説明

長繊維強化熱可塑性コンセントレート及びその製造方法

長繊維強化熱可塑性コンセントレートの製造方法を開示し、そこでは連続繊維ストランドが溶融混練熱可塑性水性分散液で被覆され、乾燥され、切断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂のマトリックス中で、実質的に同じ長さで、且つ同じ方向に平行な繊維を有する、ペレット状の長繊維強化熱可塑性コンセントレート(long fiber-reinforced thermoplastic concentrate)及びそのようなペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長繊維強化熱可塑性樹脂は、それらが優れた機械的強度、耐熱性及び成形性を有しているため、様々な工業製品の部材として広く使用されてきた。押出機中で切断された繊維を熱可塑性樹脂と混練することにより、長繊維強化熱可塑性樹脂を製造することは困難である。他方、長繊維強化熱可塑性樹脂が長繊維強化熱可塑性コンセントレートから製造できることは知られている。
【0003】
長繊維強化熱可塑性コンセントレートが、溶融引抜成形法により製造されることは知られている。溶融引抜成形法では、繊維ストランドは熱可塑性樹脂溶融物を通して引き出され、溶融マトリックスポリマー又は担体(carrier)樹脂で濡れた状態になる。後成形又はストリッピング手段がバラツキのない繊維含有量を定めるために用いられる。
【0004】
しかしながら、繊維のレベルは、代表的には、そのコンセントレート重量の50〜70重量%の間を超えることはない。熱可塑性樹脂溶融物が高粘度であるため、引抜成形の間に樹脂の繊維への浸透が不完全になりがちである。その溶融物による繊維ストランドへの適度な浸透を達成するため、一般に使用される引抜成形法では、担体樹脂として、非常に低分子量の熱可塑性樹脂が用いられる。しかしながら、長繊維強化熱可塑性コンセントレート中に存在する低分子量熱可塑性樹脂が低いレベルであってさえも、そのコンセントレートが加えられる未強化熱可塑性樹脂の機械的強度、耐熱性及び成形性に有害な作用を及ぼすおそれがある。
【0005】
特許文献1〜5に記載された方法においては、液体のポリマー粉末分散液が繊維ストランドを含浸するために使用される。熱可塑性樹脂の粉末、代表的には低分子量熱可塑性樹脂は、その粉末分散液を通して長手方向に移動する繊維ストランドに適用され、その分散媒、溶媒又は好ましくは水は、そのストランドから、例えば加熱によって除去され、次いで熱可塑性樹脂は溶融し、そしてその複合体(コンポジット)は、例えばロール掛けにより強固にされる。
【0006】
これらの方法において、分散液の浴を通って移動する繊維ストランドの上に、一定量の粉末を沈着させることには問題がある。複合体のポリマー含有量はその分散液の浴の固形分濃度に依存する。ストランドのすぐそばの濃度は変動して、引き続き供給される分散液の平均濃度に、常に厳密には対応しない。多くの矯正法、例えばガイド、ストランド測定検定装置、液体のポリマー粉末分散液浴の濃度制御などが提案されてきているが、それらは経済的に実行できないか、及び/又は実際にはほとんど成功していない。
【0007】
或いは、熱可塑性樹脂の水性分散液は、樹脂原料である重合可能なモノマーが、水性媒体中、乳化剤の存在下でエマルジョン重合されるような方法により製造されてきた。有利なことには、エマルジョン重合は高分子量の熱可塑性樹脂を製造することができる。しかしながら、この方法は、使用できる少数の重合可能なモノマーに限定され、従って、製造できる熱可塑性樹脂の水性分散液の数が限定される。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,626,306号明細書
【特許文献2】米国特許第4,680,224号明細書
【特許文献3】米国特許第5,725,710号明細書
【特許文献4】米国特許第5,888,580号明細書
【特許文献5】米国特許第6,045,912号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、増大した分子量を有する熱可塑性担体樹脂と結合した、高くバラツキのない繊維含有量を有する、長繊維強化熱可塑性コンセントレートを提供するための経済的な方法を提供することは望ましいであろう。本発明はそのような長繊維強化熱可塑性コンセントレートである。
【0010】
本発明の目的は、押出機中で、吹込み成型機中で、及び/又は射出成型機のホッパー中で、未強化熱可塑性樹脂と混合することができる長繊維強化熱可塑性コンセントレートを製造することである。このコンセントレートは、増大した分子量を有する熱可塑性担体樹脂と結合した、高くバラツキのない繊維含有量及び、裸の長繊維と熱可塑性樹脂とを直接混合することと競争できる経済性を提供する。好ましくは、長繊維強化熱可塑性コンセントレートはペレットとして提供される。
【0011】
本発明の更なる目的は、最終的に押出機及び/又は射出成型機中で混合しようとしている未強化熱可塑性樹脂と同じタイプの、及び/又はそれと相溶性を有するように選択された熱可塑性担体樹脂を有する、長繊維強化熱可塑性コンセントレートを提供することである。好ましくは、熱可塑性担体樹脂は混合される未強化熱可塑性樹脂と相溶性を有する分子量を有している。
【0012】
本発明の更なる目的は、その繊維含有物がペレットの実質的な全体の長さの方向に、実質的に平行であるような長繊維強化熱可塑性コンセントレートを提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートである、長繊維高含有量の、好ましくは約50重量%より多い、より好ましくは約90重量%より多いペレットを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の前述の目的は、繊維及び熱可塑性樹脂を含む長繊維コンセントレートの製造方法であって、i)溶融混練熱可塑性水性分散液で連続繊維を被覆して、熱可塑性被覆連続繊維ストランドを形成し、ii)その熱可塑性被覆連続繊維ストランドを加熱し、iii)乾燥したその熱可塑性被覆連続繊維ストランドを切断して、乾燥した長繊維コンセントレートペレットを形成し、そして、iv)乾燥した長繊維コンセントレートペレットを単離する諸工程を含んでなる方法により提供される。
【0015】
