説明

集合住宅用インターホンシステム

【課題】ドアホン子器との通話と一斉放送の何れを優先するかを居住者が選択可能とする。
【解決手段】住戸機2には、CPUを主構成要素とし内部回路を制御する主制御部10が設けられ、主制御部10には通話釦などを有する操作部19が接続される。従って、ドアホン子器6との通話中に一斉放送が開始された場合にドアホン子器6との通話を継続するか若しくは一斉放送の受信に切り換えるかを、操作部19の通話釦の操作/不操作によって居住者が選択できる。同様に一斉放送の受信中にドアホン子器6からの呼出があった場合に一斉放送の受信を継続するか若しくはドアホン子器6との通話に切り換えるかを、操作部19の通話釦の操作/不操作によって居住者が選択できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の共用玄関に設置された共用部装置と各住戸にそれぞれ設置される住戸機の何れか1台との間で択一的に通信路を確立して通話可能とする集合住宅用インターホンシステムに関し、特に共用部装置と1台の住戸機とで通話する個別通話の他に、集合住宅の玄関に設置されたドアホン子器と住戸機とによる通話、並びに集合住宅の共用部や管理人室などに設置された一斉放送装置により複数の住戸機へ音声を一斉に放送することができる集合住宅用インターホンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅の共用玄関に設置され音声の入出力が可能な共用部装置(ロビーインターホン)と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され共用部装置とは伝送線路を介して接続されるとともに共用部装置が有する選択手段(テンキーなど)を来訪者が操作することにより選択されると共用部装置との間で通信路を確立する複数台の住戸機(インターホン親機や住宅情報盤など)と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され住戸機とは通話用の子器接続線を介して接続されるドアホン子器と、集合住宅の共用部若しくは管理人室に設置され各住戸機とは伝送線路を介して接続されるとともに一部又は全部の住戸機に対して一斉に音声を放送する一斉放送装置とを備えた集合住宅用インターホンシステムが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−14125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ドアホン子器との通話中に一斉放送が開始された場合若しくは一斉放送の受信中にドアホン子器から呼出を受けた場合、一斉放送が災害発生時の避難放送のように緊急な内容であれば一斉放送を優先して住戸機とドアホン子器との通話を行わないべきであるが、一斉放送が緊急でない単なる連絡事項であれば無条件に一斉放送を優先することは居住者にとって好ましくない。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、ドアホン子器との通話と一斉放送の何れを優先するかを居住者が選択できる集合住宅用インターホンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、集合住宅の共用玄関に設置され音声の入出力が可能な共用部装置と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され共用部装置とは伝送線路を介して接続されるとともに共用部装置が有する選択手段を来訪者が操作することにより選択されると共用部装置との間で通信路を確立する複数台の住戸機と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され住戸機とは通話用の子器接続線を介して接続されるドアホン子器と、集合住宅の共用部若しくは管理人室に設置され各住戸機とは伝送線路を介して接続されるとともに一部又は全部の住戸機に対して一斉に音声を放送する一斉放送装置とを備え、伝送線路は、少なくとも選択手段の操作に伴って発生し個別通話の開始を指示する制御信号を伝送する制御線と、音声信号を伝送する信号線とからなり、住戸機は、共用部装置並びにドアホン子器との間で各々信号線及び子器接続線を介した通話を行う通話手段と、少なくとも一斉放送の音声を鳴動するスピーカと、信号線を通話手段に接続する状態とスピーカに接続する状態とを択一的に切り換える個別通話/一斉放送切換手段と、通話手段を個別通話/一斉放送切換手段に接続する状態と子器接続線に接続する状態とを択一的に切り換える通話路切換手段と、制御線を介して伝送される制御信号に基づいて個別通話/一斉放送切換手段並びに通話切換手段を制御する制御手段と、ドアホン子器との通話と一斉放送の何れを優先するかを選択する通話/一斉放送選択手段とを備え、各住戸機の制御手段は、一斉放送開始を指示する制御信号を受信した場合、ドアホン子器との通話中でなければ通話路切換手段を制御して通話手段を個別通話/一斉放送切換手段に接続する状態に切り換えるとともに個別通話/一斉放送切換手段を制御して信号線をスピーカに接続する状態に切り換え、ドアホン子器との通話中であれば通話/一斉放送選択手段で一斉放送が選択された場合に通話路切換手段を制御して通話手段を個別通話/一斉放送切換手段に接続する状態に切り換えるとともに個別通話/一斉放送切換手段を制御して信号線をスピーカに接続する状態に切り換えることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ドアホン子器は、子器接続線を介して住戸機に呼出信号を送信し、住戸機の制御手段は、ドアホン子器から呼出信号を受信した場合、一斉放送の受信中でなければ通話路切換手段を制御して通話手段を子器接続線に接続する状態に切り換え、一斉放送の受信中であれば通話/一斉放送選択手段で通話が選択された場合に通話路切換手段を制御して通話手段を子器接続線に接続する状態に切り換えることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、住戸機は、一斉放送の音声を録音する録音手段と、録音手段に録音された一斉放送の音声を再生してスピーカから送出する再生手段とを備え、住戸機の制御手段は、通話/一斉放送選択手段で通話が選択された場合に一斉放送の音声を録音手段に録音させることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1又は2の発明において、各住戸に設置されるとともに当該住戸の