電動機の駆動装置並びに機器
【課題】デッドタイムによる電圧や電流波形歪みと電流歪みによるトルクリップルに基づく振動や騒音を抑制可能にし、小型・低コストを実現する。
【解決手段】交流電源を小容量リアクトル4経由で整流し、小容量コンデンサー6で平滑して変動する直流電源を得る。インバーター制御手段8は、周波数指令とゼロクロス検出手段9の出力と母線電圧検出手段10の出力と電流検出手段11の出力から電圧指令を算出する電圧指令演算手段13と、母線電圧検出手段10の出力と電流検出手段11の出力からスイッチング手段のアーム短絡防止用のデッドタイムに起因する電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧を補償するための補償量を生成するデッドタイム補償手段14と、電圧指令演算手段13の電圧指令をデッドタイム補償手段14の出力に基づいて補正する電圧指令補正手段15と、電圧指令補正手段15から得られたPWM信号を発生するPWM信号発生手段16とを備える。
【解決手段】交流電源を小容量リアクトル4経由で整流し、小容量コンデンサー6で平滑して変動する直流電源を得る。インバーター制御手段8は、周波数指令とゼロクロス検出手段9の出力と母線電圧検出手段10の出力と電流検出手段11の出力から電圧指令を算出する電圧指令演算手段13と、母線電圧検出手段10の出力と電流検出手段11の出力からスイッチング手段のアーム短絡防止用のデッドタイムに起因する電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧を補償するための補償量を生成するデッドタイム補償手段14と、電圧指令演算手段13の電圧指令をデッドタイム補償手段14の出力に基づいて補正する電圧指令補正手段15と、電圧指令補正手段15から得られたPWM信号を発生するPWM信号発生手段16とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の駆動に利用される電動機の駆動装置並びに、電動機の駆動装置を用いた冷凍空調装置、ヒートポンプ給湯器、電気掃除機、手乾燥機、換気送風装置などの機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍空調装置の電動機駆動等に用いられる3相電圧形PWMインバーターのスイッチング素子のアーム短絡を防止するため、スイッチング素子のターンオフ時間も包含した短絡防止時間(デッドタイム)が挿入される。この短絡防止時間に起因するインバーターのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧を補償するためには、該PWM電圧指令に加算される方形波状の補償電圧の極性を、該インバーターの出力電流が零クロス点を通過する時点に同期して変更する方法が一般的に行われている。しかしながら、従来のデッドタイム補償方法によると、該インバーターの出力電流のゼロクロス点でステップ状に補償電圧の極性を変更しているため、該零クロス点近傍での出力電流のリプルが増大し、このリプルに起因する回転むらが大きくなるという問題があった。
この問題を解決するため、例えば、比較器を用いてインバーター出力電流を各相毎に基準値と比較して出力電流の零クロス点近傍での比較結果(誤差)の大きさに応じた時間幅のパルス電圧を発生させ、補償量演算部によりPWM周波数とデッドタイムと直流電源の電圧に基づいてデッドタイム補量(補償量振幅)を演算させ、比較器出力と補償量演算部の出力を乗算器により乗じ、乗算器の出力を積分器により積分して台形状の波形の補償量信号を生成し、この補償量信号をPWM電圧指令演算器からの指令値に加算し、PWMパルス演算器でこの加算結果にPWM演算後デッドタイムを付加してインバーター主回路に駆動信号を出力するデッドタイム補償方法が開示されている。この構成により、上記インバーター出力電流が零クロス点を通過するのに伴って行われる補償電圧の極性変更を、上記出力電流の零クロス点以前の変更開始時点より、所定の勾配で行うことが可能となり、上記零クロス点での出力電流のリプル増大の問題を解消することができる(例えば特許文献1参照)。
また、デッドタイム補償電圧を、モーターの回転数から定まるインバーターの電気周波数における奇数次周波数の交流成分とすることを特徴とする技術が開示されている。この技術を用いることにより、小容量のリアクトル及び小容量のコンデンサーで構成されたインバーターにおいて、デッドタイムによるインバーター出力電圧誤差による電圧及び電流歪みを解消できるだけでなく、IECやJISなどに定められている高調波規格等に適合させることができる(例えば特許文献2参照)。
単相交流電源を入力とする単相ダイオード全波整流回路と、これに接続される従来のダイオード全波整流回路用の平滑コンデンサーの1/100程度の小容量平滑コンデンサーと、制御用PWMインバーターとモーターとで構成された制御回路とによって、あらかじめモーターのトルクを電源の2倍の周波数で制御することにより、ダイオード全波整流回路の入力力率と波形の改善を実現するモーター駆動用インバーターの制御装置技術が開示されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3738883号公報(第2頁〜第4頁、図1、図2)
【特許文献2】特開2007―104813号公報(第8頁〜第9頁、図6)
【特許文献3】特開2002―51589号公報(第4頁〜第5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来のデッドタイム補償装置は、以上のように構成されているので、台形波形のデッドタイム補償電圧に高調波が残り、特定次数調波が騒音として問題となることがあった。
また、低騒音駆動が要求される場合にはPWM周波数付近の騒音レベルが高く、特にPWM周波数を可聴領域に設定せざるを得ない場合については使用上の制約が大きかった。 また出力電流の大きさにより零クロス近辺の補償電圧の勾配が変化するので、特定次数調波の比率が変わり、騒音が問題となるモーター駆動に関しては運転領域が限定されていた。
また、比較器を利用するため、外来ノイズに対しての耐力が弱く、補償電圧の算出に積分器を含むため、オーバーフロー等の問題があり、簡易なシステムでの実現が難しいという問題があった。
また、特許文献2に開示されている技術では、小容量のリアクトルや小容量のコンデンサーで構築されているインバーターでは母線電圧が脈動するため、母線電圧がゼロ付近でデッドタイム補償を行った場合、回生電圧により母線電圧が昇圧し、インバーターの耐圧破壊を招く恐れがあり、またデッドタイムによる電圧誤差の影響は電流の極性により決まるため、電流の位相が正確に把握できないと、不要な補償が行われることによる電圧・電流波形の歪みが発生し、騒音の発生や制御が不安定になるなどの課題があった。
また、特許文献3に開示されている技術では、低速や高キャリア周波数でインバーターを動作させると、インバーターのスイッチング素子の短絡を防止するためのデッドタイムの影響により、電圧指令値と実際にインバーターにて出力される電圧に誤差が生じるため電流が歪むことによるトルクリップルが発生し、電動機から騒音や振動が発生するなどの課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、小容量のリアクトルや小容量のコンデンサーにより構成されたインバーターにおいても、デッドタイムによる電圧や電流波形歪みを抑制することができ、小型・低コストだけでなく電流歪みによるトルクリップルに起因する振動や騒音を抑制可能な電動機の駆動装置並びに電動機の駆動装置を用いた機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電動機の駆動装置は、
交流電源をリアクトルを介して全波整流する整流手段と、
前記整流手段の出力を平滑して前記交流電源の略二倍の周波数で脈動する母線電圧を出力するコンデンサーと、
前記コンデンサーから出力された母線電圧を電源として、電動機に電圧を印加するスイッチング手段を有するインバーターと、
このインバーターを制御するインバーター制御手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検出するゼロクロス検出手段と、
前記母線電源の電圧を検出する母線電圧検出手段と、
前記電動機に流れる二相以上の電流を検出する電流検出手段と、
前記電動機の回転位相を検出する回転位相検出手段とを備え、
前記インバーター制御手段は、周波数指令と前記ゼロクロス検出手段の出力と前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力と前記回転位相検出手段の出力に基づいて電圧指令を算出する電圧指令演算手段と、
前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力に基づいて前記スイッチング手段のアーム短絡防止用のデッドタイムに起因する、前記電圧指令演算手段からの電圧指令と前記インバーターからの出力電圧との間の誤差電圧を補償するための補償量を生成するデッドタイム補償手段と、
このデッドタイム補償手段の出力に基づいて前記電圧指令演算手段の出力を補正する電圧指令補正手段と、
この電圧指令補正手段によって得られたPWM信号を発生するPWM信号発生手段と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電動機の駆動装置によれば、小容量のリアクトルや小容量のコンデンサーにより構成された小型・低コストなインバーターにおいても、デッドタイムによる電圧や電流波形の歪みを抑制することができるため、トルクリップルによる不快な騒音を低減できるだけでなく、母線電圧がゼロ近辺におけるデッドタイム補償を抑制することにより回生電圧の影響を抑制することが可能となり、信頼性の高い電動機の駆動装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係る電動機の駆動装置の構成を示す図である。
【図2】従来のデッドタイム補償を表す図である。
【図3】PWM信号発生手段の動作を示す図である。
【図4】実施の形態1におけるデッドタイム補償の動作を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る電動機の駆動装置の構成を示す図である。
【図6】電動機の回転に対する座標関係を示す図である。
