説明

配線基板およびその製造方法

【課題】絶縁樹脂層と配線導体とが強固に密着し、ビアホールにおける配線導体同士の接続信頼性に優れる高密度配線で薄型の反りや変形の少ない配線基板およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】下位絶縁樹脂層および下位配線導体と、下位絶縁樹脂層および下位配線導体上に積層され、下位配線導体に達するビアホール9を有する上位絶縁樹脂層と、ビアホール9内の下位配線導体上から上位絶縁樹脂層表面にかけて被着形成された金属めっき層から成る上位配線導体とを備え、前記金属めっき層が、ビアホール9内の下部を充填するように被着形成された第一の金属めっき層5Aと、該第一の金属めっき層5Aから上位絶縁樹脂層表面にかけて被着形成された第二の金属めっき層5Bとから成るように構成した配線基板およびその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板およびその製造方法に関し、より詳細には、例えば半導体集積回路素子等の電子部品を搭載するのに好適な高密度多層配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品である半導体集積回路素子として、多数の電極端子を、その一方の主面の外周に沿って配設した、いわゆるペリフェラル型の半導体集積回路素子がある。また、このような半導体集積回路素子を配線基板に搭載する方法として、フリップチップ接続により接続する方法がある。
【0003】
フリップチップ接続とは、配線基板上に設けた電子部品接続用の配線導体の一部を電子部品の電極端子の配置に対応した並びに露出させ、この電子部品接続用の配線導体の露出部と前記電子部品の電極端子とを対向させ、これらを半田や金等からなる導電バンプを介して電気的に接続する方法である。
【0004】
近時は、このようなフリップチップ接続により第一の電子部品を配線基板上に搭載し、さらにその上に別の第二電子部品を半田ボール接続またはワイヤボンド接続により搭載して、配線基板への電子部品の搭載密度を高めることが行われている。
【0005】
図8は、第一の電子部品としてのペリフェラル型の半導体集積回路素子をフリップチップ接続により搭載し、さらにその上に第二電子部品しての半導体素子搭載基板を半田ボール接続した従来の配線基板の一例を示す概略断面図であり、図9は、図8の配線基板を示す平面図である。
【0006】
図8および図9に示すように、従来の配線基板110は、上面から下面にかけてコア用の配線導体102が配設されたコア用の絶縁基板103の上下面に、複数のビルドアップ用の絶縁樹脂層104とビルドアップ用の配線導体105とが交互に積層され、さらに、その最表面には保護用のソルダーレジスト層106が被着されている。
【0007】
コア用の絶縁基板103の上面から下面にかけては複数のスルーホール107が形成されており、絶縁基板103の上下面およびスルーホール107の内面にはコア用の配線導体102が被着され、スルーホール107の内部には埋め込み樹脂108が充填されている。ビルドアップ用の絶縁樹脂層104には、それぞれに複数のビアホール109が形成されており、各絶縁樹脂層104の表面およびビアホール109の内面には、ビルドアップ用の配線導体105が被着形成されている。
【0008】
この配線導体105のうち、配線基板110の上面側における最外層の絶縁樹脂層104上に被着された一部は、第一の電子部品としての半導体集積回路素子E1の電極端子に導電バンプB1を介してフリップチップ接続により電気的に接続される第一接続部105aを有する第一配線パターン部105Aであり、この第一配線パターン部105Aは複数並んで帯状に形成されている。さらに、配線導体105のうち、配線基板110の上面側における最外層の絶縁樹脂層104上に被着された他の一部は、第二電子部品としての半導体素子搭載基板E2の電極端子に半田ボールB2を介して半田ボール接続により電気的に接続される第二接続部105bを有する第二配線パターン部105Bであり、この第二配線パターン部105Bは複数並んで形成されている。
【0009】
これら第一配線パターン部105Aおよび第二配線パターン部105Bのうち、第一接続部105aおよび第二接続部105bがソルダーレジスト層106から露出しており、第一接続部105aに半導体集積回路素子E1の電極端子が半田や金等から成る導電バンプB1を介して電気的に接続され、第二接続部105bに半導体素子搭載基板E2の電極端子が半田ボールB2を介して電気的に接続される。
【0010】
一方、配線導体105のうち、配線基板110の下面側における最外層の絶縁樹脂層104上に被着された一部は、外部電気回路基板の配線導体に電気的に接続される外部接続用の第三接続部105cを有する第三配線パターン部105Cであり、この第三配線パターン部105Cは複数並んで形成されている。この第三配線パターン部105Cのうち、第三接続部105cがソルダーレジスト層106から露出しており、第三接続部105cに、外部電気回路基板の配線導体が半田ボールB3を介して電気的に接続される。
【0011】
そして、半導体集積回路素子E1の電極端子と第一接続部105aとを導電バンプB1を介して電気的に接続した後、半導体集積回路素子E1と配線基板110との間の隙間にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から成るアンダーフィルと呼ばれる充填樹脂U1を充填し、半導体集積回路素子E1が配線基板110上に実装される。さらに、その上に半導体素子搭載基板E2の電極端子と第二接続部105bとを半田ボールB2を介して電気的に接続することにより半導体素子搭載基板E2が配線基板110上に実装され、これにより配線基板110上に複数の電子部品が高密度に実装されることとなる。なお、このような配線基板110は、例えば下記の方法により製作される。
【0012】