住戸機と伝送線を介して接続され且つ一斉放送装置で放送された音声が住戸機から伝送線を介して伝送されるとともに伝送された一斉放送の音声を拡声出力する音響装置を備え、住戸機の制御手段は、通話/一斉放送選択手段で通話が選択された場合に一斉放送の音声を伝送線を介して音響装置に伝送することを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1又は2の発明において、住戸機は、報知音を生成する報知音生成手段を備え、住戸機の制御手段は、通話/一斉放送選択手段で一斉放送が選択された場合に報知音生成手段で生成した報知音を子器接続線を介してドアホン子器に伝送することを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1又は2の発明において、ドアホン子器は、来訪者を撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像した映像を住戸機に伝送する映像伝送手段とを備え、住戸機は、ドアホン子器から伝送される映像を表示する表示手段を備え、住戸機の制御手段は、通話/一斉放送選択手段で一斉放送が選択された場合にドアホン子器から伝送される映像を表示手段に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ドアホン子器との通話中に一斉放送が開始された場合にドアホン子器との通話を継続するか若しくは一斉放送の受信に切り換えるかを居住者が選択できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、一斉放送の受信中にドアホン子器からの呼出があった場合に一斉放送の受信を継続するか若しくはドアホン子器との通話に切り換えるかを居住者が選択できる。
【0013】
請求項3の発明によれば、ドアホン子器との通話中に一斉放送が開始された場合、若しくは一斉放送の受信中にドアホン子器からの呼出があった場合、居住者によって通話/一斉放送選択手段で通話が選択されると住戸機の制御手段が一斉放送の音声を録音手段に録音させるので、ドアホン子器との通話が終了した後で録音手段に録音した一斉放送を再生して確認できる。
【0014】
請求項4の発明によれば、ドアホン子器との通話中に一斉放送が開始された場合、若しくは一斉放送の受信中にドアホン子器からの呼出があった場合、居住者によって通話/一斉放送選択手段で通話が選択されると住戸機の制御手段が一斉放送の音声を伝送線を介して音響装置に伝送するので、ドアホン子器と通話しながら音響装置によって一斉放送を聞くことができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、ドアホン子器との通話中に一斉放送が開始された場合、若しくは一斉放送の受信中にドアホン子器からの呼出があった場合、居住者によって通話/一斉放送選択手段で一斉放送が選択されると住戸機の制御手段が報知音生成手段で生成した報知音を子器接続線を介してドアホン子器に伝送するので、ドアホン子器で通話していた来訪者に一斉放送を受信するために通話が中断されたことを知らせることができる。
【0016】
請求項6の発明によれば、ドアホン子器との通話中に一斉放送が開始された場合、若しくは一斉放送の受信中にドアホン子器からの呼出があった場合、居住者によって通話/一斉放送選択手段で一斉放送が選択されると住戸機の制御手段がドアホン子器から伝送される映像を表示手段に表示させるので、一斉放送の受信中に来訪者の様子を映像で確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
本実施形態のシステム構成例を図1に示す。本実施形態では、集合住宅の共用玄関に設置される共用部装置(ロビーインターホン)1と、各住戸にそれぞれ設置される複数台の住戸機2とを備え、ロビーインターホン1と住戸機2とが伝送線路を介して接続されている。伝送線路は、ロビーインターホン1に接続される幹線L1と、各住戸機2にそれぞれ接続される分岐線L2とを含み、さらに幹線L1を複数系統(図示せず)に分配するための幹線制御装置3が設けられている。この伝送線路としては、3対以上のペア線をシース内に備える多対ツイストペアケーブルを用いており、図示例ではロビーインターホン1と住戸機2との間で音声信号を伝送する通話線Laと、ロビーインターホン1が具備するテレビカメラ(図示せず)で撮像された映像信号を伝送する映像線Lbと、ロビーインターホン1が有する選択手段(後述する)により選択された住戸機2を指定する制御信号を伝送する制御線Lcとにそれぞれペア線を用いている。つまり、図示例の伝送線路では3対のペア線を用いている。ここで、映像線Lbを介して伝送される映像信号はロビーインターホン1において周波数変調され、後述するように各住戸機2に設けた映像処理部12で周波数復調されてモニタ部13に表示される。
【0019】
図示は省略するが、ロビーインターホン1は音声を入出力するマイクロホン及びスピーカと、来訪者を撮像するテレビカメラと、住戸番号を指定するための番号キーと呼出釦を有する選択手段とを備え、来訪者が番号キーを操作して訪問先の住戸番号を選択した後に呼出釦を操作すると住戸番号に対応する住戸機2を選択したことになる。ここで、ロビーインターホン1には通話線La及び制御線Lcを介して一斉放送装置(警報監視盤)5が接続されており、ロビーインターホン1で選択された住戸番号が制御線Lcを介して警報監視盤5に伝送されると、警報監視盤5が当該住戸番号に対応する住戸機2に対して制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)を送出する。
【0020】
一方、住戸機2は、音声を入出力するマイクロホン21及びスピーカ22を備え、マイクロホン21とスピーカ22とはそれぞれ増幅器23a,23bを介して通話処理部24に接続されている。また、通話処理部24には受話側並びに送話側の各伝送経路と2線の通話線Laとを2線4線変換する2線4線変換部25が増幅器26a,26bを介して接続されている。通話処理部24は、通話線Laを介して伝送されてくる音声信号(受話信号)とマイクロホン21から出力される音声信号(送話信号)のレベルを比較することで通話状態(受話状態又は送話状態)を推定し、受話状態と推定したときには送話信号の伝送経路に損失を挿入し、送話状態と推定したときには受話信号の伝送経路に損失を挿入することで受話モードと送話モードを切り換える音声スイッチや、マイクロホン21とスピーカ22の音響結合によって生じる音響エコーを消去するためのエコーキャンセラなどを具備する。但し、このような音声スイッチやエコーキャンセラは従来周知であるから詳細な構成及び動作の図示並びに説明は省略する。したがって、ロビーインターホン1と住戸機2との間で通話線Laを通して音声信号を授受することができ、来訪者がロビーインターホン1を用いるとともに居住者が住戸機2を用いることによって、来訪者と居住者との間で音声通話が可能となる。