或いは、本発明の前述の目的は、繊維及び熱可塑性樹脂を含む長繊維コンセントレートの製造方法であって、i)溶融混練熱可塑性水性分散液で連続繊維を被覆して、熱可塑性被覆連続繊維ストランドを形成し、ii)その熱可塑性被覆連続繊維ストランドを切断して、繊維コンセントレートペレットを形成し、iii)その繊維コンセントレートペレットを加熱し、そして、iv)乾燥した長繊維コンセントレートペレットを単離する諸工程を含んでなる方法により提供される。
【0016】
或いは、本発明の前述の目的は、繊維及び熱可塑性樹脂を含む長繊維コンセントレートの製造方法であって、i)切断(chopped)長繊維を溶融混練熱可塑性水性分散液で被覆して、熱可塑性被覆切断長繊維ペレットを形成し、ii)その被覆切断長繊維コンセントレートペレットを加熱し、そして、iii)乾燥した長繊維コンセントレートペレットを単離する諸工程を含んでなる方法により提供される。
【0017】
本発明方法の一態様において、溶融混練熱可塑性水性分散液は、熱可塑性樹脂、分散剤及び水を含んでおり、好ましくは、熱可塑性樹脂100重量部に基づいて、分散剤約0.5〜約30重量部及び水約1〜約35重量部を含む。
【0018】
別の態様において、熱可塑性樹脂水性分散液は、それが製造されたとき、熱可塑性樹脂を約10〜約70重量%、好ましくは約15〜約55重量%、より好ましくは約20〜約45重量%の熱可塑性樹脂を含むように、更に希釈することができる。
【0019】
本発明方法の分散液に用いられる熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレン及びアクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル、スチレン及びブタジエンターポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、又はそれらのブレンドであり;好ましくは、ポリエチレン樹脂はエチレンとα−オレフィンとのコポリマーであり、ポリプロピレン樹脂はプロピレン富化(propylene-rich)プロピレンα−オレフィンコポリマーであり;そしてより好ましくは、エチレンコポリマーは、実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーであり、プロピレン富化コポリマーは、プロピレンから誘導された単位少なくとも約60重量%及び、非メタロセン金属中心へテロアリールリガンド触媒(nonmetallocene metal-centered, heteroaryl ligand catalyst)を用いて製造されエチレンから誘導された単位であって、領域エラー(region-error)に対応する100万部当たり約14.6部及び約15.7部での13C NMRピークを有する(これらのピークは大体同じ強度を有している)ことを特徴とする単位を少なくとも約0.1重量%含む、プロピレン及びエチレンのコポリマーである。
【0020】
本発明方法の分散液で使用される分散剤は、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸エステル、酸エステルの塩、エチレンカルボン酸ポリマー、エチレンカルボン酸ポリマーの塩、アルキルエーテルカルボン酸エステル、石油スルホン酸付加物、ポリオキシエチレン化アルコールスルホン酸エステル、ポリオキシエチレン化アルコール硫酸エステル、ポリオキシエチレン化アルコールリン酸エステル、高分子エチレンオキシド/プロピレンオキシド/エチレンオキシド分散剤、エトキシル化一級アルコール、エトキシル化二級アルコール、アルキルグリコシド、アルキルグリセリド又はそれらの組合せであり;好ましくは、モンタン酸、モンタン酸のアルカリ金属塩、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー又はそれらの組合せである。
【0021】
本発明方法で使用される分散液は、約5μmより小さい体積平均粒子径、12より低いpHを有し、又は、約5μmより小さい体積平均粒子径、約12より小さいpHを有し、且つ分散剤が、熱可塑性樹脂の重量に基づいて、約4重量%より少ない量を構成する。
【0022】
本発明方法で使用される繊維は、好ましくは連続繊維、例えば天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維又は超高分子量ポリエチレン繊維であり、最も好ましくはガラス繊維である。
【0023】
本発明の別の態様は、熱可塑性樹脂及び本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートを含む繊維強化熱可塑性組成物である。
【0024】
本発明の更なる態様は、熱可塑性樹脂及び本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートを含む繊維強化熱可塑性組成物から製造される、射出成型され、吹込み成型され又は押出された熱可塑性樹脂製品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1において実施される方法において、連続繊維ストランド又はロービング(roving)(1)は、供給リール(2)から、溶融混練熱可塑性水性分散液(5)を含む浴(4)を通して供給し、被覆ストランドを形成する。被覆ストランドは空気乾燥され又は、必要に応じて、オーブン(6)などの熱源に通し、そこで分散液の水を追い出す。即ちストランドが乾燥され、そして/又は熱可塑性樹脂が溶融される。熱可塑性樹脂が凝固した後の被覆ストランドは、本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートのペレットを成形するため、装置(9)で容易にペレット化できるような適当な温度が求められるとき、必要に応じて、1基又はそれ以上のヒーター(7)の近傍を通過させることができ、ここでストランドは更に乾燥され、及び/又はストランドの温度が上昇する。ストランドはペレット化装置(9)により、又は引取装置(draw-off device)(8)により、その装置を通して引き出すことができる。必要に応じて、被覆ストランドは、浴(4)とペレット化装置(9)の間のいずれかの点で、賦形(shaping)装置(13)に通すこともできる。
【0026】
