説明

酸素吸収性樹脂組成物、成形体および酸素吸収法

【課題】 優れた酸素吸収性を有し、製造中や成形時の劣化、大気中での失効性が改善され、かつ酸素吸収により不快な臭気を発生しない酸素吸収性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)、遷移金属塩(B)およびラジカル捕捉剤(C)を含有する酸素吸収性樹脂組成物が提供される。この組成物は、必要に応じてガスバリア性樹脂(D)、相容化剤(E)などを含有する。この組成物は、酸素吸収能を発現させたい時に活性エネルギー線を照射して酸素吸収性を発現させることにより、製造中や成形時の劣化、大気中での失効性が改善される。この組成物は、酸素吸収性が良好であり、酸素吸収に伴う樹脂の分解により臭気物質が生じるのが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線を照射することで、酸素吸収性を発現させたい時に、酸素吸収性を発現させることが可能であり、かつ酸素吸収により不快な臭気を発生しない酸素吸収性樹脂組成物及びこれを使用した成形体、酸素吸収法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性樹脂、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略すことがある)は、酸素ガスバリア性および炭酸ガスバリア性に優れた材料である。このような樹脂は溶融成形が可能であるので、耐湿性、機械的特性などに優れた熱可塑性樹脂(ポリオレフィン、ポリエステルなど)の層と積層され、多層プラスチック包装材として好適に用いられている。しかしながら、これらのガスバリア性樹脂の気体透過性は完全にゼロであるわけではなく、無視し得ない量の気体を透過する。このような気体の透過、とりわけ、内容物の品質に大きな影響を及ぼす酸素の透過を低減するために、また、内容物の包装時点ですでに包装体内部に存在する酸素を取り除くために、酸素吸収剤を使用することが知られている。
【0003】
例えば、改良された酸素吸収剤として、遷移金属触媒とエチレン性不飽和化合物とを含有する組成物(特許文献1参照)や、架橋高分子からなる脱酸素剤(特許文献2参照)が提案されている。また、上記のEVOHと酸素吸収剤とを含む樹脂組成物が提案されている(特許文献3、特許文献4、および特許文献5参照)。特に上記EVOHを含む樹脂組成物は、EVOHと同様に溶融成形が可能であるので、各種包装材料に好適に用いることが可能である。
【0004】
しかしながら、上記のような酸素吸収剤または酸素吸収性組成物を包装材として使用すると、酸素吸収が進むにつれて酸素吸収剤が分解し、不快な臭気が発生することがある。また、製造、成形時の劣化が顕著である。更に、架橋高分子は成型加工性が良くなく、特に熱可塑性樹脂に混練した場合に、ゲルなどが発生して成形不良となるため実用的でない。このように、保管中に大気中の酸素を吸収することにより、失活したり、物性が低下したり、また劣化により発生する酢酸臭がきついなどの問題の少ない樹脂組成物や方法も提案されている(特許文献6および7参照)が、分解による臭気発生などを抑制しようとすると酸素吸収速度が低下する傾向があり、香りを重視する用途において必要な低臭気性と高い酸素吸収速度を実現するためにはさらなる改良が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開平5−115776号公報
【特許文献2】特開平11−70331号公報
【特許文献3】特開2001−106866号公報
【特許文献4】特開2001−106920号公報
【特許文献5】特開2002−146217号公報
【特許文献6】特開2003−64250号公報
【特許文献7】特開2003−113311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記従来の問題を解決することにあり、その目的とするところは、優れた酸素吸収性を有し、製造中や成形時の劣化、大気中での失効性が改善され、かつ酸素吸収により不快な臭気を発生しない酸素吸収性樹脂組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、上記優れた性質を有する樹脂組成物を含む成形体、例えば、該樹脂組成物でなる層を含む多層フィルム、多層容器などを提供することにある。本発明のさらに他の目的は、上記優れた性質を有する樹脂組成物を含み、酸素による劣化を受けやすく、かつ香りが重視される食品、化粧品などの物品を保存するのに適した容器を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、高い酸素掃去機能を有するため、取り扱いの容易な脱酸素剤としても有用な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂に、遷移金属塩とラジカル捕捉能を有する添加剤を配合することで、酸素吸収能を発現させたい時に活性エネルギー線を照射して酸素吸収性を発現させることができ、製造中や成形時の劣化、大気中での失効性が改善され、かつ酸素吸収により不快な臭気を発生しない酸素吸収性樹脂組成物を提供できることを見出し本発明に至った。即ち、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)、遷移金属塩(B)およびラジカル捕捉剤(C)を含有する。
【0008】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(A)において、主鎖中の炭素−炭素二重結合の量をa(モル/g)、側鎖中の炭素−炭素二重結合の量をb(モル/g)としたときに、aおよびbは下記式(1)を満足する:
100×b/(a+b) ≦ 7 (1)
【0009】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(A)は、下記構造式(I)および構造式(II):
【0010】
【化1】


【0011】
【化2】


【0012】
(式中、R、R、RおよびRは同一または異なり、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルアリール基、−COOR、−OCOR、シアノ基またはハロゲン原子であり、そしてRおよびRはメチレン基またはオキシメチレン基によって環を形成していてもよく、ここで、RおよびRは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアルキルアリール基である)で示される単位のうちの少なくとも一方を有する。
【0013】
好適な実施態様においては、上記式(I)および(II)においてR、R、RおよびRはすべて水素原子である。
【0014】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(A)は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンおよびポリオクテニレンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である。
【0015】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(A)は、ポリブタジエンおよびポリオクテニレンのうちの少なくとも一方である。
【0016】
好適な実施態様においては、上記遷移金属塩(B)は、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩およびコバルト塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩である。
【0017】
好適な実施態様においては、上記ラジカル捕捉剤(C)は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤及びラクトン系酸化防止剤の少なくとも1種である。
【0018】
好適な実施態様においては、上記ラジカル捕捉剤(C)は、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤及びラクトン系酸化防止剤の少なくとも1種とを配合する。
【0019】
好適な実施態様においては、上記組成物の酸素吸収速度は0.01ml/(g・day)以上である。
【0020】
好適な実施態様においては、上記酸素吸収性樹脂組成物は、更に酸素透過速度が500ml・20μm/(m・day・atm)(20℃、65%RH)以下のガスバリア性樹脂(D)を含有する。
【0021】
好適な実施態様においては、上記ガスバリア性樹脂(D)は、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリアクリロニトリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である。
【0022】
好適な実施態様においては、上記ガスバリア性樹脂(D)は、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
【0023】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(A)と前記ガスバリア性樹脂(D)の合計重量を100重量%としたときに、該ガスバリア性樹脂(D)は70〜99重量%、該熱可塑性樹脂(A)は30〜1重量%の割合で含有される。
【0024】
好適な実施態様においては、上記酸素吸収性樹脂組成物は、さらに相容化剤(E)を含有する。
【0025】
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂(A)、前記ガスバリア性樹脂(D)および前記相容化剤(E)の合計重量を100重量%としたときに、該ガスバリア性樹脂(D)は70〜98.9重量%、該熱可塑性樹脂(A)は29.9〜1重量%、そして該相容化剤(E)は29〜0.1重量%の割合で含有される。
【0026】
好適な実施態様においては、上記組成物において、熱可塑性樹脂(A)からなる粒子が、上記ガスバリア性樹脂(D)のマトリックス中に分散している。
【0027】
本発明は、さらに、上記酸素吸収性樹脂組成物を含む成形体;該組成物からなる層を有する多層構造体および多層容器;該組成物からなる層を含み、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる多層容器;該組成物からなる層および熱可塑性ポリエステル層を有する多層容器;および該組成物からなるガスケットが付与されたキャップ本体を有するキャップを包含する。
【0028】
本発明は、さらに、上記酸素吸収性樹脂組成物;酸素吸収性樹脂組成物を含む成形体;該組成物からなる層を有する多層構造体および多層容器;該組成物からなる層を含み、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる多層容器;該組成物からなる層および熱可塑性ポリエステル層を有する多層容器;および該組成物からなるガスケットが付与されたキャップ本体を有するキャップに、活性エネルギー線を照射することにより、酸素吸収性能を発現させる方法を提供する。
【0029】
好適な実施態様においては、 照射する活性エネルギー線の線量率は200〜2000ミリジュール(mJ)/cm2 である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、優れた酸素吸収性を有し、また、ラジカル捕捉能を有する添加剤を配合することで、酸素吸収能を発現させたい時に活性エネルギー線を照射して酸素吸収性を発現させることにより、製造中や成形時の劣化、大気中での失効性が改善され、かつ酸素吸収により不快な臭気を発生しない酸素吸収性樹脂組成物、ならびに上記優れた性質を有する樹脂組成物を含む成形体、例えば、該樹脂組成物からなる層を含む多層フィルム、多層容器などが提供される。さらに、上記優れた性質を有する樹脂組成物を含み、酸素による劣化を受けやすく、かつ香りが重視される食品、化粧品などの物品を保存するのに適した容器が提供される。本発明によればまた、高い酸素掃去機能を有するため、取り扱いの容易な脱酸素剤としても有用な樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、酸素を“掃去する”とは、与えられた環境から酸素を吸収・消費し、またはその量を減少させることを言う。
【0032】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)、遷移金属塩(B)およびラジカル捕捉剤(C)を含有し、さらに必要に応じて、ガスバリア性樹脂(D)、相容化剤(E)、その他の熱可塑性樹脂(F)、各種添加剤などを含有する。以下にこれらについて、順次説明する。
【0033】
(1)実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)
本発明の樹脂組成物には、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)(本明細書中において、熱可塑性樹脂(A)、樹脂(A)などという場合がある)が含有される。ここで、熱可塑性樹脂(A)が「実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する」とは、該熱可塑性樹脂(A)の主鎖に存在する炭素−炭素二重結合が分子内の全炭素−炭素二重結合の90%以上であり、側鎖に存在する炭素−炭素二重結合が、分子内の全炭素−炭素二重結合の10%以下であることをいう。側鎖に存在する炭素−炭素二重結合は、好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。すなわち、該樹脂(A)において、主鎖中の炭素−炭素二重結合の量をa(モル/g)、側鎖中の炭素−炭素二重結合の量をb(モル/g)としたときに、下記式(1)を満足する:
100×b/(a+b) ≦ X (1)
ここでXは、10、好ましくは7、さらに好ましくは5である。
【0034】
上記熱可塑性樹脂(A)は、その分子内に炭素−炭素二重結合を有するため、酸素と効率よく反応することが可能であり、酸素掃去機能(酸素吸収機能)が得られる。ここで、上記炭素−炭素二重結合とは、共役二重結合を包含するが、芳香環に含まれる多重結合は包含しない。熱可塑性樹脂(A)に含まれる炭素−炭素二重結合の量は、0.001eq/g(等量/g)以上であることが好ましく、0.005eq/g以上がより好ましく、0.01eq/g以上が更により好ましい。炭素−炭素二重結合の含有量が0.001eq/g未満である場合、得られる樹脂組成物の酸素掃去機能が不十分となるおそれがある。
【0035】
上記のように、熱可塑性樹脂(A)は実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有するため、酸素との反応により、側鎖の二重結合の開裂に伴う低分子量分解物の発生が極めて少ない。低分子量の分解物の一部は不快臭気物質であり、このような分解物を生じないため不快臭を発生することがない。これに対して、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂を使用した場合、酸素吸収性の点では問題とならないが、上述のように、側鎖の二重結合の開裂によって分解物が生成する。そのため、不快な臭気が発生し、周囲の環境を著しく損ねる恐れがある。
【0036】
上記熱可塑性樹脂(A)において、主鎖中の炭素−炭素二重結合が酸素と反応した際には、アリル炭素(二重結合に隣接する炭素)の部位で酸化を受けるため、アリル炭素は4級炭素でないことが好ましい。さらに、主鎖の開裂によっても低分子量の分解物が生成する可能性は否定できないので、これを抑制するためにも、上記アリル炭素は、置換されていない炭素、即ち、メチレン炭素であることが好ましい。以上の点から、熱可塑性樹脂(A)は、下記構造式(I)で示される単位および構造式(II)で示される単位のうちの
少なくとも1種を有することが好ましい:
【0037】
【化3】


