電動リニアアクチュエータ
【課題】省エネを図りつつも、目標位置に正確に移動部材を移動させることができる電動リニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】ボールスクリュー機構は一般的に効率が高いため、電動モータ20の回転軸であるネジ軸20aの回転に応じてナット21を移動させて動力伝達を行う場合に、電動モータ20への電力供給が停止すれば、ナット21が移動する方向に力を受けると、電動モータ20の回転軸20aが回転するように動力が逆方向に伝達されることを許容する。これを利用して、電動モータ20への電力の供給を中断した状態で、ディテントレバー31の複数の凹部31bのいずれかにローラ32aが係合していない場合には、ローラ32aは凹部31bのいずれかに向かって付勢されるようにすれば、その付勢力を利用して、レンジ切換弁10が、保持されるべき位置のいずれかに駆動され、そこで保持されるようになる。この間、電動モータ20に電力は供給されないので、省エネを図ることができる。
【解決手段】ボールスクリュー機構は一般的に効率が高いため、電動モータ20の回転軸であるネジ軸20aの回転に応じてナット21を移動させて動力伝達を行う場合に、電動モータ20への電力供給が停止すれば、ナット21が移動する方向に力を受けると、電動モータ20の回転軸20aが回転するように動力が逆方向に伝達されることを許容する。これを利用して、電動モータ20への電力の供給を中断した状態で、ディテントレバー31の複数の凹部31bのいずれかにローラ32aが係合していない場合には、ローラ32aは凹部31bのいずれかに向かって付勢されるようにすれば、その付勢力を利用して、レンジ切換弁10が、保持されるべき位置のいずれかに駆動され、そこで保持されるようになる。この間、電動モータ20に電力は供給されないので、省エネを図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動リニアアクチュエータに関し、特に、車両の自動変速機のシフトレンジを切り替えるために用いられると好適な電動リニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
旧来の自動変速機のシフトレンジを切り替えるレンジ切り替え装置は、変速機内のマニュアルバルブと、このマニュアルバルブにシフトケーブルで連結されたシフトレバーとを備えており、かかるシフトレバーをドライバーが操作することにより、シフトケーブルを介してマニュアルバルブを切り替えるようになっている。従って、シフトレバーは、ドライバーの力で無理なくシフトケーブルを動作させることができる位置に設けられる必要がある。これに対し、最近は、車室内デザインの自由度の拡大要請、同一プラットフォームからの派生車種の拡大要請などから、シフトレバーを任意の場所に設置する必要が生じている。
【0003】
このような要請に応えたレンジ切り替え装置が、特許文献1に開示されている。このレンジ切り替え装置は、モータを用いてレンジ切り替えを行うようになっており、マニュアルバルブが目標位置になったことを検知して、モータ駆動を停止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−190180号公報
【特許文献2】特開2001−182828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モータや駆動系は慣性があるので、目標位置になった時点でモータへの電力供給を中断しても、マニュアルバルブは目標位置を通り過ぎて駆動されるということがある。そこで、上記特許文献1においては、目標位置に近づいたことをセンサにて検出し、それから所定のタイミングでモータを逆転制動することで、正確に目標位置にマニュアルバルブが到達するようにしている。
【0006】
しかるに、このようにモータに制動のための逆特性の電力を供給することは、省エネに反するという問題がある。又、上記特許文献1においては、モータからディテント機構に動力を伝達するためにウォーム機構を設けているが、ウォーム機構は一般的に効率が悪いので、更に省エネに反するという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2には、マニュアルバルブを目標位置に精度良く移動させるために、目標位置に近づいたら動作させる電磁クラッチを動作させて、ローラがディテント機構の凹部に係合できるようにして、マニュアルバルブが目標位置に到達するようにしたシフト切り替え機構が開示されている。しかしながら、電力供給で動作する電磁クラッチを設けることは、省エネに反し、またコストを増大させるといった問題もある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、省エネを図りつつも、目標位置に正確に移動部材を移動させることができる電動リニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動リニアアクチュエータは、
移動部材と、
前記移動部材を、保持されるべき複数の位置のいずれかに駆動する駆動機構と、
電動モータと、
前記電動モータからの動力を前記駆動機構に伝達する動力伝達機構とを有し、
前記駆動機構が、前記移動部材における保持されるべき複数の位置にそれぞれ対応して設けられた複数の凹部と、前記凹部に選択的に係合可能となっている係合部材とを備え、
前記動力伝達機構が、ネジ軸と、ナットと、前記ネジ軸とナットとの間に配置された複数のボールとを備えたボールスクリュー機構を含み、
