説明

重合性組成物、架橋体および架橋樹脂複合体

【課題】高周波特性、耐熱性および冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れた架橋体および架橋樹脂複合体を与える重合性組成物、ならびに、これを用いて得られる架橋体および架橋樹脂複合体を提供すること。
【解決手段】ノルボルネン系モノマー、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤、架橋剤および架橋ゴム粒子を含む重合性組成物。好ましくは、前記架橋ゴム粒子の平均粒子径は10〜2,000nmであり、また、前記架橋ゴム粒子の含有割合が、前記ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、0.1〜100重量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性組成物、架橋体および架橋樹脂複合体に関し、さらに詳しくは高周波特性、耐熱性および冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れた架橋体および架橋樹脂複合体を与える重合性組成物、およびこれを用いて得られる架橋体および架橋樹脂複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板は、一般に誘電体層と導体層とから構成される。近年、高度情報化時代を迎え、情報伝送は高速化・高周波化に向って動き出し、マイクロ波通信やミリ波通信が現実になってきている。これらの高周波化時代の回路基板の誘電体層は、高周波におけるノイズや伝送ロスを極限まで軽減する必要があり、そのためこのような誘電体層を形成する材料として、誘電正接(tanδ)の小さい誘電体材料の選定が重要な課題となってきている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、このような回路基板の誘電体層を構成するための材料として、熱可塑性樹脂、または熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物100重量部、および層状珪酸塩0.1〜100重量部を含有する絶縁基板用材料が開示されている。なお、この特許文献1には、絶縁基板用材料中に、液状のゴム成分であるエポキシ変性ブタジエンゴムを添加する点が記載されている。しかしながら、この特許文献1に記載された熱可塑性樹脂、または熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物を用いて得られる絶縁基板用材料では、誘電正接が必ずしも充分に低く抑えられておらず、そのため、高周波化に対応できないという問題があった。
【0004】
これに対して、誘電正接の小さい樹脂材料としてシクロオレフィンモノマーを塊状重合したシクロオレフィンポリマーが注目されている。たとえば、特許文献2には、シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、架橋剤、連鎖移動剤、および特定の液状のジエン系ゴムを含有する回路基板の誘電体層用の重合性組成物が開示されている。なお、この特許文献2においては、シクロオレフィンモノマーを含有する重合性組成物に液状のジエン系ゴムを含有させることにより、該重合性組成物の流動性を向上させている。
【0005】
また、特許文献2と同様に、樹脂材料にゴムを配合する技術として、特許文献3には、エポキシ樹脂に、20〜500nmの範囲の平均粒子サイズを有し、均一な構造で、ゲル含有量が75重量%以上のゴム粒子を配合してなる強化熱硬化性樹脂が開示されている。なお、この特許文献3においては、エポキシ樹脂に上記所定のゴム粒子を配合することにより、エポキシ樹脂の靭性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−26939号公報
【特許文献2】特開2008−133417号公報
【特許文献3】特表2005−510613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の絶縁基板用材料および特許文献2に記載の重合性組成物では、耐熱性に劣り、さらには、回路基板の使用想定環境下での繰り返し使用時の耐クラック性にも劣るという問題が認められた。また、特許文献3に記載の強化熱硬化性樹脂は、誘電正接が充分に低く抑えられていないという問題や、粘度が高いため操作性が悪いという問題、回路基板の使用想定環境下での繰り返し使用時の耐クラック性に劣るという問題が認められた。
【0008】
本発明の目的は、高周波特性、耐熱性および冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れた架橋体および架橋樹脂複合体を与える重合性組成物、ならびに、これを用いて得られる架橋体および架橋樹脂複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、ノルボルネン系モノマー、メタセシス重合触媒、架橋剤、および連鎖移動剤を含む重合性組成物に、架橋ゴム粒子を配合することで、高周波特性、耐熱性および冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れた架橋体および架橋樹脂複合体を与える重合性組成物が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、
〔1〕ノルボルネン系モノマー、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤、架橋剤および架橋ゴム粒子を含む重合性組成物、
〔2〕前記架橋ゴム粒子の平均粒子径が10〜2,000nmである前記〔1〕に記載の重合性組成物、
〔3〕前記架橋ゴム粒子の含有割合が、前記ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、0.1〜100重量部である前記〔1〕または〔2〕に記載の重合性組成物、
〔4〕前記架橋ゴム粒子のゲル分が、50〜99.9重量%である前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の重合性組成物、
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の重合性組成物を塊状重合してなる架橋性樹脂、
〔6〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の重合性組成物を支持体に塗布または含浸し、塊状重合してなる架橋性樹脂複合体、
〔7〕前記〔5〕に記載の架橋性樹脂を架橋してなる架橋体、ならびに、
〔8〕前記〔7〕に記載の架橋体と支持体とを含む架橋樹脂複合体、