【図7】デッドタイム補償手段14の構成を示す図である。
【図8】dq軸座標の位相と電流ベクトルの位相との位相差を示す図である。
【図9】電動機の回転位相θに対する、UVW相の電流と、デッドタイム補償量との関係を示す図である。
【図10】デッドタイム補償手段14のもう一つの構成を示す図である。
【図11】デッドタイム補償の一般的な電圧指令補正値を示す図である。
【図12】実施の形態2におけるデッドタイム補償の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電動機の駆動装置を示す図である。図1に示すように電動機システムは、交流電源1、本発明に係る電動機の駆動装置2、電動機3から構成されている。電動機の駆動装置2は交流電源1からの電源を供給することで電動機3を駆動する。
また、電動機の駆動装置2は、一般的に使用されているリアクトルよりも十分に小容量のリアクトル(以後単にリアクトルと称す)4、整流手段5、一般的に使用されているコンデンサーよりも十分に小容量のコンデンサー(以後単にコンデンサーと称す)6、インバーター7、インバーター制御手段8、ゼロクロス検出手段9、母線電圧検出手段10、電流検出手段11、および磁極位置検出手段12を有する。
【0010】
交流電源1はリアクトル4を介して整流手段5により全波整流され、コンデンサー6により平滑されて、インバーター7の電源である母線電圧を生成する。ここで、インバーター7の電源はコンデンサー6の容量が一般的に使用されているものよりもかなり小さいため、交流電源1を略全波整流した波形(交流電源の略2倍の周波数で変動する電圧波形または電流波形)となる。
【0011】
インバーター7は、スイッチング手段としてIGBTやMOSFET等のスイッチング素子を有し、各スイッチング素子には並列に接続された環流ダイオードを備え、マイコンやDSP、論理回路等の電子回路で構成されるインバーター制御手段8によりインバーター7を制御して電動機3に電圧を供給させる。
【0012】
ゼロクロス検出手段9は、交流電源1のゼロクロスを検出し、ゼロクロス信号ZCをインバーター制御手段8へ出力する。ゼロクロスを検出する方法としては、例えば交流電源1が負から正に切り替わった際に、HIGH(5V)、正から負に切り替わった際にLOW(0V)とし、インバーター制御手段8を構成するマイコン等に取り込むことで簡単に検出できる。なお、HIGHやLOWが逆となっても問題なく、また電圧も0Vや5Vに限らずゼロクロスを検出できることはいうまでもない。
【0013】
母線電圧検出手段10は、コンデンサー6により平滑された電圧である母線電圧Vdcを検出し、インバーター制御手段8へ出力する。母線電圧Vdcを検出する方法としては、分圧抵抗などを用いて低電圧化してインバーター制御手段8を構成するマイコン等に取り込み、マイコン等の内部で低電圧化した分を考慮して換算することで簡単に母線電圧を検出することが可能となる。
【0014】
電流検出手段11は、電動機3に流入するU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwのうち少なくとも2相以上を検出して、インバーター制御手段8へ出力する。電流の検出方法としては、一般的な電流検出素子であるACCTやDCCTや、インバーター7の電源側に流れる電流を検出して三相の電流を復元する方法や、インバーター7の下側スイッチング素子に流れる電流を検出する方法などが挙げられ、いずれもインバーター制御手段8を構成するマイコン等に取り込むことで、電流を検出できる。ここでIuとIwの2相のみを検出した場合、検出しなかった電流Ivはキルヒホッフの法則
Iu+Iv+Iw=0 から、
【0015】
【数1】
で求めることができる。
【0016】
磁極位置検出手段12は、電動機3の回転子の磁極位置である回転位相θを検出し、インバーター制御手段8へ出力する。磁極位置の検出方法に関しては、ロータリエンコーダやレゾルバー、ホールセンサー等により検出が可能である。また、図示していないが、電流検出手段11の出力と、電動機の特性より得られる電圧電流方程式等に基づいて磁極位置を検出することも可能であり、位置センサーレス制御として広く用いられている方法を用いることも可能である。なお、磁極位置検出手段12は、回転位相検出手段を構成する。
【0017】
次にインバーター制御手段8について説明する。インバーター制御手段8は電圧指令演算手段13、デッドタイム補償手段14、電圧指令補正手段15、PWM信号発生手段16を備える。
【0018】
電圧指令演算手段13は外部から入力した周波数指令、磁極位置検出手段の出力である磁極位置(回転位相)θ、ゼロクロス検出手段の出力であるゼロクロス信号ZC、母線電圧検出手段の出力である母線電圧Vdc、電流検出手段の出力であるUVW相の電流Iu、Iv、Iwを入力として、UVW相の電圧指令であるVu*、Vv*、Vw*を出力する。UVW相の電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を得る方法としては、例えば特許文献3に示すような方法がある。
【0019】
デッドタイム補償手段14は、母線電圧検出手段の出力である母線電圧Vdc、電流検出手段の出力であるUVW相の電流Iu、Iv、Iwを入力として、UVW相の電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwを得る。
【0020】
ここで、UVW相の電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwの求め方について説明する。デッドタイムに基づく電圧指令値と実際に出力される電圧との誤差ΔVは、流れる電流の極性によって変化するが、絶対値としてはデッドタイムTdとキャリア周波数fcと母線電圧Vdcを用いて次式(1)で表される。
【0021】
【数2】
電流の極性を考慮すると、例えばU相電圧指令補正値ΔVuはU相電流Iuの極性を用いて次式(2)で得られる。
【0022】
【数3】
ただし、sign関数は次式(3)の通りである。
【0023】
【数4】
ここで、xはIu、Iv、Iwのいずれかを指す。
同様にV相、W相の電圧指令補正値ΔVv、ΔVwについては次式(4)及び(5)となる。
【0024】
【数5】
【0025】
以上により、電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwを求めることが可能となる。
説明を簡単にするため、母線電圧Vdcが一定の場合の電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwを図2に示す。(なお、後述するが、本発明では、母線電圧Vdcは一定ではなく脈動するので、本発明で取り扱う電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwは図2とは異なるものとなる。)
【0026】
次に電圧指令補正手段15は、電圧指令演算手段13の出力であるVu*、Vv*、Vw*及びデッドタイム補償手段14の出力であるΔVu、ΔVv、ΔVwの出力を入力として補正済み電圧指令値Vu**、Vv**、Vw**を作成し、PWM信号発生手段16へ出力する。
【0027】
補正済み電圧指令値Vu**、Vv**、Vw**は、次式(6)〜(8)を用いることで得ることが可能である。
【0028】
【数6】
【0029】
PWM信号発生手段16は、補正済み電圧指令値Vu**、Vv**、Vw**を入力として、インバーター7のスイッチング素子を駆動するPWM信号UP、UN、VP、VN、WP、WNを出力する。
【0030】
図3はPWM信号発生手段16のU相における動作を示す図である。補正済みのU相電圧指令値Vu**は周波数fcのキャリアと比較され、補正済みのU相電圧指令値Vu**がキャリアよりも大のときにHIGH、小の場合にLOWとしてU相上アームPWM信号UPを出力する。U相下アームPWM信号については、UPと逆論理の信号を出力する。なお、インバーター7の種類によってはHIGHとLOWを逆にする必要があるが、基本的な動作は変わらないことはいうまでもない。
【0031】
さらに、通常UPとUNが同時にオンしないように、UPもしくはUNのPWM信号をデッドタイムの時間分削って出力することで同時ONによるインバーター7の短絡破壊を防止しているが、電圧指令と実際に出力される電圧に誤差が生じ、電動機3に印加させる電圧が歪むことで流れる電流も歪むため、トルクリップルが発生し、このトルクリップルによる騒音や振動が発生するという問題があるだけでなく、制御が不安定になるなどの課題がある。そのため、前述の通りデッドタイム補償手段14等により電圧指令を補償することで、上記の問題を解決することが可能となる。
【0032】
ただし、前述の通り、母線電圧Vdcは略全波整流した波形(脈動波形)となるため、式(1)から分かるように、電圧指令補正値ΔVは母線電圧Vdcの脈動周波数と同一ないし、交流電源1の周波数の略2倍の周波数で脈動させるように図4に示すような補正をすることができるので、脈動する母線電圧Vdcとほぼ同一のものにすることができ、従来より正確なデッドタイム補償が可能となり、制御性が良くなるだけでなくデッドタイムによる電圧誤差に起因する振動や騒音を低減することが可能となり、信頼性の高い電動機の駆動装置を得ることができる。
【0033】
ただし、回転数が小さくなり相電流が小さくなる場合には、式(2)および式(4)、式(5)を用いてデッドタイム補償を行う場合、各相の電流のゼロクロス付近は正負の判定が難しく、各電圧指令補正値の正負の符号が定まらないため、正確なデッドタイム補償ができず、ゼロクロス付近で制御が不安定になる恐れがある。
【0034】
そこで、デッドタイム補償手段14は式(9)〜式(11)に示すように、電圧指令補正値に電流値に応じた割合K(x)(このxは、Iu、Iv、Iwのいずれかを示す)を乗ずることで、電流が小となるゼロクロス付近でも安定した動作が可能となる。
【0035】
【数7】
K(x)については、例えば電流値が0Aから最大定格の20%程度までは0〜100%と段階的に変化させ、それ以上の電流値になったら100%の電圧指令補正値にするなどの方式や、0Aから最大定格の20%程度までは0%で、それ以上は100%にする方法などが挙げられる。また、電流値以外にも回転数で電圧指令補正値の割合を変化させても何ら問題ないことは言うまでもない。この回転数で電圧指令補正値の割合を変化させる場合も電流で制御する方法と同じ方法を適用することができる。
