説明

重合性デンドリマー及び光硬化性樹脂組成物

【課題】光重合によって得られるポリマーが高度に分岐した規則性の高い多分岐化合物であるデンドリマーを構成単位としており、優れた加工精度が期待できる重合性デンドリマー及びそれを利用した光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の重合性デンドリマーは、重合可能なエポキシ基を有する官能基がデンドリマーの末端に結合している。例えば下記一般式(1)で表わされる化合物(式中Rはエポキシ基を有するアルキル基)からなる重合性デンドリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射によるリソグラフィーに利用可能な重合性デンドリマー及び光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光照射によって硬化する光硬化性樹脂は、リソグラフィーのための材料として電子デバイス作製等に利用されている。近年、電子デバイスの構造はますます微細化しており、光硬化性樹脂を用いたリソグラフィー技術において、加工精度の更なる向上が求められている。
【0003】
従来、光リソグラフィーに用いられる光硬化性樹脂組成物としては、光化学反応を起こす高分子樹脂(プレポリマー)と、プレポリマーの希釈剤としての多官能性の低分子(モノマー)と、光化学反応を開始させるための開始剤とから構成されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2001−270973号公報
【特許文献2】特開平9−5997号公報
【特許文献3】特開平10−60655号公報
【0004】
プレポリマーには、アクリル酸/1,6−ヘキサンジオール/アクリル酸(下式(1))、無水フタル酸/プロピレンオキサイド/アクリル酸(下式(2))、トリメリット酸/ジエチレングリコール/アクリル酸(下式(3))等の比較的大きな分子量からなるポリエステル系紫外線硬化樹脂がよく用いられている。
【化1】

【0005】
このほか、エポキシ基を光重合官能基として用いた光硬化性樹脂組成物も知られている(例えば特許文献4〜6)
【特許文献4】特開2002−302523号公報
【特許文献5】特開平7−316262号公報
【特許文献6】特開2001−139663号公報
【0006】
プレポリマーは極めて粘度が高く、塗布等の取り扱いが困難なため、プレポリマーと共重合可能な多官能性のモノマーが希釈剤として加えられることが多い。この希釈剤は、プレポリマーよりも低分子量であり、これをプレポリマーに加えることにより、粘度を下げることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1〜3に記載されているような従来の光硬化性樹脂組成物では、光重合によって得られるポリマーは動きやすい長鎖状の分子構造をなすため、加工精度に劣るという問題あった。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、光重合によって得られるポリマーが高度に分岐した規則性の高い多分岐化合物であるデンドリマーを構成単位としており、優れた加工精度が期待できる重合性デンドリマー及びそれを利用した光硬化性樹脂組成物を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の重合性デンドリマーは、重合可能なエポキシ基を有する官能基がデンドリマーの末端に結合していることを特徴とする。
【0010】
本発明の重合性デンドリマーは重合可能なエポキシ基を有するため、例えば光酸発生剤を重合性デンドリマーと共存させておき、光を照射することによって、光酸発生剤から生じた酸によって容易に重合させることができる。このため、光リソグラフィーの材料として用いることができる。
また、この重合性デンドリマーは高度に分岐した規則性の高い多分岐化合物であるため、光重合によって得られるポリマーは、高分子量である割にはコンパクトにまとまった形状をしている。このため、直鎖構造を有し自由に屈曲することのできる通常のポリマーと比較して存在位置の動きが少なく、光リソグラフィーにおける加工精度の向上が期待できる。
【0011】
本発明においてデンドリマーとは、高度に分岐した規則性の高い多分岐化合物をいい、規則性の低いハイパーブランチ(hyper -branched)化合物は含まない概念である。かかるデンドリマーの種類については、その入手のしやすさから、(1)コア分子としてのジカルボン酸のカルボキシル基を起点としてトリオールとジカルボン酸とが交互にエステル結合を形成して分岐状となったエステル型デンドリマー(例えば下記化合物(4)等)、(2)コア分子としてのジアミンのアミノ基を起点としてアミド結合と3級アミンとが交互に形成されて分岐状となったアミド・アミン型デンドリマー(例えば下記化合物(5)等)、(3)コア分子としてのジアミンのアミノ基を起点として3級アミンが形成されて分岐状となったイミン型デンドリマー(例えば下記化合物(6)等)のいずれかであることが好ましい。
【化2】

