説明

電動アシスト台車

【課題】充電を安全に行うことができる電動アシスト台車を提供する。
【解決手段】電動モータ51、52によって動力が補助される電動アシスト台車であって、外部の電源79に接続されるプラグ62と、このプラグ62を介して供給される交流電流を直流電流にに変換して出力する充電器70と、この充電器70から出力される直流電流をバッテリ75に導く充電回路65と、バッテリ75に蓄えられた電力を電動モータ51、52へと出力する出力回路66と、充電時に出力回路66を遮断する切換器80とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者に押されることによって荷物を搬送する電動アシスト台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場などで使用される台車に重量のある荷物が載せられると、作業者は大きな力で台車を押す必要があるため、重労働となっていた。
【0003】
この対策として、例えば特許文献1、2には、台車を押す作業者の力を検出し、電動モータによって人力に応じた補助動力が与えられる電動アシスト台車が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−290319号公報
【特許文献2】特開2007−176195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の電動アシスト台車にあっては、バッテリを充電する際に、例えば台車からバッテリを取り外して外部の充電器に接続したり、あるいは台車にバッテリを搭載した状態で専用の充電器をバッテリに接続する必要があり、充電を安全に行うことが難しいという問題点があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、充電を安全に行うことができる電動アシスト台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電動モータによって動力が補助される電動アシスト台車であって、外部の電源に接続されるプラグと、このプラグを介して供給される交流電流を直流電流にに変換して出力する充電器と、この充電器から出力される直流電流をバッテリに導く充電回路と、バッテリに蓄えられた電力を電動モータへと出力する出力回路と、充電時に出力回路を遮断する切換器とを備える構成とした。。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、交流電流を充電器に供給し、充電器から出力される直流電流をバッテリに充電するとき、出力回路が遮断されるため、充電器から出力される直流電流が左右の電動モータに供給されるを回避し、充電を安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を示す電動アシスト台車の斜視図。
【図2】同じく電動アシスト台車の側面図。
【図3】同じく電動アシスト台車の平面図。
【図4】同じく電動アシスト台車の正面図。
【図5】同じく昇降装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1〜4に示す電動アシスト台車1は、例えば工場などにて、重量物を運搬するのに使用される。電動アシスト台車1は、作業者に押されて移動するときに、電動モータ51、52(図5参照)によって補助動力が与えられるようになっている。
【0012】
電動アシスト台車1は、その本体として設けられる走行フレーム2と、この走行フレーム2上に設けられる荷台3と、走行フレーム2の前部に設けられるキャスタ40のキャスタ車輪4と、走行フレーム2の左右側部に設けられる左右のドライブ車輪5と、荷台3の後方に位置して設けられる操作ハンドル8とを備える。
【0013】
走行フレーム2に後部フレーム11が結合され、この後部フレーム11に操作ハンドル8が支持される。
【0014】
電動アシスト台車1は、左右のドライブ車輪5をそれぞれ駆動する左右の電動モータ51、52(図5参照)と、バッテリ(図示せず)から左右の電動モータ51、52に供給される電力を制御するコントローラ(図示せず)とを備え、作業者が操作ハンドル8を押す操作力に応じてコントローラが左右の電動アシスト台車の出力を制御し、左右のドライブ車輪5に動力が与えられるようになっている。
【0015】
電動アシスト台車1は、作業者が操作ハンドル8を押す力の大きさと方向を検出する操作力検出手段として、操作ハンドル8に生じる水平軸まわりのトルクを検出する前後方向トルクセンサ9と、操作ハンドル8に生じる鉛直軸まわりのトルクを検出する旋回方向トルクセンサ10とを備える。
【0016】
