説明

電動油圧装置および電動油圧装置の作動油温度制御方法

【課題】温度による作動油粘性変動により電動油装置の作動が不安定になることを防止する。
【解決手段】車両用の電動油圧パワーステアリング装置等の電動油圧装置において、電動モータ50を制御するインバータ42を、油圧ポンプ60を駆動する電動モータ50に隣接させて一体に構成すると共に、油圧配管66をインバータ42に近接して配置し、インバータ42と電動モータ50から発生した熱を油圧配管66に伝達し、作動油の温度変化を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動油圧装置および電動油圧装置の作動油温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の電動油圧パワーステアリング装置等の電動油圧装置において、作動油に予熱を行うものが知られている。
例えば、特許文献1に記載された車両用電動パワーステアリング装置では、車両の直進走行中などの中立点付近での操舵状態で、モータと油圧ポンプの回転が停止中でもモータに通電することによってモータ本体を加熱させる。これにより、モータ外部に設けた作動油路に通じた作動油に熱を伝達して予熱を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−273361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、作動油の配管が、モータの外周に設置された薄いケースの内側に筒状の通路を形成したスリーブ構造になっている。そのため、作動油の熱は外気に晒された外側ケースに伝達し放熱しやすい。この結果、放熱と加熱とが繰り返されて作動油の温度が大きく変動する。したがって、作動油の粘度が温度変化と共に変動して、同一の操舵力に対して補助力が変動してしまう可能性がある。
即ち、従来の電動油圧装置においては、動作の安定性に改善の余地があった。
本発明の課題は、電動油圧装置の動作をより安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明に係る電動油圧装置は、
インバータを電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、油圧配管をインバータに近接して配置した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インバータと電動モータとから発生した熱を油圧配管に伝達して、作動油の温度変化を抑制することができる。
したがって、電動油圧装置の動作をより安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る電動油圧装置としての電動パワーステアリング装置1を備えた自動車1Aの概略構成図である。
【図2】アシスト装置の構成を示す図である。
【図3】油圧ポンプ60の平面図である。
【図4】インバータ制御装置41の制御ブロック図である。
【図5】操舵/走行状態判断部41aの非操舵判断部が実行する操舵判断処理を示すフローチャートである。
【図6】コントロールユニット40が実行するモータ制御処理を示すフローチャートである。
【図7】マップMa,Mbを示す図である。
【図8】第1実施形態における電動パワーステアリング装置1の熱伝達経路を示す模式図である。
【図9】油圧ポンプの作動油吐出口65付近の作動油温度の時間変化を示す図である。
【図10】第2実施形態におけるモータ制御処理を示すフローチャートである。
【図11】作動油の粘度特性を示す模式図である。
【図12】マップMcを示す図である。
【図13】第2実施形態において、パワーステアリングシステムが起動してから一定時間後の作動油温度を基点にした温度幅で制御を行った場合の作動油温度の時間変化を示す図である。
【図14】第3実施形態におけるモータ制御処理を示すフローチャートである。
【図15】マップMdを示す図である。
【図16】第3実施形態において、パワーステアリングシステムが起動してから一定時間後の作動油温度を基点にした温度幅で制御を行った場合の作動油温度の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を適用した自動車の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
(全体構成)
図1は、第1実施形態に係る電動油圧装置としての電動パワーステアリング装置1を備えた自動車1Aの概略構成図である。
図1において、自動車1Aは、車両を操舵する操舵機構として、ステアリングホイール10と、ステアリングシャフト20と、ラック25とを備えている。
ステアリングホイール10は、運転者が入力した操舵力をステアリングシャフト20に伝達する。
ステアリングシャフト20は、ステアリングホイール10への操舵力を、ラック25と噛み合うピニオンギアに回転力として伝達する。
【0009】
ラック25は、ピニオンギアを介して伝達するステアリングシャフト20の回転力を、車輪の転舵動作に変換する。
また、自動車1Aは、乗員の操舵状態を検出する操舵状態検出手段として、ステアリングシャフト20の軸力によって操舵力を検出するトルクセンサ30を備えている。また、自動車1Aは、車両の走行状態を検出する車両走行状態検出手段として、車輪の回転速度の計測のため回転数に比例して発生するパルス数を検出する車速センサ31を備えている。また、自動車1Aは、油圧ポンプ吐出部の作動油温度を検出する温度検出手段として、温度センサ32を備えている。さらに、自動車1Aは、ステアリングホイール10への操舵入力角度を検出する舵角センサ33を備えている。
【0010】
また、自動車1Aは、操舵機構に補助力を付与するアシスト装置として、運転者の操舵力に補助力を加えるための電動モータ50と、電動モータ50の回転によって作動油を圧縮・吐出する油圧ポンプ60とを備えている。電動モータ50は、モータ回転位置を計測するロータリーエンコーダ51を備えている。
操舵機構は、油圧ポンプ60が送出する作動油によって駆動される油圧機構を備えている。
【0011】
また、油圧機構は、パワーシリンダ80と、ピストン81とを備え、この油圧機構は油圧ポンプ外部油圧配管70によって油圧ポンプ60と連結されている。なお、油圧ポンプ60から油圧機構に送出した作動油は、油圧機構から油圧ポンプ60のタンク62に還流するよう油圧回路が構成されている。
パワーシリンダ80は、ラック25に操舵補助力を伝達し、ピストン81は、パワーシリンダ80の内部を2つの液室に液密的に分割するよう内装されている。また、油圧ポンプ外部油圧配管70は、パワーシリンダ80と油圧ポンプ60とを連通する。
【0012】
さらに、自動車1Aは、トルクセンサ30からの信号により、アシスト装置を制御する制御装置を備えた操舵補助機構を備えている。
操舵補助機構は、電動モータ50を制御する装置として、操舵/走行状態判断部41aと補助力指令値演算部41bとを備えるインバータ制御装置41と、インバータ42と、ヒートシンク43とを備えている。
インバータ制御装置41は、インバータ42に電動モータ50の制御指令を出力して、電動モータ50の回転を制御する。
【0013】
操舵/走行状態判断部41aは、トルクセンサ30および車速センサ31の検出結果を基に、操舵状態と走行状態とを判断する。
補助力指令値演算部41bは、操舵/走行状態判断部41aの判断結果から操舵補助力を演算し、電動モータ50の回転トルクを生成する電流(q軸電流)の値とコイルを発熱させモータ温度を上昇させる磁束生成電流(d軸電流)の値とを算出する。
インバータ42は、補助力指令値演算部41bで算出した指令値を駆動電流に変換して電動モータ50を制御する。
ヒートシンク43は、インバータ42と連結する金属板を有し、インバータ42が発した熱を蓄熱する。
【0014】
(アシスト装置の構成)
図2は、アシスト装置の構成を示す図であり、図2(a)は側断面図、図2(b)は上面図を示している。
図2において、アシスト装置は、電動モータ50と、油圧ポンプ60とを含んでいる。なお、図2においては、電動モータ50および油圧ポンプ60を制御するコントロールユニット40を併せて示している。
電動モータ50は、インバータ42のPWM制御によって、正逆回転の切り換えおよび回転数が可変な直流モータである。
【0015】
また、電動モータ50は、ロータリエンコーダ51を備えている。ロータリエンコーダ51は、モータ回転位置を計測して、計測結果をインバータ制御装置41に出力する。
