説明

酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子の製造方法および該粒子を配合した化粧料

【課題】光拡散性やすべり性等に優れた酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子を簡便かつ効率よく製造する。
【解決手段】水にオルガノトリアルコキシシランを添加して、該オルガノトリアルコキシシランを加水分解させた反応液に、予め水に酸化アルミニウム微粒子を分散させた酸化アルミニウム微粒子分散液を添加し、更にアルカリ性水溶液を添加して、オルガノトリアルコキシシラン加水分解物の脱水縮合を行うことにより、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子内に複数個の酸化アルミニウム微粒子を内包させたものを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化アルミニウム粒子をポリオルガノシルセスキオキサン粒子内に内包してなる複合粒子の製造方法および該複合粒子を配合した化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオルガノシルセスキオキサン粒子は、各種プラスティック、ゴム等の耐磨耗性、滑り性、光拡散性、ブロッキング防止性等の目的として幅広く利用されている。特に粒子形状が球状で平均粒子径が0.1μm〜10μmのものが一般的に用いられている。
また、無機粒子も各種プラスティック、ゴム等の補強材、着色材、ブロッキング防止材等として幅広く配合されている。
一方、各々の機能性向上のため、ポリオルガノシルセスキオキサンと無機粒子との複合粒子についても、その製造方法が提案されている。
例えば、酸化チタンや炭酸カルシウム等の無機粒子を水分散した系内に、オルガノトリアルコキシシランを添加してポリオルガノシルセスキオキサン被覆を形成させた複合粒子を得る方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、酸化鉄粒子等の無機粒子をポリオルガノシルセスキオキサン粒子に内包してなる複合粒子についても、その製法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−285363号公報
【特許文献2】特開2004−67763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
まず特許文献1のものは無機粒子の疎水化を目的としており、無機粒子表面をポリオルガノシルセスキオキサン樹脂で薄く被覆することで課題を達成している。
ところがこのものは、無機粒子の疎水化には一定の効果があるものの、複合粒子としての基本組成は無機粒子であることから、粒子径や粒子形状等の制御が困難であった。
また特許文献2のものは、無機顔料系粒子を内包させたシリコーン粒子であるが、例示される界面活性剤の効果だけでは良好な無機顔料系粒子内包のシリコーン粒子を調製することは難しく、無機粒子種によってはシリコーン粒子に内包されずに、無機粒子凝集物と球状シリコーン粒子の混合物となる。このためすべり性や感触等が良好でなく、物性的にばらつきの大きいものであった。
さらにまた、特許文献1および2のものは、粒子合成の際に各種界面活性剤等を添加することを特徴としているため、熱に弱く、150℃以上で粒子が黄変しやすく、用途的にも限定されるものであった。
【0005】
本発明は、これら問題を解決した酸化アルミニウム微粒子を内包してなるポリオルガノシルセスキオキサン粒子の製造方法について、特に単独の酸化アルミニウム微粒子や酸化アルミニウム微粒子凝集物の混在が殆どない、酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明によって得られる酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子の形状は、球状または球状表面全面に小さな突起を有する金平糖状粒子であり、光拡散性やすべり性に優れている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すために鋭意検討を重ねた結果、オルガノトリアルコキシシランを加水分解させてから、予め水分散させた酸化アルミニウム微粒子分散液を反応系内に添加することで、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子に取り込まれない酸化アルミニウム微粒子が殆ど混在しない、酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
まず請求項1の発明は、水にオルガノトリアルコキシシランを添加して、該オルガノトリアルコキシシランを加水分解させた反応液に、予め水に酸化アルミニウム微粒子を分散させた酸化アルミニウム微粒子分散液を添加し、更にアルカリ性水溶液を添加して、オルガノトリアルコキシシラン加水分解物を脱水縮合させることにより、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子内に複数個の酸化アルミニウム微粒子を内包させることを特徴とする、酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子の製造方法である。