コントローラは、前後方向トルクセンサ9と旋回方向トルクセンサ10によって検出されるトルク値に応じた動力を左右の電動モータ51、52にそれぞれ発生させる制御を行い、電動アシスト台車1を前進または後進させるとともに、直進、旋回、曲折させる駆動力が与えられる。
【0017】
走行フレーム2に前部フレーム12が結合され、この前部フレーム12にキャスタ40が支持される。
【0018】
図2に示すように、キャスタ40は、路面に転接するキャスタ車輪4と、キャスタ車輪4を回転可能に支持する車輪軸41と、車輪軸41を支持するアーム42と、このアーム42の基端部を水平軸まわりに回動可能に支持する旋回ブラケット43とを備え、この旋回ブラケット43が旋回軸T4(図3参照)まわりに回動可能に支持される。
【0019】
キャスタ40は、旋回ブラケット43の旋回軸T4と車輪軸41とは水平方向についてオフセットされ、電動アシスト台車1が前後左右いずれかの方向に移動するのに伴って、キャスタ車輪4の転がり摩擦抵抗により旋回ブラケット43が回動して旋回し、キャスタ車輪4が進行方向を向くように操舵される。
【0020】
アーム42と旋回ブラケット43の間にはダンパゴム(バネ)44(図3の(b)参照)が介装されており、路面不整などによるキャスタ車輪4の上下振動を緩和、吸収して、振動が走行フレーム2に伝達されることを抑えられる。
【0021】
走行フレーム2と荷台3の間には昇降装置60が設けられる。この昇降装置60は、図示しない電動昇降シリンダによって荷台3を昇降する。例えば、荷台3に重量物が載せられ、キャスタ40及び懸架装置20が沈み込む場合に、昇降装置60が荷台3を上昇させ、路面に対する荷台3の高さを略一定に調節するようになっている。
【0022】
左右のドライブ車輪5は、走行フレーム2に後述する懸架装置20を介して昇降可能に支持され、路面不整などによるドライブ車輪5の上下振動を緩和、吸収して、振動が走行フレーム2に伝達されることを抑えられる。
【0023】
図3の(a)は電動アシスト台車1を上方から見た平面図であり、(b)は電動アシスト台車1を下方から見た平面図である。
【0024】
荷台3は走行フレーム2とキャスタ40と左右のドライブ車輪5の上方の略全域を覆うようにして設けられる。荷台3上には、荷物が直接載せられる。また、走行フレーム2上には、荷台3の代わりに、図示しないローラコンベアが設置され、このローラコンベアを介して荷物が載せられる場合もある。
【0025】
電動アシスト台車1には、その前部中央に単一のキャスタ車輪4が設けられる。キャスタ車輪4の旋回軸T4は、荷台3、走行フレーム2の前後方向に延びる中心線Ox上に配置される。
【0026】
なお、これに限らず、電動アシスト台車1に左右(2個)のキャスタ車輪を設けてもよい。この場合には、左右のキャスタ車輪の旋回軸は、荷台3、走行フレーム2の前後方向に延びる中心線から左右方向に等距離を持つように配置される。
【0027】
荷台前後方向中心線Oyに対して左右のドライブ車輪5の車輪回転軸がキャスタ車輪4の車輪回転軸より近づけて配置される。これにより、キャスタ車輪4にかかる荷重の分担割合が減らされるため、進行方向を向くように操舵されるキャスタ車輪4の摩擦抵抗を抑えて、発進時に必要とする動力が削減され、重量物を円滑に運搬することが可能となる。
【0028】
図3の(b)に示すように、ドライブ車輪5と左右方向について並んでローラ車輪6が設けられる。左右のローラ車輪6は、左右のドライブ車輪5の内側に並んで設けられる。
【0029】
左右のドライブ車輪5は、荷台3の前後方向に延びる中心線Oxから左右方向に等距離を持つように配置される。
【0030】
左右のローラ車輪6は、荷台3の前後方向に延びる中心線Oxから左右方向に等距離を持つように配置される。
【0031】
図3の(a)(b)において、左右方向に延びるドライブ車輪軸設置面Sを設定し、このドライブ車輪軸設置面S上に左右のドライブ車輪5と左右のローラ車輪6の車輪回転軸(車輪中心軸)がそれぞれ配置される。ドライブ車輪軸設置面Sは、荷台左右方向中心線Oxに直交し、荷台3の左右方向に延びる中心線Oyと平行に延びる鉛直面である。
【0032】
ドライブ車輪軸設置面Sは、中心線Oyより後方に配置される。キャスタ車輪4の車輪回転軸O4は、荷台前後方向中心線Oyより前方に配置される。
【0033】
ドライブ車輪5は、車輪軸5bを介して回転可能に支持されるホイール5cと、このホイール5cの外周部に装着されるゴム製のタイヤ5aとを有し、タイヤ5aが路面に転接する。タイヤ5aは、その内部には空気またはゴム材が充填され、これにかかる荷重によって路面に対する接触部が平面状に弾性変形し、例えば50kg以下の荷重を支えられる。
【0034】
ローラ車輪6は、硬質樹脂製のローラ6aを有し、環状のローラ6aが路面に転接する。ローラ車輪6は、ローラ6aの路面に対する接触部が大きく弾性変形せず、例えば200〜900kgの荷重を支えられる。