インバータ制御装置41は、電動モータ50の回転位置を回転数に変換してモータ回転力のフィードバック制御に使用する。また、インバータ制御装置41は、モータ制御指令をインバータ42に送信し、インバータ42がモータ制御指令を駆動電流に変換してコイル52に通電する。すると、コイル52には電磁力が発生し、ロータ53と、これに嵌合した駆動シャフト54が回転する。
【0016】
ここで、コントロールユニット40のインバータ制御装置41は、温度上昇を抑えるために、放熱を促すべく電動モータ50の鉛直上方側に配置し、インバータ42をその下部に配置している。ヒートシンク43はインバータ42の放熱を促し、かつ油圧ポンプ筐体56の一部として蓄熱させるために、発熱量の大きいコイル52付近にモータのケースと一体に配置している。
油圧ポンプ60は、トロコイド油圧ポンプであり、その構造は、筐体内に歯数と中心が異なるインナロータとアウタロータ(図2においては、両ロータを油圧ポンプロータ64として記述している)が偏心して組み付けられたものである。
【0017】
図3は、油圧ポンプ60の平面図であり、図2におけるX−X断面図を示している。
図3に示すように、油圧ポンプ60は、第1および第2ハウジング124,125、インナロータ122、アウタロータ121、カムリング123および駆動シャフト54(図2参照)を有する。内周側からインナロータ122、アウタロータ121、カムリング123の順番で配置され、それらは駆動シャフト54の軸方向から第1および第2ハウジング124,125により挟持されて収容される。
【0018】
アウタロータ121は内周に内歯歯車121aを有し、外周面121bにおいてカムリング123に回転自在に収装される。これにより、アウタロータ121は、第1および第2ハウジング124,125に回転自在に収装される。また、アウタロータ121の内周には外歯歯車122aを備えたインナロータ122が収装される。この内歯歯車121aと外歯歯車122aは同ピッチで設けられ、また内歯歯車121aの歯数は外歯歯車122aの歯数よりも1つ多く設けられている。なお、内歯歯車121aの歯数は外歯歯車122aの歯数に対し2つ以上多くした構成としても良い。
【0019】
内歯歯車121aと外歯歯車122aとが噛合うようにしてインナロータ122およびアウタロータ121は第1および第2ハウジング124,125に収装されるが、内歯歯車121aの歯数は外歯歯車122aの歯数よりも1つ多いため、内歯歯車121aと外歯歯車122aとが噛合う際互いに偏心して噛合うこととなる。偏心により内歯歯車121aと外歯歯車122aにより隔成された油圧ポンプ室127が形成される。
【0020】
すなわち、インナロータ122とアウタロータ121の偏心により、内歯歯車121aと外歯歯車122aとは図3の上方向へ向かうほど密に噛合い、上方向端部Aにおいて完全に噛合って油圧ポンプ室127は最小容積となる。また、図3の下方向へ向かうほど噛合を解かれ、下方向端部Bにおいて完全に噛合を解かれて最大油圧ポンプ容積となる。なお、下方向端部Bにおける内歯歯車121aと外歯歯車122aとのクリアランスは、接触を回避しつつ略ゼロとなるよう設けられている。
【0021】
これにより、インナロータ122およびアウタロータ121が図3において反時計回りに回転されると、油圧ポンプ室127におけるI−I線に対し左側領域127aでは回転に伴って容積が増加する吸入領域となる。さらに、油圧ポンプ室127におけるI−I線に対し右側領域127bでは回転に伴って容積が減少する吐出領域となる。一方、インナロータ122およびアウタロータ121が時計回りに回転されると、油圧ポンプ室127におけるI−I線に対し左側領域127aでは回転に伴って容積が減少する吐出領域となり、I−I線に対し右側領域127bでは回転に伴って容積が減少する吐出領域となる。何れの場合も、インナロータ122とアウタロータ121の回転に伴って外歯歯車122aと内歯歯車121aが密に噛合うほど作動油が圧縮されるので、この歯車が密に噛合う領域を油圧ポンプ室127の圧縮側領域とも称する。
【0022】
駆動シャフト54は、電動モータ50に接続されてインナロータ122を回転駆動する。インナロータ122とアウタロータ121との噛み合いにより、駆動シャフト54の回転に伴ってインナロータ122およびアウタロータ121は回転駆動される。この駆動シャフト54が正逆回転を行うことで油圧ポンプ60は双方向油圧ポンプとして機能する。
【0023】
作動油は、油圧ポンプ室127の鉛直上方に配置されたタンク62から流入する。また、作動油は、吸入口61の連通路を、これに介装した吸入チェック弁63を通じて通過し、油圧ポンプロータ64の回転によって圧縮され作動油吐出口65から外出し、油圧ポンプ筐体56に配置した油圧ポンプ筐体内油圧配管66を通過した後、ポート67から油圧ポンプ外部油圧配管70へ出る。作動油の充填は、転舵によりパワーシリンダ80内の体積が小さく低圧側になった液室の作動油がタンク62に流入することで成立している。なお、駆動シャフト54は、油圧ポンプ筐体56と4箇所のベアリング55で回転支持されている。
【0024】
ここで、本実施形態において、油圧ポンプ60の吐出側に配設された油圧ポンプ筐体内油圧配管66および油圧ポンプ外部油圧配管70は、コントロールユニット40、電動モータ50および油圧ポンプ60を一体に保持する油圧ポンプ筐体56において、コントロールユニット40(特にインバータ42)と隣接した位置を通過している。これにより、インバータ42において発せられた熱を作動油に伝達し、作動油を目的の温度に上昇させることが容易となる。
【0025】
また、インバータ42および電動モータ50の熱を作動油に伝達して作動油の温度を上昇させることができると共に、インバータ42および電動モータ50を効率的に冷却することができる。
また、本実施形態においては、コントロールユニット40とリザーバタンク62とを電動モータ50の回転軸に対して同一の側に配置している。
したがって、より少ないスペースに集約して装置を配置できる。また、インバータの熱を速やかに油圧配管に伝達することができ、インバータを効率的に冷却することができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、リザーバタンク62を油圧ポンプ室127の鉛直上方側に配置しているため、作動油の自重によって油圧ポンプ室127への供給を促すことができる。
また、本実施形態では、インバータ42とリザーバタンク62との間に油圧ポンプ筐体内油圧配管66および油圧ポンプ外部油圧配管70を配置している。
したがって、インバータ42および電動モータ50の熱を作動油に伝達して作動油の温度を上昇させることができると共に、インバータ42および電動モータ50を効率的に冷却することができる。
【0027】
また、本実施形態においては、油圧ポンプ筐体内油圧配管66は、電動モータ50に近接した位置を通過している。これにより、電動モータ50において発せられた熱を作動油に伝達し、作動油を目的の温度に上昇させること、および、電動モータ50の冷却を行うことが容易となる。
さらに、本実施形態においては、油圧ポンプ筐体56において、駆動シャフト54の周りを油圧ポンプ筐体内油圧配管66が通過する構成である。
【0028】
そのため、油圧ポンプ筐体56内において、油圧配管を効率的に配置しつつ、駆動シャフト54を介して伝達される電動モータ50からの熱を油圧配管内の作動油に効率的に供給することができる。また、駆動シャフト54および油圧ポンプ筐体内油圧配管66を介して電動モータ50の熱を伝達し、電動モータ50の冷却を促すことができる。
なお、本実施形態においては、油圧ポンプ60の吐出側の油圧配管をコントロールユニット40および電動モータ50に隣接して配置することとした。これに対し、タンク62から油圧ポンプ60への連通路となる油圧配管(即ち、油圧ポンプ60の吸入側の油圧配管)をコントロールユニット40および電動モータ50に隣接して配置することもできる。
【0029】
(インバータ制御装置41の制御内容)
図4は、インバータ制御装置41の制御ブロック図である。
図4においては、運転者の操舵状態と車両および装置の状態から、電動モータ50のトルク生成電流(q軸電流)およびコイル52の温度を上昇させる電流(d軸電流)の演算を行い、モータ制御指令を出力する過程までを示している。
初めに、インバータ制御装置41内の操舵/走行状態判断部41aとして、非操舵判断部と基本アシスト指令値演算部が制御に必要な状態信号の入力を受ける。
