説明

電動車両のバッテリ構造

【課題】 金属製のバッテリケース内に収容されたバッテリに対する冷却を犠牲にすることなく、該バッテリへの電磁ノイズの影響を抑制する。
【解決手段】 複数の電池セル10aとこれらの電池セル10aを制御する制御装置10bとが一体化されたバッテリモジュール10と、該バッテリモジュール10を収容するとともに空気取入れ口12a、12b、12cを備えた金属製のバッテリケース12とを有する電動車両のバッテリ構造であって、前記バッテリケース12を車体のフロアパネル14から上方に離間した状態で支持するバッテリケース支持手段20を有し、前記空気取入れ口12a、12b、12cは、該ケース12のフロアパネル14と対向する底面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の駆動モータに電力を供給するバッテリの構造に関し、バッテリの製造技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動車両の駆動モータに電力を供給するバッテリとして、複数の電池セルと、各電池セルの状態を検出してこれらの電池セルを制御する制御装置とが一体に構成されたバッテリモジュールが提供されている。このようなバッテリモジュールは、特許文献1に記載されているように、電磁ノイズ対策として、また物理的接触から保護するために金属製のバッテリケースに収容された状態で車両に搭載されている。また、バッテリケースは、空調風などを内部に取入れるための空気取入れ口を備えており、これにより内部に収容されているバッテリモジュールが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−185863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のバッテリモジュールの場合、該バッテリモジュールを収容する金属製のバッテリケース内への空気の取入れ口が、該ケースの側面で開口しているため、例えば車両の外部からウィンドウガラスを透過して車室内に侵入するなどした電磁ノイズが、該空気取入れ口からケース内部に侵入しやすい。その結果、バッテリケース内のバッテリモジュールの制御装置が電磁ノイズの影響を受ける可能性がある。
【0005】
この電磁ノイズの対策としてバッテリケースの空気取入れ口を小さくすると、今度は収容されているバッテリモジュールの冷却が犠牲になる。
【0006】
そこで、本発明は、金属製バッテリケースに収容され、該ケースに形成された空気取入れ口を介して流入した空気によって冷却されるバッテリに対し、冷却を犠牲にすることなく、外部からの電磁ノイズの影響を抑制することができるバッテリ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の電池セルとこれらの電池セルを制御する制御装置とが一体化されたバッテリモジュールと、該バッテリモジュールを収容するとともに空気取入れ口を備えた金属製のバッテリケースとを有する電動車両のバッテリ構造であって、
前記バッテリケースを車体のフロアパネルから上方に離間した状態で支持するバッテリケース支持手段を有し、
前記空気取入れ口は、該ケースのフロアパネルと対向する底面に形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動車両のバッテリ構造において、
フロアパネルの左右両側部に立設された左右一対のシート用ブラケット部材に、前記フロアパネルから上方に離間した状態でシートが支持されており、
前記バッテリケースは、該シートの下方の空間に配置されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記空気取入れ口は、前記バッテリケースの底面の車両後側に形成され、
前記バッテリケースの底面に沿って該バッテリケースの車両前側から前記空気取入れ口に空気を案内するダクト部材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記空気取入れ口は、車幅方向に並んで複数形成されているとともに、
前記ダクト部材は、各空気取入れ口に対応させて車幅方向に並んで複数設けられており、かつ、
前記バッテリケース支持手段は、前記複数のダクト部材間に配設されてバッテリケースをフロアに固定するバッテリケース用ブラケット部材で構成されていることを特徴とする。
【0011】
加えて、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記ダクト部材とバッテリケース用ブラケット部材は、前記バッテリケースに共止めされていることを特徴とする。
【0012】
