設けられる過電流保護装置5と、レーザ装置100全体の制御を行う制御部6と、過電流保護装置5に異常が確認された際に異常を通知する表示灯7、ディスプレイ8、または上位コントローラ9とを備えている。また、過電流保護装置5の内部には、過電流保護回路5aが設けられている。なお、表示灯7、ディスプレイ8および上位コントローラ9への異常通知は、本発明の「通知手段」の一例である。また、レーザ出力装置4は、本発明の「出力装置」または「レーザ出力部」の一例である。
【0015】
AC電圧源1の一方端は、電源スイッチ2を介して、AC/DCコンバータ3に接続されている。また、AC電圧源1の他方端は、AC/DCコンバータ3に接続されている。制御部6と過電流保護装置5とは、DC電源線P1を介して、AC/DCコンバータ3に接続されている。また、過電流保護装置5は、レーザ用電源線P2を介してレーザ出力装置4に接続されている。また、制御部6は、過電流保護装置5および表示灯7に接続されている。また、制御部6は、上位コントローラ用通信線L1を介して上位コントローラ9に接続されている、または、ディスプレイ用通信線L2を介してディスプレイ8に接続されている。
【0016】
次に、図2を参照して、第1実施形態による過電流保護装置5の詳細な構成について説明する。
【0017】
AC/DCコンバータ3は、DC電源線P1を介して、ヒューズ10a(FUSE1)に接続されるとともに、ヒューズ10aは、DC/DCコンバータ11に接続されている。DC/DCコンバータ11は、制御部6や過電流保護装置5などで使用する制御電源電圧を生成するように構成されている。
【0018】
また、AC/DCコンバータ3は、DC電源線P1を介して、ヒューズ10b(FUSE2)に接続されるとともに、ヒューズ10bは、リレー21の接点RY1−1(第1の接点RY1−1)のNO接点(常開接点)に接続されている。また、接点RY1−1の可動接点(端子)は、リレー21の接点RY1−2(第2の接点RY1−2)のNO接点に接続されている。また、接点RY1−2の可動接点は、過電流保護回路5aのシャント抵抗22(Rs)の一方端に接続されている。また、接点RY1−2のNC接点は、電源23に接続されている。また、シャント抵抗22の他方端は、リレー21の接点RY1−3(第3の接点RY1−3)の可動接点に接続されるとともに、接点RY1−3のNO接点は、レーザ出力装置4に接続されている。なお、接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3は、制御部6にドライバIC24(IC1)を介して一方端が接続されるリレー21の接点である。また、リレー21の他方端は、24Vの直流電源に接続されている。なお、図2は、セルフテスト時の接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3の状態を示しており、セルフテスト時には、制御部6は、ドライバIC24により、リレー21をオフするように構成されている。
【0019】
ここで、第1実施形態では、接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3は、同時にオン/オフされるように構成されている。また、接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3は、通常動作時(レーザ出力装置4からレーザを放射して作業などを行う時)には、各々可動接点がNO接点(常開接点)に接続されて(NO接点が閉路)、過電流保護回路5aとレーザ出力装置4を接続する。また、セルフテスト時には、接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3は、各々の可動接点がNC接点(常閉接点)に接続されて、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かのセルフテストが行われるように構成されている。なお、リレー21(接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3)は、本発明の「スイッチ素子」、「第1スイッチ素子」および「第1リレー」の一例である。
【0020】
過電流保護装置5の内部には、過電流保護回路5aが設けられている。過電流保護回路5aには、シャント抵抗22の両端の電圧に基づく電流値を電圧に変換して出力する電流検出回路25が設けられている。電流検出回路25から出力された電圧は、抵抗26(R1)とコンデンサ27(C1)とにより構成されるローパスフィルタを介してコンパレータ28に入力されるように構成されている。なお、ローパスフィルタが設けられることにより、電源投入時などの瞬間的な大電流(突入電流)などの過電流が、コンパレータ28に入力されることが抑制される。また、コンパレータ28は、抵抗29(R2)および抵抗30(R3)が接続されており、抵抗29(R2)および抵抗30(R3)から生成される基準電圧Vrefと、ローパスフィルタの出力(電流検出信号SG4)とがコンパレータ28により比較されるように構成されている。また、コンパレータ28の出力側は、トランジスタ31(TR1)のベースに接続されている。また、トランジスタ31のエミッタは、接地されているとともに、コレクタは、接点RY1−1の可動接点および接点RY1−2のNO接点に接続されている。なお、電流検出信号SG4が基準電圧Vrefよりも大きい場合には、トランジスタ31は、オンされるように構成されている。なお、基準電圧Vrefは、本発明が適用されるレーザ装置100の仕様に基づき、レーザ出力装置4の最大出力時で要求されるレーザ用電源線P2を介してレーザ出力装置4に供給する電流値で決められる。この際に、抵抗29(R2)または抵抗30(R3)を可変抵抗器とすれば、基準電圧Vref設定が容易となる。
【0021】
ここで、第1実施形態では、制御部6には、トランジスタ32(TR2)のベースが接続されている。また、トランジスタ32のエミッタは、接地されているとともに、コレクタは、抵抗33(R4)の一方端に接続されている。また、抵抗33の他方端は、接点RY1−3のNC接点(常閉接点)に接続されている。なお、トランジスタ32は、本発明の「第2スイッチ素子」の一例である。
【0022】
また、第1実施形態では、接点RY1−1のNC接点(常閉接点)には、フォトカプラ34(PHC1)の入力側が接続されている。また、フォトカプラ34の出力側は、制御部6に接続されている。また、表示灯7は、ドライバIC7a(IC6)を介して制御部6に接続されている。なお、図2では、ディスプレイ8および上位コントローラ9は、省略されている。また、フォトカプラ34は、本発明の「信号伝達素子」の一例である。
【0023】