【0021】
また住戸機2には、分岐線L2の通話線Laと映像線Lbをそれぞれ通話信号(受話信号及び送話信号)の伝送経路(以下、「通話路」と呼ぶ。)と映像信号の伝送経路(以下、「映像路」と呼ぶ。)に分離する幹線インタフェース部14が設けられている。映像路は映像処理部12に接続され、通話路は通話/一斉放送切換部15に接続されている。通話/一斉放送切換部15は、幹線インタフェース部14に接続された通話路を、通話路切換部16に接続する状態と、後述する音量補正部30に接続する状態とを択一的に切り換えるものである。また通話路切換部16は、2線4線変換部25に接続された通話路を、通話/一斉放送切換部15に接続する状態と、後述する子器インタフェース部18に接続する状態と、同一住戸内に設置された別の住戸機(図示せず)に接続する状態とを択一的に切り換えるものである。
【0022】
通話路切換部16に接続された子器インタフェース部18には子器接続線L3を介してドアホン子器6が接続される。ドアホン子器6は集合住宅の各住戸の玄関先に配置されるものであってマイクロホン及びスピーカを備える。したがって、通話路切換部16が2線4線変換部25に接続された通話路を子器インタフェース部18に接続する状態に切り換えられているときにドアホン子器6と住戸機2との間での通話が可能になっている。また、ドアホン子器6にはテレビカメラが設けられ、子器インタフェース部18では子器接続線L3を介して伝送される音声信号と映像信号を分離し、分離した映像信号を伝送線路を介して映像処理部12に出力してモニタ部13に表示することができるようになっている。さらにドアホン子器6には呼出釦が設けられ、呼出釦が操作されたときに子器接続線L3に呼出信号が送出する機能を有し、住戸機2では呼出信号を検出したときに報知音生成部27で生成された呼出音がスピーカ22から送出されるようになっている。なお、ドアホン子器6の動作電源(直流電源)は2線式の子器接続線L3を介して住戸機2から供給するようになっており、ドアホン子器6では子器接続線L3の線間電圧を変化することで呼出信号を送出する。
【0023】
住戸機2において、モニタ部13には液晶表示器あるいはCRTが用いられる。映像線Lbを通して住戸機2に入力される映像信号は、幹線インタフェース部14で平衡−不平衡変換され、さらに増幅器で増幅された後に映像処理部12において周波数復調される。また、子器接続線L3を通して住戸機2に入力される映像信号も、子器インタフェース部18で平衡−不平衡変換され、さらに増幅器で増幅された後に映像処理部12において周波数復調される。そして、映像処理部12から出力された映像信号は、モニタ部13に入力されることによってモニタ部13の画面に映像を表示する。つまり、ロビーインターホン1やドアホン子器6のテレビカメラにおいて撮像された来訪者の映像が住戸機2のモニタ部13に表示されるから、住戸内の居住者が来訪者を確認することができるのである。
【0024】
また報知音生成部27は、ロビーインターホン1やドアホン子器6からの呼出等を報知するための報知音を生成し、生成した報知音を増幅器28aを介してスピーカ5に出力するとともに当該報知音をバックトーンとして分岐線L2又は子器接続線L3にも出力する。すなわち、報知音生成部27には増幅器28bを介してバックトーン送出路切換部17が接続されており、このバックトーン送出路切換部17がバックトーンの送出先を分岐線L2と子器接続線L3とに択一的に切り換えるようになっている。
【0025】
住戸機2には、CPUを主構成要素とし内部回路を制御する主制御部10が設けられ、主制御部10には制御線Lcとのインタフェースとなる制御信号送受信回路11と、通話釦(図示せず)などを有する操作部19とが接続される。制御信号送受信回路11は、主制御部10から出力された制御信号を制御線Lcに送出し、制御線Lcから受信した制御信号を主制御部10に引き渡す機能を有する。操作部19は通話釦などが押操作されたことを示す操作信号を主制御部10に送出する機能を有する。
【0026】
ところで、分岐線L2は分岐器7を介して幹線L1から分岐され、幹線制御装置3においては各系統の幹線L1を直結している。したがって、ロビーインターホン1から送出された制御信号は制御線Lcに接続されるすべての住戸機2に伝送される。ここに、住戸機2の主制御部10には個別にアドレス(たとえば、住戸番号)が設定されており、ロビーインターホン1においてアドレスを選択することによって、アドレスを指定する制御信号(呼出コマンド)が警報監視盤5から制御線Lcを介して全ての住戸機2に伝送することが可能になっている。住戸機2の主制御部10は、制御信号に含まれるアドレスが自己のアドレスであれば映像処理部12やモニタ部13を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ部13に表示させるとともに、報知音生成部27に生成させた報知音(呼出音)をスピーカ22から送出させる。そして、呼出音に応じて居住者が住戸機2の通話釦を押操作すると操作部19から主制御部10に操作信号が送出され、主制御部10が通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を通話路切換部16に接続する状態に切り換えさせるとともに通話路切換部16を制御して2線4線変換部25に接続された通話路を通話/一斉放送切換部15に接続する状態に切り換えさせてロビーインターホン1との間に通信路を確立することにより、ロビーインターホン1と選択された住戸機2との間でのみ通話可能にすることができるとともに、選択された住戸機2でのみカメラで撮像された来訪者をモニタ部13に表示することが可能になる。尚、ロビーインターホン1において選択された住戸機2がロビーインターホン1との間で通信路を確立している状態は、ロビーインターホン1または住戸機2において適宜の操作釦を用いた通話終了が検出されると終了する。
【0027】