加えてまた、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記バッテリケース内における空気取入れ口からバッテリモジュールに至る空気の通過経路にヒータが配置されていることを特徴とする。
【0013】
さらに加えて、請求項7に記載の発明は、請求項3から6のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記シートは、車室内の後部に配置されたリヤシートであり、かつ、
前記バッテリケースの車両前側から該ケースの一方の側面に沿って車両後側に向かって延びる排気通路が設けれらるとともに、
前記リヤシートの後方に配置され、前記排気通路を介して前記バッテリケース内の空気を取り出すブロアを有することを特徴とする。
【0014】
さらに加えて、請求項8に記載の発明は、請求項2から7のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記左右一対のシート用ブラケット部材は、正面視で長方形枠形状断面の構造体であり、各ブラケット部材の両側面に、側面視で重ならないように貫通穴が形成されていることを特徴とする。
【0015】
さらに加えて、請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記バッテリケースは、開閉可能な第2の空気取入れ口を備えるとともに、
車室内における電磁ノイズの強度を検出する電磁ノイズ検出手段と、
前記電磁ノイズ検出手段が検出する電磁ノイズの強度が所定の強度より低いときに、前記第2の空気取入れ口を開口させる取入れ口開閉手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、バッテリモジュールを収容するバッテリケースが支持手段によって車体のフロアパネルから上方に離間した状態で支持され、空気取入れ口がフロアパネルと対向する該バッテリケースの底面に形成される。空気取入れ口が下方に開口し、かつその前方に電磁ノイズを透過しないフロアパネルが存在するため、空気取入れ口を介してバッテリケース内に電磁ノイズが侵入しにくい。その結果、バッテリモジュールの冷却を犠牲にすることなく、該バッテリモジュールに対する外部からの電磁ノイズの影響を抑制できる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、バッテリケースが、車体のフロアパネルの左右両端部に立設された左右一対のシート用ブラケット部材によって該フロアパネルから上方に離間した状態で支持されているシートの下方の空間に配置される。これにより、シートの下方のスペースを有効利用できるとともに、バッテリケースの配置スペースを別途確保する必要がなくなる。
【0018】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、バッテリケースの車両前側から、該バッテリケースの底面の車両後側に形成された空気取入れ口に該バッテリケースの底面に沿って空気を案内するダクト部材が設けられる。これにより、バッテリケースとフロアパネルとの間に一様な空気の流れが生じる。その結果、バッテリケースとフロアパネルとの間に熱だまりが発生することが抑制される。
【0019】
さらにまた、請求項4に記載の発明によれば、空気取入れ口が車幅方向に並んで複数形成されるとともに、ダクト部材が各空気取入れ口に対応させて車幅方向に並んで複数設けられる。また、前記バッテリケース支持手段として、複数のダクト部材間に配設されてバッテリケースをフロアに固定するバッテリケース用ブラケット部材が設けられる。これにより、バッテリケースの剛性が向上し、よりバッテリモジュールの保護が図られる。
【0020】
加えて、請求項5に記載の発明によれば、ダクト部材とバッテリケース用ブラケット部材がバッテリケースに共止めされている。これらの部材がバッテリケースに一体的に設けられていない場合と比較して、製造工程が減少するとともに部品数が減少する。また、さらにバッテリケースの剛性が向上する。
【0021】
加えてまた、請求項6に記載の発明によれば、バッテリケース内における空気取入れ口からバッテリモジュールに至る空気の通過経路にヒータが配置される。これにより、空気取入れ口を介して取り入れた空気をヒータによって暖め、その暖めた空気によりバッテリーモジュールを暖機することができる。その結果、寒冷期であっても、バッテリモジュールは所定の能力を発揮することができる。
【0022】
