説明

配管の亀裂箇所の点検修理方法

【課題】 配管の亀裂箇所の点検修理を容易に、かつ確実に行うことができる点検修理方法を提供する。
【解決手段】 配管1の亀裂箇所3の点検修理方法であって、前記配管1の亀裂3aを超音波探傷検査により検出し、該超音波探傷検査により検出した亀裂箇所3の近傍に前記配管1を貫通する点検修理用孔4、5を設け、該点検修理用孔4、5内に撮像手段10及び修理手段12を挿入し、前記撮像手段10により前記亀裂箇所3を目視しながら、前記修理手段12により前記亀裂箇所3の修理を行い、この後に、前記撮像手段10及び前記修理手段12を前記点検修理用孔4、5から抜き出し、前記点検修理用孔4、5を閉塞手段で閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の亀裂箇所の点検修理方法に関し、特に、原子力発電プラントの一次系配管(循環系配管等)の溶接部に生じた亀裂箇所の点検修理に好適な配管の亀裂箇所の点検修理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電プラントにおいては、原子力発電用機器の健全性確認のため、超音波探傷検査装置を用いて定期的に一次系配管(循環系配管)等の溶接部の検査を行い、応力腐食割れ(SCC)による亀裂(欠陥)の有無の検査を行っている。
【0003】
例えば、パルス発信機、探触子、受信機、表示部等から構成される超音波探傷検査装置を用い、探触子を検査対象である配管の表面に接触させ、探触子を配管の表面に沿って移動させながら、配管の内方に向けて超音波を発信し、配管の底面又は亀裂で反射して戻ってきた超音波を受信し、得られたデータに基づいて亀裂の形状、長さ、深さ等を算定することにより、亀裂(欠陥)の有無の検査を行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上記のような超音波探傷検査によって亀裂が検出された場合、その亀裂の状態を正確に把握し、発生原因や将来亀裂がどのように進展するかを技術的知見に基づいて推測・予測し、安全性への影響を評価し、この評価に基づいて機器の継続運転の可否の判定を行い、継続運転可の判定の場合には、亀裂箇所を修理せずにそのまま運転を継続し、継続運転不可の判定の場合には、亀裂箇所を修理するか、或いは亀裂の生じた配管の全体を交換する等の対策を採っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−187574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような超音波探傷検査により検出した亀裂の評価には高度な技術が必要であることから、(社)日本非破壊検査協会(NDI)により認証された資格が必要であり、このため、有資格者のいない現場においては、超音波探傷検査により亀裂を検出した場合に、亀裂を検出した配管の全体を取り換えているのが現状であり、その作業に多大な労力と時間と費用がかかる。
【0007】
また、有資格者がいる現場においても、継続運転可の判定を行った場合には、次回の再検査までの間、亀裂箇所の状態を監視し続けなければならず、その作業に多大な労力と時間と費用がかかる。さらに、次回の定期検査で亀裂箇所の再評価を行わなければならず、その作業に多大な労力と時間と費用がかかる。さらに、継続運転不可の判定を行った場合には、亀裂の生じている配管全体を交換するか、亀裂の生じている配管をバルブ等との接続部から分解し、開口部から配管内に修理器具を挿入して亀裂箇所の修理を行わなければならず、その作業に多大な労力と時間と費用がかかる。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、高度な技術を必要とすることなく、配管の亀裂箇所を容易に確実に修理することができる、配管の亀裂箇所の点検修理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、配管の亀裂箇所の点検修理方法であって、前記配管の亀裂を超音波探傷検査により検出し、該超音波探傷検査により検出した亀裂箇所の近傍に前記配管を貫通する点検修理用孔を設け、該点検修理用孔内に撮像手段及び修理手段を挿入し、前記撮像手段により前記亀裂箇所を目視しながら、前記修理手段により前記亀裂箇所の修理を行い、この後に、前記撮像手段及び前記修理手段を前記点検修理用孔から抜き出し、前記点検修理用孔を閉塞手段で閉塞することを特徴とする。
