Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
重合体の製造方法及び重合体
説明

重合体の製造方法及び重合体

【課題】ヨウ素原子を末端に有する重合体の耐熱分解性を向上させ、成型品の着色を低減させる。
【解決手段】有機ヨウ素化物の存在下でビニル単量体をラジカル重合させて得られる重合体(A)を弱塩基塩及び式(1)で表される化合物の少なくとも一方と反応させて該重合体(A)の末端が処理された重合体(B)を得る末端処理工程を有する重合体(B)の製造方法。前記弱塩基塩が炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩またはリン酸塩であることが好ましい。前記ラジカル重合工程において、さらにリン化合物、窒素化合物または酸素化合物を存在させることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱分解性が向上され、また成型品の着色が低減された重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、制御ラジカル重合が開発され、様々なグループで積極的に研究がなされている。制御ラジカル重合によれば、ラジカル重合性単量体と重合開始剤の仕込み比によって分子量を自由にコントロール出来る。制御ラジカル重合の中でも有機ヨウ素化物等を重合開始剤とする重合方法や、さらに有機化合物を重合開始剤としてラジカル重合性単量体を重合する方法(非特許文献1、2)は、上記の制御ラジカル重合法の特徴に加えて、金属触媒や高価な制御剤を用いることなく安価であり、取り扱いが容易であることから好ましく用いられている。
【0003】
しかしながら、これらの重合方法では、得られた重合体の末端に重合開始剤である有機ヨウ素化物由来のハロゲン基が残存することから、重合体の耐熱分解性が低下し、重合体の熱成型加工時に着色するという問題がある。
【0004】
特許文献1には、重合体の末端ヨウ素の低減、末端官能基導入のため、末端ハロゲンを変換する方法が種々提案されている。しかし、特許文献1の方法は、酸の発生や末端二重結合の生成、用いる試薬の環境毒性や取り扱い上の問題があることから、重合体の耐熱分解性は不十分であり、また成型品に着色が生じ、実用性に欠けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開パンフレット2009/136510号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Macromolecules、6261−6264頁、41巻、2008年
【非特許文献2】Polymer、5177−5185頁、49巻、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ヨウ素原子を末端に有する重合体の耐熱分解性を向上させ、成型品の着色を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の技術的手段からなる本発明によって解決される。
【0009】
本発明は、有機ヨウ素化物の存在下でビニル単量体をラジカル重合させて重合体(A)を得るラジカル重合工程、及び、該重合体(A)を弱塩基塩及び式(1)で表される化合物の少なくとも一方と反応させて該重合体(A)の末端が処理された重合体(B)を得る末端処理工程を有する重合体(B)の製造方法である。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、RおよびR’は、それぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐のアルキル基又はアルコキシル基、アルキルアミノ基、アリル基またはアラルキル基を表す。
【0012】
また、本発明は、前記製造方法により得られた重合体(B)である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヨウ素原子を末端に有する重合体の耐熱分解性を向上させ、熱成型加工時の分解や劣化を抑制して、成型品の外観悪化や性能低下を防ぐことが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
<ラジカル重合工程>
〔ビニル単量体〕
本発明のラジカル重合工程においては、有機ヨウ素化物の存在下でビニル単量体がラジカル重合されて重合体(A)が製造される。
【0016】
重合体(A)の製造に使用されるビニル単量体としては、例えば、以下のものが挙げられる。(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸(トリフルオロメチル)メチル、(メタ)アクリル酸(2−トリフルオロメチル)エチル、(メタ)アクリル酸(2−パーフルオロエチル)エチル、(メタ)アクリル酸(2−パーフルオロエチル)(2−パーフルオロブチル)エチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸(ジパーフルオロメチル)メチル、(メタ)アクリル酸(パーフルオロメチル)(パーフルオロエチル)メチル、(メタ)アクリル酸(2−パーフルオロヘキシル)エチル、(メタ)アクリル酸(2−パーフルオロデシル)エチル、(メタ)アクリル酸(2−パーフルオロヘキサデシル)エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有単量体;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン、フッ化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化アリル、アリルアルコール等のアリル系単量体;γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、及び(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することが出来る。これらの中では、得られる重合体の物性等の観点から、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0017】