前記電動モータへの電力の供給を実質的に中断した状態で、前記複数の凹部のいずれかの所定位置に前記係合部材が係合していない場合には、前記係合部材は前記凹部のいずれかの所定位置に向かって付勢され、その付勢力を利用して、前記移動部材が、前記保持されるべき位置のいずれかに駆動され、そこで保持されるようになっており、前記ボールスクリュー機構は、前記付勢力の一部を前記電動モータに伝達可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動リニアアクチュエータは、移動部材と、前記移動部材を、保持されるべき複数の位置のいずれかに駆動する駆動機構と、電動モータと、前記電動モータからの動力を前記駆動機構に伝達する動力伝達機構とを有し、前記駆動機構が、前記移動部材における保持されるべき複数の位置にそれぞれ対応して設けられた複数の凹部と、前記凹部に選択的に係合可能となっている係合部材とを備え、前記動力伝達機構が、ネジ軸と、ナットと、前記ネジ軸とナットとの間に配置された複数のボールとを備えたボールスクリュー機構を含んでいるが、ボールスクリュー機構は一般的に効率が高いため、例えば前記電動モータの回転軸に前記ネジ軸を連結させて、その回転に応じて前記ナットを移動させて動力伝達を行う場合に、前記電動モータへの電力供給が停止すれば、前記ナットが移動する方向に力を受けると、前記電動モータの回転軸が回転するように動力が逆方向に伝達されることを許容する。これを利用して、前記電動モータへの電力の供給を実質的に中断した状態で、前記複数の凹部のいずれかの所定位置に前記係合部材が係合していない場合には、前記係合部材は前記凹部のいずれかの所定位置に向かって付勢されるようにすれば、その付勢力を利用して、前記移動部材が、前記保持されるべき位置のいずれかに駆動され、そこで保持されるようになる。この間、電動モータに電力は供給されないので、省エネを図ることができる。尚、「電動モータへの電力の供給を実質的に中断した状態」とは、完全に電力の供給を中断した状態の他、前記電動モータに電力の供給があっても、その出力トルクが弱いため前記係合部材が前記凹部のいずれかの所定位置に向かって付勢されることを阻止することができない状態も含む。
【0011】
更に、前記移動部材は、変速機のシフトポジションに対応して前記複数の位置に駆動され保持されると好ましい。
【0012】
又、前記駆動機構は、前記複数の凹部を設け回動可能であって、前記移動部材に連結されたディテントレバーを含み、前記ディテントレバーの回動に応じて、前記移動部材が前記保持されるべき複数の位置に駆動されるようになっていると好ましい。
【0013】
更に、前記ディテントレバーの回動角度を検出するセンサを有し、前記電動モータは、センサの出力に基づいて電力供給が制御されるようになっていると好ましい。
【0014】
又、前記電動モータは、その回転軸の回転角度に応じて電力供給が制御されるようになっていると好ましい。
【0015】
更に、前記移動部材が、前記保持されるべき複数の位置のいずれかに到達する前に、前記電動モータへの電力の供給が中断されると好ましい。
【0016】
又、前記動力伝達機構は、プラスチックギヤを使用した減速機構を含むと好ましい。
【0017】
更に、前記電動モータに対して電磁気的に制動を行なう回生制動回路を有し、電力の供給を中断した後に、この回生制動回路を前記電動モータに接続すると好ましい。
【0018】
又、前記移動部材が、前記保持されるべき複数の位置のいずれかに到達する前に、前記電動モータの減速を行うと好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態である電動リニアアクチュエータを含むシフト切り替え機構の斜視図である。
【図2】シフト切り替え機構の制御を示すフローチャートである。
【図3】本実施の形態の変形例を示す図である。
【図4】本変形例にかかるモータの制御回路図である。
【図5】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図6】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図7】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図8】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図9】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図10】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図11】電動モータとネジ軸間の動力伝達をベルト駆動によって行う変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態である電動リニアアクチュエータを含むシフト切り替え機構の斜視図である。図1において、移動部材であるレンジ切換弁10は、スプールバルブ形式のものであって、このレンジ切換弁10には、不図示の自動変速機の制御のための基本油圧となるライン油圧が供給されている。レンジ切換弁10は、スプール10aを軸方向に操作することで、ポートを切換えて、各シフトレンジを設定するための摩擦係合装置(図示略)の係合及び解放を制御するものである。
【0021】
このレンジ切換弁10は、直流モータ(電動モータ)20により駆動される。より具体的に駆動系について説明する。不図示の車体に固定された電動モータ20の回転軸は、外周に雄ネジ溝が形成されたネジ軸20aとなっている。ネジ軸20aの周囲には、ナット21が配置されている。ナット21の内周には雌ネジ溝が形成され、ネジ軸20の雄ネジ溝とナット21の雌ネジ溝との間には、多数のボール(不図示)が転動自在に配置されている。よって、ネジ軸20aの回転は、ナット21の軸線方向移動に変換されることとなる。ネジ軸20a、ナット21,及び不図示のボールによりボールスクリュー機構すなわち動力伝達機構が構成される。
【0022】
ナット21は、コントロール軸22の一端に、一対のレバー23を介して連結されている。従って、ナット21が移動すると、コントロール軸22は、それに応じた量だけ回転するようになっている。コントロール軸22の他端側には、ディテントレバー31が一体的に回転するように取り付けられている。ディテントレバー31に植設されたピン31aは、レンジ切換弁10の先端の凹部に係合しており、ディテントレバー31の回動に応じて、レンジ切換弁10が軸線方向に移動するようになっている。尚、コントロール軸22の末端には、その回転力を測定する回転センサ25が設けられている。
【0023】
回転センサ25からの出力信号は、A/Dコンバータ51を介してCPU54に入力される。一方、車室内に配置されたシフトレバーSLのシフト位置を検出するレンジ検出器52からの信号も、CPU54に入力される。CPU54は、これらの信号を元に、図2に示す制御態様で電動モータ20に、アンプ53を介して電力を供給するようになっている。
【0024】
