説明

電動パワーステアリング装置

【課題】電動パワーステアリング装置の周囲に車両側部材等が配置されていても、これらの部材に電動モータ及び制御ユニットを電気的に接続する接続部が干渉せず、車両搭載性を良好にする。
【解決手段】電動モータ11は、ハウジング10に設けたハウジングフランジ107に当接して装着されるモータフランジ160を備えており、このモータフランジの当接面からモータ出力軸に沿って突出するモータ端子給電用バスバー11b〜11d及び信号用端子11e〜11jとが、ハウジングフランジに設けた貫通穴166、167を通過して制御ユニットの制御基板26,27に設けた基板端子部に電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステアリング操作を補助する電動モータ及び電動モータを制御する制御ユニットをハウジングの外周に装着した電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動パワーステアリング装置として、ハウジングの外周に、電動モータと、電動モータを駆動制御する制御回路を実装した制御基板を含む制御ユニットとを装着した機電一体型の装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この電動パワーステアリング装置は、制御ユニットのユニット端子と電動モータのモータ端子とがハウジングの外周で直接接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−276740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の装置は、モータ端子及びユニット端子の接続部分がハウジングの外周から径方向外方に突出しており、電動パワーステアリング装置の周囲に配置した他の部品、例えば車両側部材、制御ユニットに装着した部品との干渉のおそれがあり、車両搭載性が悪い。
また、外部に露出したモータ端子及びユニット端子の接続部分には導電性異物の侵入を防止するカバー部材が必要であり、部品点数が増大し、組立にも手間がかかるので、製造コストの面で問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、電動モータの端子及び制御ユニットの電気的接続部をハウジングの外周から径方向外方に突出させず車両搭載性が良好な装置とするとともに、電動モータ及び制御ユニットを電気的に接続する際の部品点数を減少し、組立を容易とすることで製造コストの低減化を図ることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1記載の電動パワーステアリング装置は、ステアリング操作を補助する操舵補助力を発生する電動モータと、当該電動モータを駆動制御する制御回路を実装した制御基板を含む制御ユニットとを、ハウジングの外周に装着した電動パワーステアリング装置において、前記電動モータは、前記ハウジングに設けたハウジングフランジに当接して装着されるモータフランジを備えており、当該モータフランジの当接面からモータ出力軸に沿って突出するモータ端子が、前記ハウジングフランジに設けた貫通穴を通過して前記制御ユニットの前記制御基板に設けた基板端子部に電気的に接続されている。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動パワーステアリング装置において、前記貫通穴の内面と当該貫通穴に通過した前記モータ端子との間には、絶縁部材が介装されている。
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の電動パワーステアリング装置において、前記貫通穴の内部に位置する前記モータ端子の外周は、絶縁部材からなる被覆部に覆われている。
【0008】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置において、前記電動モータは、モータステータ、モータロータ及び当該モータロータの回転角を検出する回転角検出器が内蔵されており、前記モータ端子は、前記モータステータへの給電用端子と、前記回転角検出器で検出した回転角信号を送出する信号用端子である。
【0009】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の電動パワーステアリング装置において、前記給電用端子及び前記信号用端子は、前記ハウジングフランジの互いに異なる位置に設けた少なくとも2箇所の前記貫通穴にそれぞれ通過している。
さらに、請求項6記載の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置において、前記ハウジングは、前記電動モータで発生した操舵補助力をステアリング系に伝達するウォーム減速機構を内蔵した減速ギヤボックスであり、前記電動モータのモータ出力軸は、前記ウォーム減速機構のウォームを外周に設けたウォーム軸である。