まず、ガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた絶縁基板103用の絶縁シートを準備する。次に、この絶縁シートの両面に銅箔を張着するとともに、絶縁シート中の熱硬化性樹脂を熱硬化させて両面銅張り板を得る。この両面銅張り板に、その上下面を貫通するスルーホール107を穿孔するとともに、スルーホール107内を過マンガン酸アルカリ水溶液でデスミア処理する。なお、前記デスミア処理とは、不要な樹脂残渣を除去する処理のことを意味する。
【0013】
上記のようにしてデスミア処理した後、前記スルーホール107内壁および前記銅箔表面に無電解銅めっきおよび電解銅めっきから成る銅めっき層を被着させて、上下面の銅箔同士をスルーホール107内の銅めっき層で電気的に接続する。そして、スルーホール107内を埋め込み樹脂108で充填した後、上下面の銅箔および銅めっき層を所定パターンにエッチングすることにより、コア用の絶縁基板103の上下両面およびスルーホール107内壁に銅箔や銅めっき層から成るコア用の配線導体102を形成する。
【0014】
次に、コア用の絶縁基板103および配線導体102上にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂に無機絶縁性フィラーを分散させた絶縁樹脂層104用の樹脂フィルムを張着するとともに、樹脂フィルム中の熱硬化性樹脂を熱硬化させて絶縁樹脂層104を形成する。この絶縁樹脂層104にレーザ加工によりビアホール109を穿孔するとともに、ビアホール109内を過マンガン酸アルカリ水溶液でデスミア処理した後、ビアホール109内を含む絶縁樹脂層104の表面にセミアディティブ法で無電解銅めっきおよび電解銅めっきから成る配線導体105を上下面同時に形成する。
【0015】
このとき、絶縁樹脂層104の表面は予め粗化処理しておくか、あるいはビアホール109のデスミア処理により粗化処理しておくと、粗化処理された絶縁樹脂層104表面の微小凹凸とその上に被着される無電解銅めっきおよび電解銅めっきから成る配線導体105とが良好に係合され、絶縁樹脂層104と配線導体105とが強固に密着する。
【0016】
そして、次層の絶縁樹脂層104や配線導体105の形成を複数回繰り返すことによりビルドアップ部を形成し、最後に感光性を有する熱硬化性樹脂ペーストまたはフィルムを配線導体105が形成された最外層の絶縁樹脂層104上に積層した後、電子部品接続用の第一接続部105aおよび第二接続部105bや外部接続用の第三接続部105cを露出させる開口を有するように露光および現像し、硬化させることによりソルダーレジスト層106形成し、それにより上面から下面にかけてコア用の配線導体102が配設されたコア用の絶縁基板103の上下面に、複数のビルドアップ用の絶縁樹脂層104とビルドアップ用の配線導体105とが交互に積層され、さらに、その最表面には保護用のソルダーレジスト層106が被着されて成るビルドアップ多層配線基板110が製作される。
【0017】
近時、このようなビルドアップ多層配線基板110は、その薄型化および配線の高密度化が益々求められているとともに、これに搭載される半導体集積回路素子E1や半導体素子搭載基板E2あるいは外部電気回路基板との電気的接続信頼性を良好に維持する上で、半導体集積回路素子E1や半導体素子搭載基板E2の実装後の反りや変形を小さく抑えることが求められている。
【0018】
ビルドアップ配線基板110の実装後の反りや変形は、主にビルドアップ配線基板110とこれに搭載される半導体集積回路素子E1との熱膨張係数の差に起因して発生する熱応力によりもたらされる。一般的なビルドアップ配線基板110を構成する絶縁基板103や絶縁樹脂層104は、その熱膨張係数(XY方向)が20〜100ppm/℃程度であるのに対して半導体集積回路素子E1の熱膨張係数は3〜7ppm/℃程度と小さい。そこで、絶縁基板103や絶縁樹脂層104を構成する熱硬化性樹脂の中に例えば溶融シリカ(熱膨張係数0.5ppm/℃)等の低熱膨張材料の無機絶縁性フィラーを多量に充填させることにより、絶縁基板103や絶縁樹脂層104の熱膨張係数(XY方向)を8〜17ppm/℃程度に低くすることが行なわれている。
【0019】
しかしながら、このように無機絶縁性フィラーを多量に充填させた熱硬化性樹脂をビルドアップ用の絶縁樹脂層104に適用すると、以下のような問題点がある。すなわち、この熱硬化性樹脂を硬化させた絶縁樹脂層104にビアホールを形成した後にビアホール内を過マンガン酸アルカリ水溶液でデスミア処理すると、熱硬化性樹脂中に多量に充填させた無機絶縁性フィラーが絶縁樹脂層104の表面から脱粒して絶縁樹脂層104表面の微小な凹凸形状が崩れてしまい、その結果、この上に形成される配線導体102と絶縁樹脂層104表面の微小凹凸との係合が弱くなり配線導体102が絶縁樹脂層104から容易に剥離してしまうという問題点がある。
【0020】
そこで、特許文献1では、粗化処理されたビルドアップ用の絶縁樹脂層表面に例えば無電解銅めっきから成る粗化レジスト層を形成した後に、この粗化レジスト層が形成された絶縁樹脂層にビアホールを形成し、次にビアホール内をデスミア処理した後、粗化レジスト層をエッチングで除去して、あるいはエッチングせずに残した状態でビアホール内と絶縁樹脂層あるいは残した粗化レジスト層上とにセミアディティブ法で配線層を形成する方法が開示されている。
【0021】
この方法によると、ビアホール内をデスミア処理する際にビルドアップ用の絶縁樹脂層の表面は粗化レジスト層により保護されているので、ビルドアップ用の絶縁樹脂層の表面がデスミア処理によるダメージを受けることがなく、良好な粗化面が維持される。したがって、ビルドアップ用の絶縁樹脂層とビルドアップ用の配線層とが強固に密着した配線基板が得られる。
【0022】
しかしながら、この特許文献1の方法によると、無電解銅めっきから成る粗化レジスト層をエッチングで除去した後、ビアホール内と絶縁樹脂層上とにセミアディティブ法で配線層を形成する場合、ビアホール形成後に無電解銅めっきから成る粗化レジスト層をエッチングで除去する際に、ビアホール底面に露出する下位の配線層が過剰にエッチングされてしまう危険がある。このような過剰なエッチングはビアホール内における配線層同士の接続信頼性を損ねる原因になりやすい。