また、ドアホン子器6の呼出釦が押操作されて子器接続線L3に呼出信号が送出されると、呼出信号を検出した住戸機2の主制御部10が映像処理部12やモニタ部13を起動してドアホン子器6のテレビカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ部13に表示させるとともに、報知音生成部27に生成させた報知音(呼出音)をスピーカ22から送出させる。そして、呼出音に応じて居住者が住戸機2の通話釦を押操作すると操作部19から操作信号が送出され、主制御部10が通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を通話路切換部16に接続する状態に切り換えさせるとともに通話路切換部16を制御して2線4線変換部25に接続された通話路を子器インタフェース部18に接続する状態に切り換えさせてドアホン子器6との間に通信路を確立することにより、ドアホン子器6と住戸機2との間で通話可能にすることができるとともテレビカメラで撮像された来訪者をモニタ部13に表示することが可能になる。
【0028】
一方、警報監視盤5は集合住宅の管理人室などに設置され、通話線Laを介して各住戸機2との間で通話並びに一斉放送を行う機能や、制御線Lcを介して各住戸機2に一斉放送の開始及び終了を指示する機能などを有している。例えば、警報監視盤5から全ての住戸機2に対して一斉放送を行う場合、警報監視盤5から一斉放送の開始を指示する制御信号(一斉放送開始コマンド)が制御線Lcを介して各住戸機2に送信され、この制御信号を受信した各住戸機2では、一斉放送開始コマンドに応じて主制御部10が通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を音量補正部30に接続する状態に切り換えさせて警報監視盤5との間に通信路が確立され、警報監視盤5から送出される一斉放送の音声信号(以下、「一斉放送用音声信号」と呼ぶ。)が通話線Laを介して各住戸機2に伝送される。そして、各住戸機2においては音量補正部30で一斉放送用音声信号の音量が自動的に補正され、音量補正された一斉放送用音声信号がスピーカ22から送出される。
【0029】
本実施形態における警報監視盤5は、CPUを主構成要素とする制御部50と、制御部50と制御線Lcとのインタフェースとなる制御信号送受信部51と、通話用のハンドセット(送受話器)52と、送話信号及び受話信号を増幅する増幅器53a,53bと、受話側並びに送話側の各伝送経路と2線の通話線Laとを2線4線変換する2線4線変換部54と、制御部50からの指示に応じて後述するトレーニング信号を送信するトレーニング信号送信部55と、2線4線変換部54の送話側の伝送線路をハンドセット52に接続する状態とトレーニング信号送信部55に接続する状態とに択一的に切り換える音声/トレーニング信号切換部56と、音声/トレーニング信号切換部56を2線4線変換部54を介して通話線Laに接続する状態と2線4線変換部54を介さずに増幅器58を介して通話線Laに接続する状態とに択一的に切り換える通話/一斉放送切換部57と、ロビーインターホン1に接続された通話線Laと幹線制御装置3に接続された通話線Laとの間に挿入された開閉スイッチ部59と、住戸番号を指定するための番号キーや呼出釦並びに一斉放送の音量を設定するための音量設定スイッチを有する操作部60とを備えている。そして、管理人が操作部60の番号キーを操作して何れかの住戸番号を選択した後に呼出釦を操作することで住戸番号に対応する住戸機2を選択すれば、選択した住戸機2との間に通信路が形成されてハンドセット52により当該住戸機2との間でのみ通話を行うことができる。また、かかる通話時には、制御部50によって音声/トレーニング信号切換部56が2線4線変換部54の送話側の伝送線路をハンドセット52に接続する状態に切り換えられるとともに通話/一斉放送切換部57が音声/トレーニング信号切換部56を2線4線変換部54を介して通話線Laに接続する状態に切り換えられ、且つ開閉スイッチ部59が開成されてロビーインターホン1が幹線L1から切り離される。
【0030】
トレーニング信号送信部55は、ホワイトノイズ(白色雑音)のように広帯域にわたりスペクトルが一様に分布する特性を有するトレーニング信号を生成して出力するものであって、音声/トレーニング信号切換部56から通話/一斉放送切換部57を経て増幅器58で増幅された後に通話線Laを介して各住戸機2に伝送される。
【0031】
図2(a)は音量補正部30の具体構成を示すブロック図である。本実施形態における音量補正部30は、通話線Laを介して受信したトレーニング信号に基づいて警報監視盤5から住戸機2に至るまでの通話線Laの伝送ロスを推定する伝送ロス推定手段と、一斉放送用音声信号に対して伝送ロス推定手段で推定した伝送ロスによる損失を補償する伝送ロス補償手段とを備える。伝送ロス補償手段は一斉放送用音声信号を増幅する増幅器39からなり、伝送ロス推定手段は、入力信号(トレーニング信号)X(n)の信号パワー(瞬時パワー)を推定するパワー推定部40と、パワー推定部40で推定されたトレーニング信号の信号パワーPsに基づいて増幅器39の増幅度Gを算出する増幅度算出部41とからなる。パワー推定部40は、図2(b)に示すように入力信号X(n)の絶対値の時間平均値(絶対平均値)PX(n)を求める絶対平均値算出部401と、絶対平均値算出部401で算出される時系列の絶対平均値PX(n)を平滑化する絶対平均値平滑部402とで構成される。
【0032】
絶対平均値算出部401は、所定のサンプリング時間でサンプリングされた入力信号X(n)を周波数弁別するバンドパスフィルタ401aと、周波数弁別後の入力信号X(n)の絶対値を求める絶対値算出部401bと、入力信号X(n)の絶対値を所定の時間フレーム(サンプリング数M)で除する除算部401cと、サンプリング数Mで除算された入力信号X(n)の絶対値の総和を求める総和算出部401dとからなり、結局のところ、絶対平均値算出部401では下記の式(1)の演算を行っている。
【0033】
【数1】

【0034】
また絶対平均値平滑部402は、正の定数α(<1)を絶対平均値Px(n)に乗算する乗算器402aと、遅延シフトレジスタ402bと、遅延シフトレジスタ402bで遅延させた瞬時パワー推定値Ps(n-1)に正の定数(1−α)を乗算する乗算器402cと、2つの乗算器402a,402cの出力を加算する加算器402dとからなり、結局のところ、絶対平均値平滑部402では下記の式(2)の演算を行っている。
【0035】
【数2】

【0036】
また、増幅度算出部41では、予め設定した信号パワーの基準値Prをパワー推定部40で推定された信号パワーの推定値Psで除算することによって増幅度G(=Pr/Ps)を算出し、算出した増幅度Gを増幅器39に設定する。
【0037】
