説明

電動乗用作業車両

【課題】電装品の交換やメンテナンスを容易に行える電動乗用作業車両を提供する。
【解決手段】左右一対の後輪12,12と、後輪12,12の間で、かつ、後輪12,12に隣接して設けられるメインフレーム18と、後輪12を上方より覆うフェンダー24L,24Rと、それぞれの後輪12,12を駆動する左右一対の走行モータ31,31と、走行モータ31の回転を制御する走行モータ用ドライバE1とを備える電動ローンモア10であって、フェンダー24L,24Rを開閉自在とするとともに、フェンダー24L,24R内に収納部を形成し、収納部に走行モータ用ドライバE1を収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の駆動輪と、一対の駆動輪の間で、かつ、駆動輪に隣接して設けられるシャーシと、駆動輪を上方より覆うフェンダーと、駆動輪を駆動する走行モータと、走行モータの回転を制御する走行モータ用ドライバとを備える電動乗用作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きに対する対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0003】
しかし、このような技術開発は、農業機械の分野においてはさほど活発ではない。例えば特許文献1に示すような乗用の芝刈機の分野においては実施可能レベルの技術開発がなされていないのが現状である。したがって、電動による乗用草刈機を開発することは重要な意義を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−095716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗用草刈機を電動化するにあたり、駆動源であるモータの回転方向や回転数などを制御するモータドライバ、およびその他の電装品を配置する場所が課題となる。電装品の配置を検討するうえで考慮すべき点は、モータやバッテリーとできるだけ近い位置におくことである。モータやバッテリーとできるだけ近づけることで配線の距離を短くすることができ、構造を簡略化することができる。例えば、シャーシ上で、かつ、左右の後輪(駆動輪)の間にバッテリーを配置し、そのバッテリーの上に電装品ボックスを設け、この電装品ボックスの中にモータドライバ、およびその他の電装品を収納する方法がある。
【0006】
バッテリーは、落下物などの衝撃から保護するために、上から保護フレームなどで覆う必要がある。加えて、電気製品であるバッテリーは風雨にさらされないようにカウルなどの車体カバーで覆う必要がある。したがって、電装品をバッテリー上に載置する場合には、これも保護フレームと車体カバーで覆うこととなる。このようにバッテリー上に電装品を配置すると、電装品を交換したり、修理したりする際に、車体カバーを外し、さらには、保護フレームまでも取り外さなければならない恐れがあり、電装品の交換やメンテナンスが大がかりな作業となり、手間がかかるという問題がある。そこでこの発明は、電装品の交換やメンテナンスを容易に行える電動乗用作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため請求項1に記載の発明は、左右一対の駆動輪と、
該一対の駆動輪の間で、かつ、該駆動輪に隣接して設けられるシャーシと、
前記駆動輪を上方より覆うフェンダーと、
前記駆動輪を駆動する走行モータと、
該走行モータの回転を制御する走行モータ用ドライバとを備える電動乗用作業車両であって、
前記フェンダーを開閉自在とするとともに、該フェンダー内に収納部を形成し、該収納部に前記走行モータ用ドライバを収納することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記フェンダーの前面に外気を取り入れるための外気取入口を形成することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記フェンダーの後面に空気を排出するための外気排出口を形成することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の電動乗用作業車両において、前記フェンダーが天面と、両側面と、前面と、後面とで構成され、
前記天面の前側部分に円筒状の窪みを一体に形成して、飲料容器を保持するためのカップフォルダとし、