また、トランジスタ32、抵抗33、接点RY1−3、接点RY1−2および電源23によって形成される経路は、本発明の「確認電流供給部」の一例である。また、トランジスタ32、抵抗33、接点RY1−3、接点RY1−2および電源23によって形成される経路と、接点RY1−1およびフォトカプラ34によって形成される経路とは、本発明の「動作確認手段」の一例である。
【0024】
次に、図2および図3を参照して、レーザ装置100(制御部6)のセルフテスト時の動作について説明する。
【0025】
まず、図3に示すように、ステップS1において、レーザ装置100の電源スイッチ2をオンすると、AC/DCコンバータ3からDC/DCコンバータ11を介し制御電源電圧を生成し、制御部6等に制御電源を供給する。次に、ステップS2において、制御部6に内蔵されるCPUにおいて、システムの初期化処理が行われる。次に、ステップS3において、セルフテストモード切替信号SG1を操作することにより、リレー21(RY1)がオフされる。これにより、接点RY1−1、接点RY1−2、接点RY1−3の可動接点は、NC接点に接続(図2参照)される。このとき、レーザ出力指令信号SG2は、オフされるとともに、通電信号SG3を操作することにより、トランジスタ32(TR2)がオフされる。
【0026】
次に、ステップS4において、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否かが判断される。このとき、シャント抵抗22(図2参照)には、電流が流れていない(または、トランジスタ32の漏れ電流などの微弱な電流が流れる程度)ので、過電流保護回路5aが正常である場合では、コンパレータ28の出力の電圧信号VoもLレベルとなる。これにより、トランジスタ31は、オフ状態になるとともに、フォトカプラ34もオフ状態となる。一方、過電流保護回路5aが異常であり、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態でない(オン状態である)と判断された場合には、ステップS11に進んで、表示灯7が点灯される。これにより、過電流保護回路5aの異常がユーザに通知される。ここで、異常の通知は、表示灯7の点灯、ディスプレイ8に過電流保護回路5aが異常であることの表示または上位コントローラへ異常を通知することである。なお、以後の説明では、表示灯7が点灯で異常の通知を代表する。なお、ユーザは、ディスプレイ8の表示や表示灯7により過電流保護装置5の異常を検知することにより、過電流保護装置5の交換や、異常部位の修復を行うことが可能となる。その後、ユーザは、レーザ装置100を再び稼動させる。
【0027】
ステップS4において、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態である(過電流保護回路5aが正常である)と判断された場合には、ステップS5に進む。ステップS5では、通電信号SG3を操作することにより、トランジスタ32(TR2)がオンされる。これにより、接点RY1−2のNC接点に接続される電源23、接点RY1−2、シャント抵抗22(Rs)、抵抗33(R4)、および、トランジスタ32(TR2)の回路が形成されて、シャント抵抗22に過電流に対応する電流が流れる。なお、抵抗33の抵抗値は、シャント抵抗22に過電流が流れる抵抗値(トランジスタ31(TR1)をオンするのに十分な抵抗値)になるように予め設定されている。たとえば、レーザ出力で製品加工する通常動作における最大出力の時の消費電流を100mAとした場合、過電流に対応する電流を120mAとする。これにより、シャント抵抗22の両端の電圧に基づいて、電流検出回路25からローパスフィルタ(抵抗26(R1)、コンデンサ27(C1))を介してコンパレータ28に出力された電流検出信号SG4により、トランジスタ31がオンされる。その結果、フォトカプラ34がオンする。これにより、フォトカプラ34から、オン状態のTR1動作確認信号SG5が制御部6に伝達されて、過電流保護回路5aが正常に動作することが制御部6により確認される。なお、ステップS6において、過電流保護回路5aが異常であることに起因して、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であると判断された場合には、ステップS11に進んで、表示灯7が点灯する。
【0028】
ステップS6において、過電流保護回路5aが正常であると判断された場合には、ステップS7に進む。ステップS7では、通電信号SG3を操作することにより、トランジスタ32(TR2)がオフされる。これにより、シャント抵抗22に流れる電流が遮断される。そして、ステップS8に進む。ステップS8では、ローパスフィルタ(抵抗26(R1)、コンデンサ27(C1))の時定数経過後、フォトカプラ34(PHC1)からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否かが判断される(ステップS4と同等)。なお、ローパスフィルタの時定数とは、電気回路に電流を流し始めてから定常電流になるまでの時間の目安となる定数である。ステップS8において、TR1動作確認信号SG5がオフ状態でない(オン状態である)と判断された場合には、ステップS11に進んで、表示灯7が点灯する。また、ステップS8において、TR1動作確認信号SG5がオフ状態であると判断された場合には、ステップS9に進む。
【0029】
ステップS9では、セルフテストモード切替信号SG1を操作することにより、リレー21(RY1)がオンされる。これにより、接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3の可動接点が、それぞれ、NO接点(常開接点)に同時に接続(図4参照)される。その後、ステップS10に進んで、フォトカプラ34(PHC1)からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否かが判断される。TR1動作確認信号SG5がオフ状態でない(オン状態である)と判断された場合には、ステップS11に進んで、表示灯7が点灯する。また、ステップS10において、TR1動作確認信号SG5がオフ状態であると判断された場合には、ステップS12に進んで、通常動作(図4参照)が行われる。
【0030】
次に、図4を参照して、レーザ装置100(制御部6)の通常動作時の動作について説明する。
【0031】
