説明

金属表面をポリマーに富んだ組成物で被覆する方法

本発明は、金属表面を、更なる被覆の前に前処理するため又は処理するための水性組成物で被覆する方法に関し、ここで、この組成物は、水と共にa)加水分解可能な又は少なくとも部分的に加水分解されたシラン少なくとも1種、b)金属キレート少なくとも1種、c)有機塗膜形成成分少なくとも1種及びd)塗膜形成助剤としての長鎖アルコール少なくとも1種を含有し、この際、酸洗いされ、精製され又は/及び前処理されたきれいな金属表面をこの水性組成物と接触させ、金属表面上に皮膜を形成させ、これを引き続き乾燥させ、部分的に又は完全に皮膜化によって凝固させ、かつ場合によっては付加的に硬化させる、この際、乾燥され、場合により硬化もされた皮膜は、0.01〜10μmの範囲の層厚を有する。更に本発明は、相応する水性組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面を、シラン並びに金属キレート及び場合によっては有機塗膜形成成分を含有する水性組成物で被覆する方法に関する。更に本発明は、相応する水性組成物並びに本発明の方法で被覆された基材の使用に関する。
【0002】
従来最も頻繁に使用されている、金属、殊に金属ストリップの表面処理法又は塗装の前の前処理法は、クロム(III)−及び/又はクロム(VI)−化合物と種々の添加物とを一緒に使用することを基礎としている。このような方法に付随する毒物学的及び環境学的リスクに基づき、かつ更にクロム酸塩含有法の使用に関する予測可能な法的制限に基づき、従来から、金属表面処理の全ての分野でのこの方法のための選択が求められている。
【0003】
シロキサンに富んだ防食被覆を製造するための水性組成物中のシランの使用は、原則的には公知である。この被覆は効を奏しているが、主にシランを含有する水性組成物で被覆する方法は、部分的に使用困難である。被覆は必ずしも最適特性を有して形成されるものではない。更に、金属底層の上の非常に薄い透明なシラン被覆及びその「あれ」(Fehlstelle) を、肉眼で又は光学的補助手段を用いて充分に特徴付けることができるようにする問題が存在しうる。しかしながら得られるシロキサンに富んだ被覆の腐食防止性及びラッカー付着性は、屡々、必ずしも高くはなく、部分的には特定の用途のための適当な適用の場合には充分に高くもない。
【0004】
更に、シラン含有水性組成物の形態では、モノマー、オリゴマー及びポリマーの群から選択される少なくとも1種の成分の少ない又は多い添加量が効を奏している。このような組成物では、シラン添加物の種類及び量が、部分的にその結果にとって決定的に重要である。しかしながら、通常は、そのためのシランの添加量は比較的僅か−大抵は5質量%まで−であり、かつその場合に「カップリング剤」として作用し、この際に、殊に金属基材とラッカーとの間及び場合によっては顔料と有機ラッカー成分との間の付着補助作用が支配的であるが、従属して部分的に、僅かな架橋作用も現れうる。主として、シラン−添加剤が熱硬化性の樹脂系へ添加される。
【0005】
更、この方法で酸蝕(Beizangriff)及びそれに伴う樹脂層と金属表面との直接良好な接触を得るために、樹脂と無機酸とが混合される樹脂混合物も公知である。この組成物は、基材への処理液体(分散液)の接触の間のこの酸蝕に基づき汚染される欠点を有する。このことが処理液体中に金属を富化させ、かつこれにより制約された処理液体の化学的組成の永久的変化をもたらし、これによって腐食防止性が著しく損なわれる。これらの金属は、この酸蝕によって、処理すべき基材の金属表面から溶出される。
【0006】
もう一つの欠点は、特にアルミニウム又はアルミニウム含有合金の場合に、表面が暗色、事情によっては暗灰色〜無煙炭色に着色されうることである。この暗色着色した金属表面は、装飾的用途のためには使用できない。それというのも、この着色自体が美学的理由から不所望であるからである。この暗色着色は、層被覆の厚さに応じて種々の濃度で見える。この暗色化と称される効果はできるだけ避けるべきである。
【0007】
DE−A−19814605は、少なくとも1種の溶剤と共に少なくとも1種のシラン誘導体及びコロイド珪酸及び/又はコロイド珪酸塩を含有する金属表面用シーリング剤を記載している。実施例では、シランの含有率は20質量%(約200g/l)及びシリカゾルもしくはシリケートの含有率は10〜40質量%である。摩擦数の低下のためのワックス又は湿潤剤としての有機バインダー、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド又は変性ポリシロキサン又は他の記載されていない理由から更に挙げられていないバインダーの暗示的添加は、実施例では使用されていなかった。これらの実施例は、シランを超えてはポリマー物質を挙げていない。
【0008】
DE−A1−4138218は、鋼部材上のクロメート処理された又は不働態化された亜鉛含有層の後浸漬剤として使用するための、有機官能性ポリシロキサン並びにチタン酸エステル又は/及びチタンキレートを含有する溶液を教示している。
【0009】
US 5053081は、既に例えば燐酸塩層で前処理された金属表面を、3−アミノプロピルトリエトキシシランを含有し、かつこれに比べて明らかに少ない、テトラアルキルチタネート、ベータ−ジケトン及びアルカノールアミンを用いて製造されたチタンキレートを含有する後洗浄溶液で被覆する方法に関する。
【0010】
DE−A1−10149148は、有機塗膜形成成分、微細な無機粒子並びに潤滑剤又は/及び有機腐食防止剤をべースとする水性被覆組成物を記載しており、これは、クロム化合物の不存在にも関わらず、特にGalvalume(R)−鋼板上に耐食性、付着強度及び変形性の優れた結果をもたらすが、それにもかかわらず、なお、熱せき亜鉛メッキされた、電気亜鉛メッキされた、Galvalume(R)−被覆された又はGalfan(R)−被覆された金属ストリップ上の即ち、腐食に対して保護するのが困難である金属表面上の約1μmの層厚の有機膜は、不充分な耐食性を示した。この刊行物の原料及び被覆の組成、その成分並びに特性は、明らかにこの出願中で考慮される。
【0011】
本発明の課題は、技術水準のこれらの欠点を克服し、かつ、殊に金属ストリップに利用されるような高い被覆速度を得るためにも好適であり、充分に又は完全にクロム(VI)−化合物なしで使用可能であり、できるだけ無機酸も有機酸もなしで、かつできるだけ簡単に大工業的に使用可能でもある金属表面の被覆法を提案することである。殊に10μmよりも薄く、かつ殊に3μmよりも薄い乾燥膜厚のクロム酸塩不含の有機被覆の耐食性を、熱せき亜鉛メッキされた、電気亜鉛メッキされた又はGalfan(R)−被覆された金属ストリップ上の被覆にもクロム酸塩含有有機被覆と同等の耐食性を得させる程度に高める課題がある。
【0012】
意外にも、シラン含有水性組成物へのキレート少なくとも1種、殊にチタン−又は/及びジルコニウム−キレートの添加が、耐食性をもこれから形成される皮膜のラッカー付着性をも著しく改善することが発見された。この場合に通常は、有機腐食防止剤の添加−裸鋼の被覆の場合以外に−を省略することもできる。
【0013】
更に意外にも、少なくとも1種のシランを含有するが、有機ポリマーを含有しない水性組成物から形成される膜の耐食性は、なお少なくとも1種のキレート、殊にチタン−又は/及びジルコニウムキレートが添加される場合になお非常に明らかに改善され得ることが発見された。
【0014】
この課題は、殊にアルミニウム、鉄、銅、マグネシウム、ニッケル、チタン、錫、亜鉛の金属表面又はアルミニウム、鉄、銅、マグネシウム、ニッケル、チタン、錫又は/及び亜鉛を含有する合金の金属表面を、更なる被覆の前の前処理のための又は被覆すべき物体、場合によっては−殊にストリップ又はストリップ片−が被覆の後に変形される処理のための、充分に又は完全にクロム(VI)−化合物不含であってよい水性組成物で被覆する方法を用いて解決され、この方法は、この組成物が水と共に
a)加水分解可能な又は少なくとも部分的に加水分解されたシラン少なくとも1種、
b)金属キレート少なくとも1種、
c)水溶性の又は水分散された、3〜250の範囲の酸価を有する有機ポリマー又は/及びコポリマー少なくとも1種を有する有機塗膜形成成分少なくとも1種(この際、組成物の固体含分に対する有機塗膜形成成分の含有率は>45質量%である)及び
d)塗膜形成助剤としての長鎖アルコール少なくとも1種
を含有し、この際、酸洗いされ、精製され又は/及び前処理された、きれいな金属表面を水性組成物と接触させ、かつ金属表面上に膜を形成させ、これを引き続き乾燥させ、部分的に又は完全に皮膜化(Verfilmen)によって凝固させる(この際、これは固化し、かつ場合によっては付加的に硬化される)ことを特徴とし、
この際、乾燥され、かつ場合により硬化もされた膜は、硬化された膜の規定の面の剥離及び秤量により、又は例えばX−線蛍光分析及び相応する換算を用いる被覆の珪素含有率の測定により測定される0.01〜10μmの範囲の層厚を有する。
【0015】
更にこの課題は、更なる被覆の前の金属表面の前処理のため又はこの表面の処理のための水性組成物を用いて解決され、これは、この組成物が、水と共に
a)加水分解可能な又は少なくとも部分的に加水分解されたシラン少なくとも1種、
b)金属キレート少なくとも1種、
c)水溶性の又は水分散された、3〜250の範囲の酸価を有する有機ポリマー又は/及びコポリマーを する有機塗膜形成成分少なくとも1種及び
d)塗膜形成助剤としての長鎖アルコール少なくとも1種
を含有することを特徴とする。
【0016】
それぞれそれらから生じる反応生成物を包含するa)とb)との量比は、0.1:1〜10:1の範囲、特に好ましくは0.2:1〜8:1の量比、全く特別好ましくは0.3:1〜7:1の量比、殊に約0.4:1、0.6:1、0.8:1、1:1、1.2:1、1.6:1、2:1、3:1、4:1、5:1又は6:1であるのが有利である。
【0017】
それぞれそれらから生じる反応生成物を包含するシラン(類)及びキレート(類)のそれぞれの量は、相互に無関係に、ウエットフィルムに対して0.05〜5質量%、全く特別好ましくはそれぞれ相互に無関係に、0.08〜4質量%の量、殊にそれぞれ無関係に0.1、0.2、0.3、0.5、0.8、1、1.5、2、2.5、3又は3.5質量%の量が特に好ましい。
【0018】
それぞれそれらから生じる反応生成物を包含するシラン(類)及びキレート(類)のそれぞれの量は、相互に無関係に、固体含分に対して0.2〜15質量%、全く特別好ましくはそれぞれ相互に無関係に、0.3〜11質量%の量、殊に約それぞれ相互に無関係に0.5、0.8、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10又は10.5質量%の量が特に好ましい。
【0019】
水と相容性であるシラン少なくとも1種を選択するのが有利である、即ちシラン又は場合によりその加水分解生成物及び縮合生成物の少なくとも1種は、支障なく水性組成物の成分と混合可能であり、かつ、数週間に渡り保持可能であり、殊に閉じられた、一様でクレーターのない、「あれ」のないウエットフィルム及びドライフィルムを形成することを許容する。殊に選択されたキレート少なくとも1種と組み合わされて高い耐食性を可能とするシラン少なくとも1種が選択される。
【0020】
水性組成物の残りの成分の存在下に水性分散液中で数週間にわたる期間安定であり、高い耐食性を可能とするキレート少なくとも1種を選択するのが有利である。更に、少なくとも1種のシランも少なくとも1種のキレートも、一方でこれと接触される所定の金属表面と化学的に結合することができ、かつ場合により同様に後に施与すべきラッカーと化学的に結合することができる場合が有利である。少なくとも1種の金属キレートは、殊にAl、B、Ca、Fe、Hf、La、Mg、Mn、Si、Ti、Y、Zn、Zrの1種又は/及び少なくとも1種のランタニド、例えばCe又はCe−含有ランタニド混合物、特に好ましくはAl、Hf、Mn、Si、Ti、Y及びZrの群から選択されるのが有利である。
【0021】
主としてシラン及びキレートを含有する水性組成物並びにポリマー含有組成物の出発物質としての部分成分のコンセントレートは、20〜85質量%の範囲、殊に30〜80質量%の範囲の水分含有率を有するのが有利である。このコンセントレートは、それから生じる反応生成物を包含するシラン少なくとも1種を、1〜60質量%の範囲、殊に好ましくは3〜45質量%の範囲、全く特別好ましくは6〜35質量%の範囲、特に、8〜32質量%の範囲の、殊に約8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30又は32.5質量%の含有率で含有し、かつ、場合によってはそれから生じる反応生成物を包含するキレート少なくとも1種を、1〜50質量%の範囲、特に好ましくは2〜40質量%の範囲、全く特別好ましくは3〜30質量%の範囲、特に5〜25質量%の範囲で、殊に約7.5、10、12、14、16、18、20又は22.5質量%で含有するのが有利である。
【0022】
主としてシラン及びキレートを含有する水性組成物の浴組成物は、80〜99.9質量%の範囲、特に90〜99.8質量%の範囲、特に好ましくは94〜99.7質量%、特に96〜99.6質量%の範囲の、殊に約95、95.5、96、96.5、97、97.5、97.9、98.2、98.5、98.8、99.1又は99.4質量%の水含有率を有するのが有利である。
【0023】
この浴組成物は、それから生じる反応生成物を包含するシラン少なくとも1種を、0.01〜10質量%の範囲、特に好ましくは0.05〜7質量%の範囲、全く特別好ましくは0.1〜5質量%の範囲、特に0.2〜4質量%の範囲の、殊に約0.4、0.6、0.8、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6又は3.8質量%の含有率で、かつ、それから生じる反応生成物を包含するキレート少なくとも1種を、0.01〜10質量%の範囲、特に好ましくは0.05〜7質量%の範囲、全く特別好ましくは0.1〜5質量%の範囲、特に0.2〜4質量%の範囲の、殊に約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6又は3.8質量%の含有率で含有するのが有利である。
【0024】
シラン少なくとも1種及びそれぞれそれから生じる反応生成物、殊にチタン、ハフニウム又は/及びジルコニウムのそれを包含するキレート少なくとも1種の含有率は、少なくとも20質量%、殊に少なくとも30質量%、特に好ましくは少なくとも40質量%、全く特別に好ましくは少なくとも50質量%、特に、この組成物の固体含分の少なくともそれぞれ60、70、80、90、94、95、96、97、98又は99質量%になるのが有利である。特に好ましくは、この組成物は、本質的に水、それぞれ、シラン又は/及びその反応生成物少なくとも1種、場合によりそれから生じる反応生成物を包含するキレート少なくとも1種から成り、並びに場合によりアルコール、酸、例えばカルボン酸及び脂肪酸、例えば酢酸又は/及び鉱酸及び他のpH値に影響する物質、例えばアンモニア又は添加剤及び不純物の群から選択される物質を含有する。シラン及びキレートと一緒に添加剤を包含する他の化合物の全含有率は、通常はシラン及びキレートの固体含分の20質量%まで、有利には15質量%まで、特に好ましくは10質量%まで、全く特別好ましくは5質量%まで、特に1又は2質量%までである。
【0025】
それから生じる反応生成物を包含するシラン少なくとも1種とそれから生じる反応生成物を包含するキレート少なくとも1種との割合は特に0.8:1〜1.2:1の範囲内にありうるが、意外にも、この割合は、殊に0.2:1〜0.5:1又は2:1〜5:1の範囲内にありうることが明らかである。それというのも、特定の状況で、そこに至適を与えることができるからである。
【0026】
この浴組成物のpH値は、殊に3〜9.5の範囲、有利に3.5〜9の範囲、殊に4〜8.8の範囲内にあることができる。このpH値の調節のために、特に弱酸又は希強酸又は酸混合物を添加することができる。殊に少なくとも1種の酸、例えばカルボン酸又は脂肪酸、例えば酢酸又は/及び鉱酸及び他のpH値に影響する物質、例えばアンモニアを使用することができる。浴組成物は部分的に、この化学系が選択されたpH値を有し、安定に留まる場合には、酸添加によって約3.5だけ下回るpH値まで調節することができる。しかしながら、酸が中和のためのみに添加される場合には、酸蝕は行われないか又は殆ど行われない。溶剤、例えばアルコールをシランの安定化のために添加することも有利でありうる。
【0027】
この浴組成物を用いて形成される被覆は、典型的に0.01〜1μm又は0.6μmまでの範囲の、大抵は0.015〜0.25μmの層厚を有する。
【0028】
少なくとも1種のシランa)の添加は、基材と乾燥した保護膜との間に、並びに可能な後に塗布されるラッカー層又は/及び合成樹脂被覆への付着橋を生じさせ、これにより改良されたラッカー付着をも得させる利点を提供する。もう一つの利点は、好適なシラン/シロキサンが、乾燥保護膜内に付着橋類似の架橋を生じさせ、これが被覆結合の強度又は/及び可とう性並びに基材への付着性を著しく改善し、これにより多くのラッカー系で、改善された付着性を得させることである。
【0029】
主としてキレート及びシラン又は主として合成樹脂及びそれと共にキレート及びシランを含有する水性組成物は、それぞれ少なくとも1種のアシルオキシシラン、アルコキシシラン、少なくとも1個のアミノ基を有するシラン、例えばアミノアルキルシラン、少なくとも1個のコハク酸基又は/及び無水コハク酸基を有するシラン、ビス−シリル−シラン、少なくとも1個のエポキシ基を有するシラン、例えばグリシドオキシシラン、(メタ)アクリラト−シラン、多シリル化シラン、ウレイドシラン、ビニルシラン又は/及び少なくとも1種のシラノール又は/及び少なくとも1種の前記のシランに化学的に相当する組成のシロキサンを含有するのが有利である。シランの反応生成物は、原則的にこのような系中で公知であるので、個々には挙げない。従って、これらは、以後にも言及されないが、概念「シラン」に包含されている。