前記カップフォルダの前面側に、空気を取り入れる空気取入口を形成するとともに、前記カップフォルダの後面側に、前記取り入れた空気を排出する空気排出口を形成することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の電動乗用作業車両において、前記外気取入口に塵の侵入を防止するための防塵網を設けることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記フェンダーを閉じた状態でロックするロック手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電動乗用作業車両において、ロック手段が、フェンダー側に取り付けられた金属片と、機体側に設けられた磁石とで構成されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記走行モータに電力を供給するためのバッテリーと、
該バッテリーに家庭用電源を接続して充電するための給電ユニットとを備え、
該給電ユニットを前記フェンダー内に備えることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記駆動輪の回転に際し、走行面から巻き上げられる物質が前記収納部に侵入することを防止するための保護部材を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記走行モータ用ドライバへの入力電圧を規制するための電磁リレーを前記収納部に収納することを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、作業を行うための作業部と、
該作業部を駆動させるための作業モータと、
該作業モータの回転を制御する作業モータ用ドライバとを備え、
前記収納部に前記作業モータ用ドライバを収納することを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記左右一対の駆動輪に対応して前記走行モータを一対備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、左右一対の駆動輪と、一対の駆動輪の間で、かつ、駆動輪に隣接して設けられるシャーシと、駆動輪を上方より覆うフェンダーと、駆動輪を駆動する走行モータと、走行モータの回転を制御する走行モータ用ドライバとを備える電動乗用作業車両であって、フェンダーを開閉自在とするとともに、フェンダー内に収納部を形成し、収納部に走行モータ用ドライバを収納する。
【0020】
このため、走行モータ用ドライバ(電装品)を交換したり、修理したりする際に、フェンダーを開くだけで取り出すことができる。したがって、電装品の交換やメンテナンスを容易に行える電動乗用作業車両を提供することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、フェンダーの前面に外気を取り入れるための外気取入口を形成するので、フェンダー内に収納された走行モータ用ドライバが発熱しても、これを冷却することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、フェンダーの後面に空気を排出するための外気排出口を形成するので、フェンダー前面から取り入れた外気を容易にフェンダー外に排出することができ、空気の流れをスムーズにすることができる。これによって、フェンダー内の空気を効率よく冷却することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、フェンダーが天面と、両側面と、前面と、後面とで構成され、天面の前側部分に円筒状の窪みを一体に形成して、飲料容器を保持するためのカップフォルダとし、カップフォルダの前面側に、空気を取り入れる空気取入口を形成するとともに、カップフォルダの後面側に、取り入れた空気を排出する空気排出口を形成するので、冷えた飲料容器をカップフォルダに置くと、取り込まれた空気がこの飲料容器に当たって冷却され、その冷却された空気がフェンダー内に流れ込む。これによって、フェンダー内の気温を下げることができ、フェンダー内に収納された走行モータ用ドライバを効率よく冷却することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、外気取入口に塵の侵入を防止するための防塵網を設けるので、フェンダー内に塵が入り込むことを防止する。