【0030】
ここで、状態信号については、操舵状態としてトルクセンサ30による検出値Tqを入力し、車両の走行状態として車速センサ31による検出値v、舵角センサ33による操舵角θを入力する。また、モータの発生トルクをフィードバック制御するため、電動モータ50内のロータリエンコーダ51によるモータ回転位置を入力する。さらに、操舵/走行状態判断部41aは、このモータ回転位置をモータ回転数ωに換算する。
【0031】
次に、インバータ制御装置41内の補助力指令値演算部41bが、操舵トルクTqと車速vに対して、アシスト制御のための補助力Taを算出する。その際、モータ回転数ωも補助力指令値演算部41bに入力しフィードバックして演算する。
続いて、補助力指令値演算部41bが、作動油温度Thを中心とした温度制御幅を、予め決められたマップに沿って決定し、決定した温度制御幅で管理するよう目標温度を算出すると共に、操舵に必要な補助力を発生するために必要な電動モータ50のq軸とd軸の電流値(目標q軸電流値Iq*、目標d軸電流値Id*)を演算する。
【0032】
さらに、インバータ42が、補助力指令値演算部41bによる演算値(Iq*,Id*)を基にPWM制御を行い、電動モータ50を駆動する。
即ち、補助力指令値演算部41bで算出されたId*,Iq*は,インバータ42内の電流制御部が2相→3相座標変換を施し、目標電圧Vu,Vv,Vwを算出する。3相モータである電動モータ50は、Vu,Vv,Vwに従い、PWMインバータによって駆動される。
3相モータの制御を行う際には、目標d軸,q軸電流値Id*,Iq*と、実d軸,q軸電流とに基づいて、d軸,q軸PI制御部にて、d軸電圧Vd,q軸電圧Vqを算出し、モータ電流のPI制御を実施する。
なお、図4におけるIu,Ivは、u相電流、v相電流であり、Vu,Vv,Vwは、v相電圧、u相電圧、w相電圧である。
【0033】
(動作)
次に、動作を説明する。
(操舵判断処理)
図5は、操舵/走行状態判断部41aの非操舵判断部が実行する操舵判断処理を示すフローチャートである。
非操舵判断部は、自動車1Aのイグニションオンと共に操舵判断処理を繰り返し実行する。
図5において、操舵判断処理を開始すると、非操舵判断部は、車両の状態信号として操舵トルクTq,モータ回転数ωを読み込む(ステップS10)。
次に、非操舵判断部は、設定した閾値(操舵トルク閾値)より操舵トルクTqが小さいか否かの判定を行う(ステップS20)。
【0034】
ステップS20において、操舵トルクTqが操舵トルク閾値よりも小さいと判定した場合、非操舵判断部は、設定したモータ回転数の閾値(モータ回転数閾値)よりも電動モータ50の回転数ωが大きいか否かの判定を行う(ステップS30)。
ステップS30において、電動モータ50の回転数ωがモータ回転数閾値以下であると判定した場合、非操舵判断部は、非操舵判断フラグStを、操舵を行っていないことを示す“1”にセットする(ステップS40)。
ステップS20において、操舵トルクTqが操舵トルク閾値以上であると判定した場合、および、ステップS30において、電動モータ50の回転数ωがモータ回転数閾値より大きいと判定した場合、非操舵判断部は、非操舵判断フラグStを、操舵を行っていることを示す“0”にセットする(ステップS50)。
ステップS40,S50の後、非操舵判断部は、操舵判断処理を繰り返す。
【0035】
(モータ制御処理)
図6は、コントロールユニット40が実行するモータ制御処理を示すフローチャートである。
コントロールユニット40は、自動車1Aのイグニションオンと共にモータ制御処理を繰り返し実行する。
図6において、モータ制御処理を開始すると、コントロールユニット40は、各種状態信号を読み込み、基本アシスト指令値演算部によって基本アシスト(補助力)指令値を算出する。また、コントロールユニット40は、非操舵判断部に非操舵判断フラグStの値を読み込み、温度センサ32の検出値Th(作動油温度)を読み込む(ステップS100)。
【0036】
次に、コントロールユニット40は、作動油温度Thが作動油の温度に対する粘性変化率が比較的大きくない領域(例えば0℃以上)の最低温度T0よりも低いか否かの判定を行う(ステップS200)。
ステップS200において、作動油温度Thが最低温度T0以上であると判定した場合、作動油の粘度変化率が小さいため特に温度を上げる必要がないことから、コントロールユニット40は、通常のアシスト制御のためのマップMaを使用して、モータ回転数ωから目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*を算出する(ステップS300)。
【0037】
そして、コントロールユニット40は、マップMaを使用して算出した目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*をインバータ42に出力して電動モータ50の制御を行う(ステップS400)。
一方、ステップS200において、作動油温度Thが最低温度T0より低いと判定した場合、コントロールユニット40は、非操舵判断フラグStの値が“1”であるか否かの判定を行う(ステップS500)。
ステップS500において、非操舵判断フラグStの値が“1”でないと判定した場合、電動モータ50が動作することによって作動油温度は上昇し、作動油の温度を上昇させる制御は必要ないことから、コントロールユニット40は、ステップS300に移行する。
【0038】
一方、ステップS500において、非操舵判断フラグStの値が“1”であると判定した場合、電動モータ50が動作しないために作動油温度を上昇させる制御が必要であることから、コントロールユニット40は、作動油温度を上昇させるためのマップMbを使用して、目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*を算出する(ステップS600)。
そして、コントロールユニット40は、マップMbを使用して算出した目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*をインバータ42に出力して電動モータ50の制御を行う(ステップS700)。
ステップS400およびS700の後、コントロールユニット40は、モータ制御処理を繰り返す。
【0039】
(マップMa,Mbの特性)
次に、モータ制御処理で使用するマップMa,Mbの特性について説明する。
図7は、マップMa,Mbを示す図である。
上述の通り、マップMaは、通常のアシスト制御のためのモータ回転数ωと目標q軸電流値Iq*、目標d軸電流値Id*との関係を示すマップである。また、マップMbは、作動油温度を上昇させるためのモータ回転数ωと目標q軸電流値Iq*、目標d軸電流値Id*との関係を示すマップである。
【0040】
マップMaは、作動油温度の保持・上昇を考慮しないもので、基本操舵トルク指令に従って、トルクを生成するq軸電流値を決定する。アシストトルクの増大に比例したq軸電流値Iqを制御する。モータ特性は、要求するq軸電流値Iqが高いほど、モータ回転数が低い領域から効率が下がるものとなる。
また、d軸電流値は、電動モータ50の回転数が上昇すると誘導起電力が大きくなり、アシストトルクが減少してしまうのを防止するために、ステータに界磁電流を通電するものであり、モータ回転数の増加に比例してd軸電流値を増加させる。要求アシストトルクが大きいほど、低い回転数からd軸電流を通電する。
【0041】
マップMbは、非操舵時に作動油温度を急速に上昇させるための指令電流マップである。モータ回転数ωに関わらず、d軸電流値を最大にして早期に作動油温度を上昇させる特性となっている。
本実施形態においては、これらマップMa,Mbを切り替えて目標q軸電流値Iq*、目標d軸電流値Id*を算出するため、作動油の温度状態に応じて簡単に適切な電流値を算出することができる。
【0042】
(作用)
図8は、本実施形態における電動パワーステアリング装置1の熱伝達経路を示す模式図である。
本実施形態においては、インバータ42および電動モータ50の主に2つの熱源を用いている。
したがって、初めにインバータ42の発熱による熱伝達経路を説明する。
インバータ42の熱は、ヒートシンク43および油圧ポンプ筐体56に伝達される。ヒートシンク43の熱はコイル52外面の油圧ポンプ筐体56に伝達され、油圧ポンプ筐体56の熱は、吸入口61、作動油吐出口65および油圧ポンプ筐体内油圧配管66に伝達される。
【0043】