【0010】
さらに、請求項7記載の発明は、請求項1乃至6の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置において、前記モータ端子と前記制御ユニットの前記制御基板に設けた基板端子部との間に、導電部材をレーザ溶接した。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、電動モータは、ハウジングに設けたハウジングフランジに当接して装着されるモータフランジを備えており、このモータフランジの当接面からモータ出力軸に沿って突出するモータ端子が、ハウジングフランジに設けた貫通穴を通過して制御ユニットの制御基板に設けた基板端子部に電気的に接続されているので、従来の装置のようにモータ端子及びユニット端子がハウジングの外周径方向外方に突出せず、電動パワーステアリング装置の周囲に車両側部材等が配置されていても、これらの部材に電動パワーステアリング装置が干渉しない。このため、車両搭載性の良好な電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【0012】
また、電動モータの端子及び制御ユニットの電気的接続部がハウジングの外部に露出しないので、導電性異物の侵入を防止するカバー等の部材が不要となる。したがって、部品点数が増大せず製造コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置の一実施形態を右ハンドル車に適用した場合を示す概略構成図である。
【図2】電動パワーステアリング装置を車両後方から示した図である。
【図3】電動パワーステアリング装置を車幅方向の右側から示し、要部を断面で示した図である。
【図4】図2のA−A線矢視図である。
【図5】電動パワーステアリング装置を構成する部品を分解して示した斜視図である。
【図6】電動パワーステアリング装置から電動モータを取り外した状態を示す斜視図である。
【図7】電動パワーステアリング装置を構成する電動モータを示す斜視図である。
【図8】電動パワーステアリング装置を構成する制御ユニットを、カバーを取り外して示した斜視図である。
【図9】電動パワーステアリング装置の電動モータと回路基板とを電気的に接続した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1から図9は、本発明に係る電動パワーステアリング装置を示すものであり、図1は本発明に係る電動パワーステアリング装置の一実施形態を右ハンドル車に適用した場合を示す概略構成図、図2は本実施形態の電動パワーステアリング装置を車両後方から示した図、図3は本実施形態の装置を車幅方向の右側から示し、要部を断面で示した図、図4は図2のA−A線矢視図、図5は本実施形態の装置を構成する部品を分解して示した斜視図、図6は本実施形態の装置から電動モータを取り外した状態を示す斜視図、図7は本実施形態の装置を構成する電動モータを示す斜視図、図8は本実施形態の装置を構成する制御ユニットを、カバーを取り外して示した斜視図、図9は本実施形態の装置の電動モータと回路基板とを電気的に接続した状態を示す図である。
【0015】
図1において、符号1はステアリング機構であり、このステアリング機構1は、車両後方側端部にステアリングホイール2を装着し、車両の右側に配設されたステアリングシャフト3を回転自在に内装するステアリングコラム4を有する。
ステアリングシャフト3の車両前方側端部は、例えばラックアンドピニオン機構で構成されるステアリングギヤ機構5の車両の右側面側に配設されたピニオン軸5aに接続され、ステアリングギヤ機構5のラック軸5bの両端が夫々タイロッド6を介して転舵輪7に連結されている。
【0016】
ステアリングコラム4には、電動パワーステアリング装置9が装着されている。この電動パワーステアリング装置9は、ステアリングコラム4に、例えばウォーム歯車機構で構成される減速ギヤボックス10が配設され、この減速ギヤボックス10に、軸方向がステアリングコラム4の軸方向と直交され、左方向に延長された例えばブラシレスモータで構成される電動モータ11が配設されている。この電動モータ11の軸方向に直列接続された制御ユニット12が、減速ギヤボックス10上に装着されている。
【0017】
減速ギヤボックス10は、高熱伝導性を有する材料例えばアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム及びマグネシウム合金の何れか1つを例えばダイキャスト成型することにより形成されている。
