説明

電力制御用の半導体装置

【課題】モールド樹脂で封止された半導体装置において、絶縁耐圧の高い電力制御用の半導体装置を提供する。
【解決手段】電力制御用の半導体装置1は、電極部40Aを有する低電圧側の第1電極端子40と、電極部50Aを有する高電圧側の第2電極端子50と、電極部40A,50Aに接続されているスイッチング素子10と、スイッチング素子10をモールド樹脂で封止する封止部80とを備えている。絶縁シート43,53は封止部80から露出するように電極部40A,50Aの第2面42,52に設けられている。絶縁シート43,53は第2面42,52よりも大きい形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド樹脂で封止された電力制御用の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力制御用の半導体装置は、スイッチング素子と、制御用の配線と、低電圧側配線に接続される第1電極端子と、高電圧側配線に接続される第2電極端子と、スイッチング素子を封止するモールド樹脂とを備えている。半導体装置はスイッチング動作により高温になるため、ヒートシンク等の放熱装置が半導体装置に取り付けられている。放熱装置は金属により形成されているため、半導体装置の絶縁耐圧が要求される。
【0003】
特許文献1には、水冷式の放熱装置840と、電力制御用のスイッチング素子810とが一体にされた半導体装置800が示されている。図10(a)に示すように、放熱装置840の上に電極部820が配置され、さらに、電極部820の上にスイッチング素子810が配置されている。そして、電極部820と放熱装置840との間に絶縁層830が設けられている。この種の構造の半導体装置800では、放熱装置840の表面全体に絶縁層830が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−173504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10(b)を参照して、特許文献1の半導体装置800とは封止構造の異なる半導体装置900、すなわちモールド型の半導体装置900について説明する。
この種の半導体装置900には放熱装置950が直接取り付けられる。このため、半導体装置側で絶縁対策がなされている。すなわち、スイッチング素子910が配置されている電極部920の外面に絶縁層930が設けられている。絶縁層930は封止部940から露出する。しかし、この種の半導体装置900の場合、封止部940と絶縁層930との間に境界面960が存在するため、半導体装置800に比べると絶縁耐圧が低い。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、モールド樹脂で封止された半導体装置において、絶縁耐圧の高い電力制御用の半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明は、第1電極部を有する低電圧側の第1電極端子と、第2電極部を有する高電圧側の第2電極端子と、前記第1電極部および前記第2電極部に接続されているスイッチング素子と、前記スイッチング素子をモールド樹脂で封止する封止部とを備え、絶縁層が前記第1電極部および前記第2電極部のうち少なくとも一方の電極部の外面に設けられ、かつ前記絶縁層が前記封止部から露出する電力制御用の半導体装置において、前記絶縁層が前記外面よりも大きいことを要旨とする。
【0008】
従来構造の半導体装置の場合、絶縁層が電極部の外面を覆っているが、封止部と絶縁層との間に形成される境界面が電極部の角部の近くに存在する。すなわち、角部の近辺には絶縁耐圧の高い部分と絶縁耐圧の低い部分が存在する。角部は電界集中が生じるところであるため、電極部に高電圧が加わると、角部から放電が生じ、絶縁耐圧の低い部分すなわち封止部が絶縁破壊することがある。
【0009】
本発明では、絶縁層を電極部の外面よりも大きくし、角部すなわち電界集中が生じやすいところを絶縁層で覆う。これにより、従来構造の半導体装置に比べて、電極部と放熱装置との間の絶縁耐圧を高くすることができる。
【0010】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力制御用の半導体装置において、前記絶縁層は、前記電極部の角部の少なくとも一部分を覆うことを要旨とする。
この発明によれば、電極部の角部を絶縁層で覆い、角部の近辺において絶縁耐圧の低いところを少なくする。これにより、従来構造の半導体装置に比べ、電極部と放熱装置との間の絶縁耐圧を高くすることができる。
【0011】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電力制御用の半導体装置において、前記絶縁層が設けられた前記電極部の外面の面積が同電極部の内面の面積よりも小さいことを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、絶縁層の面積が電極部の内面の面積と等しいとき、絶縁層の面積が電極部の外面の面積よりも小さくなる。すなわち、絶縁層の面積の大きさを電極部の内面の面積よりも大きくすることなく絶縁層を電極部の外面よりも大きくすることができる。
【0013】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電力制御用の半導体装置において、前記電極部の側面と前記外面との間に他面が形成され、前記外面と前記他面との間のなす角が鈍角とされていることを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、外面と電極部の側面との間に他面を形成し、外面と他面との間のなす角を鈍角にする。これにより、角部における電界集中が緩和される。このため、従来構造の電極部に比べ、絶縁耐圧を大きくすることができる。
【0015】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力制御用の半導体装置において、前記電極部の角部の少なくとも一部分が、前記絶縁層よりも導電性が高くかつ前記電極部よりも導電性が低い半導電性部材により覆われていることを要旨とする。
【0016】