が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高周波特性、耐熱性および冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れた架橋体および架橋樹脂複合体を与える重合性組成物、ならびに、これを用いて得られる架橋体および架橋樹脂複合体が提供される。本発明の架橋体および架橋樹脂複合体は、高周波特性、耐熱性および冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れているため、通信機器用途等のマイクロ波またはミリ波等の高周波回路基板に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の重合性組成物は、ノルボルネン系モノマー、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤、架橋剤および架橋ゴム粒子を含有してなる。
【0013】
(ノルボルネン系モノマー)
本発明に使用されるノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーである。具体的には、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類などが挙げられる。これらは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基などの炭化水素基や、カルボキシル基または酸無水物基などの極性基が置換基として含まれていてもよい。また、ノルボルネン環の二重結合以外に、さらに二重結合を有していてもよい。これらの中でも、極性基を持たないもの、すなわち炭素原子と水素原子のみで構成されるノルボルネン系モノマーが好ましい。
【0014】
ここで、ノルボルネン系モノマーは、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないものと、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものとに分けられる。本明細書において「架橋性の炭素−炭素不飽和結合」とは、開環重合には関与せず、架橋反応に関与可能な炭素−炭素不飽和結合をいう。架橋反応とは橋架け構造を形成する反応であり、縮合反応、付加反応、ラジカル反応、メタセシス反応など種々の形態のものが存在するが、本発明においては、通常、ラジカル架橋反応またはメタセシス架橋反応、特にラジカル架橋反応をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合としては、芳香族炭素−炭素不飽和結合を除く炭素−炭素不飽和結合、すなわち、脂肪族炭素−炭素二重結合または脂肪族炭素−炭素三重結合が挙げられ、本発明においては、通常、脂肪族炭素−炭素二重結合をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するノルボルネン系モノマー中、不飽和結合の位置は特に限定されるものではなく、炭素原子で形成される環構造内の他、該環構造以外の任意の位置、例えば、側鎖の末端や内部に存在していてもよい。
【0015】
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、1−メチル−2−ノルボルネン、7−メチル−2−ノルボルネン、5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロ−2−ノルボルネン、5,5−ジクロロ−2−ノルボルネン、5−フルオロ−2−ノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチル−2−ノルボルネン、5−クロロメチル−2−ノルボルネン、5−メトキシ−2−ノルボルネン、5,6−ジカルボキシル−2−ノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノ−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネンなどを挙げることができる。
【0016】
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するノルボルネン系モノマーとしては、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−アリル−2−ノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエンなどを挙げることができる。
【0017】
なお、上述のノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
(メタセシス重合触媒)
本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ノルボルネン系モノマーをメタセシス開環重合できるものであれば良いが、通常、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオンおよび/または化合物が結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては例えばタンタルが挙げられ、6族の原子としては、例えばモリブデンやタングステンが挙げられ、8族の原子としては、例えばルテニウムやオスミウムが挙げられる。これらの中でも、8族のルテニウムやオスミウムの錯体をメタセシス重合触媒として用いることが好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性が優れるため、架橋性樹脂の生産性に優れ、得られる架橋性樹脂の、未反応のモノマーに由来する臭気が少なく作業性に優れる。ルテニウムカルベン錯体は、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活し難いので、これを用いることにより、大気下での生産を可能とすることができる。
【0019】
ルテニウムカルベン錯体としては、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【化1】

【0020】
上記一般式(1)および一般式(2)において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
【0021】
1およびX2は、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子を示す。アニオン性配位子とは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、ハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0022】
1およびL2はそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物又は中性電子供与性化合物を表す。ヘテロ原子とは、周期律表第15族および第16族の原子を意味し、具体的には、N、O、P、S、As、Se原子などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、S原子などが好ましく、N原子が特に好ましい。
【0023】
ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記一般式(3)または一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【化2】