【化3】

【化4】

【0012】
一般に規則性の正しいデンドリマーの場合、コア分子と呼ばれる分子構造の中心となる多官能基化合物から、基本単位となる枝分かれ分子構造が繰り返し結合した分岐構造を有する。基本単位となる枝分かれ分子構造の規則的な繰り返しの数は世代(ジェネレーション)という概念用語で表される。この世代の数え方について一般的に広く認められた定義はないが、ここではコア分子を中心として基本単位となる枝分かれ分子構造がn回結合したデンドリマーを(n−1)世代のデンドリマーと定義する。本発明においは、世代数は第0世代〜第4世代が好ましく、第0世代〜第2世代がさらに好ましい。デンドリマーの世代数が大きくなると分子が大きくなり、光硬化性樹脂のプレポリマーとして利用した場合、最小単位であるプレポリマーの大きさが大きくなるため、加工精度が低下する。例えば、光硬化性樹脂組成物を精密なフォトレジストに利用した場合、ラインエッジラフネスやダイウイズラフネス等が大きくなる。また、世代数の多いデンドリマーは合成が多工程になって複雑化するため、製造コストが高くなる。
【0013】
本発明の重合性デンドリマーとして、下記一般式(7)で表される第0世代の重合性デンドリマー(式中Rはエポキシ基を有するアルキル基)は、世代数の大きな重合性デンドリマーと比較して単位重量当たりのエポキシ基の数が大きいため、重合反応が進行しやすいと考えられる。
【化5】

【0014】
本発明の重合性デンドリマーをプレポリマーとすることにより、光硬化性樹脂組成物を構成することができる。すなわち、本発明の光硬化性樹脂組成物は、光重合可能なプレポリマーと、該プレポリマーと共重合可能な希釈剤と、重合開始剤とを含有する光硬化性樹脂組成物において、前記プレポリマーには、少なくとも請求項1乃至6のいずれか1項に記載の重合性デンドリマーが含まれていることを特徴とする。
【0015】
本発明の重合性デンドリマーをプレポリマーとし、プレポリマーと共重合可能な希釈剤と重合開始剤とを混合して光硬化性樹脂組成物とすれば、加工精度に優れた光硬化性樹脂組成物となる。
【0016】
希釈剤としては、重合可能な官能基としてエポキシ基を1〜3個有する重合性化合物である事が好ましい。上記希釈剤として、具体的には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAプロポキシレートジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリ(ジメチルシロキサン)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、等を挙げることができる。これらの中でも3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0017】
光酸発生剤としては特に限定はなく、各種公知のものが使用できる。例えば、[4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムp-トルエンスルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウム-9,10-ジメトキシアントラセン-2-スルホネート、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドパーフルオロ-1-ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート、トリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート、トリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウムトリフレート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジスルフェニルジスルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオルアンチモネート、ビス[4−ジフェニル−スルフォニオ]フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4−ジフェニル−スルフォニオ]フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート等を挙げることができる。また、特開2004−255564号公報に記載されているオニウム性光酸発生剤、ヒドロキシ基含有芳香族スルホン酸のジフェニルヨードニウム塩類のイオン性光酸発生剤、DNQ(diazonaphthoquinone)類の光酸発生剤、ニトロベンジルスルホン酸類の非イオン性光酸発生剤を用いることもできる。光酸発生剤は触媒的に少量配合されるが、具体的な配合割合としては、0.5〜1.0重量%が好ましい。また、光酸発生剤とともに、光増感剤を添加することも好ましい。こうであれば、光照射による光酸発生剤からの酸発生の感度が上がるため、光硬化性樹脂としての光に対する感度を上げることができる。このような光増感剤として例えば、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<エステル型の重合性デンドリマーの合成>
(実施例1)
実施例1では、cis-1,3-O-Benzylideneglycerol(8)を出発物質とし、下記反応式(化6)に従ってまず前駆体となるテトラヒドロキシ化合物(10)を合成した。
【化6】