電極端子間に高電圧が加えられるとき電極部の角部に電界集中が生じる。このとき、電極部の角部の電位が電極部の平坦部の電位よりも高くなるため、角部を起点として放熱装置へ放電が生じることがある。本発明では、電極部の角部を半導電性部材で覆う。これにより、電極部の電界集中が緩和するため、このような放電を抑制することができる。
【0017】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電力制御用の半導体装置において、前記半導電性部材は絶縁性物質と導電性物質との混合物であることを要旨とする。
この種の混合物は導電体の電界集中を緩和させる作用を有する。本発明では、上記混合物で電極部を覆って電界集中を緩和する。これにより絶縁耐圧を高くすることができる。
【0018】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電力制御用の半導体装置において、前記絶縁層が2層構造とされ、外層は、絶縁性物質により形成され、内層は、前記外層よりも導電性が高くかつ前記電極部よりも導電性が低い半導電性部材により形成されていることを要旨とする。
【0019】
このような構成によれば、電極部と絶縁層との接触部分の全体に半導電性部材が配置されるため、電極部と絶縁層との間の電位傾度の均一化を図ることができる。これにより、絶縁耐圧を大きくすることができる。
【0020】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電力制御用の半導体装置において、前記絶縁層は、内面表面が熱可塑性樹脂層である絶縁シートにより形成されていることを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、熱圧着により絶縁シートを電極部に取り付けることができるため、塗布等により絶縁層を形成する場合と比べて、製造工程が簡易な半導体装置を提供することができる。
【0022】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電力制御用の半導体装置において、前記絶縁層の外面には金属層が設けられていることを要旨とする。
金属層がない場合、絶縁層に取り付けられる放熱装置との接続構造に制限が生じる。すなわち、絶縁層に金属層がない場合は、半田またはろう材を用いて放熱装置を取り付けることが難しいため、両者の接続に接着剤が用いられる。本発明によれば、半田またはろう材によって放熱装置を取り付けることが可能となる。
【0023】
放熱装置を取り付けるとき、半田またはろう材等を介在させ放熱装置を固定するが、絶縁層に金属層が設けられていない場合にあっては、取り付けのときの圧着力、擦れ、または接触等により絶縁層に傷が付くことがある。傷のある部分は他の部分に比べて絶縁層が薄いため、絶縁耐圧が著しく低下することがある。この点、上記構成によれば、金属層により絶縁層を保護するため、絶縁層の損傷に起因する絶縁耐圧の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、モールド樹脂で封止された半導体装置において、絶縁耐圧の高い電力制御用の半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態の半導体装置の断面構造を示す断面図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】半導体装置の電極部を示し、(a)は従来構造の電極部の部分断面図、(b)は図1の電極部の部分断面図。
【図4】第2実施形態の半導体装置について電極部の部分断面図。
【図5】第3実施形態の半導体装置について、(a)は電極部の部分断面図、(b)は電極部の平面図。
【図6】第4実施形態の半導体装置について電極部の部分断面図。
【図7】第5実施形態の半導体装置について電極部の部分断面図。
【図8】第6実施形態の半導体装置について電極部の部分断面図。
【図9】第7実施形態の半導体装置について電極部の部分断面図。
【図10】従来構造の半導体装置について、(a)は、半導体装置の電極部の部分断面図、(b)モールド型の半導体装置の電極部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の半導体装置の第1実施形態について説明する。
以下に説明する電力制御用の半導体装置1は、例えば、インバータ等のスイッチング回路に用いられる。
【0027】
半導体装置1は、スイッチング素子10と、フライホイールダイオード20と、低電圧側の第1電極端子40と、高電圧側の第2電極端子50と、制御用の配線シート60と、これら2つの素子を封止する封止部80とを備えている。
【0028】
半導体装置1の回路構成は次の通り。
スイッチング素子10とフライホイールダイオード20とは並列接続されている。
すなわち、スイッチング素子10のソース電極14とフライホイールダイオード20のアノード電極とが接続され、かつスイッチング素子10のドレイン電極13とフライホイールダイオード20のカソード電極とが接続されている。
【0029】
スイッチング素子10のゲート電極15には信号配線(配線61)が接続されている。なお、フライホイールダイオード20はスイッチング素子10の逆方向に発生する電力を逃すための素子である。これにより過電圧がスイッチング素子10に加わることを抑制する。
【0030】
以下、半導体装置1の各構成要素について説明する。
スイッチング素子10は、n型MOSFETにより形成されている。
スイッチング素子10の第1主面11には、ソース電極14と、ゲート電極15とが形成されている。スイッチング素子10の第2主面12には、ドレイン電極13が形成されている。
【0031】
フライホイールダイオード20はシリコンにより形成されている。
封止部80は、モールド樹脂によりスイッチング素子10とフライホイールダイオード20とを封止する。モールド樹脂としては、例えば、酸化ケイ素等のフィラ含有のエポキシ樹脂、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等が用いられる。
【0032】
第1電極端子40について説明する。
第1電極端子40は半導体装置1の低電圧側の端子を構成する。第1電極端子40は、矩形の電極部40A(第1電極部)と端子部40B(図2参照)とを備えている。端子部40Bは封止部80の外側に引き出されている。
【0033】
第1電極端子40は数100μm厚から数mmまでの厚さを有する良導体により形成されている。スイッチング素子10によっては数10A〜100Aの電流制御をするため、第1電極端子40は上記厚さに設定されている。
