説明

電動モータ

【課題】駆動制御部を備える電動モータの小型化を達成する。
【解決手段】モータ回転を減速するウォームギヤ機構32が収容されるギヤハウジング30には、ウォームギヤ機構32を覆うように回路基板34が収容されている。回路基板34の上面34aには、モータ本体22に駆動電力を供給するFET36が実装されるとともに、出力軸17の回転状態を検出するMRセンサ38が実装されている。また、MRセンサ38に対向するように、ウォームホイール32bの回転中心上には回転検出用のマグネット37が固定される。このように、FET36とMRセンサ38との双方を回路基板34の同一面上に実装することにより、電動モータ10の小型化を達成することが可能となる。また、回路基板34の貫通穴39にマグネット37の先端部を挿入することにより、電動モータ10の更なる小型化を達成することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御部を備える電動モータに関し、特に、電動モータの小型化を図るために適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるワイパ装置には、ワイパアームを揺動させるための駆動源として電動モータが設けられている。また、車両に搭載されるパワーウィンド装置やサンルーフ装置には、ウィンドガラスやサンルーフを開閉するための駆動源として電動モータが設けられている。近年、これらの電動モータにあっては高機能化が求められており、多くの電動モータには駆動状態を制御するための回路基板が組み込まれている。このような回路基板には、駆動電流を制御するFETや回転状態を検出する位置センサ等の電子部品が実装されるため、電動モータに回路基板を組み込むことは電動モータの大型化を招く要因となっていた。
【0003】
そこで、回路基板を収容するハウジングを複数の収容部を備える立体的な構造とし、これらの収容部をバスバーにて接続することにより、立体的な空間に対して効率的に電子部品を収容するようにした電動モータが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。このように、電子部品を立体的に組み込むことにより、回路基板の平面的な広がりを抑制することができるため、電動モータの小型化を達成することが可能となる。
【特許文献1】特開2004−159392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される電動モータにあっては、回路基板の一方面にFET等のパワー系部品を取り付け、回路基板の他方面に位置センサを取り付けるようにしているため、回路基板の厚み方向にパワー系部品や位置センサを重ねることになり、電動モータの更なる小型化を図ることが困難となっていた。特に、位置センサとしてMRセンサを採用することにより、減速機構を構成するウォームホイールの回転数や軸角度を検出する場合には、ウォームホイールの軸端部にセンサマグネットを取り付け、このセンサマグネットに対して軸方向に重なるようにMRセンサを回路基板に実装する必要がある。このような回路基板を備えた電動モータに対して、更に回路基板の厚み方向にパワー系部品を実装することは、電動モータをウォームホイールの軸方向に拡大する要因となっていた。このような電動モータの大型化は、ワイパ装置等の組付スペースを拡大する要因となるため、電動モータの小型化が求められていた。
【0005】
本発明の目的は、駆動制御部を備える電動モータの小型化を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動モータは、モータ軸を駆動するモータ本体と、前記モータ軸の回転を減速する減速機構と、前記モータ本体を制御する回路基板が組み込まれた駆動制御部と、前記減速機構と前記駆動制御部とを収容するギヤハウジングとを備える電動モータであって、前記駆動制御部は、前記モータ本体に駆動電力を供給するパワー系部品と、前記減速機構に組み付けられるマグネットの磁界の変化を検出する位置センサとを備え、前記回路基板の同一面上に前記パワー系部品と前記位置センサを取り付け、前記ギヤハウジングに収容することを特徴とする。
【0007】
本発明の電動モータは、前記位置センサは前記回路基板を介して前記マグネットに対向することを特徴とする。
【0008】
本発明の電動モータは、前記回路基板には前記位置センサに向けて開口する貫通穴が形成され、前記貫通穴に前記マグネットを挿入することを特徴とする。
【0009】
本発明の電動モータは、前記回路基板の一方面には前記パワー系部品が取り付けられていると共に前記回路基板の他方面には前記ギヤハウジングが接触していることを特徴とする。
【0010】