次に、コイル52の発熱による熱伝達経路を説明する。
コイル52の熱は、コイル52外面の油圧ポンプ筐体56およびロータ53に伝達される。ロータ53に伝達した熱は、駆動シャフト54を通じて油圧ポンプロータ64に伝達される。そして、この熱は油圧ポンプ筐体56に伝達され、油圧ポンプ筐体56の熱は、吸入口61、作動油吐出口65および油圧ポンプ筐体内油圧配管66に伝達される。
【0044】
以上のような熱伝達経路により、油圧ポンプ60の吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管への熱の伝達によって、効果的に作動油が温められる。
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、コントロールユニット40、電動モータ50および油圧ポンプ60を一体に保持する油圧ポンプ筐体56において、油圧ポンプ60に連通する油圧配管を電動モータ50あるいはインバータ42といった熱源に近接した位置に配置している。
【0045】
そのため、電動モータ50とインバータ42とによって発生した熱を、油圧ポンプ筐体56が蓄熱体となって保持し、油圧配管が油圧ポンプ筐体56の中央に配置されることで、外気からの距離が遠ざけられて断熱する。
したがって、熱源と油圧ポンプとインバータを一体化した筐体により大きな熱エネルギーを蓄え、油圧配管を筐体で包囲して断熱することで、作動油の温度を高く保持でき、温度の時間変化も緩やかにすることができる。
【0046】
そして、作動油温度の時間変化が緩やかになった結果、作動油の粘度の変動が緩和され、操舵補助力を安定させることが可能となる。
また、本実施形態に係る自動車1Aは、操舵が行われていない場合および作動油の温度が最低温度T0より低い場合に、電動モータ50を駆動するための目標d軸電流値Id*を出力し、コイル52の温度を上昇させる。
そのため、操舵が行われず、電動モータ50が回転しない状況および作動油の温度が低い状況においても、電動モータ50から熱が発せられることとなり、作動油の温度を目的の温度に近づけることができる。
したがって、操舵補助力をさらに安定させることが可能となる。
【0047】
図9は、油圧ポンプの作動油吐出口65付近の作動油温度の時間変化を示す図である。
図9において、破線は、本発明を適用しない場合を示す比較例であり、実線は本実施形態の場合を示している。
本実施形態においては、コントロールユニット40と電動モータ50と油圧ポンプ60とを接近させて一体にし、コントロールユニット40に内装したインバータ42と電動モータ50との蓄熱体として油圧ポンプ筐体56を形成し、さらにヒートシンク43を隣接させている。
【0048】
この一体構造によって、2つの熱源であるインバータ42およびコイル52の熱を、蓄熱体(油圧ポンプ筐体56およびヒートシンク43)の体積を大きく確保して蓄熱できる。さらに、油圧ポンプ60の作動油吐出口65から油圧ポンプ外部油圧配管70までの作動油の経路は、油圧ポンプ筐体内油圧配管66を油圧ポンプ筐体56で包囲し、外部から離間して通過させたことによって外気から断熱される。
【0049】
このように、従来、モーターコイルのみの熱エネルギーを利用していたところを、第1実施形態では、インバータ42も利用して熱エネルギーを大きくし、この熱エネルギーを、電動モータ50、インバータ42、ヒートシンク43で一体化し、体積を大きく確保した油圧ポンプ筐体56によって蓄えられるようにした。また、第1実施形態の熱伝達の経路は、電動モータ50のコイル52およびインバータ42から油圧ポンプ筐体56への経路と合わせて、油圧ポンプ60、ヒートシンク43、駆動シャフト54、油圧ポンプロータ64から油圧ポンプ筐体56への経路があるため蓄熱が早い。さらに、油圧ポンプ筐体56外部から最大距離付近の部位に油圧配管を通すことで作動油を断熱していることから、作動油温度の時間変化を緩やかにできる。
【0050】
なお、上記実施形態において、トルクセンサ30が操舵状態検出手段に対応し、電動モータ50および油圧ポンプ60がアシスト装置に対応し、インバータ制御装置41、インバータ42およびヒートシンク43が操舵補助機構に対応している。また、電動モータ50が電動モータに対応し、油圧ポンプ60が油圧ポンプに対応し、パワーシリンダ80およびピストン81が油圧機構に対応している。また、油圧ポンプ筐体内油圧配管66が油圧配管に対応し、コントロールユニット40が制御装置に対応し、インバータ42がインバータに対応し、インバータ制御装置41がインバータ制御装置に対応している。また、油圧ポンプ筐体56が筐体に対応し、ヒートシンク43が蓄熱部に対応し、駆動シャフト54が回転軸に対応している。また、コントロールユニット40が作動油温度調整手段に対応している。
【0051】
(第1実施形態の効果)
(1)インバータを電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、油圧配管をインバータに近接して配置した。
そのため、インバータと電動モータとから発生した熱を油圧配管に伝達して、作動油の温度変化を抑制することができる。
したがって、電動油圧装置の動作をより安定させることが可能となる。
(2)インバータと作動油を蓄積するリザーバタンクとをモータの回転軸に対して同一の側に配置し、油圧配管をインバータとリザーバタンクとの間に配置した。
したがって、より少ないスペースに集約して電動油圧装置を配置できる。
【0052】
(3)インバータを電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、油圧配管を油圧ポンプよりもインバータと電動モータとに近接して配置した。
そのため、インバータと電動モータとから発生した熱を油圧配管に伝達して、作動油の温度変化を抑制することができる。
したがって、電動油圧装置の動作をより安定させることが可能となる。
【0053】
(4)インバータを電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、油圧ポンプの吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管を油圧ポンプよりもインバータと電動モータとに近接して配置した。
そのため、インバータと電動モータとから発生した熱を油圧ポンプの吐出側あるいは吸入側の油圧配管に伝達して、作動油の温度変化を抑制することができる。
したがって、電動油圧装置の動作をより安定させることが可能となる。
【0054】
(5)電動モータと、インバータと、電動モータおよびインバータで発生した熱を蓄える蓄熱部とを一体に保持する筐体を構成し、蓄熱部をインバータと電動モータに隣接して配置すると共に、油圧ポンプの吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管を筐体内の中央部を通過するように配置した。
したがって、電動モータおよびインバータにおいて発せられた熱を作動油に伝達し、作動油を目的の温度に上昇させることが容易となる。
(6)油圧配管を、筐体内の回転軸周りを通過するように構成した。
したがって、筐体内において、油圧配管を効率的に配置しつつ、回転軸を介して伝達される電動モータからの熱を油圧配管内の作動油に効率的に供給することができる。
【0055】
(7)インバータを電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、筐体を介して油圧配管をインバータに近接して配置し、インバータおよび電動モータで発生した熱を筐体に伝熱すると共に、筐体の熱を油圧配管に伝熱する。
したがって、インバータおよび電動モータの熱を作動油に伝達して作動油の温度を上昇させることができると共に、インバータおよび電動モータを効率的に冷却することができる。
【0056】
(8)インバータと作動油を蓄積するリザーバタンクとをモータの回転軸に対して同一の側に配置すると共に、油圧配管をインバータとリザーバタンクとの間に配置し、インバータで発生した熱を油圧配管に伝熱し、油圧配管の熱を前記リザーバタンクに伝熱する。
したがって、インバータの熱を速やかに油圧配管に伝達することができ、インバータを効率的に冷却することができる。
(9)インバータを電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、油圧配管を油圧ポンプよりもインバータと電動モータとに近接して配置し、インバータおよび電動モータで発生した熱を油圧配管に伝熱すると共に、油圧配管の熱を油圧ポンプに伝熱する。