まず、通常動作時では、電源スイッチ2(SW1)がオンされると、前述のセルフテストが行われる。セルフテストで異常が検出されなければ、リレー21(RY1)は、上記ステップS9においてオンされている。これにより、接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3の可動接点が、それぞれ、NO接点(常開接点)に接続されているので、AC/DCコンバータ3、接点RY1−1、接点RY1−2、シャント抵抗22および、接点RY1−3を介して、レーザ出力装置4に電源が供給される。そして、通常動作時において、シャント抵抗22(Rs)に過電流が流れた場合には、過電流保護回路5aの出力部のトランジスタ31(TR1)がオンする。これにより、ヒューズ10b(FUSE2)に短絡電流が流れるので、ヒューズ10bが溶断する。その結果、レーザ出力装置4への電源の供給が遮断されて、レーザ出力装置4へ過電流が流れることが抑制される。また、レーザ放射で行われる作業が完了した後、レーザの出力が停止されて、通常動作が完了する。その後、ステップS3に戻って、再びステップS3〜ステップS10のセルフテストが行われる。なお、セルフテストと通常動作とは、繰り返し行われる。
【0032】
第1実施形態では、上記のように、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かを確認するためのトランジスタ32(TR2)、抵抗33(R4)、接点RY1−3、シャント抵抗22(Rs)、接点RY1−2、電源23、接点RY1−1、および、フォトカプラ34(PHC1)を設けることによって、トランジスタ32(TR2)、抵抗33(R4)、接点RY1−3、シャント抵抗22(Rs)、接点RY1−2および電源23により構成される回路と、接点RY1−1およびフォトカプラ34(PHC1)により構成される回路とにより、過電流保護回路5aが正常に動作できないことを検知することができる。これにより、過電流保護回路5aを構成する抵抗やコンデンサの電気品またはトランジスタやコンパレータの電子素子の偶発的な故障に起因して、過電流がレーザ出力装置4に流れるのを未然に防止することができる。また、この検知するためのフォトカプラ34の偶発的な故障も検知することができる。その結果、レーザ装置100(生産機械)において必要とされるレーザの最大出力を超えるレーザ出力装置4を用いることが可能となるため、レーザ出力装置4の選択の範囲を広げることができる。これにより、特定のレーザ出力に合わせてレーザ出力装置4を製作または入手する必要がなくなるので、一般的なレーザ出力装置4を用いることができる。
【0033】
また、第1実施形態では、上記のように、電源投入時およびレーザ出力装置4のレーザ出力停止時に、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かを確認するために、シャント抵抗22(Rs)に、過電流に相当する電流を流すと過電流保護回路5aが正常に動作するか否かが確認されるので、過電流がレーザ出力装置4に流れた場合に、これを確実に検出し、レーザ出力装置4への電流供給を遮断することができる。
【0034】
また、第1実施形態では、上記のように、通常動作時には、過電流保護回路5aとレーザ出力装置4とを接続するとともに、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かを確認するためのセルフテスト時には、過電流保護回路5aと、フォトカプラ34、電源23およびトランジスタ32(抵抗33)とを接続するようにリレー21を構成する。これにより、リレー21の接点を切り替えることにより、容易に、通常動作時とセルフテスト時とを切り替えることができる。
【0035】
また、第1実施形態では、上記のように、リレー21(RY1)が、3つの接点(接点RY1−1、接点RY1−2、接点RY1−3)を有しており、リレー21をオン/オフすることにより、3つの接点が同時に操作されることによって、通常動作時とセルフテスト時とを切り替えるように構成する。これにより、リレー21の3つの接点(接点RY1−1、接点RY1−2、接点RY1−3)が同時に操作されるので、通常動作時とセルフテスト時との切り替えをすばやく行うことができる。
【0036】
また、第1実施形態では、上記のように、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かを確認するためのセルフテストの開始時に、制御部6からの信号に基づいてオンすることにより過電流に対応する電流を過電流保護回路5aに流すようにトランジスタ32(TR2)を構成する。これにより、過電流に対応する電流が過電流保護回路5aに流れるので、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かを確認するためのセルフテストを容易に行うことができる。
【0037】
また、第1実施形態では、上記のように、フォトカプラ34(PHC1)を、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かを確認するためのセルフテスト時に、過電流保護回路5aに過電流に対応する電流が流れた場合に、制御部6にTR1動作確認信号SG5を伝達するように構成する。これにより、フォトカプラ34(PHC1)から出力されるTR1動作確認信号SG5により、容易に、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かを確認することができる。
【0038】
また、第1実施形態では、上記のように、過電流保護回路5aの異常を確認したことを通知する表示灯7、ディスプレイ8または上位コントローラへの通知手段を設けることにより、容易に、過電流保護回路5aの異常をユーザが確認することができる。
【0039】
また、第1実施形態では、上記のように、セルフテスト時にセルフテストモード切替信号SG1に基づいて、フォトカプラ34、電源23およびトランジスタ32(抵抗33)に接続されるようにリレー21(RY1)を構成する。これにより、セルフテストモード切替信号SG1に基づいて、容易に、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かを確認するための回路を形成することができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、図5〜図8を参照して、第2実施形態のレーザ装置101について説明する。この第2実施形態のレーザ装置101は、上記過電流に対応する電流のみがシャント抵抗22(Rs)に流されていた第1実施形態と異なり、過電流に対応する電流に加えて、過電流に対応する電流の電流値未満の電流がシャント抵抗22に流される過電流保護装置51を含む。
【0041】
