説明

金属ケイ素窒化物の被着方法

【課題】金属アミド、ケイ素前駆体及び窒素源ガスガスを前駆体として用いてプラズマ雰囲気下で循環式膜被着によって金属ケイ素窒化物膜を形成するための方法を提供する。
【解決手段】金属アミド前駆体をパルス送りする工程、未反応金属アミドをパージ除去する工程、プラズマ雰囲気下で反応チャンバ内に窒素源ガスを導入する工程、未反応窒素源ガスをパージ除去する工程、ケイ素前駆体をパルス送りする工程、未反応ケイ素前駆体をパージ除去する工程、プラズマ雰囲気下で反応チャンバ内に窒素源ガスを導入する工程、及び未反応窒素源ガスをパージ除去する工程を含む被着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属アミド、ケイ素前駆体及び窒素源ガスを前駆体として用いプラズマ雰囲気下で循環式膜被着により金属ケイ素窒化物膜を形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相変化メモリー(PRAM)デバイスは、非晶質状態と結晶状態の間で電気的に切換えを行なうことのできる相変化材料を使用する。かかる利用分野のために適した標準的な材料としては、ゲルマニウム、アンチモン、テルルといったようなさまざまなカルコゲニド元素が挙げられる。相変化を誘発するためには、ヒーターによりカルコゲニド材料を加熱しなくてはならない。窒化チタン(TiN)、窒化アルミニウムチタン(TiAlN)、窒化ケイ素チタン(TiSiN)、窒化ケイ素タンタル(TaSiN)などといったような数多くの潜在的な加熱用材料が存在する。
【0003】
これらの膜を作製するための広く研究されてきた被着技術は、物理気相成長(PVD)、すなわちスパッタリング、そして一般に有機金属前駆体を用いる化学気相成長(CVD)技術である。半導体デバイスが小さくなるにつれて、加熱用材料をデバイス集積化の設計に応じて高アスペクト比構造をもつ基材上に被着させることができる。
【0004】
スパッタリング法は均質な厚みをもつ膜を形成するには不適切である、というのが一般的な考えである。CVDは標準的に、均質な膜厚を形成するために使用されるが、デバイスの高アスペクト比構造において良好なステップカバレッジ必要条件を満たすのには充分でない。被着された金属窒化物膜は、特に金属窒化物膜を化学的に被着させるのにアルキルアミド金属前駆体を使用する場合に、気体アルキルアミド金属化合物とアンモニアガスとの反応に起因してステップカバレッジがよくないことがわかっている。前駆体が基材上に同時に供給される従来の化学被着法と異なり、前駆体が基材上に逐次的に供給される原子層堆積(ALD)は、自己制限的な反応制御という独特の特性のため、高アスペクト比構造においても、均一な厚みの膜用に期待できる技術であると考えられている。
【0005】
ALDは、前駆体と基材の表面の間でのみ化学反応を起こさせる。ALD技術を用いて金属ケイ素窒化物膜を形成するための研究に対する関心が高まっている。それらの一つは、N2/H2プラズマ雰囲気下で金属ハロゲン化物前駆体とシランを用いて金属ケイ素窒化物膜をいかにして作製するかである。プラズマを利用する必要性があることから、それはプラズマ原子層堆積(PEALD)と呼ばれる。金属ケイ素窒化物膜を形成するためのALDのもう一つの例は、金属アミド前駆体、シラン及びアンモニアを使用することである。金属塩化物前駆体、シランといったケイ素源、及びアンモニアを使用すると、最高約1000℃の非常に高温のプロセスを必要とし、そのためこのプロセスはある種の基材にとって望ましくないものになっている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、金属ケイ素窒化物膜を形成するために金属アミド前駆体、ケイ素前駆体及び窒素源ガスを使用した場合、金属ハロゲン化物前駆体を用いたCVDよりもはるかに低い被着温度で膜を形成することができるということを発見した。同様に発明者らは、膜の循環式被着のためにプラズマを使用すれば、膜成長速度は著しく高まり、低い被着温度で成長可能な金属ケイ素窒化物膜を得ることができる、ということをも発見した。
【0007】
一つの態様において、本発明は、プラズマ雰囲気下での3成分金属ケイ素窒化物膜の循環式被着方法を提供する。
【0008】
もう一つの態様において、本発明は、プラズマ雰囲気下で好ましい前駆体を用いることによる膜の改良された循環式被着を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、膜の循環式被着によりプラズマ雰囲気下で金属アミド、ケイ素前駆体及び窒素源ガスを前駆体として用いることにより金属ケイ素窒化物膜を形成するための方法を提供する。
【0010】
一つの態様において、本発明による金属ケイ素窒化物膜を形成するための被着方法は、
a)反応チャンバ内に蒸気状態で金属アミドを導入し、次にこの金属アミドを、加熱されている基材上に化学吸着させる工程、
b)未反応金属アミドをパージして除去する工程、
c)金属(M)−N結合を作るためプラズマ雰囲気下で反応チャンバ内に窒素源ガスを導入する工程、
