説明

電動車両

【課題】正転・逆転のいずれか一方の回転方向のみに対して効率が高められた電動機を駆動力源として、生産性の低下やコストアップを招くことなく、効率を向上させることが可能な電動車両を提供すること。
【解決手段】少なくとも2つの電動機5,6を備えた電動車両Veにおいて、電動機5,6を、一方の回転方向への力行時における効率が他方の回転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成するとともに、後輪の駆動力を発生させる電動機6を、前進用電動機6として正転力行時における効率が逆転力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように配置し、前輪の駆動力を発生させる電動機5を、後進・回生用電動機5として逆転力行時における効率および回生時における効率が正転力行時における効率よりも高くなるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の車輪で発生させる駆動力をそれぞれ独立して個別に制御可能な電動機を搭載した電動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機は各種産業用機械や装置の動力源として広く利用されている。特に近年は、地球温暖化の防止や省エネルギの観点から、また電動機およびその電力源となる蓄電装置などの性能の向上に伴い、電動機が車両の駆動力源として用いられるようになってきている。車両の駆動力源として電動機を用いる場合、その電動機には、特に高出力化や高効率化あるいは小型・軽量化が要求される。
【0003】
そのような電動機の高出力化および高効率化を目的とした発明が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された発明は、永久磁石を回転子に内蔵したいわゆる埋込磁石形同期モータ(IPMモータ;Interior Permanent Magnet Moter)に関するものであって、固定子コアに固定子巻線を装着する固定子と、回転子コアを有する回転子とを備え、その回転子に、回転子コアに所定の極ピッチ角で設けられるとともに回転中心側を頂点とするV字に沿って1極に対する永久磁石を2個挿入するための第1の磁石穴および第2の磁石穴と、それら第1、第2の磁石穴にそれぞれ挿入された第1、第2の永久磁石と、前記V字の頂点部に配置されて第1、第2の磁石穴を仕切るためのセンターブリッジとが設けられている。そして、前記V字の頂点が極ピッチ角を2等分する中心線上にあり、前記V字の頂点を基準にした第1の磁石穴と極ピッチ角の中心線とのなす角度が、第2の磁石穴と極ピッチ角の中心線とのなす角度より小さくなるように構成されている。
【0004】
そして、特許文献2には、1対の前輪と、1対の後輪と、前輪を駆動する前輪モータと、後輪を駆動する後輪モータとを備えた電動車両に関する発明が記載されている。この特許文献2に記載された電動車両は、前輪モータと後輪モータの全てのモータが同一の出力特性を有していて、後輪モータとホイール間の減速比が前輪モータとホイール間の減速比よりも大きくなるように構成されている。
【0005】
なお、特許文献3には、車両の制動時に、その車両の運動エネルギを他のエネルギに変換することにより回生制動可能に構成された車両の回生制動制御装置に関する発明が記載されている。この特許文献3に記載された車両の回生制動装置は、車両の前輪と後輪の両方に回生制動トルクが伝達されるとともに、車両の回生制動が行われている際に、発生している回生制動トルクを検出し、その回生制動トルクに応じて、前輪と後輪の回生制動トルクの分担率を変更するように構成されている。
【0006】
また、特許文献4には、前後輪の一方の車輪を駆動するモータと、モータから車輪へのトルク伝達経路に介装されてモータと車輪との間のトルク伝達を断続可能な湿式クラッチと、車速を検出する車速検出手段と、その車速検出手段による車速が所定の基準車速値以上であると判定するとクラッチを断状態にするクラッチ断手段とを備えた制御装置であって、クラッチでの連れ回り状況を推定し、その連れ回り状況に応じて上記の基準車速値を変更するように構成された車両のクラッチ制御装置に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−296882号公報
【特許文献2】特開2000−166004号公報
【特許文献3】特開2009−142036号公報
【特許文献4】特開2003−156079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1に記載された永久磁石形同期回転電機によれば、一方向の回転方向に対して永久磁石の半径方向の長さを変えたV字形配列では磁石トルク、リラクタンストルクともに向上し、永久磁石形同期回転電機の効率を上げることができ、そして、一方向の回転方向に対する磁石トルクの向上は、永久磁石形同期回転電機の電流の低い低速・軽負荷領域の効率を大きく改善できる、とされている。すなわち、特許文献1に記載された永久磁石形同期回転電機は、回転子(ロータ)に設置する永久磁石の配置を、正転・逆転の回転方向に対して非対称とすることにより、一方向の回転方向に対する効率の向上を図ったものであり、そのため、正転・逆転のいずれか一方の回転方向へ回転する際の効率を、他方の回転方向へ回転する際の効率および回生制御される際の効率よりも向上させることができる。