これによって、電装品である走行モータ用ドライバに塵が付着することを防止し、走行モータ用ドライバを故障しないように保護することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、フェンダーを閉じた状態でロックするロック手段を備えるので、開閉自在なフェンダーを閉じた状態で確実に保持することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、ロック手段が、フェンダー側に取り付けられた金属片と、機体側に設けられた磁石とで構成されるので、簡単な構成でロック手段を形成することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、走行モータに電力を供給するためのバッテリーと、バッテリーに家庭用電源を接続して充電するための給電ユニットとを備え、給電ユニットをフェンダー内に備えるので、給電ユニットを風雨から保護することができ、故障しないように保護することができる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、駆動輪の回転に際し、走行面から巻き上げられる物質が収納部に侵入することを防止するための保護部材を備えるので、走行面から巻き上げられる粉塵や泥はねなどから収納部内を保護することができる。したがって走行モータ用ドライバ(電装品)が収納部に収納されていても、これに粉塵や泥はねなどが付着することがなく、故障の可能性を低減することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、走行モータ用ドライバへの入力電圧を規制するための電磁リレーを収納部に収納するので、電磁リレー(電装品)を交換したり、修理したりする際に、フェンダーを開くだけで取り出すことができる。したがって、電装品の交換やメンテナンスを容易に行える電動乗用作業車両を提供することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、作業を行うための作業部と、作業部を駆動させるための作業モータと、作業モータの回転を制御する作業モータ用ドライバとを備え、収納部に作業モータ用ドライバを収納するので、作業モータ用ドライバ(電装品)を交換したり、修理したりする際に、フェンダーを開くだけで取り出すことができる。したがって、電装品の交換やメンテナンスを容易に行える電動乗用作業車両を提供することができる。
【0031】
請求項12に記載の発明によれば、左右一対の駆動輪に対応して走行モータを一対備えるので、走行モータの回転数や回転方向を操作することで、電動乗用作業車両を前進、後進、左右折、左右旋回が自在にできる。よって、ステアリング機構を設ける必要がなくなり、簡単な構成の電動乗用作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の電動乗用作業車両の一例としての、電動ローンモアの斜視図である。
【図2】その要部拡大正面図である。
【図3】その要部斜視図である。
【図4】(a)はフェンダーの取り付け状況を説明するための拡大斜視図、(b)はフェンダーの斜視図、(c)はフェンダーを裏から見たときの斜視図である。
【図5】(a)は、運転台座部と保護プレートとの位置関係を説明するための斜視図、(b)はそのさらに拡大図である。
【図6】スリットよりフェンダー内に取り込まれた外気の流れを説明するための図であり、(a)は側面図、(b)は要部平面図である。
【図7】スリットに取り付けたスクリーンの、(a)はフェンダーの前面の正面図、(b)はフェンダーの前面の裏面図、(c)はスクリーンの平面図、(d)は(b)のX矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。なお、この明細書において、「前」とは電動乗用作業車両の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ、前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれ、車両の「上下」方向を意味するものとする。図1には、この発明の電動乗用作業車両の一例としての、電動ローンモア(電動乗用作業車両)10の斜視図を示す。電動ローンモア10は、左右の前輪11、左右の後輪(駆動輪)12、運転席13、走行操作レバー14(右:14R,左:14L)、モアブレード(不図示)、モアデッキ15などを備えてなる(なお、モアブレードとモアデッキ15とを合わせて作業部と称す。)。前輪11はその中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備える。ホイールの回転中心には車軸11Aを貫通させる。ホイールは、車軸11Aに対して回転自在となっている(すなわち、前輪11は従動回転する)。