次に、ディテント機構30について説明する。ディテントレバー31は略扇形状を有し、その外周には複数個の凹部31bが形成されている。これら凹部31bのうちの一つの凹部に対し、一端を不図示の車体に固定されたディテントスプリング32の端部に設けられたローラ(係合部材)32aが係合可能となっている。かかる係合により、コントロール軸22の回転位置、つまりレンジ切換弁10の複数のレンジポジション(P−R−N−D−L)が決定される。凹部31bは、なめらかに深くなる形状を有し、またバネ材からなるディテントスプリング32は、取り付けられた状態で図1で下方に付勢力を発揮するので、コントロール軸22がフリーに回転するのであれば、ローラ32aは凹部31bのいずれかの底部に安定して保持されることとなる。尚、ディテントレバー31とディテントスプリング32とで、ディテント機構30すなわち駆動機構を構成する。
【0025】
コントロール軸22の回転により、ディテントレバー31を通じてレンジ切換弁10が切換えられる。このときレンジ切換弁10の各レンジポジションにおいて、ローラ32aは、ディテントスプリング32の付勢力に抗して、ディテントレバー31の凹部31bを隔てる凸部を乗り越えつつ、隣の凹部31bに係合するといった動作を繰り返す。
【0026】
次に、本実施の形態のシフト切り替え機構の基本的な制御について、図2を参照して説明する。CPU54は、ステップS101で、現在のシフトレバーSLの位置をレンジ検出器52からの信号で検出し、ステップS102で、記憶していた位置と比較して、シフトレバーSLが移動したか否かを判断する。シフトレバーSLが移動したと判断すれば、ドライバーがシフトを所望していると判断し、ステップS103で、電動モータ20への電力供給を開始する。
【0027】
更に、CPU54は、ステップS104で、シフトレバーSLのシフト位置を求め、ステップS105で、それを回転センサ25からの信号によるコントロール軸22の回転位置とを比較し、偏差を求める。CPU54は、かかる偏差に基づいて、電動モータ20への電力供給を続行するが、それによりネジ軸20a、ナット21を介してコントロール軸22が回転するので、上述したように一つの凹部31bから他の凹部31bへとローラ32aが移動しながら、ディテントレバー31が回動し、レンジ切換弁10を移動させることとなる。
【0028】
CPU54は、ステップS105で求めた偏差を設定値と比較し、設定値以上であれば、電動モータ20への電力供給を続行し、且つ偏差を繰り返し求める。一方、ステップS105で求めた偏差が設定値未満となった場合、CPU54は、ステップS107で電動モータ20への電力供給を停止する。このとき、ローラ32aがディテントレバー31の凹部31bの底部(所定位置)に位置していない場合、レンジ切換弁10は不適切な位置にある恐れがあるので、これを適切な位置に移動させる必要がある。
【0029】
レンジ切換弁10が適切な位置にない場合、凹部31bの斜面にローラ32aが位置していることになるので、ディテントスプリング32の付勢力により、ローラ32aは凹部31bの底部に向かって付勢され、それによりディテントレバー31は、レンジ切換弁10を適切なシフトポジションとする回転位置に移動しようとする。ここで、本実施の形態では、コントロール軸22と電動モータ20とは、低フリクションのボールスクリュー機構により連結されているため、電動モータ20への電力供給を停止すれば、コントロール軸22は抵抗を失って、その回転力(すなわちディテントスプリング32の付勢力の一部に相当)が電動モータ20へ伝達されるようになる。すなわち、電力供給を行うことなく、また複雑な位置制御を行うことなく、レンジ切換弁10は適切な位置に移動することとなる。従って、ここでいう「設定値」とは、ローラ32aの目標位置を底部とする特定の凹部31bの両斜面のいずれかにローラ32aが位置できるだけの、シフト位置とコントロール軸22の回転位置との間の偏差をいうものである。尚、所定位置である「底部」は、凹部31bの最深部である必要はなく、例えば最深部を挟んで一定の範囲であって、それにより位置決めされるレンジ切替弁10によって適切なシフトポジションを確保できる位置であれば足りる。
【0030】
更に、CPU54は、ステップS108で、ローラ32aの最終的に落ち着いた位置を最適なコントロール軸22の角度として記憶して、以降の制御に用いるようにしている。
【0031】
図3は、本実施の形態の変形例を示す図である。図4は、本変形例にかかるモータの制御回路図である。本変形例においては、図3に示すように、電動モータ20の回転軸20bと、ネジ軸20aとは分離されており、更に回転軸20bに結合された歯数の少ないプラスチックギヤ20cと、ネジ軸20aに結合された歯数の大きいプラスチックギヤ20dとを噛合させることで、回転軸20bの回転力を減速してネジ軸20aに伝達できるようになっている。プラスチックギヤ20c、20dが減速機構を構成する。
【0032】
電動モータ20の定格トルクが小さい場合には、減速機構を設けてトルクを増大させる必要があるが、減速機構に金属製の歯車対を設けると重量増の他にも、慣性力増大という問題が生じる。かかる場合、CPU54が、電動モータ20への電力供給を中断した際に、ナット21は慣性により直ちに停止せず、目標停止位置から大きくずれてしまう恐れがある。これに対し、本実施の形態によれば、減速機構にプラスチックギヤ20c、20dを用いることで、その慣性力を低く抑えながらも減速を達成できるようにし、それにより制動制御を容易とすることができる。
【0033】
図5〜図10は、ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す図である。図5に示す変形例においては、ネジ軸120aの端部に雄スプライン120mを形成し、プラスチックギヤ120cの内周に雌スプライン120fを形成し、これらスプラインを相互に係合させることで、ネジ軸120aに対してプラスチックギヤ120cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0034】
図6に示す変形例においては、ネジ軸220aの端部に、プラスチックギヤ220cをモールド成形することで、ネジ軸220aに対してプラスチックギヤ220cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0035】