第2実施形態によるレーザ装置101は、図5に示すように、制御部6には、トランジスタ32a(TR2a)のベースが接続されている。また、トランジスタ32aのエミッタは、接地されているとともに、コレクタは、抵抗33a(R4a)の一方端に接続されている。また、抵抗33aの他方端は、接点RY1−3のNC接点(常閉接点)に接続されている。さらに、制御部6には、トランジスタ32b(TR2b)のベースが接続されている。また、トランジスタ32bのエミッタは、接地されているとともに、コレクタは、抵抗33b(R4b)の一方端に接続されている。また、抵抗33bの他方端は、接点RY1−3のNC接点(常閉接点)に接続されている。なお、トランジスタ32a(32b)は、本発明の「動作確認手段」、「確認電流供給部」、および「第2スイッチ素子」の一例である。また、抵抗33a(33b)は、本発明の「動作確認手段」および「確認電流供給部」の一例である。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0042】
次に、図6を参照して、シャント抵抗22(Rs)に流れる電流について説明する。
【0043】
図6に示すように、状態1では、トランジスタ32a(TR2a)とトランジスタ32b(TR2b)とが、それぞれ、オフされる。この状態では、シャント抵抗22には、電流は流れない。状態2では、トランジスタ32aは、オフされるとともに、トランジスタ32bは、オンされる。これにより、シャント抵抗22には、たとえば40mA(Ib)の電流が流れる。状態3では、トランジスタ32aは、オンされるとともに、トランジスタ32bは、オフされる。これにより、シャント抵抗22には、たとえば80mA(Ia)の電流が流れる。状態4では、トランジスタ32aとトランジスタ32bとが、それぞれ、オンされる。これにより、シャント抵抗22には、たとえば120mA(Ia+Ib)の電流が流れる。なお、第2実施形態では、過電流に対応する電流の閾値をたとえば100mAとする。つまり、トランジスタ32aとトランジスタ32bとが、それぞれ、オンされることにより、シャント抵抗22には、過電流に対応する120mAの電流が流れる。また、トランジスタ32aがオン(オフ)され、かつ、トランジスタ32bがオフ(オン)されることにより、シャント抵抗22には、過電流に対応する電流の電流値未満の電流(80mA(40mA))が流れる。
【0044】
次に、図6〜図8を参照して、レーザ装置101(制御部6)の動作について説明する。なお、図7の時間A〜時間Eは、制御部6による過電流保護回路5aの動作の確認を行うタイミングを示している。
【0045】
まず、レーザ装置101の電源投入およびシステムの初期化処理の動作は、図3に示す上記第1実施形態と同様である。次に、図8に示すように、ステップS21において、セルフテストモード切替信号SG1を操作することにより、リレー21(RY1)がオフされる。これにより、接点RY1−1、接点RY1−2、接点RY1−3の可動接点は、NC接点に接続(図5参照)される。このとき、レーザ出力指令信号SG2は、オフされる。また、図7の時間A(図6の状態1)に示すように、通電信号SG3aおよびS3bがLレベルにされることにより、トランジスタ32a(TR2a)およびトランジスタ32b(TR2b)がオフされる。これにより、シャント抵抗22(Rs)に流れる電流Isは、0となり、電流検出回路25から出力される電圧信号Vsは、0mAに対応する電圧レベルとなる。また、ローパスフィルタ(抵抗26(R1)、コンデンサ27(C1))から出力される電流検出信号SG4は、0mAに対応する電圧レベルとなり、コンパレータ28の出力の電圧信号VoもLレベルとなる。これにより、トランジスタ31はオフで、フォトカプラ34はオフ状態となる。その結果、フォトカプラ34から制御部6に伝達されるTR1動作確認信号SG5は、オフ状態となる。
【0046】
次に、ステップS22において、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否かが判断される。このとき、シャント抵抗22(図5参照)には、電流が流れていないので、過電流保護回路5aが正常である場合では、過電流保護回路5aからフォトカプラ34への出力は、オフ状態となる。一方、過電流保護回路5aが異常であり、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態でない(過電流保護回路5aが異常である)と判断された場合には、ステップS33に進んで、表示灯7が点灯することにより、過電流保護回路5aの異常がユーザに通知される。
【0047】
ステップS22において、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態である(過電流保護回路5aが正常である)と判断された場合には、ステップS23に進む。ステップS23(図7の時間B)では、図7に示すように、通電信号SG3aがHレベルになることにより、トランジスタ32a(TR2a)がオンされる。なお、トランジスタ32b(TR2b)は、オフのままである。これにより、シャント抵抗22に流れる電流Isの電流値は、80mA(図6の状態3)となり、電流検出回路25から出力される電圧信号Vsは、80mAに対応する電圧レベルとなる。これにより、ローパスフィルタから出力される電流検出信号SG4は、80mAに対応する電圧レベルとなる。なお、電流検出信号SG4の波形は、電圧信号Vsがローパスフィルタを通過することにより、電圧信号Vsの波形に比べて滑らかになる。また、電流検出信号SG4は、過電流に対応する電流の閾値である100mAよりも小さいので、コンパレータ28の出力の電圧信号Voは、Lレベルのままである。これにより、トランジスタ31はオフで、フォトカプラ34はオフ状態のままである。その結果、フォトカプラ34から制御部6に伝達されるTR1動作確認信号SG5は、オフ状態のままである。
【0048】
次に、ステップS24に進んで、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否かが判断される。そして、過電流保護回路5aが異常であると判断された場合には、ステップS33に進んで、表示灯7が点灯する。
【0049】
ステップS24において、過電流保護回路5aが正常であると判断された場合には、ステップS25に進む。ステップS25(図7の時間C)では、図7に示すように、通電信号SG3aおよびS3bがHレベルになることにより、トランジスタ32a(TR2a)およびトランジスタ32b(TR2b)がオンされる。これにより、シャント抵抗22に流れる電流Isの電流値は、120mA(図6の状態4)となり、電流検出回路25から出力される電圧信号Vsは、120mAに対応する電圧レベルとなる。これにより、ローパスフィルタから出力される電流検出信号SG4は、120mAに対応する電圧レベルとなる。ここで、電流検出信号SG4は、過電流に対応する電流の閾値である100mA(Vref)よりも大きいので、コンパレータ28の出力の電圧信号Voは、Hレベルになる。これにより、トランジスタ31はオンになり、フォトカプラ34はオン状態になる。その結果、フォトカプラ34から制御部6に伝達されるTR1動作確認信号SG5は、オン状態になる。