さらに加えて、請求項7に記載の発明によれば、前記シートは、車室の後部に配置されたリヤシートであり、バッテリケースの車両前側から該ケースの一方の側面に沿って車両後側に向かって延びる排気通路が形成される。また、リヤシートの後方に、排気通路を介してバッテリケース内の空気を取出すブロアが配置される。排気通路がバッテリケースの上面または底面ではなく側面に配設されるので、排気通路のために車高方向に関してスペースを拡大する必要がない。また、ブロアがバッテリケース内の空気を取出すことにより、ケース内部のバッテリモジュールがより冷却される。さらに、リヤシートの後方にブロアが配置されるので、ブロアの騒音が乗員に聴こえ難い。
【0023】
さらに加えて、請求項8に記載の発明によれば、前記左右一対のシート用ブラケット部材が正面視で長方形枠形状断面の構造体で構成され、各ブラケット部材の両側面に、側面視で重ならないように貫通穴が形成されている。これにより、シート用ブラケット部材が軽量化され、かつ、貫通穴を介するバッテリケースの車幅方向からの物理的接触を、貫通穴が車幅方向に見て重なる場合に比べて、阻止することができる。
【0024】
さらに加えて、請求項9に記載の発明によれば、バッテリケースが開閉可能な第2の空気取入れ口を備えるとともに、車室内における電磁ノイズの強度を検出する電磁ノイズ検出手段と、電磁ノイズ検出手段が検出する電磁ノイズの強度が所定の強度より低いときに、第2の空気取入れ口を開口する取入れ口開口手段とが設けられる。これにより、電磁ノイズの影響をバッテリモジュールが大きく受けないときに、多くの空気をバッテリケース内に取入れて、該バッテリモジュールをより冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態にバッテリ構造の正面視の部分断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るバッテリ構造の上面視の部分断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るバッテリ構造の側面視の部分断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るバッテリ構造の側面視の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1は本発明の一実施形態に係るバッテリ構造を正面から見た部分断面図であり、図2は上面から見た部分断面図であり、図3は側面から見た部分断面図である。
【0028】
本発明に係るバッテリ10は、図1に示すように、複数の電池セル10aと、これらの電池セル10aを制御するコントローラ10bとを、樹脂製のボディ10c内に収納して一体化されたバッテリモジュールとして構成されている。
【0029】
バッテリモジュール10のボディ10cには、収納している複数の電池セル10aやコントローラ10bを冷却するために、図2や図3に示すように、車両後側の側面に複数の空気取入れ口10dが、車両前側の側面に複数の空気取出し口10eが形成されている。
【0030】
バッテリモジュール10はまた、金属製のバッテリケース12内に収容されている。
【0031】
この金属製バッテリケース12は、図1に示すように、車両のフロアパネル14の左右両側に立設されたブラケット部材16に該フロアパネル14から上方に離間した状態で支持されているリヤシート18の下方に配置されている。また、バッテリケース12は、図1や図3に示すように、車両前後方向に延びて車幅方向に並んで配置されている複数のブラケット部材20によってフロアパネル14から上方に離間した状態で下方から支持されて該フロアパネル14に固定されている。このように、バッテリケース12をリヤシート18の下方に配置することにより、該リヤシート18の下方のスペースが有効利用される。また、別途、バッテリケース12の配置スペースを確保する必要がなくなる。
【0032】
また、バッテリケース12は、図2や図3に示すように、内部に空気を取入れるための空気取入れ口12a、12b、12cを、その底面の車両後側に車幅方向に並んで備えている。
【0033】
このように、バッテリケース12の側面や上面ではなく、フロアパネル14に対向する底面に空気取入れ口12a、12b、12cを形成する理由は、該ケース12内に電磁ノイズを侵入し難くするためである。
【0034】
この複数の空気取入れ口12a、12b、12cそれぞれに、車両前側から空気を案内するために、図1や図2に示すように、複数のダクト部材22がバッテリーケース12の底面に沿って取付けられている。図1に示すように、複数のダクト部材22は複数のブラケット部材20の間にそれぞれ配置され、該ダクト部材22のバッテリケース12への取付け部22aが、バッテリケース12の底面とブラケット部材20との間に挟まるように、ブラケット部材20とともにバッテリケース12の底面に共止めされている。これにより、共止めしない場合に比べて、製造工程を減少するとともに部品数を減少している。また、この共止め部分において剛性が上がり、バッテリケース12の底面の剛性が向上している。
