説明

障害物検知装置

【課題】 復帰可能な通信異常の発生時において、復帰させるための処理に要する時間を考慮することなく通信異常から復帰させること。
【解決手段】 センサの作動を禁止する禁止条件に該当する場合、処理ユニットとの通信を停止したセンサが少なくとも1つあれば、全てのセンサに対し再度パラメータ設定処理を実行する(S610)。次に、通信を再開させたセンサにおいてパラメータが正常に設定されたか否かを判定し(S620)、正常に設定された場合には、状態フラグを「正常:0」にセットし、S400へ処理を移行する。これにより、次回のS400の処理において作動条件に該当すると判定された後、S500以降の処理において、通信を再開させたセンサによる障害物検知が行われるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のセンサと制御装置とがバスで接続された障害物検知装置がある(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に開示されている障害物検知装置によれば、例えば、制御装置は、予め記憶した超音波センサの各接続順とIDとに基づいて、バスを介して制御装置に近い超音波センサから順次、当該接続位置のIDを設定する。そして、最後の超音波センサまでID設定が終了すると、各超音波センサとの通信を開始する。
【特許文献1】特開2003−152741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した、従来の障害物検知装置において、各超音波センサは、制御装置との最初の通信において、設定すべきID等のパラメータが正常に受信できた場合にセンサとしてはじめて機能するため、上記パラメータが正常に受信できなければセンサとして機能できない。
【0004】
そのため、パラメータ設定時に通信異常が発生した場合、パラメータ設定を再度行ったり、あるいは、パラメータが受信できなかったセンサとの通信を停止させたりする処理を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、パラメータの再設定では、各センサへの電源を一旦オフにした後に再びパラメータの送信を行う必要があるため、パラメータを再設定して復帰するまでに多くの時間を要することになる。また、電磁波ノイズの混入等、一時的な通信異常が発生した場合に、パラメータが受信できなかったセンサとの通信の停止を継続してしまうと、その後、当該センサとの通信を復帰させることができなくなる。
【0006】
本発明は、かかる問題を鑑みてなされたもので、復帰可能な通信異常の発生時において、復帰させるための処理に要する時間を考慮することなく通信異常から復帰させることができる障害物検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の障害物検知装置は、所定のパラメータを設定することで作動可能となるセンサと、通信を介してセンサにパラメータを送信する処理ユニットとを備え、センサによって車両の周囲に存在する障害物を検知する障害物検知装置であって、処理ユニットは、車両の走行に関する状態を検出する車両状態検出手段と、車両の走行に関する状態がセンサを作動させるべき条件を示す作動条件、及び、センサの作動を禁止すべき条件を示す禁止条件の何れの条件に該当するかを判定する作動・禁止条件判定手段と、センサとの通信を行う通信制御手段と、センサにパラメータを送信し、当該センサからパラメータの設定完了の旨を受信するパラメータ設定処理を実行するパラメータ設定処理手段と、を備え、パラメータ設定処理手段は、作動・禁止条件判定手段によって禁止条件に該当すると判定される場合、パラメータが設定されていないセンサ、又は/及び、通信制御手段による通信ができないセンサが少なくとも1つあれば、全てのセンサに対し再度パラメータ設定処理を実行することを特徴とする。
【0008】
このように、本発明の障害物検知装置は、センサの作動を禁止する禁止条件である場合に、パラメータが設定されていないセンサ、又は/及び、通信ができないセンサが少なくとも1つあれば、全てのセンサに対し再度パラメータ設定処理を実行する。この禁止条件に該当している間は、センサによる障害物の検知が行われないため、通信異常から復帰させるための処理に要する時間を考慮する必要がない。
【0009】
そして、この禁止条件におけるパラメータ設定処理によってパラメータが正常に設定できた場合には、そのセンサは作動可能となるため、復帰可能な通信異常の発生時において、通信異常から復帰させることができる。
【0010】
請求項2に記載の障害物検知装置によれば、パラメータ設定処理手段は、処理ユニットへの電源投入後に実行することを特徴とする。これにより、パラメータが正常に設定されたセンサを作動可能にすることができる。
【0011】
請求項3に記載の障害物検知装置によれば、通信制御手段によってセンサとの通信が所定時間以上できない場合に異常が発生したと判定する異常判定手段を備えることを特徴とする。これにより、作動条件における継続的な異常発生を判定することができる。