本発明の電動モータは、前記回路基板が接触する前記ギヤハウジングには、外方に延びるヒートシンクが形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の電動モータは、前記位置センサは、前記減速機構の回転中心上に配置されるMRセンサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パワー系部品と位置センサとの双方を回路基板の同一面上に取り付けるようにしたので、同一面上にパワー系部品と位置センサとを並べることができ、電動モータの厚み寸法を抑制することができるため、電動モータの小型化を達成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態である電動モータ10が駆動源として適用されるワイパ装置11を示す概略図である。図1に示すように、車両12のフロントガラス13の下方には、フロントガラス13に付着した雨水等を拭き取って運転者の視界を確保するためのワイパ装置11が設けられている。
【0015】
ワイパ装置11は車両12に回転自在に支持された2つのワイパ軸14a,14bを備えており、ワイパ軸14aには運転席側のワイパアーム15aが固定され、ワイパ軸14bには助手席側のワイパアーム15bが固定されている。それぞれのワイパアーム15a,15bの先端部にはワイパブレード16a,16bが装着されており、ワイパアーム15a,15bの基端部には図示しないスプリングが装着されている。このスプリングのばね力により、ワイパブレード16a,16bをフロントガラス13に対して弾圧的に接触させることが可能となっている。
【0016】
また、ワイパ装置11には駆動源として電動モータ10が設けられており、電動モータ10の出力軸17にはクランクアーム18が連結されている。このクランクアーム18はワイパ軸14a,14bを支点とするリンク機構19に連結されており、クランクアーム18を回転させることによって、ワイパアーム15a,15bを所定の角度範囲で揺動させることができる。このようなワイパアーム15a,15bの揺動運動により、ワイパブレード16a,16bを上反転位置と下反転位置との間の払拭範囲20a,20bで作動させることができ、フロントガラス13に付着した雨水等を払拭することが可能となる。
【0017】
図2は電動モータ10を示す断面図である。図2に示すように、電動モータ10はモータ軸21を駆動するモータ本体22と、このモータ回転を減速して出力する減速機構部23とを備えている。モータ本体22はいわゆるブラシ付きの直流モータとなっており、モータハウジング24の内部には図示しない界磁マグネットが固定され、アマチュア25およびコミュテータ26が回転自在に収容されている。なお、モータ本体22としてブラシ付き直流モータを用いるようにしているが、これに限られることはなく、ブラシレス直流モータなど他の形式のモータ本体を用いるようにしても良い。
【0018】
一方、減速機構部23は、モータハウジング24に組み付けられるギヤハウジング30と、ギヤハウジング30の開口部に組み付けられるハウジングカバー31とを備えており、ギヤハウジング30には減速機構としてのウォームギヤ機構32が収容されている。ギヤハウジング30内に延びるモータ本体22のモータ軸21は、軸受33を介して回転自在に支持されており、クランクアーム18が固定される出力軸17は、ギヤハウジング30のボス部30aに回転自在に支持されている。モータ軸21にはウォーム32aが固定される一方、出力軸17にはウォーム32aに噛み合うウォームホイール32bが固定されており、これらのウォーム32aとウォームホイール32bとによってウォームギヤ機構32が形成されている。
【0019】
また、図2に示すように、ギヤハウジング30にはウォームギヤ機構32を覆うように回路基板34を備えた駆動制御部35が収容されている。回路基板34の上面34aには、モータ本体22に駆動電力を供給するパワー系部品としてのFET(電界効果トランジスタ)36が実装されるとともに、図示しないリレー、ダイオード、コンデンサ等が実装されるようになっている。さらに、出力軸17の回転数および軸角度を検出するため、ウォームホイール32bの回転中心には、N極,S極が周方向に着磁された回転検出用のマグネット(多極着磁磁石)37が固定されており、このマグネット37に対向するように位置センサとしてのMRセンサ(磁気抵抗センサ)38が回路基板34の上面34aに実装されている。電動モータ10の回転によって、マグネット37も連動して回転を行うことになるが、その時のN極とS極の磁極の切替りによる磁界の抵抗の変化をMRセンサ38で検出を行う。そして、MRセンサ38からの検出信号によって把握されるワイパブレード16a,16bの作動位置に基づいて、モータ本体22に対する駆動電力を制御することが可能となっている。
【0020】