【0010】
本発明の配管の亀裂箇所の点検修理方法によれば、超音波探傷検査装置により配管の亀裂を検出した場合、亀裂箇所の近傍に配管を貫通する点検修理用孔を設け、この点検修理用孔内に撮像手段及び修理手段を挿入する。そして、撮像手段により亀裂箇所を目視により確認しながら、修理手段により亀裂箇所の修理を行い、亀裂箇所の修理が完了した後に、点検修理用孔から撮像手段及び修理手段を抜き出し、点検修理用孔を閉塞手段で閉塞することにより、亀裂箇所の修理が完了することになる。
【0011】
また、本発明は、前記配管の亀裂箇所の近傍の少なくとも2箇所に前記点検修理用孔を設け、第1の点検修理用孔に前記撮像手段を挿入し、第2の点検修理用孔に前記修理手段を挿入することを特徴とすることとしてもよい。
【0012】
本発明の配管の亀裂箇所の点検修理方法によれば、第1の点検修理用孔内に撮像手段を挿入し、第2の点検修理用孔に修理手段を挿入し、撮像手段で亀裂箇所を目視ながら、修理手段で亀裂箇所の修理を行う。
この場合、撮像手段に照明機能を有するものを使用することにより、亀裂箇所を照らしながら、亀裂箇所の修理を行うことができるので、亀裂箇所を確実に修理することができる。
【0013】
さらに、本発明は、前記撮像手段は、前記亀裂箇所を撮像するファイバスコープであり、前記修理手段は、前記亀裂箇所の表面を研削する研削器具、及び前記亀裂箇所を肉盛り溶接する溶接器具であることを特徴とすることとしてもよい。
【0014】
本発明の配管の亀裂箇所の点検修理方法によれば、ファイバスコープによって亀裂箇所を目視して亀裂箇所の状態を把握し、亀裂箇所の表面を研削器具により研削し、その後に、亀裂箇所の表面を溶接器具により肉盛り溶接することになる。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、本発明の配管の亀裂箇所の点検修理方法によれば、超音波探傷検査装置による検査によって亀裂を検出した場合に、撮像手段によって亀裂箇所を目視しながら、修理手段によって亀裂箇所を修理することができる。従って、高度な技術を要することなく、亀裂箇所の状態を正確に把握しながら、亀裂箇所を確実に修理することができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による配管の点検・修理方法の一実施の形態を示した概略図であって、配管の亀裂箇所と点検修理用孔との関係を示した説明図である。
【図2】配管の亀裂箇所の点検修理の状態を示した説明図である。
【図3】研削器具の一例を示した概略図である。
【図4】溶接器具の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4には、本発明による配管の亀裂箇所の点検修理方法の一実施の形態が示されている。図1は、配管の亀裂箇所と点検修理用孔との関係を示す説明図、図2は亀裂箇所の点検修理の状態を示す説明図、図3は研削器具の概略図、図4は溶接器具の該略図である。
【0018】
すなわち、本実施の形態の配管の亀裂箇所の点検修理方法は、例えば、原子力発電プラントの一次系配管(循環系配管)等の溶接部(溶接部近傍を含む。以下、同じ。)等に生じた応力腐食割れ(SCC)等による亀裂(欠陥を含む。以下、同じ。)を超音波探傷検査により検出し、その検出した亀裂箇所を点検修理するのに有効な方法である。
【0019】
図1に示すように、原子力発電プラントの一次系配管(循環系配管)等の配管1の溶接部2に生じた亀裂3aを超音波探傷検査により検出するには、例えば、パルス発信機、探触子、受信機、表示部等を備えた超音波探傷検査装置(図示せず)を用い、この超音波探傷検査装置の探触子を検査対象である配管1の表面に接触させ、配管1の表面に沿って移動させながら配管1の内方に向けて超音波を発信する。