d)未反応窒素源ガスをパージして除去する工程、
e)N−Si結合を作るため反応チャンバ内に蒸気状態のケイ素前駆体を導入する工程、
f)未反応ケイ素前駆体をパージして除去する工程、
g)Si−N結合を作るためプラズマ雰囲気下で反応チャンバに窒素源ガスを導入する工程、及び
h)未反応窒素源ガスをパージして除去する工程、
を含む。
【0011】
また、本発明のサイクルにおいては、金属アミドをケイ素前駆体を導入後に導入することもできる。この場合、これらの工程は、e→f→g→h→a→b→c→dの順序で実施することができる。
【0012】
もう一つの態様において、本発明は、金属ケイ素窒化物膜を形成するための被着方法であって、
a)プラズマ雰囲気下で反応チャンバ内に蒸気状態で金属アミドを導入し、次にこの金属アミドを、加熱されている基材上に化学吸着させる工程、
b)未反応金属アミドをパージして除去する工程、
c)基材上に吸着された金属アミドとケイ素前駆体との間で結合を作るべくプラズマ雰囲気下で反応チャンバ内に蒸気状態でケイ素前駆体を導入する工程、
d)未反応ケイ素前駆体をパージして除去する工程、
を含む被着方法を提供する。
【0013】
上述の工程は、本方法の1つのサイクルを定義しており、このサイクルは、所望の厚みの金属ケイ素窒化物膜が得られるまで反復することができる。
【0014】
金属ケイ素窒化物膜は、標準的な熱ALDによって作製することができる。しかしながら、膜をプラズマ雰囲気下で被着する場合には、プラズマが反応物質の反応性を活性化させることから、金属ケイ素窒化物膜プロセスの膜成長速度を桁外れに速くすることができる。
【0015】
例えば、PEALD法によって得られるTiSiN膜のシート抵抗は、熱ALDによって得られるものよりも約2桁低くなる。更に、PEALD法は膜の特性を増強し、プロセスウインドウを広くすることがわかっている。こうして、目的とする利用分野のために必要な膜の仕様を満たすことが容易になる。
【0016】
本発明の一つの態様においては、本被着方法のための基材上への最初の前駆体は金属アミドである。金属アミド用の金属成分として適し、半導体の製造において一般的に用いられる金属としては、チタン、タンタル、タングステン、ハフニウム、ジルコニウムなどがある。本被着方法において使用するのに適した金属アミドの具体的例としては、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(TDEAT)、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン(TEMAT)、tert−ブチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(TBTDET)、tert−ブチル−イミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TBTDMT)、tert−ブチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(TBTEMT)、エチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(EITDET)、エチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(EITDMT)、エチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(EITEMT)、tert−アミルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TAIMAT)、tert−アミルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(TAIEAT)、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル(PDMAT)、tert−アミルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(TAIEMAT)、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(BTBMW)、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジエチルアミノ)タングステン(BTBEW)、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(エチルメチルアミノ)タングステン(BTBEMW)、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(TDMAZ)、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(TDEAZ)、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(TEMAZ)、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(TDMAH)、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAH)、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAH)、及びそれらの混合物からなる群から選択される金属アミドが挙げられる。より好ましくは、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)を金属アミドとして使用することができる。