図7に示す変形例においては、円筒状の台金320gの外周に、プラスチックギヤ320cをモールド成形し、更に、ネジ軸320aの端部に雄スプライン320mを形成し、台金320gの内周に雌スプライン320fを形成し、これらスプラインを相互に係合させることで、ネジ軸320aに対してプラスチックギヤ320cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0036】
図8に示す変形例においては、ネジ軸420aの端部にキー溝420mを形成し、プラスチックギヤ420cの内周にキー溝420fを形成し、これら溝間にキー420gを挿入することで、ネジ軸420aに対してプラスチックギヤ420cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0037】
図9に示す変形例においては、円筒状の台金520gの外周に、プラスチックギヤ520cをモールド成形し、更に、ネジ軸520aの端部に台金520gを嵌合圧入することで、ネジ軸520aに対してプラスチックギヤ520cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0038】
図10に示す変形例においては、円筒状の台金620gの外周に、プラスチックギヤ620cをモールド成形し、更に、ネジ軸620aの端部に台金620gを嵌合圧入した後、ピン620hを、台金620gからネジ軸620aに対して半径方向に貫通させることで、ネジ軸620aに対してプラスチックギヤ620cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0039】
尚、プラスチックギヤの素材としては、ポリアセタールにグラスファイバーを混入させたものが好ましい。又、潤滑剤を含浸させた素材を用いてプラスチックギヤを形成しても良い。
【0040】
図4において、直流の電動モータ20の両端子は、回生制動回路を構成する電源Eまたは抵抗Rに選択的に接続されるようになっている。かかる選択は、スイッチSの操作によりなされ、スイッチSは、CPU54により行われる。本実施の形態によれば、CPU54が、スイッチSの操作により、電動モータ20への電力供給を中断した後、直ちに電動モータ20の両端子を抵抗Rに接続する。このとき、電動モータ20の両端子には電力が発生するが、それを抵抗Rで消費することで、電動モータの回転軸20bは仕事をし、すなわち回生制動を与えられることとなる。かかる回生制動を利用し、電動モータ20への電力供給が中断された後、慣性に抗して直ちにナット21の移動を停止できるようにしている。抵抗Rの代わりに、キャパシタやバッテリーなどのエネルギ回収器を用いてもよい。
【0041】
尚、CPU54は、電動モータ20の回転軸20bの回転速度を検出し、目標位置に近づいたときに減速してオーバーランせずに、丁度ディテントレバー31の凹部31bに凸部32aがとどまるように制御することも可能である。
【0042】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、コントロール軸22の回転位置を検出する回転センサ25を設ける代わりに、電動モータ20の回転軸すなわちネジ軸20aの回転位置を検出するセンサ22’を設けても良い(図1参照)。
【0043】
又、電動モータとネジ軸間の動力伝達はギヤに限られない。例えば、図11に示すように、電動モータ720の回転軸720Aにプーリ720Bを取り付け、一方、ネジ軸720Cの端部にプーリ720Dを取り付け、両プーリ間をベルト720Eにより駆動しても良いことはもちろんである。
【符号の説明】
【0044】
10 レンジ切換弁
20 電動モータ
20a ネジ軸
21 ナット
22 コントロール軸
31 ディテントレバー
31b 凹部
32 ディテントスプリング
32a ローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動リニアアクチュエータに関し、特に、車両の自動変速機のシフトレンジを切り替えるために用いられると好適な電動リニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
旧来の自動変速機のシフトレンジを切り替えるレンジ切り替え装置は、変速機内のマニュアルバルブと、このマニュアルバルブにシフトケーブルで連結されたシフトレバーとを備えており、かかるシフトレバーをドライバーが操作することにより、シフトケーブルを介してマニュアルバルブを切り替えるようになっている。従って、シフトレバーは、ドライバーの力で無理なくシフトケーブルを動作させることができる位置に設けられる必要がある。これに対し、最近は、車室内デザインの自由度の拡大要請、同一プラットフォームからの派生車種の拡大要請などから、シフトレバーを任意の場所に設置する必要が生じている。
【0003】
このような要請に応えたレンジ切り替え装置が、特許文献1に開示されている。このレンジ切り替え装置は、モータを用いてレンジ切り替えを行うようになっており、マニュアルバルブが目標位置になったことを検知して、モータ駆動を停止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−190180号公報
【特許文献2】特開2001−182828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モータや駆動系は慣性があるので、目標位置になった時点でモータへの電力供給を中断しても、マニュアルバルブは目標位置を通り過ぎて駆動されるということがある。そこで、上記特許文献1においては、目標位置に近づいたことをセンサにて検出し、それから所定のタイミングでモータを逆転制動することで、正確に目標位置にマニュアルバルブが到達するようにしている。
【0006】
しかるに、このようにモータに制動のための逆特性の電力を供給することは、省エネに反するという問題がある。又、上記特許文献1においては、モータからディテント機構に動力を伝達するためにウォーム機構を設けているが、ウォーム機構は一般的に効率が悪いので、更に省エネに反するという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2には、マニュアルバルブを目標位置に精度良く移動させるために、目標位置に近づいたら動作させる電磁クラッチを動作させて、ローラがディテント機構の凹部に係合できるようにして、マニュアルバルブが目標位置に到達するようにしたシフト切り替え機構が開示されている。しかしながら、電力供給で動作する電磁クラッチを設けることは、省エネに反し、またコストを増大させるといった問題もある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、省エネを図りつつも、目標位置に正確に移動部材を移動させることができる電動リニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動リニアアクチュエータは、