【0035】
このようなダクト部材22により、バッテリケース12とフロアパネル14との間に一様な空気の流れが生じる。その結果、バッテリケース12とフロアパネル14との間の空間の温度は一定に維持される。
【0036】
なお、ダクト部材22がない場合も、バッテリケース12の空気取入れ口12a、12b、12cに向かう空気の流れが発生するが、それは一様でないため、バッテリケース12とフロアパネル14との間の空間に熱だまりが発生することがある。そして、その熱だまりが、バッテリケース12を暖め、その結果、内部のバッテリモジュール10が高温状態になる可能性がある。
【0037】
さらに、バッテリケース12は、複数の空気取入れ口12a、12b、12cそれぞれから内部に取入れられた空気を、それぞれが別々に直接バッテリモジュール10に向かうのではなく、合流してバッテリモジュール10に向かうようにしている。
【0038】
具体的には、図2に示すように、バッテリケース12内には複数の空間が画成されており、空気取入れ口12aはバッテリケース12の車両後方左側に画成された空間12dに開口し、12bは中央に画成された空間12eに開口し、12cは後方右側に画成された空間12fに開口している。また、左側空間12dと中央空間12eは連絡口12gを介して連通し、右側空間12fと中央空間12eは連絡口12hを介して連通している。そして、中央空間12eは、図3にも示すように、バッテリモジュール10を収容する空間12jに連絡口12kを介して連通している。
【0039】
したがって、空気取入れ口12aから入る空気は、左側空間12d、連絡口12g、中央空間12e、連絡口12kを順に介してバッテリモジュール10の収容空間12jに流れる。空気取入れ口12bから入る空気は、中央空間12e、連絡口12kを介して収容空間12jに流れる。空気取入れ口12cから入る空気は、右側空間12f、連絡口12h、中央空間12e、連絡口12kを順に介して収容空間12jに流れる。
【0040】
このように、3つの空気取入れ口12a、12b、12cそれぞれから取入れた空気を中央空間12eに合流させる理由は、効率よくバッテリモジュール10に流れる空気を暖機するためである。説明すると、中央空間12e内にはヒータ24が配置されており、該ヒータ24は、寒冷期などバッテリモジュール10の温度が低く暖機が必要なとき、中央空間12e内の空気を暖めるように構成されている。これにより、バッテリモジュール10に暖かい空気が流れ、該バッテリモジュール10を暖機することができる。
【0041】
仮に、3つの空気取入れ口12a、12b、12cそれぞれから取入れた空気が合流せず、別々の経路でバッテリモジュール10に流れる場合、それぞれにヒータを設ける必要があり、これは効率が悪く好ましくない。
【0042】
さらにまた、バッテリケース12は、図2に示すように、収容空間12j内の空気を外部に排出するための排気通路12mを備えている。排気通路12mは、バッテリモジュール10の空気取出し口10eの前方から、バッテリケース12の右側側面に沿って車両後側に向かって延びて、バッテリケース12の車両後側側面に形成された排出口12nに接続されている。
【0043】
このように、排気通路12mをバッテリケース12の上面または底面ではなく側面に配設する理由は、上面または底面に排気通路を形成すると、この排気通路のためにシート18の下方のスペースを車高方向に拡大する必要があるからである。
【0044】
バッテリケース12の排出口12nは、図2に示すように、車外に連通する排出ダクト30に接続されている。具体的には、この排出ダクト30は、バッテリケース12の車両後側から右側のリヤフェンダ32内に入り、リヤフェンダ32のアウターパネル32aに形成された排出口32bを介して車外に連通している。また、排出ダクト30の途中には、具体的にはリヤフェンダ32のアウターパネル32aとインナーパネル32c間の空間に、バッテリーケース12内の空気を取出して車外に排出するためのブロア34が設けられている。
【0045】
このブロア34により、バッテリケース12内の空気が強制的に外部に取出され、これにより空気が強制的に複数の空気取入れ口12a、12b、12cを介して該ケース12内に取入れられ、その結果、バッテリモジュール10がより冷却される。
【0046】
なお、ブロア34をリヤシート18の後方、より具体的にはリヤフェンダ32内に配置する理由は、ブロア34の騒音を乗員に聴こえ難くするためである。
【0047】
加えて、バッテリケース12は、図1や図2に示すように、車両幅方向からの物理的接触がないように、リヤシート18の左右一対のブラケット部材16によって保護されている。
