説明

鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法

【課題】鉛蓄電池用格子体に存在する形状変化を、バラツキなく高精度で検出できるばかりではなく、検出した鉛蓄電池用格子体の形状変化から、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常、例えば、鋳造鋳型に塗布されている離型剤の寿命及び鋳造装置の不具合を迅速かつ適確に判定可能な、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法を提供するものである。
【解決手段】鋳造された鉛蓄電池用格子体の形状変化を検出して、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常を判定する方法であって、(a)鉛蓄電池用格子体の形状変化検出領域を照明する工程、(b)照明された形状変化検出領域を撮像する工程、(c)撮像された画像に2値化処理及び任意的に収縮処理を施す工程、(d)上記処理後の画像から鉛蓄電池用格子体の形状変化を検出する工程、並びに(e)検出した形状変化から、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常を判定する工程を含む、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法に関し、更に詳しくは、鋳造された鉛蓄電池用格子体の形状変化を画像解析により検出して、該検出した形状変化から、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高容量化、高サイクル化された高性能な鉛蓄電池への要求が、急速に高まりつつある。これらの鉛蓄電池用格子体を製造するに際しては、一般的に、重力鋳造法及び連続鋳造法が使用されている。とりわけ、重力鋳造法で製造した鉛蓄電池用格子体は電池性能が高い故、重力鋳造法は高性能な鉛蓄電池の製造には欠かすことのできない技術となっている。
【0003】
この重力鋳造法により製造された鉛蓄電池用格子体の品質検査は、最終的には主に検査員の目視により行われている。しかし、目視検査は、検査員毎の個人差、及び、形状、品質等が相違する格子体の種類毎における検査基準の相違等に伴うバラツキを回避できない。また、目視検査は、連続した緊張を検査員に課する作業であることから、検査員の注意力の低下を招くことが多々ある。従って、見落とし、見誤り、及び判定ミス等が生ずる可能性が高く、検査精度に問題があった。検査精度を向上するために、再チェック等の方式を取り入れてはいるが、これにより検査に要する時間及び人手が増加し、検査コストの高騰を招いているというのが現状である。
【0004】
加えて、重力鋳造法による鉛蓄電池用格子体の製造は、通常、製造に携わる作業員が、一人で複数の鋳造装置を操作し、同時に鉛蓄電池用格子体の製造状況を監視しながらメンテナンスを行っている。従って、例えば、複数の鋳造装置のうちの1台に不具合が生じた場合には、作業員は、不具合の生じた鋳造装置の不具合解消に専念せざるを得ない。その結果、それ以外の鋳造装置を監視することができず、形状変化した鉛蓄電池用格子体が発生したとしても、それに気づかないという状況が生じ、やがては欠陥を有する格子体を製造し続けてしまうという問題があった。かかる観点からも、鋳造された鉛蓄電池用格子体の形状変化を、バラツキなく高精度で検出する方法が要望されていた。
【0005】
鉛蓄電池用格子体製造以外の分野において、人間による目視検査法以外の方法で欠陥等を検査して、検査対象物の良否を判定する多くの方法が知られている。例えば、所定の支持台、走査手段、透明体の検査領域を撮像する撮像手段、透明体の検査領域を照明する照明手段、走査制御手段、加速度探知手段及び撮像制御手段を有する透明体の欠陥を検査する欠陥検査装置及び該装置を使用した欠陥検査方法(特許文献1)、並びに、被測定パターンと比較するための基準となる所定の3個のマスターパターンを作成し、これらと被測定パターンの画像との論理演算処理を行うことにより、被測定パターンを検査する検査方法(特許文献2)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−266779号公報