この減速ギヤボックス10は、図4及び図8に示すように、ウォーム(後述するウォーム軸163)を収納するウォーム収納部102と、このウォーム収納部102の下側にその中心軸と直交する中心軸を有しウォームに噛合するウォームホイール103を収納するウォームホイール収納部104と、このウォームホイール収納部104の車両前方側に一体に同軸的に連結されたトルクセンサ105を収納するトルクセンサ収納部106と、ウォーム収納部102の開放端面に形成された電動モータ11を取付けるギヤボックスフランジ107と、トルクセンサ収納部106の車両前端に形成された筒状のコラム取付部108と、ウォーム収納部102とウォームホイール収納部104の一部に跨がって車体前方側を開放した箱状に形成され、制御ユニット12を装着する制御ユニット収納部110とを備えている。なお、制御ユニット収納部110には、底部に凹凸部51が形成されている。
【0018】
図4に示すように、ウォームホイール収納部104の車両後方側に形成された開口部がボックスカバー109によって閉塞されている。このボックスカバー109及びウォームホイール収納部104に、ステアリングシャフト3の出力軸3c及びこの出力軸3cに嵌合されたウォームホイール103が転がり軸受109a,104aによって回転自在に支持されている。そして、減速ギヤボックス10のコラム取付部108に、ステアリングコラム4の車両後端部が外嵌されて連結されている。
【0019】
トルクセンサ105は、ステアリングシャフト3のトーションバー3bで連結された入力軸3a及び出力軸3c間の捩じれ状態を磁気的に検出してステアリングシャフトに伝達された操舵トルクを一対の検出コイル105a,105bで検出するように構成され、これら一対の検出コイル105a,105bの巻き始め及び巻き終わりに夫々ステアリングコラム4の中心軸と直交する上方に突出する外部接続端子105c,105d及び105e,105fが接続されている。
【0020】
外部接続端子105c〜105fは、後述する制御ユニット12の制御リジッド基板部27に形成されたスルーホール27a〜27dに接続され、これらスルーホール27a〜27dが後述するトルク演算用ICに図示しない配線パターンによって接続されている。
電動モータ11は、図7に示すように、3相コイルを巻装したモータステータ(不図示)、モータロータ及びロータ回転角を検出するロータ回転角検出器としてのレゾルバ(不図示)が内蔵されている円筒形状のモータ本体11aと、モータステータに連結してモータ本体11aから外部に突出している出力軸163と、出力軸163が突出しているモータ本体11aの端部に一体形成され、ギヤボックスフランジ107に装着されるモータフランジ160と、出力軸163の周囲を囲むようにモータフランジ160の端面から突出し、ギヤボックスフランジ107にインロー結合される円筒形状のインロー部161とを備えている。
【0021】
ここで、モータフランジ160から外部に突出している出力軸163の外周には、ウォームホイール103に噛合するウォームが一体に形成されており、以下、出力軸163を前述したウォーム軸163と称する。
インロー部161が突出しているモータフランジ160の端面には、電動モータ11の給電用バスバー11b〜11d及びレゾルバの信号用端子11e〜11jがウォーム軸163に沿って突出して設けられている。
【0022】
モータフランジ160の端面から突出している3本の給電用バスバー11b〜11dの基端側の領域は、直方体形状の合成樹脂からなるバスバー被覆部164に被覆されている。また、6本の信号用端子11e〜11jの基端側の領域も、直方体形状の合成樹脂からなる信号用端子被覆部165に被覆されている。
図6に示すように、前述した電動モータ11のモータフランジ160を装着するギヤボックスフランジ107には、矩形状に開口した第1貫通穴166及び第2貫通穴167が形成されている。
【0023】
そして、電動モータ11のモータフランジ160をギヤボックスフランジ107に当接すると、第1貫通穴166にバスバー被覆部164が内嵌されて給電用バスバー11b〜11dの先端が制御ユニット12の内部に延長され、第2貫通穴167に信号用端子被覆部165が内嵌されて信号用端子11e〜11jの先端が制御ユニット12の内部に延長されるようになっている。
【0024】
制御ユニット12は、図5に示すように、減速ギヤボックス10の制御ユニット収納部110に配設された回路基板16と、回路基板16全体を覆う例えば合成樹脂製のカバー18とで構成されている。また、図3に示すように、減速ギヤボックス10のギヤボックスフランジ107とは反対側の制御ユニット収納部110の端部裏面には、回路基板16と電気的に接続された外部接続用コネクタ17が設けられている。この外部接続用コネクタ17は電源コネクタ17aと信号コネクタ17bとで構成され、電源コネクタ17aにはバッテリ(不図示)に接続した電機配線が車両前方から差し込まれ、信号コネクタ17bには、車体の各部の制御機器とのデータの授受を行なうCANなどのネットワークの信号配線が車両前方から差し込まれるようになっている。