請求項2の発明は、酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子に含有される酸化アルミニウム微粒子は、ポリオルガノシルセスキオキサン100重量部に対して0.1〜10重量部であり、且つ酸化アルミニウム微粒子の平均粒子径が0.01μm〜2μmであることを特徴とする請求項1記載の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子の製造方法である。
請求項3の発明は、請求項1の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子を配合した化粧料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、得られる粒子は球状または金平糖状のポリオルガノシルセスキオキサン粒子に酸化アルミニウム微粒子を複数個内包した複合粒子であり、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子に内包されない単独の酸化アルミニウム微粒子の混在がほとんどないため、光拡散効果やすべり性等に優れている内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子を工業的に有利な方法で効率よく製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で得られた粒子の電子顕微鏡写真図である。
【図2】実施例1で得られた粒子を断面した電子顕微鏡写真図である。
【図3】実施例2で得られた粒子の電子顕微鏡写真図である。
【図4】比較例1で得られた粒子の電子顕微鏡写真図である。
【図5】2ウェイケーキファンデーション処方の処方例と比較処方例を示す表図である。
【図6】使用性テストにおける化粧仕上がり感の評価点と判定符号を示す表図である。
【図7】2ウェイケーキファンデーション処方の処方例と比較処方例の評価結果を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための形態について詳しく説明する。
本発明の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子は、水にオルガノトリアルコキシシランを添加して加水分解させた反応液に、予め水に酸化アルミニウム微粒子を分散させた酸化アルミニウム微粒子分散液を添加し、更にアルカリ性水溶液を添加して、オルガノトリアルコキシシラン加水分解物を脱水縮合させることにより得られる。
これに対し、水に酸化アルミニウム微粒子を分散させた酸化アルミニウム微粒子分散液にオルガノトリアルコキシシランを添加して、該オルガノトリアルコキシシランの加水分解、脱水縮合反応を行うと、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子に内包されない酸化アルミニウム微粒子が極端に増加する。
本発明の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子は、平均粒子径が0.5μm〜10μmの球状粒子または球状粒子表面に突起物が形成された金平糖状粒子である。
【0011】
本発明における製造方法としては、以下に示す方法がより好ましい。
球状粒子を得る場合は、水にオルガノトリアルコキシシランを添加して加水分解させた反応液に、予め水に酸化アルミニウム微粒子を分散させた酸化アルミニウム微粒子分散液を添加し、更にアルカリ性水溶液を添加してオルガノトリアルコキシシラン加水分解物を脱水縮合させることにより得られる。この反応系では、各種酸、塩、界面活性剤、分散剤等の不純物となる物質は極力添加しない方が好ましい。これにより熱的安定性に優れた不純物が殆ど混在しない酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子が得られ、様々な用途に用いることができる。
金平糖状粒子を得る場合は、水に酸、塩、水溶性高分子分散剤を添加した後に、ポリオルガノシルセスキオキサンを添加して加水分解させた反応液に、予め水に酸化アルミニウム微粒子を分散させた酸化アルミニウム微粒子分散液を添加し、更にアルカリ性水溶液を添加してオルガノトリアルコキシシラン加水分解物を脱水縮合させることにより得られる。この反応系では、酸、塩、高分子分散剤を用いるため、熱的安定性は劣っているが、球状粒子表面全面に突起を有するため、光拡散性やすべり性に非常に優れ、化粧料用途に好適である。
【0012】
オルガノトリアルコキシシランを加水分解させる水の電気伝導度は5μS/cm(マイクロジーメンス/センチメートル)以下が好ましい。
この水には、各種の酸、界面活性剤、水溶性有機溶剤等を少量添加することもできる。
【0013】
本発明で用いられる酸としては、無機酸、有機酸のいずれでもよく、具体的には塩酸や酢酸などを例示することができる。
【0014】
本発明で用いられる塩としては、酸性塩、アルカリ性塩のいずれでも使用できるが、具体的には酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩などを例示することができる。
【0015】
本発明で用いられる水溶性高分子分散剤としては、合成高分子、天然高分子のいずれでも使用できるが、具体的にはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどを例示することができる。
【0016】
本発明で使用されるオルガノトリアルコキシシランは、一般式
Si(OR
で示される。