或いは、図2において実施される方法において、連続繊維ストランド又はロービング(1)は、供給リール(2)から、溶融混練熱可塑性水性分散液(5)を含む浴(4)を通して供給する。被覆ストランドは、次にペレット化装置(9)又はその他の切断装置に通して、その被覆ストランドを細断して乾燥前ペレット(11)にし、それはコンベアベルト(12)の上に落ち、そのコンベアベルトは乾燥前ペレットを空気乾燥させ又は、必要に応じて、乾燥前ペレット(11)をオーブン(6)などの熱源を通し、そこで分散液の水を追い出し、即ち乾燥前ペレット(11)が乾燥され、及び/又は熱可塑性樹脂が溶融して、本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートのペレットが供給される。もし必要なら、乾燥ペレットはスクレーパ(14)によりコンベアベルトから掻き落とされる。ストランドはペレット化装置(9)により、又は引取装置(8)により、その装置を通して引き出すことができる。必要に応じて、被覆ストランドは、浴(4)とペレット化装置(9)の間の任意の点で、賦形装置(13)を通すこともできる。乾燥前ペレット(11)をオーブン(6)に搬送するためのいずれの方法も、例えばコンベアベルトの代わりに、それらを気流などの流れを用いて搬送することも許容できる。
【0027】
本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートを製造する方法として、上記したもの以外の方法も採用することができる。例えば、繊維束は規定された長さに裁断してチョップトストランドを得ることができ、次いで熱可塑性樹脂分散液がそのチョップトストランドの上に、噴霧などの任意の方法で適用し、引き続き加熱によって乾燥した及び/又は溶融したペレットを得ることもできる。
【0028】
熱可塑性樹脂を繊維に適用する好ましい方法は連続法であり、そこではロービングストランドを、溶融混練熱可塑性水性分散液の浴を通す。もし所望なら、ストランドは、溶融混練熱可塑性水性分散液の浴に導入する前、又はその樹脂浴に浸漬する間に、任意の適宜の方法で開繊され、ストランドに含浸される樹脂の量を、次の1つ又はそれ以上により制御する:
a.分散液を通るストランドの速度、
b.分散液中の熱可塑性樹脂の濃度、
c.可塑性樹脂分散液の粘度、
d.ストランドを賦形装置、例えば制限オリフィスを通すことなどの適宜の機構によって、過剰の樹脂が拭い去られる度合。
ストランドは、溶融混練熱可塑性水性分散液を通した後、次いで、その熱可塑性樹脂の軟化温度より高い温度、例えばガラス転移温度又は融点、典型的には50℃〜250℃に維持されているオーブンを通して、水及び/又はその他の揮発分を除去し、且つその樹脂を溶融させることができる。そのオーブンに採用される具体的な温度は使用される樹脂によって決まる。上述したように、ストランドは、それが長繊維ペレットに切断される前又は後にそのオーブンを通すことができる。もし所望なら、そのストランドは、妥当なペレット化温度にするため、ペレット化の前に更に加熱してもよい。
【0029】
ペレットは三次元であり、それらの長さ、幅及び高さ“h”で記載することができる。最長の寸法はその長さ“l”である。「長」繊維とは、長さが0.125inに等しいか又はそれ以上の繊維を意味し、一方、「短」繊維とは長さが0.125inより短い繊維を指す。本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートペレットは、約0.125inに等しいか又はそれ以上、好ましくは約0.188inに等しいか又はそれ以上、最も好ましくは約0.25inに等しいか又はそれ以上の長さを有している。本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートペレットは、約5inに等しいか又はそれ以下、好ましくは約2.5inに等しいか又はそれ以下、より好ましくは約1inに等しいか又はそれ以下、更に好ましくは約0.5inに等しいか又はそれ以下、最も好ましくは0.313inに等しいか又はそれ以下の長さを有している。
【0030】
ペレットの断面形状は臨界的なものではなく、その長繊維強化コンセントレートが使用される意図された応用、及び/又は賦形装置(13)の設計に大きく依存している。例えば、ペレット化前のストランドは、リボン、長方形、正方形、三角形、卵形、円形、円又はその他可能な幾何学的形状に、好ましくは円形又は卵形様に賦形することができる。もしその形状が円形でなければ、それは「長さ」の次の二番目に長い寸法である幅“w”及び最短の寸法である高さ“h”で記載することができる。もしそのストランド又は得られるペレットが円形なら、その幅及び高さはほぼ同じであり、その断面形状はその直径“d”によって記載することができる。好ましくは、ペレットの最短寸法(即ち、h又は円形ならd)は約0.0156inに等しいか又はそれ以上、好ましくは約0.0313inに等しいか又はそれ以上、より好ましくは約0.0469inに等しいか又はそれ以上、最も好ましくは約0.0625inである。好ましくは、ペレットの最短寸法(即ちh、又は円形ならd)は約0.25inに等しいか又はそれ以下、好ましくは約0.188inに等しいか又はそれ以下、より好ましくは約0.125inに等しいか又はそれ以下である。
【0031】
本発明においては、強化材料として、予め決められた数の繊維が一緒に束ねられている連続繊維の束を使用することが好ましい。好ましくは、その繊維束は、繊維の束を樽形又は円筒形に巻き上げることにより形成されたボビンから引き出すのがよい。本発明での使用に適した繊維は、無機質繊維、例えばガラス繊維、炭素繊維など、又は有機質繊維、例えばポリプロピレン;ポリアミド、例えば“NYLON(登録商標)”;ポリテトラフルオロエチレン、例えば“TEFLON(登録商標)”;ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート;芳香族ポリアミド、例えば“ARAMID(登録商標)”;超高分子量ポリエチレン、ポリビスベンゾオキサゾール(PBO)から製造されたものなど、天然繊維、例えば綿、大麻、亜麻、ジュート等である。本発明の繊維は、更にその繊維と熱可塑性マトリックス樹脂との相溶性を改善するため、サイズ剤で被覆してもよい。サイズ剤はこの技術分野では周知であり、当業者は、用いられる具体的な繊維及び熱可塑性樹脂について、適切なサイズ剤を選択することができる。
【0032】
本発明において、強化材料は長繊維強化熱可塑性コンセントレート中に、約30重量%に等しいか又はそれ以上、好ましくは約50重量%に等しいか又はそれ以上、より好ましくは約70重量%に等しいか又はそれ以上、更に好ましくは約85重量%に等しいか又はそれ以上、最も好ましくは約90重量%に等しいか又はそれ以上の量で存在するが、ここで重量%はその長繊維強化熱可塑性コンセントレートの重量に基づくものである。本発明において、強化材料は長繊維強化熱可塑性コンセントレート中に、約99重量%に等しいか又はそれ以下、好ましくは約98重量%に等しいか又はそれ以下、より好ましくは約97重量%に等しいか又はそれ以下、最も好ましくは約95重量%に等しいか又はそれ以下の量で存在するが、ここで重量%はその長繊維強化熱可塑性コンセントレートの重量に基づくものである。