【0036】
以上のデッドタイム補償手段はマイコン(マイクロコンピュータ)やDSP(Digital Signal Processor)、電子回路等で実現可能である。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態1では、電流の極性に応じてデッドタイム補償する方式について説明した。
本発明の実施の形態2では、各相の電流のゼロクロスを正確に検出して、精度の良いデッドタイム補償を行う方法について説明する。
図5は、本発明の実施の形態2に係る電動機の駆動装置の構成を示す図である。
実施の形態2は、デッドタイム補償手段14に回転位相θを入力している以外は何ら変わりないため、実施の形態1と同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
ここで、図6は、電動機3の解析モデル図である。図6には、U相、V相、W相の電機子巻線固定軸が示されている。17は、電動機3の回転子を構成する永久磁石である。永久磁石17が作る磁束と同じ速度で回転する回転座標系において、永久磁石17が作る磁束の方向をd軸にとり、d軸に対応する制御上の推定軸をγ軸とする。また、図示していないが、d軸から電気角で90度進んだ位相にq軸をとり、γ軸から電気角で90度進んだ位相に推定軸であるδ軸をとる。d軸とq軸を座標軸に選んだ回転座標系の座標軸をdq軸と呼ぶ。インバーターによる制御上の回転座標系はγ軸とδ軸を座標軸に選んだ座標系であり、その座標軸をγδ軸と呼ぶ。
【0039】
dq軸は回転しており、その回転速度である電動機3の回転速度を電動機回転速度ω と呼ぶ。γδ軸も回転しており、その回転速度をインバーター回転速度ω1と呼ぶ。また、ある瞬間の回転しているdq軸において、d軸の位相をU相の電機子巻線固定軸を基準として電動機回転位相θにより表す。同様に、ある瞬間の回転しているγδ軸において、γ軸の位相をU相の電機子巻線固定軸を基準としてインバーター回転位相θ1により表す。そうすると、d軸とγ軸との軸誤差Δθは、
【0040】
【数8】
で表される。
【0041】
電動機3の回転子の磁極位置を検出するセンサーを有する場合、正確な磁極位置が検出できるためdq軸で議論することが可能となる。しかし磁極位置を検出するセンサーが無い場合は、電動機3に流れる電流により磁極位置をγδ軸として推定する方法が一般的に用いられるが、dq軸とγδ軸に軸誤差Δθが生じる。しかし、実際の運転では軸誤差Δθが小さい所で運転されることもあり、dq軸とγδ軸は同一と捉えることが可能である。そのため、以下特別なことが無い限り、dq軸として説明を行うが、γδ軸においても同様の構成で実現できることは言うまでもない。また、その場合には電動機回転速度ωをインバーター回転速度ω1、電動機回転位相θをインバーター回転位相θ1として置き換えてよいことは言うまでもない。
【0042】
図7はデッドタイム補償手段14の動作を示すブロック図である。デッドタイム補償手段14は、座標変換手段18、位相差検出手段19、補償量演算手段20を備える。
【0043】
座標変換手段18は、電流検出手段11により出力された電流(Iu、Iv、Iw)を、磁極位置検出手段12より得られた回転位相θを用いて、式(12)(この式は三相電流から二相電流へ変換する機能と、変換によって得られた二相電流を回転座標へ変換する機能の両方を併せもつ)によりd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換して出力する。
【0044】
【数9】
【0045】
ここで、磁極位置の位相である回転位相θと相電流の位相との位相差Δθiを位相差検出手段19にて求める方法について説明する。図8に示すように、電流ベクトルIと磁極軸であるd軸との位相差θiはId及びIqを用いて次式(13)で得ることができる。
【0046】
【数10】
【0047】
よって、回転位相θと電流位相差Δθiが求まるので、補償量演算手段20にて式(14)〜式(16)を用いることで、各相電流のゼロクロス付近においても安定性の高い電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwを得ることができる。ただし、電流位相θiは
【0048】
【数11】
とする。
【0049】
【数12】
【0050】
図9は上記の関係を具体的に示したものであり、例えば、θiが0°の場合、図9に縦線で示すようにUVWの各相のデッドタイム補償量はΔVu:正、ΔVv:負、ΔVw:負が得られる。
【0051】
なお、電流位相差Δθiはdq軸上の電流Id及びIqだけでなく、三相二相変換手段である式(17)から得られる固定座標系(αβ座標系)の電流Iα及びIβを用いて式(18)にて求めることも可能である。
【0052】
【数13】
【0053】
電流位相差Δθiや回転位相θなどは電動機3の回転方向や、回転座標系の取り方により正負の符号が反転するが、システムに応じて正負の符号を使い分けることで同様の方法でデッドタイム補償を行えることは言うまでもない。また、電流位相差Δθiはシステムによっては変動することもあるため、その場合にはLPF(Low Pass Filter)を用いて変動する成分を抑制しても良い。
【0054】
以上の様に電流位相差Δθiを用いて電圧指令補正値の正負を判断することにより、相電流の正負の判断が付けづらいゼロクロス付近におけるデッドタイム補償を精度良く行うことが可能となり、信頼性の高い電動機の駆動システムが得られるだけでなく、デッドタイムによる電圧誤差に起因するトルクリップルにより発生する騒音や振動を低減することができ、低騒音低振動な電動機の駆動装置を得ることが可能となる。
【0055】
ここで、図7に示すデッドタイム補償手段14の場合、図2や図4からも分かるように電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwは複数の高次高調波成分を含んだ波形となっており、これらの高次高調波成分が電動機3から音となって発生する事があり、また、交流電源1に流れる電流に高調波成分が発生し、JISやIECに定められる高調波規格に適合できなくなる恐れがある。
【0056】
そこで、電圧指令補正値の基本波周波数のみを用いることで、高次高調波成分の影響を低減して、上記問題を解決可能なデッドタイム補償を行う方法について説明する。構成としては、図10に示すように補償量演算手段20に代えて、補償量特性次数成分演算手段21を備える。補償量特性次数成分演算手段21は、補償量演算手段20の機能に加えて、電圧指令補正値の基本波周波数のみを用いてデッドタイム補償を行う機能を併せ持つ。
【0057】
一般的なデッドタイム補償は図2に示すように、母線電圧Vdcが一定であれば電圧指令補正値は矩形波状となるため、この電圧指令補正値を基に基本波成分の抽出方法について説明を行う。
【0058】
図11はθiで回転する場合のU相電圧指令補正値ΔVuである。この波形をフーリエ級数展開にて角周波数成分に展開すると、次式(19)となる。
【0059】
【数14】
【0060】
同様にΔVuに比べ±120°位相の異なるΔVv、ΔVwは次式(20)及び(21)となる。
【0061】
【数15】
【0062】
よって式(19)〜(21)において、n=1を代入することにより基本波成分のみを抽出すると、電圧指令補正値はそれぞれ、式(22)〜(24)となり、求めた電流位相θiに基づいてデッドタイム補償を行うことにより、高調波成分の少なく低騒音化が可能なデッドタイム補償を行うことができる。
【0063】
【数16】
【0064】
ここで、小容量のコンデンサー6を用いた場合、母線電圧Vdcは交流電源1の周波数の略2倍で脈動するが、補償量特性次数成分演算手段21は、検出した母線電圧Vdcを式(22)〜(24)に適用する。これにより、図12に示すように電流と略相似形な電圧指令補正値が得られ、矩形波状のデッドタイム補償に比べて高調波成分の少なく、騒音の発生が小さな電動機の駆動装置が得られる。
【0065】
さらに、基本波成分以外に5倍の周波数(式(18)〜(20)において、n=3を代入することで得られる周波数)や7倍(式(18)〜(20)において、n=4を代入することで得られる周波数)の周波数と言った3の倍数の周波数(式(18)〜(20)において、n=2あるいはn=5などを代入することで得られる周波数)を除く奇数倍の電圧指令補正値成分を基本波成分に加えてデッドタイム補償を行うことにより、更に電圧誤差の小さく、信頼性の高い電動機の駆動装置を得ることが可能となる。
なお、3の倍数の周波数を除く理由は以下の通りである。UVW相の電圧はそれぞれ互いに位相が2π/3ずつ異なっており、UVW相の電圧の3の倍数の高調波については、その位相のずれも3の倍数になるため、2πの倍数ずつ異なることになり、結果としてUWW相電圧の位相が同一になる。位相が同一で振幅も同一であるため、UVW相の3の倍数の高調波はすべて同一信号となり、線間電圧はゼロとなる。従って、この3の倍数の周波数成分はデッドタイム補償に寄与しない無意味なものとなるため、除くのである。
【0066】
ただし、小容量のコンデンサー6を用いた場合、母線電圧が略ゼロとなる区間で仮にデッドタイム補償を行うと、不必要なPWMが出力され、モーターの回転エネルギーがインバーターに戻ってくる恐れがあり、制御が不安定になるだけでなく、回転エネルギーによる回生によりインバーターが破壊する恐れがあるため、母線電圧がゼロとなる付近ではデッドタイム補償を行わないなどの対策を行うことで前述の問題を回避できる。この場合、ゼロクロス検出手段9の出力を元に、母線電圧のゼロクロスを判断するようにしても良い。
【0067】
また、少容量のコンデンサー6を用いると、母線電圧が交流電源1の略2倍の周波数で大きく脈動するため、電圧指令補正値を求める際に母線電圧のピーク値を検出し、この時の電圧指令補正値が最大となる値を記憶しておき、ゼロクロス検出手段9の出力に基づいて、交流電源1の略2倍の周波数で電圧指令補正値を脈動させるように制御しても良い。
これにより、電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwによって補正された補正済み電圧指令値Vu**、Vv**、Vw**を脈動する母線電圧Vdcとほぼ同じものとすることができる。
【0068】
実施の形態3.