移動部材と、
前記移動部材を、保持されるべき複数の位置のいずれかに駆動する駆動機構と、
電動モータと、
前記電動モータからの動力を前記駆動機構に伝達する動力伝達機構とを有し、
前記駆動機構が、前記移動部材における保持されるべき複数の位置にそれぞれ対応して設けられた複数の凹部と、前記凹部に選択的に係合可能となっている係合部材とを備え、
前記動力伝達機構が、ネジ軸と、ナットと、前記ネジ軸とナットとの間に配置された複数のボールとを備えたボールスクリュー機構を含み、
前記電動モータへの電力の供給を実質的に中断した状態で、前記複数の凹部のいずれかの所定位置に前記係合部材が係合していない場合には、前記係合部材は前記凹部のいずれかの所定位置に向かって付勢され、その付勢力を利用して、前記移動部材が、前記保持されるべき位置のいずれかに駆動され、そこで保持されるようになっており、前記ボールスクリュー機構は、前記付勢力の一部を前記電動モータに伝達可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動リニアアクチュエータは、移動部材と、前記移動部材を、保持されるべき複数の位置のいずれかに駆動する駆動機構と、電動モータと、前記電動モータからの動力を前記駆動機構に伝達する動力伝達機構とを有し、前記駆動機構が、前記移動部材における保持されるべき複数の位置にそれぞれ対応して設けられた複数の凹部と、前記凹部に選択的に係合可能となっている係合部材とを備え、前記動力伝達機構が、ネジ軸と、ナットと、前記ネジ軸とナットとの間に配置された複数のボールとを備えたボールスクリュー機構を含んでいるが、ボールスクリュー機構は一般的に効率が高いため、例えば前記電動モータの回転軸に前記ネジ軸を連結させて、その回転に応じて前記ナットを移動させて動力伝達を行う場合に、前記電動モータへの電力供給が停止すれば、前記ナットが移動する方向に力を受けると、前記電動モータの回転軸が回転するように動力が逆方向に伝達されることを許容する。これを利用して、前記電動モータへの電力の供給を実質的に中断した状態で、前記複数の凹部のいずれかの所定位置に前記係合部材が係合していない場合には、前記係合部材は前記凹部のいずれかの所定位置に向かって付勢されるようにすれば、その付勢力を利用して、前記移動部材が、前記保持されるべき位置のいずれかに駆動され、そこで保持されるようになる。この間、電動モータに電力は供給されないので、省エネを図ることができる。尚、「電動モータへの電力の供給を実質的に中断した状態」とは、完全に電力の供給を中断した状態の他、前記電動モータに電力の供給があっても、その出力トルクが弱いため前記係合部材が前記凹部のいずれかの所定位置に向かって付勢されることを阻止することができない状態も含む。
【0011】
更に、前記移動部材は、変速機のシフトポジションに対応して前記複数の位置に駆動され保持されると好ましい。
【0012】
又、前記駆動機構は、前記複数の凹部を設け回動可能であって、前記移動部材に連結されたディテントレバーを含み、前記ディテントレバーの回動に応じて、前記移動部材が前記保持されるべき複数の位置に駆動されるようになっていると好ましい。
【0013】
更に、前記ディテントレバーの回動角度を検出するセンサを有し、前記電動モータは、センサの出力に基づいて電力供給が制御されるようになっていると好ましい。
【0014】
又、前記電動モータは、その回転軸の回転角度に応じて電力供給が制御されるようになっていると好ましい。
【0015】
更に、前記移動部材が、前記保持されるべき複数の位置のいずれかに到達する前に、前記電動モータへの電力の供給が中断されると好ましい。
【0016】
又、前記動力伝達機構は、プラスチックギヤを使用した減速機構を含むと好ましい。
【0017】
更に、前記電動モータに対して電磁気的に制動を行なう回生制動回路を有し、電力の供給を中断した後に、この回生制動回路を前記電動モータに接続すると好ましい。
【0018】
又、前記移動部材が、前記保持されるべき複数の位置のいずれかに到達する前に、前記電動モータの減速を行うと好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態である電動リニアアクチュエータを含むシフト切り替え機構の斜視図である。
【図2】シフト切り替え機構の制御を示すフローチャートである。
【図3】本実施の形態の変形例を示す図である。
【図4】本変形例にかかるモータの制御回路図である。
【図5】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図6】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図7】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図8】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図9】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図10】ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す断面図である。
【図11】電動モータとネジ軸間の動力伝達をベルト駆動によって行う変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態である電動リニアアクチュエータを含むシフト切り替え機構の斜視図である。図1において、移動部材であるレンジ切換弁10は、スプールバルブ形式のものであって、このレンジ切換弁10には、不図示の自動変速機の制御のための基本油圧となるライン油圧が供給されている。レンジ切換弁10は、スプール10aを軸方向に操作することで、ポートを切換えて、各シフトレンジを設定するための摩擦係合装置(図示略)の係合及び解放を制御するものである。