【0034】
車軸11Aは、前輪ブラケット16の下端部に取り付けられている。前輪ブラケット16は、金属板を門型状に形成してなる。前輪ブラケット16の天面には円筒部17を載置する。円筒部17の中心には回動軸を回動自在に備え、回動軸の下端は前輪ブラケット16にボルトなどで固設する。左右の円筒部17の側面には、横フレーム19の両端を溶接などで固定する。そして、横フレーム19の、左右の円筒部17,17から少し隔たった位置にはそれぞれメインフレーム(シャーシ:機体)18,18の先端を溶接などで固定する。なお、円筒部17は金属製の円筒、メインフレーム18および横フレーム19は、金属製の角筒である。また、メインフレーム18,18は左右側で対をなしており、それぞれ電動ローンモア10の前進方向に略直線的に延びて配置される。メインフレーム18,18の下面には金属板からなる床板FLを渡して、ボルトなどで下方より固設する。
【0035】
メインフレーム18の下方で、かつ、前輪11と後輪12との間にはモアデッキ15を備える。モアデッキ15は、楕円状の深皿状に形成され、モアデッキ15内には2つのモアブレード(不図示)を回転自在に備える。モアデッキ15の上面には、モアモータ(作業モータ)50を2つ載置し、その回転軸をモアデッキ15内に向けて貫通させる。そして、それぞれの回転軸の先端をモアブレードの中央部に嵌合させる。
【0036】
モアデッキ15の前部の長手方向両側には、補助車輪23を取り付ける。補助車輪23は、その中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備えてなる。ホイールの回転中心には車軸23Aを貫通させる。ホイールは、車軸23Aに対して回転自在となっている(すなわち、補助車輪23は従動回転する)。なお、芝刈りを行うときは、補助車輪23は常に走行面に接地した状態である。
【0037】
モアデッキ15は、リンク機構21を介してメインフレーム18に昇降自在に懸架されている。リンク機構21は昇降操作レバー27に連結されている。なお、図1では、モアデッキ15は下ろされた状態(補助車輪23が接地した状態)を示している。
【0038】
電動ローンモア10の前部には、フットレストFRを設ける。フットレストFRは、運転席13に向き合うように傾斜した面を有し、車幅方向に延びた三角柱状に形成される。
【0039】
運転席13の下方には不図示のバッテリーを2つ並べて平置きにする。バッテリーは、リチウムイオン電池を用いることが望ましい。詳しくは、二酸化マンガンリチウム電池、フッ化黒鉛リチウム電池、塩化チオニルリチウム電池、酸化銅リチウム電池、二硫化鉄リチウム電池、ヨウ素リチウム電池など、エネルギー密度が高く、寿命が長いものを用いることが望ましい。2つのバッテリーは直列に接続される。なお、バッテリーの上方には不図示の収納ケースを備え、バッテリーのコントローラ(電圧均等装置)などの電子機器を収納する。バッテリーのコントローラは、バッテリーの微小な電圧の変動を補正するものである。(なお、バッテリーコントローラを後述するフェンダー24L,24R内に収納してもよい。)
【0040】
そして、バッテリーを上方から覆うように運転台座部28を設ける。運転台座部28は金属板を加工して形成され、後述するように複数の部材からなる。運転台座部28の上には、座席取付部材30を介して運転席13を取り付ける。座席取付部材30は、運転席13を車体に取り付けるとともに、運転席13を運転者の好みに応じて前後方向にスライド可能とするものであり、一対のレール部材などで構成される。なお、運転台座部28の両側には、フェンダー24L,24Rを備える。フェンダー24L,24Rには、その後部が後輪(駆動輪)12の上部と干渉しないように切り欠きが設けられている。また、左右のフェンダー24L,24Rの上面には、ペットボトルなどを収納できる、カップフォルダ25が設けられている。フェンダー24L,24Rは、強化プラスチック製でカップフォルダ25などを一体に形成してなるものである。
【0041】
左右の後輪12の内側には、それぞれ後輪12を駆動させるための走行モータ31を備える。走行モータ31は、左右の後輪12,12に対して1つずつ備える。なお、走行モータ31は、インホイールモータを適用してもよい。走行モータ31のドライバは、フェンダー24L,24R内に収納される。
【0042】