以上の実施の形態1及び2で説明した電動機の駆動装置の活用例として、冷蔵庫や空気調和機などの冷凍空調装置、ヒートポンプ給湯器、電気掃除機、手乾燥機などが挙げられる。
【0069】
冷蔵庫や空気調和機に代表される冷凍空調装置やヒートポンプ給湯器は、10年を超える長期の使用が前提となっており、寿命部品である電解コンデンサー6は長寿命の阻害となっている。そこで、本発明の小容量のコンデンサー6を用いた電動機の駆動装置を用いることで、長寿命化を図ることが可能となる。
【0070】
また、本発明のデッドタイム補償を空気調和機やヒートポンプ給湯器の室外ファンモーターの駆動に用いることにより、低騒音化を図ることが可能となる。
【0071】
さらに、電気掃除機に本発明を適用することにより、これまでインバーターを駆動する際に必須であった大型部品であるリアクトルや電解コンデンサーを小型化することが可能となり、重量が軽く、ユーザーの労力を低減できる電気掃除機を提供することが可能となる。
【0072】
また、インバーターにて電動機を駆動する場合、電動機の最大回転数は
60000rpm÷(極数÷2) 以上である。例えば、インバーターにて2極の電動機の場合60000rpm、4極の電動機の場合は30000rpmを超えるような回転数で電動機を駆動することで、同一風量や静圧を得るための羽根やモーターの大きさを小さくすることができ、小型軽量な電気掃除機を得ることができる。ただし、電動機の安定した駆動のためには、電気角1周期中に少なくとも10回は制御が行われる回転数を上限とすることが望ましい。
【0073】
さらに、手乾燥機に本発明を適用することにより、リアクトルや電解コンデンサーを小容量のリアクトルやコンデンサーに置き換えることができるため、小型・軽量化が図れる。また、インバーターにより高速回転することにより、大風量や高静圧を得ることができるため、より自由度の高い構造設計が可能となる。
【0074】
さらに、換気扇やファンなどの換気送風装置に本発明を適用することにより、リアクトルや電解コンデンサーを小容量のリアクトルやコンデンサーに置き換えることができるため、小型・軽量化が図れる。また、本発明のデッドタイム補償を適用することにより、出力電圧誤差低減によるトルクリップルが低減するため、低騒音化を図ることが可能となる。
なお、電動機として永久磁石形のブラシレスDCモーターを適用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 交流電源、2 電動機の駆動装置、3 電動機、4 リアクトル、5 整流手段、6 コンデンサー、7 インバーター、8 インバーター制御手段、9 ゼロクロス検出手段、10 母線電圧検出手段、11 電流検出手段、12 磁極位置検出手段、13 電圧指令演算手段、14 デッドタイム補償手段、15 電圧指令補正手段、16 PWM信号発生手段、17 永久磁石、18 座標変換手段、19 位相差検出手段、20 補償量演算手段、21 補償量特定次数成分演算手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の駆動に利用される電動機の駆動装置並びに、電動機の駆動装置を用いた冷凍空調装置、ヒートポンプ給湯器、電気掃除機、手乾燥機、換気送風装置などの機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍空調装置の電動機駆動等に用いられる3相電圧形PWMインバーターのスイッチング素子のアーム短絡を防止するため、スイッチング素子のターンオフ時間も包含した短絡防止時間(デッドタイム)が挿入される。この短絡防止時間に起因するインバーターのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧を補償するためには、該PWM電圧指令に加算される方形波状の補償電圧の極性を、該インバーターの出力電流が零クロス点を通過する時点に同期して変更する方法が一般的に行われている。しかしながら、従来のデッドタイム補償方法によると、該インバーターの出力電流のゼロクロス点でステップ状に補償電圧の極性を変更しているため、該零クロス点近傍での出力電流のリプルが増大し、このリプルに起因する回転むらが大きくなるという問題があった。
この問題を解決するため、例えば、比較器を用いてインバーター出力電流を各相毎に基準値と比較して出力電流の零クロス点近傍での比較結果(誤差)の大きさに応じた時間幅のパルス電圧を発生させ、補償量演算部によりPWM周波数とデッドタイムと直流電源の電圧に基づいてデッドタイム補量(補償量振幅)を演算させ、比較器出力と補償量演算部の出力を乗算器により乗じ、乗算器の出力を積分器により積分して台形状の波形の補償量信号を生成し、この補償量信号をPWM電圧指令演算器からの指令値に加算し、PWMパルス演算器でこの加算結果にPWM演算後デッドタイムを付加してインバーター主回路に駆動信号を出力するデッドタイム補償方法が開示されている。この構成により、上記インバーター出力電流が零クロス点を通過するのに伴って行われる補償電圧の極性変更を、上記出力電流の零クロス点以前の変更開始時点より、所定の勾配で行うことが可能となり、上記零クロス点での出力電流のリプル増大の問題を解消することができる(例えば特許文献1参照)。
また、デッドタイム補償電圧を、モーターの回転数から定まるインバーターの電気周波数における奇数次周波数の交流成分とすることを特徴とする技術が開示されている。この技術を用いることにより、小容量のリアクトル及び小容量のコンデンサーで構成されたインバーターにおいて、デッドタイムによるインバーター出力電圧誤差による電圧及び電流歪みを解消できるだけでなく、IECやJISなどに定められている高調波規格等に適合させることができる(例えば特許文献2参照)。
単相交流電源を入力とする単相ダイオード全波整流回路と、これに接続される従来のダイオード全波整流回路用の平滑コンデンサーの1/100程度の小容量平滑コンデンサーと、制御用PWMインバーターとモーターとで構成された制御回路とによって、あらかじめモーターのトルクを電源の2倍の周波数で制御することにより、ダイオード全波整流回路の入力力率と波形の改善を実現するモーター駆動用インバーターの制御装置技術が開示されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3738883号公報(第2頁〜第4頁、図1、図2)
【特許文献2】特開2007―104813号公報(第8頁〜第9頁、図6)
【特許文献3】特開2002―51589号公報(第4頁〜第5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来のデッドタイム補償装置は、以上のように構成されているので、台形波形のデッドタイム補償電圧に高調波が残り、特定次数調波が騒音として問題となることがあった。
また、低騒音駆動が要求される場合にはPWM周波数付近の騒音レベルが高く、特にPWM周波数を可聴領域に設定せざるを得ない場合については使用上の制約が大きかった。 また出力電流の大きさにより零クロス近辺の補償電圧の勾配が変化するので、特定次数調波の比率が変わり、騒音が問題となるモーター駆動に関しては運転領域が限定されていた。
また、比較器を利用するため、外来ノイズに対しての耐力が弱く、補償電圧の算出に積分器を含むため、オーバーフロー等の問題があり、簡易なシステムでの実現が難しいという問題があった。
また、特許文献2に開示されている技術では、小容量のリアクトルや小容量のコンデンサーで構築されているインバーターでは母線電圧が脈動するため、母線電圧がゼロ付近でデッドタイム補償を行った場合、回生電圧により母線電圧が昇圧し、インバーターの耐圧破壊を招く恐れがあり、またデッドタイムによる電圧誤差の影響は電流の極性により決まるため、電流の位相が正確に把握できないと、不要な補償が行われることによる電圧・電流波形の歪みが発生し、騒音の発生や制御が不安定になるなどの課題があった。
また、特許文献3に開示されている技術では、低速や高キャリア周波数でインバーターを動作させると、インバーターのスイッチング素子の短絡を防止するためのデッドタイムの影響により、電圧指令値と実際にインバーターにて出力される電圧に誤差が生じるため電流が歪むことによるトルクリップルが発生し、電動機から騒音や振動が発生するなどの課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、小容量のリアクトルや小容量のコンデンサーにより構成されたインバーターにおいても、デッドタイムによる電圧や電流波形歪みを抑制することができ、小型・低コストだけでなく電流歪みによるトルクリップルに起因する振動や騒音を抑制可能な電動機の駆動装置並びに電動機の駆動装置を用いた機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電動機の駆動装置は、
交流電源をリアクトルを介して全波整流する整流手段と、
前記整流手段の出力を平滑して前記交流電源の略二倍の周波数で脈動する母線電圧を出力するコンデンサーと、
前記コンデンサーから出力された母線電圧を電源として、電動機に電圧を印加するスイッチング手段を有するインバーターと、
このインバーターを制御するインバーター制御手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検出するゼロクロス検出手段と、
前記母線電源の電圧を検出する母線電圧検出手段と、
前記電動機に流れる二相以上の電流を検出する電流検出手段と、
前記電動機の回転位相を検出する回転位相検出手段とを備え、
前記インバーター制御手段は、周波数指令と前記ゼロクロス検出手段の出力と前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力と前記回転位相検出手段の出力に基づいて電圧指令を算出する電圧指令演算手段と、
前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力に基づいて前記スイッチング手段のアーム短絡防止用のデッドタイムに起因する、前記電圧指令演算手段からの電圧指令と前記インバーターからの出力電圧との間の誤差電圧を補償するための補償量を生成するデッドタイム補償手段と、
このデッドタイム補償手段の出力に基づいて前記電圧指令演算手段の出力を補正する電圧指令補正手段と、
この電圧指令補正手段によって得られたPWM信号を発生するPWM信号発生手段と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電動機の駆動装置によれば、小容量のリアクトルや小容量のコンデンサーにより構成された小型・低コストなインバーターにおいても、デッドタイムによる電圧や電流波形の歪みを抑制することができるため、トルクリップルによる不快な騒音を低減できるだけでなく、母線電圧がゼロ近辺におけるデッドタイム補償を抑制することにより回生電圧の影響を抑制することが可能となり、信頼性の高い電動機の駆動装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係る電動機の駆動装置の構成を示す図である。