【特許文献2】特開2001−229383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、鉛蓄電池用格子体に存在する形状変化を、バラツキなく高精度で検出できるばかりではなく、検出した鉛蓄電池用格子体の形状変化から、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常、例えば、鋳造鋳型に塗布されている離型剤の寿命及び鋳造装置の不具合を迅速かつ適確に判定可能な、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来、作業員による目視検査によりなされていた鉛蓄電池用格子体の品質検査の精度向上を図るべく、種々検討を重ねた。その結果、製造された鉛蓄電池用格子体を撮像し、得られた画像に所定の処理を施すことにより、鉛蓄電池用格子体の形状変化を検出すれば、該形状変化をバラツキなく高精度で検出できることを見出した。加えて、鉛蓄電池用格子体に存する格子体特有の形状変化に着目すれば、驚くべきことに、該形状変化から、該鉛蓄電池用格子体の鋳造に使用した鉛蓄電池用格子体鋳造装置に現存する所定の異常を、いち早く発見することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)鋳造された鉛蓄電池用格子体の形状変化を検出して、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常を判定する方法であって、
(a)鉛蓄電池用格子体の形状変化検出領域を照明する工程、
(b)照明された形状変化検出領域を撮像する工程、
(c)撮像された画像に2値化処理及び任意的に収縮処理を施す工程、
(d)上記処理後の画像から鉛蓄電池用格子体の形状変化を検出する工程、並びに
(e)検出した形状変化から、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常を判定する工程
を含む、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法
である。
【0010】
好ましい態様として、
(2)工程(c)において2値化処理を施された鉛蓄電池用格子体の画像に、更に、回転補正を施して、該鉛蓄電池用格子体の画像の上辺又は下辺が水平になるように画像処理する、上記(1)記載の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法、
(3)工程(d)において検出する形状変化が、目切れ、やせ(細り)、余剰鉛(イバリ)、切断不良及び変形より成る群から選ばれる一つ以上である、上記(1)又は(2)記載の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法、
(4)工程(e)において判定する異常が、鋳造鋳型に塗布されている離型剤の寿命、切断装置の切断位置ズレ及び搬送装置の搬送位置タイミングズレである、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法、
(5)工程(d)において、やせ(細り)及び余剰鉛(イバリ)のいずれかが検出されたとき、又は、目切れが連続して5回検出されたとき、工程(e)において、鉛蓄電池用格子体鋳造装置に備えられた鋳造鋳型に塗布された離型剤の寿命と判定する、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法、
(6)工程(d)において、切断不良が連続して5回検出されたとき、工程(e)において、鉛蓄電池用格子体鋳造装置に備えられた切断装置の切断位置ズレと判定する、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法、
(7)工程(d)において、変形が連続して5回検出されたとき、工程(e)において、鉛蓄電池用格子体鋳造装置に備えられた基板搬送装置の搬送位置タイミングズレと判定する、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法によれば、鉛蓄電池用格子体の形状変化を、バラツキなく高精度で検出できるばかりではなく、検出した鉛蓄電池用格子体の形状変化から、該格子体を鋳造した鉛蓄電池用格子体鋳造装置に現存する異常、例えば、鋳造鋳型に塗布されている離型剤の寿命、並びに、鋳造機の不具合、例えば、切断装置の切断位置ズレ及び搬送装置の搬送位置タイミングズレ等を迅速かつ適確に判定し得る。このように不具合を迅速かつ適確に判定し得ることから、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常に迅速かつ的確に対処し得る。従って、鉛蓄電池用格子体鋳造を緊急に停止する等の不測の事態を招くことがなく、生産性の向上を大いに図ることができるのみならず、不良品の製造を著しく減らすことができて、市場への不良品の流出を適確に防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の異常判定方法において使用する、鉛蓄電池用格子体の形状変化検出装置20を、鉛蓄電池用格子体1の製造ラインに組み込んだ状態を示した説明図である。