該一般式において、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜6の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基、フェニル基、アミノ基、エポキシ基、あるいはビニル基を少なくとも1個有する1価の有機基であり、またRはRと同様の炭素数1〜6の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基である。
【0017】
さらに具体的には、オルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−i−ブトキシシラン、メチルトリ−s−ブトキシシラン、メチルトリ−t−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、s−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどが例示される。
【0018】
これらのオルガノトリアルコキシシランは単独、あるいは二種以上の混合物で用いても良いが、これらオルガノトリアルコキシシランのうち、入手が容易なメチルトリメトキシシランが好適に用いられる。
【0019】
オルガノトリアルコキシシランの添加量は、水100重量部に対して5〜30重量部が好ましい。5重量部未満では製造効率が悪くなり、30重量部より多いと粒子同士の融着が発生し易くなる。
【0020】
オルガノトリアルコキシシランの水への添加方法は10分以内で添加することが好ましい。オルガノトリアルコキシシランの水への添加時間が10分を超えると、該オルガノトリアルコキシシランの加水分解反応の進行にばらつきが発生するため、粒子同士の融着が発生し易くなる。
【0021】
本発明で用いられる酸化アルミニウム微粒子は、一般的な製造方法で得られるものでよく、その平均粒子径は0.01〜2μmが好適である。平均粒子径が2μmを超えるとポリオルガノシルセスキオキサン粒子に複数個の酸化アルミニウム微粒子を内包させることが困難となる。
また酸化アルミニウム微粒子の粒度分布も重要であり、比較的シャープな粒度分布を有する酸化アルミニウム微粒子が好適に用いられる。
さらに、酸化アルミニウム微粒子はイオン性不純物が少ない方がより好ましい。
【0022】
酸化アルミニウム微粒子の添加量は、ポリオルガノシルセスキオキサン100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.1重量部未満では酸化アルミニウム微粒子内包による効果が低下する。また、10重量部より多いと内包できない酸化アルミニウム微粒子が発生するようになる。
酸化アルミニウム微粒子の添加方法は、酸化アルミニウム微粒子を水分散させた酸化アルミニウム微粒子分散液を、オルガノトリアルコキシシラン加水分解液に添加する。
酸化アルミニウム微粒子分散液は超音波分散させる事が好ましい。
【0023】
アルカリ性物質とは、一般に周期律表Ia属、IIa属の金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩または有機窒素化合物、アンモニアなどが挙げられ、アルカリ性水溶液とは前記したアルカリ性物質の水溶液であるが、反応後除去しやすいことから、特にアンモニアが好ましい。これらアルカリ性物質および/またはその水溶液は単独でも、あるいは2種類以上を混合して用いても良い。また、該アルカリ性水溶液に水溶性有機溶剤、界面活性剤などが含まれていても使用することが出来る。
【0024】
アルカリ性水溶液の添加量は、オルガノトリアルコキシシラン加水分解物の脱水縮合反応時の反応液のpHが8.0〜11の範囲となるように添加することが望ましく、pHが8.0未満では粒子同士の融着が発生し易く、pHが11を超えると脱水縮合反応が早すぎて内包されない酸化アルミニウム微粒子が発生し易い。
【0025】
アルカリ性水溶液を添加することでオルガノトリアルコキシシラン加水分解物を脱水縮合させるときの反応液温度としては、10〜60℃が好ましい。
【0026】
アルカリ性水溶液の添加方法は、反応液撹拌下で、速やかに添加することが望ましい。また、アルカリ性水溶液を添加する際の反応液の撹拌は特に限定されないが、強い撹拌とすると粒子同士の融着、あるいは不定形粒子が生成する場合があるので、通常、液が混合されている程度の、穏やかな撹拌であることが好ましい。
【0027】
アルカリ性水溶液を添加した後は、撹拌を止めて静置下で1時間以上熟成させる。熟成時間が1時間未満では粒子同士の融着が発生し易くなる。
【0028】
本発明を実施するにあたり、オルガノトリアルコキシシランに、トリオルガノモノアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、オルガノハロシランから選択される少なくとも1種類を添加してもよい。
【0029】
トリオルガノモノアルコキシシランとしては、トリメチルモノメトキシシラン、トリメチルモノエトキシシラン、トリメチルモノ−n−プロポキシシラン、トリメチルモノ−i−プロポキシシラン、トリメチルモノ−n−ブトキシシラン、トリメチルモノ−i−ブトキシシラン、トリメチルモノ−s−ブトキシシラン、トリメチルモノ−t−ブトキシシラン、トリエチルモノメトキシシラン、トリ−n−プロピルモノメトキシシラン、トリ−i−プロピルモノメトキシシラン、トリ−n−ブチルモノメトキシシラン、トリ−i−ブチルモノメトキシシラン、トリ−s−ブチルモノメトキシシラン、トリ−t−ブチルモノメトキシシラン、トリ−N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルモノメトキシシラン、トリ−γ−グリシドキシプロピルモノメトキシシラン、トリビニルモノメトキシシラン、トリフェニルモノメトキシシランなどが例示される。
【0030】
ジオルガノジアルコキシしランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−i−ブトキシシラン、ジメチルジ−s−ブトキシシラン、ジメチルジ−t−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−i−ブチルジメトキシシラン、ジ−s−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメトキシシラン、ジ−γ−グリシドキシプロピルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどが例示される。
【0031】
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−s−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシランなどが例示される。
【0032】
オルガノハロシランとしては、メチルトリクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、トリメチルモノクロルシラン、エチルトリクロルシラン、ジエチルジクロルシラン、トリエチルモノクロルシランなどが例示される。
【0033】
このようにして合成した粒子は、その後、ろ過分離・水洗浄あるいは有機溶剤洗浄をした後、乾燥し、場合によっては解砕して微粒子を得る。
得られた粒子は、酸化アルミニウム微粒子を複数個内包したポリオルガノシルセスキオキサン粒子である。
【0034】
また本発明では、酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサンを化粧料に配合するものであり、この場合に、必要に応じ、シリコーン処理、フッ素処理、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸エステル、アミノ酸系誘導体、レシチン等により表面被覆処理を行った後配合しても良く、更にはこれらの複合処理を行なった後、配合してもよい。
【0035】
より詳しくは、シリコーン処理としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の各種のシリコーンオイルによる処理や、メチルトリアルキルシラン、エチルトリアルキルシラン、ヘキシルトリアルキルシラン、オクチルトリアルキルシラン等の各種のアルキルシランによる処理が例示され、フッ素処理としては、パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩や、トリフルオロメチルエチルトリアルキルシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリアルキルシラン、トリデカフルオロオクチルトリアルキルシラン等の各種フルオロアルキルシランによる処理が例示され、脂肪酸処理としては、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の各種脂肪酸による処理が例示され、金属石鹸処理としては、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸アルミニウム、ベヘン酸カルシウム等の金属石鹸処理が例示され、脂肪酸エステル処理としては、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル処理が例示され、アミノ酸誘導体処理としては、ラウロイルリシン、ステアロイルグルタミン酸、ミリストイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸等のアミノ酸誘導体処理が例示され、また、レシチンによる処理等が例示される。
【0036】
本発明の化粧料には、必要に応じて通常化粧料に配合される成分を適宜配合することができる。例えば、ワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、高級脂肪酸、高級アルコール等の固形・半固形油分、スクワラン、流動パラフィン、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、シリコーン油、オリーブ油、アボガド油、ミンク油等の流動油分、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤、水溶性および油溶性ポリマー、界面活性剤、多価アルコール、糖類、シリコーン、金属石鹸、レシチン、アミノ酸、コラーゲン、ポリマー、無機顔料、有機顔料等の各種表面処理粉体、タール色素、天然色素等の各種色素、エタノール、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、PH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、水等を本発明の効果を損なわない範囲内で配合可能である。
【0037】
また本発明の化粧料は、その剤形や製品形態が特に限定されるものではなく、油中水型、水中油型、水分散型、プレス状、固形等、パウダーなどの剤形とすることができ、また製品形態としては、洗顔フォーム・クリーム、クレンジング、マッサージクリーム、パック、化粧水、乳液、クリーム、美容液、化粧下地、日焼け止め等の皮膚用化粧料、ファンデーション、水白粉、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、コンシーラー、口紅、リップクリーム等の仕上げ用化粧料、ヘアミスト、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアトニック、ヘアクリーム、ポマード、チック等の液体整髪料、シャンプー、リンス、トリートメント、セットローション、ヘアスプレー、染毛料等の頭髪用化粧料、パウダースプレー、ロールオン等の制汗剤などを例示することができる。この中でも、ファンデーション、フェースパウダーなど固形状製品等が本発明の効果が発揮されやすい化粧料である。