【0034】
第1電極端子40の第1面41には、第1導電体31と第3導電体33とが設けられている。第1導電体31および第3導電体33は、半田で第1電極端子40に接続されている。
【0035】
第1電極端子40の第2面42(外面)には絶縁シート43(絶縁層)が貼り付けられている。絶縁シート43は、ポリイミド樹脂により形成されている。絶縁シート43は3層構造となっている。すなわち、絶縁シート43の中間層は非熱可塑性ポリイミド層であり、この非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層(熱可塑性樹脂層)が形成されている。すなわち、絶縁シート43のうち第2面42と接着する面には、熱可塑性ポリイミド層が積層されている。非熱可塑性とは、明確なガラス転移温度が存在せず、高温での軟化が小さくかつ弾性率低下が小さい性質をいう。絶縁シート43を構成するポリイミド樹脂は、封止部80を形成する樹脂よりも絶縁耐圧が高い。
【0036】
絶縁シート43の周縁部は、第1電極端子40の角部71を覆っている。そして、絶縁シート43の周縁部は、封止部80により覆われている。すなわち、絶縁シート43のうちの中央部、すなわち第1電極端子40の第2面42に対応する部分は、封止部80に覆われていない。
【0037】
絶縁シート43には金属シート44(金属層)が貼り付けられている。金属シート44は、絶縁シート43の中央部を覆っている。すなわち、絶縁シート43のうち封止部80に覆われている周縁部以外の部分は、金属シート44により覆われている。このようにして、絶縁シート43に打痕等の傷が付かないように、絶縁シート43が外部に露出しない構成としている。なお、金属シート44は、例えば銅箔により形成される。
【0038】
なお、絶縁シート43(絶縁層)と金属シート44との積層体(以下、絶縁保護層)は、銅張ポリイミド積層シートにより形成される。銅張ポリイミド積層シートとしては、第2面42との接着面が熱可塑性ポリイミド層であるシートが用いられる。銅張ポリイミド積層シートを第1電極端子40に熱圧着により貼り付け可能とするためである。
【0039】
第1電極端子40の材料としては、導電性および熱伝導性の観点から銅が用いられる。例えば、タフピッチ銅、無酸素銅等、純度の高い銅により形成される。なお、軽量化のために、アルミニウムが用いられることもある。
【0040】
第2電極端子50について説明する。
第2電極端子50は半導体装置1の高電圧側の端子を構成する。第2電極端子50は、第1電極端子40と同様に電極部50A(第2電極部)と端子部とを備えている。第2電極端子50は第1電極端子40と同様の材料により形成されている。
【0041】
第2電極端子50の第1面51には、第2導電体32と第4導電体34とが設けられている。第2導電体32および第4導電体34は、半田で第2電極端子50に接続されている。
【0042】
第2電極端子50の第2面52(外面)、すなわちスイッチング素子10に対向する面と反対側の面には、絶縁シート53が貼り付けられている。また、絶縁シート53には金属シート54が貼り付けられている。絶縁シート53と金属シート54との積層体の構造は、第1電極端子40の絶縁保護層の構造と同様である。
【0043】
第2電極端子50の材料は第1電極端子40と同じ材料が用いられる。なお、第1電極端子40と第2電極端子50とを異なる材料とすることも可能である。
第1〜第4導電体31〜34について説明する。
【0044】
第1〜第4導電体31〜34は略直方体に形成されている。
第1導電体31の熱膨張係数は、スイッチング素子10の熱膨張係数よりも大きく、かつ第1電極端子40の熱膨張係数よりも小さい。第2導電体32の熱膨張係数は、スイッチング素子10の熱膨張係数よりも大きく、かつ第2電極端子50の熱膨張係数よりも小さい。すなわち、第1導電体31および第2導電体32は、導体としての機能と、熱膨張係数との差に起因して生じる応力を緩和する緩衝材としての機能を有する。
【0045】
第3導電体33の熱膨張係数は、フライホイールダイオード20の熱膨張係数よりも大きく、かつ第1電極端子40の熱膨張係数よりも小さい。第4導電体34の熱膨張係数は、フライホイールダイオード20の熱膨張係数よりも大きく、かつ第2電極端子50の熱膨張係数よりも小さい。すなわち、第3導電体33および第4導電体34は、導体としての機能と、熱膨張係数との差に起因して生じる応力を緩和する緩衝材としての機能を有する。
【0046】
第1導電体31、第2導電体32、第3導電体33、および第4導電体34は、例えば、Cu/Mo/Cu積層板、Cu−Mo合金(Cu−Mo複合材)、Cu−W合金(Cu−W複合材)、Al−SiC合金、コバール(Fe−Ni−Co)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、42アロイ(Fe−Ni)、Cu/Cu−Mo複合材/Cuの積層板等により形成されている。これらの材料は、銅材の電極端子40,50を用いる場合において、上記熱膨張係数の条件を満たす。これらの材料のなかでも、Cu/Mo/Cu積層板、Cu−Mo合金(Cu−Mo複合材)、Cu−W合金(Cu−W複合材)、Cu/Cu−Mo複合材/Cuの積層板は、他の材料に比べて熱伝導率が高いため、放熱性の観点から好ましい。なお、Cu−Mo複合材は、銅(Cu)にモリブデン(Mo)を含浸させた材料、もしくはモリブデン(Mo)に銅(Cu)を含浸させた材料を示す。Cu−W複合材は、銅(Cu)にタングステン(W)を含浸させた材料、もしくはタングステン(W)に銅(Cu)を含浸させた材料を示す。
【0047】
図1および図2を参照して、配線シート60について説明する。
配線シート60は、フレキシブルプリント基板により形成されている。具体的には次の構成を有する。
【0048】
配線シート60は、配線61と、補強板62と、配線61および補強板62の一面を覆う第1ポリイミド層63Aと、配線61および補強板62の他面を覆う第2ポリイミド層63Bとを備えている。第1ポリイミド層63Aは、第1電極端子40と接触する絶縁層である。
【0049】
第1ポリイミド層63Aは3層構造になっている。すなわち、第1ポリイミド層63Aの中間層は非熱可塑性ポリイミド層であり、この非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層が形成されている。
【0050】