【0030】
例えば少なくとも1種のシランは、混合して屡々シラン含分に対して8質量%まで、有利には5質量%まで、特に好ましくは1質量%まで、全く特別好ましくは0.5質量%までの含有率でアルコール少なくとも1種、例えばエタノール、メタノール又は/及びプロパノールを含有していてよい。殊に、アミノ−シラン少なくとも1種、例えば、アルコキシ−シランを有しないか又は少なくとも1個を有するビス−アミノ−シラン、例えばトリアルコキシ−シリル−プロピル−テトラスルファ少なくとも1種又はビニルシラン少なくとも1種及びビス−シリル−アミノシラン少なくとも1種又はビス−シリル−ポリ硫黄シラン少なくとも1種及び/又はビス−シリル−アミノシラン少なくとも1種又はアミノシラン及び少なくとも1種及びマルチ−シリル−官能性シラン少なくとも1種から選択されたシラン少なくとも1種が混合して含有されていてよい。殊にC−原子2〜5の範囲の連鎖長を有し、ポリマーとの反応のために好適である官能基1個を有するようなシラン/シロキサンが有利である。
【0031】
有利に、この水性組成物は、次の群から選択されるシラン少なくとも1種を含有する:
グリシドオキシアルキルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、(トリアルコキシシリル)アルキルコハク酸シラン、アミノアルキルアミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、(エポキシシクロアルキル)アルキルトリアルコキシシラン、ビス−(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス−(トリアルコキシシリル)エタン、(エポキシアルキル)トリアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシシラン、ウレイドアルキルトリアルコキシシラン、N−(トリアルコキシシリルアルキル)アルキレンジアミン、N−(アミノアルキル)アミノアルキルトリアルコキシシラン、N−(トリアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、ポリ(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシラン、トリス(トリアルコキシシリル)アルキルイソシアヌレート、ウレイドアルキルトリアルコキシシラン及びアセトキシシラン。
【0032】
有利に、この水性組成物は次の群から選択されるシラン少なくとも1種を含有する:
3−グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタアクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸シラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、ガンマ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、ガンマ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、(3,4−エポキシブチル)トリエトキシシラン、(3,4−エポキシブチル)トリメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、N−ベータ−(アミノエチル)−ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ベータ−(アミノエチル)−ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ガンマ−トリエトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N−(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N−(ガンマ−トリエトキシシリルプロピル)ジメチレントリアミン、N−(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)ジメチレントリアミン、ポリ(アミノアルキル)エチルジアルコキシシラン、ポリ(アミノアルキル)メチルジアルコキシシラン、トリス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート、トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート及びビニルトリアセトキシシラン。
【0033】
この水性組成物(コンセントレート又は浴)中に含有されるシランは、モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー又は/及び加水分解反応、縮合反応又は/及び他の反応に基づく他の成分との反応生成物である。これらの反応は、特に溶液中で、乾燥時に又は場合によっては被覆の硬化時に行われる。ここで、本出願の意味における概念「シラン」は、シラン、シラノール、シロキサン、ポリシロキサン及びこれらの反応生成物又は誘導体に対して使用され、これらは、屡々「シラン−混合物」である。この場合に現れる屡々非常に複雑な化学反応及び非常に経費のかかる分析及び操作に基づき、それぞれ他のシラン又はその他の反応生成物を挙げることはできない。
【0034】
しかしながら、シランの含分中の少なくとも1種のフッ素不含シランの含分の代わりに、この含分はフッ素含有シランのみを、即ちフッ素不含シランの代わりの少なくとも1種のフッ素含有シランを示すことがありうる。
【0035】
更にこの水性組成物中には、次の群のフッ素含有シランから選択されるシラン少なくとも1種を含有するのが有利である:それぞれ少なくとも1種のアシルオキシシラン、アルコキシシラン、少なくとも1個のアミノ基を有するシラン、例えばアミノアルキルシラン、少なくとも1個のコハク酸基又は/及び無水コハク酸基を有するシラン、ビス−シリル−シラン、少なくとも1個のエポキシ基を有するシラン、例えばグリシドオキシシラン、(メタ)アクリラト−シラン、多シリル化シラン、ウレイドシラン、ビニルシラン又は/及び少なくとも1種のシラノール又は/及び少なくとも1種の化学的に前記のシランに相応する組成を有し、それぞれ1個の又は少なくとも1個のフッ素原子を有する基少なくとも1個を有するシロキサン又はポリシロキサン。
【0036】
更に、殊にこの水性組成物は、フルオロアルコキシアルキルシラン少なくとも1種、シラン1個当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13個のフッ素原子を有するシラン少なくとも1種、ペルフルオロ化シラン少なくとも1種、モノ−フルオロシラン少なくとも1種、エトキシシランをベースとする又は/及びメトキシシランをベースとするフルオロシラン少なくとも1種又は/及び少なくとも1個の官能基、例えばアミノ基を有する、殊に共縮合生成物としてのフルオロシラン少なくとも1種、例えばフルオロアルキルジアルコキシシラン、フルオロアミノアルキルプロピルトリアルコキシシラン、フルオロメタンスルホネート、フルオロプロピルアルキルジアルコキシシラン、トリフェニルフルオロシラン、トリアルコキシフルオロシラン、トリアルキルフルオロシラン又は/及びトリデカフルオロオクチルトリアルコキシシランを含有する。
【0037】
更にこの組成物は、少なくとも2個のアミノ基並びに少なくとも1個の非置換の又はフッ素置換されたエチル基又は/及び少なくとも1個の非置換の又はフッ素置換されたメチル基を有するフッ素含有シラン少なくとも1種を含有するのが特に有利である。
【0038】
有利に、この水性組成物中の、それから生じる反応生成物を包含するシラン少なくとも1種の含分は、0.1〜80g/l、殊に0.2〜50g/l、特に好ましくは0.3〜35g/l、全く特別好ましくは0.5〜20g/l、特に1〜10g/lである。
【0039】
有利に、塗膜形成成分に富んでいない又は富んだ浴組成物は、それからの他の成分と共に場合により生じる反応成分を包含するシランを、0.01〜10質量%の範囲、特に好ましくは0.05〜7質量%の範囲、全く特別好ましくは0.1〜5質量%の範囲、特に0.2〜4質量%の範囲の、殊に約0.4、0.6、0.8、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6又は3.8質量%の含有率で、かつ場合によってはそれから生じる反応生成物を包含するキレート少なくとも1種を、0.01〜10質量%の範囲、特に好ましくは0.05〜7質量%の範囲、全く特別好ましくは0.1〜5質量%の範囲、特に0.2〜4質量%の範囲、殊に約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6又は3.8質量%の含有率で有する。
【0040】
水性組成物中の、場合によりそれから生じる反応生成物を包含する金属キレートb)少なくとも1種の含分は、0.05〜80g/l、殊に0.1〜50g/lであるのが有利である。
【0041】
アセチルアセトネート、アセト酢酸エステル、アセトネート、アルキレンジアミン、アミン、ラクテート、カルボン酸、シトレート又は/及びグリコールをベースとするキレート錯体から選択される金属キレート少なくとも1種が有利である。
【0042】
次のものをベースとする金属キレート少なくとも1種が有利である:
アセチルアセトネート、アルカリラクテート、アルカノールアミン、アルキルアセトアセテート、アルキレンジアミンテトラアセテート、アンモニウムラクテート、シトレート、ジアルキルシトレート、ジアルキルエステルシトレート、ジアルキレントリアミン、ジイソアルコキシビスアルキルアセト酢酸エステル、ジイソプロポキシビスアルキルアセト酢酸エステル、ジ−n−アルコキシ−ビスアルキルアセト酢酸エステル、ヒドロキシアルキレンジアミントリアセテート、トリアルカノールアミン又は/及びトリアルキレンテトラミン。
【0043】
これらの金属キレートは、殊に水中の金属有機化合物の安定化並びに金属表面への又はラッカーへの又は相応して塗布される被覆への結合の安定化のために作用する。その場合に、これらは、それらが水性組成物中で低い反応性を有し、かつそれらが使用されるプロセス条件内で少なくとも部分的に分解され、かつ金属イオンが結合又は/及び化学反応のために遊離される場合に特に好適である。それというのも、それらが反応性であるすぎる場合には、有機金属化合物が他の化合物、例えばシランと早すぎて反応するからである。これらキレートは、有利に、親水性、加水分解安定で、水安定又は/及び安定な加水分解物を形成性である。水と、並びに更に選択された有機塗膜形成成分と相容性であり、先にシラン又はキレートに関して挙げられていると同じ特性を有するシラン又はキレートを選択するのが有利である。
【0044】
それぞれそれらから生じる反応生成物を包含するa)とb)との量比は、0.1:1〜10:1の範囲で、特に好ましくは0.2:1〜8:1の量比で、全く特別好ましくは0.3:1〜7:1の量比、殊に約0.4:1、0.6:1、0.8:1、1:1、1.2:1、1.6:1、2:1、3:1、4:1、5:1又は6:1の量比であるのが有利である。
【0045】
それらから生じる反応生成物を包含するシラン(類)及びキレート(類)のそれぞれの量は、シラン(類)及びキレート(類)を、相互に無関係に、ウエットフィルムに対して0.05〜5質量%の範囲で、全く特別好ましくはそれぞれ相互に無関係に0.08〜4質量%の量で、殊にそれぞれ相互に無関係に約0.1、0.2、0.3、0.5、0.8、1、1.5、2、2.5、3又は3.5質量%の量で含有するのが特に有利である。
【0046】
それらから生じる反応生成物を包含するシラン(類)及びキレート(類)のそれぞれの量は、シラン(類)及びキレート(類)を、相互に無関係に、乾燥物質含分に対して0.2〜15質量%の範囲、全く特別好ましくはそれぞれ相互に無関係に0.3〜11質量%の範囲の量で、殊にそれぞれ無関係に0.5、0.8、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10又は10.5質量%の量で含有するのが特に有利である。
【0047】
殊に比較的高い塗膜形成成分割合を有する組成物の場合には、それぞれそれらから生じる反応生成物を包含する成分[a)+b)]:c)の量比(ウエットフィルムに対する)は、特に好ましくは1:70又は2:70〜20:70、全く特別好ましくは3.5:70〜17:70、殊に約5:70、6:70、7:70、8:70、9:70、10:70、11:70、12:70及び14:70の量比である。この場合に、成分a)対成分b)又は逆が、他の成分に比べて約1.2〜4倍だけ高い含有率の値であるのが有利でありうる。2:70〜20:70のそれぞれそれらから生じる反応生成物を包含する成分[a)+b)]:c)の量比(固体含分に対する)が有利であり、全く特別好ましくは3.5:70〜17:70、殊に約5:70、6:70、7:70、8:70、9:70、10:70、11:70、12:70及び14:70の量比が特に有利である。
【0048】
しかしながら塗膜形成成分に富んでいない組成物の場合には、それぞれそれらから生じる反応生成物を包含する成分[a)+b)]:c)の量比(ウエットフィルムに対する)は、特に好ましくは≧0.2:7又は20:7までの範囲内に、全く特別好ましくは≧0.5:7又は12:7までの量比で又は≧1:7又は8:7までの量比であってよく、殊に約0.4:7、0.6:7、0.8:7、1.2:7、1.5:7、2:7、3:7、4:7、5:7、6:7、7:7、9:7、10:7、11:7、13:7、14:7及び16:7の量比であってよい。この場合に、成分a)対成分b)又はその逆で、他の成分に比べた含分の値が、1.2〜4倍だけ高い値であることが有利でありうる。
【0049】
特に好ましくは、それから生じる反応成分を包含する成分a)の含有率(固体含分に対する)は、0.4〜10質量%の範囲、全く特別好ましくは0.8〜8質量%の範囲にあり、殊に約1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、2.7、3、3.3、3.6、3.9、4.2、4.5、4.8、5.1、5.5、6、6.5、7又は7.5質量%である。
【0050】
特に好ましくは、それから生じる反応成分を包含する成分b)の含有率(固体含分に対する)は、0.3〜10質量%の範囲、全く特別好ましくは0.8〜8質量%の範囲にあり、殊に約1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、2.7、3、3.3、3.6、3.9、4.2、4.5、4.8、5.1、5.5、6、6.5、7又は7.5質量%である。
【0051】
殊に比較的高い塗膜形成成分割合を有する組成物の場合には、固体物質含分に対する成分c)の含有率は、特に好ましくは10〜95質量%の範囲、全く特別好ましくは30〜90質量%の範囲内にあり、殊に約35、40、45、50、60、63、66、69、72、75、78、81、84又は87質量%である。
【0052】
殊に比較的高い塗膜形成成分割合を有する組成物の場合には、固体含分に対する成分d)−少なくとも1種の長鎖アルコール−の含有率は、特に好ましくは0.01〜2質量%の範囲内、全く特別好ましくは0.1〜1質量%の範囲内にあり、殊に約0.12、0.15、0.18、0.21、0.24、0.27、0.30、0.33、0.36、0.39、0.42、0.45、0.48、0.51、0.55、0.60、0.65、0.7、0.75、0.8、0.9又は0.95質量%である。
【0053】
浴組成物又は/及びコンセントレートとして使用することのできる水性組成物中で、有機塗膜形成成分c)は、有利に0.1〜980g/lの含分で、特に好ましくは2〜600g/l、全く特別に好ましくは50〜550g/l、殊に150〜450g/lの範囲で含有されている。水100質量部に、有機塗膜形成成分2〜100部、特に好ましくは10〜60部、全く特別好ましくは15〜45部を添加するのが有利である。しかしながら、殊に塗膜形成成分に富んでいない組成物の場合には、有機塗膜形成成分c)は、浴組成物又は/及びコンセントレートとして作用することのできる水性組成物中に、有利に≧0.01又は98g/lまでの含分で、特に好ましくは≧0.1又は60g/lまでの範囲、全く特別好ましくは≧0.5又は50g/lまで、殊に≧2又は45g/lまでの範囲で含有することができる。
【0054】
有機塗膜形成成分の最大含有率は、事情によって殊に揮発性成分、例えば有機溶剤又は/及び残留モノマーを含有しないUV−硬化性系で又は僅かのみを含有する系で現れることがあり得る。本発明の方法のためには、主として又は単に乾燥時に皮膜化される又は場合により部分的に熱物理学的に硬化される被覆が特に好ましい。有利に、本出願における概念「コポリマー」には、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーも包含される。
【0055】
有機塗膜形成成分は、少なくともある割合の、3〜120の範囲、特に好ましくは3〜80の範囲、全く特別好ましくは4〜60の範囲の酸価を有するポリマー少なくとも1種又は/及びコポリマー少なくとも1種を含有するのが有利である。
【0056】