【0033】
繊維強化材料に加えて、本発明の長繊維強化コンセントレートは、時にはマトリックス樹脂又は担体樹脂とも呼ばれる熱可塑性被覆剤を含む。熱可塑性被覆剤は、その繊維に対して、熱可塑性樹脂溶融混練水性分散液として適用する。熱可塑性樹脂溶融混練水性分散液に使用される熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエンターポリマー(ABS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)又は時にはポリフェニレンエーテル(PPE)とも呼ばれるもの、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート(PC)、それらのブレンド、例えばPC/ABS、PPO/PS等を使用することができる。
【0034】
本発明において、熱可塑性樹脂は、重量平均分子量(Mw)約5,000〜約5,000,000、約20,000〜約1,000,000、約100,000〜約500,000又は約150,000〜約300,000を有し、重量平均分子量/数平均分子量[Mw/Nn、時には「多分散係数」(PDI)ともいう]は下限値1.01、1.5又は1.8から上限値20、10、5又は3までの範囲を有する。
【0035】
好ましくは、本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートの熱可塑性樹脂マトリックスを、同じタイプの未強化熱可塑性樹脂に添加するとき、マトリックス樹脂は、組合される未強化熱可塑性樹脂と適合するMwを有している。ここで用いる「適合するMw」とは、未強化樹脂のMw値の±75%以内、好ましくは±50%以内、より好ましくは±35%以内、更に好ましくは±25%以内、最も好ましくは未強化樹脂についてのMw値の±10%以内であるような、長繊維強化熱可塑性マトリックス樹脂のMwを意味する。
【0036】
好ましくは、本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートの熱可塑性樹脂マトリックスが、異なるタイプの未強化熱可塑性樹脂に添加されるとき、そのマトリックス樹脂は組合される未強化熱可塑性樹脂と適合する粘度を有している。ここで用いる「適合する粘度」とは、未強化樹脂についての粘度値の±75%以内の粘度値、好ましくは±50%以内、より好ましくは±35%以内、更に好ましくは±25%以内、最も好ましくは未強化樹脂についての粘度値の±10%以内であるような、長繊維強化熱可塑性マトリックス樹脂の粘度を意味する。粘度値は、具体的な熱可塑性樹脂に適用できる任意の標準試験法により測定することができる。
【0037】
或いは、「適合する(compatible)」とは、本発明の長繊維強化熱可塑性コンセントレートからのマトリックス樹脂の、未強化熱可塑性樹脂への添加が、それが同じタイプの熱可塑性樹脂であっても又は異なっていても、その未強化熱可塑性樹脂に有害な作用、例えば層剥離、物理的特性の損失、熱的特性の損失、機械的特性の損失、熱及び/もしくは色彩の損失又はこれらの組合せなどを引き起こすことがないことを意味する。
【0038】
好ましい熱可塑性マトリックス樹脂は、エチレンのC3〜C20α−オレフィンとのコポリマー(時にはインターポリマーとも呼ばれる)である。好ましいエチレンとα−オレフィンとのコポリマーは、25℃より低い、好ましくは0℃より低いガラス転移温度を有するポリオレフィンエラストマーである。適当なポリオレフィンエラストマーの具体例には、エチレン及び、α−オレフィンとのコポリマー、例えばポリプロピレン(EPM)、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、プロピレンとジエンとのコポリマー、例えばヘキサジエン又はエチリデンノルボルネン(EPDM)が含まれる。殊に好ましいポリオレフィンエラストマーは、実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマー(S/LEP)であり、両方とも周知である。実質的に線状のエチレンポリマー及びそれらの製造方法は、米国特許第5,272,236号及び第5,278,272号の各明細書に十分に開示されており、また線状エチレンポリマー及びそれらの製造方法は、米国特許第3,645,992号;第4,937,299号;第4,701,432号;第4,937,301号;第4,935,397号;及び第5,055,438号の各明細書に十分に開示されており、これらの開示を、引用によりここに組み入れる。
【0039】
もう1つの好ましい熱可塑性樹脂はポリプロピレンである。本発明に適したプロピレンポリマーは、シンジオタクチック、アタクチック又は、好ましくはイソタクチックである。それはホモポリマー又は、α−オレフィン、好ましくはC2もしくはC4〜C20のα−オレフィンとのコポリマー、例えばランダムもしくはブロックコポリマー、また好ましくは耐衝撃性プロピレンコポリマーである。プロピレンポリマーにはまた、上に記載されたものなどのポリオレフィンエラストマーが含まれ、好ましくは実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーが含まれる。
【0040】
好ましいプロピレンポリマーは、エチレン由来の単位5〜25重量%及びプロピレン由来の単位95〜75重量%を含む、プロピレン富化プロピレンα−オレフィンとのコポリマー又はインターポリマーである。幾つかの態様においては、(a)90℃より低い融点;弾性率が0.935M+12に等しいか又はそれ以下となるような、500%引張弾性率に対する弾性の関係式、ここで弾性は%でのものであり、MはMPaでの500%引張弾性率である;且つ、曲げ弾性率が4.2e0.27M+50に等しいか又はそれ以下となるような、500%引張弾性率に対する曲げ弾性率の関係式、ここで曲げ弾性率はMPaでのものであり、MはMPaでの500%引張弾性率である;を有する、プロピレンの多いα−オレフィンとのコポリマーが好ましい。幾つかの態様においては、プロピレンの多い(プロピレン富化)α−オレフィンとのコポリマーは、エチレン由来の単位6〜20重量%及びプロピレン由来の単位94〜80重量%を含み、プロピレン由来の単位92〜80重量%を含むことが好ましい。更に別の態様においては、ポリマーはエチレン由来の単位10〜20重量%及びプロピレン由来の単位90〜80重量%を含む。