【0023】
また、無電解銅めっきから成る粗化レジスト層をエッチング除去せずに残した状態でビアホール内と粗化レジスト層上とにセミアディティブ法により配線層を形成する場合、絶縁樹脂層上には粗化レジスト層としての無電解銅めっき層とセミアディティブの下地導電層としての無電解銅めっき層とが2層重なって存在することとなり、絶縁樹脂層上における無電解銅めっき層の厚みが厚いものとなってしまう。よって、この無電解銅めっき層上に電解銅めっき層を所定パターンに被着させた後、露出する無電解銅めっき層をエッチング除去する際には、電解銅めっき層のパターンも同時に大きくエッチングされて配線層のパターンが細くなりやすいとともに、無電解銅めっきの方が電解銅めっきよりもエッチングされやすいので、電解銅めっきの下に位置する無電解銅めっき層が大きくえぐれてしまい、絶縁樹脂層と配線層との接合強度を弱める原因となる。
【0024】
さらに、ビアホール内を一回のセミアディティブ工程により充填するので、ビアホールのアスペクト比が大きい場合やビアホールの直径が大きな場合等にはビアホール内を配線層で良好に充填することができず、ビアホール上の配線導体に大きな凹みが形成されやすい。このようにビアホール上の配線導体に大きな凹みがあると、下位のビアホール上に上位のビアホールを重ねて設ける場合に上下のビアホール間において配線導体同士の電気的な接続信頼性が大きく低下する原因となる。
【0025】
【特許文献1】特開2005−251894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の課題は、低熱膨張材料の無機絶縁性フィラーを多量に充填させた絶縁樹脂をビルドアップ部の絶縁樹脂層に用いた場合であっても、絶縁樹脂層と配線導体とが強固に密着するとともにビアホールにおける配線導体同士の接続信頼性に優れる高密度配線で薄型の反りや変形の少ない配線基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。すなわち、ビルドアップ用の絶縁樹脂層の表面に金属箔を残した状態でその絶縁樹脂層にビアホールを形成し、ついで金属箔上およびビアホール内に第一の金属めっき層を所定の厚みに被着させた後、ビアホール内に第一の金属めっき層の一部が残存するようにして絶縁樹脂層上の金属箔およびその上の第一の金属めっき層をエッチング除去し、しかる後、ビアホール内および絶縁樹脂層上に第二の金属めっき層から成る配線導体を形成する場合には、ビアホール内の下位の配線導体が過剰にエッチングされてしまう危険性がなく、ビアホール内における上位の配線導体と下位の配線導体との電気的な接続信頼性を良好とすることができる。
【0028】
しかも、絶縁樹脂層上に第二の金属めっき層から成る配線導体を形成する際に絶縁樹脂層上に厚みの厚い無電解金属めっき層が形成されることがなく、したがって所定幅の正確な形状の配線導体を絶縁樹脂層との接合強度を十分に保ったままで形成することができる。さらに、ビアホールの下部が第一の金属めっき層で充填され、その上に第二の金属めっき層から成る配線導体が形成されるので、ビアホール内を第一の金属めっき層およびその上の第二の金属めっき層で良好に充填することができ、よってビアホール上の配線導体に大きな凹部が形成されることがなく、下位のビアホール上に上位のビアホールを重ねて設けた場合であっても、上下のビアホール間における配線導体同士の電気的な接続信頼性に優れる高密度配線が可能で薄型の反りや変形の少ない配線基板が得られる。
【0029】
すなわち、本発明における配線基板およびその製造方法は、以下の構成からなる。
(1)下位絶縁樹脂層と、該下位絶縁樹脂層の表面に形成された下位配線導体と、前記下位絶縁樹脂層および下位配線導体の上に積層され、前記下位配線導体に達するビアホールを有する上位絶縁樹脂層と、前記ビアホール内の前記下位配線導体の上から前記上位絶縁樹脂層の表面にかけて被着形成された金属めっき層から成る上位配線導体と、を備えた配線基板であって、前記金属めっき層が、前記ビアホール内の前記下位配線導体の上に前記ビアホールの下部を充填するように被着形成された第一の金属めっき層と、該第一の金属めっき層から前記上位絶縁樹脂層の表面にかけて被着形成された第二の金属めっき層とから成ることを特徴とする配線基板。
(2)前記第一の金属めっき層が無電解金属めっき層と、該無電解金属めっき層の上に被着形成された電解金属めっき層とから成る前記(1)に記載の配線基板。
(3)前記第二の金属めっき層が無電解金属めっき層と、該無電解金属めっき層の上に被着形成された電解金属めっき層とから成る前記(1)または(2)に記載の配線基板。
【0030】
(4)絶縁樹脂層と配線導体とを交互に積層する工程を含む配線基板の製造方法であって、以下の工程(a)〜(e)を順に含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
(a)表面に下位配線導体を有する下位絶縁樹脂層上に、表面に金属箔が被着された上位絶縁樹脂層を積層する工程
(b)前記金属箔の前記下位配線導体と対向する一部を除去するとともに、該除去部内の前記上位絶縁樹脂層に、前記下位配線導体に達するビアホールを形成する工程
(c)前記金属箔、前記上位絶縁樹脂層および前記ビアホール内に露出する下位配線導体の表面に、第一の金属めっき層を、前記下位配線導体上に位置する第一の金属めっき層の厚みをT1、前記金属箔および該金属箔上に位置する第一の金属めっき層の合計厚みをT2としたとき、前記T1およびT2がT1>T2の関係を満足するように被着形成する工程
(d)前記第一の金属めっき層および前記金属箔をエッチングすることにより、前記下位配線導体上に前記第一の金属めっき層の一部を残存させたまま前記金属箔を除去する工程
(e)前記第一の金属めっき層および前記上位絶縁樹脂層の露出する表面に前記ビアホールを介して前記下位配線導体に電気的に接続された第二の金属めっき層から成る上位配線導体を被着形成する工程