有機塗膜形成成分は、特に、少なくともある割合の−10〜+99℃、特に好ましくは0〜90℃の範囲の、殊に5℃からの最低造膜温度MFTを有するポリマー少なくとも1種又は/及びコポリマー少なくとも1種を含有し;この有機塗膜形成成分が初期に少なくとも2種の殊に熱可塑性のポリマー又は/及びコポリマーを含有する場合(それというのも熱可塑性成分は更なる処理及び反応の場合に少なくとも部分的にその熱可塑性特性を失うか又は低下することがありうるからである)には、−最低造膜温度を示すことができる限り−それらが5〜95℃の範囲の、殊に低くても10℃の最低造膜温度を有するのが全く特別有利であり、この場合に、これらポリマー又は/及びコポリマーの少なくとも1種が第2のこれらポリマー又は/及びコポリマー少なくとも1種に比べて、A)他の成分とは少なくとも20℃だけ異なる最低造膜温度を有し、B)他の成分とは少なくとも20℃だけ異なるガラス転移温度を有し、又は/及びC)他の成分とは少なくとも20℃だけ異なっている融点を有する。これら少なくとも2種の成分の1方が10〜40℃の範囲の造膜温度を有し、他方が45〜85℃の範囲の造膜温度を有するのが有利である。この場合に、長鎖アルコールは、ガラス転移温度を一時的に低下させ、かつ場合によってはいくらか相互に調整することを助けることができる。適用後にこの長鎖アルコールは逃失することができ、次いで適用の間よりも高いガラス転移温度を有する膜を残すことができる。従って、乾燥された皮膜は、柔らかすぎることも粘稠すぎることもない。屡々、この合成樹脂のガラス転移温度又は融点は、ほぼ造膜温度の範囲内に、即ち大抵は0〜110℃の範囲内にある。
【0057】
他の有利な1実施形では、塗膜形成成分の少なくとも1部分が本質的に同じ又は/及び類似のTgのガラス転移温度Tgを有する有機塗膜形成成分の混合物を使用することができる。この場合に、有機塗膜形成成分の少なくとも一部分が10〜70℃の範囲、全く特別好ましくは15〜65℃の範囲、殊に20〜60℃の範囲内のガラス転移温度Tgを有するのが特別好ましい。有機塗膜形成成分は、−10〜99℃の範囲、特に好ましくは0〜90℃の範囲の、殊に5℃から又は10℃からの最低造膜温度MFTを有するポリマー少なくとも1種又は/及びコポリマー少なくとも1種を少なくともある割合で含有するのが有利である。この場合に、むしろ全てでなく少なくとも2種の有機塗膜形成成分が、この温度範囲の最低造膜温度を有する(最低造膜温度を示すことができる限り)場合が特に有利である。
【0058】
全ての塗膜形成成分が乾燥時に皮膜化する場合が特に有利である。水性組成物に少なくとも80質量%の、殊に少なくとも90質量%の熱可塑性特性を有する合成樹脂を添加する場合が特に有利である。
【0059】
有利に、有機塗膜形成成分は、それぞれ少なくとも1種の溶液、分散液、乳液、マイクロエマルジヨン又は/及び懸濁液の形の成分(これらは水性組成物に添加される)少なくとも1種から形成される。ここで、概念「分散液」には、下位概念「乳液、溶液、マイクロエマルジヨン及び懸濁液」も包含される。
【0060】
合成樹脂の酸価は、好ましくは3〜100、特に好ましくは3〜60又は4〜50である。殊にこの水性組成物に、3〜50の範囲の酸価を有するコポリマーを添加する。場合により、有機塗膜形成成分の添加すべき成分は、既に部分的に中和されている。有機塗膜形成成分は、3〜80の範囲の酸価を有するコポリマー少なくとも1種をある割合で、殊に添加される合成樹脂の少なくとも50質量%を含有するのが有利である。酸価の高い範囲では、通常は、塗膜形成成分をカチオン的、アニオン的又は/及び立体的に安定化する必要はない。しかしながら、低い酸価の場合には、このような安定化が屡々必要である。その場合には、既に(部分−)安定化された合成樹脂又はそれらの混合物を使用することが有利である。
【0061】
この水性組成物は、少なくとも1種の合成樹脂、例えば有機のポリマー、コポリマー又は/及びこれらの混合物、殊にアクリレート、エチレン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコンポリエステル、エポキシド、フェノール、スチレン、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド又は/及びビニルをベースとする合成樹脂を含有するのが有利である。有機塗膜形成成分は、有利に、少なくとも1種のポリマー又は/及び少なくとも1種のコポリマーからの合成樹脂混合物であってよく、これは、それぞれ相互に無関係に、アクリレート、エポキシド、エチレン、尿素−ホルムアルデヒド、フェノール、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン、スチレンブタジエン又は/及びビニルをベースとする合成樹脂を含有する。この場合に、これは、カチオン的、アニオン的又は/及び立体的に安定化された合成樹脂又はポリマー又は/及びそれらの分散液又はむしろそれらの溶液であってもよい。本出願における概念「アクリレート」には、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸、メタクリル酸エステル及びメタクリレートが包含される。
【0062】
有機塗膜形成成分は、有利に:
アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−コポリマー、アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−スチレン−コポリマー、アクリル酸エステル、場合により遊離の酸又は/及びアクリロニトリルを有するアクリル酸エステル−メタクリル酸エステル、エチレン−アクリル−混合物、エチレン−アクリル−コポリマー、エチレン−アクリル−ポリエステル−コポリマー、エチレン−アクリル−ポリウレタン−コポリマー、エチレン−アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−コポリマー、エチレン−アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−スチレン−コポリマー、エチレン−アクリル−スチレン−コポリマー、遊離カルボキシル基を有するポリエステル樹脂とメラミン−ホルムアルデヒド樹脂との組合せ物、アクリレート及びスチレンをベースとする合成樹脂混合物又は/及びコポリマー、スチレンブタジエンをベースとする合成樹脂混合物又は/及びコポリマー、アクリレートとエポキシドとからの合成樹脂混合物又は/及びコポリマーと、
アクリル−変性カルボキシル基含有ポリエステルとメラミン−ホルムアルデヒド及びエチレン−アクリル−コポリマーとを一緒にしたもの、ポリカーボネート−ポリウレタン、ポリエステル−ポリウレタン、スチレン、スチレン−酢酸ビニル、酢酸ビニル、ビニルエステル又は/及びビニルエーテルを含有することができる。
【0063】
しかしながら、この有機塗膜形成成分は、有利に、合成樹脂として、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリビニルピロリドン又は/及びポリアスパラギン酸をベースとする有機ポリマー、コポリマー又は/及びそれらの混合物、殊に燐含有ビニル化合物とのコポリマーを含有することもできる。この水性組成物に導電性ポリマーを添加するのも有利である。
【0064】
アクリレートをベースとするか又はエチレン−アクリル酸をベースとする60〜956℃の範囲の融点を有する合成樹脂又は20〜160℃の範囲、殊に60〜120℃の範囲の融点を有する合成樹脂が全く特別好ましい。
【0065】
有利に、添加される有機塗膜形成成分の少なくとも30質量%、特に好ましくは少なくとも50質量%、全く特別好ましくは少なくとも70質量%、特に少なくとも90又は少なくとも95質量%が、皮膜化可能な熱可塑性樹脂から成っていることができる。更に、この有機塗膜形成成分は、事情によっては、残留含分、それぞれ少なくとも1種のモノマー、オリゴマー、乳化剤、分散用の他の添加剤、硬化剤、光重合開始剤又は/及びカチオン重合可能な物質を含有することもできる。モノマー、オリゴマー、乳化剤、分散用の他の添加剤の含分は、大抵は5質量%より少なく、屡々2質量%より少なく、場合によっては1質量%より少ない。硬化剤及び相応して場合により添加もされる架橋可能な物質の組成並びにそのための相応する手段は原則的に公知である。
【0066】
添加される合成樹脂の分子量は、少なくとも1000uの範囲、特に好ましくは少なくとも5000u、全く特別好ましくは20000〜200000uの範囲内にあるのが有利である。水性組成物に添加される有機塗膜形成成分の個々の熱可塑性成分は、20000〜200000uの範囲、殊に50000〜150000uの範囲内の分子量を有するのが有利である。
【0067】
有利に、この有機塗膜形成成分は、少なくとも40質量%、特に好ましくは少なくとも55質量%、全く特別に好ましくは少なくとも70質量%、特に少なくとも85質量%、殊に少なくとも95質量%の高分子量ポリマーから成ることができる。殊に、有機塗膜形成成分の少なくとも80質量%が高分子量ポリマーから成っている場合には、大抵は、本発明による被覆の優れた特性を得るために、熱的又はラジカル的架橋のための硬化剤、例えばイソシアネート又は光重合開始剤、例えばベンゾフェノン並びに相応して架橋可能な合成樹脂を添加する必要がない。それというのも、この皮膜化によって、架橋を実施することなしに、固くて、高価な連続皮膜を形成することができるからである。
【0068】
殊に乾燥時に行われる皮膜化の場合には、ポリマー及び塗膜形成助剤の選択が好適であり、かつ好適な条件下に操作される場合に、有機マイクロ粒子が互いに隣接して沈積し、凝固して孔のない連続皮膜になる。当業者は、これら物質群及び操作条件に原則的に精通している。実施例は、この皮膜が特に0.5〜3μmの範囲の薄い層厚にも関わらず、極めて高価な特性を有することができることを立証している。本出願人の知識によれば、従来は、主として皮膜化されたポリマーを含有する、このような高いラッカー付着性及び耐食性の金属ストリップの被覆のための、4μmより薄い乾燥膜層厚を有する本質的に有機のクロム酸塩不含の被覆は、文献に記載されていない。本発明による被覆は、クロム酸塩含有有機被覆と少なくとも等価である。
【0069】
このような皮膜の場合には主要な乾燥は既に数秒内に実施されれるが、最終乾燥は数日かかることがある。この場合に事情によって、熱的又はラジカル的架橋が現れない場合には、この硬化は最終乾燥−及び硬化状態に達するまでに数週間かかることがあり得る。必要な場合には、この硬化を、付加的に、例えばUV−線照射による又は加熱による結果として架橋を促進又は補強することができるか又は/及びいくらか、例えば遊離NCO−基−含有化合物の添加又はそれとの反応により又はヒドロキシル基含有ポリマーのヒドロキシル基との反応により促進又は強化することもできる。
【0070】
被覆を充分に又は完全に、乾燥及び皮膜化によって硬化させるのが有利である。しかしながら選択的に、被覆を部分的に、乾燥及び皮膜化によって並びに部分的には化学線照射、カチオン重合又は/及び熱的架橋によって硬化又は完全硬化させることもできる。この場合には、水性組成物に、場合により少なくとも1種の光重合開始剤又は/及び少なくとも1種の硬化剤並びに相応する架橋可能な樹脂を添加する。
【0071】
水性組成物中の有機塗膜形成成分のpH値は、更なる化合物の添加なしに、通常は0.5〜12の範囲である。固体含分として主として合成樹脂及びシラン及びキレートも含有する水性組成物のpH値は、酸性又は塩基性範囲で操作されるかに応じて有利に1〜6又は6〜10.5の範囲内にあるが、特に好ましくは6.5〜9.5の範囲、全く特別有利には7〜9.2の範囲内にある。
【0072】
有機塗膜形成成分は、1実施変法では、特に水溶性合成樹脂のみを、殊に≦9のpH値を有する溶液中で安定であるものを含有するか又は/及び有機塗膜形成成分はヒドロキシル基を有する合成樹脂少なくとも1種を含有する。しかしながら、pH値が合成樹脂又はその混合物の貯蔵性に基づき低下されるべき場合には、殊にその他は使用準備のできた分散液のpH値を、例えば苛性ソーダの添加により再びアルカリ性範囲にすることも役に立ちうる。有機塗膜形成成分は、それが−場合によっては水溶性である合成樹脂のみ−殊に≦5のpH値を有する溶液中で安定であるものを含有するような組成であってもよい。
【0073】
合成樹脂の酸基は、アンモニア、アミン又はアルカノールアミン、例えばモルホリン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン又はトリエタノールアミンで又は/及びアルカリ金属化合物、例えば水酸化ナトリウムにより中和されているか又は中和されるのが有利である。この場合に、これらの添加物質は安定剤としての作用をする。
【0074】
皮膜化(Verfilmen)とは、高い有機物割合を有する物質、例えばポリマー分散液からの塗膜形成と理解され、この際、特にポリマー粒子は有利に室温で又は僅かに高い温度で均一な皮膜に移行する。この場合には、屡々比較的大きいポリマー粒子の溶融について言及される。この場合に、水性媒体からの皮膜化は、乾燥時に、かつ場合によっては、残留している塗膜形成助剤によるポリマー粒子の可塑化の下に行われる。この皮膜化は、熱可塑性ポリマー又はコポリマーの使用により又は/及び一時的可塑剤としての作用をする物質の添加によって改善することができる。塗膜形成助剤は、ポリマー粒子の表面を軟化してその融解を可能にする特別な溶剤としての作用をする。この場合に、可塑剤は一方でポリマー粒子上に長時間作用することができるように充分に長く水性組成物中に残留し、その後に蒸発し、かつこれによって皮膜から逃失する場合が有利である。更に、この乾燥プロセスの間に充分に長く残留水含分が存在する場合も有利である。好適な塗膜形成の場合には、透明な皮膜が形成されるが、乳白色又は全く粉末状の膜(これは障害のある塗膜形成の徴候である)は形成されない。できるだけ完全な塗膜形成のために、1表面上に適用されるウエットフィルムの温度は、最低造膜温度(MFT)よりも上である。それというのも、その場合にのみポリマー粒子は、融合するのに充分柔らかいからである。この場合には、特にこの可塑剤が水性組成物のpH値を変えないか又は殆ど変えない場合が特に有利である。この場合に、適当な塗膜形成助剤の選択は簡単ではなく、この場合には、屡々少なくとも2種の塗膜形成助剤からの混合物が必要である。殊に塗膜形成助剤としては、いわゆる長鎖アルコール、殊に炭素原子数4〜20を有するもの、例えばブタンジオール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、エチレングリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルグリコールプロピルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル又はポリプロピレングリコールエーテル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、トリメチルペンタンジオールジイソブチレート、ポリテトラヒドロフラン、ポリエーテルポリオール又は/及びポリエステルポリオールが有利である。皮膜化とは異なり、熱硬化性有機被覆を得るためには、通常は、低くても120℃の温度が架橋のために必要である。
【0075】
主としてキレート及びシラン又は主として合成樹脂及びそれと共にキレート及びシランを含有する組成物に関する本発明の方法では、この水性組成物中に、次の群から選択される成分e)少なくとも1種を含有することができる:
)直径0.005〜0.3μmの範囲の走査電子顕微鏡で測定される平均粒径を有する粒子形の無機化合物少なくとも1種、
)潤滑剤少なくとも1種、
)有機腐食防止剤少なくとも1種、
)防食顔料少なくとも1種、
)合成樹脂の中和又は/及び立体的安定化のための薬剤少なくとも1種、
)有機溶剤少なくとも1種、
)シロキサン少なくとも1種及び
)クロム(VI)−化合物少なくとも1種。
【0076】
粒子形の無機化合物e)として、微粉砕粉末、分散液又は懸濁液、例えば炭酸塩、酸化物、珪酸塩又は硫酸塩、殊にコロイド状又は/及び非晶質の粒子を添加するのが有利である。粒子形の無機化合物として、アルミニウム、バリウム、セリウム、カルシウム、ランタン、珪素、チタン、イットリウム、亜鉛又は/及びジルコニウムの化合物少なくとも1種をベースとする粒子を添加するのが有利である。粒子形の無機化合物として、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、二酸化セリウム、二酸化珪素、珪酸塩、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛又は/及び酸化ジルコニウムをベースとする粒子を添加するのが有利である。
【0077】
粒子形の無機化合物として、6〜200nmの範囲の平均粒径を有する粒子、特に好ましくは7〜150nmの範囲、全く特別好ましくは8〜90nmの範囲、なお極めて好ましくは8〜60nmの範囲、特に好ましくは10〜25nmの範囲の平均粒径を有する粒子を使用するのが有利である。これらの粒子は、ゲル又はゾルの形で存在することもできる。これらの粒子は、良好な分散を得るために、例えばアルカリ安定化されていてよい。粒子形の無機化合物の分散のための硼素の添加は不必要であったし、実施例中でも使用されていない。大きい粒子はむしろ薄板形又は長粒形を有することが有利である。
【0078】
少なくとも1種の粒子形の無機化合物は、浴組成物として又は/及びコンセントレートとして使用できる水性組成物中に、有利に0.1〜500g/lの含分で、特に好ましくは10〜200g/lの範囲、全く特別好ましくは30〜100g/l、特に3〜60g/lの範囲の含分で含有されている。水100質量部当たり粒子形の無機化合物少なくとも1種0.1〜50部、特に好ましくは0.5〜20部、全く特別好ましくは0.8〜10部を添加するのが有利である。粒子形の無機化合物とは、殊に本発明の被覆の透明性を得させるもの、即ち無色又は白色であるもの、例えば、金属表面の視覚的特徴をできるだけ誤ることなく可視に保持するために、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、珪酸塩、二酸化珪素、コロイド二酸化珪素、酸化亜鉛又は/及び酸化ジルコニウムが有利である。