【0024】
式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい炭素数1〜20個の炭化水素基を表す。また、R〜Rは任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
【0025】
中性の電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。その具体例としては、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類などが挙げられ、トリアルキルホスフィンがより好ましい。
【0026】
なお、上記式(1)および(2)において、RとRは互いに結合して環を形成してもよく、さらに、R、R、X1、X2、L1およびL2は、任意の組合せで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよい。
【0027】
本発明においては、メタセシス重合触媒としてヘテロ環構造を有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒を用いることが、得られる架橋体および架橋樹脂複合体の高周波特性、耐熱性および冷熱衝撃試験での耐クラック性の各特性を高度にバランスさせることができるため、好ましい。ヘテロ環構造を構成するヘテロ原子としては、例えば、O原子、N原子等が挙げられ、好ましくはN原子である。また、ヘテロ環構造としては、イミダゾリン構造やイミダゾリジン構造が好ましい。
【0028】
このようなヘテロ環構造を有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒としては、上記式(1)または(2)で表され、L1またはL2としてヘテロ原子含有カルベン化合物からなる配位子を有するルテニウム触媒を好適に用いることができる。ヘテロ原子含有カルベン化合物を構成するヘテロ原子としては、N原子が好ましい。このようなヘテロ原子含有カルベン化合物の具体例としては、例えば、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
【0029】
また、ヘテロ原子含有カルベン化合物からなる配位子を有するルテニウム触媒の具体例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリドなどの、配位子としてヘテロ原子含有カルベン化合物と中性電子供与性化合物とが結合したルテニウム錯体化合物が挙げられる。
【0030】
これらのメタセシス重合触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。メタセシス重合触媒の使用量は、(触媒中の金属原子:ノルボルネン系モノマー)のモル比で、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
【0031】
メタセシス重合触媒は必要に応じて、少量の不活性溶剤に溶解または懸濁して使用することができる。このような溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;インデン、テトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、および脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。
【0032】
(連鎖移動剤)
本発明に使用される連鎖移動剤としては、メタセシス開環重合に関与できるものであれば良く特に限定されないが、本発明の重合性組成物を重合反応させることにより得られる架橋性樹脂の末端に結合可能な脂肪族炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物が好ましい。このような結合可能な脂肪族炭素−炭素二重結合の例としては、末端ビニル基が挙げられる。また、連鎖移動剤は、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有していてもよい。
【0033】
このような連鎖移動剤の具体例としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、アリルアミン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、4−ビニルアニリンなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たない連鎖移動剤;ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸スチリル、エチレングリコールジアクリレートなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有する連鎖移動剤;アリルトリビニルシラン、テトラアリルシランなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する連鎖移動剤などが挙げられる。これらのなかでも、得られる架橋体および架橋樹脂複合体の高周波特性、耐熱性および冷熱衝撃試験での耐クラック性を高度にバランスさせることができるという観点から、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものが好ましい。特に、このような連鎖移動剤の中でも、ビニル基とメタクリル基とを1つずつ有する連鎖移動剤が好ましく、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、メタクリル酸ウンデセニルなどが特に好ましい。
【0034】
これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の重合性組成物への連鎖移動剤の配合量は、ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0035】
(架橋剤)
本発明で使用される架橋剤は、本発明の重合性組成物を塊状重合することにより得られる架橋性樹脂において、架橋反応を誘起する目的で使用される。従って、本発明の重合性組成物を塊状重合することにより得られる架橋性樹脂は、後架橋可能な熱可塑性樹脂となる。本発明において架橋剤としては、通常、ラジカル発生剤が好適に用いられる。ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、ジアゾ化合物、および非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物、および非極性ラジカル発生剤である。
【0036】
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン、3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトロキサンなどの環状パーオキサイド類;が挙げられる。これらのなかでも、重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシド類、ペルオキシケタール類、および環状パーオキサイド類が好ましい。