【0038】
【化4】


【0039】
(式中、R、R、RおよびRは同一または異なり、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルアリール基、−COOR、−OCOR、シアノ基またはハロゲン原子であり、そしてRおよびRはメチレン基またはオキシメチレン基によって環を形成していてもよく、ここで、RおよびRは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアルキルアリール基である)。
【0040】
上記アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜5であり、アリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜10であり、アルキルアリール基の炭素原子数は好ましくは7〜11である。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が、アリール基の例としてはフェニル基が、アルキルアリール基の例としてはトリル基が、ハロゲン原子の例としては塩素原子が、それぞれ挙げられる。また、熱可塑性樹脂(A)に含まれていてもよい置換基としては、各種親水性基が挙げられる。ここでいう親水性基とは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、エポキシ基、エステル基、カルボン酸無水物基、ホウ素含有極性基(例えば、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸無水物基、ボロン酸塩基)などを指して言う。
【0041】
上記熱可塑性樹脂(A)のうちでも、該樹脂を構成する上記構造式(I)および(II)の各単位において、R、R、RおよびRのすべてが水素原子である化合物が、臭気を防止する観点からは特に好ましい。この理由については必ずしも明らかではないが、R、R、RおよびRが水素以外の基である場合には、熱可塑性樹脂(A)が酸素と反応する際にこれらの基が、酸化、切断されて臭気物質に変化する場合があるためと推定される。
【0042】
構造式(I)および構造式(II)の単位の中でも、ジエン化合物由来の単位が好ましい。該構造を有する熱可塑性樹脂の製造が容易であるためである。このようなジエン化合物としては、イソプレン、ブタジエン、2−エチルブタジエン、2−ブチルブタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。これらの1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの単位を含む熱可塑性樹脂(A)の例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリオクテニレンなどが挙げられる。これらの中でもポリブタジエン、ポリオクテニレンが特に好適である。また、熱可塑性樹脂(A)として、上記の単位とそれ以外の単位とを含有する共重合体も使用可能である。共重合成分としては、スチレン、アクリロニトリル、プロピレンなどが挙げられる。熱可塑性樹脂(A)がこのような共重合体である場合、構造式(I)で示される単位および構造式(II)で示される単位の含有割合は、その合計量が、共重合体を構成する全単位に対して50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量は、好適には1000〜500000であり、より好適には5000〜300000であり、更に好適には10000〜250000であり、特に好適には40000〜200000の範囲である。熱可塑性樹脂(A)の分子量が1000未満の場合または500000を超える場合には、得られる樹脂組成物の成形加工性、およびハンドリング性に劣り、あるいは成形体とした場合の強度や伸度などの機械的性質が低下するおそれがある。更に、後述するガスバリア性樹脂(D)と混合して使用する場合において分散性が低下し、その結果、ガスバリア性および酸素掃去性能が低下する場合がある。
【0044】
熱可塑性樹脂(A)は単一の樹脂であっても複数の樹脂からなる混合物であってもよい。
【0045】
実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)を製造する方法としては、熱可塑性樹脂(A)の種類によっても異なるが、例えばポリブタジエン(cis−1,4−ポリブタジエン)の場合、触媒としてコバルト系や、ニッケル系触媒を使用することにより合成することができる。具体的には、例えば、CoCl・2CN錯体とジエチルアルミニウムクロライドの組み合わせなどが挙げられる。使用可能な溶媒としては、不活性な有機溶媒が挙げられ、中でも、炭素原子数が6〜12の炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂環式炭化水素類、またはトルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が好適である。重合は通常−78〜70℃の温度範囲で、1〜50時間の範囲で行われる。
【0046】
なお、重合後に存在する炭素−炭素二重結合は、本発明の樹脂組成物の効果を阻害しない範囲で、その一部が水素により還元されていても構わない。このとき、特に側鎖に残存する炭素−炭素二重結合を選択的に水素によって還元することが好ましい。
【0047】
熱可塑性樹脂(A)は、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、例えば次の化合物が挙げられる。2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,6−ジ−(tert−ブチル)−4−メチルフェノール(BHT)、2,2−メチレンビス−(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス−(ノニルフェニル)、チオジプロピオン酸ジラウリルなど。
【0048】
熱可塑性樹脂(A)に含有される酸化防止剤の量は、樹脂組成物中の各成分の種類、含有量、樹脂組成物の使用目的、保存条件などを考慮して適宜決定される。通常、酸化防止剤の量は、熱可塑性樹脂(A)と酸化防止剤の合計重量を基準として、0.01〜1重量%であることが好ましく、0.02〜0.5重量%であることがより好ましい。酸化防止剤の量が多すぎると、熱可塑性樹脂(A)と酸素との反応が妨げられるため、本発明の樹脂組成物の酸素掃去機能が不十分となる場合がある。一方、酸化防止剤の量が少なすぎると、熱可塑性樹脂(A)の保存時または溶融混練時に、酸素との反応が進行し、該樹脂組成物の実使用前に酸素掃去機能が低下してしまう場合がある。
【0049】
例えば、熱可塑性樹脂(A)を比較的低温で、もしくは不活性ガス雰囲気下で保存する場合、または窒素シールした状態で溶融混練して樹脂組成物を製造する場合などには、酸化防止剤の量は少なくてもよい。また、酸化を促進するために酸化触媒を比較的多く添加する場合、熱可塑性樹脂(A)がある程度の量の酸化防止剤を含んでいても、良好な酸素掃去機能を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0050】
(2)遷移金属塩(B)
遷移金属塩(B)は、熱可塑性樹脂(A)の酸化反応を促進することにより、樹脂組成物の酸素掃去機能を向上させる効果がある。例えば、本発明の樹脂組成物から得られる包装材料内部に存在する酸素および包装材料中を透過しようとする酸素と熱可塑性樹脂(A)との反応を促進し、包装材料の酸素掃去機能が向上する。
【0051】
遷移金属塩(B)に含まれる遷移金属としては、鉄、ニッケル、銅、マンガン、コバルト、ロジウム、チタン、クロム、バナジウム、ルテニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、鉄、ニッケル、銅、マンガン、コバルトが好ましく、マンガンおよびコバルトがより好ましく、コバルトが更により好ましい。
【0052】
遷移金属塩(B)に含まれる金属の対イオンとしては、有機酸または塩化物由来のアニオンが挙げられる。有機酸としては、酢酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルへキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、樹脂酸、カプリン酸、ナフテン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい塩としては、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルトおよびステアリン酸コバルトが挙げられる。また、金属塩は重合体性対イオンを有する、いわゆるアイオノマーであってもよい。
【0053】
上記遷移金属塩(B)は好適には、熱可塑性樹脂(A)の重量を基準として、金属元素換算で1〜50000ppmの割合で組成物中に含有される。より好適には、遷移金属塩(B)は5〜10000ppm、更に好適には10〜5000ppmの範囲で含有される。本発明の樹脂組成物が、後述のように、熱可塑性樹脂(A)に加えてガスバリア性樹脂(D)を含有する場合には、該遷移金属塩(B)は好適には、熱可塑性樹脂(A)およびガスバリア性樹脂(D)の合計量を基準として、金属元素換算で1〜50000ppmの割合で含有される。さらに、該樹脂組成物が、後述のように、熱可塑性樹脂(A)に加えてガスバリア性樹脂(D)および相容化剤(E)を含有する場合には、該遷移金属塩(B)は好適には、熱可塑性樹脂(A)、ガスバリア性樹脂(D)、および相容化剤(E)の合計量を基準として、金属元素換算で1〜50000ppmの割合で含有される。いずれの場合にも、より好適には、遷移金属塩(B)は5〜10000ppm、更に好適には10〜5000ppmの範囲で含有される。遷移金属塩(B)の含有量が1ppmに満たない場合は、樹脂組成物の酸素吸収効果が不十分となる場合がある。一方、遷移金属塩(B)の含有量が50000ppmを超えると、樹脂組成物の熱安定性が低下し、分解ガスの発生やゲル・ブツの発生が著しくなる場合がある。
【0054】
ラジカル捕捉剤(C)は、本発明の酸素吸収性樹脂組成物や、該酸素吸収性樹脂組成物を含む成形体、該酸素吸収性樹脂組成物からなる層を有する多層構造体や多層容器に、紫外線(UV)や、電子線等の活性化エネルギー線を照射することにより、酸素掃去機能を発現させる、いわゆるトリガー機能を持たせるために添加するものであり、一般的に知られる酸化防止剤、光劣化防止剤などを使用することが出来る。この中で、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光劣化防止剤(以下、HALSと略記することがある)等が好ましく使用できる。また、これらの添加剤は単独で使用するよりも、フェノール系酸化防止剤とその他の添加剤を併用すると効果が高く好ましい。
【0055】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば次の化合物が挙げられる。2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4,4−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−2−メチルフェノール)、4,4−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4′−チオ−ビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2−t−ブチルハイドロキノン、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、その他α−トコフェロール等のトコール誘導体など。
【0056】
リン系酸化防止剤としては、例えば次の化合物が挙げられる。トリフェニルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4′−イソプロピリデン−ジフェニル−ジホスファイト、トリラウリル−トリチオホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニレイティド−フェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイトなど。
【0057】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば次の化合物が挙げられる。テトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン、Ni−ジブチル−ジチオ−カルバメート、Zn−ジブチル−ジチオ−カルバメート、Cd−エチル−フェニル−ジチオ−カルバメート、チオ尿素、2−メルカプト−ベンズイミダゾール、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなど。
【0058】
ラクトン系酸化防止剤としては、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−t−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物などが挙げられる。
【0059】
ヒンダードアミン系光劣化防止剤としては、下記化学式(III)または(IV)に示す基を有する添加剤が挙げられる。
【0060】
【化5】