【0079】
場合により添加もされうる高い導電性を有する粒子、例えば酸化鉄、隣化鉄、タングステン、亜鉛及び亜鉛合金の粒子を、溶接の用途のために、それらが場合により本発明の層からいくらか厚く突出するような平均粒径を有するように選択することもできる。
【0080】
水性組成物中の有機塗膜形成成分の含分と粒子形無機化合物の含分との比は、広範に変動可能であり;殊にこれは≦25:1であってよい。この比は有利に≧0.05:1又は15:1までの範囲、特に好ましくは≧0.2:1又は12:1までの範囲、全く特別好ましくは≧0.5:1又は10:1までの範囲、殊に≧1:1又は8:1までの範囲内にある。
【0081】
水性組成物中の少なくとも1種のシランの含分と粒子形の無機化合物の含分との比は、同様に広範に変動可能であり;殊に≦25:1であってよい。この比は、有利に≧0.01:1又は15:1までの範囲、特に好ましくは≧0.05:1又は8:1までの範囲、全く特別好ましくは≧0.08:1又は4:1までの範囲、殊に≧0.1:1又は2:1までの範囲にあるの。
【0082】
潤滑剤e)として、パラフィン、ポリエチレン及びポリプロピレンの群から選択されるワックス少なくとも1種、殊に酸化されたワックスが有利に使用され、この際、水性組成物中のワックスの含有率は、有利に、0.01〜5質量%の範囲、特に好ましくは0.02〜3.5質量%の範囲、全く特別好ましくは、0.05〜2質量%の範囲内にある。有利に、潤滑剤として使用されるワックスの融点は、40〜165℃の範囲、特に好ましくは50〜160℃の範囲、殊に120〜150℃の範囲内にある。120〜165℃の範囲の融点を有する潤滑剤に付加的に、45〜95℃の範囲の融点及び−20〜+60℃の範囲のガラス転移温度を有する潤滑剤を、殊に全固体含分の2〜30質量%、有利に5〜20質量%の量で添加することが特に有利である。後者は単独でも有利に使用することができる。
【0083】
ワックスは、水性又はカチオン的、アニオン的又は/及び立体的に安定化された分散液として使用するのが特に有利である。それというのも、その場合には、これは、水性組成物中で容易に均質に分散されて保持することができるからである。場合によっては同時に変形剤(Umformmittel)であってもよい潤滑剤少なくとも1種を、0.1〜25g/lの範囲の含分で、特に好ましくは1〜15g/l範囲の含分で水性組成物中に含有するのが有利である。しかしながら大抵は、本発明の被覆が処理層である場合にのみ、ワックス含有が有利である。それというのもラッカー塗装の場合の前処理層中のワックス含分は不利でありうるからである。殊に変形の場合に、被覆の摩擦係数の低下のために、潤滑剤又は/及び変形剤を添加することができる。このためには、特にパラフィン、ポリエチレン又は酸化されたポリエチレンが推奨される。
【0084】
有利に、潤滑剤として、少なくとも1種のワックスがエチレン及びアクリル酸を含有するポリマー混合物又は/及びコポリマー、例えばエチレン−アクリル酸−コポリマーと一緒に使用され、この際、場合によっては少なくとももう1種の合成樹脂が、殊に、ワックスとエチレン及びアクリル酸を含有するコポリマーとの量比0.02:1〜2:1、特に好ましくは0.05:1〜1:1、全く特別好ましくは0.1:1〜0.5:1で添加される。
【0085】
水性組成物(浴組成物)中の有機塗膜形成成分の含分と潤滑剤の含分との比は、広範に変動でき;殊にこれは≧2:1であってよい。この比は3:1〜50:1の範囲、特に好ましくは10:〜20:1の範囲にあるのが有利である。
【0086】
有利に、水性組成物は、少なくとも1種の有機腐食防止剤e)、殊にアミン、有利にアルカノールアミン少なくとも1種、特に長鎖アルカノールアミン、TPA−錯体少なくとも1種、例えば酸アダクト−4−オキソ−4−p−トリル−ブチレート−4−エチルモルフィン少なくとも1種、アミノカルボキシレートの、5−ニトロ−イソフタル酸又はシアン酸の亜鉛塩少なくとも1種、脂肪酸と一緒のポリマーアンモニウム塩少なくとも1種、スルホン酸の、例えばドデシル−ナフタリンスルホン酸の金属塩少なくとも1種、トルエンプロピオン酸の、2−メルカプト−ベンゾチアゾリル−コハク酸のアミノ−及び遷移金属錯体少なくとも1種又はそのアミノ塩少なくとも1種、導電性ポリマー少なくとも1種又は/及びチオール少なくとも1種を含有するのが有利であり、この際、水性組成物中の有機腐食防止剤の含有率は、有利に0.01〜5質量%の範囲、特に好ましくは0.02〜3質量%の範囲、全く特別好ましくは0.05〜1.5質量%の範囲内にあることができる。
【0087】
少なくとも1種の有機腐食防止剤は、室温で不揮発性であるのが有利である。更に、これが、殊に20g/lより多く水中に良好に溶ける又は/水中に良好に分散する場合が有利でありうる。特に、アルキルアミノエタノール、例えばジメチルアミノエタノール又はTPA−アミンをベースとする錯体、例えば4−メチル−γ−オキソ−ベンゼンブタン酸とのN−エチルモルホリン−錯体が特別有利である。強力な腐食防止剤を作用させ又はなお更に強化するために、この腐食防止剤を添加することができる。少なくとも1種の有機腐食防止剤の添加は、本発明の組成物の非常に高い腐食防止作用に基づき、裸鋼表面のような非常に保護するのが困難な金属表面の場合にのみ必要である。亜鉛メッキされていない鋼表面、殊に冷間圧延鋼(CRS)を被覆すべき場合にこれは有利である。
【0088】
水性組成物(浴組成物)中の有機塗膜形成成分の含有率と有機腐食防止剤少なくとも1種の含有率との比は、広範に変動でき;殊に≦500:1であってよい。この比は5:1〜400:1の範囲、特に好ましくは10:1〜100:1の範囲内にあるのが有利である。
【0089】
この水性組成物は、有利に、防食顔料e)少なくとも1種0.1〜80g/を含有する。殊にアルミニウム−、アルモ−、アルモアルカリ土類−及びアルカリ土類金属珪酸塩をベースとする種々の珪酸塩がこれに属する。この防食顔料は、有利に、走査電子顕微鏡で測定される直径0.01〜0.5μmの範囲、殊に0.02〜0.3μmの範囲の平均粒径を有する。種々異なる種類の防食顔料は原則的に公知である。しかしながら、これらの顔料少なくとも1種の添加は、原則的には必要ではなく、可能な選択的実施形変法であると思える。
【0090】
殊に5〜50の範囲の酸価を有する合成樹脂の酸基の中和又は/及び立体的安定化のための薬剤e)は、特に難揮発性のアルカノールアミン及び水酸化物、例えば苛性ソーダ及び苛性カリであってよいが、易揮発性のアルカノールアミン、アンモニア及びモルホリンとアルカノールアミンとをベースとする化合物が有利である。これらは、中和された合成樹脂が水と混和可能になるか又は約150からの酸価の場合には水溶性であるように作用する。
【0091】
本発明の方法では、場合により、少なくとも1種の溶剤e)を添加することもできる。有機ポリマー用の有機溶剤として、少なくとも1種の水混和性又は/及び水溶性のアルコール、グリコールエーテル又はn−メチルピロリドン又は/及び水を使用することができ、溶剤混合物の使用の場合には、殊に少なくとも1種の長鎖アルコール、例えばプロピレングリコール、エステルアルコール、グリコールエーテル又は/及びブタンジオールと水とからの混合物が使用できる。しかしながら、多くの場合には、有機溶剤なしで水のみを添加するのが有利である。有機溶剤の使用の場合には、その含有率は有利に0.1〜10質量%、殊に0.25〜5質量%、全く特別好ましくは0.4〜3質量%である。ストリップ製造のためには、むしろ水のみを、かつ、場合によっては少量のアルコール以外の有機溶剤を含有せずに、又は殆ど含有せずに使用するのが有利である。
【0092】
更に、ウエットフィルムを、一様に平らな広がり及び層厚で、並びに密で、かつ「あれ」なしに施与することができるようにするために、少なくとも1種の湿潤剤e)を添加するのが有利である。このためには原則的に、多くの湿潤剤、特に水性組成物の表面張力を低下させるアクリレート、シラン、ポリシロキサン、長鎖アルコールが好適である。
【0093】
本発明による被覆は、それにより品質を損失することなしに、充分に又は完全にクロム(VI)−化合物のみならずクロム(III)−化合物を含有しなくてもよい。本発明の範囲では、通常、環境上危険なクロム化合物e)、例えば殊にCr6+の化合物を添加することが意図されていないが、消費者要求に応じる稀なる使用の場合にはこれが意図されることがありうる。特にクロム(VI)−化合物不含の又は充分に不含である水性組成物は、クロム不含の金属表面上では0.05質量%までのみのクロム含有率を示し、クロム含有金属表面上では0.2質量%までのクロム含有率を示す。浴中に存在しうるクロム含分は、酸蝕によって金属表面から溶出されることがあり、痕跡量の不純物含分から由来するか又は先に接続されている浴から又は容器及び導管から付随して出てくることがあり得る。水性組成物には、クロムを故意に添加しないのが有利である。
【0094】
しかしながら、本発明の方法は、特に本発明の処理液を用いて基材表面が処理された基材の輸送、貯蔵及び据え付けの間の機械的応力によって生ぜしめられうる保護層の損傷部で広範囲にかつ高い確実性で耐食性を保持残留させるべき場合には、有利に、少なくとも1種のクロム含有化合物を含有して用いることもできる。この場合には、例えば重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウム又は/及び重クロム酸アンモニウムを添加することができる。この場合にクロム(VI)−化合物の含分は、有利に0.01〜100g/l、特に好ましくは0.1〜30g/lである。
【0095】
この水性組成物は、有利に、カチオンとしてのチタン、ハフニウム又は/及びジルコニウムをベースとし又は/及びアニオンとしてのカーボネート又はアンモニウムカーボネートをベースとする塩基性架橋剤少なくとも1種を含有することもでき、この際、水性組成物中のこのような架橋剤の含有率は、有利に0.01〜3質量%の範囲、特に好ましくは0.02〜1.8質量%の範囲、全く特別好ましくは0.05〜1質量%の範囲内にある。
【0096】
この水性組成物は少なくとも1種の添加剤、殊に殺菌剤少なくとも1種、消泡剤少なくとも1種又は/及び湿潤剤少なくとも1種の群から選択されるもの少なくとも1種を含有するのが有利である。
【0097】
水性組成物に、事情によって原料中に隠れて含有されている痕跡量の酸を例外として、酸、殊に無機酸又は/及び有機カルボン酸を添加しないのが有利である。これは殊に、無機酸又は/有機カルボン酸を含有しないか又は充分に含有せず、特に無機酸を含有しない。
【0098】
本発明の水性組成物は、遊離の弗化物、錯弗化物、例えばヘキサフルオロチタン酸又はヘキサフルオロジルコン酸又は/及び他の結合された弗化物の添加物を含有しないのが有利である。
【0099】
この水性組成物は、重金属を含有しないか又は充分に含有しないのが有利である。殊に、カドミウム、ニッケル、コバルト又は/及び銅の含分は、極めて僅かに保持されるべきであり、添加されるべきではない。しかしながら、通常は、本発明の組成物の酸蝕は、鋼仕上げ加工剤、例えばクロム又はニッケルを鋼表面から溶出させることができない程度に僅かである。
【0100】
特に有利な本発明による組成物は、本質的に特に、例えば塗膜形成成分としてのアクリル−ポリエステル−ポリウレタン、スチレン、スチレン−アクリレート又は/及びエチレンアクリルをベースとするコポリマー少なくとも1種、シラン少なくとも1種、キレート少なくとも1種、長鎖アルコールをベースとする塗膜形成助剤少なくとも1種、殊に酸化アルミニウム、燐化アルミニウム、酸化鉄、隣化鉄、雲母、酸化ランタニドをべースとする、例えば酸化セリウム、硫化モリブデン、グラファイト、カーボンブラック、珪酸塩、二酸化珪素、コロイド二酸化珪素、酸化亜鉛又は/及び酸化ジルコニウムをベースとする粒子形の無機化合物少なくとも1種、場合によっては潤滑剤少なくとも1種、例えばワックス、場合により少なくとも1種の湿潤剤、例えばポリシロキサン、場合によっては少なくとも1種の有機腐食防止剤及び場合によっては他の添加剤、例えば特に消泡剤から成っている。
【0101】
金属表面は、新製の、きれいな又は精製された状態であるのが有利である。ここで、概念「きれいな金属表面」とは、未精製金属の、例えば新たに亜鉛メッキされた、精製の必要がない表面又は新たに精製された表面を意味する。
【0102】
予め前処理組成物を塗布することなしに、金属表面上に直接水性組成物を施与するのが有利である。それでもやはり、かなりの数の用途のためには、予め、例えばアルカリホスフェート化、亜鉛−含有ホスフェート化、希土類、例えばCer含有前処理をベースとする又は/及びシラン少なくとも1種をベースとする前処理層少なくとも1層を塗布することが有利でありうる。
【0103】
先ず第一に水での希釈によりコンセントレートからの浴組成物の作成のため又は1浴の長時間作業の際の浴組成の調節のための補充溶液を得るために、浴組成物の大抵の又は殆ど全ての成分を含有する水性組成物を使用するのが有利であるが、通常は、別に保存され、かつ別に添加される粒子形の無機化合物少なくとも1種を含有しないのが有利である。反応促進剤及び乾燥促進剤、例えばパラトルエンスルホン酸のモルホリン塩も有利に別に添加することができる。このコンセントレート又は補充溶液は、個々の成分に関して浴組成物の5倍〜10倍の濃度まで濃縮されている濃度を有するのが有利である。しかしながら、多くの場合には、浴組成物として、直接 「コンセントレート」を用いて、場合によっては例えば5〜30%だけのわずかな希釈の後に、作業することもできる。
【0104】
本発明の方法では、水性組成物を、有利に5〜50℃の範囲の温度で、特に好ましくは10〜40℃の範囲、全く特別に好ましくは18〜25℃又は30〜95℃の範囲で、金属表面上に施与することができる。本発明の方法では、金属表面を、被覆の適用時に有利に5〜60℃の範囲の温度に、特に好ましくは10〜55℃の範囲、全く特別好ましくは18〜25℃の範囲に保持することもできるか又は事情によっては50〜120℃に保持することもできる。本発明の方法では、被覆された金属表面を、有利に循環空気温度20〜400℃の範囲、特に40〜120℃の範囲又は140〜350℃、全く特別好ましくは60〜100℃又は160〜300℃PMT(peak-metal-temperatur) の範囲の温度で(有機塗膜形成成分の化学組成に応じて)乾燥させることができる。乾燥時の必要な滞留時間は、本質的に乾燥温度に逆比例する:例えばストリップ形材料では、合成樹脂又はポリマーの化学的組成に応じて100℃で1〜3秒又は250℃で1〜20秒であるか又は20℃で30分であるのに、メラミンホルムアルデヒドと組み合わされた遊離のヒドロキシ基を有するポリエステル樹脂は、120℃を下回る温度で乾燥させることはできない。他方、被覆された成形部材は、特に壁厚に応じて明らかに長い時間乾燥させなければならない。乾燥のために、殊に循環空気、誘導、赤外線又は/及びマイクロ波に基づく乾燥装置が好適である。本発明の方法では、場合によっては40〜70℃の範囲の温度まで冷却の後に被覆されたストリップを有利に巻き上げてコイルにすることができる。
【0105】
本発明の方法では、水性組成物を特にロール塗装、流れ塗装、ナイフ塗装、吹付け塗装、噴霧、刷毛塗り又は浸漬により、かつ場合によってはローラを用いる後絞りによって塗布することができる。
【0106】
本発明による被覆の層厚は、好ましくは0.1〜6μmの範囲、特に好ましくは0.2〜5μmの範囲、全く特別好ましくは0.25〜4μmの範囲、殊に0.3〜2.5μmの範囲内にある。
【0107】
乾燥され、かつ場合によっては硬化もされた皮膜は、有利にDIN53157によるケーニッヒの振かん硬度測定器を用いて測定される30〜190s、特に50〜180sの振かん硬度を有する。しかしながら、ケーニッヒのこの振かん硬度は、多くの場合に60〜150s、特に好ましくは80〜120sの範囲内にあるのが有利である。UV−架橋可能な被覆では、屡々100〜150sの範囲の振かん硬度の値が現れるが、UV−架橋不能な又は例えば化学的に架橋されていない又は殆ど架橋されていないポリマー分散液をベースとする被覆では、40〜80sの範囲の振かん硬度の好ましい値が現れることができる。本発明により製造された層は、化学的に一様であるが充分な厚さの層を有する試験体のみで検査すべきであり、10μmまでの範囲の薄い被覆で検査すべきではない。
【0108】
乾燥され、かつ場合によっては硬化もされた皮膜は、DIN ISO6860によるマンドレル曲げ試験において円錐形マンドレル上で曲げる場合に、直径3.2mm〜38mmのマンドレルで充分に−但し試験面は裂けることなしに−2mmより長い亀裂(これは引き続く硫酸銅で濡らす場合に亀裂した金属表面上の銅沈着の結果としての色変化により認識可能になる)が生じない程度の可とう性を有する。ここで概念「充分に」とは、さもなければ事情によって見えない「あれ」を認識可能にする硫酸銅試験になお適合されるような通常の厚さの皮膜を特徴付けることを意味している。マンドレル曲げ試験の使用による可とう性の証明及びこの方法で変形された範囲の「あれ」の認識のための引き続く硫酸銅溶液中への浸漬は、再現可能な試験結果を保証し、かつこのための経費のかかる、例えば240時間もかかる腐食試験(これは、部分的に化学的組成及び金属表面の粗面性に応じて、従って限定的にのみ相互に比較することのできる異なる結果をもたらしうる)を必要としない利点を有する。この試験のために、アルミニウム合金の場合のような卑金属表面では、酸化物層を充分に除去するために、被覆の前に金属表面を先ず1回酸洗い精製することが必要である。
【0109】