【0019】
すなわち、cis-1,3-O-Benzylideneglycerol(8)(5.0g,27.7mmol)とコハク酸(1.55g,13.1mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(0.36g,2.9mmol)を60mLのジクロロメタンにマグネティックスターラーにて撹拌しながら溶解し、さらに、1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide Hydrochloride(5.8g,30.3mmol)を加え、反応容器を窒素置換した。0℃(氷冷)で3時間撹拌した後、室温で一晩撹拌した。反応液を1/20Nの塩酸で3回洗浄し、次いで飽和炭酸ナトリウム水溶液100mLで2回洗浄し、さらに水100mLで1回洗浄した後、有機溶媒相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、デカンテーションで硫酸ナトリウムを除去し、減圧下で溶媒を留去させた。こうして得られた白色固体をクロロホルム/メタノール混合溶液にて再結晶精製した。析出した白色結晶を吸引濾過で取り出し、真空乾燥し、第一晶を得た。さらに濾液を溶媒留去し、得られた白色固体を繰り返し同様に再結晶精製し、第二晶〜第四晶を得た。こうして第一晶〜第四晶までの合計5.05gの白色結晶を収率90%で得た。このものの1H−NMRは次の通りであり、ベンジリデン保護テトラヒドロキシ化合物(9)の構造を有すると同定された。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm)
2.81(s,4H,-CH2-CH2-),4.06〜4.14(m,4H,-CH2-CH-CH2-),
4.24〜4.30(m,4H,-CH2-CH-CH2-),4.70〜4.73(m,2H,-CH2-CH-CH2-),
5.53(s,2H,O-CH-O),7.30〜7.40(m,6H,Ph),7.47〜7.52(m,4H,Ph)
【0020】
さらに、吸引栓を備えたナス型フラスコに、上記ベンジリデン保護テトラヒドロキシ化合物(9)を0.75g(1.70mmol)入れ、脱水テトラヒドロフラン12mLを加えて溶解した。次いでこの溶液に10%Pd/Cを0.15g加え、さらに、濃塩酸50μLをメタノール2mLに溶解させた溶液を20μL加えた。そして、窒素を満たしたバルーンを三方コックを介してナス型フラスコに接続し、三方コックの残った口をアスピレーターに接続した。アスピレーターでフラスコ内を減圧した後、窒素を導入する操作を3回繰り返し、フラスコ内を窒素で置換した。次に窒素バルーンを水素で満たしたバルーンと交換し、同様の操作によってフラスコ内を水素で置換した。その後、室温下、マグネティックスターラーで溶液を1.5時間激しく撹拌した。その後、吸引濾過によってPd/Cを除去し、濾液の溶媒を減圧下留去し、真空ポンプで乾燥させることにより、無色粘性液体のテトラヒドロキシ化合物(10)を得た。このものの1H−NMRは次の通りである。
1H-NMR(CD3OD)δ(ppm)
2.69(s,4H,-CH2-CH2-),3.61〜3.73(m,8H,-CH2-CH-CH2-),
4.85〜4.94(m,2H,-CH2-CH-CH2-)
【0021】
こうして、得られたテトラヒドロキシ化合物(10)を用い、下記化学式(化7)に従ってエポキシ基を導入した。
【化7】