【0037】
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0038】
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
【0039】
架橋剤として、ラジカル発生剤を使用する場合、1分間半減期温度は、硬化(本発明の重合性組成物を塊状重合することにより得られる架橋性樹脂および架橋性樹脂複合体の架橋)の条件により適宜選択されるが、通常、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃の範囲である。ここで1分間半減期温度は、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。例えば、ジ−t−ブチルペルオキシドでは186℃、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンでは194℃である。
【0040】
これらの架橋剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の重合性組成物への架橋剤の配合量は、ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0041】
(架橋ゴム粒子)
架橋ゴム粒子は、少なくとも一部に架橋構造を有するゴムの粒子である。本発明の重合性組成物に、架橋ゴム粒子を配合することにより、得られる架橋体および架橋樹脂複合体の耐熱性および冷熱衝撃試験での耐クラック性を向上させることができる。架橋ゴム粒子を構成するゴムの種類としては、特に限定されないが、たとえば、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシルスチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、カルボキシルニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルゴム、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリスルフィドゴム、アクリレート−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらのなかでも、電気絶縁性が高く、作業性が良好であるという点より、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴムが好ましく、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴムがより好ましく、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムが特に好ましい。
【0042】
架橋ゴム粒子の平均粒子径は、好ましくは10〜2,000nmであり、より好ましくは20〜1,500nm、さらに好ましくは30〜1,000nm、特に好ましくは50〜500nmである。なお、架橋ゴム粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(Scanning EIeotron Microscopy)によって測定することができる。架橋ゴム粒子の平均粒子径が小さすぎると、重合性組成物に配合した際に、粘度が上昇する場合がある。一方、大きすぎると、得られる架橋体および架橋樹脂複合体の耐熱性および耐クラック性の向上効果が得られなくなる場合がある。
【0043】
また、架橋ゴム粒子のゲル含有量は、好ましくは50重量%〜99.9重量%であり、より好ましくは75〜99.9重量%、さらに好ましくは90〜99.9重量%である。架橋ゴム粒子のゲル含有量が少なすぎると、樹脂と相溶してしまい、得られる架橋体および架橋樹脂複合体の耐熱性および耐クラック性の向上効果が得られなくなる場合がある。なお、架橋ゴム粒子のゲル含有量は、次の方法によって測定することができる。すなわち、まず、架橋ゴム粒子(架橋ゴム粒子の重量をWとする。)を、レンズ紙で包み、またそれを200メッシュの銅スクリーンクロスに包み、次いで、この銅スクリーンクロスと内容物(レンズ紙および架橋ゴム粒子)との合計の重量(この重量をWとする。)を測定する。次いで、銅スクリーンクロスと内容物を、約6時間、沸騰しているトルエンの中に入れる。次いで、煮沸した銅スクリーンクロスと内容物とを完全に乾燥させ、これらの合計の重量(この重量をWとする。)を測定する。そして、架橋ゴム粒子のゲル含有量は、下記式に従って、求めることができる。
ゲル含有量(%)={W−(W−W)}/W×100
【0044】
架橋ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、好ましくは0℃以下、より好ましくは−10℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。
【0045】
なお、本発明に用いる架橋ゴム粒子は、中空状の粒子であってもよい。中空状の粒子を用いることにより、得られる架橋体および架橋樹脂複合体の電気特性を改善することができる。架橋ゴム粒子として中空状のものを用いる場合における空隙率は、通常10体積%以上、好ましくは20〜90体積%、より好ましくは25〜80体積%、さらに好ましくは30〜70体積%である。なお、空隙率は、「空隙率(%)={(架橋ゴム粒子を構成するゴム材料の比重−架橋ゴム粒子自体の比重)/架橋ゴム粒子を構成するゴム材料の比重}×100」にしたがって、求めることができる。
【0046】
架橋ゴム粒子は、たとえば、対応するゴムのラテックスを乳化重合法などにより製造する際に、化学的に架橋反応をさせる方法などによって得ることができる。乳化重合法においては、乳化剤としてアニオン系、カチオン系、ノニオン系あるいは両性の界面活性剤を用い、通常、分子量調節剤の存在下で、ラジカル重合開始剤により各モノマーの重合反応を開始させ、所定の重合転化率に達した時点で、必要に応じて重合停止剤を添加して重合反応を停止させた後、必要に応じて系内の未反応モノマーを水蒸気蒸留などにより除去することによって、架橋した粒子状ポリマーをラテックスとして得ることができる。
【0047】
あるいは、例えば、架橋ゴム粒子は、架橋度を高めるために、架橋剤の存在下または架橋剤を使用しない条件下において、予め調製したゴムのラテックスに、高エネルギー線を照射することにより、架橋した粒子状ポリマーのラテックスとして得ても良い。高エネルギー線としては、たとえば、コバルト源、X線、紫外線および高エネルギー電子ビームなどが挙げられるが、コバルト源が好ましい。高エネルギー線の照射総量は、好ましくは0.1〜30メガラドであり、より好ましくは0.5〜20メガラドである。
【0048】
そして、上記各方法により得られた架橋した粒子状ポリマーのラテックスを、噴霧乾燥器により乾燥する方法または沈殿乾燥法によって乾燥することにより、架橋ゴム粒子を得ることができる。なお、噴霧乾燥器を用いて乾燥を行う場合、通常、入口温度を100〜200℃、出口温度を20〜80℃に調整して乾燥を行う。
【0049】