【0017】
金属アミドは、所定のモル体積で、所定の時間、反応チャンバに供給される。標準的には、金属アミドはCVD又はALDチャンバに約0.1〜500秒間供給され、表面を飽和させるよう材料が充分に吸着されるようにする。被着中、金属アミドは好ましくは気相にあり、約0.1〜1000マイクロモルの範囲内の所定のモル体積で供給される。
【0018】
本発明に適したケイ素前駆体は、好ましくは、N−H結合及びSi−H結合の両方を含有し得る。
【0019】
ケイ素前駆体は、下式(1)のモノアルキルアミノシランと下式(2)のヒドラジノシランからなる群から選択される1種以上の化合物であることができ、
(R1NH)nSiR2m4-n-m (1)
(R32N−NH)xSiR4y4-x-y (2)
上記式中、R1〜R4は同じか又は異なるものであり、アルキル、ビニル、アリル、フェニル、環状アルキル、フルオロアルキル及びシリルアルキルからなる群から独立して選択され、n=1、2、m=0、1、2、n+m≦3、x=1、2、y=0、1、2、x+y≦3である。
【0020】
上記の式における「アルキル」は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、そしてより好ましくは1〜6個の炭素原子を有する、所望により置換された、線形又は分岐炭化水素を意味する。
【0021】
本発明に適したモノアルキルアミノシラン及びヒドラジノシランは好ましくは、ビス(tert−ブチルアミノ)シラン(BTBAS)、トリス(tert−ブチルアミノ)シラン、ビス(イソプロピルアミノ)シラン、トリス(イソプロピルアミノ)シラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)シラン、トリス(1,1−ジメチルヒドラジノ)シラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)エチルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)イソプロピルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)ビニルシラン、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。より好ましくは、ビス(tert−ブチルアミノ)シラン(BTBAS)を使用することができる。
【0022】
従来、モノアルキルアミノシラン及びヒドラジノシランは、窒化ケイ素膜を被着するためにアンモニアの使用とは無関係に研究されてきた。「反応チャンバ」と呼ぶこともできる反応装置内にアンモニアが導入されることから、本発明は、金属ケイ素窒化物膜を作製するべく金属アミドとケイ素前駆体との組合せを更に増加させることができる。本発明に適した金属アミド及びモノアルキルアミノシランは、液体形態又は気相のいずれかで互いに反応することが知られている。従って、それらは従来のCVD技術で使用することはできない。
【0023】
ケイ素前駆体は、約0.1〜500秒という所定の時間、約0.1〜1000マイクロモルの所定のモル体積で反応装置内に導入される。ケイ素前駆体は金属アミドと反応し、基材の表面上に吸着されて、結果として金属−窒素−ケイ素結合によりケイ素窒化物を形成する。
【0024】
本発明に適した窒素ガス源は、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン及びその混合物からなる群から選択される適切な窒素前駆体であることができる。
【0025】
アンモニアといったような窒素ガス源は、例えば、約0.1〜1000秒間、約10〜2000sccmの流量で、反応装置内に導入される。
【0026】
未反応物質をパージ除去する工程で使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスであり、好ましくは、Ar、N2、He、H2及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0027】
一般に、Arといったようなパージガスは、例えば、約0.1〜1000秒間、約10〜2000sccmの流量で、反応装置内に供給され、それによりチャンバ内にとどまっている未反応材料及び副生物をパージする。
【0028】