【0025】
回路基板16は、図3から図5、図8及び図9に示すように、1枚の4層エポキシ樹脂のリジッド基板の前後方向の中央部に帯状部22を残すようにこの帯状部22に沿って平面側からルータによって2層分に相当する深さの切削溝部23,24をそれぞれ90度ずつ折曲げることで、互いにU字状に対向するパワーリジッド基板部26及び制御リジッド基板部27を形成している。そして、パワーリジッド基板部26を、制御ユニット収納部110の底部に形成した凹凸部51に対向させて制御ユニット収納部110内に収納してねじ留めされている。また、制御リジッド基板部27は、制御ユニット収納部110に形成した支柱56上にねじ留めされている。
【0026】
パワーリジッド基板部26は、詳細には示さないが、半導体スイッチング素子、フェールセーフ用のリレー回路、ノイズ対策用のコイル、電源平滑用の電解コンデンサ等の発熱回路部品を実装している。また、図9に示すように、パワーリジッド基板部26の左端部には、電動モータ11の三相給電用バスバー11b〜11dに電気的に接続される給電用ランドLP1〜LP3が配設されているとともに、図8に示すように、パワーリジッド基板部26の左端部には、外部接続用コネクタ17の裏面に設けた電源用電極端子L1,L2に電気的に接続される電源用ランドLP4及びLP5が配設されている。
【0027】
制御リジッド基板部27は、詳細には示さないが、モータ電流検出用IC、トルク演算用IC42、演算処理装置、ゲート駆動用IC等を実装している。また、図9に示すように、制御リジッド基板部27の左端部には、電動モータ11に内蔵されたレゾルバの信号用端子11e〜11jに電気的に接続される信号用ランドLC1〜LC6が配設されているとともに、図8に示すように、制御リジッド基板部27の右端部には外部接続用コネクタ17の裏面に設けた信号用電極端子L3〜L5に電気的に接続される信号用ランドLC7〜LC9が配設されている。
【0028】
さらに、折曲部25には図示しないが、パワーリジッド基板部26に実装された半導体スイッチング素子、リレー回路、コイル等の回路部品と、制御リジッド基板部27に実装された演算処理装置、ゲート駆動回路等の回路部品との間を電気的に接続する配線パターンが形成されている。また、折曲部25の帯状部22に回路部品を実装することもできる。
【0029】
図8に示すように、外部接続用コネクタ17の電源コネクタ17aに電気的に接続する電源用電極端子L1,L2とパワーリジッド基板部26に形成された電源用ランドLP4,LP5との間には、リボン線R1がレーザボンディング(レーザ溶接)され、外部接続用コネクタ17の信号コネクタ17bに電気的に接続する信号用電極端子L3〜L5と制御リジッド基板部27の信号用ランドLC7〜LC9との間に、リボン線R2がレーザボンディングされている。
【0030】
図9に示すように、電動モータ11のモータフランジ160から突出している給電用バスバー11b〜11dは、ギヤボックスフランジ107に形成した第1貫通穴166を通過して制御ユニット12のパワーリジッド基板部26に向けて延在し、パワーリジッド基板部26の給電用ランドLP1〜LP3との間にリボン線R3をレーザボンディングすることで電気的に接続されている。
【0031】
さらに、図3及び図9に示すように、電動モータ11のモータフランジ160から突出しているレゾルバの信号用端子11e〜11jは、ギヤボックスフランジ107に形成した第2貫通穴167を通過して制御ユニット12のパワーリジッド基板部26に向けて延在し、制御リジッド基板部27の信号用ランドLC1〜LC6との間にリボン線R4をレーザボンディングすることで電気的に接続されている。
【0032】
次に、上記構成の電動パワーステアリング装置9を備えた車両について、作用効果を説明する。
本実施形態の電動パワーステアリング装置9は、減速ギヤボックス10のギヤボックスフランジ107にモータフランジ160を当接して電動モータ11が装着されるが、モータフランジ160の端面からウォーム軸163に沿って突出する三相給電用バスバー11b〜11d、レゾルバの信号用端子11e〜11jが、ギヤボックスフランジ107に設けた第1貫通穴166、第2貫通穴167をそれぞれ通過して制御ユニット12のパワーリジット基板部26及び制御リジット基板部27に電気的に接続されているので、従来の装置のように三相給電用バスバー、レゾルバの信号用端子が減速ギヤボックス10の外周(モータフランジ160の外周)から径方向外方に突出しない。このため、電動パワーステアリング装置9の周囲に車両側部材等が配置されていても、これらの部材に電動パワーステアリング装置9が干渉しないので、車両搭載性を良好にすることができる。