なお、架橋ゴム粒子を製造する際に用いる架橋剤としては、たとえば、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの単官能架橋剤;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジグリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの2官能架橋剤;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能架橋剤;ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレート化ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能架橋剤;ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能以上の架橋剤などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤の使用量は、ゴム成分100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜9重量部、より好ましくは0.7〜7重量部である。
【0050】
本発明の重合性組成物中における、架橋ゴム粒子の配合量は、ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜100重量部、より好ましくは1〜75重量部、さらに好ましくは10〜15重量部の範囲である。架橋ゴム粒子の配合量が少なすぎると、得られる架橋体および架橋樹脂複合体の耐熱性および耐クラック性の向上効果が得られなくなる場合がある。一方、多すぎると、架橋性樹脂とする場合において成形が困難となる場合がある。
【0051】
(重合性組成物)
本発明の重合性組成物は、上記ノルボルネン系モノマー、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤、架橋剤および架橋ゴム粒子を含有してなるものである。また、本発明で用いる重合性組成物には、所望により、充填剤、重合調整剤、重合反応遅延剤、老化防止剤、その他の配合剤などを添加することができる。
【0052】
充填剤としては、工業的に一般に使用されるものであれば格別な限定はなく、無機系充填剤および有機系充填剤のいずれも用いることができるが、好適には無機系充填剤である。本発明の重合性組成物に充填剤を配合することにより、得られる架橋体および架橋樹脂複合体の機械強度と耐熱性との向上が可能となる。
【0053】
無機系充填剤としては、例えば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、アルミニウム、鉛、タングステン等の金属粒子;カーボンブラック、グラファイト、活性炭、炭素バルーン等の炭素粒子;シリカ、シリカバルーン、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の無機酸化物粒子;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩粒子;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩粒子;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラスバルーン等の無機ケイ酸塩粒子;チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛等のチタン酸塩粒子;窒化アルミニウム、炭化ケイ素粒子やウィスカー等が挙げられる。有機系充填剤としては、例えば、木粉、デンプン、有機顔料、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、塩化ビニル、廃プラスチック等の化合物粒子が挙げられる。これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
充填剤の配合量は、ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、通常1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは50〜350重量部の範囲である。
【0055】
重合調整剤は、重合活性を制御したり、重合反応率を向上させたりする目的で配合されるものである。重合調整剤としては、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合調整剤を用いる場合における、重合調整剤の配合量は、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合調整剤)で、好ましくは1:0.05〜1:100、より好ましくは1:0.2〜1:20、さらに好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0056】
重合反応遅延剤は、本発明の重合性組成物の粘度増加を抑制し得るものである。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;アニリン、ピリジンなどのルイス塩基;等を用いることができる。重合反応遅延剤を用いる場合における、重合反応遅延剤の配合量は、所望により適宜調整すればよい。
【0057】
老化防止剤としては、たとえば、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などが挙げられ、これらの老化防止剤を配合することにより、架橋反応を阻害しないで、得られる架橋体および架橋樹脂複合体の耐熱性を高度に向上させることができるため、好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤およびアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤がより好ましい。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤を使用する場合における、老化防止剤の使用量は、ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、好ましくは0.0001〜10重量部、より好ましくは0.001〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。
【0058】
また、本発明の重合性組成物には、上記した配合剤以外のその他の配合剤を配合することができる。その他の配合剤としては、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤などを用いることができる。着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。これらのその他の配合剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0059】