【0022】
すなわち、上記テトラヒドロキシ化合物(10)(0.48g,1.8mmol)、4−ペンテン酸(0.74g,7.4mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.09g,0.74mmol)を20mLのジクロロメタンに入れ、マグネティックスターラーで撹拌し、さらに1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimideHydrochloride(1.5g,8.1mmol)を加え、反応容器内を窒素置換した。0℃で3時間撹拌した後、室温で12時間撹拌し、反応液を1/20Nの塩酸で3回洗浄し、次いで飽和炭酸ナトリウム水溶液100mLで2回洗浄した後、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。デカンテーションで硫酸ナトリウムを除去し、減圧下で溶媒留去し、無色液体を0.95g(89%)得た。このものの1H−NMRは次の通りであり、ビニル基を有する上記デンドリマー(10−PA)の構造を有すると同定された。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm)
2.33-2.48(m,16H,-CO-CH2-CH2-CH=),2.65(s,4H,-CO-CH2-CH2-CO-),
4.13-4.21(m,4H,-CH2-CH-CH2-),4.27-4.36(m,4H, -CH2-CH-CH2-)
4.98-5.11(m,8H,-CH=CH2),5.22-5.30(m,2H, -CH2-CH-CH2-),
5.74-5.89(m,4H,-CH=CH2)
【0023】
さらに、デンドリマー(10−PA)に対して、エポキシ化を行った。すなわち、デンドリマー(10−PA)(0.88g,1.5mmol)、m−クロロ過安息香酸(2.5g,14mmol)を50mLのジクロロメタンに入れ、マグネティックスターラーで48時間、室温で撹拌した。反応液を飽和炭酸ナトリウム水溶液100mLで4回洗浄した後、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。デカンテーションで硫酸ナトリウムを除去し、減圧下で溶媒留去し、無色液体を0.87g(89%)得た。このものの1H−NMRは次の通りであり、エポキシ基を有する上記重合性デンドリマー(10−EPA)の構造を有すると同定された。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm)
1.70-1.82(m,4H,-CO-CH2-CH2-Epoxy),1.92-2.09(m,4H,-CO-CH2-CH2-Epoxy)
2.46-2.51(m,8H,-CO-CH2-CH2-Epoxy),2.51-2.54(m,4H,CH2(Epoxy))
2.65(s,4H,-CO-CH2-CH2-CO-),2.73-2.81(m,4H,CH2(Epoxy))
2.93-3.04(m,4H,CH(Epoxy))4.14-4.25(m,4H,-CH2-CH-CH2-),
4.27-4.39(m,4H, -CH2-CH-CH2-)5.23-5.34(m,2H, -CH2-CH-CH2-)
【0024】
なお、上記実施例1において、4−ペンテン酸の代わりにアクリル酸を用いることにより、下記化学式(化8)に示すエポキシ基含有重合性デンドリマー(a)を合成することもできる。
【化8】

【0025】
(実施例2)
実施例2では、テトラヒドロキシ化合物(10)にエピブロモヒドリンを付加させて下記化学式(化9)に示すエポキシ基含有重合性デンドリマー(11)を合成した。
【化9】

すなわち、60%水素化ナトリウム(0.13g,3.3mmol)を脱水テトラヒドロフランで洗浄し、ジメチルホルムアミド2mLに入れ、氷冷しながら撹拌した。そこへ化合物(10)(0.15g,0.56mmol)のジメチルホルムアミド2mL溶液をゆっくりと滴下し、その後室温で4時間撹拌した。その後エピブロモヒドリン(0.51g,3.7mmol)のジメチルホルムアミド1mL溶液を加え、室温で一晩撹拌した。反応液を塩水にあけ、ジエチルエーテルで抽出、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒留去し、黄色液体を得た。このものの1H−NMRは次の通りであり、エポキシ基を有する上記重合性デンドリマー(11)の構造を有すると同定された。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm)
2.56-2.64(m,4H,CH2(Epoxy)),2.64-2.71(m,4H,-CO-CH2-CH2-CO-),
2.76-2.83(m,4H,CH2(Epoxy)),3.11-3.20(m,4H, CH(Epoxy))
3.49-3.83(m,8H,-CH2-CH-CH2-、8H,-O-CH2-Epoxy),
4.19-4.31(m,2H,-CH2-CH-CH2-)
【0026】
(実施例3)
実施例3では、ジヒドロキシ化合物(10)を用い、コハク酸及びグリシドールを作用させて、下記化学式(化10)に示すエポキシ基含有重合性デンドリマー(12)を合成した。
【化10】