本発明による、かつコイルコーティング−ラッカーで被覆された成形部材(金属板)でのT−曲げ−試験の場合の剥離された面の面積割合は、8%まで、特に好ましくは5%まで、全く特別好ましくは2%まで、しかしながら、この際、近似的に0%の最良の値であり、従ってその場合に通常は亀裂が現れるだけである。このために、有利にシリコン−ポリエステルをベースとするコイル−コーティング−ラッカーを、殊に被覆されたコイルに典型的な試験での比較試験のために使用することができる。しかしながら、この場合に、亀裂不含性又は亀裂の大きさは、本質的に使用されたラッカーの性質にも依存している。
【0110】
本発明の方法では、乾燥され、かつ場合により硬化もされた皮膜上に、有利にそれぞれ、印刷インキ、シート、ラッカー、ラッカー類似物質、粉末ラッカー、接着剤又は/及び接着剤キャリヤーからの被覆少なくとも1層を施与することができる。
【0111】
部分的又は完全に乾燥され又は硬化された皮膜の上に、それぞれラッカー、ポリマー、塗料、機能性プラスチック被覆、接着剤または/及び接着剤キャリヤー、例えば自己接着シートからの被覆少なくとも一層、殊に液体塗料、粉体塗料、プラスチック被覆、接着剤等をシート被覆のために施与することができる。本発明により水性組成物で被覆された金属部材、殊にストリップ又はストリップ片を変形し、塗装し、ポリマー、例えばPVCで被覆し、印刷し、接着させ、熱鑞付けし、溶接し又は/及び締め付け(Clinchen)又は他の接合法によって相互に又は他の要素と結合させることができる。これらの方法は、建築用途の金属ストリップの被覆のために原則的に公知である。通常は、先ず塗装するか又は他の方法で被覆し、かつその後に変形させる。本発明による被覆が塗装されているか又はプラスチックで被覆されている場合には、大抵は、この被覆が少なくとも局所的に除かれることなしには蝋接−又は溶接結合を達することはできない。それというのも、電気溶接のために、高割合の導電性粒子又は/及び導電性ポリマーが本発明の皮膜中に取り込まれており、かつそれに続く被覆が極めて薄いからである。
【0112】
本発明により被覆された基材は、有利に、次のものとして使用することができる:線材、ストリップ、金属板又は巻き線、編み線、鋼ストリップ、金属板、化粧張り、スクリーン用の部材、車体又は車体用の部材、乗物、トレーラー、キャンピングカー又は飛行物体の部材、カバー、筐体、ランプ、照明、交通信号灯要素、家具片又は家具要素、家庭電化製品要素、架台、形材、複雑な形状の成形部材、ガードレール要素、ヒーター要素又はフェンス要素、バンパ、少なくとも1個の管又は/及び形材から成る又はそれらを有する部材、窓枠、戸枠又は自転車フレーム又は小部材、例えばネジ、ナット、フランジ、バネ又はめがねフレーム。
【0113】
本発明の方法は、殊に塗装の前の金属ストリップの表面前処理の分野での、いわゆる一方でクロム酸塩に富んだ酸不含の方法又は他方で酸含有方法に対する選択であり、それに比べて匹敵しうる腐食防止及び塗料付着に関する良好な結果を提供する。
【0114】
更に、慣用方法で精製された金属表面の処理のための本発明の方法は、それに続く後処理なしに、例えば水での又は好適な後すすぎ溶液での洗浄なしに使用することが可能である。本発明の方法は、殊に絞りロールがけを用るか又はいわゆるロールコーターを用いる処理溶液の適用のために好適であり、この際、処理溶液は、適用の直後に、更なる中間接続方法工程なしに、乾燥させることができる(Dry In-Place-Tchnologie)。これによって、この方法は、例えば慣用の吹き付け塗装法又は浸漬塗装法、殊に引き続くすすぎ工程、例えばクロメート処理又は燐酸亜鉛処理を用いるそれら方法と比べて著しく簡略化されており、作業終了後の装置浄化のために最少量のすすぎ水を必要とするだけである。それというのも、適用の後のすすぎ工程は必要でないからであり、このことは既に確立され、後すすぎ溶液での吹き付け法で操作されるクロム不含の方法に比べても有利であるからである。このすすぎ水を浴組成物の新たなバッチに再び添加することができる。
【0115】
この場合に、場合によってクロム酸塩不含の本発明のポリマー被覆を、付加的前処理層の予めの塗布なしに使用することが良好に可能であり、従って、殊に金属被覆又はAl−及びZn−被覆としてのAlSi−、ZnAl−、例えばGalfan(R)、AlZn−合金、例えばGalvalume(R)、ZnFe−、ZnNi−例えばGalvanneal(R)及び他のZn−合金上の金属表面の優れた持続性の保護が可能であり、これはポリマー含有被覆の塗布により得ることができる。更に本発明の被覆は、強い腐食性の金属表面、例えば鉄−及び鋼−合金製のもの、殊に冷間圧延された鋼の場合にも良好に効を奏し、この際、少なくとも1種の腐食防止剤を水性組成物に添加するのが有利である。これによって、冷間圧延された鋼(CRS)上の処理液の乾燥の間のフラッシュ−錆−形成(Flash-Rust-Bildung)を抑制することができる。
【0116】
これにより、経費のかかるUV−硬化も必要でなく、単に乾燥及び皮膜化を用いて又は場合によっては補足的に「通常の化学的な」硬化(これは屡々熱架橋とも称される)を用いて充分に硬化可能である、経費的に好適でかつ環境に優しい腐食防止を得ることが可能になる。しかしながら多くの場合には、特定の1プロセス工程で迅速に固い被覆を得ることが重要である。この場合には、化学線、殊にUV−線をベースとする部分的架橋を得るために、少なくとも1種の光重合開始剤を添加し、かつ少なくとも1種のUV−硬化可能なポリマー成分を選択することが有利でありうる。その場合に、本発明による被覆を部分的に化学線照射により、かつ部分的に乾燥及び皮膜化により又は熱的架橋により硬化させることができる。これは殊に、高速運転ベルト装置上での適用の場合に又は最初の架橋(=硬化)のために重要でありうる。この場合に、いわゆるUV−架橋の割合は、可能な全硬化の0〜50%、特に10〜40%でありうる。
【0117】
更に、本発明による充分に又は完全にクロム酸塩不含のポリマー被覆は、それが−殊に0.5〜3μmの範囲の層厚の場合に−透明かつ淡色であり、この被覆を通して、例えば亜鉛メッキされた又はGalvalume(R)−表面の金属特性及び典型的構造が、正確かつ変わらずに又は殆ど変わらずに認識可能に残る利点を有する。更に、このような薄い被覆はなお問題なく溶接可能である。
【0118】
更に本発明によるポリマー被覆は、非常に良好に変形可能である。それというのも、この被覆は、被覆、乾燥及び場合による硬化の後に、並びに場合によっては長時間に渡り比較的可塑性であり、かつ固くて脆い状態ではないように調節することができるからである。
【0119】
本発明によるポリマー含有被覆は、大抵のラッカー又はプラスチックで良好に重ね塗りすることができる。本発明によるポリマー含有被覆は、後塗装することができるか又はプラスチック、例えばPVCで、例えば粉体塗装、液体塗装、流れ塗装、ロール塗装、刷毛塗り又は浸漬のような塗装法により被覆することができる。大抵、これにより得られ、硬化された被覆(これは本発明のポリマー含有被覆上に塗布され、この際、屡々2又は3層のラッカー層又はプラスチック層も施与されうる)は、5〜1500μmの範囲の全層厚を有する。
【0120】
本発明によるポリマー被覆は、例えば、2−金属板−サンドイッチ要素の製造のためにポリウレタン−絶縁フォームで問題なくバックフォーム可能(hinterschaumbar)であるか又は例えば乗り物構築で使用されるような慣用の二次接着剤(Konstruktionsklebstoff)で良好に接着可能である。
【0121】
本発明の被覆は、特にプライマー層として使用することができる。これは、予め施与される前処理層なしでも又は少なくとも1層を有しても極めて好適である。この場合に、この前処理層は、特に燐酸塩、殊にZnMnNi−ホスフェートをベースとする又はホスホネート、シラン又は/及び弗化物錯体、腐食防止剤、ホスフェート、ポリマー又は/及び微粉砕粒子に基づく混合物をベースとする被覆であってよい。
【0122】
本発明の被覆を用いて、後に施与されるラッカーと一緒になって最良のクロム含有被覆系と同等である被覆系を生じる前処理層又はプライマー層が得られる。
【0123】
本発明の方法は従来文献に記載の又は/及び実施されている方法に比べて、更に、アルミニウムに富んだ又はアルミニウム含有合金で被覆された基材上で−殊に鋼製の基材の場合に−基材表面の暗色化及び基材表面の乳白色艶消を起こさせず、従って建築物又は/及び建築部材の装飾的デザインのために、付加的な着色性塗装なしに使用可能である利点を有する。この金属表面の美学は不変のまま残る。
【0124】
本発明による被覆は極めて価格的に好適であり、環境に優しくかつ良好に大工業的に使用可能である。
【0125】
本発明による合成樹脂被覆を用いることにより、約0.5〜2μmのみの層厚にも関わらず極めて高価なクロム不含の皮膜を製造することができたことは意想外であった。
【0126】
水性組成物への金属キレートの添加によって、主としてキレート及びシランを含有する水性組成物の場合にも、主として合成樹脂及びそれと共にキレート及びシランを含有するそれの場合にも、これから形成される皮膜の腐食防止の著しい上昇をもラッカー付着性の著しい上昇をも得ることができたことは極めて意想外なことであった。
【0127】
シラン又は殊に金属基材とラッカーとの間の及び場合による顔料と有機ラッカー成分との間のその反応生成物の付着補助作用は、ここで実施例中に記載されているような組成物の場合にも卓越して又は、ポリマー及びキレートが同時に存在しない限りはむしろ単独で現れる。高分子量のポリマー又はコポリマーの高含有率の場合に、低分子量の有機分の存在なしに、キレートの添加によって皮膜特性の明白な改善が得られるとは予期されていなかった。たぶん、高分子量のポリマー及びコポリマーがキレートの存在によって架橋され、これが、殊に硬化剤分及び光重合開始剤分を有しないような皮膜化する系を得るために特に有利である。これによって、熱的架橋のためにさもなければ利用されるような高い温度負荷及び付加的な経費のかかるプロセス工程であるラジカル照射を避けることができる。
【0128】
実施例及び比較例
次に記載の実施例につき本発明の課題を詳述する。
【0129】
A)主にキレート及びシランをベースとする組成物
水性コンセントレートの調整のために、部分的に加水分解されたシラン少なくとも1種を少なくとも2週間に渡り老化させ、かつこの場合に、場合により加水分解もさせた。その後に第1表に相応する金属キレートを添加した。その後、このコンセントレートを水で希釈し、かつ場合により、使用準備のできた処理液体を得るために、pH値を適合させる薬剤、例えばアンモニアを加えた。次いで、それぞれ熱せき亜鉛メッキされた鋼又はGalvalume(R)−鋼板からの金属板少なくとも3枚を、相応する処理液体のロール塗り又は25℃での乾燥により接触させた。この場合に、このように処理された金属板を90℃PMTで乾燥させ、引き続きその腐食防止について試験した。
【0130】
比較例VB4を包含する例B1〜B8は、キレート又はキレートとポリマー混合物の添加の影響を示している。例B9〜B12並びにB13〜B17の場合には、シラン及びキレートの量を高め、かつ同時に無機粒子の添加を減少させ、この際、これら双方のシリーズは、ポリマー混合物の添加量の違いにより異なっている。最後に、例B9及びB18〜B20では層厚を変えた。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【0133】
この場合に生じた皮膜は、透明で、一様であり、かつ連続していた。この皮膜は、色を有さず、その下にある金属表面の暗色化を示さなかった。これは、金属表面の構造、光沢及び色が実際に被覆を通して変わらずに見えるようにするために特に有利である。キレート及びシランの組み合わせは、有機金属化合物不含である組成物と比べて非常に薄い層厚の場合で既に、腐食防止の非常に明白な改善を示していた。更に他の例は、殊に無機粒子(この場合には10〜20nmの範囲の平均粒径を有するSiOをベースとする)の高い添加量は、耐食性の改善のために更に付加的に寄与することを示した。この場合に、このような粒子の少量添加によるよりも無機粒子の割合の上昇がなお腐食防止の明らかな上昇を可能にしたことは意想外のことであった。意外にも、無機粒子の部分的に高い割合にも関わらず、被覆の皮膜化の後に機械的影響に抵抗する、連続しているがフレキシブルな皮膜が可能になった。層質量を約1.1で割ると、層厚がμmで得られる。表面部は肉眼的に腐食に対して保護された。この薄い皮膜は、合成樹脂の比較的低い割合に基づき、変形されうる薄い有機被覆の代わりにむしろ不働態の特性を有する。例9の約0.75μmの薄い皮膜は、典型的なクロム酸塩に富んだ無機不働態よりも厚いが、少なくとも同じく良好な耐食性を示し、かつ更にクロム酸塩に富んだ層とは異なり良好に変形可能である。
【0134】
B)主にキレート、シラン及び有機ポリマーをベースとする組成物:熱せき亜鉛メッキ、合金亜鉛メッキ及び電気亜鉛メッキされた鋼板の処理又は前処理
記載の濃度及び組成は、処理溶液そのものに関係し、場合によって使用される高濃度のバッチ溶液には関係しない。全ての濃度記載は、固体割合と理解すべきである、即ち、濃度は、使用原料が希釈された形で、例えば水溶液として存在するか否かには関係なく、有効な成分の質量割合に関係している。次に挙げられている組成物に加えて、市場の実際では他の添加剤を添加するか又は量を相応して適合させること、例えば添加剤の全量を高めるか又は例えば消泡剤又は/及びレベリング剤、例えばポリシロキサンの量を高めることが必要であるか又は望ましいことがある。
【0135】
合成樹脂として次のものを使用した:15〜25℃の範囲のガラス転移温度、15〜20℃の範囲の最低造膜温度(MFT)及び120〜180nmの範囲の平均粒径を有するスチレンアクリレート−コポリマー、140〜180℃の範囲の耐ブロッキング温度、35〜40℃の範囲のMFT及び20〜60℃の範囲のガラス転移温度を有するアクリル−ポリエステル−ポリウレタン−コポリマー、明白な最低造膜温度を有しないが、70〜90℃の範囲の融点を有するエチレン−アクリル−コポリマー及び比較的僅かなヒドロキシル基(メラミン樹脂と架橋することができる)を有し、20〜60の範囲のOH−基数(ヒドロキシル価)(固体樹脂に対して計算して)を有するアクリレート。スチレン−ブタジエン−コポリマーは、−20〜+20℃の範囲のガラス転移温度及び5〜30の範囲の酸価を有し;カルボキシル基の含有率に基づき、このコポリマーは、例えばメラミン樹脂又はイソシアネート−含有ポリマーと付加的に架橋可能である。エポキシド−アクリレートをベースとするコポリマーは、10〜18の範囲の酸価及び25〜40℃のガラス転移温度を有する。殊に鋼の被覆のためのこのコポリマーは、本発明による被覆に、殊に塩基性範囲内で高い化学的安定性を与え、かつ金属底層への付着特性を改善する。有機官能性シランA及びBとして、それぞれ1個のエポキシ基を有する2種の異なるトリアルコキシシランを使用し、かつ有機官能性シランCとしてエチレンジアミン−シランを使用した。
【0136】
高熱分解珪酸は、90〜130m/gの範囲のBET−値を有し、コロイド二酸化珪素は、10〜20nmの範囲の平均粒径を有した。酸化されたポリエチレンは、潤滑剤及び変形剤(ワックス)としての作用をし、60〜165℃の範囲、有利に80〜110℃又はむしろ150℃までの範囲の、特に好ましくは100〜140℃の範囲の融点を有した。使用されたポリシロキサンは、ポリエーテル変性されたジメチルポリシロキサンであり、適用の間にウエットフィルムの架橋剤及びレベリング剤としての作用をした。消泡剤は、炭化水素、疎水性珪酸、オキサル化された化合物及び非イオン性乳化剤からの混合物であった。長鎖アルコールとして、プロピレングリコールをベースとするブチルエーテル又は類似のなおブチルエーテルよりも急速に揮発するグリコールエーテルとの混合物を皮膜形成のために使用した。
【0137】
慣用法で冷間圧延され、かつ引き続きa)AlZn(Galvalume(R))中にAl 55質量%を有する、ZA(Galfan(R))中にAl 5質量%を有する、ZnAl(亀裂不含鋼)中にAl約2質量%を有する合金亜鉛メッキされた鋼ストリップ、b)熱せき亜鉛メッキされた鋼ストリップ、c)熱せきアルミニウムメッキされた鋼ストリップ及びd)電気亜鉛メッキされた鋼ストリップから得られ、貯蔵時の保護の目的のために油添加された鋼板を、先ず弱アルカリ性スプレー浄化装置中で脱脂し、水ですすぎ、高温で乾燥させ、かつ引き続き、本発明による水性組成物で処理した。この場合に、規定量の水性組成物(浴組成物)を、ロールコーターを用いて、約10ml/mのウエットフィルム厚さを生じるように塗布し、この際、2g/mのドライフィルム厚を得るために濃度を倍にした。成分を部分的に記載の順序で混合し、溶液のpH値を、引き続きアンモニア溶液又は易揮発性アルカノールアミンの溶液を用いて、それぞれ8.0〜8.5に調節した。引き続き、ウエットフィルムを80〜100℃PMTの範囲の温度で乾燥させ、皮膜化させ、かつ硬化させた。浴組成物の選択された組成が第2表中に記載されている。このように処理された鋼板を、その後、それらの腐食防止及び機械的特性について試験した(第3表)。しかしながらこの表中には、熱せき亜鉛メッキされた鋼板での結果のみが示されている。それというのも、これは、腐食に対して保護することが最も困難である材料に数えられ、電気亜鉛メッキされた鋼板と並んで試験される材料では最悪に格付けられているからである。しかしながら、電気亜鉛メッキされた鋼板は、通常は、屋外ではその高い腐食性に基づき、後続の塗装なしには決して建築に使われないので、耐食性に保持するのが比較的困難であり、現在では屡々塗装せずに使用される熱せき亜鉛メッキされた鋼板の試験が最も有意義である。
【0138】
【表3】

【0139】
【表4】

【0140】
熱せき亜鉛メッキされた金属板又はGalvalume(R)−鋼板上での試験の結果