【0035】
ローラ車輪6は、ドライブ車輪5に比べて路面に対する接触部の剛性が高く、大きな耐荷重を持つ。
【0036】
図4の(a)は電動アシスト台車1を前方から見た正面図であり、(b)は電動アシスト台車1を後方から見た正面図である。
【0037】
懸架装置20は、左右のドライブ車輪5とローラ車輪6をそれぞれ支持する左右のサブフレーム21が設けられる。
【0038】
ドライブ車輪5の車輪軸5bは、その両端部がサブフレーム21に支持される。
【0039】
ローラ車輪6は、その外径(車輪直径)がドライブ車輪5より小さく、その車輪軸(図示せず)の両端部がブラケット7に支持され、このブラケット7がサブフレーム21の下部に締結される。これにより、ローラ車輪6がドライブ車輪5に近接して配置することが可能となる。
【0040】
懸架装置20は、走行フレーム2に左右のサブフレーム21を昇降可能に支持する左右4本つづ設けられるサスペンションアーム22と、走行フレーム2と左右のサブフレーム21の間に左右1本つづ設けられるスプリングダンパ23とを備える。
【0041】
各サスペンションアーム22は、それぞれの両端部が走行フレーム2と左右のサブフレーム21に水平軸まわりに回動可能に連結され、走行フレーム2に対してサブフレーム21を平行移動可能に支持する平行リンク機構を構成する。
【0042】
上記構成に基づき、走行フレーム2に対してサブフレーム21が昇降しても、サブフレーム21の姿勢が変化せず、ドライブ車輪5とローラ車輪6の位置関係(アライメント)が一定に保たれる。これにより、サブフレーム21が昇降しても、ドライブ車輪5とローラ車輪6の一方が路面から浮くことが抑えられる。
【0043】
なお、懸架装置20は、これに限らず、走行フレーム2に対するサブフレーム21の姿勢が保たれるならば、他の構造としてもよい。
【0044】
スプリングダンパ23は、コイル状のバネ23aと、サスペンションダンパ23bとを備え、サブフレーム21が昇降するのに伴って伸縮する。
【0045】
バネ23aは、そのバネ力によってサブフレーム21が受ける荷重を支持し、サブフレーム21が昇降するのに伴って伸縮する。
【0046】
サスペンションダンパ23bは、伸縮作動するのに伴ってこれに充填された作動油が減衰機構(図示せず)を流れ、路面不整などによるサブフレーム21の振動を抑える減衰力を発生する。これにより、サブフレーム21の振動が走行フレーム2に伝達されることを抑えられる。
【0047】
図5は電動モータ51、52を駆動するモータ駆動装置61の構成を示す回路図である。このモータ駆動装置61は、プラグ62と、充電器70と、バッテリ75と、コントローラ76と、切換器80とを備える。
【0048】
プラグ62は、これに相手側プラグ63が差し込まれると、相手側プラグ63から延びるコード(電線)78を介して電源79に接続される。プラグ62は、マグネットジャック式のものが用いられ、相手側プラグ63が磁力によって差し込まれる。
【0049】
充電器70は、入力回路64を介して供給される交流電流を直流電流に変換し、充電回路65を介してバッテリ75に充電するものである。プラグ62と充電器70を結ぶ一対の入力回路64が配設されるとともに、充電器70とバッテリ75を結ぶ一対の充電回路65が配設される。
【0050】
バッテリ75とコントローラ76とは、一対の出力回路66を介して結ばれる。コントローラ76と左右の電動モータ51、52とは、一対の出力回路53、54を介して結ばれる。バッテリ75に蓄えられた直流電流は、コントローラ76を介して左右の電動モータ51、52に供給される。
【0051】
コントローラ76は、前述したように作業者が操作ハンドル8を押す操作力に応じた電力を電動モータ51、52に供給し、左右のドライブ車輪5の駆動を制御する。
【0052】
切換器80は、プラグ62に相手側プラグ63が差し込まれて電源79に接続されるのに伴って通電されるリレーコイル81と、このリレーコイル81に生じる電磁力によって開閉する4つのリレー接点82〜85とを備える。
【0053】
リレーコイル81は、入力回路64から分岐する分岐回路68に介装され、プラグ62に相手側プラグ63が差し込まれるのに伴って、入力回路64と分岐回路68を介して通電される。
【0054】
リレー接点83、85は、一対の充電回路65にそれぞれ介装される。リレー接点83、85は、リレーコイル81の非通電時に開成する常開型のものである。
【0055】
リレー接点82、84は、一対の出力回路66にそれぞれ介装される。リレー接点82、84は、リレーコイル81の非通電時に閉成する常閉型のものである。
【0056】
次に、モータ駆動装置61の作動について説明する。
【0057】