本発明により生成される金属ケイ素窒化物は、窒化ケイ素チタン、窒化ケイ素タンタル、窒化ケイ素タングステン、窒化ケイ素ハフニウム、又は窒化ケイ素ジルコニウムであることができる。
【0029】
本発明で使用される被着法は、プロセス条件、特に被着温度に応じて、循環式化学気相成長法又は原子層堆積法でよい。
【0030】
ALDによる膜成長は、基材表面を異なる前駆体に交互に曝露することによって実施される。それは、前駆体を気相中で厳密に互いから分離した状態に保つという点で、CVDと異なっている。表面反応の自己制限的制御によって膜の成長が制御される理想的なALDウインドウにおいては、各々の前駆体の導入時間も被着温度も、表面が飽和されるならば成長速度に影響を及ぼさない。
【0031】
循環式CVD(CCVD)法は、ALDウインドウよりも高い前駆体が分解する温度範囲で実施可能である。いわゆる「CCVD」は、前駆体の分離に関して従来のCVDと異なっている。CCVDでは、各々の前駆体が逐次的に導入され完全に分離されているが、従来のCVDでは、全ての反応物質前駆体が反応装置に同時に導入され、気相内で互いに反応するようにされる。CCVD及び従来のCVDの共通点は、その両方が前駆体の熱分解に関係していることである。
【0032】
反応装置すなわち被着チャンバ内の基材の温度は、好ましくは約600℃未満、より好ましくは約500℃未満でよく、処理圧力は好ましくは約0.1Torr〜約100Torr、より好ましくは約1Torr〜約10Torrでよい。
【0033】
前駆体及び窒素源ガスを供給するそれぞれの工程は、3成分金属ケイ素窒化物膜の化学量論組成を変更するためそれらの供給時間を変更することによって実施することができる。
【0034】
プラズマ発生型プロセスは、プラズマを反応装置内で直接発生させる直接プラズマ発生型プロセス、又はプラズマを反応装置外で発生させて反応装置内に供給する遠隔プラズマ発生型プロセスを含む。
【0035】
本発明の第1の利点は、ALD法がプラズマにより支援され、このため被着温度がはるかに低くなり、従って熱の使用量を低下させることができる、という点にある。同時に、ALD法は、目的の利用分野で必要とされる膜特性の仕様を制御するためにより広いプロセスウインドウを得ることを可能にする。
【0036】
本発明の別の利点は、ケイ素源としてモノアルキルアミノシラン又はヒドラジノシランを利用することである。現在、金属ケイ素窒化物膜を形成するためにシラン、アンモニアガス及び金属アミドが研究されており、ここでシランは自然発火性のガスであり、潜在的に危険をはらんでいる。しかしながら、本発明のモノアルキルアミノシラン又はヒドラジノシランは自然発火性ではなく、従って使用にあたっての危険性は少ない。
【0037】
本発明の一つの好ましい態様では、プラズマ循環式被着を利用することができ、ここでは、金属アミド、ケイ素前駆体及び窒素源ガスのうちの前駆体としてテトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)、ビス(tert−ブチルアミノ)シラン(BTBAS)及びアンモニアが使用される。
【0038】
本発明の典型的な態様について以下に詳述する。
【0039】
前駆体キャニスタから反応チャンバまで接続するガスラインを70℃に加熱し、TDMAT及びBTBASの容器は室温に保つ。反応チャンバへの前駆体の注入タイプは、前駆体のパルス送りの間25sccmのアルゴンガスが金属アミド前駆体の蒸気を反応チャンバに搬送するバブリングタイプである。500sccmのアルゴンガスがこの処理の間、連続的に流れ、反応チャンバ処理圧力は約1Torrである。
【0040】
基材として酸化ケイ素ウエーハを使用し、その厚みは、膜のシート抵抗の測定時に下のシリコン層の干渉を完全に切り離すため1000Å超である。処理の間、反応チャンバ内のヒーターステージ上の加熱された酸化ケイ素ウエーハを最初にTDMATに曝露し、その後TDMAT前駆体が酸化ケイ素ウエーハの表面上に吸着する。アルゴンガスで、処理チャンバから未吸着の余剰のTDMATをパージ除去する。充分なArパージ後、アンモニアガスを反応チャンバ内に導入し、かくしてチャンバ内で直接プラズマを発生させる。プラズマにより活性化されたアンモニアは、基材上に吸着されたTDMATのジメチルアミノ配位子に置換わり、チタンと窒素との結合を形成する。後続するArガスがその後、未反応の余剰NH3をチャンバからパージ除去する。その後、チャンバ内にBTBASが導入され、窒素とケイ素の間の結合形成に寄与する。未吸着の余剰のBTBAS分子は、後続するArパージガスによりパージ除去される。そしてプラズマ発生条件のチャンバ内にアンモニアガスを導入し、BTBASの配位子に置換わりSi−N結合を形成する。アンモニアガスにより処理された表面が、後続するTDMAT導入のための新しい反応部位を提供する。未反応の余剰のアンモニアガスは、Arガスによりパージ除去される。上述の工程は、当該3化学物質プロセスのための標準的サイクルを規定している。この処理サイクルを、所望の膜厚を得るため数回反復することができる。
【0041】