【0050】
次に、ステップS26に進んで、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオン状態であるか否かが判断される。そして、TR1動作確認信号SG5がオフ状態である(過電流保護回路5aが異常である)と判断された場合には、ステップS33に進んで、表示灯7が点灯する。
【0051】
ステップS26において、過電流保護回路5aが正常であると判断された場合には、ステップS27に進む。ステップS27(図7の時間D)では、図7に示すように、通電信号SG3aがLレベルになることにより、トランジスタ32a(TR2a)がオフされる。なお、トランジスタ32b(TR2b)は、オンのままである。これにより、シャント抵抗22に流れる電流Isの電流値は、40mA(図6の状態2)となり、電流検出回路25から出力される電圧信号Vsは、40mAに対応する電圧レベルとなる。これにより、ローパスフィルタから出力される電流検出信号SG4は、40mAに対応する電圧レベルとなる。また、電流検出信号SG4は、過電流に対応する電流の閾値である100mAよりも小さいので、コンパレータ28の出力の電圧信号Voは、Lレベルになる。これにより、トランジスタ31はオフとなり、フォトカプラ34はオフ状態になる。その結果、フォトカプラ34から制御部6に伝達されるTR1動作確認信号SG5は、オフ状態になる。
【0052】
次に、ステップS28に進んで、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否かが判断される。そして、TR1動作確認信号SG5がオン状態である(過電流保護回路5aが異常である)と判断された場合には、ステップS33に進んで、表示灯7が点灯する。
【0053】
ステップS28において、過電流保護回路5aが正常であると判断された場合には、ステップS29に進む。ステップS29(図7の時間E)では、図7に示すように、通電信号SG3aおよびS3bがLレベルになることにより、トランジスタ32a(TR2a)およびトランジスタ32b(TR2b)がオフされる。これにより、シャント抵抗22に流れる電流Isは、遮断される。そして、ステップS30に進む。ステップS30では、ローパスフィルタ(抵抗26(R1)、コンデンサ27(C1))の時定数経過後、フォトカプラ34(PHC1)からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否かが判断される。ステップS30において、TR1動作確認信号SG5がオフ状態でない(オン状態である)と判断された場合には、ステップS33に進んで、表示灯7が点灯する。また、ステップS30において、TR1動作確認信号SG5がオフ状態であると判断された場合には、ステップS31に進む。
【0054】
ステップS31では、セルフテストモード切替信号SG1を操作することにより、リレー21(RY1)がオンされる。これにより、接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3の可動接点が、それぞれ、NO接点(常開接点)に同時に接続される。その後、ステップS32に進んで、フォトカプラ34(PHC1)からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否かが判断される。TR1動作確認信号SG5がオフ状態でない(オン状態である)と判断された場合には、ステップS33に進んで、表示灯7が点灯する。また、ステップS32において、TR1動作確認信号SG5がオフ状態であると判断された場合には、ステップS12に進んで、通常動作が行われる。なお、第2実施形態の通常動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0055】
第2実施形態では、上記のように、トランジスタ32a(TR2a)およびトランジスタ32b(TR2b)のうちのオン状態となるトランジスタの数を変化させることにより、シャント抵抗22(Rs)に流れる電流Isの電流値を過電流に対応する電流の閾値である100mA未満(80mA、40mA)または100mA以上(120mA)に変化させて、シャント抵抗22に80mAまたは40mAの電流が流れた場合と、シャント抵抗22に120mAの電流が流れた場合との両方の場合において、過電流保護回路5aが正常に動作するか否かを確認するように構成する。これにより、過電流に対応する電流の閾値以上の電流がシャント抵抗22に流れた場合の過電流保護回路5aの動作に加えて、過電流に対応する電流の閾値未満の電流がシャント抵抗22に流れた場合の過電流保護回路5aの動作も確認するので、過電流保護装置5が正しく過電流を検出すること、および、電流検出回路25が正しく電流を検出することの確認を行うことができる。
【0056】
(第3実施形態)
次に、図9および図10を参照して、第3実施形態のレーザ装置102について説明する。この第3実施形態のレーザ装置102(過電流保護装置52)では、上記ヒューズ10b(FUSE2)が溶断することにより、レーザ出力装置4への電源の供給が遮断されていた第1(第2)実施形態と異なり、リレー41および42により、レーザ出力装置4への電源の供給が遮断される。なお、リレー41および42は、本発明の「第2リレー」の一例である。
【0057】
第3実施形態によるレーザ装置102は、図9に示すように、AC/DCコンバータ3は、直列接続されるリレー41(RY2)およびリレー42(RY3)の常開接点の一方に接続されている。なお、リレー41およびリレー42は、強制ガイド接点機構を有する。強制ガイド接点機構とは、リレーの常開接点と常閉接点とが同時に閉路状態にならないようにするものである。具体的には、常開接点が溶着した状態でオフしても、常閉接点が所定の接点ギャップを保持するように構成されていて、常閉接点は閉路しないようになっている。また、リレー41およびリレー42の常開接点の他方は、接点RY1−1のNO接点(常開接点)に接続されている。また、リレー41およびリレー42の常閉接点の一方は、接地されているとともに、他方は、フォトカプラ43(PHC3)に接続されている。なお、フォトカプラ43は、制御部6にリレー接点溶着確認信号SG7を伝達するように構成されている。
【0058】