このように、FET36とMRセンサ38との双方を回路基板34の同一面である上面34a上に実装することにより、同一面上にFET36とMRセンサ38とを並べることができるため、電動モータ10の厚み寸法を抑制することが可能となる。また、図2の拡大断面図に示すように、MRセンサ38に向けて開口する貫通穴39を回路基板34に形成し、この貫通穴39にマグネット37の先端部を挿入することにより、回路基板34とマグネット37との一部をオーバーラップさせることができ、電動モータ10の厚み寸法を更に抑制することが可能となる。なお、図示する場合には、マグネット37の先端部がテーパ状に加工されているが、マグネット37の外径に比べて貫通穴39の内径を大きく形成することができる場合には、マグネット37の先端部にテーパ加工を施すことなく先端部を円柱状に形成しても良い。
【0021】
また、FET36が上面34aに実装される回路基板34の下面34bは、ギヤハウジング30の内面に接触するようになっている。回路基板34を介してFET36が接触するギヤハウジング30には、外方に延びる複数の放熱フィン40aを備えたヒートシンク40が形成されており、FET36に対する通電に伴って発生する熱はヒートシンク40を介して外気に放出されるようになっている。なお、回路基板34とギヤハウジング30とを密着させるため、回路基板34とギヤハウジング30との間にはシリコーン41が塗布されている。ここでは、シリコーンを使用し、回路基板34とギヤハウジング30とを密着させ、さらに熱伝導性が高いシリコーンにより、電動モータ10内で発生した熱を外気に放出しているが、回路基板34とギヤハウジング30とを密着させ、熱伝導性が高い材料であれば、シリコーン以外の材料でも良い。このように、ヒートシンク40をハウジングカバー31に形成することなく、ヒートシンク40をギヤハウジング30に形成することにより、ヒートシンク40とウォームギヤ機構32とを並べることができ、電動モータ10の厚み寸法を抑制することが可能となる。
【0022】
ここで、図3(A)は従来の電動モータ100が備える断面構造を示す概略図であり、図3(B)は本発明の電動モータ10が備える断面構造を示す概略図である。まず、図3(A)に示すように、従来の電動モータ100にあっては、回路基板101の一方面101aに対してFET102が実装され、回路基板101の他方面101bに対してMRセンサ103が実装されるため、電子部品を実装した回路基板101が厚み方向に大型化することになる。また、発熱するFET102がハウジングカバー104側に設けられるため、FET102の熱を放出するヒートシンク105をハウジングカバー104に組み込む必要があり、電動モータ100の更なる大型化を招くことになっていた。
【0023】
これに対し、図3(B)に示すように、本発明の一実施の形態である電動モータ10にあっては、FET36とMRセンサ38との双方を回路基板34の同一面上に実装するようにしたので、FET36とMRセンサ38とを並べることができ、前述した電動モータ100が備える駆動制御部の厚み寸法H1に比べて、電動モータ10が備える駆動制御部35の厚み寸法H2を小さくすることが可能となる。また、ギヤハウジング30にヒートシンク40を形成するとともに、回路基板34を介してFET36をギヤハウジング30に接触させるようにしたので、ヒートシンク40とウォームギヤ機構32とを並べることができ、電動モータ10の更なる小型化を図ることが可能となる。さらに、回路基板34に開口する貫通穴39に対してマグネット37の先端部を挿入するようにしたので、回路基板34とマグネット37との一部をオーバーラップさせることができ、電動モータ10の更なる小型化を達成することが可能となる。
【0024】
続いて、図4は本発明の他の実施の形態である電動モータ42を示す概略図である。なお、図3(B)に示す部材と同じ部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。まず、図3(B)に示す電動モータ10にあっては、回路基板34に開口する貫通穴39に対してマグネット37の先端部を挿入するようにしているが、これに限られることはなく、貫通穴39を持たない回路基板43を介してMRセンサ38とマグネット44とを対向させるようにしても良い。前述した電動モータ10に比べて若干増大する電動モータ42の厚み寸法が許容される場合には、図4に示すように、貫通穴39を持たない回路基板43を使用することにより、回路基板43やマグネット44の加工コストを引き下げることが可能となる。なお、このような回路基板43を備える電動モータ42であっても、前述した従来の電動モータ100に比べて小さな厚み寸法を有することはいうまでもない。
【0025】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前記実施の形態においては、電動モータ10をワイパ装置11の駆動源として用いるようにしているが、ワイパ装置11に限られることはなく、パワーウィンド装置やドア開閉装置などの駆動源として本発明の電動モータ10,42を適用するようにしても良い。