【0038】
以下に、本発明の具体的な実施例について比較例と共に記載するが、本発明はこれらの記載に限定されないことはいうまでもない。
【0039】
<実施例1:球状粒子の製造>
温度計、還流装置および撹拌装置を備えた反応容器に電気伝導度が0.5μS/cmの水330重量部を仕込み、反応温度を30℃とした後にメチルトリメトキシシラン70重量部を3分間で添加して1時間撹拌し、メチルトリメトキシシラン加水分解液を得た。
これとは別に水8重量部に酸化アルミニウム微粒子(住友化学製AA−03:平均粒子径0.3μm)を1重量部添加して、超音波を1分間照射して酸化アルミニウム微粒子分散液を得た。
先に調製したメチルトリメトキシシラン加水分解液の液温を30℃として、酸化アルミニウム微粒子分散液を添加した後に、1重量%のアンモニア水3.5重量部を速やかに添加して、1分後に撹拌を停止した。
静置下で3時間熟成した後、ろ過、乾燥して白色粒子を得た。得られた白色粒子の重量は35.2gであった。
メチルトリメトキシシランと酸化アルミニウム微粒子の配合比率から、ポリメチルシルセスキオキサン100重量部に対し酸化アルミニウムは3重量部である。
得られた粒子を電子顕微鏡観察したところ、図1に示す写真図のように平均粒子径が5μmの球状粒子であり、酸化アルミニウムの単独および凝集した微粒子は殆ど確認できなかった。また得られた球状粒子の断面を電子顕微鏡観察したところ、図2に示す写真図のように、酸化アルミニウム微粒子(写真図において球状粒子内にある白色粒状のもの)を複数個内包した球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子であることが確認された。
【0040】
<実施例2:金平糖状粒子の製造>
温度計、還流装置および撹拌装置を備えた反応容器に電気伝導度が0.5μS/cmの水330重量部を仕込み、酢酸アンモニウム0.5重量部、1規定塩酸7重量部、5重量%ポリビニルアルコール水溶液2.5重量部を添加して反応温度を26℃とした後に、メチルトリメトキシシランを70重量部添加して、メチルトリメトキシシラン加水分解液を得た。
これとは別に水8重量部に酸化アルミニウム微粒子(住友化学製AA-03:平均粒子径0.3μm)を1重量部添加して、超音波を1分間照射して酸化アルミニウム微粒子分散液を得た。
次に、メチルトリメトキシシラン加水分解液の液温を26℃として、酸化アルミニウム分散液を添加した後に、2重量%のアンモニア水11重量部を速やかに添加して、1分後に撹拌を停止した。
静置下で3時間熟成した後、ろ過、乾燥して白色粒子を得た。得られた白色粒子の重量は35.1gであった。
メチルトリメトキシシランと酸化アルミニウムの配合比率から、ポリメチルシルセスキオキサン100重量部に対し酸化アルミニウムは3重量部である。
得られた粒子を電子顕微鏡観察したところ、図3に示す写真図のように平均粒子径が7μmであって球状表面全体に小さな突起がある金平糖状粒子であり、酸化アルミニウム単独粒子や酸化アルミニウム粒子凝集物は殆ど確認できなかった。
【0041】
<比較例1>
温度計、還流装置および撹拌装置を備えた反応容器に電気伝導度が0.5μS/cmの水330重量部を仕込み、反応温度を30℃として酸化アルミニウム微粒子(住友化学製AA−03:平均粒子径0.3μm)を1重量部添加して超音波を1分間照射した後、メチルトリメトキシシラン70重量部を3分間で添加して1時間撹拌し、メチルトリメトキシシラン加水分解液を得た。
メチルトリメトキシシラン加水分解液の液温を30℃として、1重量%のアンモニア水3.5重量部を速やかに添加して、1分後に撹拌を停止した。
静置下で3時間熟成した後、ろ過、乾燥して白色粒子を得た。得られた白色粒子の重量は34.8gであった。
得られた粒子を電子顕微鏡観察したところ、図4に示す写真図のように平均粒子径が2μmの程度の球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子とポリメチルシルセスキオキサンに内包されない単独および凝集した酸化アルミニウム微粒子(球形粒子の周囲に点在する微粒子)が確認でき、酸化アルミニウム微粒子内包型ポリメチルシルセスキオキサン粒子とは言い難いものであった。またポリメチルシルセスキオキサン粒子の粒度分布は広く、粒子同士の融着もみられた。
また、ろ過工程でのろ過液は白濁していたので、これを回収して電子顕微鏡観察したところ、殆どが単独および凝集した酸化アルミニウム微粒子であった。
これらの結果から、酸化アルミニウム微粒子分散液にオルガノトリアルコキシシランを添加して加水分解、脱水縮合反応を行うと、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子中への酸化アルミニウム微粒子の取り込みが極端に悪くなり、酸化アルミニウム微粒子単独として混在することとなることが明確となった。
【0042】
<比較例2>
酸化アルミニウム微粒子を分散させる水にポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製エマルゲン106)1.5重量部を添加した以外は比較例1と同反応条件でポリメチルシルセスキオキサン粒子を合成した。