【0021】
このレンジ切換弁10は、直流モータ(電動モータ)20により駆動される。より具体的に駆動系について説明する。不図示の車体に固定された電動モータ20の回転軸は、外周に雄ネジ溝が形成されたネジ軸20aとなっている。ネジ軸20aの周囲には、ナット21が配置されている。ナット21の内周には雌ネジ溝が形成され、ネジ軸20の雄ネジ溝とナット21の雌ネジ溝との間には、多数のボール(不図示)が転動自在に配置されている。よって、ネジ軸20aの回転は、ナット21の軸線方向移動に変換されることとなる。ネジ軸20a、ナット21,及び不図示のボールによりボールスクリュー機構すなわち動力伝達機構が構成される。
【0022】
ナット21は、コントロール軸22の一端に、一対のレバー23を介して連結されている。従って、ナット21が移動すると、コントロール軸22は、それに応じた量だけ回転するようになっている。コントロール軸22の他端側には、ディテントレバー31が一体的に回転するように取り付けられている。ディテントレバー31に植設されたピン31aは、レンジ切換弁10の先端の凹部に係合しており、ディテントレバー31の回動に応じて、レンジ切換弁10が軸線方向に移動するようになっている。尚、コントロール軸22の末端には、その回転力を測定する回転センサ25が設けられている。
【0023】
回転センサ25からの出力信号は、A/Dコンバータ51を介してCPU54に入力される。一方、車室内に配置されたシフトレバーSLのシフト位置を検出するレンジ検出器52からの信号も、CPU54に入力される。CPU54は、これらの信号を元に、図2に示す制御態様で電動モータ20に、アンプ53を介して電力を供給するようになっている。
【0024】
次に、ディテント機構30について説明する。ディテントレバー31は略扇形状を有し、その外周には複数個の凹部31bが形成されている。これら凹部31bのうちの一つの凹部に対し、一端を不図示の車体に固定されたディテントスプリング32の端部に設けられたローラ(係合部材)32aが係合可能となっている。かかる係合により、コントロール軸22の回転位置、つまりレンジ切換弁10の複数のレンジポジション(P−R−N−D−L)が決定される。凹部31bは、なめらかに深くなる形状を有し、またバネ材からなるディテントスプリング32は、取り付けられた状態で図1で下方に付勢力を発揮するので、コントロール軸22がフリーに回転するのであれば、ローラ32aは凹部31bのいずれかの底部に安定して保持されることとなる。尚、ディテントレバー31とディテントスプリング32とで、ディテント機構30すなわち駆動機構を構成する。
【0025】
コントロール軸22の回転により、ディテントレバー31を通じてレンジ切換弁10が切換えられる。このときレンジ切換弁10の各レンジポジションにおいて、ローラ32aは、ディテントスプリング32の付勢力に抗して、ディテントレバー31の凹部31bを隔てる凸部を乗り越えつつ、隣の凹部31bに係合するといった動作を繰り返す。
【0026】
次に、本実施の形態のシフト切り替え機構の基本的な制御について、図2を参照して説明する。CPU54は、ステップS101で、現在のシフトレバーSLの位置をレンジ検出器52からの信号で検出し、ステップS102で、記憶していた位置と比較して、シフトレバーSLが移動したか否かを判断する。シフトレバーSLが移動したと判断すれば、ドライバーがシフトを所望していると判断し、ステップS103で、電動モータ20への電力供給を開始する。
【0027】
更に、CPU54は、ステップS104で、シフトレバーSLのシフト位置を求め、ステップS105で、それを回転センサ25からの信号によるコントロール軸22の回転位置とを比較し、偏差を求める。CPU54は、かかる偏差に基づいて、電動モータ20への電力供給を続行するが、それによりネジ軸20a、ナット21を介してコントロール軸22が回転するので、上述したように一つの凹部31bから他の凹部31bへとローラ32aが移動しながら、ディテントレバー31が回動し、レンジ切換弁10を移動させることとなる。
【0028】
CPU54は、ステップS105で求めた偏差を設定値と比較し、設定値以上であれば、電動モータ20への電力供給を続行し、且つ偏差を繰り返し求める。一方、ステップS105で求めた偏差が設定値未満となった場合、CPU54は、ステップS107で電動モータ20への電力供給を停止する。このとき、ローラ32aがディテントレバー31の凹部31bの底部(所定位置)に位置していない場合、レンジ切換弁10は不適切な位置にある恐れがあるので、これを適切な位置に移動させる必要がある。
【0029】
レンジ切換弁10が適切な位置にない場合、凹部31bの斜面にローラ32aが位置していることになるので、ディテントスプリング32の付勢力により、ローラ32aは凹部31bの底部に向かって付勢され、それによりディテントレバー31は、レンジ切換弁10を適切なシフトポジションとする回転位置に移動しようとする。ここで、本実施の形態では、コントロール軸22と電動モータ20とは、低フリクションのボールスクリュー機構により連結されているため、電動モータ20への電力供給を停止すれば、コントロール軸22は抵抗を失って、その回転力(すなわちディテントスプリング32の付勢力の一部に相当)が電動モータ20へ伝達されるようになる。すなわち、電力供給を行うことなく、また複雑な位置制御を行うことなく、レンジ切換弁10は適切な位置に移動することとなる。従って、ここでいう「設定値」とは、ローラ32aの目標位置を底部とする特定の凹部31bの両斜面のいずれかにローラ32aが位置できるだけの、シフト位置とコントロール軸22の回転位置との間の偏差をいうものである。尚、所定位置である「底部」は、凹部31bの最深部である必要はなく、例えば最深部を挟んで一定の範囲であって、それにより位置決めされるレンジ切替弁10によって適切なシフトポジションを確保できる位置であれば足りる。
【0030】
更に、CPU54は、ステップS108で、ローラ32aの最終的に落ち着いた位置を最適なコントロール軸22の角度として記憶して、以降の制御に用いるようにしている。
【0031】