走行モータ31のドライバは、走行操作レバー14の傾動量に応じて走行モータ31の回転方向および回転速度を制御する。なお、モアモータ20の回転は、走行モータ31の回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0043】
走行操作レバー14は傾動可能に設けられ、運転者が走行操作レバー14を前に倒すと走行モータ31が前進方向に回転する。一方、走行操作レバー14が後に倒されると走行モータ31は後進方向に回転する。さらに、走行操作レバー14の傾動度合いによって走行モータ31の回転速度が変化する。すなわち、走行操作レバー14を大きく前(後)に倒すと、走行モータ31が前進(後進)方向により早く回転し、走行操作レバー14を小さく前(後)に倒すと、走行モータ31が前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転席13の左右に備える走行操作レバー14L,14Rはそれぞれ左右の走行モータ31,31の回転動作に対応している。したがって、運転者は、左右の走行操作レバー14L,14Rを前後に適宜操作することで、前後進、左右折、旋回などを行うことができる。このような構成とすることで、車両の左右折、旋回のためのステアリング機構を設ける必要がなく、車両の構成を簡単にすることができる。
【0044】
図2,3にはフェンダー24Lを開けた状態を示す。フェンダー24L内には、収容部が形成され、電装部品としての、走行モータ用ドライバE1、電磁リレーE2、モアモータ用ドライバ(作業モータ用ドライバ)E3などを収容する(収容部は具体的には、保護プレート41と運転台座部側壁28LSとで形成される空間であり、フェンダー24Lで覆われる部分である)。走行モータ用ドライバE1は、左側の後輪12を駆動する走行モータ31の回転数や回転方向などを制御するためのものである。電磁リレーE2は、走行モータ用ドライバE1への入力電圧を規制するためのものである。モアモータ用ドライバE3は、モアモータ50の回転数や回転方向などを制御するためのものである。走行モータ用ドライバE1、およびモアモータ用ドライバEを運転台座部側壁28LSにボルトなどによって固定する。また、電磁リレーE2を保護プレート(保護部材)41上にボルトなどで取り付ける。保護プレート41は、後輪12が回転したとき、走行面から巻き上げられる粉塵や泥はね(物質)、あるいは、モアブレードが刈って大気中に巻き上げられた芝(物質)などが収容部に侵入することを防止するためのものである。保護プレート41上の外縁には、磁石42も取り付ける。さらに、保護プレート41の後部には、給電口ユニットESを載置する。給電口ユニットESにはプラグを備え、家庭の電源に接続した電気コードを差し込んで、車載したバッテリーを充電することができる。バッテリーとプラグとの間にはACアダプタおよび充電装置を適宜備える。なお、フェンダー24Lは、運転台座部側壁28LS上に固設されたヒンジブラケット40の回りに回動自在である。
【0045】
図4に示すように、フェンダー24Lは、天面24LU、前面24LF、外側面24LS1、内側面24LS2、後面24LBで構成され、これらを強化プラスチックなどで一体に成形してなる。天面24LUには、その前部にカップフォルダ25、後部に小物入れ26がそれぞれ形成されている。カップフォルダ25は、ペットボトルなどの飲料容器を立てて保持することができるように、円柱状に窪みが形成された保持部25Bと、飲料容器をつかんで取り出す際に、指を入れることを容易にするガイド部25Aとで構成される。ガイド部25Aの先端は、指を通しやすくするために、前面24LFの上端にかかるように形成されることが望ましい。小物入れ26は、直方体状に下向きに窪みが形成されてなる。なお、カップフォルダ25には、スリットV2〜V4を備える。詳しくは、ガイド部25Aの前端にスリット(空気取入口)V2を形成し、保持部25Bの前側面で、かつ、ガイド部25Aとの接続部両側には、スリット(空気取入口)V3をそれぞれ形成する。一方、保持部25Bの後側面には、スリットV2,V3から取り込んだ空気を排出するためのスリット(空気排出口)V4を複数備える。
【0046】
フェンダー24Lの前面24LFには空気をフェンダー24L内に取り込むためのスリット(外気取入口)V1を設ける。フェンダー24L内は、電装品による発熱で外気に比べて温度が高くなる。熱せられた空気が上昇する性質を有することから、このスリットV1は前面24LFの上部に形成され、外気をフェンダー24L内の上部に流しこむことが望ましい。なお、外気取入口はスリットV1に限定されるものではなく、あらゆる形態をとりうる。
【0047】