【0061】
【化6】



(式(III)、(IV)中、Rは水素原子又はアルキル基を示す。)
【0062】
ラジカル捕捉剤(C)の配合量としては、熱可塑性樹脂(A)とラジカル捕捉剤(C)の合計重量を基準として、0.01〜1重量%であることが好ましく、0.02〜0.5重量%であることがより好ましい。ラジカル捕捉剤(C)の量が多すぎると、熱可塑性樹脂(A)と酸素との反応が妨げられるため、本発明の樹脂組成物の酸素掃去機能が不十分となる場合がある。一方、ラジカル捕捉剤(C)の量が少なすぎると、熱可塑性樹脂(A)の保存時または溶融混練時に、酸素との反応が進行し、該樹脂組成物の実使用前に酸素掃去機能が低下してしまう場合がある。フェノール系酸化防止剤とその他の添加剤を併用して配合する場合、その配合割合は任意であり、配合量は合計して前記の範囲になることが望ましい。
【0063】
(3)ガスバリア性樹脂(D)
本発明の酸素吸収性樹脂組成物に含有され得るガスバリア性樹脂(D)としては、酸素透過速度が500ml・20μm/(m・day・atm)(20℃、65%RH)以下のガスバリア性樹脂(D)が好ましい。これは、20℃、相対湿度65%の環境下で測定したときに、1気圧の酸素の差圧がある状態で、面積1m、20μm厚のフィルムを1日に透過する酸素の体積が、500ml以下であることを意味する。酸素透過速度が500ml・20μm/(m・day・atm)を超える樹脂を使用すると、得られる樹脂組成物のガスバリア性が不十分となるおそれがある。ガスバリア性樹脂(D)の酸素透過速度は、より好適には100ml・20μm/(m・day・atm)以下であり、更に好適には20ml・20μm/(m・day・atm)以下であり、最も好適には5ml・20μm/(m・day・atm)以下である。このようなガスバリア性樹脂(D)と炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)とを含有させることで、ガスバリア効果に加えて酸素捕捉効果が発揮され、結果として極めて高度なガスバリア性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0064】
上記のようなガスバリア性樹脂(D)の例としては、ポリビニルアルコール系樹脂(D1)、ポリアミド樹脂(D2)、ポリ塩化ビニル樹脂(D3)、ポリアクリロニトリル樹脂(D4)などが代表的な樹脂として例示されるが、これらの樹脂に限定されない。
【0065】
上記ガスバリア性樹脂(D)のうち、(D1)のポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステルの単独重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体(特にビニルエステルとエチレンとの共重合体)を、アルカリ触媒などを用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的な化合物として挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
【0066】
上記ポリビニルアルコール系樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、更に好適には96%以上である。ケン化度が90モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下する。また、上記ポリビニルアルコール系樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)である場合、熱安定性が不充分となり、得られる成形体にゲル・ブツが含有され易くなる。
【0067】
ポリビニルアルコール系樹脂がケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール系樹脂の混合物からなる場合には、混合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
【0068】
上記のようなポリビニルアルコール系樹脂の中でも、溶融成形が可能で、高湿度下でのガスバリア性が良好な点から、EVOHが好適である。
【0069】
EVOHのエチレン含有量は5〜60モル%であるのが好ましい。エチレン含有量が5モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下し溶融成形性も悪化することがある。EVOHのエチレン含有量は、好適には10モル%以上であり、より好適には15モル%以上、最適には20モル%以上である。一方、エチレン含有量が60モル%を超えると十分なガスバリア性が得られないことがある。エチレン含有量は、好適には55モル%以下であり、より好適には50モル%以下である。
【0070】
好適に用いられるEVOHは、上述のようにエチレン含有量が5〜60モル%であり、かつケン化度が90%以上である。本発明の樹脂組成物を含む多層容器において、耐衝撃剥離性に優れたものを所望する場合は、エチレン含有量が25モル%以上55モル%以下であり、ケン化度が90%以上99%未満のEVOHを使用することが好ましい。
【0071】
EVOHがエチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHの混合物からなる場合には、混合重量比から算出される平均値をエチレン含有量とする。この場合、エチレン含有量が最も離れたEVOH同士のエチレン含有量の差が30モル%以下であり、かつケン化度の差が10%以下であることが好ましい。これらの条件から外れる場合には、樹脂組成物の透明性が損なわれる場合がある。エチレン含有量の差はより好適には20モル%以下であり、更に好適には15モル%以下である。また、ケン化度の差はより好適には7%以下であり、更に好適には5%以下である。本発明の樹脂組成物を含む多層容器において、耐衝撃剥離性およびガスバリア性がより高いレベルでバランスがとれたものを所望する場合は、エチレン含有量が25モル%以上55モル%以下であり、ケン化度が90%以上99%未満のEVOH(d’1)と、エチレン含有量が25モル%以上55モル%以下であり、ケン化度が99%以上のEVOH(d’2)とを、配合重量比d’1/d’2が5/95〜95/5となるように混合して使用することが好ましい。
【0072】
EVOHのエチレン含有量およびケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0073】
このEVOHは、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレン単位およびビニルアルコール単位以外の単量体の単位を共重合単位として少量含有することもできる。このような単量体の例としては、次の化合物が挙げられる:プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類など。
【0074】
中でも、EVOHが、共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有する場合は、該EVOHを含む本発明の組成物を、基材となるべき樹脂(例えば、ポリエステル;以下、本明細書中でポリエステルをPESと略称する場合がある)と共に、共押出成形または共射出成形して多層構造体を得る際に、該基材樹脂との溶融粘性の整合性が改善され、均質な成形物の製造が可能である。ビニルシラン系化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが好適に用いられる。
【0075】
更に、EVOHにホウ素化合物が添加されている場合にも、EVOHの溶融粘性が改善され、均質な共押出成形体または共射出成形体が得られる点で有効である。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類などが挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸(以下、ホウ酸と略記することがある)、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸が好ましい。
【0076】
ホウ素化合物が添加される場合に、その含有量は好適にはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好適には50〜1000ppmである。この範囲にあることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOHを得ることができる。20ppm未満ではそのような効果が小さく、一方、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0077】
EVOHに、アルカリ金属塩を好適にはアルカリ金属元素換算で5〜5000ppm添加しておくことも層間接着性や相容性の改善のために効果的である。アルカリ金属塩の添加量は、より好適にはアルカリ金属元素換算で20〜1000ppm、更に好適には30〜500ppmである。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ金属塩としては、アルカリ金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、リン酸塩、金属錯体などが挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩などが挙げられ、これらの中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウムが好適である。
【0078】
EVOHに対し、リン酸化合物を好適にはリン酸根換算で20〜500ppm、より好適には30〜300ppm、最適には50〜200ppmの割合で添加することも好ましい。上記範囲でリン酸化合物を配合することにより、EVOHの熱安定性を改善することができる。特に、長時間にわたる溶融成形を行なう際のゲル状ブツの発生や着色を抑制することができる。
【0079】
EVOHに添加するリン酸化合物の種類は特に限定されず、リン酸、亜リン酸などの各種の酸やその塩などを用いることができる。リン酸塩は第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形であってもよい。リン酸塩のカチオン種も特に限定されないが、カチオン種がアルカリ金属、アルカリ土類金属であることが好ましい。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムの形でリン化合物を添加することが好ましい。
【0080】
EVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、更に好適には1〜30g/10分である。
【0081】
ガスバリア性樹脂(D)のうち、ポリアミド樹脂(D2)の種類は特に限定されない。例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウロラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)などの脂肪族ポリアミド単独重合体;カプロラクタム/ラウロラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)などの脂肪族ポリアミド共重合体;ポリメタキシリレンアジパミド(MX−ナイロン)、ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド共重合体(ナイロン−6T/6I)などの芳香族ポリアミドが挙げられる。これらのポリアミド樹脂(C2)は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの中でも、ポリカプロアミド(ナイロン−6)およびポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)がガスバリア性の観点から好適である。
【0082】
ポリ塩化ビニル樹脂(D3)としては、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンの単独重合体のほか、酢酸ビニル、マレイン酸誘導体、高級アルキルビニルエーテルなどとの共重合体が挙げられる。
【0083】
ポリアクリロニトリル樹脂(D4)としては、アクリロニトリルの単独重合体のほか、アクリル酸エステルなどとの共重合体が挙げられる。
【0084】
ガスバリア性樹脂(D)としては、これらの樹脂のうちの1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂(C1)が好ましく、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上のEVOHがより好ましい。
【0085】
上記のガスバリア性樹脂(D)には、本発明の目的を阻害しない範囲で、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、他の樹脂(ポリアミド、ポリオレフィンなど)をあらかじめブレンドすることもできる。
【0086】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物が、樹脂成分として、熱可塑性樹脂(A)に加えてガスバリア性樹脂(D)を含有する場合、該熱可塑性樹脂(A)と該ガスバリア性樹脂(D)の合計重量を100重量%とすると、該熱可塑性樹脂(A)は30〜1重量%の割合で、該ガスバリア性樹脂(D)は70〜99重量%の割合で含有されることが好ましい。ガスバリア性樹脂(D)の含有割合が70重量%未満である場合には、該樹脂組成物の、酸素ガス、炭酸ガスなどに対するガスバリア性が低下するおそれがある。一方、含有割合が99重量%を超える場合、熱可塑性樹脂(A)の含有割合が少なくなるため、酸素掃去機能が低下するおそれがある。熱可塑性樹脂(A)の含有割合は、より好適には20〜2重量%、更に好適には15〜3重量%であり、ガスバリア性樹脂(D)の含有割合は、より好適には80〜98重量%、更に好適には85〜97重量%である。
【0087】
(4)相容化剤(E)
相容化剤(E)は、本発明の樹脂組成物中に熱可塑性樹脂(A)とガスバリア性樹脂(D)とが含有される場合に、あるいはさらに後述のその他の樹脂(F)が含有される場合に、これらの樹脂の相容性を向上させ、得られる樹脂組成物に安定したモルフォロジーを与える目的で、必要に応じて含有される。相容化剤(E)の種類は特に限定されず、使用する熱可塑性樹脂(A)、ガスバリア性樹脂(D)などの組み合わせにより適宜選択される。
【0088】
例えば、ガスバリア性樹脂(D)がポリビニルアルコール系樹脂のように極性の高い樹脂である場合には、相容化剤(E)としては、極性基を含有する炭化水素系重合体またはエチレン−ビニルアルコール共重合体であることが好ましい。例えば相容化剤(E)が極性基を含有する炭化水素系重合体の場合には、重合体のベースとなる炭化水素重合体部分により、該相容化剤(E)と熱可塑性樹脂(A)との親和性が良好となる。さらに、該相容化剤(E)の極性基により、該相容化剤(E)とガスバリア性樹脂(D)との親和性が良好となる。その結果、得られる樹脂組成物に安定したモルフォロジーを形成させることができる。
【0089】
上記の極性基を含有する炭化水素系重合体のベースとなる炭化水素重合体部分を形成し得る単量体としては、次の化合物が挙げられる:エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、3−メチルペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、tert−ブトキシスチレンなどのスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどのビニルナフタレン類;インデン、アセナフチレンなどのビニレン基含有芳香族化合物;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどの共役ジエン化合物など。上記炭化水素系重合体は、これらの単量体の一種を主として含有していてもよいし、二種以上を主として含有していてもよい。
【0090】