【0048】
説明すると、リヤシート18の左右にはドア(図示せず)が存在し、例えばドアが開いてるときに、リヤシート18の下方に配置されているバッテリケース12に対して開いているドアを介して物理的な接触が起こる可能性がある。
【0049】
この対策として、左右一対のブラケット部材16は、図1に示すように、正面視で長方形枠形状断面の構造体で構成され、図2に示すように、外側側面に軽量のために形成されている貫通穴16aと、内側側面に形成されている貫通穴16bとが、側面視で重ならないようにされている。これにより、左右一対のブラケット部材16は、軽量化を実現しつつ、バッテリケース12に対する車幅方向からの物理的接触を阻止している。
【0050】
以上のような構造によれば、図3の太線矢印に示すように、空気は、バッテリケース12とフロアパネル14との間を、ダクト部材22を介して車両前側から後側に案内され、空気取入れ口12a、12b、12cを介してバッテリケース12内に取入れられる。
【0051】
複数の空気取入れ口12a、12b、12cを介してバッテリケース12内に取入れられた空気は、図2の太線矢印に示すように、中央空間12e内で合流し、寒冷期であるときはそこでヒータ24によって暖機され、バッテリモジュール10の収容空間12j内に流れる。そして、空気は、バッテリモジュール10の空気取入れ口10dを介して該モジュール10内に入り、内部の電池セル10aやコントローラ10bを冷却する(寒冷期であるときは暖機する。)。
【0052】
バッテリモジュール10内で電池セル10aやコントローラ10bを冷却(または暖機)した空気は、空気取出し口10eを介してバッテリケース12の排気通路12m内に入り、排出口12nを介して該ケース12外に外出される。
【0053】
そして、バッテリケース12外に排出口12nを介して排出された空気は、排気ダクト30を介して車両外部に排出される。
【0054】
本実施形態によれば、バッテリモジュール10を収容するバッテリケース12がブラケット部材20によって車体のフロアパネル14から上方に離間した状態で支持され、空気取入れ口12a、12b、12cがフロアパネル14と対向する該バッテリケース12の底面に形成される。空気取入れ口12a、12b、12cが下方に開口し、かつその前方に電磁ノイズを透過しないフロアパネル14が存在するため、空気取入れ口12a、12b、12cを介してバッテリケース12内に電磁ノイズが侵入しにくい。その結果、バッテリモジュール10の冷却を犠牲にすることなく、該バッテリモジュール10に対する外部からの電磁ノイズの影響を抑制できる。
【0055】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0056】
例えば、バッテリケース12は車幅方向に並んだ複数のブラケット部材20によって支持され、これらの間に複数のダクト部材22が取付けられているが、これに限らない。例えば、バッテリケース12をその車幅方向の両端で左右一対のブラケット部材で支持するようにし、1つの空気取入れ口とこれに空気を案内する1つのダクト部材をバッテリケースに設けるようにしてもよい。ただし、この場合、バッテリケースは両端で支持されているだけなので、バッテリケース自体の剛性を高くする必要がある。
【0057】
また、バッテリケースに開閉可能な空気取入れ口を形成するとともに、車室内の電磁ノイズの強度が所定の強度より低いときに、該空気取入れ口を開口するようにし、バッテリケース内に多くの空気を取入れるようにしてもよい。
【0058】
この場合、例えば、図4に示すように、バッテリケース12の車両後側の側面に空気取入れ口12pを形成し、この空気取入れ口12pを開閉するシャッタ40と、シャッタ40を駆動するモータ42と、車室内の電磁ノイズを検出する電磁ノイズセンサ44とを設ける。また、電磁ノイズセンサ44が所定の強度以上の電磁ノイズを検出しているときはモータ42を制御してシャッタ40により空気取入れ口12pを閉口し、該センサ44が所定の強度より小さい電磁ノイズを検出しているときは該モータ42を制御して該シャッタ40を退避させて該空気取入れ口12pを開口するコントローラ(図示せず)を設ける。
【0059】
これにより、電磁ノイズの影響をバッテリモジュールが大きく受けないときに、多くの空気をバッテリケース内に取入れて、該バッテリモジュールをより冷却することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明は、金属製バッテリケースに収容され、該ケースに形成された空気取入れ口を介して流入した空気によって冷却されるバッテリに対し、冷却を犠牲にすることなく、外部からの電磁ノイズの影響を抑制することができる。したがって、バッテリを使用する分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0061】