【図2】図2は、鉛蓄電池用格子体1の画像を2値化処理した後の画像を示した説明図である。
【図3】図3は、鉛蓄電池用格子体1の「目切れ」の検出範囲を示した説明図である。
【図4】図4は、鉛蓄電池用格子体1の「やせ(細り)」の検出範囲を示した説明図である。
【図5】図5は、鉛蓄電池用格子体1の「余剰鉛(イバリ)」の検出範囲を示した説明図である。
【図6】図6は、鉛蓄電池用格子体1の「切断不良」の検出範囲を示した説明図である。
【図7】図7は、鉛蓄電池用格子体1の「変形」の検出範囲を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、鋳造された鉛蓄電池用格子体の形状変化を検出して、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常を判定する方法である。該方法は、(a)鉛蓄電池用格子体の形状変化検出領域を照明する工程、(b)照明された形状変化検出領域を撮像する工程、(c)撮像された画像に2値化処理及び任意的に収縮処理を施す工程、(d)上記処理後の画像から鉛蓄電池用格子体の形状変化を検出する工程、並びに、(e)検出した形状変化から、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常を判定する工程を含む。上記方法において、工程(d)において検出する形状変化は、好ましくは、「目切れ」、「やせ(細り)」、「余剰鉛(イバリ)」、「切断不良」及び「変形」である。ここで、「目切れ」とは、鋳造中の湯周り性の低下により、鉛蓄電池用格子体の内格子の一部が格子状に繋がらないまま凝固してしまう形状変化を言い、「やせ(細り)」とは、鋳造中の湯周り性の低下により、鉛蓄電池用格子体の外枠及び内格子、とりわけ、外枠が細い状態で凝固してしまう形状変化、及び、耳部が本来の面積より小さい面積で凝固してしまう形状変化を言い、「余剰鉛(イバリ)」とは、鉛蓄電池用格子体の格子形状部分以外へと溶湯が流出して、不必要な部分を形成する形状変化を言い、「切断不良」とは、鋳造された鉛蓄電池用格子体を製品として加工する際、搬送時の鉛蓄電池用格子体の傾き及び切断加工のタイミングの不具合によって生ずる形状変化を言い、「変形」とは、鉛蓄電池用格子体の鋳造後の搬送、加工の段階において生ずる外枠の変形に伴う形状変化を言う。鉛蓄電池用格子体の外枠は、通常、長方形又は正方形であるが、この「変形」により外枠が菱形に変形したり、外枠にねじれが生じたりする。ここで、形状変化とは、鉛蓄電池用格子体が不良品に至ったことを示すものではなく、その手前の段階を示すものである。
【0014】
以下、本発明の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法の一実施態様を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の異常判定方法において使用する、鉛蓄電池用格子体の形状変化検出装置20を、鉛蓄電池用格子体1の製造ラインに組み込んだ状態を示した説明図である。ここで、形状変化検出装置20は、画像処理装置21、画像制御装置22、モニター装置23、撮像装置24、照明装置25、センサー26、照明電源27、及び、警報装置28から構成されている。図1に基づいて、本発明の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法の各工程について説明する。鉛蓄電池用格子体鋳造装置は、所定の鉛蓄電池用格子体形状に刻印された固定鋳型と移動鋳型を合わせてなる鋳造機と、移動鋳型を移動して鋳造機を開放して落下した鋳造格子体から湯口部や無駄骨部等の無用な部分を切断して所定の形状にするための切断装置と、所定形状に切断された後、切断装置から落下した格子体を捕捉し、次工程へ移送する移送装置と、鋳造機と切断装置間、切断装置と移送装置間にある搬送装置等からなる。