【0041】
別の態様においては、プロピレンと、C2及びC4〜C20のα−オレフィンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のコモノマーを含むプロピレンの多いα−オレフィンとのコポリマーであって、そのコポリマーが65モル%より多いプロピレン含有量、Mw約15,000〜約200,000、Mw/Mn約1.5〜4を有するコポリマーが好ましい。
【0042】
その他の態様においては、好ましいプロピレンの多いプロピレンとα−オレフィンとのコポリマーは、示唆走査型熱量計(DSC)により測定して、約80J/gより小さい融解熱、好ましくは約8〜約80J/g、より好ましくは約8〜約30J/gの融解熱を有している。
【0043】
好ましい熱可塑性樹脂は、米国特許出願公開第2003/0204017号明細書に記載されている非メタロセン金属中心へテロアリールリガンド触媒を用いて製造された、プロピレンとエチレンとのコポリマーを含むプロピレン系コポリマーであるが、この文献は引用によりそのすべてをここに組み入れる。
【0044】
好ましくは、プロピレン富化コポリマーは、プロピレンから誘導された単位少なくとも約60重量%及び、エチレンから誘導された単位少なくとも約0.1重量%を含む。そのような非メタロセン金属中心へテロアリールリガンド触媒を用いて製造されたプロピレンとエチレンのコポリマーは、独特の領域エラーを示す。そのコポリマーは、領域エラーに対応する100万部当たり約14.6部及び約15.7部(ppm)での13C NMRピークを有することを特徴とし、そのことは、成長しているポリマー鎖へのプロピレンの立体選択の2,1位挿入エラーの結果であると信じられる。この特に好ましい側面において、これらのピークは大体同じ強度を有しており、それらは、典型的には、ホモポリマー又はコポリマーへの、プロピレンの約0.02〜約7モル%の挿入を表わしている。
【0045】
これらのプロピレン富化ポリマーは、幾多の方法、例えば、攪拌良好な連続供給重合反応器中で実施される、一段、定常状態重合により製造することができる。溶液重合に加えて、その他の重合手法、例えば気相重合又はスラリー重合が使用できる。そのようなポリマーを製造する適切な方法は、米国特許第6,525,157号明細書に記載されており、この文献は引用によりそのすべてをここに組み入れる。
【0046】
更に、熱可塑性樹脂に対しては、公知の添加剤、例えば着色料、流れ調整剤、静電防止剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、安定剤、即ち熱、光、UV等、相溶化剤、充填剤(繊維強化材以外のもの)等が、個々の応用により、又は成型/押出条件により、適宜組み込まれてもよく、そのような添加剤は、慣用の方法に従って、それらを樹脂と混合することにより使用することができる。
【0047】
熱可塑性樹脂は、長繊維強化材料に溶融混練熱可塑性水性分散液として適用される。溶融混練熱可塑性水性分散液は公知であり、例えば米国特許出願第10/925693号及び第11/068573号の各明細書;並びに、米国特許第6,448,321号;第5,798,410号;第5,688,842号;第5,574,091号;及び第5,539,021号の各明細書に記載されているとおりであり;それらのそれぞれは、引用によりその全てをここに組み入れる。前記水性分散液には、(A)上記のような少なくとも1種の熱可塑性樹脂に加えて、(B)少なくとも1種の分散剤及び(C)水が含まれる。本発明で用いられる水性分散液の1つの態様においては、(A)少なくとも1種の熱可塑性樹脂;(B)高級脂肪酸の塩、例えばモンタン酸のアルカリ金属塩;及び(C)水を含んでいる。別の態様において、水性分散液は、(A)少なくとも1種の熱可塑性樹脂;(B)少なくとも1種の分散剤;及び(C)水を含んでおり、その分散液は約5μmより小さい体積平均粒子径を有している。本発明で用いられる水性分散液の別の態様においては、それは(A)少なくとも1種の熱可塑性樹脂;(B)少なくとも1種の分散剤;及び(C)水を含んでおり、その分散液は約12より低いpHを有している。いずれかの態様に従う幾つかの分散液において、分散剤は、熱可塑性樹脂の重量に基づいて、約4重量%より少ない量を構成している。pH12又はそれ以下の幾つかの分散液において、その水性分散液もまた、約5μmより小さい体積平均粒子径を有している。約5μmより小さい粒子径を有する幾つかの分散液もまた、12より低いpHを有している。更にその他の態様において、水性分散液は、12より低いpH及び約5μmより小さい粒子径を有し、且つその分散剤は、熱可塑性樹脂の重量に基づいて、約4重量%より少ない量を構成している。
【0048】
任意の適当な分散剤も使用できる。しかしながら、具体的な態様において、分散剤には、少なくとも1種のカルボン酸、少なくとも1種のカルボン酸の塩、又はカルボン酸エステルもしくはカルボン酸エステルの塩が含まれる。分散剤として有用なカルボン酸の1つの実例は、脂肪酸、例えばモンタン酸であり、好ましいモンタン酸の塩は、モンタン酸のアルカリ金属塩である。幾つかの好ましい態様において、カルボン酸、カルボン酸の塩又は、少なくとも1種のカルボン酸エステルのカルボン酸フラグメントもしくは少なくとも1種のカルボン酸エステル塩のカルボン酸残基は、25より少ない炭素原子を有している。その他の態様において、カルボン酸、カルボン酸の塩、又は少なくとも1種のカルボン酸エステルのカルボン酸残基もしくは少なくとも1種のカルボン酸エステル塩のカルボン酸残基は、炭素原子12〜25を有している。幾つかの態様において、カルボン酸、カルボン酸の塩、又は少なくとも1種のカルボン酸エステルもしくはその塩のカルボン酸残基のカルボン酸残基は、炭素原子15〜25を有しており好ましい。その他の態様において、炭素原子の数は25〜60である。幾つかの好ましい塩には、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又はアンモニウムもしくはアルキルアンモニウムカチオンよりなる群から選ばれるカチオンが含まれる。
【0049】
更にその他の態様においては、分散剤は、エチレンカルボン酸ポリマー及びそれらの塩、例えばエチレンアクリル酸コポリマー又はエチレンメタクリル酸コポリマーなどよりなる群から選ばれる。
【0050】