【0012】
請求項4に記載の障害物検知装置によれば、異常判定手段によって異常が発生したと判定される場合、及び、パラメータ設定処理手段のパラメータ設定処理においてパラメータの設定完了の旨が受信できない場合の少なくとも一方の場合に、異常発生を報知する異常報知手段を備えることを特徴とする。これにより、車両の乗員に対して異常発生を知らせることができる。
【0013】
請求項5に記載の障害物検知装置によれば、異常報知手段は、表示画面を有する表示手段、及び、音響を出力する音響出力手段の少なくとも一方を備えることを特徴とする。これにより、車両の乗員は、表示画面や音響を介して異常発生を把握することができる。
【0014】
請求項6に記載の障害物検知装置によれば、車両状態検出手段は、車両の車速、及び車両の変速機の変速位置を検出し、作動・禁止条件判定手段は、車速が所定速度以下で、かつ、車両が前進、若しくは後退する際の変速位置である場合に作動条件に該当すると判定することを特徴とする。これにより、例えば、車庫入れ時やすり抜け時のような走行に注意を要する場合に、センサによる障害物の検知を実行させることができる。
【0015】
請求項7に記載の障害物検知装置によれば、センサは、作動・禁止条件判定手段によって作動条件に該当すると判定される場合に障害物の検知を実行し、作動・禁止条件判定手段によって禁止条件に該当すると判定される場合に障害物の検知を停止することを特徴とする。これにより、走行に注意を要する場合に作動し、特に注意を要しない場合に作動停止とすることができる。
【0016】
請求項8に記載の障害物検知装置によれば、センサは、車両の前方、及び後方の少なくとも一方のバンパ部に複数搭載されることを特徴とする。これにより、車両の前方や後方に存在する障害物を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明が適用された実施例について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施形態は、下記の実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうることは言うまでもない。
【0018】
図1は、本実施例の障害物検知装置の全体構成を示すブロック図である。この障害物検知装置は車両10に搭載され、車両10の前方や後方の障害物の存在や距離を運転者に示すために使用される。
【0019】
この障害物検知装置は、主に、センサ11〜16、処理ユニット20、報知器30によって構成される。また、センサ11〜16と処理ユニット20とはバス状に敷設された通信線を介して接続される。センサ11〜16と処理ユニット20は、通信フレームの送受信により通信を行う。
【0020】
センサ11〜16は、車両10の前方、及び後方のバンパ部に搭載される超音波センサであり、車両10の前方や後方に存在する障害物を検知するために用いられる。センサ11〜16は、超音波を送信する送信部、超音波の反射波を受信する受信部、及び超音波が障害物に当たり反射して再び戻ってくるまでの時間から障害物までの距離を測定すると共に処理ユニット20との通信を行う制御回路を備える。
【0021】
センサ11〜16は、処理ユニット20から送信される後述のパラメータを含むパラメータ設定フレームを受信し、この受信したパラメータを記憶する。そして、記憶したパラメータに含まれる送信周波数を送信部の送信する超音波の周波数として設定する。このように、本実施例のセンサ11〜16は、パラメータを設定することで作動可能となる。
【0022】
処理ユニット20は、センサ11〜16に各種の通信フレームを送信すると共に、センサ11〜16が測定した障害物までの距離を含む検知結果フレームを受信して、障害物の位置と距離を把握する。また、処理ユニット20は、外部のセンサとも接続されている。外部のセンサとしては、何れも図示しない車速センサとシフトポジションセンサとがある。
【0023】
処理ユニット20は、図示しない不揮発性メモリを備えており、この不揮発性メモリには、センサ11〜16の各々の搭載位置に応じたID、超音波の送信周波数等(以下、パラメータと呼ぶ)が書き込まれている。
【0024】
処理ユニット20は、電源が投入されると、処理ユニット20に近い順から順次、センサ11〜16の各々に対して上記パラメータを設定するためのパラメータ設定フレームを送信し、パラメータが正常に設定されたセンサからパラメータ設定完了フレームを受信するパラメータ設定処理を実行する。このように、処理ユニット20への電源投入後、パラメータ設定処理を実行するため、パラメータが正常に設定されたセンサを作動可能にすることができる。
【0025】
なお、処理ユニット20は、このパラメータ設定処理において、パラメータ設定完了フレームの受信ができなかった(パラメータが正常に設定されなかった)センサがある場合、当該センサとの通信を停止し、パラメータ設定完了フレームの受信ができた(パラメータが正常に設定された)センサとの通信を行うようにしている。