フェンダー24Lの外側面24LS1は、その後部に円弧状の切り欠きC1を備えてなる。この切り欠きC1は、後輪12の上部と干渉するのを避けるためのものである。なお、外側面24LS1の内側面には、金属片MLを両面テープなどで貼着する。この金属片MLは、フェンダー24Lを閉じたときに、磁石42と対面して磁力によって両者が貼りつき、フェンダー24Lを閉じた状態でロックするためのものである。
【0048】
フェンダー24Lの内側面24LS2の下部は、四角状の切り欠きC2を備えてなる。この切り欠きC2は、フェンダー24Lを閉じたときに、運転台座部側壁28LSに当接しないように、逃げとして形成されるものである。切り欠きC2の上には、一対のヒンジ27,27を備える。ヒンジ27,27は、それぞれ、フェンダー24Lの長手方向の前後に配置される。ヒンジ27は、断面視でかまぼこ状に形成され、中央に貫通孔27Aを備える。この貫通孔27Aには、ピンP1を貫通させる。貫通孔27AとピンP1との間には所定に隙間があるものとする。
【0049】
なお、スリットV1より取り入れた空気をスムーズにフェンダー24Lから排出するためのスリット(外気排出口)をフェンダー24Lの後面24LBに形成すると、いっそう効果的にフェンダー24L内を冷却することができる。このスリットの形状は、スリットV1と同様としてもよい。
【0050】
このように構成されたフェンダー24Lのヒンジ27にピンP1を貫通させて、フェンダー24Lをヒンジブラケット40に回動自在に取り付ける。
【0051】
図5に示すように、ヒンジブラケット40は、運転台座部28に設けられている。運転台座部28は、台座前部材28F、台座右部材28RS、台座左部材28LS、台座後部材28B、さらに、台座中間部材28Mなどで構成される。台座前部材28Fは、金属板を加工して形成され、前部の板状部分と、後部の梁状部分とからなる。梁状部分は、側面視で門型に形成され、両端部はメインフレーム18上に載置されて固定される。なお、台座前部材28Fと台座後部材28Bとは同一形状で対称に形成される。
【0052】
台座中間部材28Mは、側面視で門型の梁状に形成され、両端部はメインフレーム18上に載置されて固定される。
【0053】
台座前部材28F、台座後部材28B、台座中間部材28Mの一部を覆うようにして、台座右部材28RSと台座左部材28LSとを備える。台座左部材28LSは、金属板を折り曲げて形成され、上端部分28LS1は、水平となるように折り曲げて形成される。なお、台座右部材28RSと台座左部材28LSとは同一形状で対称に形成される。
【0054】
台座左部材28LSの上端部分28LS1には、一対のヒンジブラケット40を溶接などによって固設する。ヒンジブラケット40は、金属板を2回折り曲げて翼部40W,40Wを形成してなる。両翼部40W,40Wの間隔は、ヒンジ27が回動自在に収まる程度に、ヒンジ27の長さよりもわずかに長く形成される。翼部40Wの略中央には貫通孔40Aを形成する。この貫通孔40Aには、ピンP1を貫通させる。台座左部材28LSの下端部分28LS2は、メインフレーム18上に固設する。
【0055】
台座右部材28RSの上端部分28RS1にも、一対のヒンジブラケット40を備えるとともに、下端部分28RS2を反対側のメインフレーム18上に固設する。
【0056】
台座左部材28LSの下端部分28LS2には切り欠きを形成し、保護プレート41の下部41Aを係合させる。したがって、保護プレート41の下部41Aもメインフレーム18上に溶接などで固定される。
【0057】
保護プレート41は、矩形の金属板を2箇所で折り曲げて形成され、下部41A、傾斜部41B、上部41Cとからなる。傾斜部41Bと上部41Cの側端は、溶接などで台座左部材28LSに固定される。保護プレート41の下部41Aには、電磁リレーE2および磁石42を載置してボルトなどで固定する。一方、保護プレート41の上部41Cには、給電口ユニットESを載置して固定する。なお、保護プレート41は金属板で形成されたこのような形状に限定されるものではなく、後輪12が回転したとき、走行面から巻き上げられる粉塵や泥はね(物質)、あるいは、モアブレードが刈って大気中に巻き上げられた芝(物質)などが収容部に侵入することを防止することができる部材であればどのような材質、形状であってもよい。
【0058】