上記単量体を用いて、後述のように、極性基を含有する炭化水素系重合体が調製され、その際、該単量体は次のようなポリマーでなる炭化水素重合体部分を形成する:ポリエチレン(超低密度、低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステル、エチルエステルなど)共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのオレフィン系重合体;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ジエン系ブロック共重合体(スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体など)、その水添物などのスチレン系重合体;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系重合体;ポリ塩化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステルなど。これらの中でも、スチレン−ジエン系ブロック共重合体(スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体など)、その水添物などのスチレン系重合体が好ましい。
【0091】
相容化剤(E)に含有される極性基としては特に限定されないが、酸素原子を含有する官能基が好ましい。具体的には、活性水素含有極性基(−SOH、−SOH、−SOH、−CONH、−CONHR、−CONH−、−OHなど)、窒素を含有し活性水素を含有しない極性基(−NCO、−OCN、−NO、−NO、−CONR、−CONR−など)、エポキシ基、カルボニル基含有極性基(−CHO、−COOH、−COOR、−COR、>C=O、−CSOR、−CSOHなど)、リン含有極性基(−P(OR)、−PO(OR)、−PO(SR)、−PS(OR)、−PO(SR)(OR)、−PS(SR)(OR)など)、ホウ素含有極性基などが挙げられる。ここで、上記一般式中、Rはアルキル基、フェニル基またはアルコキシ基を表す。
【0092】
極性基を含有する炭化水素系重合体の製造法は特に限定されない。例えば、次の方法が挙げられる:1)上記炭化水素重合体部分を形成し得る単量体と、極性基(あるいは該極性基を形成し得る基)を含有する単量体とを共重合する方法;2)上記炭化水素重合体部分を形成し得る単量体を重合する際に、上記極性基(あるいは該極性基を形成し得る基)を有する開始剤または連鎖移動剤を利用する方法;3)上記炭化水素重合体部分を形成し得る単量体をリビング重合し、上記極性基(あるいは該極性基を形成し得る基)を有する単量体を停止剤(末端処理剤)として利用する方法;および4)上記の炭化水素重合体部分を形成し得る単量体を重合して重合体を得、該重合体中の反応性の部分、例えば炭素−炭素二重結合部分に、上記極性基(あるいは該極性基を形成し得る基)を有する単量体を反応により導入する方法。上記1)の方法において、共重合を行う際には、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれの重合方法も採用され得る。
【0093】
相容化剤(E)が炭化水素系重合体である場合に、特に好ましい極性基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩基などのカルボキシル基類、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸無水物基、ボロン酸塩基などのホウ素含有極性基が挙げられる。
【0094】
このうち、極性基がカルボキシル基である場合、得られる樹脂組成物は高い熱安定性を有する。前述のように、樹脂組成物に遷移金属塩(B)が過剰に含まれる場合、該樹脂組成物の熱安定性が低下する場合があるが、遷移金属塩(B)と共にカルボキシル基を有する相容化剤(E)が含まれていると、該樹脂組成物の熱安定性が保持される。このような効果が発現する理由は明らかではないが、該相容化剤(E)と遷移金属塩(B)との何らかの相互作用によると考えられる。極性基がホウ素含有極性基である場合には、得られる樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(A)とガスバリア性樹脂(D)の相容性が著しく改善され、安定したモルフォロジーが形成される。
【0095】
このような極性基を有する相容化剤は、例えば、特許文献5に詳細に開示されている。開示されている相容化剤の中でも、ボロン酸エステル基を有するスチレン−水添ジエン系ブロック共重合体が好ましい。
【0096】
相容化剤(E)としては、上述のように、エチレン−ビニルアルコール共重合体も使用され得る。特に、ガスバリア性樹脂(D)がEVOHである場合、相容化剤としての効果が十分に発揮される。中でも、エチレン含有量70〜99モル%、ケン化度40%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体が相容性の改良の観点から好ましい。エチレン含有量はより好適には72〜96モル%、更に好適には72〜94モル%である。エチレン含有量が70モル%に満たない場合、熱可塑性樹脂(A)との親和性が低下することがある。また、エチレン含有率が99モル%を超える場合、EVOHとの親和性が低下することがある。またケン化度はより好適には45%以上である。ケン化度の上限に特に制限はなく、実質的に100%のケン化度のものも使用できる。ケン化度が40%に満たない場合、EVOHとの親和性が低下することがある。
【0097】
以上に述べた相容化剤(E)は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0098】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物が、樹脂成分として、熱可塑性樹脂(A)に加えてガスバリア性樹脂(D)および相容化剤(E)を含有する場合、該熱可塑性樹脂(A)、該ガスバリア性樹脂(D)および前記相容化剤(E)の合計重量を100重量%とすると、該前記熱可塑性樹脂(A)は29.9〜1重量%、該前記ガスバリア性樹脂(D)は70〜98.9重量%、そして該相容化剤(E)は29〜0.1重量%の割合で含有されることが好ましい。ガスバリア性樹脂(D)の含有割合が70重量%未満である場合、該樹脂組成物の、酸素ガス、炭酸ガスなどに対するガスバリア性が低下するおそれがある。一方、ガスバリア性樹脂(D)の含有割合が98.9重量%を超える場合には、熱可塑性樹脂(A)および相容化剤(E)の含有割合が少なくなるため、酸素掃去機能が低下するおそれがあり、さらに樹脂組成物全体のモルフォロジーの安定性が損なわれるおそれがある。熱可塑性樹脂(A)の含有割合は、より好適には19.5〜2重量%であり、更に好適には14〜3重量%である。ガスバリア性樹脂(D)の含有割合は、より好適には80〜97.5重量%であり、更に好適には85〜96重量%である。相容化剤(E)の含有割合は、より好適には18〜0.5重量%であり、更に好適には12〜1重量%である。
【0099】
(5)その他の熱可塑性樹脂(F)および添加剤
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない程度に、熱可塑性樹脂(A)、ガスバリア性樹脂(D)および相容化剤(E)以外の熱可塑性樹脂(F)を含有していてもよい。熱可塑性樹脂(F)としては、特に限定されず、例えば、次の樹脂が挙げられる:ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンまたはプロピレン共重合体(エチレンまたはプロピレンと次の単量体のうちの少なくとも1種との共重合体:1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネートなどのカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸およびその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類など)、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ1−ブテンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレートなど。熱可塑性樹脂(E)は、樹脂組成物全体の10重量%以下の割合で含有され得る。
【0100】
本発明の樹脂組成物には、本発明の作用効果が阻害されない範囲内で各種の添加剤を含有させてもよい。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、乾燥剤、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、防曇剤、他の高分子化合物などが挙げられる。このような添加剤は、例えば、特許文献5に詳細に開示されている。
【0101】
(6)酸素吸収性樹脂組成物およびそれを用いた成形体
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、上述のように、熱可塑性樹脂(A)、遷移金属塩(B)およびラジカル捕捉剤(C)を含有し、さらに必要に応じて、ガスバリア性樹脂(D)、相容化剤(E)、その他の熱可塑性樹脂(F)、各種添加剤などを含有する。本発明の酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収速度は、0.01ml/(g・day)以上であることが好ましく、0.05ml/(g・day)以上がより好ましい。ここで、酸素吸収速度は、樹脂組成物のフィルムを一定容量の空気中に放置した場合に、単位重量当たり単位時間にそのフィルムが吸収した酸素の体積である。具体的な測定方法については、後述の実施例に示す。この組成物は、後述のように、該組成物の各成分を混合・成形することにより、所望の形状の成形体とされる。
【0102】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂(A)、遷移金属塩(B)およびラジカル捕捉剤(C)に加え、ガスバリア性樹脂(D)を含有する組成物である場合においては、ガスバリア性樹脂(D)の機能を付与できることに加え、酸素掃去機能を長時間保持し、臭気物質の発生および放出が抑制される傾向がある。即ち、ガスバリア性樹脂(D)を含む組成物は、熱可塑性樹脂(A)、遷移金属塩(B)およびラジカル捕捉剤(C)のみからなる組成物に比べ、高い酸素掃去能力が持続し、さらに、酸素を吸収する際に発生する臭気も低減する傾向がある。このうち、ガスバリア性樹脂(D)がポリビニルアルコール系樹脂、特にEVOHである場合には、臭気の発生が極めて低いレベルにまで抑制される。その機構については必ずしも明確ではないが、ガスバリア性樹脂が酸素などに比べ分子量の大きい臭気物質をより通過させにくいことに加え、ポリビニルアルコール系樹脂が臭気物質と反応し、あるいは臭気物質を吸収することによるものと推定される。
【0103】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物がガスバリア性樹脂(D)など、熱可塑性樹脂(A)以外の樹脂を含む組成物においては、熱可塑性樹脂(A)からなる粒子が、該樹脂(A)以外の樹脂(ガスバリア性樹脂(D)、相容化剤(E)、および熱可塑性樹脂(F)のうちの少なくとも1種)、遷移金属塩(B)、ラジカル捕捉剤(C)ならびに各種添加剤を含むマトリックス中に分散している態様が推奨される。例えば、本発明の酸素吸収性樹脂組成物が熱可塑性樹脂(A)およびガスバリア性樹脂(D)でなる場合には、熱可塑性樹脂(A)でなる粒子がガスバリア性樹脂(D)のマトリックスに分散している態様が推奨される。このような状態の組成物でなる各種成形体においては酸素掃去性およびガスバリア性が持続し易く、ガスバリア性樹脂(D)など熱可塑性樹脂(A)以外の樹脂の有する機能が付与できる点で好ましい。透明性も良好である。このとき、熱可塑性樹脂(A)からなる粒子の平均粒径は10μm以下であることが好適である。平均粒径が10μmを超える場合には、熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(A)以外の樹脂(例えば、ガスバリア性樹脂(D))との界面の面積が小さくなり、酸素ガスバリア性および酸素掃去機能が低下する場合がある。熱可塑性樹脂(A)粒子の平均粒径は5μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましい。
【0104】
上記のような態様を実現し、優れたガスバリア性、酸素掃去性、低臭気性を発現するためには、熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量が1000〜500000であり、より好適には5000〜300000、更に好適には10000〜250000、特に好適には40000〜200000の範囲である。また、熱可塑性樹脂(A)が実質的に架橋されていないことが好ましい。
【0105】
また、ガスバリア性樹脂(D)がポリビニルアルコール系樹脂などの極性の高い樹脂である場合、熱可塑性樹脂が前記親水性官能基(水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、エポキシ基、エステル基、カルボン酸無水物基、ホウ素含有極性基(例えば、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸無水物基、ボロン酸塩基)など)を有することが好ましく、特に水酸基、エポキシ基、酸無水物基を有することが好ましい。
【0106】
さらに、本発明の酸素吸収性樹脂組成物が相容化剤(E)を適量含有する場合には、上記効果が安定して得られやすい。
【0107】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基く)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、更に好適には1〜30g/10分である。本発明の樹脂組成物のメルトフローレートが上記の範囲から外れる場合、溶融成形時の加工性が悪くなる場合が多い。
【0108】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の各成分は混合され、所望の製品に加工される。本発明の樹脂組成物の各成分を混合する方法は特に限定されない。各成分を混合する際の順序も特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂(A)、遷移金属塩(B)、ラジカル捕捉剤(C)、ガスバリア性樹脂(D)および相容化剤(E)を混合する場合、これらを同時に混合してもよいし、熱可塑性樹脂(A)、遷移金属塩(B)、ラジカル捕捉剤(C)および相容化剤(E)を混合した後、ガスバリア性樹脂(D)と混合してもよい。また、熱可塑性樹脂(A)および相容化剤(E)を混合した後、遷移金属塩(B)、ラジカル捕捉剤(C)およびガスバリア性樹脂(D)と混合してもよいし、遷移金属塩(B)、ラジカル捕捉剤(C)およびガスバリア性樹脂(D)を混合した後、熱可塑性樹脂(A)および相容化剤(E)と混合してもよい。更に、熱可塑性樹脂(A)、ガスバリア性樹脂(D)および相容化剤(E)を混合した後、遷移金属塩(B)およびラジカル捕捉剤(C)と混合してもよいし、遷移金属塩(B)ラジカル捕捉剤(C)および相容化剤(E)を混合した後、熱可塑性樹脂(A)およびガスバリア性樹脂(D)と混合してもよい。また、熱可塑性樹脂(A)、ガスバリア性樹脂(D)および相容化剤(E)を混合して得た混合物と、遷移金属塩(B)、ラジカル捕捉剤(C)およびガスバリア性樹脂(D)を混合して得た混合物とを混合してもよい。
【0109】
混合の具体的な方法としては、工程の簡便さおよびコストの観点から溶融混練法が好ましい。このとき、高い混練度を達成することのできる装置を使用し、各成分を細かく均一に分散させることが、酸素吸収性能、透明性を良好にすると共に、ゲル・ブツの発生や混入を防止できる点で好ましい。
【0110】
高い混練度を達成し得る装置としては、連続式インテンシブミキサー、ニーディングタイプ二軸押出機(同方向または異方向)、ミキシングロール、コニーダーなどの連続型混練機;高速ミキサー、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダーなどのバッチ型混練機;(株)KCK製のKCK混練押出機などの石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用した装置、一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTMなど)を設けた装置;リボンブレンダー、ブラベンダーミキサーなどの簡易型の混練機などを挙げることができる。これらの中でも、連続型混練機が好ましい。市販されている連続式インテンシブミキサーとしては、Farrel社製FCM、(株)日本製鋼所製CIM、(株)神戸製鋼所製KCM、LCM、ACMなどが挙げられる。これらの混練機の下に一軸押出機を設置し、混練と押出ペレット化を同時に実施する装置を採用することが好ましい。また、ニーディングディスクまたは混練用ロータを有する二軸混練押出機としては、例えば(株)日本製鋼所製TEX、Werner&Pfleiderer社製ZSK、東芝機械(株)製TEM、池貝鉄工(株)製PCMなどが挙げられる。混練機は1機でもよいし、また2機以上を連結して用いることもできる。