尚、本発明において「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」又は「アクリル」を表す。
【0018】
〔有機ヨウ素化合物〕
ラジカル重合工程において使用される有機ヨウ素化合物は、特に限定されず、必要に応じて公知の有機ヨウ素化合物から選択して用いることができる。また、有機ヨウ素化合物は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。有機ヨウ素化合物としては、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化ブチル等のヨウ化アルキル;ヨウ化フェニル、ヨウ化ナフチル等のヨウ化アリール;ヨードイソブチロニトリル(CPI)、2−ヨード−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の置換基を有するヨウ化アルキルが挙げられる。
【0019】
これらの有機ヨウ素化合物は市販の化合物を使用することもできるが、ヨウ素とアゾ化合物とを反応して得られる反応生成物である有機ヨウ素化合物を用いることもできる。ヨウ素とアゾ化合物を反応させて生成した有機ヨウ素化合物は、これを単離して用いてもよい。また、ビニル単量体の重合前又は重合中にヨウ素とアゾ化合物を仕込み、有機ヨウ素化合物をその重合場(インサイチュー)で生成させ、そのまま本発明のラジカル重合工程に用いることもできる。
【0020】
有機ヨウ素化合物を生成させるために用いるアゾ化合物には、アゾ系ラジカル重合開始剤として公知のアゾ化合物を用いることができる。このアゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、アゾビス(イソブチロニトリル)が挙げられる。これらの中では、汎用性の観点から、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(イソブチロニトリル)が好ましい。これらのアゾ化合物は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
有機ヨウ素化合物を生成させるために用いるアゾ化合物の量は、有機ヨウ素化合物の生成が効率的であることから、ヨウ素1モルに対して1モル以上が好ましく、1.5モル以上がより好ましい。またアゾ化合物の量は、有機ヨウ素化合物の生成後、未反応のアゾ化合物がラジカル重合開始剤として作用することを考慮し、ヨウ素1モルに対して5モル以下が好ましく、3モル以下がより好ましい。
【0022】
ラジカル重合工程において用いられる有機ヨウ素化合物の量は、重合制御の観点から、ビニル単量体100モルに対して、0.01モル以上が好ましく、0.1モル以上がより好ましい。また、有機ヨウ素化合物の量は、重合体(A)の重合度の観点から、ビニル単量体100モルに対して、20モル以下が好ましく、15モル以下がより好ましく、10モル以下が更に好ましい。
【0023】
ビニル単量体の重合前又は重合中にヨウ素とアゾ化合物を仕込み、有機ヨウ素化合物をその重合場(インサイチュー)で生成させ、そのまま本発明のラジカル重合工程に用いる場合、有機ヨウ素化合物量は仕込んだヨウ素がすべて反応し、有機ヨウ素化合物になったものとして算出する。
【0024】
〔ラジカル重合開始剤〕
ラジカル重合工程において使用されるラジカル重合開始剤は、公知のラジカル重合開始剤であり、例えば、アゾ系ラジカル重合開始剤、過酸化物系ラジカル重合開始剤が使用可能である。
【0025】
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が挙げられる。過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましい。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート(BPB)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0026】
ラジカル重合開始剤の量は、ビニル単量体100モルに対して、0.005モル以上30モル以下が好ましく、0.01モル以上20モル以下がより好ましく、0.02モル以上15モル以下が更に好ましい。ラジカル重合開始剤の量が0.005モル以上であれば、重合体(A)を効率良く容易に製造でき、30モル以下であれば、重合を特に制御しやすい。
【0027】
〔その他の重合条件〕
ラジカル重合の方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が挙げられる。溶液重合法では、バッチ重合、重合途中で単量体を追加するセミバッチ重合、連続重合等を適用することができる。重合温度は、特に限定されないが、0〜150℃の範囲で行うことが出来、好ましくは、室温〜120℃の範囲である。重合反応は空気が存在する条件下で行ってもよいが、ラジカル重合開始剤の開始剤効率の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガスで空気を置換した条件で行うことが好ましい。
【0028】
〔溶媒〕
ラジカル重合工程においては、必要に応じて、溶媒を併用することができる。即ち、反応系に溶媒を添加して重合反応を行うことができる。溶媒を併用することで、重合系の粘度を容易に調整することができ、重合の制御を容易にすることができる。
【0029】
溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン等の直鎖又は分岐鎖ケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等のアルコール類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジブチルブタン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン等の炭素数5〜12の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;炭酸エチレン。これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0030】
溶媒はビニル単量体100質量部に対して、30質量部以上700質量部以下を用いることができる。また、エマルション系又は超臨界流体CO2を媒体とする系でも重合反応を行なうことができる。
【0031】
〔リン化合物、窒素化合物、酸素化合物〕
ラジカル重合工程においては、ビニル単量体、有機ヨウ素化合物、ラジカル重合開始剤のほかに、重合中の重合体(A)の末端に形成される炭素―ヨウ素結合のヨウ素原子を引き抜く目的で、リン化合物、窒素化合物または酸素化合物を添加しても良い。これらの化合物を添加することにより、炭素−ヨウ素結合からヨウ素原子の均一解離反応が促進され、重合体末端にラジカルが生成する頻度が向上する。
【0032】
リン化合物としては、ヨウ素原子を含むハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物が挙げられ、具体的には例えば以下のものが挙げられる。ジクロロアイオドリン、ジブロモアイオドリン、三ヨウ化リン、ジメチルフォスファイト、ジエチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、ジパーフロロエチルフォスフィネート、ジフェニルフォスファイト、ジベンジルフォスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フォスファイト、ジアリルフォスファイト、エチレンフォスファイト、エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォスフィネート、エトキシメチルフォスフィネート、フェノキシメチルフォスフィネートなど。これらの中でも、入手のし易さ、溶解性の観点から、ジメチルフォスファイト、ジエチルフォスファイト、ジフェニルフォスファイトが好ましい。
【0033】
窒素化合物(窒素原子を有する化合物)としては、イミド系化合物が挙げられ、具体的には例えば以下のものが挙げられる。スクシンイミド、2,2−ジメチルスクシンイミド、α,α−ジメチル−β−メチルスクシンイミド、3−エチル−3−メチル−2,5−ピロリジンジオン、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、5−メチルヘキサヒドロイソインドール−1,3−ジオン、2−フェニルスクシンイミド、α−メチル−α−フェニルスクシンイミド、2,3−ジアセトキシスクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、4−メチルフタルイミド、N−クロロフタルイミド、N−ブロモフタルイミド、4−ニトロフタルイミド、2,3−ナフタレンカルボキシイミド、ピロメリットジイミド、5−ブロモイソインドール−1,3−ジオン、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド(NIS)など。これらの中でも、入手のし易さ、溶解性の観点から、スクシンイミド、フタルイミド、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、NISが好ましい。
【0034】
酸素化合物(酸素原子を有する化合物)としては、芳香環に水酸基を有するフェノール性水酸基であるフェノール系化合物、フェノール性水酸基のヨウ素化物であるアイオドオキシフェニル化合物、ビタミン類が挙げられる。フェノール系化合物としては、具体的には以下のものが挙げられる。フェノール、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t−ブチルフェノール、t−ブチルメチルフェノール、カテコール、レゾルシン、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ジ−t−ブチルメトキシフェノール、ヒドロキシスチレンを重合したポリマーまたはそのヒドロキシフェニル基担持ポリマー微粒子。これらはモノマーの保存のための重合禁止剤として添加されているので、市販品のモノマーを精製せずそのまま使用することで効果を発揮することもできる。アイオドオキシフェニル化合物としてはチモールアイオダイドなどが挙げられる。ビタミン類としてはビタミンC、ビタミンEなどが挙げられる。これらの化合物は一種以上が使用され、これらの具体例に限定されない。これらの中でも、入手のし易さ、溶解性の観点から、フェノール、カテコール、ビタミンC、ビタミンEが好ましい。
【0035】
〔重合体(A)〕
ラジカル重合工程において製造される重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、500以上1,000,000以下が好ましく、1,000以上100,000以下がより好ましい。Mnが500以上であれば、反応後の不純物を除去しやすく、Mnが1,000,000以下であれば、成形性、溶解性に優れる。重合体(A)の分子量分布(PDI)は、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましい。なお、PDIは、数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)を意味する。