その他の態様においては、分散剤は、アルキルエーテルカルボキシレート、石油スルホネート、ポリオキシエチレン化アルコールスルホン酸エステル、ポリオキシエチレン化アルコールの硫酸エステル又はリン酸エステル、高分子エチレンオキシド/プロピレンオキシド/エチレンオキシド分散剤、エトキシル化一級又は二級アルコール、アルキルグリコシド及びアルキルグリセリドから選ばれる。
【0051】
幾つかの水性分散液を製造するため、上記で数え上げられた分散剤の任意の組合せも使用できる。
【0052】
ここに記載された幾つかの分散液は、好都合な粒子径分布を有している。具体的な態様において、分散液は、体積平均粒子径(Dv)を数平均粒子径(Dn)で除したものとして定義される、約2.0に等しいか又はそれ以下の粒子径分布を有する。その他の態様において、分散液は約1.5より小さい値に等しいか又はそれ以下の粒子径分布を有している。
【0053】
ここで用いる、「分散液」なる述語は、熱可塑性樹脂と分散剤を使用することにより製造された本質的に液体の物質のエマルジョン、及び固体粒子の分散液の両方をその範囲に含むことを意図している。そのような固体分散液は、例えばエマルジョンを製造し、次いで種々の方法によりそのエマルジョン粒子を固化させることによって得ることができる。従って、各成分が結合したとき、幾つかの態様では水性分散液が提供されるが、そこでの分散剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部当り、0.5〜30重量部の範囲で存在し、(C)水の含有量は1〜35重量%の範囲であり;且つ(A)及び(B)の合計の含有量は65〜99重量%の範囲である。具体的な態様において、分散剤は、ポリマー100重量部に基づいて、2〜20重量部の範囲である。幾つかの態様において、分散剤の量は、使用される熱可塑性樹脂100重量部に基づいて、4重量%より少ない。幾つかの態様において、分散剤は、使用される熱可塑性樹脂100重量部に基づいて、約0.5〜約3重量部の範囲である。その他の態様においては、約1.0〜約3.0重量%の分散剤が使用される。分散剤がカルボン酸であるところでは、約4重量%より少ない分散剤を有する態様が好ましい。
【0054】
本発明の幾つかの態様の1つの特徴は、その分散液が小さい粒子径を有することである。典型的には、その平均粒子径は約5μmより小さい。幾つかの好ましい分散液は、約1.5μmより小さい平均粒子径を有している。幾つかの態様において、平均粒子径の上限は、約4.5μm、4.0μm、3.5μm、3.75μm、3.5μm、3.0μm、2.5μm、2.0μm、1.5μm、1.0μm、0.5μm又は0.1μmである。幾つかの態様では、約0.05μm、0.7μm、0.1μm、0.5μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm又は2.5μmの平均粒子径の下限を有している。従って、幾つかの具体的な態様では、例えば、平均粒子径約0.05μm〜約1.5μmを有している。一方その他の態様において、分散液中の粒子は、平均粒子径約0.5μm〜約1.5μmを有している。球ではない粒子については、粒子の直径は、その粒子の長軸と短軸の平均である。粒子径は、“Coulter LS230”光散乱粒子径分析装置又はその他適宜の装置で測定することができる。
【0055】
如何なる方法を用いてもいいが、ここに記載されている分散液を製造するための一つの便利な方法は溶融混練によるものである。この技術分野では公知のいずれの溶融混練手段が使用されてもよい。幾つかの態様において、ニーダー、“バンバリー”ミキサー、一軸押出機又は多軸押出機が使用できる。溶融混練は、熱可塑性樹脂(A)を溶融混練するために代表的に用いられる条件下で実施される。本発明に従った分散液を製造する方法は、特に限定されるものではない。例えば一つの好ましい方法は、米国特許第5,756,659号明細書に従って、上記の成分を溶融混練することを含む。好ましい溶融混練機器は、例えば2基又はそれ以上のスクリューを有する多軸押出機であり、その機器には混練すべき塊がそのスクリューのどの位置ででも添加ができる。もし所望なら、押出機が、混練される材料の流れ方向に沿って上流から下流まで、一番目の材料供給口及び二番目の材料供給口、更に三番目及び四番目の材料供給口をこの順番で装備していることも許容される。更に、もし所望なら、減圧孔が押出機の任意の場所に追加されていてもよい。幾つかの態様において、その分散液は、初めに水を1〜3重量%含むように希釈され、次いで、引き続いて25重量%より多くの水を含むように更に希釈される。幾つかの態様において、更なる希釈によって、少なくとも水30重量%を有する分散液が提供される。溶融混練することにより得られる水性分散液には、更にエチレン−ビニル化合物コポリマーの水性分散液又は分散剤を追加してもよい。
【0056】
上記された水性熱可塑性樹脂分散液は、製造したまま、又は熱可塑性樹脂レベル約70重量%に等しいか又はそれ以下、好ましくは約55重量%に等しいか又はそれ以下、より好ましくは約45重量%に等しいか又はそれ以下とするように、水で更に希釈して使用することもできる。上記の水性熱可塑性樹脂分散液は、製造したまま、又は熱可塑性樹脂レベル約10重量%に等しいか又はそれ以上、好ましくは約15重量%に等しいか又はそれ以上、より好ましくは約20重量%に等しいか又はそれ以上となるように、水で更に希釈して使用することもできる。
【0057】
前記水性分散液は、様々な手法、例えばスプレーコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーター又はグラビアコーターを用いたコーティング、刷毛塗り、好ましくは浴を通す浸漬又は引き抜き(drawing)などにより基材の上に被覆することができる。この被膜は、乾燥及び/又は溶融が、周囲温度での空気乾燥を含む任意の適当な手段により達成してもよいが、好ましくは被覆基材を50℃〜150℃で1〜300秒加熱することにより乾燥及び/又は溶融する。
【実施例】
【0058】
本発明の実施を詳説するために、好ましい態様の実施例が以下に記述する。しかしながら、これらの実施例は、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0059】
実施例1