次に、本実施形態において警報監視盤5より複数台の住戸機2に対して一斉放送を行う際の警報監視盤5並びに各住戸機2の動作を図3のフローチャートを参照しながら説明する。まず、一斉放送の開始に当たって管理人が警報監視盤5の操作部60に設けられた一斉放送開始釦(図示せず)を押操作すると(ステップS11)、警報監視盤5では、制御部50が一斉放送の開始を指示する制御信号(一斉放送開始コマンド)を制御信号送受信部51から制御線Lcを介して各住戸機2に対して伝送し、さらに、制御信号の送信完了から所定時間が経過したら、音声/トレーニング信号切換部56を制御してトレーニング信号送信部55を通話/一斉放送切換部57に接続する状態に切り換えるとともに通話/一斉放送切換部57を2線4線変換部54を介さずに通話線Laに接続する状態に切り換えた後、トレーニング信号送信部55からトレーニング信号を送信させる(ステップS12)。
【0038】
警報監視盤5から送信された制御信号は、一斉放送の対象である全ての住戸機2で受信される。制御信号を受信した住戸機2では、主制御部10が一斉放送開始コマンドに応じて一斉放送開始のための準備を行う。すなわち、主制御部10は、通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を音量補正部30に接続する状態に切り換えさせてトレーニング信号の受信可能状態とするとともに音量補正部30を動作させ(ステップS21)、警報監視盤5から通話線Laを介して伝送されるトレーニング信号を受信すれば伝送ロスの推定処理を開始する。音量補正部30では、主制御部10から動作開始の指示を受けるとパワー推定部40が入力信号X(n)の信号パワーの推定を行い、推定値Ps(n)が所定の閾値を超えたときにトレーニング信号を受信したと判断し(ステップS22)、トレーニング信号の受信時点から所定時間経過後の推定値Ps(n)をトレーニング信号の信号パワーPsとし(ステップS23,S24)、増幅度算出部41が基準値Prを信号パワーPsで除算して求めた増幅度Gを増幅器39に設定する(ステップS25)。
【0039】
警報監視盤5では、送信開始から所定時間経過後に制御部50がトレーニング信号送信部55によるトレーニング信号の送信を停止させ(ステップS13)、さらに、音声/トレーニング信号切換部56を制御してハンドセット52を通話/一斉放送切換部57に接続する状態に切り換える。そして、管理人がハンドセット52を使って一斉放送を行えば(ステップS14)、ハンドセット52から出力される一斉放送用音声信号が音声/トレーニング信号切換部56から通話/一斉放送切換部57を経て通話線Laに送出される。そして、警報監視盤5から通話線Laを介して伝送される一斉放送用音声信号は、幹線インタフェース部14から通話/一斉放送切換部15を介して音量補正部30に入力され、増幅器39で増幅することによって音量が補正されるため、スピーカ22からは適切な音量で一斉放送の音声が出力される(ステップS26)。
【0040】
そして、一斉放送を終了するためにハンドセット52がオンフックされると(ステップS15)、警報監視盤5の制御部50は、一斉放送の終了を指示する制御信号(一斉放送終了コマンド)を制御信号送受信部51から制御線Lcを介して各住戸機2に対して伝送した後、開閉スイッチ部59を閉成して待機状態に戻る。また、制御信号を受信した住戸機2では、主制御部10が音量補正部30の動作を停止させるとともに、通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を通話路切換手段16に接続する状態に切り換えさせて待機状態に戻る。
【0041】
ところで、上述した動作説明は住戸機2が待機状態(ドアホン子器6や住戸内の他の住戸機と通話していない状態)の場合であるが、住戸機2がドアホン子器6又は住戸内の他の住戸機と通話しているとき(通話中)に一斉放送が開始された場合の動作を図4のフローチャートを参照して説明する。
【0042】
一斉放送の開始に当たって管理人が警報監視盤5の操作部60に設けられた一斉放送開始釦(図示せず)を押操作すると(ステップS11)、警報監視盤5では、制御部50が一斉放送の開始を指示する制御信号(一斉放送開始コマンド)を制御信号送受信部51から制御線Lcを介して各住戸機2に対して伝送し、さらに、制御信号の送信完了から所定時間が経過したら、音声/トレーニング信号切換部56を制御してトレーニング信号送信部55を通話/一斉放送切換部57に接続する状態に切り換えるとともに通話/一斉放送切換部57を2線4線変換部54を介さずに通話線Laに接続する状態に切り換えた後、トレーニング信号送信部55からトレーニング信号を送信させる。
【0043】
警報監視盤5から送信された制御信号は、一斉放送の対象である全ての住戸機2で受信される。制御信号を受信した住戸機2のうちでドアホン子器6等と通話中である住戸機2では、主制御部10は、映像処理部12を制御して一斉放送が開始されたことを示す文字(例えば、「放送」などの文字)をモニタ部13に表示させ(ステップS30)、同時に報知音生成部27で生成した報知音(チャイム音)を通話音声に重畳してスピーカ22から送出させる(ステップS31)ことによって、通話中の居住者に一斉放送が開始されたことを知らせる。さらに主制御部10は、通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を音量補正部30に接続する状態に切り換えさせてトレーニング信号の受信可能状態とするとともに音量補正部30を動作させ(ステップS32)、警報監視盤5から通話線Laを介して伝送されるトレーニング信号を受信すれば一斉放送の音量を補正する処理(音量補正処理)を開始する。すなわち、音量補正部30は、主制御部10から動作開始の指示を受けるとパワー推定部40が入力信号X(n)の信号パワーの推定を行い、推定値Ps(n)が所定の閾値を超えたときにトレーニング信号を受信したと判断し、トレーニング信号の受信時点から所定時間経過後の推定値Ps(n)をトレーニング信号の信号パワーPsとし、増幅度算出部41が基準値Prを信号パワーPsで除算して求めた増幅度Gを増幅器39に設定して音量補正処理を終了する。
【0044】
ところで、モニタ部13に表示された文字やスピーカ22から送出されるチャイム音によって一斉放送が開始されたことを知った居住者は、そのままドアホン子器6等との通話を継続する場合には何らの操作も行う必要はなく、ドアホン子器6等との通話を中止して一斉放送を受信する場合にだけ操作部19の通話釦を押操作すればよい。住戸機2の主制御部10はドアホン子器6等との通話状態を継続したまま操作部19から通話釦の押操作に伴う操作信号が送出されるか否かを監視し(ステップS33)、操作信号が送出されたら、ドアホン子器6等との通話を終了する処理、すなわち、通話路切換部16を2線4線変換部25に接続された通話路と通話/一斉放送切換部15とを接続する状態に切り換えるとともに通話処理部24を停止させる(ステップS34)。