このように構成されたフェンダー24Lを開くには、外側面24LS1の下端部に親指を掛けて外側面24LS1の下部を外側に向けて広げるようにする。すると、金属片MLが磁石42から離れ、フェンダー24Lのロックを解除する。次に、フェンダー24Lを上方に向けて回動させて開く。そして、走行モータ用ドライバE1、電磁リレーE2、モアモータ用ドライバE3または、給電口ユニットESの保守点検や交換などを行った後、フェンダー24Lを回動して閉じる。これによって、金属片MLが磁石42と再び磁力によって吸着して、フェンダー24Lが閉じた状態でロックされる。この金属片MLと磁石42とを合わせてロック手段と称す。なお、フェンダー24Rも同様の構成であるので、開閉動作は同様である。
【0059】
フェンダー24Lを閉じ、カップフォルダ25に冷たいペットボトル飲料を保持した状態で電動ローンモア10を走行させる。すると、図6(a)(b)に実線および点線の矢印で示すように、外気がスリットV1よりフェンダー24L内に取り込まれる。この外気の流れは、カップフォルダ25に設けられたスリットV2,V3よりカップフォルダ25内に取り込まれ、冷えたペットボトル飲料BTに当たって冷却される。そして、その冷却された空気は、スリットV4より排出されて、フェンダー24L内の走行モータ用ドライバE1、電磁リレーE2、モアモータ用ドライバE3に当たってこれらを冷却するとともに、これらの周辺にある熱せられた空気を冷却しながら後方へ流れる。そして、フェンダー24Lの後面24LBの内側に当たって下方に向かい、フェンダー24Lの外側へと流出する。なお、フェンダー24Rについては、フェンダー24Lと同一の構成で対称に形成され、同様の作用を有するので、説明を省略する。
【0060】
なお、フェンダー24LのスリットV1には、図7に示すように、スクリーン(防塵網)SCを備えるようにしてもよい。この場合、フェンダー24Lの前面24LFの裏面側にL字形に屈曲した突起P2と円柱状の突起P3をそれぞれ2つずつ一体成形などで形成する。一方、スクリーンSCは枠部SC1と網部SC2とで構成され、スクリーンSCの四隅の枠部SC1上には、貫通孔H1をそれぞれ形成する。この貫通孔H1は、突起P2,P3が貫通する大きさに形成する。網部SC2は、スリットV1を通ってきた外気に含まれる塵などがフェンダー24L内に侵入するのを防止するためのものであり、通常の網戸の網程度の粗さのメッシュで形成される(網部SC2の網の目の大きさはこの例に限定されるものではない)。スクリーンSCをフェンダー24Lの前面24LFの内側に取り付けるには、まず、スクリーンSCの上側にある2つの貫通孔H1をそれぞれ2つの突起P2に通し、突起P2の屈曲部を通過したら、スクリーンSCの下側にある2つの貫通孔H1をそれぞれ2つの突起P3に通して、スクリーンSCをフェンダー24Lの内側に取り付ける。スクリーンSCが塵などで汚れて交換する際には、上述の手順と逆の手順で取り外して、汚れていないスクリーンと交換する。
【0061】
なお、上述の例では、後輪を駆動輪としたが、この発明はこれに限定されるものではなく、前輪を駆動輪としてもよい。この場合、フェンダーを前輪の上方に備え、そのフェンダー内に、電装品(走行モータ用ドライバ、電磁リレー、モアモータ用ドライバ)や給電ユニットなどを備えるようにしてもよい。
【0062】
また、スリットV1、スリットV2、スリットV3、スリットV4の形状、大きさ、形成するスリットの数は、上述の例に限定されるものではない。例えば、スリットV1〜V4に代えて、小さい円形状の貫通孔を複数形成して外気取入口としてもよい。さらに、スリットV1〜V4のそれぞれが異なる形状であってもよい。
【0063】
また、フェンダー24L,24Rにシリンダー錠を備え、フェンダー24L,24Rを閉じたときに、キーを用いてフェンダー24L,24Rと保護プレート41とをロックできるようにしてもよい。このようにすることで、電装品の盗難防止やいたずら防止に寄与する。また、キーは、運転時のスタートキーと兼用にすると、別途、キーを設ける必要がないし、運転者が複数本のキーを持ち歩かずにすむので好適である。
【0064】
上述の例では、作業部としてモアデッキとモアブレードを備える電動ローンモアについて説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、作業部として、ロータリー作業機を備えるトラクタに適用してもよい。また、駆動輪の両輪のそれぞれに専用の走行モータを備えることに限定されるものではなく、1つの走行モータで両方の駆動輪を駆動するようにしてもよい。さらに、作業部の駆動源は、モータに限定する必要はなく、エンジンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明の電動乗用作業車両は、芝刈りをするための電動ローンモアに限定されるものではなく、例えば、コンバイン、田植機、トラクタなどの農業機械、バックホー、ブルドーザーなどの建設機械などあらゆる作業に用いる電動乗用作業車両に適用しうる。