【0026】
また、電動モータ10,42に組み込まれる減速機構としてウォームギヤ機構32が採用されているが、これに限られることはなく、複数の平歯車からなる減速歯車列など他の形式の減速機構を用いるようにしても良い。さらに、図示する場合には、MRセンサ38およびマグネット37,44が、ウォームホイール32bの回転中心上に配置されているが、ウォームホイール32bの回転中心からずれた位置に配置するようにしても良い。
【0027】
また、出力軸17の回転数を検出する位置センサとしてMRセンサ38が採用されているが、これに限られることはなく、位置センサとしてホール素子を用いるようにしても良い。さらに、パワー系部品としてFET36が設けられているが、FET36と同様にリレーやコンデンサ等を実装するようにしても良いことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態である電動モータが駆動源として適用されるワイパ装置を示す概略図である。
【図2】電動モータを示す断面図である。
【図3】(A)は従来の電動モータが備える断面構造を示す概略図であり、(B)は本発明の電動モータが備える断面構造を示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施の形態である電動モータを示す概略図である。
【符号の説明】
【0029】
10 電動モータ
11 ワイパ装置
12 車両
13 フロントガラス
14a,14b ワイパ軸
15a,15b ワイパアーム
16a,16b ワイパブレード
17 出力軸
18 クランクアーム
19 リンク機構
20a,20b 払拭範囲
21 モータ軸
22 モータ本体
23 減速機構部
24 モータハウジング
25 アマチュア
26 コミュテータ
30 ギヤハウジング
30a ボス部
31 ハウジングカバー
32 ウォームギヤ機構(減速機構)
32a ウォーム
32b ウォームホイール
33 軸受
34 回路基板
34a 上面(同一面,一方面)
34b 下面(他方面)
35 駆動制御部
36 FET(パワー系部品)
37 マグネット
38 MRセンサ(位置センサ)
39 貫通穴
40a 放熱フィン
40 ヒートシンク
41 シリコーン
42 電動モータ
43 回路基板
44 マグネット
100 電動モータ
101 回路基板
101a 一方面
101b 他方面
102 FET
103 MRセンサ
104 ハウジングカバー
105 ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸を駆動するモータ本体と、前記モータ軸の回転を減速する減速機構と、前記モータ本体を制御する回路基板が組み込まれた駆動制御部と、前記減速機構と前記駆動制御部とを収容するギヤハウジングとを備える電動モータであって、
前記駆動制御部は、前記モータ本体に駆動電力を供給するパワー系部品と、前記減速機構に組み付けられるマグネットの磁界の変化を検出する位置センサとを備え、
前記回路基板の同一面上に前記パワー系部品と前記位置センサを取り付け、前記ギヤハウジングに収容することを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
請求項1記載の電動モータにおいて、前記位置センサは前記回路基板を介して前記マグネットに対向することを特徴とする電動モータ。
【請求項3】
請求項1または2記載の電動モータにおいて、前記回路基板には前記位置センサに向けて開口する貫通穴が形成され、前記貫通穴に前記マグネットを挿入することを特徴とする電動モータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、前記回路基板の一方面には前記パワー系部品が取り付けられていると共に前記回路基板の他方面には前記ギヤハウジングが接触していることを特徴とする電動モータ。
【請求項5】
請求項4記載の電動モータにおいて、前記回路基板が接触する前記ギヤハウジングには、外方に延びるヒートシンクが形成されることを特徴とする電動モータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動モータにおいて、前記位置センサは、前記減速機構の回転中心上に配置されるMRセンサであることを特徴とする電動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−97352(P2007−97352A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285946(P2005−285946)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】