【0026】
報知器30は、液晶ディスプレイを有する画像表示装置と音響出力装置とによって構成される。画像表示装置は、処理ユニット20の把握した障害物の位置をリアルタイムに表示する。また、音響出力装置は、処理ユニット20の把握した障害物の距離の長短に応じた音響を出力する。
【0027】
次に、本実施形態の特徴部分に係わる、障害物検知装置が障害物を検知する検知処理について、図2に示すフローチャートを用いて説明する。先ず、処理ユニット20に電源が投入されると(ステップS100)、ステップ(以下、Sと記す)200では、センサ11〜16との通信を開始し、上述したパラメータ設定処理を実行する。
【0028】
S300では、パラメータ設定処理において、センサ11〜16においてパラメータが正常に設定されたか否かを判定する。ここで、センサ11〜16の全てにおいてパラメータが正常に設定されたと判定される場合には、状態フラグを「正常:0」にセットし、S400へ処理を進める。
【0029】
一方、センサ11〜16の何れかのセンサにおいて、パラメータが正常に設定されなかったと判定される場合には、S310において、当該センサとの通信を停止し、通信(又は/及びセンサ)異常発生を報知器30から報知し、S320において、状態フラグを「異常:1」にセットする。これにより、車両の運転者を含む乗員は、表示画面や音響を介して、障害物検知装置における異常発生を把握することができる。
【0030】
S400では、車速センサとシフトポジションセンサの検出結果に基づいて、センサ11〜16を作動させるべき条件(作動条件)に該当するか、作動を禁止すべき条件(禁止条件)に該当するか否かを判定する。
【0031】
すなわち、本実施形態の障害物検知装置は、例えば、車庫入れ時やすり抜け時のような走行に注意を要する場合に障害物検知を行うものである。そのため、車速が所定速度(例えば、時速10キロ)以下で、シフトポジションが後退(R)レンジや前進(例えば、1、2、3、D)レンジの場合に作動条件に該当すると判定する。
【0032】
一方、車速が上記所定速度を超え、さらに、シフトポジションが駐車(P)レンジや中立(N)レンジの場合に禁止条件に該当すると判定する。これにより、走行に注意を要する場合にセンサ11〜16を作動させ、特に注意を要しない場合に作動停止とすることができる。
【0033】
S400において、作動条件に該当すると判定される場合にはS500へ処理を進め、禁止条件に該当すると判定される場合にはS600へ処理を進める。S500では、パラメータが正常に設定できたセンサとの通信を開始し、当該センサに対して障害物検知の開始を指示する検知指示フレームを送信する。この検知指示フレームを受信したセンサは、障害物検知を開始し、検知結果を含む検知結果フレームを処理ユニット20へ送信する。
【0034】
S510では、パラメータが正常に設定できたセンサと所定時間(例えば、数秒程度)以上通信できない状態が継続しているか否かを判定する。ここで、肯定判定される場合には、S520へ処理を進め、否定判定される場合にはS400へ処理を移行する。
【0035】
このように、作動条件であるときにセンサとの通信が所定時間以上できない場合には、通信異常が発生したと判定する。これにより、センサが障害物の検知を行っているときに発生する継続的な通信(又は/及びセンサ)異常を判定することができる。
【0036】
S520では、当該センサとの通信を停止し、障害物の検知時における通信(又は/及びセンサ)異常発生を報知器30から報知する。これにより、車両の乗員に対して通信(又は/及びセンサ)異常発生を知らせることができる。S530では、状態フラグを「異常:1」にセットする。
【0037】
S400において、禁止条件に該当すると判定されると、S600では、状態フラグが「異常:1」であるか否かを判定する。ここで、肯定判定される場合にはS610へ処理を進め、否定判定される場合にはセンサ11〜16との通信が正常であるとして、S400へ処理を移行し、次回のS400の処理において作動条件に該当するまで待機状態を保持する。
【0038】
S610は、S310やS520の処理において通信を停止したセンサ、すなわち、パラメータが正常に設定されていないセンサ、又は/及び、作動条件において所定時間以上継続して通信ができないセンサが少なくとも1つ以上存在するため、全てのセンサ(センサ11〜16)との通信を再開させ、全てのセンサに対し上述したパラメータ設定処理を再度実行する。S620では、通信を再開させたセンサにおいてパラメータが正常に設定されたか否かを判定する。
【0039】
ここで、肯定判定される場合にはS630へ処理を進め、否定判定される場合には、S640において当該センサとの通信を再度停止しS400へ処理を移行する。S630では、状態フラグを「正常:0」にセットし、S400へ処理を移行する。これにより、次回のS400の処理において作動条件に該当すると判定された後、S500以降の処理において、通信を再開させたセンサによる障害物検知が行われるようになる。