【0111】
混練温度は、通常50〜300℃の範囲である。熱可塑性樹脂(A)の酸化防止のためには、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが好ましい。混練時間は、長い方が良い結果を得られるが、熱可塑性樹脂(A)の酸化防止および生産効率の観点から、通常10〜600秒であり、好ましくは15〜200秒であり、より好ましくは15〜150秒である。
【0112】
本発明の樹脂組成物は、成形方法を適宜採用することによって、種々の成形物、例えば、フィルム、シート、容器その他の包装材料などに成形することができる。このとき、本発明の樹脂組成物を一旦ペレットとしてから成形に供してもよいし、樹脂組成物の各成分をドライブレンドして、直接成形に供してもよい。
【0113】
成形方法および成形物としては、例えば、溶融押出成形によりフィルム、シート、パイプなどに、射出成形により容器形状に、また中空成形によりボトル状などの中空容器に成形することができる。中空成形としては、押出成形によりパリソンを成形し、これをブローして成形を行う押出中空成形と、射出成形によりプリフォームを成形し、これをブローして成形を行う射出中空成形が好ましい。
【0114】
本発明においては、上記成形により得られる成形物は単層であってもよいが、機械的特性、水蒸気バリア性、さらなる酸素バリア性などの特性を付与するという観点から、他の層と積層して多層構造体として用いることが好ましい。
【0115】
多層構造体の層構成としては、本発明の樹脂組成物以外の樹脂からなる層をx層、本発明の樹脂組成物層をy層、接着性樹脂層をz層とすると、x/y、x/y/x、x/z/y、x/z/y/z/x、x/y/x/y/x、x/z/y/z/x/z/y/z/xなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。複数のx層を設ける場合は、その種類は同じであっても異なっていてもよい。また、成形時に発生するトリムなどのスクラップからなる回収樹脂を用いた層を別途設けてもよいし、回収樹脂を他の樹脂からなる層にブレンドしてもよい。多層構造体の各層の厚み構成は、特に限定されるものではないが、成形性およびコストなどの観点から、全層厚みに対するy層の厚み比は2〜20%が好適である。
【0116】
上記のx層に使用される樹脂としては、加工性などの観点から熱可塑性樹脂が好ましい。かかる熱可塑性樹脂としては、次の樹脂が挙げられるが、特にこれらに限定されない:ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンまたはプロピレン共重合体(エチレンまたはプロピレンと次の単量体の少なくとも1種との共重合体:1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネートなどのカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類など)、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ1−ブテンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ポリε−カプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリメタキシリレンアジパミドなどのポリアミド;ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアクリレートなど。かかる熱可塑性樹脂層は無延伸のものであってもよいし、一軸もしくは二軸に延伸または圧延されているものであっても構わない。
【0117】
これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィンは耐湿性、機械的特性、経済性、ヒートシール性などの点で、また、ポリエステルは機械的特性、耐熱性などの点で好ましい。
【0118】
一方、z層に使用される接着性樹脂としては、各層間を接着できるものであれば特に限定されず、ポリウレタン系またはポリエステル系の一液型または二液型硬化性接着剤、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂などが好適に用いられる。カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその無水物(無水マレイン酸など)を共重合成分として含むオレフィン系重合体または共重合体;または不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体または共重合体にグラフトさせて得られるグラフト共重合体である。
【0119】
これらの中でも、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂がより好ましい。特に、x層がポリオレフィン樹脂である場合、y層との接着性が良好となる。かかるカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン{低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)}、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステルまたはエチルエステル)共重合体などをカルボン酸変性したものが挙げられる。
【0120】
多層構造体を得る方法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、共射出成形法、共押出成形法などが例示されるが、特に限定されるものではない。共押出成形法としては、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出インフレーション成形法、共押出ブロー成形法などを挙げることができる。
【0121】
このようにして得られた多層構造体のシート、フィルム、パリソンなどを、含有される樹脂の融点以下の温度で再加熱し、絞り成形などの熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、インフレーション延伸法、ブロー成形法などにより一軸または二軸延伸して、延伸された成形物を得ることもできる。
【0122】
上記の多層構造体を用いた成形物は各種用途に用いられる。とりわけ、本発明の多層構造体の効果は、多層容器としたときに大きく発揮される。更に、本発明の樹脂組成物でなる層の両側に、または多層構造体を使用する際に高湿度となる側に、水蒸気バリア性の高い層を配置した多層構造体は、酸素掃去機能の持続期間が特に延長され、その結果、極めて高度なガスバリア性がより長い時間継続される観点から好適である。一方、樹脂組成物層を最内層に有する多層容器は、容器内の酸素掃去機能が速やかに発揮されるという観点から好適である。
【0123】
更に、本発明の樹脂組成物は適切な樹脂を選択することにより透明性が良好となる。従って、このような組成物は、内容物を視認しやすい包装容器としての用途に最適である。かかる包装容器の内でも透明性に対する要求性能が厳しく、本発明の樹脂組成物を使用することの有用性が大きい態様として、以下の2種の態様が挙げられる。すなわち、一つは本発明の樹脂組成物からなる層を含み、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる容器であり、他の一つは本発明の樹脂組成物からなる層および熱可塑性ポリエステル(PES)層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器である。以下、それらの実施態様について順次説明する。
【0124】
本発明の樹脂組成物からなる層を含み、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる容器は、全体層厚みが比較的薄い多層構造体からなるフレキシブルな容器であり、通常パウチなどの形態に加工されている。この容器はガスバリア性に優れ、更には持続的な酸素掃去機能を有し、かつ製造が簡便であるので、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品の包装に極めて有用である。
【0125】
上記全層厚みが300μm以下という薄い多層フィルムにおいては経時的に透明性が低下してもその程度は小さく、その結果、多層フィルム容器の透明性が保持される。このような多層フィルムの厚みは、透明性およびフレキシブル性を維持するという観点から、上述のように、通常300μm以下であり、より好適には250μm以下であり、更に好適には200μm以下である。一方、容器としての機械的特性を考慮すると、全層厚みは好適には10μm以上であり、より好適には20μm以上であり、更に好適には30μm以上である。
【0126】
上記全層厚みが300μm以下の多層フィルムからなる容器を多層フィルムから製造する場合、該多層フィルムの製造方法に特に制限はなく、例えば、本発明の樹脂組成物層と他の熱可塑性樹脂層とをドライラミネート、共押出ラミネートなどの方法で積層することによって多層フィルムを得ることができる。
【0127】
ドライラミネートする場合には、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、圧延フィルムなどが使用可能である。これらの中でも、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリε−カプロラクタムフィルムが、機械的強度の観点から好ましく、防湿性も考慮すると、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが特に好ましい。無延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムを使用する場合、積層した後に多層フィルムを再加熱し、絞り成形などの熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、インフレーション延伸法などにより一軸または二軸延伸することによって、延伸された多層フィルムを得ることもできる。
【0128】
得られる多層容器を密封するために、多層フィルムの製造段階において、少なくとも一方の最外層表面にヒートシール可能な樹脂からなる層を設けることも好ましい。かかる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを挙げることができる。
【0129】
こうして得られた多層フィルムは、例えば袋状に加工され、内容物を充填するための包装容器とすることができる。フレキシブルで簡便であり、かつ透明性および酸素掃去性に優れるので、酸素の存在により劣化しやすい内容物、特に食品などの包装に極めて有用である。
【0130】
本発明の樹脂組成物からなる層およびPES層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器は、ガスバリア性、酸素掃去機能に優れ、更に適切な樹脂を選択することにより透明性が良好となる。そのため、袋状容器、カップ状容器、中空成形容器などの種々の形態で使用される。これらの中でも、中空成形容器、特にボトルが重要である。
【0131】
上記本発明の樹脂組成物からなる層およびPES層からなる本発明の多層容器に用いられるPESとしては、芳香族ジカルボン酸またはそれらのアルキルエステルと、ジオールとを主成分とする縮合重合体が用いられる。特に本発明の目的を達成するには、エチレンテレフタレート成分を主とするPESが好ましい。具体的には、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位との合計割合(モル%)が、PESを構成する全単位の合計モル数に対して、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上がより好ましい。テレフタル酸単位とエチレングリコール単位の合計割合が70モル%未満であると、得られるPESが非晶性となり、機械的強度が不足する上に、延伸して容器とした後に内容物を加熱充填(ホットフィル)すると、熱収縮が大きく使用に耐えない虞がある。また、樹脂内に含有されるオリゴマーを低減するために固相重合を行うと、樹脂の軟化による膠着が生じやすく、生産が困難になる虞がある。なお、上記PESは、必要に応じてテレフタル酸単位およびエチレングリコール単位以外の二官能化合物単位、具体的には、ネオペンチルグリコール単位、シクロヘキサンジメタノール単位、シクロヘキサンジカルボン酸単位、イソフタル酸単位、ナフタレンジカルボン酸単位などを、上記の問題が発生しない範囲において含有することができる。このようなPESの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0132】
上記樹脂組成物からなる層およびPES層をそれぞれ少なくとも1層含む、本発明の多層容器の製造方法は特に限定されるものではないが、共射出ブロー成形を用いることが生産性などの観点から好適である。共射出ブロー成形においては、共射出成形によって得られた容器前駆体(パリソン)を延伸ブロー成形することにより容器が製造される。
【0133】
共射出成形においては、通常、多層構造体の各層を構成すべき樹脂を2台またはそれ以上の射出シリンダーより、各々同心円状のノズル内に導き、同時にまたはタイミングをずらして交互に、単一の金型内に射出し、1回の型締め操作を行うことにより成形が行われる。例えば(1)先に内外層用のPES層を射出し、次いで、中間層となる樹脂組成物を射出して、PES/樹脂組成物/PESの3層構成の成形容器を得る方法、(2)先に内外層用のPES層を射出し、次いで樹脂組成物を射出して、それと同時にまたはその後にPES層を再度射出し、PES/樹脂組成物/PES/樹脂組成物/PESの5層構成の成形容器を得る方法などによりパリソンが製造されるが、これらの製造方法に限定されるものではない。また、上記層構成において、樹脂組成物層とPES層との間に、必要に応じて接着性樹脂層を配置してもよい。
【0134】
射出成形の条件としては、PESは250〜330℃の温度範囲で射出することが好ましく、270〜320℃がより好ましく、280〜310℃が更に好ましい。PESの射出温度が250℃未満である場合、PESが十分に溶融せず、成形物に未溶融物(フィッシュアイ)が混入し外観不良を生じ、同時に成形物の機械的強度の低下の原因となる虞がある。また、極端な場合はスクリュートルクが上昇し、成形機の故障を引き起こす虞がある。一方、PESの射出温度が330℃を超える場合、PESの分解が著しくなり、分子量低下による成形物の機械的強度の低下を引き起こす虞がある。また、分解時に生じるアセトアルデヒドなどのガスにより成形物に充填する物質の性質を損なうだけでなく、分解時に生じるオリゴマーにより金型の汚れが激しくなり成形物の外観を損なう虞がある。
【0135】
樹脂組成物は170〜250℃の温度範囲で射出することが好ましく、180〜240℃がより好ましく、190〜230℃が更に好ましい。樹脂組成物の射出温度が170℃未満である場合、樹脂組成物が十分に溶融せず、成形物に未溶融物(フィッシュアイ)が混入し外観不良を生じる虞がある。また、極端な場合はスクリュートルクが上昇し、成形機の故障を引き起こす虞がある。一方、樹脂組成物の射出温度が250℃を超える場合、熱可塑性樹脂(A)の酸化が進行し、樹脂組成物のガスバリア性および酸素掃去機能が低下する虞がある。同時に、着色やゲル化物による成形物の外観不良が生じ、または分解ガスやゲル化物により流動性が不均一となりもしくは阻害されて、樹脂組成物層の欠落部分を生じることもある。極端な場合には、ゲル化物の発生により、射出成形が不可能となる。溶融時の酸化の進行を抑制するためには、原料供給ホッパーを窒素でシールすることも好ましい。
【0136】
なお樹脂組成物は、前もって原料成分を溶融配合したペレットの形で成形機に供給してもよいし、ドライブレンドした各原料成分を成形機に供給してもよい。
【0137】
こうして得られたパリソンにおいては、総厚みが2〜5mm、樹脂組成物層の厚みが合計で10〜500μmであることが好ましい。
【0138】
上記のパリソンは、高温の状態で直接、またはブロックヒーター、赤外線ヒーターなどの発熱体を用いて再加熱された後、延伸ブロー工程に送られる。加熱されたパリソンを、延伸ブロー工程において縦方向に1〜5倍に延伸した後、圧縮空気などで1〜4倍に延伸ブロー成形することにより、本発明の多層射出ブロー成形容器を製造することができる。パリソンの温度は、75〜150℃が好ましく、85〜140℃がより好ましく、90〜130℃が更により好ましく、95〜120℃が最も好ましい。パリソンの温度が150℃を超えると、PESが結晶化しやすくなり、得られる容器が白化して外観が損なわれたり、容器の層間剥離が増加する場合がある。一方、パリソンの温度が75℃未満であると、PESにクレーズが生じ、パール調になって透明性が損なわれる場合がある。