【0027】
すなわち、テトラヒドロキシ化合物(10)(0.45g,1.7mmol)のピリジン10mL溶液に無水コハク酸(0.68g,6.8mmol)を入れ、反応容器を窒素置換した後、室温で24時間撹拌した。ピリジンを減圧下で留去した後、ジエチルエーテル5mLを加え、氷冷した。ジエチルエーテルをデカンテーションで除き、残った沈殿物をクロロホルム2mLに溶解し、ジエチルエーtル3mLを加えて冷蔵庫に一晩放置した。析出した沈殿物を乾燥し、無色液体を1.1g得た。これを0.69gと、グリシドール(0.32g,4.3mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.05g,0.43mmol)を25mLのクロロホルムに入れ、マグネティックスターラーで撹拌し、さらに1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide Hydrochloride(0.84g,4.4mmol)を加え、反応容器内を窒素置換した。0℃で3時間、次いで室温で12時間撹拌し、反応液を1/20Nの塩酸で3回洗浄し、次いで飽和炭酸ナトリウム水溶液100mLで3回洗浄した後、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。デカンテーションで硫酸ナトリウムを除去し、減圧下で溶媒留去し、淡黄色液体を0.63g得た。このものの1H−NMRは次の通りであり、上記エポキシ基含有重合性デンドリマー(12)の構造を有すると同定された。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm)
2.64-2.71(m,20H,-CO-CH2-CH2-CO-、4H,CH2(Epoxy)),2.81-2.88(m,4H,CH2(Epoxy)),
3.16-3.25(m,4H,CH(Epoxy)),3.88-4.00(m,4H,-O-CH2-Epoxy)
4.16-4.26(m,4H,-CH2-CH-CH2-),4.26-4.37(m,4H,-CH2-CH-CH2-),
4.38-4.49(m,4H,-O-CH2-Epoxy),5.20-5.33(m,2H,-CH2-CH-CH2-)
【0028】
<光重合性樹脂組成物の製造>
上記実施例1の重合性デンドリマーを用い、以下のようにして光重合性樹脂組成物を製造することができる。
すなわち、上記実施例1で合成した重合性デンドリマー(10−EPA)及び希釈剤として3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを25:75(重量比)で混合し、光酸発生剤として(4−(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ)フェニル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネートと増感剤としてイソプロピルチオキサントンを重量比2:1で混合したものを1.0重量%加え、光重合性樹脂組成物を調製する。
【0029】
こうして得られた光重合性樹脂組成物について、Brian H. Cumpston et al,Nature, vol.,Nature,vol.398,51-54頁(1999)及び特開2003−327645号公報段落0049〜0052に記載された方法に基づき、図1に示す光学装置を用い2光子吸収反応による光造形を実施することができる。この光学装置は、光源より近赤外フェムト秒レーザー(波長700nm、周波数80MHz、パルス幅<100フェムト秒)を矢印A方向にミラー1に向けて照射する。2光子リソグラフィーにおいては、2光子吸収過程で700nmの波長を有する光子を同時に2個吸収するため、半波長である350nmの紫外線領域の波長の吸収を励起できる。ミラー1に照射されたレーザーは、レンズ2を通過した後、ピンホール3内を通過する。続いて、上記レーザーはレンズ4を通過し、ビームスプリッター5によって分光される。分光された一部のレーザーは対物レンズ6(倍率80〜100倍、開口数NA=0.9)へ向けて照射される。対物レンズ6は、図中矢印B方向に上下移動することによって、レーザーの集光点を調節する。集光点が調節されたレーザーは、光硬化性樹脂8が塗布されたスライドガラス7へ照射される。スライドガラス7は図中の矢印x・y・z方向にそれぞれ移動することが可能であるため、光硬化性樹脂8に対して、3次元的な照射を行い、硬化反応を進めることもできるが、ここではビームを直線状に動かした。なお、ビームスプリッター5を介したスライドガラス7の反対側には、レンズ9およびCCDカメラ10が配置されており、光硬化性樹脂8に対する硬化反応の様子を観察しながら、対物レンズ6およびスライドガラス7を移動させることができる。この光学装置を用いて、光硬化性樹脂8にパターンを形成させることができる。
【0030】
<アミド・アミン型の重合性デンドリマーの合成>
アミド・アミン型の重合性デンドリマーは、次のような方法によって合成することができる(下記反応式(化11)参照)。すなわち、第0世代アミド・アミン型デンドリマー(Aldrich社製エチレンジアミンコアPAMAMデンドリマー)(13)を出発原料とし、実施例1と同様に4−ジメチルアミノピリジンと1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide Hydrochlorideを触媒として、4−ペンテン酸と反応させてアミド化合物(14)を合成する。さらにこのアミド化合物(14)をm−クロロ過安息香酸でエポキシ化してエポキシ化合物(15)を得る。
【化11】