【図2】従来のデッドタイム補償を表す図である。
【図3】PWM信号発生手段の動作を示す図である。
【図4】実施の形態1におけるデッドタイム補償の動作を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る電動機の駆動装置の構成を示す図である。
【図6】電動機の回転に対する座標関係を示す図である。
【図7】デッドタイム補償手段14の構成を示す図である。
【図8】dq軸座標の位相と電流ベクトルの位相との位相差を示す図である。
【図9】電動機の回転位相θに対する、UVW相の電流と、デッドタイム補償量との関係を示す図である。
【図10】デッドタイム補償手段14のもう一つの構成を示す図である。
【図11】デッドタイム補償の一般的な電圧指令補正値を示す図である。
【図12】実施の形態2におけるデッドタイム補償の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電動機の駆動装置を示す図である。図1に示すように電動機システムは、交流電源1、本発明に係る電動機の駆動装置2、電動機3から構成されている。電動機の駆動装置2は交流電源1からの電源を供給することで電動機3を駆動する。
また、電動機の駆動装置2は、一般的に使用されているリアクトルよりも十分に小容量のリアクトル(以後単にリアクトルと称す)4、整流手段5、一般的に使用されているコンデンサーよりも十分に小容量のコンデンサー(以後単にコンデンサーと称す)6、インバーター7、インバーター制御手段8、ゼロクロス検出手段9、母線電圧検出手段10、電流検出手段11、および磁極位置検出手段12を有する。
【0010】
交流電源1はリアクトル4を介して整流手段5により全波整流され、コンデンサー6により平滑されて、インバーター7の電源である母線電圧を生成する。ここで、インバーター7の電源はコンデンサー6の容量が一般的に使用されているものよりもかなり小さいため、交流電源1を略全波整流した波形(交流電源の略2倍の周波数で変動する電圧波形または電流波形)となる。
【0011】
インバーター7は、スイッチング手段としてIGBTやMOSFET等のスイッチング素子を有し、各スイッチング素子には並列に接続された環流ダイオードを備え、マイコンやDSP、論理回路等の電子回路で構成されるインバーター制御手段8によりインバーター7を制御して電動機3に電圧を供給させる。
【0012】
ゼロクロス検出手段9は、交流電源1のゼロクロスを検出し、ゼロクロス信号ZCをインバーター制御手段8へ出力する。ゼロクロスを検出する方法としては、例えば交流電源1が負から正に切り替わった際に、HIGH(5V)、正から負に切り替わった際にLOW(0V)とし、インバーター制御手段8を構成するマイコン等に取り込むことで簡単に検出できる。なお、HIGHやLOWが逆となっても問題なく、また電圧も0Vや5Vに限らずゼロクロスを検出できることはいうまでもない。
【0013】
母線電圧検出手段10は、コンデンサー6により平滑された電圧である母線電圧Vdcを検出し、インバーター制御手段8へ出力する。母線電圧Vdcを検出する方法としては、分圧抵抗などを用いて低電圧化してインバーター制御手段8を構成するマイコン等に取り込み、マイコン等の内部で低電圧化した分を考慮して換算することで簡単に母線電圧を検出することが可能となる。
【0014】
電流検出手段11は、電動機3に流入するU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwのうち少なくとも2相以上を検出して、インバーター制御手段8へ出力する。電流の検出方法としては、一般的な電流検出素子であるACCTやDCCTや、インバーター7の電源側に流れる電流を検出して三相の電流を復元する方法や、インバーター7の下側スイッチング素子に流れる電流を検出する方法などが挙げられ、いずれもインバーター制御手段8を構成するマイコン等に取り込むことで、電流を検出できる。ここでIuとIwの2相のみを検出した場合、検出しなかった電流Ivはキルヒホッフの法則
Iu+Iv+Iw=0 から、
【0015】
【数1】
で求めることができる。
【0016】
磁極位置検出手段12は、電動機3の回転子の磁極位置である回転位相θを検出し、インバーター制御手段8へ出力する。磁極位置の検出方法に関しては、ロータリエンコーダやレゾルバー、ホールセンサー等により検出が可能である。また、図示していないが、電流検出手段11の出力と、電動機の特性より得られる電圧電流方程式等に基づいて磁極位置を検出することも可能であり、位置センサーレス制御として広く用いられている方法を用いることも可能である。なお、磁極位置検出手段12は、回転位相検出手段を構成する。
【0017】
次にインバーター制御手段8について説明する。インバーター制御手段8は電圧指令演算手段13、デッドタイム補償手段14、電圧指令補正手段15、PWM信号発生手段16を備える。
【0018】
電圧指令演算手段13は外部から入力した周波数指令、磁極位置検出手段の出力である磁極位置(回転位相)θ、ゼロクロス検出手段の出力であるゼロクロス信号ZC、母線電圧検出手段の出力である母線電圧Vdc、電流検出手段の出力であるUVW相の電流Iu、Iv、Iwを入力として、UVW相の電圧指令であるVu*、Vv*、Vw*を出力する。UVW相の電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を得る方法としては、例えば特許文献3に示すような方法がある。
【0019】
デッドタイム補償手段14は、母線電圧検出手段の出力である母線電圧Vdc、電流検出手段の出力であるUVW相の電流Iu、Iv、Iwを入力として、UVW相の電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwを得る。
【0020】
ここで、UVW相の電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwの求め方について説明する。デッドタイムに基づく電圧指令値と実際に出力される電圧との誤差ΔVは、流れる電流の極性によって変化するが、絶対値としてはデッドタイムTdとキャリア周波数fcと母線電圧Vdcを用いて次式(1)で表される。
【0021】
【数2】
電流の極性を考慮すると、例えばU相電圧指令補正値ΔVuはU相電流Iuの極性を用いて次式(2)で得られる。
【0022】
【数3】
ただし、sign関数は次式(3)の通りである。
【0023】
【数4】
ここで、xはIu、Iv、Iwのいずれかを指す。
同様にV相、W相の電圧指令補正値ΔVv、ΔVwについては次式(4)及び(5)となる。
【0024】
【数5】
【0025】
以上により、電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwを求めることが可能となる。
説明を簡単にするため、母線電圧Vdcが一定の場合の電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwを図2に示す。(なお、後述するが、本発明では、母線電圧Vdcは一定ではなく脈動するので、本発明で取り扱う電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwは図2とは異なるものとなる。)
【0026】
次に電圧指令補正手段15は、電圧指令演算手段13の出力であるVu*、Vv*、Vw*及びデッドタイム補償手段14の出力であるΔVu、ΔVv、ΔVwの出力を入力として補正済み電圧指令値Vu**、Vv**、Vw**を作成し、PWM信号発生手段16へ出力する。
【0027】
補正済み電圧指令値Vu**、Vv**、Vw**は、次式(6)〜(8)を用いることで得ることが可能である。
【0028】
【数6】
【0029】
PWM信号発生手段16は、補正済み電圧指令値Vu**、Vv**、Vw**を入力として、インバーター7のスイッチング素子を駆動するPWM信号UP、UN、VP、VN、WP、WNを出力する。
【0030】
図3はPWM信号発生手段16のU相における動作を示す図である。補正済みのU相電圧指令値Vu**は周波数fcのキャリアと比較され、補正済みのU相電圧指令値Vu**がキャリアよりも大のときにHIGH、小の場合にLOWとしてU相上アームPWM信号UPを出力する。U相下アームPWM信号については、UPと逆論理の信号を出力する。なお、インバーター7の種類によってはHIGHとLOWを逆にする必要があるが、基本的な動作は変わらないことはいうまでもない。
【0031】
さらに、通常UPとUNが同時にオンしないように、UPもしくはUNのPWM信号をデッドタイムの時間分削って出力することで同時ONによるインバーター7の短絡破壊を防止しているが、電圧指令と実際に出力される電圧に誤差が生じ、電動機3に印加させる電圧が歪むことで流れる電流も歪むため、トルクリップルが発生し、このトルクリップルによる騒音や振動が発生するという問題があるだけでなく、制御が不安定になるなどの課題がある。そのため、前述の通りデッドタイム補償手段14等により電圧指令を補償することで、上記の問題を解決することが可能となる。
【0032】
ただし、前述の通り、母線電圧Vdcは略全波整流した波形(脈動波形)となるため、式(1)から分かるように、電圧指令補正値ΔVは母線電圧Vdcの脈動周波数と同一ないし、交流電源1の周波数の略2倍の周波数で脈動させるように図4に示すような補正をすることができるので、脈動する母線電圧Vdcとほぼ同一のものにすることができ、従来より正確なデッドタイム補償が可能となり、制御性が良くなるだけでなくデッドタイムによる電圧誤差に起因する振動や騒音を低減することが可能となり、信頼性の高い電動機の駆動装置を得ることができる。
【0033】
ただし、回転数が小さくなり相電流が小さくなる場合には、式(2)および式(4)、式(5)を用いてデッドタイム補償を行う場合、各相の電流のゼロクロス付近は正負の判定が難しく、各電圧指令補正値の正負の符号が定まらないため、正確なデッドタイム補償ができず、ゼロクロス付近で制御が不安定になる恐れがある。
【0034】
そこで、デッドタイム補償手段14は式(9)〜式(11)に示すように、電圧指令補正値に電流値に応じた割合K(x)(このxは、Iu、Iv、Iwのいずれかを示す)を乗ずることで、電流が小となるゼロクロス付近でも安定した動作が可能となる。
【0035】