【0040】
このように、本実施形態における障害物検知装置は、センサの作動を禁止する禁止条件である場合に、パラメータが設定されていないセンサ、又は/及び、作動条件において所定時間以上継続して通信ができないセンサが少なくとも1つあれば、全てのセンサに対し再度パラメータ設定処理を実行する。この禁止条件に該当している間は、センサによる障害物の検知が行われないため、通信異常から復帰させるための処理に要する時間を考慮する必要がない。
【0041】
そして、この禁止条件におけるパラメータ設定処理によってパラメータが正常に設定できた場合には、そのセンサは作動可能となるため、復帰可能な通信異常の発生時において、通信異常から復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】障害物検知装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】障害物検知装置が障害物を検知する検知処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10 車両
11、12、13、14、15、16 センサ
20 処理ユニット
30 報知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパラメータを設定することで作動可能となるセンサと、通信を介して前記センサに前記パラメータを送信する処理ユニットとを備え、前記センサによって車両の周囲に存在する障害物を検知する障害物検知装置であって、
前記処理ユニットは、
前記車両の走行に関する状態を検出する車両状態検出手段と、
前記車両の走行に関する状態が前記センサを作動させるべき条件を示す作動条件、及び、前記センサの作動を禁止すべき条件を示す禁止条件の何れの条件に該当するかを判定する作動・禁止条件判定手段と、
前記センサとの通信を行う通信制御手段と、
前記センサに前記パラメータを送信し、当該センサからパラメータの設定完了の旨を受信するパラメータ設定処理を実行するパラメータ設定処理手段と、を備え、
前記パラメータ設定処理手段は、前記作動・禁止条件判定手段によって禁止条件に該当すると判定される場合、前記パラメータが設定されていないセンサ、又は/及び、前記通信制御手段による通信ができないセンサが少なくとも1つあれば、全てのセンサに対し再度前記パラメータ設定処理を実行することを特徴とする障害物検知装置。
【請求項2】
前記パラメータ設定処理手段は、前記処理ユニットへの電源投入後に実行することを特徴とする請求項1記載の障害物検知装置。
【請求項3】
前記通信制御手段によって前記センサとの通信が所定時間以上できない場合に異常が発生したと判定する異常判定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の障害物検知装置。
【請求項4】
前記異常判定手段によって異常が発生したと判定される場合、及び、前記パラメータ設定処理手段のパラメータ設定処理において前記パラメータの設定完了の旨が受信できない場合の少なくとも一方の場合に、異常発生を報知する異常報知手段を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項5】
前記異常報知手段は、表示画面を有する表示手段、及び、音響を出力する音響出力手段の少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項4記載の障害物検知装置。
【請求項6】
前記車両状態検出手段は、前記車両の車速、及び前記車両の変速機の変速位置を検出し、
前記作動・禁止条件判定手段は、前記車速が所定速度以下で、かつ、前記車両が前進、若しくは後退する際の変速位置である場合に作動条件に該当すると判定することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項7】
前記センサは、
前記作動・禁止条件判定手段によって作動条件に該当すると判定される場合に障害物の検知を実行し、
前記作動・禁止条件判定手段によって禁止条件に該当すると判定される場合に障害物の検知を停止することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項8】
前記センサは、前記車両の前方、及び後方の少なくとも一方のバンパ部に複数搭載されることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の障害物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−38706(P2006−38706A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220651(P2004−220651)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】