図3は、本実施の形態の変形例を示す図である。図4は、本変形例にかかるモータの制御回路図である。本変形例においては、図3に示すように、電動モータ20の回転軸20bと、ネジ軸20aとは分離されており、更に回転軸20bに結合された歯数の少ないプラスチックギヤ20cと、ネジ軸20aに結合された歯数の大きいプラスチックギヤ20dとを噛合させることで、回転軸20bの回転力を減速してネジ軸20aに伝達できるようになっている。プラスチックギヤ20c、20dが減速機構を構成する。
【0032】
電動モータ20の定格トルクが小さい場合には、減速機構を設けてトルクを増大させる必要があるが、減速機構に金属製の歯車対を設けると重量増の他にも、慣性力増大という問題が生じる。かかる場合、CPU54が、電動モータ20への電力供給を中断した際に、ナット21は慣性により直ちに停止せず、目標停止位置から大きくずれてしまう恐れがある。これに対し、本実施の形態によれば、減速機構にプラスチックギヤ20c、20dを用いることで、その慣性力を低く抑えながらも減速を達成できるようにし、それにより制動制御を容易とすることができる。
【0033】
図5〜図10は、ネジ軸に対してプラスチックギヤを取り付ける変形例を示す図である。図5に示す変形例においては、ネジ軸120aの端部に雄スプライン120mを形成し、プラスチックギヤ120cの内周に雌スプライン120fを形成し、これらスプラインを相互に係合させることで、ネジ軸120aに対してプラスチックギヤ120cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0034】
図6に示す変形例においては、ネジ軸220aの端部に、プラスチックギヤ220cをモールド成形することで、ネジ軸220aに対してプラスチックギヤ220cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0035】
図7に示す変形例においては、円筒状の台金320gの外周に、プラスチックギヤ320cをモールド成形し、更に、ネジ軸320aの端部に雄スプライン320mを形成し、台金320gの内周に雌スプライン320fを形成し、これらスプラインを相互に係合させることで、ネジ軸320aに対してプラスチックギヤ320cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0036】
図8に示す変形例においては、ネジ軸420aの端部にキー溝420mを形成し、プラスチックギヤ420cの内周にキー溝420fを形成し、これら溝間にキー420gを挿入することで、ネジ軸420aに対してプラスチックギヤ420cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0037】
図9に示す変形例においては、円筒状の台金520gの外周に、プラスチックギヤ520cをモールド成形し、更に、ネジ軸520aの端部に台金520gを嵌合圧入することで、ネジ軸520aに対してプラスチックギヤ520cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0038】
図10に示す変形例においては、円筒状の台金620gの外周に、プラスチックギヤ620cをモールド成形し、更に、ネジ軸620aの端部に台金620gを嵌合圧入した後、ピン620hを、台金620gからネジ軸620aに対して半径方向に貫通させることで、ネジ軸620aに対してプラスチックギヤ620cを相対回転不能に取り付けることができる。
【0039】
尚、プラスチックギヤの素材としては、ポリアセタールにグラスファイバーを混入させたものが好ましい。又、潤滑剤を含浸させた素材を用いてプラスチックギヤを形成しても良い。
【0040】
図4において、直流の電動モータ20の両端子は、回生制動回路を構成する電源Eまたは抵抗Rに選択的に接続されるようになっている。かかる選択は、スイッチSの操作によりなされ、スイッチSは、CPU54により行われる。本実施の形態によれば、CPU54が、スイッチSの操作により、電動モータ20への電力供給を中断した後、直ちに電動モータ20の両端子を抵抗Rに接続する。このとき、電動モータ20の両端子には電力が発生するが、それを抵抗Rで消費することで、電動モータの回転軸20bは仕事をし、すなわち回生制動を与えられることとなる。かかる回生制動を利用し、電動モータ20への電力供給が中断された後、慣性に抗して直ちにナット21の移動を停止できるようにしている。抵抗Rの代わりに、キャパシタやバッテリーなどのエネルギ回収器を用いてもよい。
【0041】
尚、CPU54は、電動モータ20の回転軸20bの回転速度を検出し、目標位置に近づいたときに減速してオーバーランせずに、丁度ディテントレバー31の凹部31bに凸部32aがとどまるように制御することも可能である。
【0042】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、コントロール軸22の回転位置を検出する回転センサ25を設ける代わりに、電動モータ20の回転軸すなわちネジ軸20aの回転位置を検出するセンサ22’を設けても良い(図1参照)。
【0043】
又、電動モータとネジ軸間の動力伝達はギヤに限られない。例えば、図11に示すように、電動モータ720の回転軸720Aにプーリ720Bを取り付け、一方、ネジ軸720Cの端部にプーリ720Dを取り付け、両プーリ間をベルト720Eにより駆動しても良いことはもちろんである。
【符号の説明】
【0044】
10 レンジ切換弁
20 電動モータ
20a ネジ軸
21 ナット
22 コントロール軸
31 ディテントレバー
31b 凹部
32 ディテントスプリング
32a ローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動部材と、
前記移動部材を、保持されるべき複数の位置のいずれかに駆動する駆動機構と、
電動モータと、
前記電動モータからの動力を前記駆動機構に伝達する動力伝達機構とを有し、
前記駆動機構が、前記移動部材における保持されるべき複数の位置にそれぞれ対応して設けられた複数の凹部と、前記凹部に選択的に係合可能となっている係合部材とを備え、
前記動力伝達機構が、ネジ軸と、ナットと、前記ネジ軸とナットとの間に配置された複数のボールとを備えたボールスクリュー機構を含み、