【0139】
こうして得られる多層容器の胴部の総厚みは、一般的には100〜2000μm、好適には150〜1000μmであり、用途に応じて使い分けられる。このときの樹脂組成物層の合計厚みは、2〜200μmの範囲であることが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
【0140】
このようにして本発明の樹脂組成物からなる層およびPES層からなる多層容器が得られる。この容器は高い透明性を得ることが可能であり、かつガスバリア性および酸素掃去機能に極めて優れ、かつ酸素吸収により臭気成分が生じない。従って、酸素の存在により劣化しやすい内容物、例えば、食品、医薬品などの容器として有用である。特に風味を重要視する食品、ビールなどの飲料の容器として極めて有用である。
【0141】
更に、本発明の樹脂組成物は、容器用パッキング(ガスケット)として、特に容器のキャップ用のガスケットとして使用するのにも適している。この場合、キャップ本体の素材としては特に制限はなく、熱可塑性樹脂、金属などの当該分野で一般に使用される材料を採用することができる。かかるガスケットを装着してなるキャップは、ガスバリア性に優れ、かつ持続的な酸素掃去機能を有し、かつ酸素吸収により臭気成分が生じない。そのため、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品、特に風味を重要視する食品、飲料などの容器に用いられるキャップとして極めて有用である。
【0142】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物や、該酸素吸収性樹脂組成物を含む成形体、該酸素吸収性樹脂組成物からなる層を有する多層構造体や多層容器に、紫外線(UV)や、電子線等の活性化エネルギー線を照射することにより、酸素掃去機能を発現させることが出来る。活性化エネルギー線の強度は当該酸素吸収性樹脂のラジカルを生成させるという意味から、具体的なエネルギーレベルは200ミリジュール(mJ)/cm以上、当該酸素吸収性樹脂組成物または該酸素吸収性樹脂組成物を含む成形体、該酸素吸収性樹脂組成物からなる層を有する多層構造体や多層容器に甚大な変質をもたらさないという意味から2000mJ/cm2 以下である。またこのようなエネルギーレベルを持ち、取り扱いやすい活性化エネルギー線としてUVを利用することが望ましい。
【0143】
以下に本発明を実施例などの例によって具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の実施例および比較例における分析および評価は次のようにして行った。
【0144】
(1)熱可塑性樹脂(A)の分子構造:
重クロロホルムを溶媒としたH−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)により得られたスペクトルから決定した。
【0145】
(2)EVOHのエチレン含有量およびケン化度:
重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒としたH−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)により得られたスペクトルから算出した。
【0146】
(合成例1)エポキシ基含有ポリブタジエン(A−2)の合成
原料として、ポリブタジエン(日本ゼオン社製ポリブタジエンゴム「Nipol BR1220」;以下、ポリブタジエン(A−1)とする)を使用した。この樹脂は、数平均分子量が160000であり、cis−ポリブタジエン、trans−ポリブタジエン、および1,2−ポリブタジエンを96/2/2のモル比で含有し、側鎖中の炭素−炭素二重結合の、全炭素−炭素二重結合に対する比率は2%(主鎖中の炭素−炭素二重結合の量をa(モル/g)、側鎖中の炭素−炭素二重結合の量をb(モル/g)としたときの 100×b/(a+b)=2)であった。
【0147】
還流管、滴下ロート、温度計およびメカニカルスタラーを装着した容量300mlのセパラブルフラスコに、上記ポリブタジエン(A−1)25g、シクロヘキサン250gおよび塩化トリオクチルメチルアンモニウム0.32gを加え、60℃で撹拌しながら完全に溶解させた。この溶液を70℃に昇温し、これにタングステン酸アンモニウム0.15g(0.05mmol)およびリン酸0.33g(3.3mmol)を水20gに溶解させて調製したpHが3.1である水溶液を加えた。次いで、得られた混合液を70℃で激しく撹拌しながら、30%過酸化水素水溶液5.21g(0.046mol)を4時間かけて滴下し、更にこの反応混合液を2時間撹拌した。撹拌を停止し、60℃で有機層(シクロヘキサン層)と水層に分離させた。水層を分離して除去し、有機層を水100mlで洗浄し、5%炭酸ナトリウム水溶液100mlで洗浄し、更に水100mlで2回洗浄した。有機層のシクロヘキサンを減圧下に留去し、得られた残留物を80℃、800Paの条件で8時間乾燥して、生成物を得た。得られたエポキシ基含有ポリブタジエン(A−2)(収量:33.2g)をH−NMRにて分析したところ、二重結合の転化率(消費された炭素−炭素二重結合の割合)は10%、エポキシ化率(もとの炭素−炭素二重結合量を基準としたエポキシ基形成率)は9.85%であり、従って選択率(消費された炭素−炭素二重結合量を基準としたエポキシ基形成率)は98.5%であった。この重合体の、側鎖中の炭素−炭素二重結合の、全炭素−炭素二重結合に対する比率は2%であった。
【0148】
(合成例2)水酸基含有ポリブタジエン(A−3)の合成
還流管、滴下ロート、温度計およびメカニカルスタラーを装着した容量300mlのセパラブルフラスコに、合成例1で得られたエポキシ基含有ポリブタジエン(A−2)25g、THF250g、および0.1%過塩素酸10gを加え、60℃で6時間撹拌した。撹拌停止後、25℃まで冷却し5%アンモニア水溶液10mlで中和した。得られた反応液をメタノール500g中に加え、再沈した生成物を回収し、80℃、800Paの条件で8時間乾燥した。得られた水酸基含有ポリブタジエン(A−3)(収量:23.5g)をH−NMRにて分析したところ、エポキシの転化率(消費されたエポキシ基の割合)は100%、加水分解率(消費された炭素−炭素二重結合量を基準とした水酸基形成率)は98.5%であり、従って選択率(消費されたエポキシ基の量を基準とした水酸基形成率)は100%であった。この重合体の、側鎖中の炭素−炭素二重結合の、全炭素−炭素二重結合に対する比率は2%であった。
【0149】
(比較合成例)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(A−4)の合成 乾燥した窒素で浄化された攪拌式オートクレーブ中にシクロヘキサン600体積部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)0.16体積部、および開始剤としてn−ブチルリチウム0.094体積部を投入した。温度を50℃に昇温し、スチレンモノマーを4.25体積部フィードし1.5時間重合させた。次に温度を30℃に下げ、イソプレンを120体積部フィードし2.5時間重合させた。更に再び温度を50℃に昇温し、スチレンモノマーを4.25体積部フィードし1.5時間重合させた。
【0150】
得られた反応液に、酸化防止剤として2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を、それぞれスチレンおよびイソプレンの合計量100重量部に対して0.15重量部ずつ加えた。反応液をメタノールに注いで生成物を沈殿させ、これを分離・乾燥して、酸化防止剤が添加されたスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(A−4)を得た。
【0151】
得られたトリブロック共重合体の数平均分子量は85000、共重合体中のスチレンブロックの分子量はそれぞれ8500、スチレン含有量は14モル%、側鎖中の炭素−炭素二重結合の、全炭素−炭素二重結合に対する比率は55%であった。得られたトリブロック共重合体における炭素−炭素二重結合の含有量は0.014eq/gであり、メルトフローレートは7.7g/10分であった。当該樹脂中には、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート0.12重量%およびペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が0.12重量%が含まれていた。
【0152】
(合成例3)相容化剤(E−1)の合成:
スチレン−水添ブタジエン−スチレントリブロック共重合体を、投入口を1L/分の窒素で置換しながら7kg/時の速度で同方向二軸押出機TEM−35B(東芝機械製)に供給した。このスチレン−水添ブタジエン−スチレントリブロック共重合体の物性は次のとおりである:重量平均分子量100400、スチレン/水添ブタジエン=18/82(重量比)、ブタジエン単位の1,2−結合/1,4−結合モル比=47/53、ブタジエン単位の水添率97%、二重結合量430μeq/g、メルトインデックス5g/10分(230℃、2160g荷重)、密度0.89g/cm。次に、液体フィーダー1よりボラン−トリエチルアミン錯体(TEAB)とホウ酸1,3−ブタンジオールエステル(BBD)の混合液(TEAB/BBD=29/71、重量比)を0.6kg/時の速度で、そして液体フィーダー2より1,3−ブタンジオールを0.4kg/時の速度で供給し、連続的に混練した。混練の間、ベント1およびベント2のゲージが約20mmHgを示すように圧力を調節した。その結果、吐出口から7kg/時の速度で、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基(BBDE)を含有するトリブロック共重合体(E−1)が得られた。この共重合体のボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基の量は210μeq/gであった。
【0153】
なお、反応に使用した二軸押出機の構成、運転条件は下記のとおりである。
スクリュ径 :37mmφ
L/D :52(15ブロック)
液体フィーダー :C3(液体フィーダー1)、C11(液体フィーダー2)
ベント位置 :C6(ベント1)、C14(ベント2)
スクリュ構成 :C5−C6間,C10−C11間およびC12の位置にシールリングを使用
温度設定 :C1 水冷
C2〜C3 200℃
C4〜C15 250℃
ダイ 250℃
スクリュ回転数 :400rpm
【実施例1】
【0154】
上記のポリブタジエン(A−1)100重量部、ステアリン酸コバルト(II)0.8484重量部(コバルト原子として0.0800重量部)およびIRGANOX1010(チバスペシャリティーケミカルズ社製。ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])0.1重量部をドライブレンドし、ローラミキサ((株)東洋精機製LABO PLASTOMIL MODEL R100)を用い、190℃でスクリュー回転数60rpm、全樹脂量70.59gの条件でチャンバ内を窒素パージしながら溶融混練し、5分後に塊状で取出した。得られた塊状物をペレット状にカットして、ポリブタジエン(A−1)、ステアリン酸コバルト、IRGANOX1010からなる樹脂組成物ペレットを得た。
【0155】
得られた樹脂組成物ペレットを、圧縮成形機(神藤金属工業所製)に供給し、押出温度200℃にて成形を行い、厚み100μmのシートを得た。得られたシート0.1gを精秤し、シート成形の5時間後にロール状に巻いて、23℃、50%RHの空気を満たしておいた内部容量260mlの規格瓶に入れた。規格瓶中の空気は、体積比で21:79の酸素および窒素を含有していた。規格瓶に水を5ml加え、規格瓶の口をアルミニウム層を含む多層シートを用いてエポキシ樹脂で封じてから、高圧水銀ランプを用いて400mJ/cm2の強度の紫外線を照射した後、60℃で放置した。紫外線を照射後、経時的に内部の空気をシリンジでサンプリングし、この空気の酸素濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。測定時に多層シートに空いた細孔は、エポキシ樹脂を用いてその都度封じた。測定によって得られた酸素と窒素の体積比から、酸素の減少量を計算することによって樹脂組成物の60℃、100%RH雰囲気下における酸素吸収量を求めた。封入時から1日(24時間)後、7日(168時間)後、14日(336時間)後、および21日(147時間)後の酸素吸収量(積算量)を図1および表1に示す。測定開始から1日後と7日後の結果から、酸素吸収速度を計算したところ、17.0ml/(g・day)であった。その結果を表1に示す。
【0156】
これとは別に、同様のシート1gを精秤し、シート成形の5時間後にロール状に巻いて、23℃、50%RHの空気を満たしておいた内部容量85mlの規格瓶に入れた。規格瓶に水を1ml加え、規格瓶の口をアルミニウム層を含む多層シートを用いてエポキシ樹脂で封じてから、高圧水銀ランプを用いて400mJ/cm2の強度の紫外線を照射した後、60℃で2週間放置した。試料のヘッドスペースガス10mlをガスタイトシリンジでサンプリングし、そのガス成分を−40℃のTENAX−TA管に濃縮・捕集した。捕集したガス成分を、320℃の急速加熱により脱着させ、GC/MSに導入した。発生ガスの濃縮とGC/MSへの導入は濃縮装置ヘッドスペースサンプラーJHS−100A型を用いた。
【0157】
GC/MS測定条件は以下の通りである。
熱脱離装置 :ヘッドスペースサンプラー JHS−100A(日本分析工業(株)製)
再脱離温度 : 320℃、25秒
MS装置 : JMS SX102A 質量分析計(日本電子(株)製)
データ処理 : MS−MP7000データ処理システム(日本電子(株)製)
GC装置 : HP5890(ヒューレットパッカード製)
キャリアーガス: ヘリウム 20ml/min
カラム : Pora PROT Q 25m×0.32mmID
カラム温度 : 80℃〜250℃(昇温速度 8℃/min)
注入口温度 : 270℃
セパレータ温度: 270℃
【0158】
アセトンガスを真空捕集びんに採取し、窒素ガスで希釈して標準ガス(濃度4μg/ml〜5μg/ml)を調製した。この標準ガスを用いて、検量線を作成した。この検量線を、表1.2に示すガスの量を算出するのに用いた。発生し、ヘッドスペースに含有される各種ガスの重量を、次式により、測定サンプルの単位重量あたりのガス重量に換算し、これを発生ガス量(ガス分析値;単位ppm)とした。
【0159】
発生ガス量(ppm=μg/g)=検出量(μg)×(85/10)/1
85:試料瓶の容積(ml)
10:ヘッドスペースガス量(ml)
1:使用した試料シートの全量(g)
ガス分析値の結果を表2に示す。
【実施例2】
【0160】
熱可塑性樹脂(A)として、合成例2で得られた水酸基含有ポリブタジエン(A−3)を使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得、シートを調製して酸素吸収量を求めた。その結果を図1および表1に示す。測定開始から1日後と7日後の結果から算出された酸素吸収速度は、18.2ml/(g・day)であった。更に、実施例1と同様にして発生ガスについての分析を行った。その結果を表2に示す。
【実施例3】
【0161】
熱可塑性樹脂(A)として、ポリブタジエン(A−1)に代えて、Scientific Polymer Products,INC.から入手したcis/trans−1,4ポリブタジエンを使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得、シートを調製した。このシートを用いて、実施例1と同様にして発生ガスについての分析を行った。その結果を表2に示す。上記Scientific Polymer Products, INC製cis/trans−1,4ポリブタジエンにおいては、側鎖中の炭素−炭素二重結合の、全炭素−炭素二重結合に対する比率は9%であった。
【0162】
(比較例1)
熱可塑性樹脂(A)として、比較合成例で得られたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(A−4)を使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得、シートを調製して酸素吸収量を求めた。その結果を図1および表1に示す。測定開始から1日後と7日後の結果から算出された酸素吸収速度は、18.0ml/(g・day)であった。更に、実施例1と同様にして発生ガスについての分析を行った。その結果を表2に示す。
【0163】
【表1】