【0045】
警報監視盤5では、送信開始から所定時間経過後に制御部50がトレーニング信号送信部55によるトレーニング信号の送信を停止させた後、音声/トレーニング信号切換部56を制御してハンドセット52を通話/一斉放送切換部57に接続する状態に切り換える。そして、管理人がハンドセット52を使って一斉放送を行えば(ステップS12)、ハンドセット52から出力される一斉放送用音声信号が音声/トレーニング信号切換部56から通話/一斉放送切換部57を経て通話線Laに送出される。そして、警報監視盤5から通話線Laを介して伝送される一斉放送用音声信号は、幹線インタフェース部14から通話/一斉放送切換部15を介して音量補正部30に入力され、増幅器39で増幅することによって音量が補正されるため、スピーカ22からは適切な音量で一斉放送の音声が送出される(ステップS35)。
【0046】
そして、一斉放送を終了するためにハンドセット52がオンフックされると(ステップS13)、警報監視盤5の制御部50は、一斉放送の終了を指示する制御信号(一斉放送終了コマンド)を制御信号送受信部51から制御線Lcを介して各住戸機2に対して伝送した後、開閉スイッチ部59を閉成して待機状態に戻る。また、制御信号を受信した住戸機2では、主制御部10が音量補正部30の動作を停止させるとともに、音量補正部30で補正された一斉放送用音声信号を増幅している増幅器29aの増幅度を徐々に減少させた後に通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を通話路切換部16に接続する状態に切り換えさせて待機状態に戻る。
【0047】
次に、住戸機2が一斉放送を受信しているときにドアホン子器6から呼び出された場合の動作を図5のフローチャートを参照して説明する。
【0048】
音量補正部30で音量補正した一斉放送の音声がスピーカ22から送出されているとき(ステップS35)に来訪者が呼出釦を押操作する(ステップS50)ことでドアホン子器6から子器接続線L3へ呼出信号が送出された場合、住戸機2の主制御部10では、主制御部10が呼出信号を検出すると(ステップS36)、映像処理部12を制御してドアホン子器6から呼び出されたことを示す文字(例えば、「玄関」などの文字)をモニタ部13に表示させ(ステップS37)、報知音生成部27で生成した呼出音を一斉放送の音声に重畳してスピーカ22から送出させる(ステップS38)ことによって、一斉放送を聞いている居住者にドアホン子器6から呼び出されたことを知らせる。なお、報知音生成部27で生成された呼出音はバックトーン送出路切換部17から子器接続線L3を介してドアホン子器6に送出される。
【0049】
ところで、モニタ部13に表示された文字やスピーカ22から送出される呼出音によってドアホン子器6から呼び出されたことを知った居住者は、そのまま一斉放送を聞く場合には何らの操作も行う必要はなく、一斉放送の受信を中止してドアホン子器6との通話を行う場合にだけ操作部19の通話釦を押操作すればよい。住戸機2の主制御部10は一斉放送の受信状態を継続したまま操作部19から通話釦の押操作に伴う操作信号が送出されるか否かを監視し(ステップS39)、操作信号が送出されたら、通話路切換部16を制御して2線4線変換部25に接続された通話路を子器インタフェース部18に接続する状態に切り換えてドアホン子器6との間に通信路を形成し(ステップS40)、さらに子器接続線L3を介して直流電源を供給することでドアホン子器6を起動するとともに音量補正部30を停止させる。その結果、ドアホン子器6と住戸機2との間で子器接続線L3を介して通話することができる。
【0050】
上述のように本実施形態では、ドアホン子器6との通話中に一斉放送が開始された場合にドアホン子器6との通話を継続するか若しくは一斉放送の受信に切り換えるかを居住者が選択できるとともに、一斉放送の受信中にドアホン子器6からの呼出があった場合に一斉放送の受信を継続するか若しくはドアホン子器6との通話に切り換えるかを居住者が選択できる。
【0051】
(実施形態2)
図6は本実施形態における住戸機2のブロック図である。但し、本実施形態の基本構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して適宜図示並びに説明を省略する。
【0052】
本実施形態の住戸機2は、音量補正部30で音量補正された後の一斉放送用音声信号をADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Moudulation)やMP3(MPEG Audio Layer-3)などの周知の圧縮方法によって圧縮及び伸長する音声圧縮伸長部31と、書換可能な不揮発性メモリ(フラッシュメモリなど)からなり音声圧縮伸長部31で圧縮された一斉放送用音声信号のデータ(以下、「一斉放送音声データ」と呼ぶ。)を蓄積する音声蓄積部32とを備えている。すなわち、通話線Laを介して伝送される一斉放送用音声信号を図示しないA/D変換器でディジタル信号に変換した後に音声圧縮伸長部31で圧縮し、圧縮した一斉放送音声データを音声蓄積部32に書き込んで蓄積(録音)するのである。また音声蓄積部32に蓄積した一斉放送音声データを再生するには、音声圧縮伸長部31が音声蓄積部32に蓄積されている一斉放送音声データを読み出して伸長した後、図示しないD/A変換器でアナログ信号(一斉放送用音声信号)に変換してスピーカ22から一斉放送の音声を送出するのである。つまり、本実施形態では音声圧縮伸長部31が録音手段及び再生手段に相当する。
【0053】
住戸機2の主制御部10は、実施形態1で説明したようにドアホン子器6との通話中に一斉放送が開始された場合、若しくは一斉放送の受信中にドアホン子器6からの呼出があった場合において、居住者が一斉放送の受信を選択せずにドアホン子器6との通話を選択したときに一斉放送用音声信号を圧縮して音声蓄積部32に蓄積する処理(以下、この処理を「録音」と呼ぶ。)を音声圧縮伸長部31に行わせる。但し、録音中は一斉放送用音声信号がスピーカ22へ送出されないように音量補正部30からスピーカ22への信号経路が主制御部10によって遮断される。そして、ドアホン子器6との通話終了後に居住者が操作部19に設けた再生釦(図示せず)を押操作すると、主制御部10が音声圧縮伸長部31に対して音声蓄積部32から一斉放送音声データを読み出して伸長した一斉放送用音声信号をスピーカ22へ送出する処理(以下、この処理を「再生」と呼ぶ。)を行わせる。従って、居住者はドアホン子器6との通話中に行われた一斉放送を住戸機2で録音しておき、ドアホン子器6との通話が終了した後に録音した一斉放送を住戸機2で再生して確認することができる。なお、本実施形態ではドアホン子器6との通話の場合について説明したが、住戸内の他の住戸機との通話の場合についても同様である。