したがって、インバータと電動モータとから発生した熱を油圧配管に伝達して、インバータおよび電動モータの冷却を促すことができる。
【0057】
(10)インバータを電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、油圧ポンプの吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管を油圧ポンプよりもインバータと電動モータとに近接して配置し、インバータおよび電動モータで発生した熱を油圧ポンプの吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管に伝熱すると共に、油圧配管の熱を油圧ポンプに伝熱する。
したがって、インバータと電動モータとから発生した熱を油圧ポンプの吐出側あるいは吸入側の油圧配管に伝達し、さらに油圧配管の熱を油圧ポンプに伝達することができるため、インバータおよび電動モータの冷却を促すことができる。
【0058】
(11)電動モータと、インバータと、電動モータおよびインバータで発生した熱を蓄える蓄熱部とを一体に保持する筐体を構成し、蓄熱部をインバータと電動モータに隣接して配置すると共に、油圧ポンプの吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管を筐体内の中央部を通過するように配置し、蓄熱部に蓄えた熱を前記油圧配管に伝熱する。
したがって、蓄熱部から油圧配管に伝熱し、油圧配管の作動油を介して放熱することができるため、電動モータとインバータとの冷却を促すことができる。
【0059】
(12)油圧配管を、筐体内の回転軸周りを通過するように設置し、蓄熱部に蓄えた熱を油圧配管に伝熱する。
したがって、回転軸および油圧配管を介して、電動モータの熱を伝達することができ、電動モータの冷却を促すことができる。
(13)作動油の温度を調整する作動油温度調整手段が、電動モータのコイルを発熱させるための電流を通電して作動油の温度を上昇させる。
したがって、作動油の温度が低い場合に、電動モータのコイルが発する熱によって、作動油の温度を目的の温度に近づけることが可能となる。
【0060】
(14)作動油温度が設定した閾値未満であり、非操舵状態であると判定した場合、電動モータのコイルを発熱させ温度を上昇させるための電流を算出する。
したがって、非操舵状態で電動モータが作動せず、作動油の温度が低い場合に、電動モータのコイルを発熱させることによって、作動油の温度を目的の温度に近づけることが可能となる。
(15)作動油の温度を調整する場合に用いる第1の補助力指令電流マップと、作動油の調整を行わない場合に用いる第2の補助力指令電流マップとを含む複数の補助力指令電流マップのうち、いずれかの補助力指令電流マップを選択して補助力指令電流演算手段によってコイルを発熱させる電流を算出する。
したがって、補助力指令電流マップを切り替えて補助力指令電流を算出するため、作動油の温度状態に応じて簡単に適切な電流値を算出することができる。
【0061】
(16)電動モータと電動モータを制御するインバータとを隣接させて一体に構成し、作動油の油圧配管をインバータに近接して配置することにより、電動モータおよびインバータから発生した熱を油圧配管に伝熱する。
そのため、インバータと電動モータとから発生した熱を油圧配管に伝達して、作動油の温度変化を抑制することができる。
したがって、電動油圧装置の動作をより安定させることが可能となる。また、インバータおよび電動モータの冷却を促すことができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態に対して、システム起動(走行開始)から一定時間経過後の作動油温度に基づいて、制御する作動油温度幅を決定するものである。
したがって、第1実施形態と異なる部分であるモータ制御処理について説明する。
図10は、第2実施形態におけるモータ制御処理を示すフローチャートである。
コントロールユニット40は、自動車1Aのイグニションオンと共にモータ制御処理を繰り返し実行する。
【0063】
図10において、モータ制御処理を開始すると、コントロールユニット40は、各種状態信号を読み込み、基本アシスト指令値演算部によって基本アシスト(補助力)指令値を算出する。また、コントロールユニット40は、非操舵判断部に非操舵判断フラグStの値を読み込み、温度センサ32の検出値Th(作動油温度)を読み込む。さらに、コントロールユニット40は、システム起動後の経過時間tを読み込む(ステップS1100)。なお、システム起動後の経過時間は、コントロールユニット40のシステムクロックを用いて取得することができる。
【0064】
次に、コントロールユニット40は、システム起動後の経過時間tが、設定した経過時間の閾値Tthより大きいか否かの判定を行う(ステップS1200)。ここで、経過時間の閾値Tthは、車両の主駆動部(エンジン、補機等)が十分温まる時間(例えばエンジン冷却水計が消えるまでの時間)を考慮して決定されている。
ステップS1200において、システム起動後の経過時間tが、経過時間の閾値Tth以下であると判定した場合、コントロールユニット40は、非操舵判断フラグStの値が“1”であるか否かの判定を行う(ステップS1300)。
【0065】
ステップS1300において、非操舵判断フラグStの値が“1”でないと判定した場合、電動モータ50が動作することによって作動油温度は上昇し、作動油の温度を上昇させる制御は必要ないことから、コントロールユニット40は、通常のアシスト制御のためのマップMaを使用して、モータ回転数ωから目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*を算出する(ステップS1400)。
【0066】
一方、ステップS1300において、非操舵判断フラグStの値が“1”であると判定した場合、電動モータ50が動作しないために作動油温度を上昇させる制御が必要であることから、コントロールユニット40は、作動油温度を上昇させるためのマップMbを使用して、目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*を算出する(ステップS1500)。
【0067】
ステップS1400,S1500の後、コントロールユニット40は、マップMaあるいはマップMbを使用して算出した目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*をインバータ42に出力して電動モータ50の制御を行う(ステップS1600)。
一方、ステップS1200において、システム起動後の経過時間tが、経過時間の閾値Tthより大きいと判定した場合、コントロールユニット40は、作動油温度の基準として用いる基準温度Tgに、現在の作動油温度Thを設定する(ステップS1700)。
このとき、作動油温度の変動で操舵補助力に影響することがないよう作動油温度を一定幅に管理するため、基準温度Tgを中心とした温度幅Tgmax(上限値)とTgmin(下限値)を決定する。
【0068】
図11は、作動油の粘度特性を示す模式図である。
図11に示すように、作動油の粘度は、その温度域T1,T2によって2つの傾きに変化する特性を有している。そこで、基準温度Tgが作動油温度域T1,T2のいずれにあるかによって作動油粘度が一定幅になるように制御温度幅TgmaxとTgminを設定する。したがって、低い温度域T1の場合、TgmaxとTgminの差は小さくなり、高い温度域T2の場合、TgmaxとTgminの差は大きくなる。これにより、高い温度域T2においては、過度に細かい制御を行うことがなくなり、不要なエネルギーの消費を抑えることができる。
【0069】
次に、コントロールユニット40は、非操舵判断フラグStの値が“1”であるか否かの判定を行う(ステップS1800)。
ステップS1800において、非操舵判断フラグStの値が“1”でないと判定した場合、コントロールユニット40は、通常のアシスト制御のためのマップMaを使用して、モータ回転数ωから目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*を算出する(ステップS1900)。
そして、コントロールユニット40は、マップMaを使用して算出した目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*をインバータ42に出力して電動モータ50の制御を行う(ステップS2000)。