【0036】
<末端処理工程>
ラジカル重合工程において製造された重合体(A)は、末端処理工程において弱塩基塩及び式(1)で表される化合物の少なくとも一方と反応させることで、重合体(A)の末端のヨウ素が脱離した重合体(B)が得られる。ここで、末端処理とは、重合体(A)を弱塩基塩及び/または式(1)で表される化合物と反応させることで重合体(A)の末端に有するヨウ素原子量を低減させる処理のことである。
【0037】
反応機構の詳細は不明であるが、式(1)で表される化合物と弱塩基塩を併用する場合、化学式上は式(1)で表されるジケトン化合物と弱塩基塩によってジケトン化合物の塩が形成されて、塩とヨウ素の反応によりポリマー末端にジケトン構造が結合した構造となっていると推測している(反応式(2)参照)。また、上記の反応だけでなく、ヨウ素末端が解離した際にラクトン環化する反応等、様々な反応が起こっていると考えられる(反応式(3)参照)。
【0038】
【化2】

【0039】
【化3】

【0040】
〔弱塩基塩〕
本発明において用いられる弱塩基塩としてはアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の炭酸塩や炭酸水素塩、弱酸性の有機酸塩、リン酸塩、および水酸化バリウムなどの弱塩基性水酸化物が挙げられる。アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムが挙げられる。炭酸水素塩としては炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウムが挙げられる。有機酸塩としては酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウムが挙げられる。リン酸塩としてはリン酸ナトリウム、リン酸カリウム等が挙げられる。入手しやすさやコスト、溶媒への溶解性の観点から炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましい。
【0041】
弱塩基塩の量は、反応性の観点から、有機ヨウ素化合物量1モルに対して、0.1モル以上が好ましく、1.0モル以上がより好ましい。また弱塩基塩の量は、反応後の除去効率の観点から、有機ヨウ素化合物量1モルに対して、50モル以下が好ましく、40モル以下がより好ましく、30モル以下が更に好ましい。
【0042】
〔式(1)で表される化合物〕
【0043】
【化4】

【0044】
本発明において用いられる式(1)で表される化合物は、βジケトン構造を持つ化合物であり、RおよびR’は、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基もしくはアルコキシル基、アルキルアミノ基、アリル基またはアラルキル基を表す。中でも、RまたはR’の一方がメチル基で、もう一方が炭素数1〜12のアルコキシル基であるものが好ましい。
【0045】
式(1)で表される化合物としては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸ベンジル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等が挙げられる。反応性の観点からアセト酢酸メチルが好ましい。
【0046】
式(1)で表される化合物の量は、反応性の観点から、有機ヨウ素化合物量1モルに対して、0.000001モル以上が好ましく、0.0001モル以上がより好ましい。また式(1)で表される化合物の量は、成型後の着色低減の観点から、有機ヨウ素化合物量1モルに対して、30モル以下が好ましく、20モル以下がより好ましく、15モル以下が更に好ましい。
【0047】
弱塩基塩及び式(1)で表される化合物はいずれか一方のみを使用しても構わないし、両方を用いても構わないが、弱塩基塩及び式(1)で表される化合物を併用することが着色を低減する点で好ましい。弱塩基塩及び式(1)で表される化合物を併用する場合の混合割合は、任意に設定可能であるが、弱塩基塩のみでは末端処理が困難な場合には式(1)で表される化合物を併用し、式(1)で表される化合物のみでは末端処理が困難な場合には弱塩基塩を併用するのが好ましい。弱塩基塩及び式(1)で表される化合物を併用する場合、式(1)で表される化合物1モルに対して弱塩基塩の量は0.1〜20モルが好ましく、0.5〜10モルがより好ましい。
【0048】
重合体(A)の末端処理反応は重合体(A)を製造した後の重合溶液を用いて行っても良く、また再沈澱によって得られた重合体(A)を適当な溶媒に溶解させて行っても良い。その際、反応溶液中の重合体(A)の濃度は5〜50質量%であることが好ましい。5質量%以上であれば、弱塩基塩や式(1)で表される化合物との接触頻度が高くなり、反応速度が向上し、50質量%以下であれば、溶液の粘度上昇が抑えられ、均一に分散しやすくなり、効果的に反応が進行する。
【0049】
また、反応は、空気が存在する条件下で行ってもよいが、弱塩基塩や式(1)で表される化合物の活性の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガスで空気を置換した条件下で行うことが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、0〜120℃の範囲で行うことが出来、好ましくは、室温〜80℃の範囲である。
【0050】
〔重合体(B)〕
本発明の製造方法により得られた重合体(B)は、各種用途に使用することが出来る。用途としては、例えば、着色が低減されることや分子量分布が狭いことを利用した塗料用組成物、リソグラフィー用重合体等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。実施例において「部」は「質量部」を意味する。評価条件は下記の(1)〜(4)の通りである。