熱せき亜鉛メッキされた金属板(HDG)上の乾燥され、皮膜化され、かつ硬化されたポリマー含有被覆の乾燥層塗布量は、全ての実験で−比較例4の場合を除き−それぞれ、約1又は約2μmの厚さの皮膜について、950〜1050mg/m又は1900〜2100mg/mの範囲の値を生じた。乾燥された皮膜は、0.8〜1μm又は1.7〜2μmの範囲の層厚を有した。全ての被覆は、透視可能で、無色かつ一様であった。これらは、僅かな絹光沢を示し、従って金属表面の光学的特性は実際に変わらず認識可能に残った。
【0141】
Galvalume(R)−基材表面上に適用され、乾燥された処理液の皮膜の変形可能性の評価のために、ピン−オン−デスク試験(Pin-on-disc Test)を使用した。鋼板上のこの被覆はその高いアルミニウム含有率に基づき、ここに記載の残りの亜鉛含有合金よりも変形困難であるので、Galvalume(R)を使用した。この実験室−試験法は、非常に狭い限界内に保持することのできる再現可能な条件下での検査の実施を許容にした。測定された結果は、これによって最適に相互に比較可能である。
【0142】
ピン−オン−ディスク−試験の試験法:
7.5mmの直径を有する鋼球を、水性有機組成物で処理された鋼表面上で、20〜22℃の室温及び35〜40%の相対湿度、20Nの圧力下に10mm/sの速度で、円形に回転させた。この測定の間に、記載の条件下で有機被覆上の鋼球の運動によって生じる摩擦係数を測定し、計算機を用いて記録する。
【0143】
水性処理液を用いて製造され、乾燥及び皮膜化の後に次の特性を有する有機膜が望まれている:
1.できるだけ低い摩擦係数を示す、この際、
2.摩擦係数は、できるだけ長い変形時間の間、充分に一定に留まるべきであり、かつ有機被覆の表面の球での摩擦及び粗面化にもかかわらず、なお強く上昇すべきではない(球が進むことのできる回転の数によって測定されるピン−オン−ディスク試験の場合には、0.4の摩擦係数までが測定される)。
【0144】
第3表:ラッカー処理されておらず、有機処理され、熱せき亜鉛メッキされた鋼板の腐食防止、摩擦及び変形可能性に関する試験結果、B37では比較のためのGalvalume(R)−鋼板
【0145】
【表5】

【0146】
【表6】

【0147】
B37では、熱せき亜鉛メッキされた鋼板の代わりに、比較のために、B32の記載と同様に被覆されたGalvalume(R)−鋼板を使用した。塩水噴霧試験の場合に、720時間の試験時間の場合にはじめて、<2面積%に達する低い点腐食が得られた。
【0148】
キレートとシランとの組み合わせにより、例B23とB37との比較から比較認識可能であるような腐食防止の非常に明白な改善が得られ、従って、本発明による有機ポリマーを含有する水性組成物の場合には、被覆されていない鋼の処理の場合以外に、耐食性への影響を損なうことなしに、有機腐食防止剤を省略することができた。更に、ピン−オン−ディスク−試験の場合には意外にも、長時間かかる変形プロセスの間の摩擦係数の持続的低下を保証するためにコポリマー割合が低すぎない場合には、酸化されたポリエチレンとエチレン−アクリル酸−コポリマーとの組み合わせが特に有利であることが明らかになった。この試験結果は、極端な形状の要素の製造のための最も困難な変形プロセスがむしろ基材表面の金属摩損なしに実施可能であることを示しており、このことは、有機被覆の後の変形プロセスにより美学的にきれいな表面を有する成形部材の製造を可能とした。
【0149】
更に、水性組成物で有機的に前処理され、引き続き白色ラッカーで被覆された金属板のラッカー付着性及び耐食性の評価のための更なる試験を実施した:
熱せき亜鉛メッキされた鋼板上の処理液体で処理された基材表面の大きい部材を、一般工業で鋼から家庭電化製品、例えば洗濯機、冷蔵庫、棚システム又は事務用家具を製造するために使用されているラッカー系で塗り重ねられた。この場合にラッカー系として、a)180℃の焼き付け温度で20分後の乾燥層厚40±5μmの有機溶剤及びアクリル樹脂溶液をベースとする白色熱架橋性アクリルラッカー又はb)いわゆる白色商品の被覆のために市場で使用される、180℃焼き付け温度で20分後の乾燥層厚60±5μmのポリエステル−エポキシド−混合粉末をベースとする白色粉末ラッカーを用いた。ここで、VB36では、有機前処理なしに、それぞれのラッカーのみで被覆された熱せき亜鉛メッキされた鋼板が使用されている。B37では、熱せき亜鉛メッキされた鋼板の代わりに比較のために、B23の記載と同様に被覆されたGalvalume(R)−鋼板が使用されている。
【0150】
第4/4a表:約1μm厚さの前処理層上へのアクリルラッカー又は粉末ラッカーでの被覆の後に、通常湿気中20℃で、及び100%湿気中40℃で交互に負荷する場合の腐食試験又は付着試験の結果
【0151】
【表7】

【0152】
【表8】

【0153】
塗り重ねられた金属板での塩水噴霧試験の結果は、アクリルラッカー被覆が予想通りに、粉末被覆の場合のように良好な耐食性を必ずしも保証しなかったことを示している。しかしながら、シラン−キレート−前処理がどれほどになるかは、比較例36に対する本発明の例との比較で認識可能である。塩水噴霧試験の腐食データは、「非常に良好」〜「優秀」に分類することができる。
【0154】
蒸気熱−交番環境試験(Schwitzwasser-Wechselklima-test:Damp heat alternating atmosuphere test)の前又は後にラッカー付着結果の違いが現れないので、評点Gt1は、第一に、前処理にではなくラッカーに帰因し、この際、Gt1は「良好」であると見なすことができる。この蒸気熱−交番環境試験の結果は、殊に、ラッカー品質、特に腐食敏感な金属表面及び約1μmの極めて薄い有機前処理層を考慮する場合に、「非常に良好」〜「優秀」なラッカー付着値を示している。アンダーマイグレーシヨン(Unterwanderung)に関連しているこの蒸気熱−交番環境試験は、このような良好な系におけるこの種の腐食試験のためには鈍感すぎる。
【0155】
第4/4a表の全ての結果は、それ自体非常に高い品質の、ポリマーを含有する同じ層厚の最良のクロム酸塩含有有機被覆上での試験と比べて、今やクロム酸塩不含の有機被覆が約1μmの層厚で既に、腐食防止性及びラッカー付着性に関して、例外なくクロム酸塩含有被覆と同等であることを示している。従って、大量生産で環境に優しい材料の同等な代替が問題なく可能であることが保証される。有機被覆のこのような結果は、出願人の認識によれば、従来はなおどこでも達成されていなかった。
【0156】
更に、本発明による有機膜は、非常に高い耐候性を有し、他の多くの有機被覆とは異なり、屋外域でかつUV−線照射下で長時間使用できることを考慮すべきである。エポキシド樹脂をベースとするような熱的及びラジカル的に架橋されたラッカー系の多くは、屋外域のためには限られてのみ好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面を、更なる被覆の前の前処理又は処理のための、充分に又は完全にクロム(VI)−化合物不含であってよい水性組成物で被覆する方法において、この組成物は、水と共に
a)加水分解可能な又は少なくとも部分的に加水分解されたシラン少なくとも1種、
b)金属キレート少なくとも1種、
c)3〜250の範囲の酸価を有する水溶性又は水分散された有機ポリマー又は/及びコポリマー少なくとも1種を有する有機塗膜形成成分少なくとも1種(この際、組成物の固体含分に対する有機塗膜形成成分の含有率は>45質量%である)及び
d)塗膜形成助剤としての長鎖アルコール少なくとも1種
を含有しており、この際、酸洗いされ、精製され又は/及び前処理された、きれいな金属表面を、この水性組成物と接触させ、かつ、金属表面上に皮膜を形成させ、これを引き続き乾燥させ、部分的に又は完全に皮膜化により凝固させ、かつ場合によっては付加的に硬化させる(この際、乾燥され、かつ場合により硬化された皮膜は0.01〜10μmの範囲の層厚を有する)ことを特徴とする、金属表面を水性組成物で被覆する方法。
【請求項2】
水性組成物中には、群:
)直径0.005〜0.3μmの範囲の走査電子顕微鏡で測定される平均粒径を有する、粒子形の無機化合物少なくとも1種、
)潤滑剤少なくとも1種、
)有機腐食防止剤少なくとも1種、
)防食顔料少なくとも1種、
)合成樹脂の中和又は/及び立体的安定化のための薬剤少なくとも1種、
)有機溶剤少なくとも1種、
)シロキサン少なくとも1種及び
)クロム(VI)−化合物少なくとも1種
から選択される成分e)少なくとも1種が含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機塗膜形成成分は、アクリレート、エポキシド、エチレン、尿素−ホルムアルデヒド、フェノール、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン、スチレンブタジエン又は/及びビニルをベースとする合成樹脂含分を有するポリマー少なくとも1種又は/及びコポリマー少なくとも1種からの合成樹脂混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
合成樹脂としての有機塗膜形成成分は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリビニルピロリドン又は/及びポリアスパラギン酸をベースとする有機ポリマー、コポリマー又は/及びこれらの混合物、殊に燐含有ビニル化合物とのコポリマーの含分をも有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
有機塗膜形成成分は、3〜80の範囲の酸価を有するコポリマー少なくとも1種を、殊に添加される合成樹脂の少なくとも50質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
有機塗膜形成成分は、
アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−コポリマー、
アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−スチレン−コポリマー、
アクリル酸エステル、
場合により遊離の酸又は/及びアクリロニトリルを有するアクリル酸エステル−メタクリル酸エステル、
エチレン−アクリル−混合物、
エチレン−アクリル−コポリマー、
エチレン−アクリル−ポリエステル−コポリマー、
エチレン−アクリル−ポリウレタン−コポリマー、
エチレン−アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−コポリマー、
エチレン−アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−スチレン−コポリマー、
エチレン−アクリル−スチレン−コポリマー、
遊離のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂とメラミン−ホルムアルデヒド樹脂との組合せ物、
アクリレート及びスチレンをベースとする合成樹脂混合物又は/及びコポリマー、
スチレンブタジエンをベースとする合成樹脂混合物又は/及びコポリマー、
アクリレート及びエポキシドの合成樹脂混合物又は/及びコポリマー、
アクリル−変性されたカルボキシル基含有ポリエステルとメラミン−ホルムアルデヒド及びエチレン−アクリル−コポリマーとを一緒にしたもの、
ポリカーボネート−ポリウレタン、
ポリエステル−ポリウレタン、
スチレン、
スチレン−酢酸ビニル、
酢酸ビニル、
ビニルエステル又は/及び
ビニルエーテル
を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
添加される有機塗膜形成成分の少なくとも30質量%は、皮膜化可能な熱可塑性樹脂から成っていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
添加される合成樹脂の分子量は、少なくとも1000uの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
添加される有機塗膜形成成分は、高分子量ポリマー少なくとも40質量%から成っていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
合成樹脂の酸基は、アンモニア、アミン、例えばモルホリン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン又はトリエタノールアミンで又は/及びアルカリ金属化合物、例えば水酸化ナトリウムで安定化されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
水性組成物は、有機塗膜形成成分0.1〜980g/lを含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水性組成物中には、それぞれアシルオキシシラン、アルコキシシラン、少なくとも1個のアミノ基を有するシラン、少なくとも1個のコハク酸基又は/及び無水コハク酸基を有するシラン、ビス−シリル−シラン、少なくとも1個のエポキシ基を有するシラン、(メタ)アクリラト−シラン、多シリル化シラン、ウレイドシラン、ビニルシラン少なくとも1種又は/及びシラノール少なくとも1種又は/及び前記のシランに相応する化学的組成のシロキサン少なくとも1種が含まれることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
含有されるシラン少なくとも1種は、群:
グリシドオキシアルキルトリアルコキシシラン、
メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、
(トリアルコキシシリル)アルキルコハク酸シラン、
アミノアルキルアミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、
(エポキシシクロアルキル)アルキルトリアルコキシシラン、
ビス−(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、
ビス−(トリアルコキシシリルアルキル)エタン、
(エポキシアルキル)トリアルコキシシラン、
アミノアルキルトリアルコキシシラン、
ウレイドアルキルトリアルコキシシラン、
N−(トリアルコキシシリルアルキル)アルキレンジアミン、
N−(アミノアルキル)アミノアルキルトリアルコキシシラン、
N−(トリアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、
ポリ(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシラン、
トリス(トリアルコキシシリル)アルキルイソシアヌレート、
ウレイドアルキルトリアルコキシシラン及び
アセトキシシラン
から選択されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
含有されるシラン少なくとも1種は、群:
3−グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、
3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、
3−メタアクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、
3−メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、
3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸シラン、
アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、
アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、
ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、
ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、
ガンマ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、
ガンマ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、
ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、
ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、
(3,4−エポキシブチル)トリエトキシシラン、
(3,4−エポキシブチル)トリメトキシシラン、
ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、
ガンマ−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、
N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、
N−ベータ−(アミノエチル)−ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
N−ベータ−(アミノエチル)−ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−(ガンマ−トリエトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、
N−(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、
N−(ガンマ−トリエトキシシリルプロピル)ジメチレントリアミン、
N−(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)ジメチレントリアミン、