【0164】
【表2】


【実施例4】
【0165】
以下の実施例4〜8および比較例2においては、ガスバリア性樹脂(D)として以下の組成および物性を有するEVOH(リン酸化合物およびナトリウム塩を含有するEVOH;以下EVOH(D−1)とする)を使用した:
エチレン含有量 : 32モル%
ケン化度 : 99.6%
MFR : 3.1g/10分(210℃、2160g荷重)
リン酸化合物含有量 : 100ppm(リン酸根換算)
ナトリウム塩含有量 : 65ppm(ナトリウム換算)
融点 : 183℃
酸素透過速度 : 0.4ml・20μm/(m・day・atm)
(20℃、65%RH)。
【0166】
上記のEVOH(D−1)90重量部、上記のポリブタジエン(A−1)10重量部、ステアリン酸コバルト(II)0.8484重量部(コバルト原子として0.0800重量部)およびIRGANOX1010(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.01重量部をドライブレンドし、ローラミキサ((株)東洋精機製LABO PLASTOMIL MODEL R100)を用い、200℃でスクリュー回転数60rpm、全樹脂量70.59gの条件でチャンバ内を窒素パージしながら溶融混練し、5分後に混合物を塊状で取出した。得られた塊状物をペレット状にカットしてEVOH(D−1)、ポリブタジエン(A−1)、ステアリン酸コバルトおよびIRGANOX1010からなる樹脂組成物ペレットを得た。
【0167】
得られた樹脂組成物ペレットを、圧縮成形機(神藤金属工業所製)に供給し、押出温度210℃にてシート成形を行い、厚み100μmのシートを得た。このシートの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリブタジエン(A1)が1〜5μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。
【0168】
このシート0.5gを精秤し、実施例1と同様にこのシートを規格瓶に入れ、高圧水銀ランプを用いて400mJ/cm2の強度の紫外線を照射した後、60℃で放置し、酸素量の測定を行い、樹脂組成物の60℃、100%RH雰囲気下における酸素吸収量を求めた。結果を図2および表3に示す。測定開始から7日後と14日後の結果から、酸素吸収速度を計算したところ、1.1ml/(g・day)であった。結果を表3に示す。
【0169】
次に放置温度を23℃としたこと以外は上記と同様にして測定を行い、樹脂組成物の23℃、100%RH雰囲気下における酸素吸収量を求めた。結果を図3および表4に示す。測定開始から7日後と14日後の結果から、酸素吸収速度を計算したところ、0.7ml/(g・day)であった。結果を表4に示す。
【実施例5】
【0170】
熱可塑性樹脂(A)として、合成例1で得られたエポキシ基含有ポリブタジエン(A−2)を使用したこと以外は実施例4と同様にして樹脂組成物からなるシートを得た。このシートの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、エポキシ基含有ポリブタジエン(A−2)が1〜2μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。続いて、実施例4と同様にして樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図2および3、ならびに表3および4に示す。また、実施例4と同様にして酸素吸収速度を計算した。結果をそれぞれ表3および4に示す。
【実施例6】
【0171】
熱可塑性樹脂(A)として、水酸基含有ポリブタジエン(A−3)を使用したこと以外は実施例4と同様にして樹脂組成物からなるシートを得た。このシートの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、水酸基含有ポリブタジエン(A−3)が1〜2μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。続いて、実施例4と同様にして樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図2および3、ならびに表3および4に示す。また、実施例4と同様にして酸素吸収速度を計算した。結果をそれぞれ表3および4に示す。
【実施例7】
【0172】
熱可塑性樹脂(A)として、ポリブタジエン(数平均分子量は45000、側鎖中の炭素−炭素二重結合の、全炭素−炭素二重結合に対する比率は5%;以下ポリブタジエン(A−5)とする)を使用したこと以外は実施例4と同様にして樹脂組成物からなるシートを得た。このシートの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリブタジエン(A−5)が1〜2μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。続いて、実施例2.1と同様にして樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図2および3、ならびに表3および4に示す。また、実施例4と同様にして酸素吸収速度を計算した。結果をそれぞれ表3および4に示す。
【実施例8】
【0173】
熱可塑性樹脂(A)として、日本ゼオン社製ポリブタジエン「Polyoil 130」(A−6)を使用したこと以外は実施例4と同様にして樹脂組成物からなるシートを得た。このシートの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリブタジエン(A−6)が1〜10μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。続いて、実施例4と同様にして樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図2および3、ならびに表3および4に示す。また、実施例4と同様にして酸素吸収速度を計算した。結果をそれぞれ表3および4に示す。上記ポリブタジエン(A−6)においては、数平均分子量は3000、側鎖中の炭素−炭素二重結合の、全炭素−炭素二重結合に対する比率は1%であった。
【0174】
(比較例2)
熱可塑性樹脂(A)として、上記のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(A−4)を使用したこと以外は実施例4と同様にして樹脂組成物からなるシートを得た。このシートの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(A−4)が1〜2μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。続いて、実施例4と同様にして樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図2および3、ならびに表3および4に示す。また、実施例4と同様にして酸素吸収速度を計算した。結果をそれぞれ表3および4に示す。
【0175】
【表3】