【数7】
K(x)については、例えば電流値が0Aから最大定格の20%程度までは0〜100%と段階的に変化させ、それ以上の電流値になったら100%の電圧指令補正値にするなどの方式や、0Aから最大定格の20%程度までは0%で、それ以上は100%にする方法などが挙げられる。また、電流値以外にも回転数で電圧指令補正値の割合を変化させても何ら問題ないことは言うまでもない。この回転数で電圧指令補正値の割合を変化させる場合も電流で制御する方法と同じ方法を適用することができる。
【0036】
以上のデッドタイム補償手段はマイコン(マイクロコンピュータ)やDSP(Digital Signal Processor)、電子回路等で実現可能である。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態1では、電流の極性に応じてデッドタイム補償する方式について説明した。
本発明の実施の形態2では、各相の電流のゼロクロスを正確に検出して、精度の良いデッドタイム補償を行う方法について説明する。
図5は、本発明の実施の形態2に係る電動機の駆動装置の構成を示す図である。
実施の形態2は、デッドタイム補償手段14に回転位相θを入力している以外は何ら変わりないため、実施の形態1と同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
ここで、図6は、電動機3の解析モデル図である。図6には、U相、V相、W相の電機子巻線固定軸が示されている。17は、電動機3の回転子を構成する永久磁石である。永久磁石17が作る磁束と同じ速度で回転する回転座標系において、永久磁石17が作る磁束の方向をd軸にとり、d軸に対応する制御上の推定軸をγ軸とする。また、図示していないが、d軸から電気角で90度進んだ位相にq軸をとり、γ軸から電気角で90度進んだ位相に推定軸であるδ軸をとる。d軸とq軸を座標軸に選んだ回転座標系の座標軸をdq軸と呼ぶ。インバーターによる制御上の回転座標系はγ軸とδ軸を座標軸に選んだ座標系であり、その座標軸をγδ軸と呼ぶ。
【0039】
dq軸は回転しており、その回転速度である電動機3の回転速度を電動機回転速度ω と呼ぶ。γδ軸も回転しており、その回転速度をインバーター回転速度ω1と呼ぶ。また、ある瞬間の回転しているdq軸において、d軸の位相をU相の電機子巻線固定軸を基準として電動機回転位相θにより表す。同様に、ある瞬間の回転しているγδ軸において、γ軸の位相をU相の電機子巻線固定軸を基準としてインバーター回転位相θ1により表す。そうすると、d軸とγ軸との軸誤差Δθは、
【0040】
【数8】
で表される。
【0041】
電動機3の回転子の磁極位置を検出するセンサーを有する場合、正確な磁極位置が検出できるためdq軸で議論することが可能となる。しかし磁極位置を検出するセンサーが無い場合は、電動機3に流れる電流により磁極位置をγδ軸として推定する方法が一般的に用いられるが、dq軸とγδ軸に軸誤差Δθが生じる。しかし、実際の運転では軸誤差Δθが小さい所で運転されることもあり、dq軸とγδ軸は同一と捉えることが可能である。そのため、以下特別なことが無い限り、dq軸として説明を行うが、γδ軸においても同様の構成で実現できることは言うまでもない。また、その場合には電動機回転速度ωをインバーター回転速度ω1、電動機回転位相θをインバーター回転位相θ1として置き換えてよいことは言うまでもない。
【0042】
図7はデッドタイム補償手段14の動作を示すブロック図である。デッドタイム補償手段14は、座標変換手段18、位相差検出手段19、補償量演算手段20を備える。
【0043】
座標変換手段18は、電流検出手段11により出力された電流(Iu、Iv、Iw)を、磁極位置検出手段12より得られた回転位相θを用いて、式(12)(この式は三相電流から二相電流へ変換する機能と、変換によって得られた二相電流を回転座標へ変換する機能の両方を併せもつ)によりd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換して出力する。
【0044】
【数9】
【0045】
ここで、磁極位置の位相である回転位相θと相電流の位相との位相差Δθiを位相差検出手段19にて求める方法について説明する。図8に示すように、電流ベクトルIと磁極軸であるd軸との位相差θiはId及びIqを用いて次式(13)で得ることができる。
【0046】
【数10】
【0047】
よって、回転位相θと電流位相差Δθiが求まるので、補償量演算手段20にて式(14)〜式(16)を用いることで、各相電流のゼロクロス付近においても安定性の高い電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwを得ることができる。ただし、電流位相θiは
【0048】
【数11】
とする。
【0049】
【数12】
【0050】
図9は上記の関係を具体的に示したものであり、例えば、θiが0°の場合、図9に縦線で示すようにUVWの各相のデッドタイム補償量はΔVu:正、ΔVv:負、ΔVw:負が得られる。
【0051】
なお、電流位相差Δθiはdq軸上の電流Id及びIqだけでなく、三相二相変換手段である式(17)から得られる固定座標系(αβ座標系)の電流Iα及びIβを用いて式(18)にて求めることも可能である。
【0052】
【数13】
【0053】
電流位相差Δθiや回転位相θなどは電動機3の回転方向や、回転座標系の取り方により正負の符号が反転するが、システムに応じて正負の符号を使い分けることで同様の方法でデッドタイム補償を行えることは言うまでもない。また、電流位相差Δθiはシステムによっては変動することもあるため、その場合にはLPF(Low Pass Filter)を用いて変動する成分を抑制しても良い。
【0054】
以上の様に電流位相差Δθiを用いて電圧指令補正値の正負を判断することにより、相電流の正負の判断が付けづらいゼロクロス付近におけるデッドタイム補償を精度良く行うことが可能となり、信頼性の高い電動機の駆動システムが得られるだけでなく、デッドタイムによる電圧誤差に起因するトルクリップルにより発生する騒音や振動を低減することができ、低騒音低振動な電動機の駆動装置を得ることが可能となる。
【0055】
ここで、図7に示すデッドタイム補償手段14の場合、図2や図4からも分かるように電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwは複数の高次高調波成分を含んだ波形となっており、これらの高次高調波成分が電動機3から音となって発生する事があり、また、交流電源1に流れる電流に高調波成分が発生し、JISやIECに定められる高調波規格に適合できなくなる恐れがある。
【0056】
そこで、電圧指令補正値の基本波周波数のみを用いることで、高次高調波成分の影響を低減して、上記問題を解決可能なデッドタイム補償を行う方法について説明する。構成としては、図10に示すように補償量演算手段20に代えて、補償量特性次数成分演算手段21を備える。補償量特性次数成分演算手段21は、補償量演算手段20の機能に加えて、電圧指令補正値の基本波周波数のみを用いてデッドタイム補償を行う機能を併せ持つ。
【0057】
一般的なデッドタイム補償は図2に示すように、母線電圧Vdcが一定であれば電圧指令補正値は矩形波状となるため、この電圧指令補正値を基に基本波成分の抽出方法について説明を行う。
【0058】
図11はθiで回転する場合のU相電圧指令補正値ΔVuである。この波形をフーリエ級数展開にて角周波数成分に展開すると、次式(19)となる。
【0059】
【数14】
【0060】
同様にΔVuに比べ±120°位相の異なるΔVv、ΔVwは次式(20)及び(21)となる。
【0061】
【数15】
【0062】
よって式(19)〜(21)において、n=1を代入することにより基本波成分のみを抽出すると、電圧指令補正値はそれぞれ、式(22)〜(24)となり、求めた電流位相θiに基づいてデッドタイム補償を行うことにより、高調波成分の少なく低騒音化が可能なデッドタイム補償を行うことができる。
【0063】
【数16】
【0064】
ここで、小容量のコンデンサー6を用いた場合、母線電圧Vdcは交流電源1の周波数の略2倍で脈動するが、補償量特性次数成分演算手段21は、検出した母線電圧Vdcを式(22)〜(24)に適用する。これにより、図12に示すように電流と略相似形な電圧指令補正値が得られ、矩形波状のデッドタイム補償に比べて高調波成分の少なく、騒音の発生が小さな電動機の駆動装置が得られる。
【0065】
さらに、基本波成分以外に5倍の周波数(式(18)〜(20)において、n=3を代入することで得られる周波数)や7倍(式(18)〜(20)において、n=4を代入することで得られる周波数)の周波数と言った3の倍数の周波数(式(18)〜(20)において、n=2あるいはn=5などを代入することで得られる周波数)を除く奇数倍の電圧指令補正値成分を基本波成分に加えてデッドタイム補償を行うことにより、更に電圧誤差の小さく、信頼性の高い電動機の駆動装置を得ることが可能となる。
なお、3の倍数の周波数を除く理由は以下の通りである。UVW相の電圧はそれぞれ互いに位相が2π/3ずつ異なっており、UVW相の電圧の3の倍数の高調波については、その位相のずれも3の倍数になるため、2πの倍数ずつ異なることになり、結果としてUWW相電圧の位相が同一になる。位相が同一で振幅も同一であるため、UVW相の3の倍数の高調波はすべて同一信号となり、線間電圧はゼロとなる。従って、この3の倍数の周波数成分はデッドタイム補償に寄与しない無意味なものとなるため、除くのである。
【0066】
ただし、小容量のコンデンサー6を用いた場合、母線電圧が略ゼロとなる区間で仮にデッドタイム補償を行うと、不必要なPWMが出力され、モーターの回転エネルギーがインバーターに戻ってくる恐れがあり、制御が不安定になるだけでなく、回転エネルギーによる回生によりインバーターが破壊する恐れがあるため、母線電圧がゼロとなる付近ではデッドタイム補償を行わないなどの対策を行うことで前述の問題を回避できる。この場合、ゼロクロス検出手段9の出力を元に、母線電圧のゼロクロスを判断するようにしても良い。
【0067】
また、少容量のコンデンサー6を用いると、母線電圧が交流電源1の略2倍の周波数で大きく脈動するため、電圧指令補正値を求める際に母線電圧のピーク値を検出し、この時の電圧指令補正値が最大となる値を記憶しておき、ゼロクロス検出手段9の出力に基づいて、交流電源1の略2倍の周波数で電圧指令補正値を脈動させるように制御しても良い。
これにより、電圧指令補正値ΔVu、ΔVv、ΔVwによって補正された補正済み電圧指令値Vu**、Vv**、Vw**を脈動する母線電圧Vdcとほぼ同じものとすることができる。
【0068】
実施の形態3.