本発明の重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、メタセシス重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を調製し、別にノルボルネン系モノマー、連鎖移動剤、架橋剤および架橋ゴム粒子などの必須の成分、ならびに所望によりその他の配合剤を配合した液(モノマー液)を調製し、該モノマー液に触媒液を添加し、攪拌することによって調製することができる。
【0060】
(架橋性樹脂、架橋性樹脂複合体)
本発明の架橋性樹脂は、上述の本発明の重合性組成物を塊状重合することによって得られる。重合性組成物を塊状重合する方法としては、(a)重合性組成物を支持体に注ぐか、あるいは塗布し、塊状重合する方法、(b)重合性組成物を型内に注ぎこみ、塊状重合する方法、(c)重合性組成物を繊維材からなる支持体に含浸し、塊状重合する方法などが挙げられる。
【0061】
上記(a)の方法によれば、架橋性樹脂と支持体とから形成される架橋性樹脂複合体が得られる。支持体としては、特に限定されないが、金属箔または樹脂フィルムが好ましい。金属箔を構成する材料としては、たとえば、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、銀などが挙げられる。また、樹脂フィルムを構成する材料としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ナイロンなどが挙げられる。支持体として、金属箔または樹脂フィルムを用いる場合における、これらの厚さは、作業性などの観点から、好ましくは1〜150μm、より好ましくは2〜100μm、さらに好ましくは3〜75μmである。これらの支持体の表面は平滑であることが好ましい。また、これらの支持体表面は、公知のシランカップリング剤などで表面処理をしてあることが好ましい。
【0062】
上記(a)の方法において、重合性組成物を支持体上へ塗布する方法は特に制限されず、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法などの公知の塗布方法が挙げられる。
【0063】
上記(a)の方法において、塊状重合はメタセシス重合触媒が機能する温度まで重合性組成物を加熱することによって開始される。重合性組成物を所定温度に加熱する方法としては特に制約されず、加熱プレート上に載せて加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス)する方法、加熱したローラーで押圧する方法、加熱炉を用いる方法などが挙げられる。
【0064】
また、上記(b)の方法によれば、任意の形状の架橋性樹脂の成形体を得ることができる。その形状としては、シート状、フィルム状、柱状、円柱状、多角柱状等が挙げられる。ここで用いる型としては、従来公知の成形型、例えば、割型構造、すなわちコア型とキャビティー型とを有する成形型を用いることができ、それらの空隙部(キャビティー)に重合性組成物を注入して塊状重合させる。コア型とキャビティー型とは、目的とする成形品の形状にあった空隙部を形成するように作製される。また、成形型の形状、材質、大きさなどは特に制限されない。あるいは、ガラス板や金属板などの板状成形型と所定の厚さのスペーサーとを用意し、スペーサーを2枚の板状成形型で挟んで形成される空間内に重合性組成物を注入することにより、シート状またはフィルム状の架橋性樹脂の成形体を得ることができる。
【0065】
上記(b)の方法において、重合性組成物を成形型のキャビティー内に充填する際の充填圧力(注入圧)は、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaである。充填圧力が低すぎると、キャビティー内周面に形成された転写面の転写が良好に行われない傾向にある。一方、充填圧が高すぎると、成形型の剛性を高くしなければならいため、経済的ではない。型締圧力は通常0.01〜10MPaの範囲内である。
【0066】
上記(c)の方法によれば、架橋性樹脂が強化繊維に含浸されてなる架橋性樹脂複合体であるプリプレグを得ることができる。強化繊維としては、特に限定されないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維などの無機繊維;などを挙げることができる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、Hガラス等の繊維を好適に用いることができる。
これらの強化繊維は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、所望により適宜選択されるが、プリプレグ(架橋性樹脂複合体)中において、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%の範囲である。強化繊維の使用量がこの範囲にある場合に、得られるプリプレグの誘電特性と機械強度とが高度にバランスされるため、好適である。
【0067】
上記(c)の方法において、重合性組成物の強化繊維への含浸は、例えば、重合性組成物の所定量を、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法により繊維材に塗布し、必要に応じてその上に保護フィルムを重ね、上側からローラーなどで押圧することにより行うことができる。重合性組成物を繊維材に含浸させた後、含浸物を所定温度に加熱することにより、重合性組成物を塊状重合させることができ、それによって架橋性樹脂が含浸されたプリプレグが得られる。また、含浸を型内で行う場合は、型内に強化繊維を設置し、該型内に重合性組成物を注ぎ込んで行う。なお、この場合に用いる型としては、上記(b)の方法で用いるものと同様なものが使用でき、また、重合性組成物を成形型のキャビティー内に充填する際の充填圧力も上記(b)の方法と同様とすれば良い。
【0068】
上記(c)の方法において、含浸物の加熱方法は特に限定されず、上記(a)の方法と同様の方法が採用でき、含浸物を基材上に設置して加熱してもよい。また、繊維材を設置した型内に重合性組成物を注入し、重合性組成物を含浸させてから上記(b)の方法に従い塊状重合してもよい。本発明の重合性組成物は、従来の樹脂ワニスと比較して低粘度であり、強化繊維に対する含浸性に優れるので、強化繊維に架橋性樹脂を均一に含浸させることができる。また、本発明の重合性組成物は、反応に関与しない溶媒等の含有量が少ないため、強化繊維に含浸させた後に溶媒を除去するなどの工程が不要であり、生産性に優れ、残存溶媒による臭気やフクレ等も生じない。
【0069】
なお、上記(c)の方法により得られるプリプレグの厚さは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常、0.001〜10mm、好ましくは0.005〜1mm、より好ましくは0.01〜0.5mmの範囲である。この範囲にあれば、積層時の賦形性、また、架橋して得られる架橋樹脂複合体の機械強度や靭性などの特性が充分に発揮されるため、好適である。上記(c)の方法により得られるプリプレグの揮発成分量は、200℃で1時間加熱したときに揮発する量で、通常、30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。プリプレグの揮発成分量が過度に多いと、プリプレグのベタつきが発生し操作性及び保存安定性が不良化する傾向がある。