配線61および補強板62は、銅材により形成され、第1ポリイミド層63Aに形成されている。
第2ポリイミド層63Bは、配線61および補強板62が形成された第1ポリイミド層63Aに対し、熱可塑性樹脂またはその前駆体を塗布することにより形成される。
【0051】
配線シート60は、第1電極端子40に固定される固定部60Aと、配線61を含むリード部60Bとにより区分される。なお、図2に示すように、リード部60Bの一部は第1電極端子40に接触し、この接触部分で第1電極端子40に固定されている。
【0052】
固定部60Aはスイッチング素子10およびフライホイールダイオード20を囲む。
すなわち、固定部60Aには、第1貫通孔64と第2貫通孔65とが形成されている。第1貫通孔64は、スイッチング素子10が搭載される第1導電体31の周囲を囲むように形成されている。第2貫通孔65は、フライホイールダイオード20が搭載される第3導電体33の周囲を囲むように形成されている。
【0053】
リード部60Bにおいて、第1貫通孔64近辺には第2ポリイミド層63Bの一部が除去された開口部66が形成されている。開口部66にはゲート端子67が形成されている。ゲート端子67はゲート電極15に接続される。
【0054】
図3を参照して、第1電極端子40の構造について説明する。
なお、第2電極端子50は第1電極端子40と同じ構造を有するため、第2電極端子50の説明は省略する。
【0055】
まず、比較のため、従来構造の第1電極端子140について説明する。
図3(a)に示すように、第1電極端子140は、矩形の電極部140Aを有している。電極部140Aは、第2面142(外面)側において4個の頂点、第2面142と側面145とが共有する4本の辺(以下、第1辺)、および隣接する側面145が共有する4本の辺(以下、第2辺)を備えている。なお、以下の説明では、頂点を含む部分を頂部とし、第1辺を含む部分を角部171とする。頂部は、角部171の端にあるため、頂部は角部171に含まれるものとする。
【0056】
電極部140Aの第2面142には、絶縁シート143が貼り付けられている。絶縁シート143の外側には金属シート144が貼り付けられている。
絶縁シート143の形状は電極部140Aの形状と同じく矩形であり、かつ絶縁シート143は電極部140Aの底面と等しい大きさに形成されている。
【0057】
電極部140Aの角部171と絶縁シート143の端縁とは、同一平面かつ略同じところに設けられている。すなわち、電極部140Aの角部171と、封止部180と絶縁シート143との境界面181とが、略同じところに配置されている。
【0058】
このような構造の場合、次の課題がある。
電力制御用の半導体装置1では、電極端子間に数百V〜千数百Vの高電圧が加えられる。このとき、電極部140Aの角部171に電界集中が生じる。一方、角部171を覆う絶縁構造は次のようになっている。角部171を構成する一面(第2面142)は、絶縁シート143により覆われている。また、角部171を構成する他面(側面145)は、封止部180により覆われている。そして、絶縁シート143と封止部180との境界面181が角部171に接触して存在する。すなわち、電界集中の生じるところに絶縁耐圧の高い部分と絶縁耐圧の低い低耐圧部分180Aとが存在する。このような絶縁構造の場合、角部171に電界集中が生じたとき、角部171を起点として角部171から放熱装置190へと放電が生じ、絶縁耐圧の低い部分すなわち封止部180において絶縁破壊が生じる。
【0059】
また、絶縁破壊が起こりやすくなる要因として次の要因も考えられる。境界面181には微小な空気孔(所謂ボイド)が存在する。空気は、樹脂に比べて放電を助長するため、絶縁構造部分の空気孔の存在は絶縁耐圧を低下させる。このため、角部171付近に境界面181があることも絶縁耐圧を低くする要因であると考えられる。
【0060】
次に、本実施形態の第1電極端子40の構造を説明する。
図3(b)に示すように、第1電極端子40は矩形の電極部40Aを有している。電極部40Aの構造は、比較構造と同じである。
【0061】
電極部40Aの第2面42には、絶縁シート43が貼り付けられている。絶縁シート43は角部71で折れ曲がり、さらに電極部40Aの側面45に沿って延びている。絶縁シート43を展開したものの面積は電極部40Aの第2面42の面積よりも大きい。
【0062】
放熱装置90の取付面91を基準面として、絶縁シート43の端縁43Aは、電極部40Aの角部71よりも離れたところに配置されている。すなわち、電極部40Aの角部71は、絶縁シート43により覆われている。
【0063】
この構成によれば、次の作用により、絶縁破壊の発生が抑制される。
絶縁シート43と封止部80との境界面81が角部71の付近から離れて存在する。すなわち、電界集中の生じるところは絶縁シート43すなわち絶縁耐圧の高い部材により覆われている。このため、角部71に電界集中が生じたときでも角部71を起点とする放電の生じる頻度は従来構造の半導体装置に比べて少ない。また、境界面81が角部71から離間したところにあるため、境界面81における絶縁破壊も抑制される。
【0064】
本実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)上記実施形態では、絶縁シート43が電極部40Aの第2面42よりも大きい。これにより、従来構造の半導体装置に比べ、電極部40Aと放熱装置90との間の絶縁耐圧を高くすることができる。
【0065】
(2)上記実施形態では、絶縁シート43は、少なくとも一方の電極部40Aの第2面42(外面)および角部71の少なくとも一部を覆う。すなわち、電極部40Aの角部71の近辺の絶縁構造において絶縁耐圧の低いところを少なくする。これにより、従来構造の半導体装置に比べ、絶縁耐圧を高くすることができる。
【0066】
(3)上記実施形態では、絶縁シート43として、内面表面に熱可塑性ポリイミド層が設けられているシートを用いている。この構成によれば、熱圧着により絶縁シート43を電極部40Aに取り付けることにより絶縁層を形成することができる。このため、塗布等により絶縁シート43に代わる層を形成する場合と比べて、製造工程が簡易な半導体装置を提供することができる。
【0067】
(4)上記実施形態では、絶縁シート43はポリイミド樹脂により形成されている。この構成によれば、エポキシ樹脂等の他の絶縁性樹脂により、耐熱性および絶縁耐圧が優れているため、他の樹脂で絶縁シート43を形成する場合に比べ絶縁シート43を薄くすることができる。これにより、放熱性を向上させることができる。