得られた粒子は、電子顕微鏡観察したところ、比較例1と同様、ポリメチルシルセスキオキサン粒子の周囲に単独および凝集した酸化アルミニウム微粒子が多く確認できた。
【0043】
<化粧料として2ウェイケーキファンデーションの処方>
前記実験例1、2、比較例1で得られた粒子および酸化アルミニウム微粒子を内包しない一般的なポリメチルシルセスキオキサン粒子を用いて図5の表図に示す組成の2ウェイケーキファンデーションをそれぞれ処方した。
これらを処方例1、2、比較処方例1、2とする。
これら2ウェイケーキファンデーションを下記製法によりそれぞれ製造し、該製造された各ファンデーションの化粧仕上がり感、使用感触、持続性について図6の表図に示す評価方法により評価し、その結果を図7の表図に示す。
【0044】
[2ウェイケーキファンデーションの製法]
図5の表図に示される粉体成分(1)〜(11)を混合粉砕して、これをヘンシェルミキサーに移す。別の容器に油相成分(12)〜(16)を混合する。ヘンシェルミキサーを撹拌しながら油相成分を加えて均一になるよう撹拌混合し、その後アトマイザーにて粉砕した。これをアルミ皿にプレス成型して2ウェイケーキファンデーションの製品を得た。
【0045】
[2ウェイケーキファンデーションの化粧仕上がりの評価方法]
これら得られた各2ウェイケーキファンデーションを女性パネラー(5人)が通常の使用方法にて用い、化粧仕上がりを専門評価者により、
5:非常に自然な仕上がり
4:自然な仕上がり
3:普通
2:やや仕上がり感が悪い
1:仕上がり感が悪い
の5段階で評価をしてもらい、その平均点を評価結果として図6の表図に示す判定符号を用いて図7に付した。
【0046】
[2ウェイケーキファンデーションの使用性の評価方法]
前記得られた2ウェイケーキファンデーションを女性パネラー(5名)により、平滑感、きしみ、ざらつきなどの使用性を同様にして5段階で評価してもらい、その平均点を評価点とし、図6の表図に示す判定符号を用いて図7に付した。
【0047】
[2ウェイケーキファンデーションの持続性の評価方法]
前記得られた2ウェイケーキファンデーションを女性パネラー(5名)により、化粧持続性をファンデーション塗布後3時間後に同様にして5段階で評価してもらい、その平均点を評価結果として図6の表図に示す判定符号を用いて図7に付した。
【0048】
[2ウェイケーキファンデーションの評価結果]
図7に示す表図から明らかなように、本発明を実施して得られた酸化アルミニウム微粒子内包型ポリメチルシルセスキオキサン粒子を用いて製造した2ウェイケーキファンデーション(処方例1、2)は、塗布時の仕上がり感、使用性、持続性ともに優れたファンデーションであった。更に処方例1、2のファンデーションは、仕上がり感が自然なだけ出なく、立体感を感じさせ、陰影をハッキリさせ、小顔になるとのコメントも寄せられた。
これに対し、比較例1で得られた粒子およびポリメチルシルセスキオキサン粒子を用いて製造した2ウェイケーキファンデーション(比較処方例1、2)のものは、仕上がり感、使用性、持続性共に処方例1、2のファンデーションより劣っていた。
以上の結果、本発明の方法で得た粒子を用いて製造した2ウェイケーキファンデーションは、仕上がり感、使用性、持続性ともに優れた2ウェイケーキファンデーションであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子は、主に化粧料への処方により、光拡散によるソフトフォーカス効果や滑り性の寄与、触感向上等に効果的である。また各種プラスティック、各種ゴム等の添加材として、滑り性、耐摩耗性、ブロッキング防止性、撥水性、光拡散性等付与剤としても利用の可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水にオルガノトリアルコキシシランを添加して、該オルガノトリアルコキシシランを加水分解させた反応液に、予め水に酸化アルミニウム微粒子を分散させた酸化アルミニウム微粒子分散液を添加し、更にアルカリ性水溶液を添加して、オルガノトリアルコキシシラン加水分解物を脱水縮合させることにより、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子内に複数個の酸化アルミニウム微粒子を内包させることを特徴とする酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子の製造方法。
【請求項2】
酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子に含有される酸化アルミニウム微粒子は、ポリオルガノシルセスキオキサン100重量部に対して0.1〜10重量部であり、且つ酸化アルミニウム微粒子の平均粒子径が0.01μm〜2μmであることを特徴とする請求項1記載の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子を配合した化粧料。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−201780(P2012−201780A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67074(P2011−67074)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(591180130)日興リカ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】