以上の実施の形態1及び2で説明した電動機の駆動装置の活用例として、冷蔵庫や空気調和機などの冷凍空調装置、ヒートポンプ給湯器、電気掃除機、手乾燥機などが挙げられる。
【0069】
冷蔵庫や空気調和機に代表される冷凍空調装置やヒートポンプ給湯器は、10年を超える長期の使用が前提となっており、寿命部品である電解コンデンサー6は長寿命の阻害となっている。そこで、本発明の小容量のコンデンサー6を用いた電動機の駆動装置を用いることで、長寿命化を図ることが可能となる。
【0070】
また、本発明のデッドタイム補償を空気調和機やヒートポンプ給湯器の室外ファンモーターの駆動に用いることにより、低騒音化を図ることが可能となる。
【0071】
さらに、電気掃除機に本発明を適用することにより、これまでインバーターを駆動する際に必須であった大型部品であるリアクトルや電解コンデンサーを小型化することが可能となり、重量が軽く、ユーザーの労力を低減できる電気掃除機を提供することが可能となる。
【0072】
また、インバーターにて電動機を駆動する場合、電動機の最大回転数は
60000rpm÷(極数÷2) 以上である。例えば、インバーターにて2極の電動機の場合60000rpm、4極の電動機の場合は30000rpmを超えるような回転数で電動機を駆動することで、同一風量や静圧を得るための羽根やモーターの大きさを小さくすることができ、小型軽量な電気掃除機を得ることができる。ただし、電動機の安定した駆動のためには、電気角1周期中に少なくとも10回は制御が行われる回転数を上限とすることが望ましい。
【0073】
さらに、手乾燥機に本発明を適用することにより、リアクトルや電解コンデンサーを小容量のリアクトルやコンデンサーに置き換えることができるため、小型・軽量化が図れる。また、インバーターにより高速回転することにより、大風量や高静圧を得ることができるため、より自由度の高い構造設計が可能となる。
【0074】
さらに、換気扇やファンなどの換気送風装置に本発明を適用することにより、リアクトルや電解コンデンサーを小容量のリアクトルやコンデンサーに置き換えることができるため、小型・軽量化が図れる。また、本発明のデッドタイム補償を適用することにより、出力電圧誤差低減によるトルクリップルが低減するため、低騒音化を図ることが可能となる。
なお、電動機として永久磁石形のブラシレスDCモーターを適用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 交流電源、2 電動機の駆動装置、3 電動機、4 リアクトル、5 整流手段、6 コンデンサー、7 インバーター、8 インバーター制御手段、9 ゼロクロス検出手段、10 母線電圧検出手段、11 電流検出手段、12 磁極位置検出手段、13 電圧指令演算手段、14 デッドタイム補償手段、15 電圧指令補正手段、16 PWM信号発生手段、17 永久磁石、18 座標変換手段、19 位相差検出手段、20 補償量演算手段、21 補償量特定次数成分演算手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源をリアクトルを介して全波整流する整流手段と、
前記整流手段の出力を平滑して前記交流電源の略二倍の周波数で脈動する母線電圧を出力するコンデンサーと、
前記コンデンサーから出力された母線電圧を電源として、電動機に電圧を印加するスイッチング手段を有するインバーターと、
このインバーターを制御するインバーター制御手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検出するゼロクロス検出手段と、
前記母線電源の電圧を検出する母線電圧検出手段と、
前記電動機に流れる二相以上の電流を検出する電流検出手段と、
前記電動機の回転位相を検出する回転位相検出手段と、を備え、
前記インバーター制御手段は、周波数指令と前記ゼロクロス検出手段の出力と前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力と前記回転位相検出手段の出力に基づいて電圧指令を算出する電圧指令演算手段と、
前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力に基づいて前記スイッチング手段のアーム短絡防止用のデッドタイムに起因する、前記電圧指令演算手段からの電圧指令と前記インバーターからの出力電圧との間の誤差電圧を補償するための補償量を生成するデッドタイム補償手段と、
このデッドタイム補償手段の出力に基づいて前記電圧指令演算手段の出力を補正する電圧指令補正手段と、
この電圧指令補正手段によって得られたPWM信号を発生するPWM信号発生手段と、を備えることを特徴とする電動機の駆動装置。
【請求項2】
交流電源をリアクトルを介して全波整流する整流手段と、
前記整流手段の出力を平滑して前記交流電源の略二倍の周波数で脈動する母線電圧を出力するコンデンサーと、
前記コンデンサーから出力された母線電圧を電源として、電動機に電圧を印加するスイッチング手段を有するインバーターと、
このインバーターを制御するインバーター制御手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検出するゼロクロス検出手段と、
前記母線電源の電圧を検出する母線電圧検出手段と、
前記電動機に流れる二相以上の電流を検出する電流検出手段と、を備え、
前記インバーター制御手段は、周波数指令と前記ゼロクロス検出手段の出力と前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力に基づいて電圧指令を算出する電圧指令演算手段と、
前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力に基づいて前記スイッチング手段のアーム短絡防止用のデッドタイムに起因する、前記電圧指令演算手段からの電圧指令と前記インバーターからの出力電圧との間の誤差電圧を補償するための補償量を生成するデッドタイム補償手段と、
このデッドタイム補償手段の出力に基づいて前記電圧指令演算手段の出力を補正する電圧指令補正手段と、
この電圧指令補正手段によって得られたPWM信号を発生するPWM信号発生手段と、を備えることを特徴とする電動機の駆動装置。
【請求項3】
前記デッドタイム補償手段は、前記スイッチング手段のキャリア周波数と前記母線電圧検出手段の出力と予め定めたデッドタイムとに基づいて、前記補償量を生成する補償量演算手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機の駆動装置。
【請求項4】
前記デッドタイム補償手段は、前記電流検出手段の出力に基づいて前記電動機の回転位相と相電流の位相との位相差を算出する位相差検出手段と、
前記スイッチング手段のキャリア周波数と前記母線電圧検出手段の出力と予め定めたデッドタイムと前記位相差検出手段の出力に基づいて前記補償量を生成する補償量演算手段とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機の駆動装置。
【請求項5】
前記デッドタイム補償手段は、前記電流検出手段の出力に基づいて前記電動機の回転位相と相電流の位相との位相差を算出する位相差検出手段と、
前記スイッチング手段のキャリア周波数と前記母線電圧検出手段の出力と予め定めたデッドタイムとに基づいてデッドタイム補償電圧を作成し、このデッドタイム補償電圧の特定次数成分を算出し、
前記位相差検出手段の出力と前記算出した特定次数成分に基づいて前記補償量を生成する補償量特定次数成分演算手段とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機の駆動装置。
【請求項6】
前記デッドタイム補償手段は、前記補償量特定次数成分算出手段が算出した特定次数成分の少なくとも1つ以上を用いてデッドタイム補償を行うことを特徴とする請求項5に記載の電動機の駆動装置。
【請求項7】
前記デッドタイム補償手段は、前記補償量特定次数成分算出手段が算出したデッドタイム補償電圧の特定次数の高調波成分のうち、3の倍数の成分以外の少なくとも1つの周波数成分を求めてデッドタイム補償を行うことを特徴とする請求項6に記載の電動機の駆動装置。
【請求項8】
前記電流検出手段が検出した相電流を固定子座標系(αβ座標系)上の二軸成分に変換した後、回転座標に変換する座標変換手段を備え、
前記位相差検出手段は、前記座標変換手段の出力に基づいて前記電動機の回転位相と相電流の位相との位相差を算出することを特徴とする請求項4から請求項7のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項9】
前記電流検出手段が検出した相電流を前記回転位相検出手段の出力に基づいて、回転子の電気角周波数と同一周波数で回転する座標系(dqないしγδ座標系)上における相電流の二軸成分に変換した後、回転座標に変換する座標変換手段を備え、
前記位相差検出手段は、前記座標変換手段の出力に基づいて前記電動機の回転と相電流の位相との位相差を算出することを特徴とする請求項4から請求項7のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項10】
前記デッドタイム補償手段は、前記母線電圧検出手段の出力と、前記ゼロクロス検出手段の出力とに基づいて前記補償量を前記交流電源の略二倍の周波数で脈動させることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項11】
前記デッドタイム補償手段は、前記電動機が所定値より低速回転もしくは前記電流検出手段の出力が所定値より小さい場合には、前記補償電圧を一定の割合で減じてデッドタイム補償を行うことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項12】
前記回転数は最大定格の20%以下であることを特徴とする請求項11に記載の電動機の駆動装置。
【請求項13】
前記電流は最大定格の20%以下であることを特徴とする請求項11に記載の電動機の駆動装置。