【0068】
(5)上記実施形態では、絶縁シート43の第2面42(外面)に金属シート44を貼り付けている。この構成によれば、半田またはろう材によって放熱装置90を取り付けることが可能となる。これにより、有機系成分のみからなる接着剤を用いて放熱装置90を取り付ける場合と比べて、放熱性が向上する。
【0069】
また、上記構成によれば、金属シート44により絶縁シート43が保護されるため、放熱装置90を取り付けるときに発生する絶縁シート43の損傷の発生を抑制し、または損傷の程度を小さくすることができる。これにより、絶縁シート43の損傷による絶縁耐圧の低下を抑制することができる。
【0070】
(第2実施形態)
図4を参照して、第2実施形態について説明する。
本実施形態の半導体装置は、第1実施形態の構成に対して次の変更を加えている。すなわち、第1実施形態では、絶縁シート43を電極部40Aの角部71で折り曲げて側面45に沿わせているが、本実施形態では、電極部240Aの第2面242の延長面に沿うように絶縁シート243を延長する。なお、以降の説明では、前記第1実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0071】
電極部240Aは略直方体に形成されている。
電極部240Aの第2面242には絶縁シート243が貼り付けられている。絶縁シート243には金属シート244が貼り付けられている。金属シート244の大きさは絶縁シート243の大きさとは等しい。
【0072】
絶縁シート243の形状は電極部240Aの第2面242の形状と同じく矩形であり、かつ絶縁シート243の大きさは電極部240Aの第2面242よりも大きい。絶縁シート243の端縁243Aは外側に向けて延びている。すなわち、絶縁シート243の端縁243Aは、電極部240Aの角部271よりも外側に配置されている。封止部80は、電極部240Aから絶縁シート243の端縁243Aまで存在する。なお、図4では、絶縁シート243の端縁243Aは外部に露出しているが、絶縁シート243の端縁243Aを封止部80で覆ってもよい。
【0073】
この構成では、封止部80のうち角部271に接触する接触部分80Aと角部271とを包括して絶縁シート243で覆う。すなわち、角部271の一面は絶縁シート243に覆われ、角部271の他面は厚みのある封止部80により覆われる。角部271部分における封止部80の厚さは、角部271から絶縁シート243の端縁243Aまでの長さとなる。この構成により、従来構造に比べて、角部271付近において絶縁耐圧の低いところが少なくなる。これにより、角部271を起点とする放電の発生が抑制される。
【0074】
なお、上記「封止部80のうち角部271に接触する接触部分80Aと角部271とを包括して絶縁シート243で覆う」とは、角部271と、この角部271に接触する接触部分80Aとが、絶縁シート243の端縁243Aよりも内側に配置されることを示す。この点は、第3実施形態および第4実施形態においても同じである。
【0075】
本実施形態の半導体装置1によれば、次の効果を得ることができる。
(6)本実施形態では、絶縁シート243が電極部240Aの第2面242よりも大きいという構成を有するため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、絶縁シート243が平面構造であることから絶縁シート243の折り曲げる必要がない。このため、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
(第3実施形態)
図5を参照して、第3実施形態について説明する。
【0077】
本実施形態の半導体装置は、第1実施形態の構成に対して次の変更を加えている。すなわち、第1実施形態では、電極部40Aは略矩形であり、電極部40Aの第1面41(内面)と第2面42(外面)とは略同じ面積を有するが、本実施形態では、電極部340Aの第1面341の面積よりも第2面342の面積を小さくする。なお、以降の説明では、前記第1実施形態と共通する構成については同一の符合を付す。
【0078】
電極部340Aは銅材により形成されている。
電極部340Aの第2面342には絶縁シート343が貼り付けられている。絶縁シート343には金属シート344が貼り付けられている。金属シート344の大きさは絶縁シート343の大きさとは等しい。なお、絶縁シート343の端縁343Aは封止部80により覆われている。
【0079】
電極部340Aは、ベース部340Bと、ベース部340Bの外側に設けられている段部340Cとにより構成されている。図5(b)に示すように、ベース部340Bと段部340Cとはともに平面視で矩形に形成されている。段部340Cの平面視の面積は、ベース部340Bの平面視の面積よりも小さい。すなわち、電極部340Aの第2面342は第1面341よりも小さい。
【0080】
ベース部340Bと段部340Cとは一部材により形成されている。段部340Cは、直方体の電極母材から角部を切削またはエッチングすることにより形成される。なお、ベース部340Bと段部340Cとを別部材により形成することも可能である。例えば、直方体のベース部340Bと、直方体の段部340Cとを半田接続することにより電極部340Aを形成する。この場合、ベース部340Bと段部340Cとを別種の材料とすることも可能である。
【0081】
電極部340Aは、第2面342側に8本の稜線を備えている。第2面342を構成する稜線を含む部分を第1角部371とし、側面345を構成する稜線を含む部分を第2角部372とする。
【0082】
絶縁シート343の形状は電極部340Aの形状と同じく矩形であり、かつ絶縁シート343の大きさは電極部340Aの第2面342よりも大きい。絶縁シート343の端縁343Aは外側に向けて延びている。すなわち、絶縁シート343の端縁343Aは、電極部340Aの第1角部371よりも外側に配置されている。
【0083】
この構成では、封止部80のうち第1角部371に接触する接触部分80Aと電極部340Aの第1角部371とを包括して絶縁シート343で覆う。すなわち、第1角部371を構成する一面は絶縁シート343に覆われ、第1角部371を構成する他面は厚みのある封止部80により覆われている。第1角部371部分における封止部80の厚さは、第1角部371から絶縁シート343の端縁343Aまでの長さ以上となる。この構成により、従来構造に比べて、第1角部371付近において絶縁耐圧の低いところが少なくなる。これにより、第1角部371を起点とする放電の発生が抑制される。