PRAMデバイスの加熱用材料としてのTiSiN膜は、高い抵抗率、結晶化度の熱安定性、メモリー素子との材料相容性などといったような膜特性のさまざまな仕様を必要とする。被着温度、前駆体パルス時間及びRF出力といったようなプロセスパラメータは、所望の膜特性を満たすよう変更することができる。
【0042】
膜組成(Ti/Si原子%比)は、処理チャンバ内に供給されるTDMAT及びBTBASの量に依存する。TDMATとBTBASの量は、各前駆体のパルス時間及び前駆体キャニスタの温度を変えることによって変更することができる。
【実施例】
【0043】
以下、関連する例を用いて本発明について更に詳しく説明する。
【0044】
(例1) PEALDによる450℃での窒化ケイ素チタン(TiSiN)膜の作製
【0045】
サイクルは、さまざまなパルス時間の間25sccmの流量のArキャリアガスによりバブリングされるTDMAT、5秒間500sccmの流量のArパージガス、RFプラズマ発生中に5秒間100sccmの流量のアンモニアガス、5秒間500sccmの流量のArパージガス、さまざまなパルス時間の間25sccmの流量のArキャリアガスによりバブリングされるBTBAS、5秒間500sccmの流量のArパージガス、RFプラズマ発生中に5秒間100sccmの流量のアンモニアガス、及び5秒間500sccmの流量のArパージガス、を逐次的に供給することからなっていた。処理チャンバ圧力は約1.0Torrであり、ヒーター温度450℃は395℃のウエーハ温度に対応していた。
【0046】
各々の条件における合計前駆体流量を3.5秒と同じに保ちながら、TDMAT/BTBASのパルス時間をそれぞれ(0.5秒/3秒)、(1.75秒/1.75秒)及び(3秒/0.5秒)に変更した。ただし、5秒の飽和期間中のアンモニアパルス時間は一定に保ち、RF出力が50Wであるプラズマ発生型チャンバ内に直接100sccmのアンモニアを流入させた。このサイクルを100回以上反復した。
【0047】
図1〜3は、上述の試験の結果を示している。
【0048】
図1に示したように、TDMAT及びBTBASについての被着速度の結果によると、TDMATはTiSiN膜の形成においてBTBASよりも反応性が高かったように思われる。上記の条件についての抵抗率はそれぞれ25.3、3.4及び2.6mΩ・cmであった。ラザーフォード後方散乱分光(RBS)分析から、それぞれ1.3、2.5及び5.2のTi/Siが示された。
【0049】
同様に、図2に示したように、上述の条件についての被着速度は、それぞれ1.4、3.5及び6.7Å/サイクルであり、これは上記の条件がALD領域外にあることを反映していた。
【0050】
図3は、厚みが増大するにつれてシート抵抗が減少する傾向に対応する、サイクル数に応じたシート抵抗を示している。
【0051】
(例2) PEALDによる250℃での窒化ケイ素チタン(TiSiN)膜の作製
【0052】
ヒーター温度が250℃であるという点を除いて、サイクルは上述の例1と同じであった。250℃のヒーター温度は235℃のウエーハ温度に対応していた。
【0053】
図1及び2は、上述の試験の結果を例示する。
【0054】
図1に示したように、上述の条件についての低効率はそれぞれ915.1、123.5及び22.5mΩ・cmであり、RBS分析からそれぞれ1.3、1.6、及び2.1のTi/Si比が示された。
【0055】
同様に、図2に示したように、上述の条件についての被着速度は、それぞれ0.6、0.8及び1.1Å/サイクルであり、これは、上記の条件がALD条件内にあることを反映していた。換言すると、低い処理温度で成長させることのできる金属ケイ素窒化物膜を提供することができる。
【0056】
(例3) 熱ALDによる250℃での窒化ケイ素チタン(TiSiN)膜の作製
【0057】
サイクルは、さまざまなパルス時間の間25sccmの流量のArキャリアガスによりバブリングされるTDMAT、5秒間500sccmの流量のArパージガス、RFプラズマ発生なしで5秒間100sccmの流量のアンモニアガス、5秒間500sccmの流量のArパージガス、さまざまなパルス時間の間25sccmの流量のArキャリアガスによりバブリングされるBTBAS、5秒間500sccmの流量のArパージガス、RFプラズマ発生なしで5秒間100sccmの流量のアンモニアガス、及び5秒間500sccmの流量のArパージガス、を逐次的に供給することからなっていた。処理チャンバ圧力は約1.0Torrであり、250℃のヒーター温度は235℃というウエーハ温度に対応していた。
【0058】
各々の条件における合計前駆体流量を3.5秒と同じに保ちながら、TDMAT/BTBASのパルス時間をそれぞれ(0.5秒/3秒)、(1.75秒/1.75秒)及び(3秒/0.5秒)に変更した。ただし、5秒の飽和期間中のアンモニアパルス時間は一定に保ち、チャンバ内に直接100sccmのアンモニアを流入させた。このサイクルを100回以上反復した。しかし、酸化ケイ素基材上に膜は形成されなかった。
【0059】