これら鋳造装置により鋳造された被検査対象である鉛蓄電池用格子体1は、移送装置により搬送ベルト10上に載置され、形状検出装置20に搬送される。搬送ベルト10により搬送された鉛蓄電池用格子体1は、所定のサイクルで上下運動しているストッパー11により、所定の位置に停止される。工程(a)において、通常予め点灯されている照明装置25により、鉛蓄電池用格子体1の形状変化検出領域、好ましくは鉛蓄電池用格子体1の全面が照明される。照明装置25は鉛蓄電池用格子体1の形状変化検出領域全体を十分に照明し得るものであれば、その種類及び数を問わない。但し、搬送ベルト10により搬送されてくる鉛蓄電池用格子体1が常に一定の位置に存在するとは限らず多少の位置ずれを生ずることがあること、あるいは鉛蓄電池用格子体1の種類の変更により、その形状変化検出領域の面積が変化すること等がある。この際、鉛蓄電池用格子体1の形状変化検出領域全体を十分に照明できないことにより影の部分が存在すると、精度よく形状変化を検出できないことがある。従って、図1に示すように、照明装置25を複数個設置することが好ましい。工程(b)において、搬送された鉛蓄電池用格子体1が停止されたとき、反射式センサー26がストッパー11の運動を検出し、次いで、照明装置25が照らしている鉛蓄電池用格子体1の形状変化検出領域を、撮像装置24、例えば、カメラにて撮像して画像を取り込む。工程(c)において、撮像装置24により取り込まれた画像は、画像処理装置21及び画像制御装置22において画像処理して2値化処理が行われる。ここで、2値化処理は公知であり、多数の画素の色情報を整理して分類する処理を言う。次いで、2値化処理された画像はモニター23へ送られ、モニター23において映し出される。また、2値化処理された画像は、任意的に収縮処理を施され得る。ここで、収縮処理は公知であり、好ましくは3画素分収縮させる処理を言う。この収縮処理により、鉛蓄電池用格子体1に規定の寸法未満の部分が存在すると、2値化処理後にモニター23上で白色に映っていた部分の画像が消滅して黒色に変化する。次いで、工程(d)において、このようにして処理された鉛蓄電池用格子体1の画像から、鉛蓄電池用格子体1の形状変化、好ましくは「目切れ」、「やせ(細り)」、「余剰鉛(イバリ)」、「切断不良」及び「変形」を検出する。その結果、鉛蓄電池用格子体1に形状変化が認められず、形状変化なしと判定されれば、鉛蓄電池用格子体1は、そのまま搬送ベルト10で鉛蓄電池用格子体1の集積場へと搬送される。一方、形状変化が認められれば、工程(e)において、工程(d)で検出された形状変化から、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常の有無及びその種類を判定し、異常が存在すれば、その解決処理が実行される。
【0015】
以下、撮像装置24により撮像された画像を処理して、該画像から鉛蓄電池用格子体1の形状変化を検出する方法を説明する。図2には、鉛蓄電池用格子体1の画像を2値化処理した後の画像を示す。モニター23に映し出された画像は、例えば、図2に示したように、鉛蓄電池用格子体1の部分が白色になり、かつ背景部分が黒色になる。該画像は、好ましくは、下記のようにして更に画像処理される。まず、映し出された鉛蓄電池用格子体1の画像の4個の角に補足点A、B、C、Dを設け、夫々の補足点に位置判定用のウインドウ6を設ける。この補足点A及びBの間、並びに、C及びDの間で直線を引き、直線AB又はCD、好ましくは直線ABが水平になるように回転補正を施す。そして、このようにして処理した画像を使用して、所定の形状変化、好ましくは、「目切れ」、「やせ(細り)」、「余剰鉛(イバリ)」、「切断不良」及び「変形」を検出する。
【0016】
図3は、鉛蓄電池用格子体1の「目切れ」の検出範囲を示した説明図である。「目切れ」が増加すると、鉛蓄電池用格子体1が集電率の低下を招くため好ましくない。「目切れ」の発生位置は、鉛蓄電池用格子体1の内格子2の部分であり、図3に示した補足点A、B、C、Dで囲まれた範囲になる。判定は、補足点A、B、C、Dで囲まれた範囲に存在する背景の黒色部分(コマ3)の数を測定することにより実施される。このコマ数は、鉛蓄電池用格子体1の種類によって予め決まっているため、コマの測定数が、予め決まっているコマ数より少なければ、鉛蓄電池用格子体1の内格子2に途切れ、即ち、目切れが生じていて、隣接するコマ同士が繋がっていることを示している。「目切れ」は、コマの測定数が、(予め決まっているコマ数−2)より小さい場合に、形状変化ありと判定される。
【0017】