前記電動モータへの電力の供給を実質的に中断した状態で、前記複数の凹部のいずれかの所定位置に前記係合部材が係合していない場合には、前記係合部材は前記凹部のいずれかの所定位置に向かって付勢され、その付勢力を利用して、前記移動部材が、前記保持されるべき位置のいずれかに駆動され、そこで保持されるようになっており、前記ボールスクリュー機構は、前記付勢力の一部を前記電動モータに伝達可能となっていることを特徴とする電動リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記移動部材は、変速機のシフトポジションに対応して前記複数の位置に駆動され保持されることを特徴とする請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記複数の凹部を設け回動可能であって、前記移動部材に連結されたディテントレバーを含み、前記ディテントレバーの回動に応じて、前記移動部材が前記保持されるべき複数の位置に駆動されるようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記ディテントレバーの回動角度を検出するセンサを有し、
前記電動モータは、センサの出力に基づいて電力供給が制御されるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記電動モータは、その回転軸の回転角度に応じて電力供給が制御されるようになっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記移動部材が、前記保持されるべき複数の位置のいずれかに到達する前に、前記電動モータへの電力の供給が中断されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記動力伝達機構は、プラスチックギヤを使用した減速機構を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記電動モータに対して電磁気的に制動を行なう回生制動回路を有し、電力の供給を中断した後に、この回生制動回路を前記電動モータに接続することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記移動部材が、前記保持されるべき複数の位置のいずれかに到達する前に、前記電動モータの減速を行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項1】
移動部材と、
前記移動部材を、保持されるべき複数の位置のいずれかに駆動する駆動機構と、
電動モータと、
前記電動モータからの動力を前記駆動機構に伝達する動力伝達機構とを有し、
前記駆動機構が、前記移動部材における保持されるべき複数の位置にそれぞれ対応して設けられた複数の凹部と、前記凹部に選択的に係合可能となっている係合部材とを備え、
前記動力伝達機構が、ネジ軸と、ナットと、前記ネジ軸とナットとの間に配置された複数のボールとを備えたボールスクリュー機構を含み、
前記電動モータへの電力の供給を実質的に中断した状態で、前記複数の凹部のいずれかの所定位置に前記係合部材が係合していない場合には、前記係合部材は前記凹部のいずれかの所定位置に向かって付勢され、その付勢力を利用して、前記移動部材が、前記保持されるべき位置のいずれかに駆動され、そこで保持されるようになっており、前記ボールスクリュー機構は、前記付勢力の一部を前記電動モータに伝達可能となっていることを特徴とする電動リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記移動部材は、変速機のシフトポジションに対応して前記複数の位置に駆動され保持されることを特徴とする請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記複数の凹部を設け回動可能であって、前記移動部材に連結されたディテントレバーを含み、前記ディテントレバーの回動に応じて、前記移動部材が前記保持されるべき複数の位置に駆動されるようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記ディテントレバーの回動角度を検出するセンサを有し、
前記電動モータは、センサの出力に基づいて電力供給が制御されるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記電動モータは、その回転軸の回転角度に応じて電力供給が制御されるようになっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記移動部材が、前記保持されるべき複数の位置のいずれかに到達する前に、前記電動モータへの電力の供給が中断されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記動力伝達機構は、プラスチックギヤを使用した減速機構を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記電動モータに対して電磁気的に制動を行なう回生制動回路を有し、電力の供給を中断した後に、この回生制動回路を前記電動モータに接続することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記移動部材が、前記保持されるべき複数の位置のいずれかに到達する前に、前記電動モータの減速を行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電動リニアアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−106680(P2011−106680A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31622(P2011−31622)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【分割の表示】特願2004−51251(P2004−51251)の分割
【原出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【分割の表示】特願2004−51251(P2004−51251)の分割
【原出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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