【0054】
(実施形態3)
本実施形態は、図7に示すように住戸機2の音量補正部30で補正された後の一斉放送用音声信号をスピーカ22だけでなく住戸内に設置された音響装置にも送出する点に特徴がある。但し、本実施形態の基本構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して適宜図示並びに説明を省略する。
【0055】
本実施形態においては、分岐線L2に接続された住戸機2(以下、「親機」と呼ぶ。)が設置された場所と異なる場所に設置された他の住戸機(以下、「副親機」と呼ぶ。)2’と、住戸において親機2及び副親機2’が設置された場所と異なる場所に設置された増設スピーカSPとを音響装置として利用する。
【0056】
親機2は、音量補正部30の出力端とスピーカ22に接続された増幅器29aとの間に挿入されるスイッチSW1と、音量補正部30の出力端と増設スピーカSPに接続された増幅器33aとの間に挿入されるスイッチSW2と、音量補正部30の出力端と副親機2’の通話/一斉放送切換部35’とを接続する伝送線L4と、伝送線L4に接続された増幅器33bと音量補正部30の出力端との間に挿入されるスイッチSW3とを備えている。
【0057】
副親機2’は基本的な構成が親機2と共通であって、図8に示すようにマイクロホン21’及びスピーカ22’、通話処理部24’、報知音生成部27’、主制御部10’、映像処理部12’、モニタ部13’、2線4線変換部25’の他に、内線用の通話線La’を介して親機2の通話路切換部16と2線4線変換部25’との間で開閉自在に通話路を形成する通話路開閉部34’と、スピーカ22’を通話処理部24’に接続する状態と伝送線L4に接続する状態とに択一的に切り換える通話/一斉放送切換部35’とを備えている。但し、親機2と共通の機能を有する構成要素には同一の番号と「’」を付して説明を省略する。
【0058】
ここで親機2の主制御部10は、実施形態1で説明したようにドアホン子器6との通話中に一斉放送が開始された場合、若しくは一斉放送の受信中にドアホン子器6からの呼出があった場合において、居住者が一斉放送の受信を選択せずにドアホン子器6との通話を選択したときにスイッチSW1をオフしてスピーカ22への一斉放送用音声信号の送出を遮断するとともに、スイッチSW2,SW3の少なくとも何れか一方をオンする。スイッチSW2がオンすれば一斉放送用音声信号が増幅器33aで増幅された後に増設スピーカSPから送出される。またスイッチSW3をオンしたとき、親機2の主制御部10は図示しない内線用の制御線を介して一斉放送の受信を指示する制御信号を副親機2’に伝送する。この制御信号を受信した副親機2’の主制御部10’は、通話/一斉放送切換部35’を制御してスピーカ22’を伝送線L4に接続する状態に切り換えさせる。その結果、親機2の音量補正部30の出力端と副親機2’のスピーカ22’との間に伝送線L4を介した通信路が確立されて副親機2’のスピーカ22’から一斉放送用音声信号が送出される。従って、増設スピーカSP及び副親機2’のスピーカ22’の少なくとも何れか一方を通してドアホン子器6との通話中に行われる一斉放送を確認することができる。
【0059】
(実施形態4)
図9は本実施形態における住戸機2のブロック図である。但し、本実施形態の基本構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して適宜図示並びに説明を省略する。
【0060】
本実施形態の住戸機2は、一斉放送の受信中であることを報知するための報知音(音声メッセージやメロディ音など)をADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Moudulation)やMP3(MPEG Audio Layer-3)などの周知の圧縮方法で圧縮された音声データとして蓄積(記憶)する音声蓄積部36と、音声蓄積部36に蓄積された音声データを読み出して伸長するとともに伸長した音声データを報知音生成部27に出力する音声伸長部37とを備えている。すなわち、音声蓄積部36に蓄積された音声データを音声伸長部37で伸長して報知音生成部27へ出力すれば、報知音生成部27で振幅調整などの処理が行われた後にバックトーン送出路切換部17から子器接続線L3を介してドアホン子器6に送出され、ドアホン子器6のスピーカから報知音が聞こえることになる。
【0061】
住戸機2の主制御部10は、実施形態1で説明したようにドアホン子器6との通話中に一斉放送が開始された場合、若しくは一斉放送の受信中にドアホン子器6からの呼出があった場合において、居住者がドアホン子器6との通話を選択せずに一斉放送の受信を選択したとき、通話路切換部16を制御して2線4線変換部25に接続された通話路を通話/一斉放送切換部15に接続する状態に切り換えてドアホン子器6との間の通信路を解消し、通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を音量補正部30に接続する状態に切り換えさせるとともに、音声蓄積部36に蓄積された報知音(音声メッセージ又はメロディ音など)を読み出して伸長する処理を音声伸長部37に行わせる。さらに主制御部10は、バックトーン送出路切換部17を制御して音声伸長部37で伸長され且つ報知音生成部27で処理された後の報知音を子器インタフェース部18から子器接続線L3を介してドアホン子器6に送出するとともに、子器接続線L3を介して直流電源を供給することでドアホン子器6を起動し、ドアホン子器6のテレビカメラで撮像された映像を映像処理部12を介してモニタ部13に表示させる。
【0062】