【0070】
一方、ステップS1800において、非操舵判断フラグStの値が“1”であると判定した場合、コントロールユニット40は、作動油温度Thが基準温度Tgを基に定めた基準温度の上限値Tgmax以上であるか否かの判定を行う(ステップS2100)。
ステップS2100において、作動油温度Thが基準温度の上限値Tgmax以上であると判定した場合、コントロールユニット40は、ステップS1900の処理に移行する。
【0071】
一方、ステップS2100において、作動油温度Thが基準温度の上限値Tgmax未満であると判定した場合、コントロールユニット40は、作動油温度Thが基準温度Tgを基に定めた基準温度の下限値Tgminより大きいか否かの判定を行う(ステップS2200)。
ステップS2200において、作動油温度Thが基準温度の下限値Tgmin以下であると判定した場合、コントロールユニット40は、作動油温度を上昇させるためのマップMbを使用して、目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*を算出する(ステップS2300)。
ステップS2300の後、コントロールユニット40は、ステップS2000の処理に移行する。
【0072】
一方、ステップS2200において、作動油温度Thが基準温度の下限値Tgminより大きいと判定した場合、コントロールユニット40は、マップMbの場合よりも目標d軸電流Id*を抑制したマップMcを使用して、目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*を算出する(ステップS2400)。なお、マップMcの具体的特性については後述する。
そして、コントロールユニット40は、マップMcを使用して算出した目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*をインバータ42に出力して電動モータ50の制御を行う(ステップS2500)。
ステップS1600、S2000およびS2500の後、コントロールユニット40は、モータ制御処理を繰り返す。
【0073】
(マップMcの特性)
図12は、マップMcを示す図である。
上述の通り、マップMcは、マップMbよりもd軸電流を抑制した特性を有しており、モータ回転数ωに関わらず、例えばd軸電流の最大値の半分の値となる特性である。
このような特性により、消費電力を抑えつつ、作動油温度を一定の範囲に収めることが可能となる。
【0074】
(作用)
図13は、第2実施形態において、パワーステアリングシステムが起動してから一定時間後の作動油温度を基点にした温度幅で制御を行った場合の作動油温度の時間変化を示す図である。
コントロールユニット40の補助力指令値演算部41bが、所定時間Tth経過後の作動油温度Tgを基準にしてd軸の通電電流を制御した結果、作動油温度Thは、温度範囲TgmaxからTgminまでの温度幅に入るようになる。ここでは、作動油の絶対温度を予め設定した値に制御するのではなく、現在の環境によって現れた作動油の温度を基準として、温度変化を一定に収めることにより、車両が置かれている環境に応じた一定の温度領域で作動油温度(即ち作動油の粘度)を制御することとなる。
【0075】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、外気への放熱と車両の駆動部の発熱で、油圧ポンプ60の作動油温度がほぼ平衡になった点を基準として、作動油温度を管理する。
したがって、操舵補助力を安定させることが可能となると共に、運転者に対して、操舵反力の変動に違和感を与えることを防止できる。
なお、上記実施形態において、車速センサ31が車両走行状態検出手段に対応し、温度センサ32が温度検出手段に対応し、操舵/走行状態判断部41aが基本アシスト指令値演算手段に対応している。また、補助力指令値演算部41bが補助力指令電流演算手段に対応している。
【0076】
(第2実施形態の効果)
(1)非操舵状態であると判定した場合に、走行開始から設定時間後に検出した作動油温度に基づいて、作動油温度の制御幅を決定し、作動油温度が該制御幅となるようにコイルを発熱させ温度を上昇させる電流を算出する。
したがって、作動油温度がほぼ平衡になった点を基準として、作動油温度を管理することができ、操舵補助力を安定させることが可能となると共に、運転者に対して、操舵反力の変動に違和感を与えることを防止できる。
【0077】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態では、第2実施形態に対して、非操舵判断部を設置しない構成としている。
また、第2実施形態と同様に、システム起動から一定時間経過後の作動油の基準温度Tgを基にモータ電流を制御する。
以下、第1実施形態と異なる部分であるモータ制御処理について説明する。
図14は、第3実施形態におけるモータ制御処理を示すフローチャートである。
コントロールユニット40は、自動車1Aのイグニションオンと共にモータ制御処理を繰り返し実行する。
【0078】
図14において、モータ制御処理を開始すると、コントロールユニット40は、各種状態信号を読み込み、基本アシスト指令値演算部によって基本アシスト(補助力)指令値を算出する。また、コントロールユニット40は、温度センサ32の検出値Th(作動油温度)を読み込む。さらに、コントロールユニット40は、システム起動後の経過時間tを読み込む(ステップS3100)。なお、システム起動後の経過時間は、コントロールユニット40のシステムクロックを用いて取得することができる。
【0079】
次に、コントロールユニット40は、システム起動後の経過時間tが、設定した経過時間の閾値Tthより大きいか否かの判定を行う(ステップS3200)。ここで、経過時間の閾値Tthは、車両の主駆動部(エンジン、補機等)が十分温まる時間(例えばエンジン冷却水計が消えるまでの時間)を考慮して決定されている。
ステップS3200において、システム起動後の経過時間tが、経過時間の閾値Tth以下であると判定した場合、コントロールユニット40は、通常のアシスト制御のためのマップMaを使用して、モータ回転数ωから目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*を算出する(ステップS3300)。
【0080】
そして、コントロールユニット40は、マップMaを使用して算出した目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*をインバータ42に出力して電動モータ50の制御を行う(ステップS3400)。
一方、ステップS3200において、システム起動後の経過時間tが、経過時間の閾値Tthより大きいと判定した場合、コントロールユニット40は、作動油温度の基準として用いる基準温度Tgに、現在の作動油温度Thを設定する(ステップS3500)。
【0081】
このとき、作動油温度の変動で操舵補助力に影響することがないよう作動油温度を一定幅に管理するため、基準温度Tgを中心とした温度幅Tgmax(上限値)とTgmin(下限値)を決定する(図11参照)。
次に、コントロールユニット40は、作動油温度Thが基準温度Tgを基に定めた基準温度の上限値Tgmax以上であるか否かの判定を行う(ステップS3600)。
【0082】
ステップS3600において、作動油温度Thが基準温度の上限値Tgmax未満であると判定した場合、コントロールユニット40は、操舵トルクとモータ回転数とによってアシスト制御するためのマップMdを使用して、モータ回転数ωから目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*を算出する(ステップS3700)。
そして、コントロールユニット40は、マップMdを使用して算出した目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*をインバータ42に出力して電動モータ50の制御を行う(ステップS3800)。ステップS3800では、作動油温度Thが上限値Tgmaxよりも低いため、d軸電流を通電して作動油温度を上げながら、アシスト力を補助できるようq軸電流も流している。
【0083】
一方、ステップS3600において、作動油温度Thが基準温度の上限値Tgmax以上であると判定した場合、コントロールユニット40は、通常のアシスト制御のためのマップMaを使用して、モータ回転数ωから目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*を算出する(ステップS3900)。