また、過電流保護回路5a(コンパレータ28)の出力側に、トランジスタ31(TR1)と並列に、トランジスタ44(TR3)のベースが接続されている。トランジスタ44のエミッタは、接地されているとともに、コレクタは、フォトカプラ45(PHC2)に接続されている。フォトカプラ45は、制御部6に接続されているとともに、AND回路46aおよびAND回路46bの入力側に接続されている。また、AND回路46aは、ドライバIC47a(IC2)を介して、リレー41に接続されている。また、AND回路46bは、ドライバIC47b(IC3)を介して、リレー42に接続されている。なお、フォトカプラ45は、セルフテスト時にのみ駆動するフォトカプラ34と異なり、セルフテスト時と通常動作時との両方において駆動する。また、フォトカプラ34は、トランジスタ31(TR1)の動作をテストする機能を有し、フォトカプラ45は、トランジスタ44(TR3)の動作をテストする機能を有する。なお、フォトカプラ45は、本発明の「信号伝達素子」の一例である。また、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0059】
次に、図10を参照して、レーザ装置102(制御部6)の動作について説明する。
【0060】
まず、レーザ装置102の電源投入およびシステムの初期化処理の動作は、図3に示す上記第1実施形態と同様である。次に、図10に示すように、ステップS41において、セルフテストモード切替信号SG1を操作することにより、リレー21(RY1)がオフされる。これにより、接点RY1−1、接点RY1−2、接点RY1−3の可動接点は、各々NC接点に接続される。このとき、レーザ出力指令信号SG2は、オフされる。また、通電信号SG3が操作されることにより、トランジスタ32(TR2)がオフされる。また、RY2動作有効信号SG6aおよびRY3動作有効信号SG6bが操作されることにより、リレー41(RY2)およびリレー42(RY3)がオフされる。
【0061】
次に、ステップS42において、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否かが判断されるとともに、フォトカプラ45からのTR3動作確認信号SG6cがオフ状態であるか否かが判断される。このとき、シャント抵抗22(図9参照)には、電流が流れていないので、過電流保護回路5aが正常である場合では、過電流保護回路5aからフォトカプラ34およびフォトカプラ45への出力は、オフ状態となる。一方、過電流保護回路5aが異常であり、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオン状態である、または、フォトカプラ45からのTR3動作確認信号SG6cがオン状態であると判断された場合には、ステップS51に進んで、表示灯7が点灯することにより、過電流保護回路5aの異常がユーザに通知される。
【0062】
ステップS42において、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であり、かつ、フォトカプラ45からのTR3動作確認信号SG6cがオフ状態である(過電流保護回路5aが正常である)と判断された場合には、ステップS43に進む。ステップS43では、通電信号SG3を操作することにより、トランジスタ32(TR2)がオンされる。これにより、接点RY1−2のNC接点に接続される電源23、接点RY1−2、シャント抵抗22(Rs)、抵抗33(R4)、および、トランジスタ32(TR2)の回路が形成されて、シャント抵抗22に過電流に対応する電流(たとえば120mAの電流)が流れる。そして、シャント抵抗22の両端の電圧に基づいて、電流検出回路25からローパスフィルタ(抵抗26(R1)、コンデンサ27(C1))を介してコンパレータ28に出力された電流検出信号SG4により、トランジスタ31およびトランジスタ44がオンされる。その結果、フォトカプラ34およびフォトカプラ45がオンする。これにより、フォトカプラ34から、TR1動作確認信号SG5が制御部6に伝達されるとともに、フォトカプラ45から、TR3動作確認信号SG6cが制御部6に伝達されて、過電流保護回路5aが正常に動作することが制御部6により確認される。なお、ステップS44において、過電流保護回路5aが異常であることに起因して、フォトカプラ34からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であると判断された場合、または、フォトカプラ45からのTR3動作確認信号SG6cがオフ状態であると判断された場合には、ステップS51に進んで、表示灯7が点灯する。
【0063】
ステップS44において、過電流保護回路5aが正常であると判断された場合には、ステップS45に進む。ステップS45では、通電信号SG3を操作することにより、トランジスタ32(TR2)がオフされる。これにより、シャント抵抗22に流れる電流が遮断される。そして、ステップS46に進む。ステップS46では、ローパスフィルタ(抵抗26(R1)、コンデンサ27(C1))の時定数経過後、フォトカプラ34(PHC1)からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否か、および、フォトカプラ45(PHC2)からのTR3動作確認信号SG6cがオフ状態であるか否かが判断される。ステップS46において、TR1動作確認信号SG5がオン状態である、または、TR3動作確認信号SG6cがオン状態であると判断された場合には、ステップS51に進んで、表示灯7が点灯する。また、ステップS46において、TR1動作確認信号SG5およびTR3動作確認信号SG6cがオフ状態であると判断された場合には、ステップS47に進む。
【0064】
ステップS47では、フォトカプラ43(PHC3)から制御部6に伝達されるリレー接点溶着確認信号SG7がオン状態(リレー41およびリレー42に異常がない)か否かが判断される。ステップS47において、リレー接点溶着確認信号SG7がオフ状態であると判断された場合には、ステップS51に進んで、表示灯7が点灯する。また、ステップS47において、リレー接点溶着確認信号SG7がオン状態であると判断された場合には、リレー41またはリレー42に、溶着が発生または不動作故障などが発生したものと判断してステップS48に進む。
【0065】
ステップS48では、セルフテストモード切替信号SG1を操作することにより、リレー21(RY1)がオンされる。これにより、接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3の可動接点が、それぞれ、NO接点(常開接点)に接続される。その後、ステップS49に進んで、フォトカプラ34(PHC1)からのTR1動作確認信号SG5がオフ状態であるか否か、および、フォトカプラ45(PHC2)からのTR3動作確認信号SG6cがオフ状態であるか否かが判断される。TR1動作確認信号SG5がオン状態である、または、TR3動作確認信号SG6cがオン状態であると判断された場合には、ステップS51に進んで、表示灯7が点灯する。また、ステップS49において、TR1動作確認信号SG5がオフ状態、および、TR3動作確認信号SG6cがオフ状態であると判断された場合には、ステップS50に進む。