ポリ(アミノアルキル)エチルジアルコキシシラン、
ポリ(アミノアルキル)メチルジアルコキシシラン、
トリス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート、
トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート及び
ビニルトリアセトキシシラン
から選択されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水性組成物中の、シラン(それから生じる反応生成物を包含する)少なくとも1種の含分は、有利に0.1〜50g/lであることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
金属キレート少なくとも1種は、アセチルアセトネート、アセト酢酸エステル、アセトネート、アルキレンジアミン、アミン、ラクテート、カルボン酸、シトレート又は/及びグリコールをベースとするキレート錯体から選択されており、この際、水性組成物中のキレート(場合によりこれから生じる反応生成物を包含する)少なくとも1種の含分は、有利に0.1〜80g/lであることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
選択される金属キレート少なくとも1種は、
アセチルアセトネート、
アルカリラクテート、
アルカノールアミン、
アルキルアセトアセテート、
アルキレンジアミンテトラアセテート、
アンモニウムラクテート、
シトレート、
ジアルキルシトレート、
ジアルキルエステルシトレート、
ジアルキレントリアミン、
ジイソアルコキシビスアルキルアセト酢酸エステル、
ジイソプロポキシビスアルキルアセト酢酸エステル、
ジ−n−アルコキシ−ビスアルキルアセト酢酸エステル、
ヒドロキシアルキレンジアミントリアセテート、
トリアルカノールアミン又は/及び
トリアルキレンテトラミン
をベースとすることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
粒子形の無機化合物として、微粉砕粉末、分散液又は懸濁液、例えば炭酸塩、酸化物、珪酸塩又は硫酸塩、殊にコロイド状又は/及び非晶質の粒子を添加することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
粒子形の無機化合物として、アルミニウム、バリウム、セリウム、カルシウム、ランタン、珪素、チタン、イットリウム、亜鉛又は/及びジルコニウムの化合物少なくとも1種をベースとする粒子を添加することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
粒子形の無機化合物として、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、二酸化セリウム、二酸化珪素、珪酸塩、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛又は/及び酸化ジルコニウムをベースとする粒子を添加することを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
水性組成物は、粒子形の無機化合物少なくとも1種0.1〜500g/lを含有することを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
水性組成物は、殊にアミンをベースとする有機腐食防止剤少なくとも1種、有利にアルカノールアミン少なくとも1種−有利に長鎖アルカノールアミン、TPA−アミン−錯体少なくとも1種、例えば酸アダクト−4−オキソ−4−p−トリル−ブチレート−4−エチルモルホリン、アルキルアミノエタノール少なくとも1種、アミノカルボキシレートの、5−ニトロ−イソフタル酸又はシアン酸の亜鉛塩少なくとも1種、脂肪酸とのポリマーアミノ塩少なくとも1種、スルホン酸の金属塩少なくとも1種、例えばドデシル−ナフタリンスルホン酸、トルエンプロピオン酸のアミノ−及び遷移金属錯体少なくとも1種、2−メルカプト−ベンゾチアゾリル−コハク酸又はそのアンモニウム塩少なくとも1種、導電性ポリマー少なくとも1種又は/及びチオール少なくとも1種を含有し、この際、水性組成物中の有機腐食防止剤の含有率は、有利に0.01〜5質量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
水性組成物は、カチオンとしてのチタン、ハフニウム又は/及びジルコニウムをベースとし又は/及びアニオンとしてのカーボネート又はアンモニウムカーボネートをベースとする塩基性架橋剤少なくとも1種を含有し、この際、水性組成物中のこのような架橋剤の含有率は、有利に0.01〜3質量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から222までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
水性組成物に、無機酸又は/及び有機カルボン酸を添加しないことを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
塗膜形成助剤として、ジオールの群から選択される長鎖アルコール少なくとも1種、例えばエチレンオキシド及びプロピレンオキシド、ブタンジオール、プロパンジオール又は/及びデカンジオール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、エステルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、グリコールエーテル、例えばジ−及びトリエチレングリコールとそれらのモノ−及びジエーテル及びジメチルエーテル、ポリエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリグリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、グリコールエーテル、トリメチルペンタンジオールイソブチレートとからのブロックコポリマー及びそれらの誘導体を使用し、この際、水性組成物中の長鎖アルコールの含有率は、有利に0.01〜10質量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
潤滑剤として、パラフィン、ポリオエチレン及びポリプロピレンの群から選択されるワックス少なくとも1種、殊に酸化されたワックスを使用し、この際、水性組成物中のワックスの含有率は、有利に0.01〜5質量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
潤滑剤として、ワックス少なくとも1種をエチレン及びアクリル酸を含有するポリマー混合物又は/及びコポリマーと一緒に使用することを特徴とする、請求項1から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
被覆を、部分的に乾燥及び皮膜化によって、並びに部分的に化学線照射、カチオン重合又は/及び熱的架橋によって硬化させることを特徴とする、請求項1から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
水性組成物は、殊に殺菌剤少なくとも1種、消泡剤少なくとも1種又は/及び湿潤剤少なくとも1種の群から選択される添加剤少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
水性組成物を、5〜50℃の範囲の温度で金属表面上に施与することを特徴とする、請求項1から29までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
金属表面を、被覆の適用時に5〜60℃の範囲の温度に保持することを特徴とする、請求項1から30までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
被覆された金属表面を、循環空気温度20〜400℃の範囲の温度で乾燥させることを特徴とする、請求項1から31までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
被覆されたストリップを、場合により40〜70℃の範囲の温度まで冷却の後に、巻き上げてコイルにすることを特徴とする、請求項1から32までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
水性組成物を、ロール塗装、流れ塗装、ナイフ塗装、吹き付け塗装、噴霧、刷毛塗り又は浸漬及び場合によるロールを用いる後絞りによって塗布することを特徴とする、請求項1から33までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
乾燥され、かつ場合により硬化もされた膜は、DIN53157によるケーニッヒの振かん硬度試験装置を用いて測定される振かん硬度30〜190sを有することを特徴とする、請求項1から34までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
乾燥され、かつ場合により硬化もされた膜は、DIN ISO 6860による、直径3.2mm〜38mmのマンドレルでのマンドレル曲げ試験において、円錐形マンドレル上で曲げる場合に、充分に−但し試験面を引き裂くことなしに−2mmより長い亀裂(これは、引き続く硫酸銅で濡らす際に、亀裂した金属表面上の銅沈積の結果としての変色により認識可能である)が生じない程度の可とう性を有することを特徴とする、請求項1から35までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
乾燥され、かつ場合によっては硬化もされた皮膜上に、それぞれ印刷インキ、シート、ラッカー、ラッカー類似物質、粉体塗料、接着剤又は/及び接着剤キャリヤーからの被覆少なくとも1層を施与することを特徴とする、請求項1から36までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
被覆された金属部材、ストリップ又はストリップ片を、変形させ、ポリマー、例えばPVCで被覆し、印刷し、膠化させ、熱蝋付けし、溶接し又は/及び締め付け又は他の接合法によって相互に又は他の要素と結合させることを特徴とする、請求項1から37までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
金属表面を更なる被覆の前に前処理する又はこの表面を処理するための水性組成物において、この組成物は、水と共に
a)加水分解可能な又は少なくとも部分的に加水分解されたシラン少なくとも1種、
b)金属キレート少なくとも1種、
c)水溶性の又は水分散された、3〜250の範囲の酸価を有する有機ポリマー又は/及びコポリマー少なくとも1種を する有機塗膜形成成分少なくとも1種及び
d)塗膜形成助剤としての長鎖アルコール少なくとも1種
を含有することを特徴とする、金属表面を更なる被覆の前に前処理する又はこの表面を処理するための水性組成物。
【請求項40】
線材、ストリップ、金属板又は巻線、編線、鋼ストリップ、金属板、内張り材、スクリーン用の部材、車体又は車体用の部材、乗物、トレーラー、キャンピングカー又は飛行物体用の部材、カバー、筐体、ランプ、照明、交通信号灯要素、家具片又は家具要素、家庭電化製品の要素、架台、形材、複雑な形状の成形部材、ガードレール要素、ヒーター要素又はフェンス要素、バンパー、少なくとも1つの管又は/及び形材から成る又はそれらを有する部材、窓枠、戸枠又は自転車フレーム又は小部材、例えばネジ、ナット、フランジ、バネ又はめがねフレームとしての、請求項1から38までのいずれか1項に記載の方法で被覆された基材の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面を、更なる被覆の前に前処理する又は処理するための、充分に又は完全にクロム(VI)−化合物不含であってよい水性組成物で被覆する方法において、この組成物は、水と共に
a)加水分解可能な又は少なくとも部分的に加水分解されたシラン少なくとも1種、
b)水性組成物中で僅かのみの反応性を有する金属キレート少なくとも1種、
c)3〜250の範囲の酸価を有する水溶性又は水分散された有機ポリマー又は/及びコポリマー少なくとも1種を有する有機塗膜形成成分少なくとも1種(この際、組成物の固体含分に対する有機塗膜形成成分の含有率は>45質量%である)及び
d)塗膜形成助剤としての長鎖アルコール少なくとも1種
を含有しており、この際、酸洗いされ、精製され又は/及び前処理された、きれいな金属表面を、この水性組成物と接触させ、かつ、金属表面上に皮膜を形成させ、これを引き続き乾燥させ、部分的に又は完全に皮膜化により凝固させ、かつ場合によっては付加的に硬化させる(この際、乾燥され、かつ場合により硬化された皮膜は0.01〜10μmの範囲の層厚を有する)ことを特徴とする、金属表面を水性組成物で被覆する方法。
【請求項2】
水性組成物中には、群:
)直径0.005〜0.3μmの範囲の走査電子顕微鏡で測定される平均粒径を有する、粒子形の無機化合物少なくとも1種、
)潤滑剤少なくとも1種、
)有機腐食防止剤少なくとも1種、
)防食顔料少なくとも1種、
)合成樹脂の中和又は/及び立体的安定化のための薬剤少なくとも1種、
)有機溶剤少なくとも1種、
)シロキサン少なくとも1種及び
)クロム(VI)−化合物少なくとも1種
から選択される成分e)少なくとも1種が含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機塗膜形成成分は、アクリレート、エポキシド、エチレン、尿素−ホルムアルデヒド、フェノール、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン、スチレンブタジエン又は/及びビニルをベースとする合成樹脂含分を有するポリマー少なくとも1種又は/及びコポリマー少なくとも1種からの合成樹脂混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
合成樹脂としての有機塗膜形成成分は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリビニルピロリドン又は/及びポリアスパラギン酸をベースとする有機ポリマー、コポリマー又は/及びこれらの混合物、殊に燐含有ビニル化合物とのコポリマーの含分をも有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
有機塗膜形成成分は、3〜80の範囲の酸価を有するコポリマー少なくとも1種を、殊に添加される合成樹脂の少なくとも50質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
有機塗膜形成成分は、
アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−コポリマー、
アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−スチレン−コポリマー、
アクリル酸エステル、
場合により遊離の酸又は/及びアクリロニトリルを有するアクリル酸エステル−メタクリル酸エステル、
エチレン−アクリル−混合物、
エチレン−アクリル−コポリマー、
エチレン−アクリル−ポリエステル−コポリマー、
エチレン−アクリル−ポリウレタン−コポリマー、
エチレン−アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−コポリマー、
エチレン−アクリル−ポリエステル−ポリウレタン−スチレン−コポリマー、
エチレン−アクリル−スチレン−コポリマー、
遊離のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂とメラミン−ホルムアルデヒド樹脂との組合せ物、
アクリレート及びスチレンをベースとする合成樹脂混合物又は/及びコポリマー、
スチレンブタジエンをベースとする合成樹脂混合物又は/及びコポリマー、
アクリレート及びエポキシドの合成樹脂混合物又は/及びコポリマー、
アクリル−変性されたカルボキシル基含有ポリエステルとメラミン−ホルムアルデヒド及びエチレン−アクリル−コポリマーとを一緒にしたもの、
ポリカーボネート−ポリウレタン、
ポリエステル−ポリウレタン、
スチレン、
スチレン−酢酸ビニル、
酢酸ビニル、
ビニルエステル又は/及び
ビニルエーテル
を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
添加される有機塗膜形成成分の少なくとも30質量%は、皮膜化可能な熱可塑性樹脂から成っていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
添加される合成樹脂の分子量は、少なくとも1000uの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
添加される有機塗膜形成成分は、高分子量ポリマー少なくとも40質量%から成っていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
合成樹脂の酸基は、アンモニア、アミン、例えばモルホリン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン又はトリエタノールアミンで又は/及びアルカリ金属化合物、例えば水酸化ナトリウムで安定化されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