そして、コントロールユニット40は、マップMaを使用して算出した目標d軸電流値Id*および目標q軸電流値Iq*をインバータ42に出力して電動モータ50の制御を行う(ステップS4000)。
ステップS3400、S3800およびS4000の後、コントロールユニット40は、モータ制御処理を繰り返す。
【0084】
(マップMdの特性)
図15は、マップMdを示す図である。
上述の通り、マップMdは、操舵トルクとモータ回転数で通電電流を制御する特性を有している。
ここでは、操舵トルクがゼロの時、いわゆる非操舵状態と判断したときはd軸電流を最大にする。
また、設定した閾値より低目標トルク、低回転数領域においても、d軸電流を最大とし、要求トルクが発生したときは、そのトルクを発生させるためにq軸電流も通電する。回転数が上昇するにつれてq軸電流が通電されるため、温度を上昇させる必要はないことから、マップMaの高回転数領域と同様になるように連続的に電流値をつなげる。
【0085】
(作用)
図16は、第3実施形態において、パワーステアリングシステムが起動してから一定時間後の作動油温度を基点にした温度幅で制御を行った場合の作動油温度の時間変化を示す図である。
図16において、破線は、本発明を適用しない場合を示す比較例であり、実線は本実施形態の場合を示している。
本実施形態では、操舵状態と、非操舵状態とを区別していないことから、作動油温度Thが上限値Tgmax以下の場合は、マップDに従って目標電流値(Iq,Id)を算出する。これにより、低操舵トルク、低モータ回転数となる直線走行時においても、作動油温度の低下を防止することができる。さらに、操舵トルクとモータ回転数の所定条件が成立した場合にd軸電流(磁束生成電流)を通電することから、状況に応じてきめ細かく通電できるため、目標温度への到達時間を短縮することができる。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、非操舵状態および操舵入力が小さい場合(低操舵トルク、低モータ回転数の場合)に、d軸電流を通電して作動油の温度を上昇させる。
そのため、直線走行時等、比較的小さい操舵入力のみが行われる状況においても、作動油の温度変化を一定に収めることができる。
したがって、操舵補助力を安定させることが可能となると共に、運転者に対して、操舵反力の変動に違和感を与えることを防止できる。
なお、上記実施形態において、車速センサ31が車両走行状態検出手段に対応し、温度センサ32が温度検出手段に対応し、操舵/走行状態判断部41aが基本アシスト指令値演算手段に対応している。また、補助力指令値演算部41bが補助力指令電流演算手段に対応している。
【0087】
(第3実施形態の効果)
(1)走行開始から設定時間後に検出した作動油温度に基づいて、作動油温度の制御幅を決定し、作動油温度が該制御幅の上限値未満である場合に、非操舵状態または設定した閾値より小さい操舵入力の状態を示す前記操舵状態であるときに作動油温度が前記制御幅となるように、前記コイルを発熱させ温度を上昇させる電流を算出する。
そのため、直線走行時等、比較的小さい操舵入力のみが行われる状況においても、作動油の温度変化を一定に収めることができる。
したがって、操舵補助力を安定させることが可能となると共に、運転者に対して、操舵反力の変動に違和感を与えることを防止できる。
【0088】
(応用例1)
上記各実施形態において、油圧ポンプ60の吐出側の油圧配管である油圧ポンプ筐体内油圧配管66および油圧ポンプ外部油圧配管70を、電動モータ50およびインバータ42に近接して配置することとした。これに対し、油圧ポンプ60の吸入側の油圧配管を電動モータ50およびインバータ42に近接して配置することとしても良い。
この場合にも、電動モータ50とインバータ42とによって発生した熱を、油圧ポンプ筐体56が蓄熱体となって保持し、油圧配管が油圧ポンプ筐体56の中央に配置されることで、外気からの距離が遠ざけられて断熱する。
したがって、熱源と油圧ポンプとインバータを一体化した筐体により大きな熱エネルギーを蓄え、油圧配管を筐体で包囲して断熱することで、作動油の温度を高く保持でき、温度の時間変化も緩やかにすることができる。
そして、作動油温度の時間変化が緩やかになった結果、作動油の粘度の変動が緩和され、操舵補助力を安定させることが可能となる。
【0089】
(応用例2)
上記各実施形態において、図1の温度センサ32は、作動油の温度を検出することとして説明した。
これに対し、作動油の温度に代えて、インバータ42の温度を検出し、インバータ42の温度を基に作動油の温度を推定することができる。この場合、インバータ42の温度を用いて、インバータ温度の加熱を防止する構成とすることができる。
【0090】
(適用例)
第1〜第3実施形態および応用例において、本発明を自動車の電動パワーステアリング装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は、電動モータおよび油圧を用いた他の装置にも適用することができる。
例えば、作動油としての冷媒を搬送するポンプを電動モータで駆動するエアコンプレッサー、電動油圧フォークリフト、油圧によるアシスト機能を備えたブレーキ、油圧により締結の切り替え動作を行うクラッチ等の電動油圧装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 電動パワーステアリング装置、1A 自動車、10 ステアリングホイール、20 ステアリングシャフト、25 ラック、30 トルクセンサ、31 車速センサ、32 温度センサ、33 舵角センサ、40 コントロールユニット、41 インバータ制御装置、41a 走行状態判断部、41b 補助力指令値演算部、42 インバータ、43 ヒートシンク、50 電動モータ、51 ロータリエンコーダ、52 コイル、53 ロータ、54 駆動シャフト、55 ベアリング、56 油圧ポンプ筐体、60 油圧ポンプ、61 吸入口、62 タンク、63 吸入チェック弁、64 油圧ポンプロータ、65 作動油吐出口、66 油圧ポンプ筐体内油圧配管、67 ポート、70 油圧ポンプ外部油圧配管、80 パワーシリンダ、81 ピストン、121 アウタロータ、121a 内歯歯車、121b 外周面、122 インナロータ、122a 外歯歯車、123 カムリング、124,125 ハウジング、127 油圧ポンプ室、127a 左側領域、127b 右側領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータによって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプによって送出される作動油によって駆動される油圧機構と、
前記油圧機構と前記油圧ポンプとを連通する油圧配管と、
前記電動モータを制御するインバータと、
前記インバータを制御するインバータ制御装置とを有し、
前記インバータを前記電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、前記油圧配管を前記インバータに近接して配置したことを特徴とする電動油圧装置。
【請求項2】
前記インバータと作動油を蓄積するリザーバタンクとを前記モータの回転軸に対して同一の側に配置し、前記油圧配管を前記インバータと前記リザーバタンクとの間に配置したことを特徴とする請求項1記載の電動油圧装置。
【請求項3】
前記インバータを前記電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、前記油圧配管を前記油圧ポンプよりも前記インバータと前記電動モータとに近接して配置したことを特徴とする請求項1または2記載の電動油圧装置。
【請求項4】
車両を操舵する操舵機構と、
前記操舵機構における操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、
前記操舵機構に補助力を付与するアシスト装置と、
前記操舵状態検出手段の検出結果に基づいて、前記アシスト装置を制御する制御装置を備えた操舵補助機構と、を備える電動パワーステアリング装置を構成し、
前記アシスト装置は、
前記操舵機構の操舵状態に応じて駆動される前記電動モータと、前記油圧ポンプと、前記操舵機構に取り付けた前記油圧機構と、前記油圧配管とを備え、
前記制御装置は、