図4は、鉛蓄電池用格子体1の「やせ(細り)」の検出範囲を示した説明図である。「やせ(細り)」の発生位置は、鉛蓄電池用格子体1の主に外枠4及び耳部5である。「やせ(細り)」が外枠4に発生すると、集電時の抵抗増加及び鉛蓄電池用格子体1の早期劣化が生じて好ましくなく、一方、耳部5に発生すると、外枠4に生じる上記の不具合が発生すると同時に、後工程における不具合、とりわけ、ストラップの鋳造における耳抜けの要因となるため好ましくない。「やせ(細り)」の検出範囲は、外枠4に関しては、図4に示した補足点A、B、C、Dで囲まれた範囲であり、一方、耳部5に関しては、鉛蓄電池用格子体1の製造上、耳部5の位置の変化は全くないことから、図4に示したように、補足点A、Cを結んだ鉛蓄電池用格子体1の外枠4の外側の範囲である。判定は、外枠4と耳部5とで異なる。外枠4に関しては、2値化処理に加えて、更に、収縮処理を施した後、上記の「目切れ」の判定と同様に、コマ数を測定し、鉛蓄電池用格子体1の種類によって予め決まっているコマ数との比較により判定する。そして、「やせ(細り)」も、「目切れ」と同じく、コマの測定数が、(予め決まっているコマ数−2)より小さい場合に、形状変化ありと判定される。鉛蓄電池用格子体1の外枠4に規定寸法以下の部分が存在すると、収縮処理により、白色に映っていた部分の画像が消滅して黒色に変化する。一方、耳部5に関しては、2値化処理のみを実施した後、白色に映っている耳部5の面積値を測定することにより実施される。耳部5の面積値は、鉛蓄電池用格子体1の種類によって予め決まっているため、面積の測定値が、予め決まっている面積値の95%以下である場合に形状変化ありと判定される。
【0018】
図5は、鉛蓄電池用格子体1の「余剰鉛(イバリ)」の検出範囲を示した説明図である。「余剰鉛(イバリ)」の原因は、鉛蓄電池用格子体鋳造装置中の鋳造鋳型の内面に塗布されている離型剤の劣化によるものである。「余剰鉛(イバリ)」が形成されると、不要な溶湯、例えば、鉛を消費する故、製造コストの高騰を招き好ましくない。「余剰鉛(イバリ)」の発生位置は、鉛蓄電池用格子体1の全体であり、外枠4及び内格子2、並びに耳部5である。「余剰鉛(イバリ)」の検出範囲は、外枠4及び内格子2に関しては、図5に示したように、補足点A、B、C、Dで囲まれる範囲より一回り大きな範囲、即ち、補足点A、B、C、Dで囲まれる範囲を取り囲む範囲であり、一方、耳部5に関しては、鉛蓄電池用格子体1の製造上、耳部5の位置の変化は全くないことから、図5に示したように、補足点A、Cを結んだ鉛蓄電池用格子体1の外枠4の外側の範囲である。判定は、外枠4及び内格子2と耳部5とで異なる。外枠4及び内格子2に関しては、図5に示した補足点A、B、C、Dで囲まれる範囲より一回り大きな範囲で、2値化処理を施した後、更に、上記範囲で、収縮処理を、外枠4及び内格子2が背景と同色の黒色に変化するまで繰り返して実施し、黒色に変化した時点で、白色部分が残ったときは、これを「余剰鉛(イバリ)」として形状変化と判定される。一方、耳部5に関しては、2値化処理のみを実施した後、白色に映っている耳部5の面積値を測定することにより実施される。耳部5の面積値は、鉛蓄電池用格子体1の種類によって予め決まっているため、面積測定値が、予め決まっている面積値の105%以上である場合に、形状変化ありと判定される。
【0019】
図6は、鉛蓄電池用格子体1の「切断不良」の検出範囲を示した説明図である。「切断不良」が生ずると、後工程の充填工程において不具合が生じるとともに、下記で説明する「変形」の原因ともなり、生産性の低下を招くため好ましくない。「切断不良」の発生位置は、鉛蓄電池用格子体1の切断位置である。「切断不良」の判定は、図6に示したように、補足点A、Bを結ぶ線(破線I)、及びそれと平行な線(破線II)を、鉛蓄電池用格子体1の内格子の最上部にあるコマの黒色部分と外枠の白色部分との境界に配置し、両者の線、即ち、破線Iと破線IIとの距離、即ち、外枠の幅によって実施し、この距離が1〜3mmの範囲外であるとき形状変化ありと判定される。該距離が、上記の下限未満のときは、上部外枠が細くなり、上記上限を超えては、下部枠骨が細くなる。
【0020】
図7は、鉛蓄電池用格子体1の「変形」の検出範囲を示した説明図である。「変形」の判定は、補足点A及びBの間、並びに、C及びDの間で直線を引き、補足点A及びBの各点から、直線ABに対して垂線を引き、線分CDとの交点を求め、補足点Aからの垂線が線分CDと交差する点と補足点Cとの距離、及び、補足点Bからの垂線が線分CDと交差する点と補足点Dとの距離を測定し、そのいずれかの距離が1mm以上である場合に、形状変化ありと判定される。