連続ガラスロービングストランド(“VETROTEX(登録商標) RO99 719”、Saint−Gobainから入手可能)が標準ボビンの外側から巻き出す。このロービングは、図1に記述しているように、“ブラベンダー”フィルム引張ロール装置により、8ft/分の速度で、溶融混練熱可塑性樹脂水性分散液を通して引っ張る。この水性分散液は、脱イオン水80重量%及び固形分20重量%を含んでいる。この固形分には、長鎖カルボン酸界面活性剤2.35重量%並びに、密度0.876g/cm3(g/cc)及び溶融流量(MFR)(230℃、負荷荷重16kgの条件下で)25g/10分を有するプロピレンの多いプロピレンとエチレンとのコポリマー(エチレン9%)17.65重量%が含まれる。この分散液の平均粒子径は、多分散性1.31で約0.61μmである。その溶融混練水性分散液のpH値は11.6である。
【0060】
前記ガラスロービングはその浴を通して75mm隔てて引っ張る。その浴に浸漬され、そこを出た後に、過剰な液体は、フルオロポリマーワイパーとの接触により被覆されたストランドから除去される。湿ったストランドは温度180℃に保たれた強制風オーブンに引き込まれる。そのオーブンの内部で、ストランドは一連のプーリー・ガイドの上を通されて、オーブン中の滞留時間1分間のために十分な長さの経路が提供される。そのオーブン中で、水が追い出され、プロピレンポリマーが軟化し溶融する。乾燥した被覆ストランドは、ガラス繊維上の軟化ポリマー被覆のため、粘着性でそのオーブンから出てくる。被覆ストランドは迅速に空気で冷却して、被覆ガラス繊維の固くて平らな束となる。ガラス繊維の平らな被覆された束は、空気力ガラス繊維切断銃(air-powered fiberglass chopper gun)を用いて、12mm長ガラス繊維(LGF)コンセントレートペレットに切断される。“ブラベンダー”引張装置は、オーブンの後ろで、且つその切断銃の前に配置される。この試料のガラス含有量は、そのペレットを550℃で2時間、マッフル炉で灰化することにより測定する。ガラスのレベルは、有機被覆を除去した後の残留重量として測定され、90.8%である。
【0061】
LGFコンセントレートペレット(33部)が、ポリプロピレンホモポリマーペレット(The Dow Chemical Companyから“5E16S PolyPropylene Resin”として入手できる、MFRは35−“5E16S”)7.5部及びポリプロピレンホモポリマーペレット(The Dow Chemical Companyから“DX5E30S PolyPropylene Resin”として入手できる、MFRは75−“DX5E30S”)7.5部、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンペレット(Cromptonから“POLYBOND(登録商標) 3200”として入手できる−“POLYBOND 3200”)2部及びポリプロピレン・ポリエチレンコポリマーペレット(The Dow Chemical Companyから“7C54H PolyPropylene Resin”として入手できる、MFRは12−“7C54H”)50部が乾式ブレンドし、プラスチック袋の中で振り混ぜる。混合されたペレットブレンドは、標準ASTM引張試験片用の双子の陥没(twin drops)及び直径2inの光学盤(optical disk)を含む金型を装着した“Toyo PLASTER(登録商標) SI−90”プラスチック射出成型機の供給ホッパー中に入れる。部材は、このコンパウンドから、ホッパー直近の395°F(202℃)からノズル脇385°F(196℃)までの温度分布を用いて成型する。金型温度は100°F、保持時間は15秒、そして用いられる背圧は250Lb/in2(psi)である。製造された部材は、オフホワイト色であり、外観は均一で、表面は滑らかであり、ガラス繊維の堆積は見えない。
【0062】
実施例2
実施例2は、オーブンを出たストランドが丸み付けダイ(rounding die)を通され、空気中で冷却されて硬くて丸いストランドとなることを除いて、実施例1と同様に実施する。“ブラベンダー”フィルム引張ロール装置よりも“Killion”チューブ引取装置が採用され、その“Killion”チューブ引取装置は丸み付けダイの後ろで切断機の前に配置される。ガラスのレベルは、長ガラス(繊維)熱可塑性樹脂コンセントレートの重量に基づいて、90.7%であると測定される。
【0063】
実施例3
実施例3は、ポリプロピレンホモポリマーペレット(5E16S)、ポリプロピレンホモポリマーペレット(DX5E30S)及びポリプロピレン・エチレンコポリマーペレット(7C54H)の量が、それぞれ9重量%、9重量%及び47重量%であることを除いて、実施例2と同様に実施される。コンセントレート中のガラスのレベルは、長ガラス(繊維)熱可塑性樹脂コンセントレートの重量に基づいて、90.7%であると測定される。
【0064】
実施例4
実施例4は、2つのガラスロービングストランドが被覆されていることを除いて、実施例2と同様に実施する。コンセントレート中のガラスのレベルは、長ガラス(繊維)熱可塑性樹脂コンセントレートの重量に基づいて、90.7%であると測定される。
【0065】
実施例1〜4のLGFコンセントレートの組成は表1に列挙する。これらのLGFコンセントレートを含む成型された試験片は、次の試験法に従って試験し、その特性は表1に報告する。
【0066】
「ノッチ付き」及び「ノッチなし」のアイゾッド試験により測定される「アイゾッド」衝撃試験は、ASTM D 256−90−Bに従い、23℃で測定する。ノッチ付き試験片は、“TMI 22−05”ノッチ付け器で0.254mmアールのノッチがつけられる。0.91kgの振子が使用される。その値はft−lb/inで報告する。
【0067】
耐落槍衝撃試験(“Dart” instrumented impact resistance)はASTM D 3763に従い、“MTS 810”を装備した衝撃試験機で、15ミル/時(MPH)の衝撃で測定される。試験結果は23℃で測定する。試験結果はin−lbで報告する。
【0068】
曲げ弾性率(“Fm”)及び曲げ強さ(“Fs”)は、ASTM D 790に従って測定される。試験結果はlb/in2(psi)で報告する。
【0069】
引張伸び(“Te”)、引張弾性率(“Tm”)及び引張強度(“Ts”)はASTM D 638に従って測定する。Teの結果は%で報告し、Tm及びTsの結果はpsiで報告する。
【0070】
荷重下の撓み温度(“DTUL”)は、アニールされない試料についてASTM D 648に従い、264psi(1.8MPa)で測定する。結果は°Fで報告する。
【0071】
「灰分」はASTM D 5650に従って測定され、%で報告する。
【0072】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明の方法を実施するために適した装置を示すブロック作業工程図である。