【0052】
(1)数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PDI)
GPC(Shodex GPC−104(商品名)、カラム:Shodex KF−404HQ(商品名)、2直列接続、溶離液:THF(テトラヒドロフラン)、測定温度:40℃、流速:0.3mL/分)を用い、ポリメタクリル酸メチルをスタンダードとして、Mn及びPDIを測定した。
【0053】
(2)熱重量分析
TG/DTA(セイコーインスツルメンツ(株)製、「TG/DTA6300」(商品名)、測定温度:100℃〜500℃(昇温速度10℃/分)、流速:窒素50mL/分)を用い、1%及び5%質量減少温度を測定した。
【0054】
(3)試験片の成型
得られた重合体を、小型射出成型機(機種名「CS−183−MMX」、カスタム・サイエンティフィック・インスツルメンツ社製)を用いて210℃で成型し、幅10mm、長さ20mm、厚さ1mmの試験片を得た。
【0055】
(4)成形体の外観
前記試験片の外観を、目視により、以下の基準で評価した。
○:透明である。
△:僅かに着色、白濁が確認できる。
×:着色、白濁があり、発泡が確認できる。
【0056】
<実施例1>
〔1.ラジカル重合工程〕
ビニル単量体として、メタクリル酸メチル(MMA)100部、有機ヨウ素化物としてヨードイソブチロニトリル(CPI)0.975部、及びN−ヨードサクシンイミド(NIS)0.028部(MMA100モルに対して0.5モル)、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)0.410部(MMA100モルに対して0.25モル)、溶媒としてトルエン100部を用い、これらを200mLのナスフラスコ中で混合し、ナスフラスコ内の気体をアルゴンで置換した。
【0057】
次いでこのナスフラスコを80℃のオイルバスに浸漬させ、重合を開始させた。80℃で2時間の重合反応後、重合溶液(a−1)を取り出し、前記測定方法に基づき、重合体の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PDI)を測定した。Mnは12800、PDIは1.64、重合転化率は80%であった。
【0058】
〔2.末端処理工程〕
別の100mLのナスフラスコ中において、脱水アセトン400部、アセト酢酸メチル5部(8.6モル)、炭酸カリウム8.9部(12.9モル)を混合した溶液を調製し、ナスフラスコ内の気体をアルゴンで置換した。15分攪拌した後、この中に前記重合溶液(a−1)200部を加え、ナスフラスコ内の気体をアルゴンで置換した。このナスフラスコを55℃のオイルバスに浸漬させ、3時間反応させた。その後、沈殿物をろ過によって取り除き、反応溶液を得た。反応溶液をアセトンで希釈し、メタノール中に加えて再沈澱させた。沈殿物を回収後、メタノールで洗浄し、40℃で12時間真空乾燥して重合体B−1を得た。この重合体を前記条件で成型し、試験片を得た。重合体B−1の評価結果を表1に示した。
【0059】
<比較例1>
製造例1で得られた重合溶液(a−1)200部をアセトンで希釈し、ヘキサン中に加えて再沈澱させた。沈殿物を回収後、ヘキサンで洗浄し、40℃で12時間真空乾燥して重合体A−1を得た。この重合体を前記条件で成型し、試験片を得た。評価結果を表1に示した。比較例1では、炭酸塩やアセト酢酸エステルとの反応を行っていない為、成型時に発泡し、透明な試験片を得ることが出来なかった。
【0060】
<比較例2>
比較例1で得られた重合体A−1をトルエンに溶解させ、80℃で2時間加熱した。加熱後の溶液をアセトンで希釈し、ヘキサン中に加えて再沈澱させた。沈殿物を回収後、ヘキサンで洗浄し、40℃で12時間真空乾燥して重合体A−2を得た。この重合体を前記条件で成型し、試験片を得た。評価結果を表1に示した。比較例2では、加熱処理を成型前に行っただけで、炭酸塩やアセト酢酸エステルとの反応を行っていない為、成型時に発泡し、透明な試験片を得ることが出来なかった。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ヨウ素化物の存在下でビニル単量体をラジカル重合させて重合体(A)を得るラジカル重合工程、及び、該重合体(A)を弱塩基塩及び下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも一方と反応させて該重合体(A)の末端が処理された重合体(B)を得る末端処理工程を有する重合体(B)の製造方法。
【化1】

[式(1)中、RおよびR’は、それぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐のアルキル基又はアルコキシル基、アルキルアミノ基、アリル基またはアラルキル基を表す。]
【請求項2】
前記弱塩基塩が炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩またはリン酸塩である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラジカル重合工程において、さらにリン化合物、窒素化合物または酸素化合物を存在させる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の方法により得られたリソグラフィー用重合体(B)。

【公開番号】特開2013−60501(P2013−60501A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198638(P2011−198638)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】