【符号の説明】
【0066】
10 電動ローンモア(電動乗用作業車両)
11 前輪
12 後輪(駆動輪)
13 運転席
18 メインフレーム(シャーシ)
24L,24R フェンダー
24LU 天面
24LS1 外側面
24LS2 内側面
24LB 後面
25 カップフォルダ
27 ヒンジ
31 走行モータ
40 ヒンジブラケット
41 保護プレート
42 磁石(ロック手段)
50 モアモータ(作業モータ)
E1 走行モータ用ドライバ(電装品)
E2 電磁リレー(電装品)
E3 モアモータ用ドライバ(電装品)
ES 給電ユニット
ML 金属片(ロック手段)
SC スクリーン(防塵網)
V1 スリット(外気取入口)
V2,V3 スリット(空気取入口)
V4 スリット(空気排出口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の駆動輪と、
該一対の駆動輪の間で、かつ、該駆動輪に隣接して設けられるシャーシと、
前記駆動輪を上方より覆うフェンダーと、
前記駆動輪を駆動する走行モータと、
該走行モータの回転を制御する走行モータ用ドライバとを備える電動乗用作業車両であって、
前記フェンダーを開閉自在とするとともに、該フェンダー内に収納部を形成し、該収納部に前記走行モータ用ドライバを収納することを特徴とする、電動乗用作業車両。
【請求項2】
前記フェンダーの前面に外気を取り入れるための外気取入口を形成することを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項3】
前記フェンダーの後面に空気を排出するための外気排出口を形成することを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項4】
前記フェンダーが天面と、両側面と、前面と、後面とで構成され、
前記天面の前側部分に円筒状の窪みを一体に形成して、飲料容器を保持するためのカップフォルダとし、
前記カップフォルダの前面側に、空気を取り入れる空気取入口を形成するとともに、前記カップフォルダの後面側に、前記取り入れた空気を排出する空気排出口を形成することを特徴とする、請求項2に記載の電動乗用作業車両。
【請求項5】
前記外気取入口に塵の侵入を防止するための防塵網を設けることを特徴とする、請求項2に記載の電動乗用作業車両。
【請求項6】
前記フェンダーを閉じた状態でロックするロック手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項7】
前記ロック手段が、フェンダー側に取り付けられた金属片と、機体側に設けられた磁石とで構成されることを特徴とする、請求項6に記載の電動乗用作業車両。
【請求項8】
前記走行モータに電力を供給するためのバッテリーと、
該バッテリーに家庭用電源を接続して充電するための給電ユニットとを備え、
該給電ユニットを前記フェンダー内に備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項9】
前記駆動輪の回転に際し、走行面から巻き上げられる物質が前記収納部に侵入することを防止するための保護部材を備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項10】
前記走行モータ用ドライバへの入力電圧を規制するための電磁リレーを前記収納部に収納することを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項11】
作業を行うための作業部と、
該作業部を駆動させるための作業モータと、
該作業モータの回転を制御する作業モータ用ドライバとを備え、
前記収納部に前記作業モータ用ドライバを収納することを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項12】
前記左右一対の駆動輪に対応して前記走行モータを一対備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−106522(P2012−106522A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254882(P2010−254882)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】