【0084】
本実施形態の半導体装置1によれば、次の効果を得ることができる。
(7)本実施形態では、絶縁シート343が電極部340Aの第2面342よりも大きいという構成を有するため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
(8)また、電極部340Aの第2面342(外面)を第1面341(内面)よりも小さくすることにより、相対的に、絶縁シート343を電極部340Aの第2面42よりも大きくする。すなわち、電極部340Aの第1面341よりも絶縁シート343を大きくすることなく、絶縁シート343を第2面342よりも大きくすることが可能である。
【0086】
(第4実施形態)
図6を参照して、第4施形態について説明する。
本実施形態の半導体装置は、第1実施形態の構成に対して次の変更を加えている。すなわち、第1実施形態では、電極部40Aの角部71の角度を略90度とするが、本実施形態では、電極部440Aの第1角部471の角度を鈍角とする。なお、以降の説明では、前記第1実施形態と共通する構成については同一の符合を付す。
【0087】
電極部440Aは銅材により形成されている。
電極部440Aの第2面442には絶縁シート443が貼り付けられている。絶縁シート443には金属シート444が貼り付けられている。金属シート444の大きさは絶縁シート443の大きさとは等しい。
【0088】
電極部440Aは、直方体の外面側にテーパが設けられた形状とされている。
すなわち、電極部440Aの第2面442と側面445との間に他面446が設けられている。そして、第2面442と他面446との間のなす角が鈍角とされている。なお、本実施形態においては、第2面442の辺を含む部分を第1角部471とし、側面445の辺を構成する稜線を第2角部472とする。
【0089】
絶縁シート443は電極部440Aの形状と同じく矩形であり、かつ絶縁シート443の大きさは電極部440Aの第2面442よりも大きい。絶縁シート443の端縁443Aは、外側に向けて延びている。すなわち、絶縁シート443の端縁443Aは電極部440Aの第1角部471よりも外側に配置されている。
【0090】
この構成では、封止部80のうち第1角部471に接触する接触部分80Aと電極部440Aの第1角部471とを包括して絶縁シート443で覆う。すなわち、第3実施形態と同様の理由により、従来構造に比べて、第1角部471付近において絶縁耐圧の低いところが少なくなる。これにより、第1角部471を起点とする放電の発生が抑制される。
【0091】
本実施形態の半導体装置1によれば、次の効果を得ることができる。
(9)本実施形態では、絶縁シート443が電極部440Aの第2面442よりも大きいという構成を有するため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
(10)また、本実施形態では、第1角部471が鈍角に形成されているため、第1角部471における電界集中が緩和されるため、従来構造の電極部140A(図3(a)参照)を有する半導体装置に比べ、絶縁耐圧を大きくすることができる。
【0093】
(第5実施形態)
図7を参照して、第5施形態について説明する。
本実施形態の半導体装置は、第2実施形態の構成に対して次の変更を加えている。すなわち、本実施形態では、第2実施形態の電極部240Aの構成に加えて、半導電層547を電極部540Aに設けている。なお、以降の説明では、前記第1実施形態と共通する構成については同一の符合を付す。
【0094】
電極部540Aは略直方体に形成されている。
電極部540Aの第2面542には絶縁シート543が貼り付けられている。絶縁シート543には金属シート544が貼り付けられている。金属シート544の大きさは絶縁シート543の大きさとは等しい。なお、図7では、絶縁シート543の端縁543Aは外部に露出しているが、絶縁シート543の端縁543Aを封止部80で覆ってもよい。
【0095】
絶縁シート543の形状は電極部540Aの形状と同じく矩形であり、かつ絶縁シート543の大きさは電極部540Aの第2面542よりも大きい。絶縁シート543の端縁543Aは外側に向けて延びている。すなわち、絶縁シート543の端縁543Aは、電極部540Aの角部571よりも外側に配置されている。
【0096】
また、電極部540Aの角部571を含む側面545には半導電層547が設けられている。
半導電層547は半導電性部材により形成される。半導電性部材としては、カーボンまたは金属粒子等の導電性粒子を含むシート材、またはカーボンまたは金属粒子等の導電性粒子を含むポリイミド系接着剤が用いられる。シート材を用いる場合は、貼り付けまたは熱圧着等によりシート材を電極部540Aに固定する。接着剤を用いる場合には、塗布もしくは接着剤溶液への電極部540Aの浸漬により、半導電層547を形成する。半導電層547の表面抵抗率は、例えば、10Ω/sq未満(膜厚2.0〜20μm)とされる。
【0097】
本実施形態の半導体装置1によれば、次の効果を得ることができる。
(11)本実施形態では、絶縁シート543が電極部540Aの第2面542よりも大きいという構成を有するため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
(12)また、本実施形態では、電極部540Aの角部571を含む側面545に、半導電層547が設けられている。このため、電極部540Aに高電圧が加えられるとき角部571の電界集中が緩和される。すなわち、電極部540Aの角部571と放熱装置90との間の電位差が小さくなるため、絶縁耐圧が高くなる。
【0099】
(第6実施形態)
図8を参照して、第6施形態について説明する。
本実施形態の半導体装置は、第3実施形態の構成に対して次の変更を加えている。すなわち、本実施形態では、第3実施形態の電極部340Aの構成に加えて、半導電層647を電極部640Aに設けている。なお、以降の説明では、前記第1実施形態と共通する構成については同一の符合を付す。
【0100】