10 バッテリモジュール
10a 複数の電池セル
10b 制御装置(コントローラ)
12 バッテリケース
12a、12b、12c 空気取入れ口
14 フロアパネル
20 バッテリケース支持手段(ブラケット部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルとこれらの電池セルを制御する制御装置とが一体化されたバッテリモジュールと、該バッテリモジュールを収容するとともに空気取入れ口を備えた金属製のバッテリケースとを有する電動車両のバッテリ構造であって、
前記バッテリケースを車体のフロアパネルから上方に離間した状態で支持するバッテリケース支持手段を有し、
前記空気取入れ口は、該ケースのフロアパネルと対向する底面に形成されていることを特徴とする電動車両のバッテリ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両のバッテリ構造において、
フロアパネルの左右両側部に立設された左右一対のシート用ブラケット部材に、前記フロアパネルから上方に離間した状態でシートが支持されており、
前記バッテリケースは、該シートの下方の空間に配置されていることを特徴とする電動車両のバッテリ構造。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記空気取入れ口は、前記バッテリケースの底面の車両後側に形成され、
前記バッテリケースの底面に沿って該バッテリケースの車両前側から前記空気取入れ口に空気を案内するダクト部材が設けられていることを特徴とする電動車両のバッテリ構造。
【請求項4】
請求項3に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記空気取入れ口は、車幅方向に並んで複数形成されているとともに、
前記ダクト部材は、各空気取入れ口に対応させて車幅方向に並んで複数設けられており、かつ、
前記バッテリケース支持手段は、前記複数のダクト部材間に配設されてバッテリケースをフロアに固定するバッテリケース用ブラケット部材で構成されていることを特徴とする電動車両のバッテリ構造。
【請求項5】
請求項4に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記ダクト部材とバッテリケース用ブラケット部材は、前記バッテリケースに共止めされていることを特徴とする電動車両のバッテリ構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記バッテリケース内における空気取入れ口からバッテリモジュールに至る空気の通過経路にヒータが配置されていることを特徴とする電動車両のバッテリ構造。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記シートは、車室内の後部に配置されたリヤシートであり、かつ、
前記バッテリケースの車両前側から該ケースの一方の側面に沿って車両後側に向かって延びる排気通路が設けれらるとともに、
前記リヤシートの後方に配置され、前記排気通路を介して前記バッテリケース内の空気を取り出すブロアを有することを特徴とする電動車両のバッテリ構造。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記左右一対のシート用ブラケット部材は、正面視で長方形枠形状断面の構造体であり、各ブラケット部材の両側面に、側面視で重ならないように貫通穴が形成されていることを特徴とする電動車両のバッテリ構造。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ構造において、
前記バッテリケースは、開閉可能な第2の空気取入れ口を備えるとともに、
車室内における電磁ノイズの強度を検出する電磁ノイズ検出手段と、
前記電磁ノイズ検出手段が検出する電磁ノイズの強度が所定の強度より低いときに、前記第2の空気取入れ口を開口させる取入れ口開閉手段とを有することを特徴とする電動車両のバッテリ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−234848(P2010−234848A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82514(P2009−82514)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】