【0031】
<イミン型の重合性デンドリマーの合成>
イミン型の重合性デンドリマーは、次のような方法によって合成することができる(下記反応式(化12)参照)。すなわち、第1世代イミン型デンドリマー(Aldrich社製ポリプロピレンイミンデンドリマー)(16)を出発原料とし、実施例1と同様に4−ジメチルアミノピリジンと1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide Hydrochlorideを触媒として、4−ペンテン酸と反応させ、アミド化合物(17)を合成する。さらにこのアミド化合物(17)をm−クロロ過安息香酸でエポキシ化してエポキシ化合物(18)を得る。
【化12】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は光リソグラフィーのための材料として電子デバイス作製等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】2光子リソグラフィーに用いる光学装置の模式図である。
【符号の説明】
【0034】
1…ミラー
2…レンズ
3…ピンホール
4…レンズ
5…ビームスプリッター
6…対物レンズ
7…スライドガラス
8…光硬化性樹脂
9…レンズ
10…CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能なエポキシ基を有する官能基がデンドリマーの末端に結合していることを特徴とする重合性デンドリマー。
【請求項2】
コア分子としてのジカルボン酸のカルボキシル基を起点としてトリオールとジカルボン酸とが交互にエステル結合を形成して分岐状となったエステル型デンドリマーであることを特徴とする請求項1記載の重合性デンドリマー。
【請求項3】
コア分子としてのジアミンのアミノ基を起点としてアミド結合と3級アミンとが交互に形成されて分岐状となったアミド・アミン型デンドリマーであることを特徴とする請求項1記載の重合性デンドリマー。
【請求項4】
コア分子としてのジアミンのアミノ基を起点として3級アミンが形成されて分岐状となったイミン型デンドリマーであることを特徴とする請求項1記載の重合性デンドリマー。
【請求項5】
繰り返しの分子構造の数を示す世代数は第0世代〜第4世代であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の重合性デンドリマー。
【請求項6】
下記一般式(1)で表わされる化合物(式中Rはエポキシ基を有するアルキル基)であることを特徴とする請求項2記載の重合性デンドリマー。
【化1】

【請求項7】
光重合可能なプレポリマーと、該プレポリマーと共重合可能な希釈剤と、重合開始剤とを含有する光硬化性樹脂組成物において、
前記プレポリマーには、少なくとも請求項1乃至6のいずれか1項に記載の重合性デンドリマーが含まれていることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
重合開始剤は光酸発生剤と光増感剤との混合物であることを特徴とする請求項7記載の光硬化性樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−246483(P2007−246483A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75493(P2006−75493)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】