電極部640Aは、第2実施形態の電極部340Aと同様に、内側のベース部640Bと、段部640Cとにより構成されている。電極部640Aの第2面642には絶縁シート643が貼り付けられている。絶縁シート643には金属シート644が貼り付けられている。金属シート644の大きさは絶縁シート643の大きさとは等しい。なお、図8では、絶縁シート643の端縁643Aは外部に露出しているが、この端縁643Aを封止部80で覆ってもよい。
【0101】
絶縁シート643の大きさは電極部640Aの第2面642よりも大きい。
絶縁シート643の端縁643Aは外側に向けて延びている。これにより、絶縁シート643とベース部640Bとの間に空間が設けられる。この空間には、半導電性部材が充填もしくは挿入されている。これにより、電極部640Aの角部671の一部分が半導電性部材により覆われる。
【0102】
本実施形態の半導体装置1によれば、次の効果を得ることができる。
(13)本実施形態では、絶縁シート643が電極部640Aの第2面642よりも大きいという構成を有するため、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0103】
(14)また、電極部640Aの角部671の一部が半導電性部材により覆われるという構成を有するため、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第7実施形態)
図9を参照して、第7施形態について説明する。
【0104】
本実施形態の半導体装置は、第1実施形態の構成に対して次の変更を加えている。すなわち、第1実施形態では、絶縁シート743を単一材料により形成しているが、本実施形態では、絶縁シート743を2層構造とし、外層と内層との絶縁性を異ならせている。なお、以降の説明では、前記第1実施形態と共通する構成については同一の符合を付す。
【0105】
電極部740Aの第2面742には絶縁シート743が貼り付けられている。電極部740Aの角部771は絶縁シート743により覆われている。絶縁シート743は電極部740Aの第2面742よりも大きい。また、絶縁シート743には金属シート744が貼り付けられている。
【0106】
絶縁シート743は2層構造とされ、このうち外側の外層746が絶縁層とされ、内側の内層745が半導電層とされている。外層746はポリイミドシートにより形成されている。内層745は、カーボンもしくは金属粒子等の導電物質を含むポリイミドシートにより形成されている。内層745は、電極部740Aの第2面742および角部771に接着している。
【0107】
本実施形態の半導体装置1によれば、次の効果を得ることができる。
(15)本実施形態では、絶縁シート743が電極部740Aの第2面742よりも大きいという構成を有するため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0108】
また、本実施形態では、絶縁シート743が上記のように2層構造とされている。このため、電極部740Aと絶縁シート743との間の電位傾度の均一化を図ることができる。これにより、絶縁耐圧を大きくすることができる。
【0109】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記各実施形態にて示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0110】
・上記第1実施形態では、第1導電体31と第3導電体33とが別個の部材として構成されているが、これを一個の部材として構成してもよい。また同様に、第2導電体32と第4導電体34とを一個の部材として構成してもよい。また、これらの導電体31〜34を省略することもできる。すなわち、本発明は、導電体31〜34の構造に関係なく、電極端子40,50の構造に適用される。
【0111】
・上記第1実施形態において、スイッチング素子10としてMOSFETを用いているが、スイッチング素子10の種類は限定されない。すなわち、本発明は、スイッチング素子10の構造に関係なく、半導体装置1の電極端子40,50の構造に適用される。
【0112】
・上記第1実施形態では、電極部40Aと放熱装置90との間を絶縁するために、電極部40Aに絶縁シート43を貼り付けているが、絶縁構造はこれに限定されない。例えば、電極部40Aにポリイミド樹脂を塗布等することにより絶縁層を形成することもできる。このことは、他の各実施形態についても同様である。
【0113】
・上記第1実施形態では、絶縁シート43として、ポリイミド樹脂により形成したシートを用いているが、絶縁シート43の材料はこれに限定されない。例えば、絶縁シート43の材料として、エポキシ樹脂、PPS樹脂、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、これら樹脂に絶縁性フィラを含有した樹脂を用いることができる。また、セラミックス基板を用いてもよい。セラミックス基板としては、例えばSiN、AlN、Al、SiC、SiO等を用いることができる。このことは、他の各実施形態についても同様である。
【0114】
・上記第1実施形態では、電極部40Aの角部71の全部を絶縁シート43で覆っているが、角部71の一部のみを覆っている場合においても、第1実施形態の効果に準じた効果が得られる。例えば、電極部40Aにおいて電界集中が高くなる頂点のみを絶縁シート43で覆う構成とすることもできる。
【0115】
・上記第2実施形態では、電極部240Aの第2面242の延長面に沿うように絶縁シート243を延長させているが、絶縁シート243のうち第2面242から延長した部分を電極部240A側に曲げる構成としてもよい。また、絶縁シート243を更に延長して封止部80の側面を覆う構成としてもよい。
【0116】
・上記第3実施形態では、ベース部340Bおよび段部340Cが平面視で矩形とされているが、ベース部340Bおよび段部340Cの形態は特に限定されない。例えば、四角錐台形としてもよい。また、段部340Cの側面を曲面としてもよい。
【0117】
・上記第4実施形態では、電極部440Aの第2面442と側面445の間に他面446を設けている。そして、他面446は平坦面として形成されているが、これを曲面に形成してもよい。
【0118】
・上記第5実施形態では、電極部540Aの角部571の全部を半導電層547で覆っているが、角部571の一部のみ半導電層547で覆ってもよい。例えば、電極部540Aにおいて、隣り合う2つの側面の間の稜線を含む角部のみを半導電層547で覆ってもよい。
【0119】