【0066】
そして、ステップS50では、フォトカプラ43(PHC3)からのリレー接点溶着確認信号SG7がオン状態であるか否かが判断される。リレー接点溶着確認信号SG7がオフ状態であると判断された場合には、ステップS51に進んで、表示灯7が点灯する。また、ステップS50において、リレー接点溶着確認信号SG7がオン状態であると判断された場合には、通常動作が行われる。
【0067】
次に、図9を参照して、レーザ装置102(制御部6)の通常動作時の動作について説明する。
【0068】
まず、通常動作時では、電源スイッチ2(SW1)がオンされる。また、リレー21(RY1)は、上記ステップS48においてオンされている。また、リレー41(RY2)およびリレー42(RY3)もオン状態にされる。これにより、AC/DCコンバータ3、リレー41、リレー42、接点RY1−1、接点RY1−2、および、接点RY1−3を介して、レーザ出力装置4に電源が供給される。そして、通常動作時において、シャント抵抗22(Rs)に過電流が流れると、過電流保護回路5aの出力部のトランジスタ31(TR1)およびトランジスタ44(TR3)がオンする。これにより、フォトカプラ45(PHC2)がオンすることにより、TR3動作確認信号SG6cがオン状態となる。その結果、AND回路46aおよびAND回路46bの出力がLレベルになり、リレー41(RY2)およびリレー42(RY3)がオフされる。これにより、レーザ出力装置4への電源の供給が遮断されて、過電流が流れることが抑制される。
【0069】
第3実施形態では、上記のように、AC/DCコンバータ3とレーザ出力装置4との間にリレー41(RY2)およびリレー42(RY3)を設けて、通常動作時に、過電流保護回路5aに過電流が流れた場合に、リレー41(RY2)およびリレー42(RY3)がオフ状態になることにより、AC/DCコンバータ3からレーザ出力装置4に供給される電力が遮断されるように構成する。これにより、過電流が流れた場合に、ヒューズを溶断することによりAC/DCコンバータ3からレーザ出力装置4に供給される電力を遮断する場合と異なり、AC/DCコンバータ3からレーザ出力装置4に供給される電力を瞬時に遮断することができる。
【0070】
(第4実施形態)
次に、図11を参照して、第4実施形態のレーザ装置103について説明する。この第4実施形態は、上記過電流に対応する電流と過電流に対応する電流の電流値未満の電流とがシャント抵抗22に流される上記第2実施形態と、リレー41および42によりレーザ出力装置4への電源の供給が遮断される上記第3実施形態とを組み合わせたものである。
【0071】
第4実施形態によるレーザ装置103(過電流保護装置53)は、図11に示すように、制御部6には、トランジスタ32a(TR2a)のベースが接続されているとともに、トランジスタ32b(TR2b)のベースが接続されている。また、AC/DCコンバータ3には、直列接続されるリレー41(RY2)およびリレー42(RY3)が接続されている。また、リレー41およびリレー42は、フォトカプラ43(PHC3)を介して、制御部6に接続されている。なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0072】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0073】
たとえば、上記第1〜第4実施形態では、制御部から過電流保護回路のシャント抵抗に電流を流すとともに、過電流保護回路からフォトカプラを介して信号を伝達することにより、過電流保護回路の動作を確認する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認することが可能であれば上記の方法以外の方法によって、過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認してもよい。
【0074】
また、上記第1〜第4実施形態では、電源投入時およびレーザ出力装置のレーザ出力停止時の両方において、過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、電源投入時またはレーザ出力装置のレーザ出力停止時のうちの一方において、過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認してもよい。
【0075】
また、上記第1〜第4実施形態では、レーザ装置にAC電圧源が供給される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、レーザ装置にDC電圧源を供給してもよい。
【0076】
また、上記第1〜第4実施形態では、リレーをオン/オフすることにより、通常動作時とセルフテスト時とを切り替える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、リレー以外のトランジスタ、FET、アナログスイッチその他のスイッチング素子をオン/オフすることにより、通常動作時とセルフテスト時とを切り替えるようにしてもよい。
【0077】
また、上記第1および第3実施形態では、制御部からトランジスタTR2を介してシャント抵抗Rsに電流が供給される例を示した。また、上記第2および第4実施形態では、制御部からトランジスタTR2a、TR2bを介してシャント抵抗Rsに電流が供給される例を示した。しかし、本発明はこれに限られない。たとえば、第1および第3実施形態では、図12に示す変形例のように、トランジスタTR2(抵抗R4)と並列に、ブリーダ抵抗48(Rb)を設けてもよい。そして、ブリーダ抵抗48に、過電流保護回路が動作する過電流の電流値以下の電流を流しておくことにより、トランジスタTR2(抵抗R4)に流れる電流値を小さくすることができる。これにより、トランジスタTR2(抵抗R4)を小容量化することができる。また、第2および第4実施形態では、トランジスタTr2aまたはトランジスタTR2bを図12に示す変形例のようにすることができる。
【0078】
また、上記第2実施形態では、制御部が、シャント抵抗に流れる電流が変わる毎に1回ずつ過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認する(図7の時間A〜時間E)例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部が、シャント抵抗に流れる電流が変わる毎に複数回、過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 AC電圧源
4 レーザ出力装置(出力装置、レーザ出力部)
5a 過電流保護回路
5、51、52、53 過電流保護装置