【0031】
(5)前記工程(a)の後でかつ前記工程(b)の前に、前記金属箔の厚みを化学的エッチングまたは物理的研磨により減少させる工程を含む前記(4)に記載の配線基板の製造方法。
(6)前記工程(b)において、前記金属箔の前記下位配線導体と対向する一部を、エッチングにより除去する前記(4)または(5)に記載の配線基板の製造方法。
(7)前記工程(b)において、前記金属箔の前記下位配線導体と対向する一部を、レーザ加工により除去する前記(4)または(5)に記載の配線基板の製造方法。
(8)前記工程(b)の後でかつ前記工程(c)の前に、前記ビアホール内のデスミア処理を行なう(4)〜(7)のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
(9)前記第一の金属めっき層が無電解金属めっき層と、該無電解金属めっき層の上に被着形成された電解金属めっき層とから成る前記(4)〜(8)のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
(10)前記第二の金属めっき層が無電解金属めっき層と、該無電解金属めっき層の上に被着形成された電解金属めっき層とから成る前記(4)〜(9)のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、低熱膨張材料の無機絶縁性フィラーを多量に充填させた絶縁樹脂をビルドアップ部の絶縁樹脂層に用いた場合であっても、絶縁樹脂層と配線導体とが強固に密着するとともにビアホールにおける配線導体同士の接続信頼性に優れる高密度配線で薄型の反りや変形の少ない配線基板が得られるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明にかかる配線基板およびその製造方法の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、第一の電子部品としてペリフェラル型の半導体集積回路素子をフリップチップ接続により搭載し、さらにその上に第二電子部品としての半導体素子搭載基板を半田ボール接続により搭載した本実施形態にかかる配線基板を示す概略断面図である。図2は、図1の配線基板を示す平面図である。図3は、本実施形態にかかるビアホール内の配線導体付近を示す部分拡大断面図である。
【0034】
図1および図2に示すように、本実施形態にかかる配線基板10は、上面から下面にかけてコア用の配線導体2が配設されたコア用の絶縁基板3の上下面に、ビルドアップ用の絶縁樹脂層4とビルドアップ用の配線導体5とが交互に積層され、さらに、その最表面に保護用のソルダーレジスト層6が被着されて成る。
【0035】
コア用の絶縁基板3は、厚みが0.05〜1.5mm程度であり、例えばガラス繊維束を縦横に織ったガラスクロスにビスマレイミドトリアジン樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁材料から成る。絶縁基板3は、配線基板10のコア部材として機能する。この絶縁基板3を構成する熱硬化性樹脂には、溶融シリカ等の低熱膨張係数の無機絶縁物フィラーを50〜70質量%程度の高密度で充填させておくことが好ましい。これにより、絶縁基板3の熱膨張係数(XY方向)を8〜17ppm/℃程度に低いものとすることができ、配線基板10が半導体集積回路素子E1との熱膨張係数の相違に起因して大きく反ることを有効に防止することができる。
【0036】
コア用の絶縁基板3には、その上面から下面にかけて直径が0.05〜0.3mm程度の複数のスルーホール7が形成されており、絶縁基板3の上下面およびスルーホール7の内面には、配線導体2が被着されている。コア用の配線導体2は、絶縁基板3の上下面では、主として銅箔あるいは無電解銅めっきおよびその上の電解銅めっきから形成されており、スルーホール7の内面では、無電解銅めっきおよびその上の電解銅めっきから形成されている。
【0037】
また、スルーホール7の内部には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から成る埋め込み樹脂8が充填されており、絶縁基板3の上下面に形成された配線導体2同士がスルーホール7内の配線導体2を介して電気的に接続されている。この埋め込み樹脂8を構成する熱硬化性樹脂にも、前記した絶縁基板3を構成する熱硬化性樹脂と同様に、溶融シリカ等の低熱膨張係数の無機絶縁物フィラーを40〜60質量%程度の高密度で充填させておくことが好ましい。これにより、埋め込み樹脂8の熱膨張係数(Z方向)を30〜40ppm/℃程度に低いものとすることができ、絶縁基板3との熱膨張係数(Z方向)の相違に起因して埋め込み樹脂に剥離やクラック、変形等が起こることを有効に防止することができる。
【0038】
このような絶縁基板3は、ガラス織物に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させたシートの上下面に配線導体2用の銅箔を張着した後、そのシートを熱硬化させ、これに上面から下面にかけてスルーホール7用のドリル加工等を施すことにより作製される。
【0039】
配線導体2は、絶縁基板3用の前記シートの上下全面に、厚みが3〜18μm程度の銅箔を上述のように張着しておくとともに、これらの銅箔および絶縁基板3にスルーホール7を穿孔した後、このスルーホール7の内面および銅箔表面に無電解銅めっきおよび電解銅めっきを順次施し、次いで、スルーホール7内を埋め込み樹脂8で充填した後、この上下面の銅箔および銅めっきをフォトリソグラフィ技術を用いて所定のパターンにエッチング加工することにより、絶縁基板3の上下面およびスルーホール7の内面に形成される。あるいは、絶縁基板3用の前記シートの上下全面に、厚みが3〜18μm程度の銅箔を上述のように張着しておくとともに、これらの銅箔および絶縁基板3にスルーホール7を穿孔した後、一旦前記銅箔を剥離し、次にスルーホール7の内面および絶縁基板3の上下面に無電解銅めっきおよび電解銅めっきをセミアディティブ法により所定パターンに被着形成することにより、絶縁基板3の上下面およびスルーホール7の内面に形成される。この場合、セミアディティブ法により微細な配線導体2を形成可能である。