【0070】
上記(a)、(b)および(c)のいずれの方法においても、重合性組成物を重合させるための加熱温度は、通常、50〜250℃、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜150℃の範囲であって、架橋剤、通常、ラジカル発生剤の1分間半減期温度以下、好ましくは1分間半減期温度の10℃以下、より好ましくは1分間半減期温度の20℃以下である。また、重合時間は適宜選択すればよいが、通常、10秒間から60分間、好ましくは20分間以内である。重合性組成物を上記条件で加熱することにより、未反応モノマーの少ない架橋性樹脂および架橋性樹脂複合体が得られるため、好適である。
【0071】
本発明の架橋性樹脂、および本発明の架橋性樹脂複合体を構成する架橋性樹脂部分は、実質的に架橋構造を有さず、例えば、トルエンに可溶であり、その分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(溶離液:テトラヒドロフラン)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲である。
【0072】
(架橋体)
本発明の架橋体は、上記本発明の架橋性樹脂を架橋してなるものである。
架橋性樹脂の架橋は、例えば、本発明の架橋性樹脂を加熱溶融するなどして、架橋性樹脂が架橋反応を起す温度以上に維持することによって行うことができる。架橋性樹脂を架橋させる際の加熱温度は、例えば、架橋剤としてラジカル発生剤を使用する場合、通常、ラジカル発生剤の1分間半減期温度以上、好ましくは1分間半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分間半減期温度より10℃以上高い温度である。具体的には、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。加熱時間は、0.1〜180分、好ましくは1〜120分、より好ましくは2〜60分の範囲である。
【0073】
なお、架橋性樹脂がシート状またはフィルム状の成形体である場合には、必要に応じて、架橋性樹脂を基材上に積層し、熱プレスする方法が好ましい。熱プレスする際の圧力は、通常0.5〜20MPa、好ましくは3〜10MPaである。熱プレスは、真空または減圧雰囲気下で行ってもよい。熱プレスは、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)などのプレス成形機を用いて行なうことができる。
【0074】
(架橋樹脂複合体)
本発明の架橋樹脂複合体は、架橋体と支持体とを含有してなるものであり、上記(a)の方法または(c)の方法により製造された架橋性樹脂複合体を架橋することにより得られる。あるいは、本発明の架橋樹脂複合体は、上記(a)の方法または(c)の方法により製造された架橋性樹脂複合体を、別の支持体に熱プレスによって積層させ、該支持体上で加熱して架橋することによっても得ることができる。さらには、本発明の架橋樹脂複合体は、上記(b)の方法により製造された架橋性樹脂を支持体に熱プレスによって積層させ、該支持体上で加熱して架橋することによっても得ることができる。なお、架橋樹脂の複合体は複数積層したものであっても良い。
【0075】
この場合に用いられる支持体としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などの金属箔;プリント配線板;導電性ポリマーフィルム、他の樹脂フィルムなどのフィルム類;などが挙げられる。また、支持体としてプリント配線板を用いると、多層プリント配線板を製造することができる。銅箔などの金属箔やプリント配線板上の導電層は、その表面が、シランカップリング剤、チオール系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、各種接着剤などで処理されているものが好ましい。これらのうちシランカップリング剤で処理されているものが特に好ましい。
【0076】
このようにして得られる本発明の架橋体および架橋樹脂複合体は、高周波特性、耐熱性および冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れるものであるため、高周波基板材料として広く好適に用いることができる。具体的には、本発明の架橋体および架橋樹脂複合体は、通信機器用途等のマイクロ波またはミリ波等の高周波回路基板に好適に用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例、および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、および比較例における「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。
また、試験、評価は下記によった。
【0078】
(1)耐クラック性
積層板について、−40℃〜+150℃の温度範囲で所定回数の冷熱衝撃試験を行い、冷熱衝撃試験後の積層板の外観観察を目視にて行い、以下の基準に従って耐クラック性を評価した。なお、冷熱衝撃試験は、冷熱衝撃試験装置(エスペック社製、型番;TSA−71H−W)により行った。
A:300サイクル終了後のサンプルにおいて、クラックの発生が確認されなかった。
B:200サイクル終了後のサンプルにおいて、クラックの発生が確認されなかった。
C:200サイクル終了後のサンプルにおいて、クラックの発生が確認された。
D:100サイクル終了後のサンプルにおいて、クラックの発生が確認された。
(2)ガラス転移温度(Tg)
積層板を構成する架橋樹脂のガラス転移温度(Tg)を、動的粘弾性分析(DMA法)の損失正接のピーク温度から求め、以下の基準に従って、架橋樹脂の耐熱性を評価した。
A:ガラス転移温度が155℃以上
B:ガラス転移温度が150℃以上、155℃未満
C:ガラス転移温度が150℃未満
(3)はんだ耐熱性
積層板を2cm×2cmに切り出すことにより試験片を調製し、得られた試験片を用いて、260℃のはんだ浴に10秒間浸漬し、これを引き上げて室温で60秒間放置する操作を1サイクルとするヒートサイクル試験を3サイクル行い、試験片の形状変化を観察し、以下の基準に従ってはんだ耐熱性を評価した。
○:試験片に、ふくれが発生しなかったもの
×:試験片に、ふくれが発生したもの
(4)誘電正接(tanδ)
積層板について、インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー社製、型番号E4991A)を用いて20℃で周波数1GHzにおける誘電正接(tanδ)を容量法にて測定し、以下の基準で評価した。
A:0.0018以下
B:0.0018超
【0079】
実施例1