以上の説明は本発明の好ましい態様を対象としてはいるが、本発明のこのほかの及び更なる態様をその基本的範囲から逸脱することなく考えることが可能であり、その範囲は特許請求の範囲により決定されるものである。
【0060】
上で説明したように、本発明は、膜の循環式被着のためにプラズマを用い、かくして膜の成長速度を著しく増大させ、かつ低い処理温度で成長させることのできる金属ケイ素窒化物膜を提供することができる。その上、本発明はプラズマを用いた膜の循環式被着のために最も適した前駆体化合物を使用していることから、膜の被着効率を最大限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】TDMAT及びBTBASを使用したTiSiN膜のプラズマ循環式被着時の450℃及び250℃の両方の温度での前駆体のパルス時間比及びTi/Si原子比による抵抗率を示すグラフである。
【図2】TDMAT及びBTBASを使用したTiSiN膜の金属ケイ素窒化物膜のプラズマ循環式被着の、450℃及び250℃の両方の温度での被着速度を示すグラフである。
【図3】450℃でTDMAT及びBTBASを用いたTiSiN膜のプラズマ循環式被着の被着サイクル数あたりのシート抵抗を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に金属ケイ素窒化物膜を形成するための被着方法であって、
a)反応チャンバ内に蒸気状態で金属アミドを導入し、次に該金属アミドを、加熱されている基材上に化学吸着させる工程、
b)未反応金属アミドをパージして除去する工程、
c)金属(M)−N結合を作るためプラズマ雰囲気下で反応チャンバ内に窒素源ガスを導入する工程、
d)未反応窒素源ガスをパージして除去する工程、
e)N−Si結合を作るため反応チャンバ内に蒸気状態のケイ素前駆体を導入する工程、
f)未反応ケイ素前駆体をパージして除去する工程、
g)Si−N結合を作るためプラズマ雰囲気下で反応チャンバに窒素源ガスを導入する工程、及び
h)未反応窒素源ガスをパージして除去する工程、
を含む被着方法。
【請求項2】
前記工程をe→f→g→h→a→b→c→dの順序で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基材上に金属ケイ素窒化物膜を形成するための被着方法であって、
a)プラズマ雰囲気下で反応チャンバ内に蒸気状態で金属アミドを導入し、次に該金属アミドを、加熱されている基材上に化学吸着させる工程、
b)未反応金属アミドをパージして除去する工程、
c)基材上に吸着された金属アミドとケイ素前駆体との間で結合を作るべくプラズマ雰囲気下で反応チャンバ内に蒸気状態でケイ素前駆体を導入する工程、
d)未反応ケイ素前駆体をパージして除去する工程、
を含む被着方法。
【請求項4】
金属アミドを、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(TDEAT)、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン(TEMAT)、tert−ブチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(TBTDET)、tert−ブチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TBTDMT)、tert−ブチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(TBTEMT)、エチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(EITDET)、エチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(EITDMT)、エチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(EITEMT)、tert−アミルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TAIMAT)、tert−アミルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(TAIEAT)、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル(PDMAT)、tert−アミルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(TAIEMAT)、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(BTBMW)、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジエチルアミノ)タングステン(BTBEW)、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(エチルメチルアミノ)タングステン(BTBEMW)、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(TDMAZ)、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(TDEAZ)、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(TEMAZ)、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(TDMAH)、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAH)、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAH)、及びそれらの混合物からなる群から選択する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ケイ素前駆体がN−H結合及びSi−H結合の両方を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ケイ素前駆体が、下式(1)のモノアルキルアミノシランと下式(2)のヒドラジノシランからなる群から選択される1種以上の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(R1NH)nSiR2m4-n-m (1)
(R32N−NH)xSiR4y4-x-y (2)
(上記式中、R1〜R4は同じか又は異なるものであり、アルキル、ビニル、アリル、フェニル、環状アルキル、フルオロアルキル及びシリルアルキルからなる群から独立して選択され、n=1、2、m=0、1、2、n+m≦3、x=1、2、y=0、1、2、x+y≦3である)
【請求項7】
ケイ素前駆体を、ビス(tert−ブチルアミノ)シラン(BTBAS)、トリス(tert−ブチルアミノ)シラン、ビス(イソプロピルアミノ)シラン、トリス(イソプロピルアミノ)シラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)シラン、トリス(1,1−ジメチルヒドラジノ)シラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)エチルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)イソプロピルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)ビニルシラン、及びそれらの混合物からなる群から選択する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
窒素ガス源を、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、及びそれらの混合物からなる群から選択する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
パージ除去の工程において使用するパージガスを、Ar、N2、He、H2及びそれらの混合物からなる群から選択する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
金属ケイ素窒化物が、窒化ケイ素チタン、窒化ケイ素タンタル、窒化ケイ素タングステン、窒化ケイ素ハフニウム、又は窒化ケイ素ジルコニウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
被着が循環式化学気相成長法である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
被着が原子層堆積法である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
基材の温度が600℃未満であり、処理圧力が0.1Torr〜100Torrである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前駆体及び窒素源ガスを供給するそれぞれの工程を、3成分金属ケイ素窒化物膜の化学量論組成を変更するべくそれらの供給時間を変更することにより実施する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
プラズマ発生型プロセスが、プラズマを反応装置内で直接発生させる直接プラズマ発生型プロセス、又はプラズマを反応装置外で発生させて反応装置内に供給する遠隔プラズマ発生型プロセスを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−7670(P2009−7670A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−159721(P2008−159721)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】