【0040】
埋め込み樹脂8は、スルーホール7を塞ぐことによりスルーホール7の直上および直下にビルドアップ用の絶縁樹脂層4を形成可能とするためのものであり、未硬化のペースト状の熱硬化性樹脂を無電解銅めっきおよび電解銅めっきが施されたスルーホール7内にスクリーン印刷法により充填し、これを熱硬化させた後、その上下面を略平坦に研磨することにより形成される。あるいは、スルーホール7の内面および絶縁基板3の上下面に所定パターンの配線導体2を形成した後、絶縁基板3上に絶縁樹脂層4を形成する際に絶縁樹脂層4用の樹脂の一部をスルーホール7内に流入させることによって形成される。
【0041】
絶縁基板3の上下面に積層されたビルドアップ用の絶縁樹脂層4は、それぞれの厚みが20〜60μm程度であり、絶縁基板3と同様にガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁材料や、あるいはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に無機絶縁物フィラーを充填させた電気絶縁材料から成る。この絶縁樹脂層4を構成する熱硬化性樹脂にも、前記した絶縁基板3,埋め込み樹脂8を構成する各熱硬化性樹脂と同様に、溶融シリカ等の低熱膨張係数の無機絶縁物フィラーを50〜70質量%程度の高密度で充填させておくことが好ましい。これにより、絶縁樹脂層4の熱膨張係数(XY方向)を8〜17ppm/℃程度に低いものとすることができ、配線基板10が半導体集積回路素子E1との熱膨張係数の相違に起因して大きく反ることを有効に防止することができる。なお、絶縁樹脂層4と絶縁基板3とは必ずしもその全ての層に熱膨張係数(XY方向)が8〜17ppm/℃の低いものを用いる必要はなく、例えば絶縁樹脂層4のみに熱膨張係数(XY方向)が8〜17ppm/℃程度の低いものを用いても良い。あるいは絶縁樹脂層4の一部の層のみに熱膨張係数(XY方向)が8〜17ppm/℃程度の低いものを用いても良い。ただし、これらの場合、配線基板10における熱膨張係数の異なる層が上下対称となるように配置することが好ましい。
【0042】
また、各絶縁樹脂層4には、直径が30〜100μm程度の複数のビアホール9が形成されている。ビアホール9は、後述するようにレーザ加工やフォトリソグラフィ加工等によって形成される。
【0043】
各絶縁樹脂層4の表面およびビアホール9の内面には、無電解銅めっきおよびその上の電解銅めっきから成るビルドアップ用の配線導体5が被着形成されている。そして、絶縁樹脂層4を挟んで上層に位置する配線導体5と下層に位置する配線導体5とをビアホール9内の配線導体5を介して電気的に接続することにより、高密度配線が立体的に形成される。
【0044】
ここで、ビルドアップ用の配線導体5のうち、ビアホール内9の配線導体5は、第一の金属めっき層と第二の金属めっき層との二層構造から成る。具体的には、図3に示すように、ビアホール9内の配線導体5が、ビアホール9内の下位の配線導体2(5)上に、ビアホール9の下部を充填するように被着形成された第一の銅めっき層5Aと、この第一の銅めっき層5Aの上から絶縁樹脂層4の表面にかけてビアホール9の上部を充填するように披着形成された第二の銅めっき層5Bとから成る。これにより、例えばビアホール9のアスペクト比が大きい場合やビアホール9の直径が大きい場合等であっても第一の銅めっき層5Aでビアホール9の下部を、その上の第二の銅めっき層5Bでビアホール9の上部を良好に充填することができる。したがって、ビアホール9上の配線導体5に大きな凹みが形成されることはなく、下位のビアホール9上に上位のビアホール9を重ねて設けた場合であっても上下のビアホール9間において配線導体5同士が高い信頼性で電気的に接続される。下位のビアホール9上に上位のビアホール9を重ねて設ける場合、下位のビアホール9と上位のビアホール9とを互いにずらして上下の配線導体5同士を接続する場合と比較して、配線導体5の配線密度をより高いものとすることができる。
【0045】
ビアホール9内の配線導体5が、第一の銅めっき層5Aと第二の銅めっき層5Bとから成るように構成されているか否かを確認するには、例えばビアホール9の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察すること等によって確認することができる。
【0046】
第一の銅めっき層5Aおよび第二の銅めっき層5Bは、それぞれ無電解銅めっき層とその上に被着された電解銅めっき層とから成ることが好ましい。そのような構成にすることにより、ビアホール9内を短時間に効率よく充填することができる。
【0047】
ビルドアップ用の配線導体5のうち、配線基板10の上面側における最外層の絶縁樹脂層4上に被着された一部は、半導体集積回路素子E1の電極に半田等の導電バンプB1を介して電気的に接続される第一接続部5aを形成しており、別の一部は、半導体素子搭載基板E2の電極端子に半田ボールB2を介して半田ボール接続により電気的に接続される第二接続部5bを形成している。また、配線基板10の下面側における最外層の絶縁樹脂層4上に被着された一部は、外部電気回路基板の配線導体に半田ボールB3を介して電気的に接続される外部接続用の第三接続部5cを形成している。
【0048】
このようなビルドアップ用の配線導体5は、後述するセミアディティブ法を利用した本発明独自の方法により形成される。セミアディティブ法は、例えばビアホール9が形成されたビルドアップ用の絶縁樹脂層4の表面に、電解めっき用の下地金属層を無電解銅めっきにより形成し、その上に配線導体5に対応した開口を有するめっきレジスト層を形成し、次に、下地金属層を給電用の電極として開口から露出する下地金属層上に電解銅めっきを施すことで配線導体5を形成し、めっきレジストを剥離した後、露出する下地金属層をエッチング除去することによって、各配線導体5を電気的に独立させる方法である。