【0033】
また、電動モータ11の三相給電用バスバー11b〜11d、レゾルバの信号用端子11e〜11jが装置9の外部に露出しないので、導電性異物の侵入を防止する部材(カバー部材等)が不要となり、部品点数が増大しないので製造コストの低減化を図ることができる。
また、3本の給電用バスバー11b〜11dの基端側の領域は直方体形状の合成樹脂からなるバスバー被覆部164に被覆されており、6本の信号用端子11e〜11jの基端側の領域も直方体形状の合成樹脂からなる信号用端子被覆部165に被覆されており、バスバー被覆部164、信号用端子被覆部165が、ギヤボックスフランジ107の第1貫通穴166及び第2貫通穴167に入り込んでいるので、給電用バスバー11b〜11d及び信号用端子11e〜11jと減速ギヤボックス10の絶縁性を確実に確保することができる。
【0034】
また、ギヤボックスフランジ107の2箇所の第1貫通穴166及び第2貫通穴167に入り込むバスバー被覆部164及び信号用端子被覆部165を位置決め部材として、電動モータ11のウォーム軸163をウォームホイール収納部104に向けて挿入するだけで、ウォームホイール収納部104に配置したウォームホイール103にウォーム軸163を容易に螺合することができるので、組立が容易となってさらに製造コストの低減化を図ることができる。
【0035】
さらに、給電用バスバー11b〜11dの先端は、パワーリジッド基板部26の給電用ランドLP1〜LP3との間にリボン線R3をレーザボンディングすることで電気的に接続され、レゾルバの信号用端子11e〜11jの先端は、制御リジッド基板部27の信号用ランドLC1〜LC6との間にリボン線R4をレーザボンディングすることで電気的に接続されており、給電用バスバー11b〜11d及び給電用ランドLP1〜LP3、信号用端子11e〜11j及び信号用ランドLC1〜LC6の電気的接続を高精度のリードフレームを使用することなく行なうことができ、この分コストを低減することができるとともに、接続工数も低減することができる。さらに、レーザ光による加熱部分がリボン線の端部のみの極めて局部的であり、周囲が高温に晒されることがなく、リボン線を接続する端子部に近接して回路部品を実装することができ、パワーリジッド基板部26及び制御リジッド基板部27の実装密度を向上させることができる。
【0036】
なお、上記実施形態においては、給電用バスバー11b〜11dの基端側の領域は直方体形状の合成樹脂からなるバスバー被覆部164に被覆され、信号用端子11e〜11jの基端側の領域も直方体形状の合成樹脂からなる信号用端子被覆部165に被覆された構造を示したが、これらの端子と減速ギヤボックス10との間に絶縁物が介在している構造であればよい。したがって、例えば、電動モータ11内部の結束リングなどのインサート成形部材と、バスバー11b〜11dの基端側及び信号用端子11e〜11jの基端側が一体成形される構造であってもよい。
【0037】
また、本発明をコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ピニオンアシスト式やラックアシスト式の電動パワーステアリング装置に本発明を適用しても上記と同様の効果が得られる。
また、上記実施形態においては、給電用バスバー11b〜11d及び給電用ランドLP1〜LP3、信号用端子11e〜11j及び信号用ランドLC1〜LC6の電気的接続を、リボン線をレーザリボンボンディング装置でレーザボンディングする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、リボン線以外のフレキシブル導電部材をワイヤボンディング装置でワイヤボンディングするようにしてもよく、或いはコネクタ接続するようにしてもよい。
【0038】
さらに、上記実施形態においては、パワーリジッド基板部26及び制御リジッド基板部27とを折曲部25を連接した場合について説明したが、3以上のリジッド基板部を折曲部を介して連接するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、リジッド基板が4層構造である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、5層以上の多層構造とすることもできる。
【0039】
さらに、上記実施形態においては、電動モータ11としてブラシレス3相電動モータを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、4相以上のブラシレス多相電動モータを適用することもでき、通常のブラシ付電動モータを適用することもできる。ブラシ付電動モータを適用する場合には、電動モータと制御ユニットとは2本の給電ラインで接続し、パワーリジッド基板部26に形成するインバータ回路に代えてHブリッジ回路を適用すればよい。