【請求項14】
前記デッドタイム補償手段は、前記ゼロクロス検出手段の検出もしくは前記母線電圧検出手段の出力に基づき、前記交流電源のゼロクロス近辺では補償量をゼロとすることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項15】
前記回転位相検出手段は、前記電流検出手段の出力に基づいて、前記電動機の回転位相を検出することを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項16】
前記電動機は、永久磁石形のブラシレスDCモーターであることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項17】
前記電動機の最大回転数は、(60000÷(極数÷2))rpm以上であることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項18】
前記インバーター制御手段はマイコンまたはDSPもしくは電子回路にて構成されることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれかに記載の電動機の駆動装置を備えた機器。
【請求項1】
交流電源をリアクトルを介して全波整流する整流手段と、
前記整流手段の出力を平滑して前記交流電源の略二倍の周波数で脈動する母線電圧を出力するコンデンサーと、
前記コンデンサーから出力された母線電圧を電源として、電動機に電圧を印加するスイッチング手段を有するインバーターと、
このインバーターを制御するインバーター制御手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検出するゼロクロス検出手段と、
前記母線電源の電圧を検出する母線電圧検出手段と、
前記電動機に流れる二相以上の電流を検出する電流検出手段と、
前記電動機の回転位相を検出する回転位相検出手段と、を備え、
前記インバーター制御手段は、周波数指令と前記ゼロクロス検出手段の出力と前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力と前記回転位相検出手段の出力に基づいて電圧指令を算出する電圧指令演算手段と、
前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力に基づいて前記スイッチング手段のアーム短絡防止用のデッドタイムに起因する、前記電圧指令演算手段からの電圧指令と前記インバーターからの出力電圧との間の誤差電圧を補償するための補償量を生成するデッドタイム補償手段と、
このデッドタイム補償手段の出力に基づいて前記電圧指令演算手段の出力を補正する電圧指令補正手段と、
この電圧指令補正手段によって得られたPWM信号を発生するPWM信号発生手段と、を備えることを特徴とする電動機の駆動装置。
【請求項2】
交流電源をリアクトルを介して全波整流する整流手段と、
前記整流手段の出力を平滑して前記交流電源の略二倍の周波数で脈動する母線電圧を出力するコンデンサーと、
前記コンデンサーから出力された母線電圧を電源として、電動機に電圧を印加するスイッチング手段を有するインバーターと、
このインバーターを制御するインバーター制御手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検出するゼロクロス検出手段と、
前記母線電源の電圧を検出する母線電圧検出手段と、
前記電動機に流れる二相以上の電流を検出する電流検出手段と、を備え、
前記インバーター制御手段は、周波数指令と前記ゼロクロス検出手段の出力と前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力に基づいて電圧指令を算出する電圧指令演算手段と、
前記母線電圧検出手段の出力と前記電流検出手段の出力に基づいて前記スイッチング手段のアーム短絡防止用のデッドタイムに起因する、前記電圧指令演算手段からの電圧指令と前記インバーターからの出力電圧との間の誤差電圧を補償するための補償量を生成するデッドタイム補償手段と、
このデッドタイム補償手段の出力に基づいて前記電圧指令演算手段の出力を補正する電圧指令補正手段と、
この電圧指令補正手段によって得られたPWM信号を発生するPWM信号発生手段と、を備えることを特徴とする電動機の駆動装置。
【請求項3】
前記デッドタイム補償手段は、前記スイッチング手段のキャリア周波数と前記母線電圧検出手段の出力と予め定めたデッドタイムとに基づいて、前記補償量を生成する補償量演算手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機の駆動装置。
【請求項4】
前記デッドタイム補償手段は、前記電流検出手段の出力に基づいて前記電動機の回転位相と相電流の位相との位相差を算出する位相差検出手段と、
前記スイッチング手段のキャリア周波数と前記母線電圧検出手段の出力と予め定めたデッドタイムと前記位相差検出手段の出力に基づいて前記補償量を生成する補償量演算手段とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機の駆動装置。
【請求項5】
前記デッドタイム補償手段は、前記電流検出手段の出力に基づいて前記電動機の回転位相と相電流の位相との位相差を算出する位相差検出手段と、
前記スイッチング手段のキャリア周波数と前記母線電圧検出手段の出力と予め定めたデッドタイムとに基づいてデッドタイム補償電圧を作成し、このデッドタイム補償電圧の特定次数成分を算出し、
前記位相差検出手段の出力と前記算出した特定次数成分に基づいて前記補償量を生成する補償量特定次数成分演算手段とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機の駆動装置。
【請求項6】
前記デッドタイム補償手段は、前記補償量特定次数成分算出手段が算出した特定次数成分の少なくとも1つ以上を用いてデッドタイム補償を行うことを特徴とする請求項5に記載の電動機の駆動装置。
【請求項7】
前記デッドタイム補償手段は、前記補償量特定次数成分算出手段が算出したデッドタイム補償電圧の特定次数の高調波成分のうち、3の倍数の成分以外の少なくとも1つの周波数成分を求めてデッドタイム補償を行うことを特徴とする請求項6に記載の電動機の駆動装置。
【請求項8】
前記電流検出手段が検出した相電流を固定子座標系(αβ座標系)上の二軸成分に変換した後、回転座標に変換する座標変換手段を備え、
前記位相差検出手段は、前記座標変換手段の出力に基づいて前記電動機の回転位相と相電流の位相との位相差を算出することを特徴とする請求項4から請求項7のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項9】
前記電流検出手段が検出した相電流を前記回転位相検出手段の出力に基づいて、回転子の電気角周波数と同一周波数で回転する座標系(dqないしγδ座標系)上における相電流の二軸成分に変換した後、回転座標に変換する座標変換手段を備え、
前記位相差検出手段は、前記座標変換手段の出力に基づいて前記電動機の回転と相電流の位相との位相差を算出することを特徴とする請求項4から請求項7のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項10】
前記デッドタイム補償手段は、前記母線電圧検出手段の出力と、前記ゼロクロス検出手段の出力とに基づいて前記補償量を前記交流電源の略二倍の周波数で脈動させることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項11】
前記デッドタイム補償手段は、前記電動機が所定値より低速回転もしくは前記電流検出手段の出力が所定値より小さい場合には、前記補償電圧を一定の割合で減じてデッドタイム補償を行うことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項12】
前記回転数は最大定格の20%以下であることを特徴とする請求項11に記載の電動機の駆動装置。
【請求項13】
前記電流は最大定格の20%以下であることを特徴とする請求項11に記載の電動機の駆動装置。
【請求項14】
前記デッドタイム補償手段は、前記ゼロクロス検出手段の検出もしくは前記母線電圧検出手段の出力に基づき、前記交流電源のゼロクロス近辺では補償量をゼロとすることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項15】
前記回転位相検出手段は、前記電流検出手段の出力に基づいて、前記電動機の回転位相を検出することを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項16】
前記電動機は、永久磁石形のブラシレスDCモーターであることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項17】
前記電動機の最大回転数は、(60000÷(極数÷2))rpm以上であることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項18】
前記インバーター制御手段はマイコンまたはDSPもしくは電子回路にて構成されることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれかに記載の電動機の駆動装置。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれかに記載の電動機の駆動装置を備えた機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−200395(P2010−200395A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38923(P2009−38923)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]