【0021】
上記のようにして各種の形状変化が検出された後、次いで、該形状変化から鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常の有無及び種類が判定される。上記の各形状変化のうち、「目切れ」、「やせ(細り)」及び「余剰鉛(イバリ)」は、鉛蓄電池用格子体鋳造装置中の鋳造鋳型の内面に塗布されている離型剤の劣化に起因するものである。「やせ(細り)」及び「余剰鉛(イバリ)」の形状変化が検出された場合には、その時点で離型剤の寿命と判定される。また、「目切れ」の形状変化は突発的に発生することもあり得るところから、連続して5回検出された場合に、その時点で離型剤の寿命と判定される。また、「切断不良」は、鉛蓄電池用格子体鋳造装置に備えられた切断装置の切断位置の異常に起因するものである。該形状変化は、突発的に発生することもあり得るところから、連続して5回検出された場合に、その時点で切断位置ズレと判定される。また、「変形」は、鉛蓄電池用格子体鋳造装置に備えられた基板搬送装置の搬送位置タイミングの異常に起因するものである。該形状変化も、突発的に発生することもあり得るところから、連続して5回検出された場合に、その時点で搬送位置タイミングズレと判定される。なお、上記のようにして鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常と判定された場合には、図1に示された警報装置28により、その異常の種類が迅速かつ適確に示される。
【0022】
上記の工程(a)〜(e)の操作及び画像処理は、全てコンピューター操作により正確かつ迅速に実行される。鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常が警報装置28により迅速かつ適確に示される故、それにより、直ちに、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常を解消することができる。即ち、鋳造機の鋳型内面に離型剤を散布したり、切断装置や搬送装置を調整したりして、格子体の形状変化を解消することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法によれば、鉛蓄電池用格子体鋳造を緊急に停止する等の不測の事態を招くことがなく、生産性の向上を大いに図ることができるのみならず、不良品の製造を著しく減らすことができて、市場への不良品の流出を適確に防止し得る。従って、自動車用のみならず、産業用の鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定に積極的に使用されることが大いに期待される。
【符号の説明】
【0024】
1 鉛蓄電池用格子体
2 内格子
3 コマ
4 外枠
5 耳部
6 ウインドウ
10 搬送ベルト
11 ストッパー
20 形状変化検出装置
21 画像処理装置
22 画像制御装置
23 モニター装置
24 撮像装置
25 照明装置
26 センサー
27 照明電源
28 警報装置
A、B、C、D 補足点
I 破線I
II 破線II

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造された鉛蓄電池用格子体の形状変化を検出して、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常を判定する方法であって、
(a)鉛蓄電池用格子体の形状変化検出領域を照明する工程、
(b)照明された形状変化検出領域を撮像する工程、
(c)撮像された画像に2値化処理及び任意的に収縮処理を施す工程、
(d)上記処理後の画像から鉛蓄電池用格子体の形状変化を検出する工程、並びに
(e)検出した形状変化から、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常を判定する工程
を含む、鉛蓄電池用格子体鋳造装置の異常判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−226967(P2011−226967A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98438(P2010−98438)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】