【0040】
さらにまた、上記実施形態では、制御ユニット12を構成するカバーを合成樹脂製としたが、導電性金属からなるカバーであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…ステアリング機構、2…ステアリングホイール、3…ステアリングシャフト、3a…入力軸、3b…トーションバー、3c…出力軸、4…ステアリングコラム、5…ステアリングギヤ機構、5a…ピニオン軸、5b…ラック軸、6…タイロッド、7…転舵輪、9…電動パワーステアリング装置、10…減速ギヤボックス(ハウジング)、11…電動モータ、11a…モータ本体、11b〜11d…三相給電用バスバー(給電用端子)、11e〜11j…信号用端子、12…制御ユニット、16…回路基板、17…外部接続用コネクタ、17a…電源コネクタ、17b…信号コネクタ、18…カバー、22…帯状部、23,24…切削溝部、25…折曲部、26…パワーリジッド基板部、27…制御リジッド基板部(制御基板)、27a〜27d…スルーホール、33…コイル、51…凹凸部、56…支柱、102…ウォーム収納部、103…ウォームホイール、104…ウォームホイール収納部、105…トルクセンサ、105a,105b…検出コイル、105c〜105f…外部接続端子、106…トルクセンサ収納部、107…ギヤボックスフランジ、108…コラム取付部、109…ボックスカバー、109a,104a…軸受、110…制御ユニット収納部、160…モータフランジ、161…インロー部、163…ウォーム軸(モータ出力軸)、164…バスバー被覆部、165…信号用端子被覆部、166…第1貫通穴(貫通穴)、167…第2貫通穴(貫通穴)、L1,L2…電源用電極端子、L3〜L5…信号用電極端子、LC1〜LC6…信号用ランド(基板端子部)、LC7〜LC9…信号用ランド、LP1〜LP3…給電用ランド(基板端子部)、LP4,LP5…電源用ランド、R1〜R4…リボン線(導電部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング操作を補助する操舵補助力を発生する電動モータと、当該電動モータを駆動制御する制御回路を実装した制御基板を含む制御ユニットとを、ハウジングの外周に装着した電動パワーステアリング装置において、
前記電動モータは、前記ハウジングに設けたハウジングフランジに当接して装着されるモータフランジを備えており、
当該モータフランジの当接面からモータ出力軸に沿って突出するモータ端子が、前記ハウジングフランジに設けた貫通穴を通過して前記制御ユニットの前記制御基板に設けた基板端子部に電気的に接続されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記貫通穴の内面と当該貫通穴に通過した前記モータ端子との間には、絶縁部材が介装されていることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記貫通穴の内部に位置する前記モータ端子の外周は、絶縁部材からなる被覆部に覆われていることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記電動モータは、モータステータ、モータロータ及び当該モータロータの回転角を検出する回転角検出器が内蔵されており、
前記モータ端子は、前記モータステータへの給電用端子と、前記回転角検出器で検出した回転角信号を送出する信号用端子であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記給電用端子及び前記信号用端子は、前記ハウジングフランジの互いに異なる位置に設けた少なくとも2箇所の前記貫通穴にそれぞれ通過していることを特徴とする請求項4記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記電動モータで発生した操舵補助力をステアリング系に伝達するウォーム減速機構を内蔵した減速ギヤボックスであり、
前記電動モータのモータ出力軸は、前記ウォーム減速機構のウォームを外周に設けたウォーム軸であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記モータ端子と前記制御ユニットの前記制御基板に設けた基板端子部との間に、導電部材をレーザ溶接したことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−173466(P2010−173466A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18151(P2009−18151)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】