【0176】
【表4】


【実施例9】
【0177】
EVOH(D−1)95重量部、ポリブタジエン(A−1)5重量部、ステアリン酸コバルト(II)0.8484重量部(コバルト原子として0.0800重量部)およびIRGANOX1010(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.005重量部をドライブレンドし、25mmφ二軸押出機((株)東洋精機製LABO PLASTOMIL MODEL 15C300)を用い、210℃でスクリュー回転数100rpm、押出樹脂量6kg/時間の条件で押出してペレット化した。次いで、40℃で16時間減圧乾燥を行い、EVOH(D−1)、ポリブタジエン(A−1)、ステアリン酸コバルトおよびIRGANOX1010からなる樹脂組成物ペレットを得た。
【0178】
得られた樹脂組成物ペレットを用いて、押出温度210℃にて押出成形を行い、厚み20μmのフィルムを得た。このフィルムの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリブタジエン(A−1)が1〜5μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。
【0179】
上記のフィルムを使用し、実施例4と同様にして、得られた樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図4および5、ならびに表5および6に示す。また、実施例4と同様にして酸素吸収速度を計算した。ただし、23℃、100%RH雰囲気下における酸素吸収速度は、測定開始から7日後と14日後の酸素吸収量の結果から計算した。結果をそれぞれ表5および6に示す。更に、以下のようにして臭気評価を行った。
【0180】
臭気評価:
上記のフィルム1gを精秤し、シート成形の5時間後にロール状に巻いて、23℃、50%RHの空気を満たしておいた内部容量85mlの規格瓶に入れた。規格瓶に水を1ml加え、規格瓶の口をアルミニウム層を含む多層シートを用いてエポキシ樹脂で封じてから、高圧水銀ランプを用いて400mJ/cm2の強度の紫外線を照射した後、60℃で2週間放置した。その後、パネリスト5人が試料のヘッドスペースガスの臭気を官能評価した。
【0181】
5人のパネリストの各々が、ヘッドスペースガスにはほとんど臭気がないと評価した。結果を表6に示す。表6において、◎はヘッドスペースガスにはほとんど臭気がないことを示す。
【実施例10】
【0182】
EVOH(D−1)90重量部、ポリブタジエン(A−1)10重量部、ステアリン酸コバルト(II)0.8484重量部およびIRGANOX1010(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.01重量部を使用したこと以外は実施例9と同様にして樹脂組成物ペレットを得、押出成形を行ってフィルムを得た。このフィルムの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリブタジエン(A−1)が1〜5μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。
【0183】
上記のフィルムを使用し、実施例9と同様にして、得られた樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図4および図5、ならびに表5および6に示す。また、実施例9と同様にして酸素吸収速度を計算した。結果をそれぞれ表5および6に示す。更に、実施例9と同様にして臭気評価を行った。5人のパネリストの各々が、ヘッドスペースガスにはほとんど臭気がないと評価した。結果を表6に示す。
【実施例11】
【0184】
EVOH(D−1)93重量部、ポリブタジエン(A−1)5重量部、相容化剤(E−1)2重量部、ステアリン酸コバルト(II)0.8484重量部およびIRGANOX1010(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.005重量部を使用したこと以外は実施例9と同様にして樹脂組成物ペレットを得、押出成形を行ってフィルムを得た。このフィルムの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリブタジエン(A−1)が1〜2μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。
【0185】
上記のフィルムを使用し、実施例9と同様にして、得られた樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図4および5、ならびに表5および6に示す。また、実施例9と同様にして酸素吸収速度を計算した。結果をそれぞれ表5および6に示す。更に、実施例9と同様にして臭気評価を行った。5人のパネリストの各々が、ヘッドスペースガスにはほとんど臭気がないと評価した。結果を表6に示す。
【実施例12】
【0186】
EVOH(D−1)に代えて、三井化学社製ポリエチレン樹脂「ミラソン11」(D−2)を使用したこと以外は実施例9と同様にして樹脂組成物ペレットを得、押出成形を行ってフィルムを得た。このフィルムの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリブタジエン(A−1)が1〜5μmの粒子でポリエチレン樹脂(D−2)からなるマトリックス中に分散していた。
【0187】
上記のフィルムを使用し、実施例9と同様にして、得られた樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図4および5、ならびに表5および6に示す。また、実施例9と同様にして酸素吸収速度を計算した。結果をそれぞれ表5および6に示す。更に、実施例9と同様にして臭気評価を行った。5人のパネリストの各々が、ヘッドスペースガスには低いレベルであるが臭気が存在すると評価した。結果を表6に示す。表6において、○はヘッドスペースガスには低いレベルで臭気が存在することを示す。
【0188】
(比較例3)
熱可塑性樹脂(A)として、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(A−4)を使用したこと以外は実施例9と同様にして樹脂組成物ペレットを得、押出成形を行ってフィルムを得た。このフィルムの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、該共重合体(A−4)が1〜2μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。
【0189】
上記のフィルムを使用し、実施例9と同様にして、得られた樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図4および5、ならびに表5および6に示す。また、実施例9と同様にして酸素吸収速度を計算した。結果をそれぞれ表5および6に示す。更に、実施例9と同様にして臭気評価を行った。5人のパネリストの各々が、ヘッドスペースガスには激しい臭気が存在すると評価した。結果を表6に示す。表6において、×はヘッドスペースガスには激しい臭気が存在することを示す。
【0190】
(比較例4)
熱可塑性樹脂(A)として、mix−ポリブタジエン(日本ゼオン社製「Nipol BR1242」、1,4−/1,2−ブタジエン=87.5/12.5;以下、ポリブタジエン(A−7)とする)を使用したこと以外は実施例9と同様にして樹脂組成物ペレットを得、押出成形を行ってフィルムを得た。このフィルムの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリブタジエン(A−7)が1〜5μmの粒子でEVOH(D−1)からなるマトリックス中に分散していた。
【0191】
上記のフィルムを使用し、実施例9と同様にして、得られた樹脂組成物の酸素吸収量を求めた。結果をそれぞれ図4および5、ならびに表5および6に示す。また、実施例9と同様にして酸素吸収速度を計算した。結果をそれぞれ表5および6に示す。更に、実施例9と同様にして臭気評価を行った。5人のパネリストの各々が、ヘッドスペースガスには臭気が存在すると評価した。結果を表6に示す。表6において、△はヘッドスペースガスには臭気が存在することを示す。
【0192】
【表5】


【0193】
【表6】


【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明によれば、優れた酸素吸収性を有し、また、ラジカル捕捉能を有する添加剤を配合することで、酸素吸収能を発現させたい時に活性エネルギー線を照射して酸素吸収性を発現させることにより、製造中や成形時の劣化、大気中での失効性が改善され、かつ酸素吸収により不快な臭気を発生しない酸素吸収性樹脂組成物が提供される。この樹脂組成物を含む種々の成形体、例えば、該樹脂組成物でなる層を含む多層フィルム、多層容器、キャップなどが製造され得る。この組成物は、特に、酸素による劣化を受けやすく、かつ香りが重視される食品、化粧品などの物品を保存するのに適した容器に好適であり、高い酸素掃去機能を有するため、取り扱いの容易な脱酸素剤としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】実施例1および実施例2、ならびに比較例1のシートの酸素吸収量を時間に対してプロットしたグラフである。
【図2】実施例4〜8、および比較例2のシートの60℃、100%RH雰囲気下における酸素吸収量を時間に対してプロットしたグラフである。
【図3】実施例4〜8および比較例2のシートの23℃、100%RH雰囲気下における酸素吸収量を時間に対してプロットしたグラフである。
【図4】実施例9〜12および比較例3および比較例4のフィルムの60℃、100%RH雰囲気下における酸素吸収量を時間に対してプロットしたグラフである。
【図5】実施例9〜12および比較例3および比較例4のフィルムの23℃、100%RH雰囲気下における酸素吸収量を時間に対してプロットしたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)、遷移金属塩(B)およびラジカル捕捉剤(C)を含有する酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(A)において、主鎖中の炭素−炭素二重結合の量をa(モル/g)、側鎖中の炭素−炭素二重結合の量をb(モル/g)としたときに、下記式(1)を満足する請求項1に記載の酸素吸収性樹脂組成物:
100×b/(a+b) ≦ 7 (1)
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(A)が、下記構造式(I)および構造式(II):
【化1】

【化2】

(式中、R、R、RおよびRは同一または異なり、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルアリール基、−COOR、−OCOR、シアノ基またはハロゲン原子であり、そしてRおよびRはメチレン基またはオキシメチレン基によって環を形成していてもよく、ここで、RおよびRは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアルキルアリール基である)で示される単位のうちの少なくとも一方を有する、請求項1または2に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンおよびポリオクテニレンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である、請求項1から3のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂(A)が、下記構造式(I)および構造式(II)
【化3】

【化4】

(式中、R、R、RおよびRは水素原子である)で示される単位のうちの少なくとも一方を有する、請求項1から3のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリブタジエンおよびポリオクテニレンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である、請求項1から5のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項7】
前記遷移金属塩(B)が鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩およびコバルト塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩である、請求項1から6のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ラジカル捕捉剤(C)が、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤及びラクトン系酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種である請求項1から7のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ラジカル捕捉剤(C)が、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤及びラクトン系酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種と、フェノール系酸化防止剤とを配合して成る請求項1から8のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項10】
酸素吸収速度が0.01ml/(g・day)以上である、請求項1から9のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項11】
更に酸素透過速度が500ml・20μm/(m・day・atm)(20℃、65%RH)以下のガスバリア性樹脂(D)を含有する、請求項1から10のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項12】
前記ガスバリア性樹脂(D)が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリアクリロニトリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である、請求項11に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項13】
前記ガスバリア性樹脂(D)が、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体である、請求項11に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂(A)と前記ガスバリア性樹脂(D)の合計重量を100重量%としたときに、該ガスバリア性樹脂(D)が70〜99重量%、該熱可塑性樹脂(A)が30〜1重量%の割合で含有される、請求項11から13のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項15】
更に相容化剤(E)を含有する、請求項11から14のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂(A)、前記ガスバリア性樹脂(D)および前記相容化剤(E)の合計重量を100重量%としたときに、該ガスバリア性樹脂(D)が70〜98.9重量%、該熱可塑性樹脂(A)が29.9〜1重量%、そして該相容化剤(E)が29〜0.1重量%の割合で含有される、請求項15に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂(A)からなる粒子が前記ガスバリア性樹脂(D)のマトリックス中に分散している、請求項11から16のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物を含む成形体。
【請求項19】
請求項1から17のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる層を有する多層構造体。
【請求項20】
請求項1から17のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる層を有する多層容器。
【請求項21】
請求項1から17のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる層を含み、全
層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる多層容器。
【請求項22】
請求項1から17のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる層および熱可塑性ポリエステル層を有する多層容器。
【請求項23】
請求項1から17のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなるガスケットが付与されたキャップ本体を有する、キャップ。
【請求項24】
請求項1から17のいずれかの項に記載の酸素吸収性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射することを特徴とする酸素吸収法。
【請求項25】
照射する活性エネルギー線の線量率が200〜2000ミリジュール(mJ)/cm2 である請求項24に記載の酸素吸収法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−335809(P2006−335809A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159664(P2005−159664)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】