ガラス製フラスコ中で、ベンジリデン(1,3−ジメチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させて触媒液を調製した。これとは別に、ポリエチレン製の瓶に、ノルボルネン系モノマーとしてテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(TCD)80部、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(MTF)20部を入れ、ここに連鎖移動剤としてアリルメタクリレート2.2部、架橋剤としてジ−t−ブチルペルオキシド(1分間半減期温度186℃)1.2部、シリカ(平均粒子径0.5μm、シランカップリング剤処理品、アドマテックス社製)100部、および架橋ゴム粒子として架橋スチレン−ブタジエンゴム粒子(Narpow VP−108、ゲル含有量98重量%、平均粒子径100nm)30部を加えて混合することによりモノマー液を調製した。そして、得られたモノマー液に、上記にて調製した触媒液を、ノルボルネン系モノマー100g当たり0.12mLの割合で加えて攪拌し、重合性組成物を調製した。
【0080】
次いで、得られた重合性組成物100部をポリエチレンナフタレートフィルム(タイプQ51、厚み75μm、帝人デュポンフィルム社製)の上に流延し、その上にガラスクロス(品番2116、厚み92μm)を敷いて、さらにその上に上記重合性組成物80部を流延した。そして、その上からさらにポリエチレンナフタレートフィルムを被せて、ローラーを用いて重合性組成物をガラスクロス全体に含侵させた。次いで、これを150℃に熱した加熱炉中で、1分間加熱し、重合性組成物を塊状重合させることにより、厚さ0.13mmのプリプレグを得た。
【0081】
次いで、得られたプリプレグを100mm角の大きさに切り出し、ポリエチレンナフタレートフィルムを剥離し、これを8枚重ねて、この最外部両面に電解銅箔(Type−F0 シランカップリング剤処理品、古河サーキットフォイル)を積層し、熱プレスにて、3MPa、200℃の条件で15分間加熱圧着し、積層板を作製した。そして、得られた積層板について、上記方法に従い、耐クラック性、ガラス転移温度(Tg)、はんだ耐熱性、および誘電正接の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
実施例2
架橋スチレン−ブタジエンゴム粒子の配合量を30部から50部に変更した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグおよび積層板を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
実施例3
架橋スチレン−ブタジエンゴム粒子30部の代わりに、架橋シリコーンゴム粒子(Narpow VP−601A、ゲル含有量98重量%、平均粒子径150nm)30部を使用した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグおよび積層板を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
比較例1
架橋スチレン−ブタジエンゴム粒子を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、プリプレグおよび積層板を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
比較例2
架橋スチレン−ブタジエンゴム粒子30部の代わりに、液状ポリブタジエンゴム(PO−110、日本ゼオン社製、ゲル含有量0重量%)5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグおよび積層板を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
比較例3
液状ポリブタジエンゴムの配合量を5部から20部に変更した以外は、比較例2と同様にして、プリプレグおよび積層板を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
比較例4
架橋スチレン−ブタジエンゴム粒子30部の代わりに、液状シリコーン(KF−50、信越化学工業社製、ゲル含有量0重量%)5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグおよび積層板を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

表1中、「TCD」は、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンであり、「MTF」は、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエンである。
【0089】
表1に示すように、重合性組成物に、架橋ゴム粒子を配合することにより、得られる積層板は、冷熱衝撃試験での耐クラック性および耐熱性に優れ(ガラス転移温度が高く、はんだ耐熱性が良好である)、さらには優れた高周波特性(誘電正接が低く抑えられている)を有するものとなる結果となった(実施例1〜3)。
これに対して、架橋ゴム粒子を配合しなかった場合、および架橋ゴム粒子の代わりに液状ブタジエン5部を用いた場合には、冷熱衝撃試験での耐クラック性に劣る結果となった(比較例1,2)。
また、液状ブタジエンの配合量を20部に増やした場合には、冷熱衝撃試験での耐クラック性および耐熱性に劣る結果となった(比較例3)。
さらに、架橋ゴム粒子の代わりに液状シリコーンゴムを用いた場合には、冷熱衝撃試験での耐クラック性、耐熱性および高周波特性の全てに劣る結果となった(比較例4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルボルネン系モノマー、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤、架橋剤および架橋ゴム粒子を含む重合性組成物。
【請求項2】
前記架橋ゴム粒子の平均粒子径が10〜2,000nmである請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記架橋ゴム粒子の含有割合が、前記ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、0.1〜100重量部である請求項1または2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記架橋ゴム粒子のゲル分が、50〜99.9重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の重合性組成物を塊状重合してなる架橋性樹脂。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の重合性組成物を支持体に塗布または含浸し、塊状重合してなる架橋性樹脂複合体。
【請求項7】
請求項5に記載の架橋性樹脂を架橋してなる架橋体。
【請求項8】
請求項7に記載の架橋体と支持体とを含む架橋樹脂複合体。

【公開番号】特開2010−168487(P2010−168487A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13326(P2009−13326)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】