前記インバータと、前記インバータ制御装置とを有し、
前記インバータを前記電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、前記油圧ポンプの吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管を前記油圧ポンプよりも前記インバータと前記電動モータとに近接して配置したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電動油圧装置。
【請求項5】
前記電動モータと、前記インバータと、前記電動モータおよび前記インバータで発生した熱を蓄える蓄熱部とを一体に保持する筐体を有し、
前記蓄熱部を前記インバータと前記電動モータに隣接して配置すると共に、油圧ポンプの吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管を前記筐体内の中央部を通過するように配置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電動油圧装置。
【請求項6】
前記電動モータの回転を前記油圧ポンプに伝達する回転軸を有し、
前記油圧配管は、前記筐体内の前記回転軸周りを通過させたことを特徴とする請求項5記載の電動油圧装置。
【請求項7】
前記インバータを前記電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、筐体を介して前記油圧配管を前記インバータに近接して配置し、前記インバータおよび電動モータで発生した熱を前記筐体に伝熱すると共に、前記筐体の熱を前記油圧配管に伝熱することを特徴とする請求項1記載の電動油圧装置。
【請求項8】
前記インバータと作動油を蓄積するリザーバタンクとを前記モータの回転軸に対して同一の側に配置すると共に、前記油圧配管を前記インバータと前記リザーバタンクとの間に配置し、前記インバータで発生した熱を前記油圧配管に伝熱し、前記油圧配管の熱を前記リザーバタンクに伝熱することを特徴とする請求項1記載の電動油圧装置。
【請求項9】
前記インバータを前記電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、前記油圧配管を前記油圧ポンプよりも前記インバータと前記電動モータとに近接して配置し、前記インバータおよび電動モータで発生した熱を前記油圧配管に伝熱すると共に、前記油圧配管の熱を前記油圧ポンプに伝熱することを特徴とする請求項7または8記載の電動油圧装置。
【請求項10】
車両を操舵する操舵機構と、
前記操舵機構における操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、
前記操舵機構に補助力を付与するアシスト装置と、
前記操舵状態検出手段の検出結果に基づいて、前記アシスト装置を制御する制御装置を備えた操舵補助機構と、を備える電動パワーステアリング装置を構成し、
前記アシスト装置は、
前記操舵機構の操舵状態に応じて駆動される前記電動モータと、前記油圧ポンプと、前記操舵機構に取り付けた前記油圧機構と、前記油圧配管とを備え、
前記制御装置は、
前記インバータと、前記インバータ制御装置とを有し、
前記インバータを前記電動モータに隣接させて一体に構成すると共に、前記油圧ポンプの吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管を前記油圧ポンプよりも前記インバータと前記電動モータとに近接して配置し、前記インバータおよび電動モータで発生した熱を前記油圧ポンプの吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管に伝熱すると共に、前記油圧配管の熱を前記油圧ポンプに伝熱することを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の電動油圧装置。
【請求項11】
前記電動モータと、前記インバータと、前記電動モータおよび前記インバータで発生した熱を蓄える蓄熱部とを一体に保持する筐体を有し、
前記蓄熱部を前記インバータと前記電動モータに隣接して配置すると共に、油圧ポンプの吐出側もしくは吸入側の少なくとも一方の油圧配管を前記筐体内の中央部を通過するように配置し、前記蓄熱部に蓄えた熱を前記油圧配管に伝熱することを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の電動油圧装置。
【請求項12】
前記電動モータの回転を前記油圧ポンプに伝達する回転軸を有し、
前記油圧配管は、前記筐体内の前記回転軸周りを通過させ、前記蓄熱部に蓄えた熱を前記油圧配管に伝熱することを特徴とする請求項11記載の電動油圧装置。
【請求項13】
前記制御装置は、作動油の温度を調整する作動油温度調整手段を備え、
前記作動油温度検出手段は、前記電動モータのコイルを発熱させるための電流を通電することにより、前記作動油の温度を上昇させることを特徴とする請求項4記載の電動油圧装置。
【請求項14】
車両の走行状態を検出する車両走行状態検出手段と、
油圧ポンプ吐出口の作動油温度を検出する温度検出手段とを備え、
前記制御装置は、
操舵状態と走行状態から、アシストトルクを算出する基本アシスト指令値演算手段と、前記電動モータの回転トルクを生成する電流と、コイルを発熱させ温度を上昇させる電流とを算出する補助力指令電流演算手段とを備え、
前記作動油温度調整手段は、前記作動油温度が設定した閾値未満であり、かつ、非操舵状態であると判定した場合に、前記補助力指令電流演算手段によって、コイルを発熱させ温度を上昇させる電流を算出することを特徴とする請求項13記載の電動油圧装置。
【請求項15】
車両の走行状態を検出する車両走行状態検出手段と、
油圧ポンプ吐出口の作動油温度を検出する温度検出手段とを備え、
前記制御装置は、
操舵状態と走行状態から、アシストトルクを算出する基本アシスト指令値演算手段と、前記電動モータの回転トルクを生成する電流と、コイルを発熱させ温度を上昇させる電流とを算出する補助力指令電流演算手段とを備え、
前記作動油温度調整手段は、非操舵状態であると判定した場合に、前記補助力指令電流演算手段によって、走行開始から設定時間後に検出した作動油温度に基づいて、作動油温度の制御幅を決定し、作動油温度が該制御幅となるように前記コイルを発熱させ温度を上昇させる電流を算出することを特徴とする請求項13記載の電動油圧装置。
【請求項16】
車両の走行状態を検出する車両走行状態検出手段と、
油圧ポンプ吐出口の作動油温度を検出する温度検出手段とを備え、
前記制御装置は、
操舵状態と走行状態から、アシストトルクを算出する基本アシスト指令値演算手段と、前記電動モータの回転トルクを生成する電流と、コイルを発熱させ温度を上昇させる電流とを算出する補助力指令電流演算手段とを備え、
前記作動油温度調整手段は、前記補助力指令電流演算手段によって、走行開始から設定時間後に検出した作動油温度に基づいて、作動油温度の制御幅を決定し、作動油温度が該制御幅の上限値未満である場合に、非操舵状態または設定した閾値より小さい操舵入力の状態を示す前記操舵状態であるときに作動油温度が前記制御幅となるように、前記コイルを発熱させ温度を上昇させる電流を算出することを特徴とする請求項13記載の電動油圧装置。
【請求項17】
前記作動油温度調整手段は、作動油の温度を調整する場合に用いる第1の補助力指令電流マップと、作動油の調整を行わない場合に用いる第2の補助力指令電流マップとを含む複数の補助力指令電流マップを備え、いずれかの前記補助力指令電流マップを選択して前記補助力指令電流演算手段によってコイルを発熱させる電流を算出することを特徴とする請求項13から16のいずれか1項に記載の電動油圧装置。
【請求項18】
電動モータと前記電動モータを制御するインバータとを隣接させて一体に構成し、作動油の油圧配管を前記インバータに近接して配置することにより、前記電動モータおよび前記インバータから発生した熱を前記油圧配管に伝熱することを特徴とする電動油圧装置の作動油温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−178381(P2011−178381A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226579(P2010−226579)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】