6 制御部
21 リレー(スイッチ素子、第1スイッチ素子、第1リレー)
23 電源(動作確認手段、確認電流供給部)
32、32a、32b トランジスタ(動作確認手段、第2スイッチ素子、確認電流供給部)
33、33a、33b 抵抗(動作確認手段、確認電流供給部)
34 フォトカプラ(信号伝達素子、動作確認手段、確認電流供給部)
41、42 リレー(第2リレー)
45 フォトカプラ(信号伝達素子、動作確認手段)
48 ブリーダ抵抗
100、101、102、103 レーザ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力装置に供給する電流値を監視するとともに前記電流値が所定の電流値以上になったときに供給する電流を遮断する過電流保護回路と、
前記過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認する動作確認手段とを備える、過電流保護装置。
【請求項2】
前記動作確認手段は、電源投入時または前記出力装置の出力停止時の少なくとも一方に動作するように構成されている、請求項1に記載の過電流保護装置。
【請求項3】
前記動作確認手段は、前記過電流保護回路の動作確認時に電流を供給する確認電流供給部を含み、
前記出力装置または前記確認電流供給部のうちの一方に接続可能な第1スイッチ素子をさらに備え、
通常動作時には、前記第1スイッチ素子は、前記過電流保護回路と前記出力装置とを接続するとともに、前記過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認するための動作確認時には、前記第1スイッチ素子は、前記過電流保護回路と前記確認電流供給部とを接続するように構成されている、請求項1または2に記載の過電流保護装置。
【請求項4】
前記第1スイッチ素子は、複数の接点を持つ第1リレーを含み、
前記第1リレーをオンまたはオフすることにより、複数の接点が同時に操作されることによって、前記通常動作時と前記動作確認時とを切り替えるように構成されている、請求項3に記載の過電流保護装置。
【請求項5】
前記動作確認手段は、前記過電流保護回路の入力側に接続可能な第2スイッチ素子を含み、
前記第2スイッチ素子は、前記過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認するための動作確認の開始時に、制御部からの信号に基づいてオンすることにより少なくとも前記所定の電流値以上の電流を前記過電流保護回路に流すように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の過電流保護装置。
【請求項6】
前記第2スイッチ素子は、複数の第2スイッチ素子を含み、
前記複数の第2スイッチ素子のうちのオン状態となる第2スイッチ素子の数を変化させることにより、前記複数の第2スイッチ素子から前記過電流保護回路に流れる電流値を前記所定の電流値未満または前記所定の電流値以上に変化させて、前記第2スイッチ素子を介して前記過電流保護回路に前記所定の電流値未満の電流が流れた場合と、前記第2スイッチ素子を介して前記過電流保護回路に前記所定の電流値以上の電流が流れた場合との両方の場合において、前記過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認するように構成されている、請求項5に記載の過電流保護装置。
【請求項7】
前記第2スイッチ素子は、トランジスタを含み、
前記動作確認手段は、前記トランジスタに並列に接続され前記トランジスタに流れる電流値を小さくするためのブリーダ抵抗を含む、請求項5または6に記載の過電流保護装置。
【請求項8】
前記動作確認手段は、前記過電流保護回路の出力側に接続可能に設けられ、制御部に信号を伝達する信号伝達素子を含み、
前記信号伝達素子は、前記過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認するための動作確認時に、前記過電流保護回路に前記所定の電流値以上の電流が流れた場合に、前記制御部に動作確認信号を伝達するように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の過電流保護装置。
【請求項9】
通常動作時に、前記過電流保護回路に前記所定の電流値以上の電流が流れた場合に、ヒューズが溶断することにより、前記電源から前記出力装置に供給される電力が遮断されるように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の過電流保護装置。
【請求項10】
通常動作時に、前記過電流保護回路に前記所定の電流値以上の電流が流れた場合に、第2リレーがオフ状態になることにより、前記電源から前記出力装置に供給される電力が遮断されるように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の過電流保護装置。
【請求項11】
前記動作確認手段が前記過電流保護回路の異常を確認したことを通知する通知手段をさらに備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の過電流保護装置。
【請求項12】
前記出力装置は、レーザ出力装置を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の過電流保護装置。
【請求項13】
レーザ光を出力するレーザ出力部と、
前記レーザ出力部に供給する電流値を監視するとともに前記電流値が所定の電流値以上になったときに供給する電流を遮断する過電流保護回路と、前記過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認するための動作確認手段とを含む過電流保護装置とを備える、レーザ装置。
【請求項14】
前記動作確認手段は、前記過電流保護回路の動作確認時に電流を供給する確認電流供給部を含み、
前記過電流保護回路が正常に動作するか否かを確認するための動作確認時と、通常動作時とを切り替える切替信号を生成する制御部と、
前記レーザ出力部または前記確認電流供給部のうちの一方に接続可能なスイッチ素子とをさらに備え、
前記スイッチ素子は、前記動作確認時に前記切替信号に基づいて、前記確認電流供給部に接続されるように構成されている、請求項13に記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−70110(P2012−70110A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211523(P2010−211523)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】