【0049】
さらに、配線導体5上および該配線導体5が形成された部分以外の最外層の絶縁樹脂層4上には、ソルダーレジスト層6が被着されている。ソルダーレジスト層6は、最外層の配線導体5を熱や外部環境から保護するための保護膜であり、上面側のソルダーレジスト層6は、第一接続部5aの上面および第二接続部5bの上面を露出させるようにして被着されている。また、下面側のソルダーレジスト層6は、外部接続用の第三の接続部5cを露出させるようにして被着されている。
【0050】
ソルダーレジスト層6としては、例えばエポキシ樹脂等に溶融シリカやタルク等の無機物粉末フィラーを30〜70質量%程度分散させた絶縁材料から成る熱硬化性樹脂が好ましい。このようなソルダーレジスト6となる感光性を有する熱硬化性樹脂ペーストまたはフィルムを、第一配線接続部5aおよび第二接続部5bを有する配線導体5が形成された最外層の絶縁樹脂層4上に積層した後、第一接続部5aおよび第二接続部5bあるいは第三接続部5cを露出させる開口を有するように露光および現像し、硬化させればよい。
【0051】
なお、ソルダーレジスト層6から露出する第一接続部5aの上面および第二接続部5bの上面には、第一接続部5aおよび第二接続部5bが酸化腐食するのを防止するとともに、導電バンプB1や半田ボールB2との接続を良好とするために、ニッケルめっきおよび金めっきを無電解めっき法や電解めっき法により順次被着させておくか、あるいは半田層を被着させておいてもよい。
【0052】
次に、ビルドアップ用の配線導体5をセミアディティブ法により形成する方法について、上述のコア用の絶縁基板3およびコア用の配線導体2上に一層目のビルドアップ用の絶縁層4および一層目のビルドアップ用の配線導体5を形成する場合を例に挙げて図面を参照して詳細に説明する。
【0053】
図4〜図7は、本実施形態にかかるビルドアップ用の配線導体を形成する工程を説明する要部概略断面図である。これらの図面のうち、図4(a)〜(c)は、コア用の絶縁基板およびコア用の配線導体上に表面に銅箔が被着されたビルドアップ用の絶縁樹脂層を積層する工程を示す図であり、図5(d)〜(f)は、積層された銅箔付きの絶縁樹脂層にビアホールを形成するとともにビアホール内に第一の銅めっき層を被着させる工程を示す図であり、図6(g)〜(i)および図7(j)〜(l)は、第一の銅めっき層および銅箔をエッチングしてコア用の配線導体上に第一銅めっき層の一部を残存させたままビルドアップ用の絶縁樹脂層の銅箔を完全に除去した後、第二の銅めっき層から成るビルドアップ用の配線導体をセミアディティブ法により形成する工程を示す図である。
【0054】
[工程(a)]
まず、図4(a)に示すように、コア用の絶縁基板3およびコア用の配線導体2の上に表面に銅箔11が被着されたビルドアップ用の絶縁樹脂層4を積層する。絶縁樹脂層4としては、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂、アリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁材料が好ましく、さらには前記した理由から熱硬化性樹脂中に溶融シリカ等の低熱膨張係数を有する無機絶縁物フィラーを50〜70質量%程度充填してその熱膨張係数(XY方向)を8〜17ppm/℃程度としたものが好ましい。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラスクロスを含まず、熱硬化性樹脂と無機絶縁物フィラーとから成る電気絶縁材料であってもよい。絶縁樹脂層4の厚みとしては、20〜50μm程度が好ましい。
【0055】
また、銅箔11としては、絶縁樹脂層4の側に微小な凹凸を有する電解銅箔が好ましい。電解銅箔はその製造工程において微小な凹凸を有する粗面であるマット面と、平滑な面であるシャイニー面とを有しており、そのマット面側を絶縁樹脂層4側として両者を張り合わせることが好ましい。銅箔11が絶縁樹脂層4の側に微小な凹凸を有することで、絶縁樹脂層4の銅箔11側の表面にも銅箔11の凹凸に対応した微小な凹凸が形成される。銅箔11の厚みとしては3〜18μm程度が好ましい。
【0056】
なお、コア用の絶縁基板3およびコア用の配線導体2の上に表面に銅箔11が被着されたビルドアップ用の絶縁樹脂層4を積層するには、予め銅箔11が被着された半硬化状態の絶縁樹脂層4を、コア用の配線導体2が形成された絶縁基板3上に重ねて加熱しながらプレスし、絶縁樹脂層4を完全に熱硬化させればよい。
【0057】
[工程(b)]
次に、図4(b)に示すように、絶縁樹脂層4の表面に被着された銅箔11を機械的に研磨または化学的にエッチングして銅箔11の厚みを2〜8μm程度に薄くする。これにより、後述する図4(c)に示す工程において、銅箔11に形成するビアホール形成用の開口を正確な形状および大きさで形成しやすくなる。なお、銅箔11の厚みを2〜8μm程度に薄くする工程は必ずしも必要ではなく、最初から厚みが2〜8μmの薄い銅箔11を被着させておいてもよい。
【0058】
次に、図4(c)に示すように、銅箔11にビアホール形成用の開口11aを形成する。開口11aの形成は、周知のフォトリソグラフィ技術を採用して行なえばよい。このとき、銅箔11の厚みが2〜8μmと薄いので、フォトリソグラフィ技術により正確な形状および大きさの開口11aを容易に形成することができる。なお、開口11aの形成は必ずしも必要ではなく、開口11aを設けないままであってもよい。
【0059】
次に、図5(d)に示すように、銅箔11に形成した開口11a内に露出する絶縁樹脂層4にレーザ加工やフォトリソグラフィ加工等によりビアホール9を形成する。このとき、銅箔11に開口11aを設けておくことによって絶縁樹脂層4へのビアホール9の形成が容易となる。なお、銅箔11に開口11aを設けないままの状態で銅箔11ごと絶縁樹脂層4にビアホール9を形成してもよい。
【0060】
絶縁樹脂層4にビアホール9を形成した後、ビアホール9内を例えば過酸化マンガンアルカリ水溶液等を用いてデスミア処理することが好ましい。デスミア処理によりビアホール9内に付着した不要な樹脂残渣を除去することができる。この場合、絶縁樹脂層4の表面は銅箔11により被覆されているので、デスミア処理により絶縁樹脂層4の表面がダメージを受けることがない。したがって、絶縁樹脂層4の表面に形成された微小な凹凸がそのままの形で維持される。
【0061】
[工程(c)]
次に、図5(e)に示すように、ビアホール9内に露出するコア用の配線導体2の表面からビアホール9の内壁および銅箔11の表面にかけて第一の無電解銅めっき層5A1を周知の無電解銅めっき法により0.3〜1.0μmの厚みに被着形成させ、引き続き、図5(f)に示すように、この第一の無電解銅めっき層5A1の表面に第一の電解銅めっき層5A2を、コア用の配線導体2の上に位置する第一の無電解銅めっき層5A1および第一の電解銅めっき層5A2の合計厚みT1が、銅箔11およびその上に位置する第一の無電解銅めっき層5A1および第一の電解銅めっき層5A2の合計厚みT2よりも厚くなるように、すなわちT1>T2の関係を満足するように被着形成させる。このような厚みの第一の電解銅めっき層5A2を被着させるには、例えば市販のフィルドビアめっき用の電解銅めっき液等を使用すればよい。
【0062】
[工程(d)]
次に、図6(g)に示すように、第一の電解銅めっき層5A2、第一の無電解銅めっき層5A1および銅箔11を周知の銅エッチング液でエッチングすることにより、コア用の配線導体2の上に第一の無電解銅めっき層5A1および第一の電解銅めっき5A2の一部を残存させたまま金属箔11を完全に除去する。このとき、前述のように、配線導体2の上に位置する第一の無電解銅めっき層5A1および第一の電解銅めっき層5A2の合計厚みT1が、銅箔11およびその上に位置する第一の無電解銅めっき層5A1および第一の電解銅めっき層5A2の合計厚みT2よりも厚くなるように被着形成させてあるので、第一の電解銅めっき層5A2、第一の無電解銅めっき層5A1および銅箔11を略均等にエッチングすると、配線導体2の上に第一の無電解銅めっき層5A1および第一の電解銅めっき5A2の一部を残存させたまま金属箔11を完全に除去することができる。これにより、ビアホール9内には第一の無電解銅めっき層5A1および第一の電解銅めっき層5A2から成る第一銅めっき層5Aがビアホール9の下部を充填する形で形成される。このとき、コア用の配線導体2の上には第一の銅めっき層5Aが残存したままなので、配線導体2が過剰にエッチングされるおそれはない。
【0063】
ここで、金属箔11を除去した際に、ビアホール9内に露出する配線導体2の上に第一の無電解銅めっき層5A1および第一の電解銅めっき5A2の一部を確実に残存させる上で、前記T1とT2との比(T1/T2)が1.1以上、好ましくは1.1〜1.7にするのがよい。また、配線導体2の上に残存した第一の無電解銅めっき層5A1および第一の電解銅めっき5A2から成る第一銅めっき層5Aの厚みは10〜20μmであるのが好ましい。これにより、下記で説明する第二の無電解銅めっき層5B1および第二の電解銅めっき層5B2から成る第二の銅めっき層5Bを所定の位置に確実に被着形成することができる。
【0064】
[工程(e)]
次に、図6(h)に示すように、ビアホール9内に充填された第一の銅めっき層5Aの表面および絶縁樹脂層4の露出する表面に第二の無電解銅めっき層5B1を周知の無電解銅めっき法により0.3〜1.0μmの厚みに被着形成した後、図6(i)に示すように、絶縁樹脂4上に被着させた第二の無電解銅めっき層5B1の上に、めっきレジスト層12を形成する。
【0065】
次に、図7(j)に示すように、めっきレジスト層12から露出する第二の無電解銅めっき層5B1の上に第二の電解銅めっき層5B2を周知の電解銅めっき法により10〜20μmの厚みに被着した後、図7(k)に示すように、めっきレジスト層12を剥離する。そして、図7(l)に示すように、第二の電解銅めっき層5B2から露出する第二の無電解銅めっき層5B1が消失するまで第二の無電解銅めっき層5B1および第二の電解銅めっき層5B2を周知の銅エッチング液によりエッチングすることにより、ビアホール9内の下位の配線導体2上に、ビアホール9の下部を充填するように被着形成された第一の銅めっき層5Aと、この第一の銅めっき層5Aの上から絶縁樹脂層4の表面にかけてビアホール9の上部を充填するように披着形成された第二の銅めっき層5Bとから成る配線導体5が形成される。このようにしてビルドアップ用の配線導体を形成すると、ビアホール上の配線導体に大きな凹部が形成されることがなく、下位のビアホール上に上位のビアホールを重ねて設けた場合であっても、上下のビアホール間における配線導体同士の電気的な接続信頼性に優れる高密度配線が可能で薄型の反りや変形の少ない配線基板が得られる。
【0066】
上記で説明した配線基板10は、例えば半導体集積回路素子E1の電極端子と第一接続部5aとを導電バンプB1を介して電気的に接続した後、半導体集積回路素子E1と配線基板10との間の隙間にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から成るアンダーフィルと呼ばれる充填樹脂U1を充填し、半導体集積回路素子E1が配線基板10上に実装される。さらに、その上に半導体素子搭載基板E2の電極端子と第二接続部5bとを半田ボールB2を介して電気的に接続することにより半導体素子搭載基板E2が配線基板10上に実装され、これにより配線基板10上に複数の電子部品が高密度に実装される。実装後は、絶縁基板3,埋め込み樹脂8,絶縁樹脂層4を構成する各熱硬化性樹脂に低熱膨張係数の無機絶縁物フィラーを所定の割合で高密度充填しているので、配線基板10が半導体集積回路素子E1との熱膨張係数の相違に起因して大きく反ることを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態にかかる配線基板を示す概略断面図である。
【図2】図2は、図1の配線基板を示す平面図である。