水性組成物は、有機塗膜形成成分0.1〜980g/lを含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水性組成物中には、それぞれアシルオキシシラン、アルコキシシラン、少なくとも1個のアミノ基を有するシラン、少なくとも1個のコハク酸基又は/及び無水コハク酸基を有するシラン、ビス−シリル−シラン、少なくとも1個のエポキシ基を有するシラン、(メタ)アクリラト−シラン、多シリル化シラン、ウレイドシラン、ビニルシラン少なくとも1種又は/及びシラノール少なくとも1種又は/及び前記のシランに相応する化学的組成のシロキサン少なくとも1種が含まれることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
含有されるシラン少なくとも1種は、群:
グリシドオキシアルキルトリアルコキシシラン、
メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、
(トリアルコキシシリル)アルキルコハク酸シラン、
アミノアルキルアミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、
(エポキシシクロアルキル)アルキルトリアルコキシシラン、
ビス−(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、
ビス−(トリアルコキシシリルアルキル)エタン、
(エポキシアルキル)トリアルコキシシラン、
アミノアルキルトリアルコキシシラン、
ウレイドアルキルトリアルコキシシラン、
N−(トリアルコキシシリルアルキル)アルキレンジアミン、
N−(アミノアルキル)アミノアルキルトリアルコキシシラン、
N−(トリアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、
ポリ(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシラン、
トリス(トリアルコキシシリル)アルキルイソシアヌレート、
ウレイドアルキルトリアルコキシシラン及び
アセトキシシラン
から選択されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
含有されるシラン少なくとも1種は、群:
3−グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、
3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、
3−メタアクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、
3−メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、
3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸シラン、
アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、
アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、
ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、
ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、
ガンマ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、
ガンマ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、
ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、
ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、
(3,4−エポキシブチル)トリエトキシシラン、
(3,4−エポキシブチル)トリメトキシシラン、
ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、
ガンマ−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、
N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、
N−ベータ−(アミノエチル)−ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
N−ベータ−(アミノエチル)−ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−(ガンマ−トリエトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、
N−(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、
N−(ガンマ−トリエトキシシリルプロピル)ジメチレントリアミン、
N−(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)ジメチレントリアミン、
ポリ(アミノアルキル)エチルジアルコキシシラン、
ポリ(アミノアルキル)メチルジアルコキシシラン、
トリス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート、
トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート及び
ビニルトリアセトキシシラン
から選択されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水性組成物中の、シラン(それから生じる反応生成物を包含する)少なくとも1種の含分は、有利に0.1〜50g/lであることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
金属キレート少なくとも1種は、アセチルアセトネート、アセト酢酸エステル、アセトネート、アルキレンジアミン、アミン、ラクテート、カルボン酸、シトレート又は/及びグリコールをベースとするキレート錯体から選択されており、この際、水性組成物中のキレート(場合によりこれから生じる反応生成物を包含する)少なくとも1種の含分は、有利に0.1〜80g/lであることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
選択される金属キレート少なくとも1種は、
アセチルアセトネート、
アルカリラクテート、
アルカノールアミン、
アルキルアセトアセテート、
アルキレンジアミンテトラアセテート、
アンモニウムラクテート、
シトレート、
ジアルキルシトレート、
ジアルキルエステルシトレート、
ジアルキレントリアミン、
ジイソアルコキシビスアルキルアセト酢酸エステル、
ジイソプロポキシビスアルキルアセト酢酸エステル、
ジ−n−アルコキシ−ビスアルキルアセト酢酸エステル、
ヒドロキシアルキレンジアミントリアセテート、
トリアルカノールアミン又は/及び
トリアルキレンテトラミン
をベースとすることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
粒子形の無機化合物として、微粉砕粉末、分散液又は懸濁液、例えば炭酸塩、酸化物、珪酸塩又は硫酸塩、殊にコロイド状又は/及び非晶質の粒子を添加することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
粒子形の無機化合物として、アルミニウム、バリウム、セリウム、カルシウム、ランタン、珪素、チタン、イットリウム、亜鉛又は/及びジルコニウムの化合物少なくとも1種をベースとする粒子を添加することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
粒子形の無機化合物として、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、二酸化セリウム、二酸化珪素、珪酸塩、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛又は/及び酸化ジルコニウムをベースとする粒子を添加することを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
水性組成物は、粒子形の無機化合物少なくとも1種0.1〜500g/lを含有することを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
水性組成物は、殊にアミンをベースとする有機腐食防止剤少なくとも1種、有利にアルカノールアミン少なくとも1種−有利に長鎖アルカノールアミン、TPA−アミン−錯体少なくとも1種、例えば酸アダクト−4−オキソ−4−p−トリル−ブチレート−4−エチルモルホリン、アルキルアミノエタノール少なくとも1種、アミノカルボキシレートの、5−ニトロ−イソフタル酸又はシアン酸の亜鉛塩少なくとも1種、脂肪酸とのポリマーアミノ塩少なくとも1種、スルホン酸の金属塩少なくとも1種、例えばドデシル−ナフタリンスルホン酸、トルエンプロピオン酸のアミノ−及び遷移金属錯体少なくとも1種、2−メルカプト−ベンゾチアゾリル−コハク酸又はそのアンモニウム塩少なくとも1種、導電性ポリマー少なくとも1種又は/及びチオール少なくとも1種を含有し、この際、水性組成物中の有機腐食防止剤の含有率は、有利に0.01〜5質量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
水性組成物は、カチオンとしてのチタン、ハフニウム又は/及びジルコニウムをベースとし又は/及びアニオンとしてのカーボネート又はアンモニウムカーボネートをベースとする塩基性架橋剤少なくとも1種を含有し、この際、水性組成物中のこのような架橋剤の含有率は、有利に0.01〜3質量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から222までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
水性組成物に、無機酸又は/及び有機カルボン酸を添加しないことを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
塗膜形成助剤として、ジオールの群から選択される長鎖アルコール少なくとも1種、例えばエチレンオキシド及びプロピレンオキシド、ブタンジオール、プロパンジオール又は/及びデカンジオール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、エステルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、グリコールエーテル、例えばジ−及びトリエチレングリコールとそれらのモノ−及びジエーテル及びジメチルエーテル、ポリエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリグリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、グリコールエーテル、トリメチルペンタンジオールイソブチレートとからのブロックコポリマー及びそれらの誘導体を使用し、この際、水性組成物中の長鎖アルコールの含有率は、有利に0.01〜10質量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
潤滑剤として、パラフィン、ポリオエチレン及びポリプロピレンの群から選択されるワックス少なくとも1種、殊に酸化されたワックスを使用し、この際、水性組成物中のワックスの含有率は、有利に0.01〜5質量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
潤滑剤として、ワックス少なくとも1種をエチレン及びアクリル酸を含有するポリマー混合物又は/及びコポリマーと一緒に使用することを特徴とする、請求項1から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
被覆を、部分的に乾燥及び皮膜化によって、並びに部分的に化学線照射、カチオン重合又は/及び熱的架橋によって硬化させることを特徴とする、請求項1から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
水性組成物は、殊に殺菌剤少なくとも1種、消泡剤少なくとも1種又は/及び湿潤剤少なくとも1種の群から選択される添加剤少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
水性組成物を、5〜50℃の範囲の温度で金属表面上に施与することを特徴とする、請求項1から29までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
金属表面を、被覆の適用時に5〜60℃の範囲の温度に保持することを特徴とする、請求項1から30までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
被覆された金属表面を、循環空気温度20〜400℃の範囲の温度で乾燥させることを特徴とする、請求項1から31までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
被覆されたストリップを、場合により40〜70℃の範囲の温度まで冷却の後に、巻き上げてコイルにすることを特徴とする、請求項1から32までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
水性組成物を、ロール塗装、流れ塗装、ナイフ塗装、吹き付け塗装、噴霧、刷毛塗り又は浸漬及び場合によるロールを用いる後絞りによって塗布することを特徴とする、請求項1から33までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
乾燥され、かつ場合により硬化もされた膜は、DIN53157によるケーニッヒの振かん硬度試験装置を用いて測定される振かん硬度30〜190sを有することを特徴とする、請求項1から34までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
乾燥され、かつ場合により硬化もされた膜は、DIN ISO 6860による、直径3.2mm〜38mmのマンドレルでのマンドレル曲げ試験において、円錐形マンドレル上で曲げる場合に、充分に−但し試験面を引き裂くことなしに−2mmより長い亀裂(これは、引き続く硫酸銅で濡らす際に、亀裂した金属表面上の銅沈積の結果としての変色により認識可能である)が生じない程度の可とう性を有することを特徴とする、請求項1から35までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
乾燥され、かつ場合によっては硬化もされた皮膜上に、それぞれ印刷インキ、シート、ラッカー、ラッカー類似物質、粉体塗料、接着剤又は/及び接着剤キャリヤーからの被覆少なくとも1層を施与することを特徴とする、請求項1から36までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
被覆された金属部材、ストリップ又はストリップ片を、変形させ、ポリマー、例えばPVCで被覆し、印刷し、膠化させ、熱蝋付けし、溶接し又は/及び締め付け又は他の接合法によって相互に又は他の要素と結合させることを特徴とする、請求項1から37までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
金属表面を更なる被覆の前に前処理する又はこの表面を処理するための水性組成物において、この組成物は、水と共に
a)加水分解可能な又は少なくとも部分的に加水分解されたシラン少なくとも1種、
b)水性組成物中で僅かのみの反応性を有する金属キレート少なくとも1種、
c)水溶性の又は水分散された、3〜250の範囲の酸価を有する有機ポリマー又は/及びコポリマー少なくとも1種を有する有機塗膜形成成分少なくとも1種(この際、組成物の固体含分に対する有機塗膜形成成分の含有率は>45質量%である)及び
d)塗膜形成助剤としての長鎖アルコール少なくとも1種
を含有することを特徴とする、金属表面を更なる被覆の前に前処理する又はこの表面を処理するための水性組成物。
【請求項40】
線材、ストリップ、金属板又は巻線、編線、鋼ストリップ、金属板、内張り材、スクリーン用の部材、車体又は車体用の部材、乗物、トレーラー、キャンピングカー又は飛行物体用の部材、カバー、筐体、ランプ、照明、交通信号灯要素、家具片又は家具要素、家庭電化製品の要素、架台、形材、複雑な形状の成形部材、ガードレール要素、ヒーター要素又はフェンス要素、バンパー、少なくとも1つの管又は/及び形材から成る又はそれらを有する部材、窓枠、戸枠又は自転車フレーム又は小部材、例えばネジ、ナット、フランジ、バネ又はめがねフレームとしての、請求項1から38までのいずれか1項に記載の方法で被覆された基材の使用。

【公表番号】特表2006−519308(P2006−519308A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501943(P2006−501943)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001829
【国際公開番号】WO2004/076568
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(500399116)ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】Chemetall GmbH
【住所又は居所原語表記】Trakehner Str. 3, D−60487 Frankfurt am Main,Germany
【Fターム(参考)】