【0020】
配管1の内方に向けて超音波を発信すると、その超音波は配管1の底面(内面)で反射し、配管1に亀裂3aがある場合には亀裂3aで反射し、この反射して戻ってきた超音波を受信し、その受信したデータに基づいて亀裂3aの形状、長さ、深さ等を算定し、その算定結果が表示部に表示される。
【0021】
そして、上記のような超音波探傷検査により亀裂3aが検出された場合には、図1に示すように、ボール盤等を用いて亀裂3aを検出した箇所の近傍に配管1の内外を貫通する少なくとも2つ(本実施の形態では2つ)の点検修理用孔(第1の点検修理用孔4、及び第2の点検修理用孔5)を設ける。
【0022】
各点検修理用孔4、5は、後述する撮像手段10及び修理手段12を配管1の内部に挿入可能な大きさとする。本実施の形態においては、直径20mm程度の点検修理用孔4、5を設けている。
【0023】
そして、図2に示すように、第1の点検修理用孔4から配管1の内部に撮像手段10を挿入し、第2の点検修理用孔5から配管1の内部に修理手段12を挿入し、撮像手段10によって亀裂箇所3を目視しながら、修理手段12によって亀裂箇所3の修理を行う。
【0024】
この場合、亀裂箇所3の近傍に放射線透過試験用孔(放射線透過試験方法により配管1の溶接部2の検査を行う際のX線源等の挿入用孔、「γプラグ」ともいう。)が設けられている場合には、その放射線透過試験用孔を利用し、その放射線透過試験用孔から配管1の内部に撮像手段10及び修理手段12を挿入する。
【0025】
撮像手段10には、各種のファイバスコープ11を用いることができる。撮像手段10としては、ファイバスコープ11(例えば、工業用ファイバスコープ(オリンパス株式会社製)等)と、光源装置と、CCDカメラ又はデジタルカメラとを組み合わせたものが有効である。
【0026】
そして、上記のような構成の撮像手段10のファイバスコープ11を第1の点検修理用孔4から配管1の内部に挿入し、光源装置からファイバスコープ11に照明光を供給しながら、ファイバスコープ11を亀裂箇所3に沿って移動させることにより、亀裂箇所3の鮮明な画像をモニタ上で捉えることができ、亀裂箇所3の状態を確認することができる。
【0027】
修理手段12には、例えば、各種の研削器具13(例えば、歯科用のダイヤモンド研削器具等の回転式の研削器具等、図3参照。)及び溶接器具14(図4参照)を用いることができる。まず、研削器具13を第2の点検修理用孔5から配管1の内部に挿入し、研削器具13により亀裂箇所3を研削して、亀裂箇所3から亀裂3aを除去し、表面を平滑に仕上げる。
【0028】
次に、液体浸透探傷検査(PT)により、亀裂箇所3が除去されたか否かの確認をする。具体的には、研削した亀裂箇所3の表面に浸透液を塗布して浸透させ、表面の余分な浸透液を除去した後に現像液を塗布し、亀裂3aが残っているか否かの確認をする。
【0029】
そして、液体浸透探傷検査(PT)によって亀裂3aが残っていないのを確認した後に、第2の点検修理用孔5から研削器具13を抜き出し、研削器具13の代わりに溶接器具14を第2の点検修理用孔5から配管1の内部に挿入し、溶接器具14を用いて、TIG溶接により亀裂箇所3の表面に肉盛り溶接を施し、亀裂個所3を修理する。
【0030】
ここで、TIG溶接とは、タングステン・イナート・ガス(Tungsten Inert Gas)溶接のことであり、図4に示すように、タングステン電極16を先端に有するガスノズル15を第2の点検修理用孔5から配管1内に挿入し、ガスノズル15から不活性ガス(アルゴン等)を噴射しながら、不活性ガス雰囲気中でタングステン電極16と被溶接物(配管1)との間にアークを発生させ、このアーク熱で溶加材17(フィラワイヤ)を溶かすことにより、配管1の亀裂箇所3に肉盛り溶接を施す。
【0031】
そして、亀裂箇所3に肉盛り溶接を施した後に、溶接器具14を第2の点検修理用孔5から抜き出し、溶接器具14の代わりに研削器具13を第2の点検修理用孔5から配管1内に挿入し、研削器具13により肉盛り溶接を施した部分の表面を研削し、凹凸のない平滑面に仕上げる。
【0032】
そして、この後に、液体浸透探傷検査(PT)により、研削した亀裂箇所3の表面に浸透液を塗布して浸透させ、表面の余分な浸透液を除去した後に現像液を塗布し、亀裂3aが残っているか否かの確認をする。
【0033】
そして、この後に、第1の点検修理用孔4及び第2の点検修理用孔5内に閉塞手段であるプラグ(図示せず)を取り付け、プラグを配管1に溶接によって一体に接合することで、第1の点検修理用孔4及び第2の点検修理用孔5を閉塞する。
【0034】
上記のように構成した本実施の形態による配管の亀裂箇所の点検修理方法にあっては、超音波探傷検査により亀裂箇所3を検出した場合に、亀裂箇所3の近傍に配管1を貫通する点検修理用孔(第1の点検修理用孔4及び第2の点検修理用孔5)を設け、又は、既設の放射線透過試験用孔を利用し、この点検修理用孔(第1の点検修理用孔4及び第2の点検修理用孔5)を利用して、又は放射線透過試験用孔を利用して、撮像手段10(例えば、ファイバスコープ11)及び修理手段12(研削器具13及び溶接器具14)を配管1内に挿入し、撮像手段10で亀裂箇所3を目視しながら、亀裂箇所3を修理することができる。
【0035】
従って、配管1の亀裂箇所3の点検修理に高度な技術を有する必要はなく、資格のない者や経験の浅い者であっても、亀裂箇所3の状態を正確に把握しながら、亀裂箇所3を確実に精度良く修理することができる。
【0036】
なお、前記の説明においては、本発明を原子力発電プラントの一次配管系(循環系配管)等の配管1の溶接部2に生じた亀裂3aの点検修理に適用したが、火力発電プラントの配管の亀裂箇所やその他の各種のプラントの配管の亀裂箇所の点検修理に適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【0037】
また、前記の説明においては、配管1に第1の点検修理用孔4と第2の点検修理用孔5の2つの点検修理用孔を設けたが、配管1に1つの点検修理用孔、又は3つ以上の点検修理用孔を設けてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 配管
2 溶接部
3 亀裂箇所
3a 亀裂
4 第1の点検修理用孔
5 第2の点検修理用孔
10 撮像手段
11 ファイバスコープ
12 修理手段
13 研削器具
14 溶接器具
15 ガスノズル
16 タングステン電極
17 溶加材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の亀裂箇所の点検修理方法であって、
前記配管の亀裂を超音波探傷検査により検出し、該超音波探傷検査により検出した亀裂箇所の近傍に前記配管を貫通する点検修理用孔を設け、該点検修理用孔内に撮像手段及び修理手段を挿入し、前記撮像手段により前記亀裂箇所を目視しながら、前記修理手段により前記亀裂箇所の修理を行い、この後に、前記撮像手段及び前記修理手段を前記点検修理用孔から抜き出し、前記点検修理用孔を閉塞手段で閉塞することを特徴とする配管の亀裂箇所の点検修理方法。
【請求項2】
前記配管の亀裂箇所の近傍の少なくとも2箇所に前記点検修理用孔を設け、第1の点検修理用孔に前記撮像手段を挿入し、第2の点検修理用孔に前記修理手段を挿入することを特徴とする請求項1に記載の配管の亀裂箇所の点検修理方法。
【請求項3】
前記撮像手段は、前記亀裂箇所を撮像するファイバスコープであり、前記修理手段は、前記亀裂箇所の表面を研削する研削器具、及び前記亀裂箇所を肉盛り溶接する溶接器具であることを特徴とする請求項1又は2に記載の配管の亀裂箇所の点検修理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−169232(P2010−169232A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14455(P2009−14455)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】