而して本実施形態によれば、ドアホン子器6との通話中に一斉放送が開始された場合、若しくは一斉放送の受信中にドアホン子器6からの呼出があった場合、居住者によって一斉放送の受信が選択されると住戸機2の主制御部10が音声伸長部37に伸長させた報知音を子器接続線L3を介してドアホン子器6に伝送するので、ドアホン子器6で通話していた来訪者に一斉放送を受信するために通話が中断されたことを知らせることができ、また、住戸機2の主制御部10がドアホン子器6から伝送される映像をモニタ部13に表示させるので、一斉放送の受信中に居住者が来訪者の様子を映像で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態1を示すシステム構成図である。
【図2】(a)は同上における音量補正部のブロック図、(b)はパワー推定部のブロック図である。
【図3】同上の一斉放送時の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】同上においてドアホン子器との通話中に一斉放送が行われた場合の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】同上において一斉放送の受信中にドアホン子器から呼び出された場合の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態2における住戸機を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態3における住戸機(親機)を示すブロック図である。
【図8】同上における他の住戸機(副親機)を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施形態4における住戸機を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
2 住戸機
5 警報監視盤
6 ドアホン子器
19 操作部
30 音量補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の共用玄関に設置され音声の入出力が可能な共用部装置と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され共用部装置とは伝送線路を介して接続されるとともに共用部装置が有する選択手段を来訪者が操作することにより選択されると共用部装置との間で通信路を確立する複数台の住戸機と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され住戸機とは通話用の子器接続線を介して接続されるドアホン子器と、集合住宅の共用部若しくは管理人室に設置され各住戸機とは伝送線路を介して接続されるとともに一部又は全部の住戸機に対して一斉に音声を放送する一斉放送装置とを備え、
伝送線路は、少なくとも選択手段の操作に伴って発生し個別通話の開始を指示する制御信号を伝送する制御線と、音声信号を伝送する信号線とからなり、
住戸機は、共用部装置並びにドアホン子器との間で各々信号線及び子器接続線を介した通話を行う通話手段と、少なくとも一斉放送の音声を鳴動するスピーカと、信号線を通話手段に接続する状態とスピーカに接続する状態とを択一的に切り換える個別通話/一斉放送切換手段と、通話手段を個別通話/一斉放送切換手段に接続する状態と子器接続線に接続する状態とを択一的に切り換える通話路切換手段と、制御線を介して伝送される制御信号に基づいて個別通話/一斉放送切換手段並びに通話切換手段を制御する制御手段と、ドアホン子器との通話と一斉放送の何れを優先するかを選択する通話/一斉放送選択手段とを備え、
各住戸機の制御手段は、一斉放送開始を指示する制御信号を受信した場合、ドアホン子器との通話中でなければ通話路切換手段を制御して通話手段を個別通話/一斉放送切換手段に接続する状態に切り換えるとともに個別通話/一斉放送切換手段を制御して信号線をスピーカに接続する状態に切り換え、ドアホン子器との通話中であれば通話/一斉放送選択手段で一斉放送が選択された場合に通話路切換手段を制御して通話手段を個別通話/一斉放送切換手段に接続する状態に切り換えるとともに個別通話/一斉放送切換手段を制御して信号線をスピーカに接続する状態に切り換えることを特徴とする集合住宅用インターホンシステム。
【請求項2】
ドアホン子器は、子器接続線を介して住戸機に呼出信号を送信し、
住戸機の制御手段は、ドアホン子器から呼出信号を受信した場合、一斉放送の受信中でなければ通話路切換手段を制御して通話手段を子器接続線に接続する状態に切り換え、一斉放送の受信中であれば通話/一斉放送選択手段で通話が選択された場合に通話路切換手段を制御して通話手段を子器接続線に接続する状態に切り換えることを特徴とする請求項1記載の集合住宅用インターホンシステム。
【請求項3】
住戸機は、一斉放送の音声を録音する録音手段と、録音手段に録音された一斉放送の音声を再生してスピーカから送出する再生手段とを備え、住戸機の制御手段は、通話/一斉放送選択手段で通話が選択された場合に一斉放送の音声を録音手段に録音させることを特徴とする請求項1又は2記載の集合住宅用インターホンシステム。
【請求項4】
各住戸に設置されるとともに当該住戸の住戸機と伝送線を介して接続され且つ一斉放送装置で放送された音声が住戸機から伝送線を介して伝送されるとともに伝送された一斉放送の音声を拡声出力する音響装置を備え、
住戸機の制御手段は、通話/一斉放送選択手段で通話が選択された場合に一斉放送の音声を伝送線を介して音響装置に伝送することを特徴とする請求項1又は2記載の集合住宅用インターホンシステム。
【請求項5】
住戸機は、報知音を生成する報知音生成手段を備え、
住戸機の制御手段は、通話/一斉放送選択手段で一斉放送が選択された場合に報知音生成手段で生成した報知音を子器接続線を介してドアホン子器に伝送することを特徴とする請求項1又は2記載の集合住宅用インターホンシステム。
【請求項6】
ドアホン子器は、来訪者を撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像した映像を住戸機に伝送する映像伝送手段とを備え、
住戸機は、ドアホン子器から伝送される映像を表示する表示手段を備え、住戸機の制御手段は、通話/一斉放送選択手段で一斉放送が選択された場合にドアホン子器から伝送される映像を表示手段に表示させることを特徴とする請求項1又は2記載の集合住宅用インターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−304222(P2006−304222A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126910(P2005−126910)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】