【図3】本発明の一本実施形態にかかるビアホール内の配線導体付近を示す部分拡大断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の一本実施形態にかかるビルドアップ用の配線導体をセミアディティブ法により形成する工程を説明する要部概略断面図である。
【図5】(d)〜(f)は、本発明の一本実施形態にかかるビルドアップ用の配線導体をセミアディティブ法により形成する工程を説明する要部概略断面図である。
【図6】(g)〜(i)は、本発明の一本実施形態にかかるビルドアップ用の配線導体をセミアディティブ法により形成する工程を説明する要部概略断面図である。
【図7】(j)〜(l)は、本発明の一本実施形態にかかるビルドアップ用の配線導体をセミアディティブ法により形成する工程を説明する要部概略断面図である。
【図8】従来の配線基板の一例を示す概略断面図である。
【図9】図8の配線基板を示す平面図である。
【符号の説明】
【0068】
2 コア用の配線導体
3 コア用の絶縁基板
4 ビルドアップ用の絶縁樹脂層
5 ビルドアップ用の配線導体
5A 第一の銅めっき層
5A1 第一の無電解銅めっき層
5A2 第一の電解銅めっき層
5B 第二の銅めっき層
5B1 第二の無電解銅めっき層
5B2 第二の電解銅めっき層
5a 第一接続部
5b 第二接続部
5c 第三接続部
6 ソルダーレジスト層
7 スルーホール
8 埋め込み樹脂
9 ビアホール
10 配線基板
11 銅箔
11a 開口
12 めっきレジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下位絶縁樹脂層と、
該下位絶縁樹脂層の表面に形成された下位配線導体と、
前記下位絶縁樹脂層および下位配線導体の上に積層され、前記下位配線導体に達するビアホールを有する上位絶縁樹脂層と、
前記ビアホール内の前記下位配線導体の上から前記上位絶縁樹脂層の表面にかけて被着形成された金属めっき層から成る上位配線導体と、を備えた配線基板であって、
前記金属めっき層が、
前記ビアホール内の前記下位配線導体の上に前記ビアホールの下部を充填するように被着形成された第一の金属めっき層と、
該第一の金属めっき層から前記上位絶縁樹脂層の表面にかけて被着形成された第二の金属めっき層とから成ることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第一の金属めっき層が無電解金属めっき層と、該無電解金属めっき層の上に被着形成された電解金属めっき層とから成る請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第二の金属めっき層が無電解金属めっき層と、該無電解金属めっき層の上に被着形成された電解金属めっき層とから成る請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
絶縁樹脂層と配線導体とを交互に積層する工程を含む配線基板の製造方法であって、以下の工程(a)〜(e)を順に含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
(a)表面に下位配線導体を有する下位絶縁樹脂層上に、表面に金属箔が被着された上位絶縁樹脂層を積層する工程
(b)前記金属箔の前記下位配線導体と対向する一部を除去するとともに、該除去部内の前記上位絶縁樹脂層に、前記下位配線導体に達するビアホールを形成する工程
(c)前記金属箔、前記上位絶縁樹脂層および前記ビアホール内に露出する下位配線導体の表面に、第一の金属めっき層を、前記下位配線導体上に位置する第一の金属めっき層の厚みをT1、前記金属箔および該金属箔上に位置する第一の金属めっき層の合計厚みをT2としたとき、前記T1およびT2がT1>T2の関係を満足するように被着形成する工程
(d)前記第一の金属めっき層および前記金属箔をエッチングすることにより、前記下位配線導体上に前記第一の金属めっき層の一部を残存させたまま前記金属箔を除去する工程
(e)前記第一の金属めっき層および前記上位絶縁樹脂層の露出する表面に前記ビアホールを介して前記下位配線導体に電気的に接続された第二の金属めっき層から成る上位配線導体を被着形成する工程
【請求項5】
前記工程(a)の後でかつ前記工程(b)の前に、前記金属箔の厚みを化学的エッチングまたは物理的研磨により減少させる工程を含む請求項4に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記工程(b)において、前記金属箔の前記下位配線導体と対向する一部を、エッチングにより除去する請求項4または5に記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記工程(b)において、前記金属箔の前記下位配線導体と対向する一部を、レーザ加工により除去する請求項4または5に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記工程(b)の後でかつ前記工程(c)の前に、前記ビアホール内のデスミア処理を行なう請求項4〜7のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記第一の金属めっき層が無電解金属めっき層と、該無電解金属めっき層の上に被着形成された電解金属めっき層とから成る請求項4〜8のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記第二の金属めっき層が無電解金属めっき層と、該無電解金属めっき層の上に被着形成された電解金属めっき層とから成る請求項4〜9のいずれかに記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−235624(P2008−235624A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73966(P2007−73966)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】