・上記第6実施形態では、電極部640Aがベース部640Bと段部640Cとにより構成されているものにおいて、ベース部640Bと絶縁シート643との間の隙間に半導電性部材を挿入または充填する構造とする。この構造の適用は、第6実施形態の半導体装置に限られず、絶縁シート643と電極部640Aとの間に隙間のある構造を有する半導体装置に対して適用することができる。例えば、第4実施形態の電極部440Aの構造に対して本構造を適用することができる。すなわち、他面446と絶縁シート443との間の部分に、半導電性部材を充填してもよい。
【0120】
・上記第7実施形態では、電極部740Aの第2面742に貼り付けられている絶縁シート743について、絶縁シート743の全体を2層構造としているが、絶縁シート743の一部分のみ2層構造としてもよい。例えば、電極部740Aの角部771に接触する部分のみ2層構造とすることができる。
【0121】
・上記第7実施形態では、絶縁シート743を、絶縁性のポリイミドシートと、カーボン等の導電物質を含みポリイミドシートとの積層により形成するが、絶縁シート743の形成方法はこれに限定されない。例えば、絶縁性のポリイミドシートに半導電性樹脂を塗布することにより、絶縁シート743を形成することもできる。
【0122】
・上記各実施形態において、スイッチング素子10とフライホイールダイオード20とが並列接続する半導体装置1に本発明を適用しているが、本発明の適用はこれに限定されない。すなわち、本発明は、放熱装置90が電極端子に取り付けられる構造の半導体装置1に適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
1…半導体装置、10…スイッチング素子、11…第1主面、12…第2主面、13…ドレイン電極、14…ソース電極、15…ゲート電極、20…フライホイールダイオード、31…第1導電体、32…第2導電体、33…第3導電体、34…第4導電体、40…第1電極端子、40A…電極部、40B…端子部、41…第1面、42…第2面、43…絶縁シート、43A…端縁、44…金属シート、45…側面、50…第2電極端子、50A…電極部、51…第1面、52…第2面、53…絶縁シート、54…金属シート、60…配線シート、60A…固定部、60B…リード部、61…配線、62…補強板、63A…第1ポリイミド層、63B…第2ポリイミド層、64…第1貫通孔、65…第2貫通孔、66…開口部、67…ゲート端子、71,171,271,571,671,771…角部、371,471…第1角部、80…封止部、80A…接触部分、81…境界面、90…放熱装置、91…取付面、140…電極端子、140A…電極部、142…第2面、143…絶縁シート、144…金属シート、145…側面、180…封止部、180A…低耐圧部分、181…境界面、190…放熱装置、547,647…半導電層、800…半導体装置、810…スイッチング素子、820…電極部、830…絶縁層、840…放熱装置、900…半導体装置、910…スイッチング素子、920…電極部、930…絶縁層、940…封止部、950…放熱装置、960…境界面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極部を有する低電圧側の第1電極端子と、第2電極部を有する高電圧側の第2電極端子と、前記第1電極部および前記第2電極部に接続されているスイッチング素子と、前記スイッチング素子をモールド樹脂で封止する封止部とを備え、絶縁層が前記第1電極部および前記第2電極部のうち少なくとも一方の電極部の外面に設けられ、かつ前記絶縁層が前記封止部から露出する電力制御用の半導体装置において、
前記絶縁層が前記外面よりも大きい
ことを特徴とする電力制御用の半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力制御用の半導体装置において、
前記絶縁層は、前記電極部の角部の少なくとも一部分を覆う
ことを特徴とする電力制御用の半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力制御用の半導体装置において、
前記絶縁層が設けられた前記電極部の外面の面積が同電極部の内面の面積よりも小さい
ことを特徴とする電力制御用の半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力制御用の半導体装置において、
前記電極部の側面と前記外面との間に他面が形成され、前記外面と前記他面との間のなす角が鈍角とされている
ことを特徴とする電力制御用の半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力制御用の半導体装置において、
前記電極部の角部の少なくとも一部分が、前記絶縁層よりも導電性が高くかつ前記電極部よりも導電性が低い半導電性部材により覆われている
ことを特徴とする電力制御用の半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力制御用の半導体装置において、
前記半導電性部材は絶縁性物質と導電性物質との混合物である
ことを特徴とする電力制御用の半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電力制御用の半導体装置において、
前記絶縁層が2層構造とされ、
外層は、絶縁性物質により形成され、
内層は、前記外層よりも導電性が高くかつ前記電極部よりも導電性が低い半導電性部材により形成されている
ことを特徴とする電力制御用の半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電力制御用の半導体装置において、
前記絶縁層は、内面表面が熱可塑性樹脂層である絶縁シートにより形成されている
ことを特徴とする電力制御用の半導体装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電力制御用の半導体装置において、
前記絶縁層の外面には金属層が設けられている
ことを特徴とする電力制御用の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−110216(P2013−110216A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252809(P2011−252809)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】