【図2】図2は、本発明の方法を実施するために適した、代わりの装置を示すブロック作業工程図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i 溶融混練熱可塑性水性分散液で連続繊維を被覆して、熱可塑性被覆連続繊維ストランドを形成し、
ii 前記熱可塑性被覆連続繊維ストランドを加熱し、
iii 乾燥したその熱可塑性被覆連続繊維ストランドを切断して、乾燥した長繊維コンセントレートペレットを形成し、そして
iv 乾燥した長繊維コンセントレートペレットを単離すること、
を含んでなる繊維及び熱可塑性樹脂を含む長繊維コンセントレートの製造方法。
【請求項2】
i 溶融混練熱可塑性水性分散液で連続繊維を被覆して、熱可塑性被覆連続繊維ストランドを形成し、
ii 前記熱可塑性被覆連続繊維ストランドを切断して、繊維コンセントレートペレットを形成し、
iii 前記繊維コンセントレートペレットを加熱し、そして
iv 乾燥した長繊維コンセントレートペレットを単離すること、
を含んでなる繊維及び熱可塑性樹脂を含む長繊維コンセントレートの製造方法。
【請求項3】
溶融混練熱可塑性水性分散液が熱可塑性樹脂、分散剤及び水を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレン及びアクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル、スチレン及びブタジエンターポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート又はそれらのブレンドである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
熱可塑性ポリエチレン樹脂がエチレンとα−オレフィンとのコポリマーである請求項3に記載の方法。
【請求項6】
熱可塑性ポリエチレン樹脂が実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
熱可塑性ポリプロピレン樹脂がプロピレン富化プロピレンα−オレフィンコポリマーである請求項3に記載の方法。
【請求項8】
熱可塑性ポリプロピレン富化樹脂が、プロピレンから誘導された単位を少なくとも約60重量%、そして非メタロセン金属中心へテロアリールリガンド触媒を用いて製造されエチレンから誘導された単位を少なくとも約0.1重量%含んでなり、領域エラーに対応する100万部当たり、約14.6部及び約15.7部での13C NMRピークを有する(これらのピークは大体同じ強度を有している)ことを特徴とするプロピレン及びエチレンのコポリマーである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
溶融混練熱可塑性水性分散液が、熱可塑性樹脂約10〜約70重量%を含む請求項3に記載の方法。
【請求項10】
分散剤がカルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸エステル、酸エステルの塩、エチレンカルボン酸ポリマー、エチレンカルボン酸ポリマーの塩、アルキルエーテルカルボン酸エステル、石油スルホン酸付加物、ポリオキシエチレン化アルコールのスルホン酸エステル、ポリオキシエチレン化アルコールの硫酸エステル、ポリオキシエチレン化アルコールのリン酸エステル、高分子エチレンオキシド/プロピレンオキシド/エチレンオキシド分散剤、エトキシル化一級アルコール、エトキシル化二級アルコール、アルキルグリコシド、アルキルグリセリド又はそれらの組合せである請求項3に記載の方法。
【請求項11】
分散剤がモンタン酸、モンタン酸のアルカリ金属塩、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー又はそれらの組合せである請求項3に記載の方法。
【請求項12】
分散液が約5μmより小さい体積平均粒子径を有する請求項3に記載の方法。
【請求項13】
分散液が12より低いpHを有する請求項3に記載の方法。
【請求項14】
分散液が約5μmより小さい体積平均粒子径、約12より低いpHを有し、且つ分散剤が、熱可塑性樹脂の重量に基づいて、約4重量%より少ない量を構成する請求項3に記載の方法。
【請求項15】
連続繊維が天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維又は超高分子量ポリエチレン繊維である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
連続繊維がガラス繊維である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
i 切断された長繊維を溶融混練熱可塑性水性分散液で被覆して、熱可塑性被覆切断長繊維ペレットを形成し、
ii 前記被覆切断長繊維コンセントレートペレットを加熱し、そして
iii 乾燥した長繊維コンセントレートペレットを単離すること、
を含んでなる繊維及び熱可塑性樹脂を含む長繊維コンセントレートの製造方法。
【請求項18】
長繊維強化熱可塑性コンセントレートの重量に基づいて、繊維のレベルが85〜99重量%の間である請求項1、2又は17に記載の長繊維強化熱可塑性コンセントレート。
【請求項19】
熱可塑性樹脂及び、請求項1、2又は17に記載の長繊維強化熱可塑性コンセントレートを含んでなる長繊維強化熱可塑性組成物。
【請求項20】
i 請求項1、2又は17に記載の長繊維強化熱可塑性コンセントレートを、未強化熱可塑性樹脂と乾式ブレンドし、そして
ii 前記ブレンドを、射出成型、吹込み成型又は押出して、射出成型された、吹込み成型された又は押出された長繊維強化熱可塑性製品を形成すること、
を含んでなる長繊維強化熱可塑性製品の製造方法。
【請求項21】
請求項1、2又は17に記載の長繊維強化熱可塑性コンセントレートを含む、成型された又は押出された熱可塑性製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−544885(P2008−544885A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519738(P2008−519738)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/026434
【国際公開番号】WO2007/008632
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】