電動アシスト台車1の走行時、切換器80は、図5に示すように、リレー接点82、84が閉成しており、バッテリ75に蓄えられた電力がコントローラ76を介して左右の電動モータ51、52に供給される。このとき、リレー接点83、85が開成して充電回路65が遮断されており、バッテリ75の電力が充電器70に供給されることが回避される。
【0058】
電動アシスト台車1の充電時、プラグ62に相手側プラグ63が差し込まれて電源79に接続されるのに伴ってリレーコイル81が通電されるのに伴って、リレーコイル81に生じる電磁力によってリレー接点83、85が閉成し、充電器70から出力される直流電流が充電回路65を介してバッテリ75に充電される。このとき、リレー接点82、84が開成して出力回路66が遮断されており、充電器70から出力される直流電流が左右の電動モータ51、52に供給されるが回避され、充電中に電動アシスト台車1がまちがって走り出すことを防止できる。
【0059】
以上のように、本実施形態では、電動モータ51、52によって動力が補助される電動アシスト台車1であって、外部の電源79に接続されるプラグ62と、このプラグ62を介して供給される交流電流を直流電流にに変換して出力する充電器70と、この充電器70から出力される直流電流をバッテリ75に導く充電回路65と、バッテリ75に蓄えられた電力を電動モータ51、52へと出力する出力回路66と、充電時に出力回路66を遮断する切換器80とを備える構成とした。
【0060】
上記構成に基づき、交流電流を充電器70に供給し、充電器70から出力される直流電流をバッテリ75に充電するとき、出力回路66が遮断されるため、充電器70から出力される直流電流が左右の電動モータ51、52に供給されるが回避され、充電を安全に行うことができる。
【0061】
本実施形態では、切換器80は、プラグ62が電源79に接続されるのに伴って通電されるリレーコイル81と、このリレーコイル81の非通電時に閉成しかつ通電時に開成する常閉型リレー接点82、84とを備え、この常閉型リレー接点82、84は、出力回路66に介装され、充電時に開成して出力回路66を遮断する構成とした。
【0062】
上記構成に基づき、プラグ62が電源79に接続されるのに伴って出力回路66が遮断されるため、充電を安全に行うことができる。
【0063】
本実施形態では、切換器80は、リレーコイル81の非通電時に開成しかつ通電時に閉成する常開型リレー接点83、85を備え、この常開型リレー接点83、85は、充電回路65に介装され、非充電時に開成して充電回路65を遮断する構成とした。
【0064】
上記構成に基づき、バッテリ75の電力が充電器70に逆流することが回避される。
【0065】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0066】
1 電動アシスト台車
51、52 電動モータ
53 出力回路
61 モータ駆動装置
62 プラグ
64 入力回路
65 充電回路
66 出力回路
70 充電器
75 バッテリ
76 コントローラ
79 電源
80 切換器
81 リレーコイル
82、84 常閉型リレー接点
83、85 常開型リレー接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータによって動力が補助される電動アシスト台車であって、
外部の電源に接続されるプラグと、
このプラグを介して供給される交流電流を直流電流にに変換して出力する充電器と、
この充電器から出力される直流電流をバッテリに導く充電回路と、
前記バッテリに蓄えられた電力を前記電動モータへと出力する出力回路と、
充電時に前記出力回路を遮断する切換器とを備える構成としたことを特徴とする電動アシスト台車。
【請求項2】
前記切換器は、
前記プラグが前記電源に接続されるのに伴って通電されるリレーコイルと、
このリレーコイルの非通電時に閉成しかつ通電時に開成する常閉型リレー接点とを備え、
この常閉型リレー接点は、前記出力回路に介装され、充電時に開成して前記出力回路を遮断する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の電動アシスト台車。
【請求項3】
前記切換器は、
前記リレーコイルの非通電時に開成しかつ通電時に閉成する常開型リレー接点を備え、
この常開型リレー接点は、前記充電回路に介装され、非充電時に開成して前記充電回路を遮断する構成としたことを特徴とする請求項2に記載の電動アシスト台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−65402(P2012−65402A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205763(P2010−205763)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】