【0009】
したがって、その特許文献1に記載された永久磁石形同期回転電機(電動機)を、例えば上記の特許文献2に記載されているような電動車両の駆動力源として車両に搭載することにより、前後進のいずれか一方の進行方向への走行時における電動車両の効率を、他方の進行方向への走行時における電動車両の効率および回生走行時における電動車両の効率よりも向上させることができる。すなわち、前後進のいずれか一方の進行方向への走行時における電動車両の電力消費率の向上を図ることができる。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された電動機は、上述のように、正転・逆転のいずれか一方の回転方向へ回転する際の効率を向上させることができる反面、他方の回転方向へ回転する際の効率および回生制御される際の効率は低下してしまうことになる。一般に電動車両が走行する際には、例えば高速道路やサーキットなどを走行するような特殊な場合を除き、後進方向への走行や、制動時や惰力走行時における電動機による回生制御が行われる場合も想定しておく必要がある。したがって、上記のようないずれか一方の回転方向のみに対して効率が高められた電動機を電動車両の駆動力源として用いたとすると、前後進のいずれか一方の進行方向、例えば前進方向への走行時における電動車両の効率を向上させることができる反面、後進方向への走行時における電動車両の効率および回生走行時における電動車両の効率は逆に低下してしまう場合がある。
【0011】
上記のような課題を解決するために、前進方向への走行時における電動車両の効率を向上させた電動機と、後進方向への走行時における電動車両の効率あるいは回生走行時における電動車両の効率を向上させた電動機との複数種類の電動機を用意して車両の走行状態に応じて使い分けたり、あるいは、電動機に対する入出力トルクの回転方向を切り替える回転切替機構を別途設けたりすることが考えられるが、そうすることにより、コストアップの要因となり、また生産性が低下したりしてしまう。このように、正転・逆転のいずれか一方の回転方向のみに対して効率が高められた電動機を駆動力源として、生産性の低下やコストアップを招くことなく、電動車両の効率向上を図るためには、未だ改良の余地があった。
【0012】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、正転・逆転のいずれか一方の回転方向のみに対して効率が高められた電動機を駆動力源として、生産性の低下やコストアップを招くことなく、効率を向上させることができる電動車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくとも前輪の駆動力と後輪の駆動力とを独立して制御可能な車両であって、該前後輪の各駆動力をそれぞれ個別に発生させる駆動力源として少なくとも2つの電動機を備えた電動車両において、前記電動機は、いずれか一方の回転方向への力行時における効率が他方の回転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成されているとともに、前記前後輪のいずれか一方の駆動力を発生させる前記電動機は、前進用電動機として前記車両を前進させる正転方向への正転力行時における効率が前記車両を後進させる逆転方向への逆転力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように配置され、前記前後輪の他方の駆動力を発生させる前記電動機は、後進・回生用電動機として前記逆転力行時における効率および回生時における効率が前記正転力行時における効率よりも高くなるように配置されていることを特徴とする電動車両である。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記電動機のうち少なくとも前記後進・回生用電動機に、該後進・回生用電動機の出力トルクを前記前進用電動機よりも大きな減速比で減速させる減速機構が設けられていることを特徴とする電動車両である。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記電動車両の走行時に、前記前進用電動機もしくは前記後進・回生用電動機のいずれか一方のみを制御して駆動力を発生させるもしくは回生を行う場合の効率と、前記前進用電動機および前記後進・回生用電動機の両方を制御して駆動力を発生させるもしくは回生を行う場合の効率とを比較し、該効率が高くなる方を選択して前記前進用電動機および/または前記後進・回生用電動機を制御することを特徴とする電動車両である。
【0016】
そして、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記電動機が、ロータに設置する永久磁石を正転・逆転の回転方向に対して非対称に配置することによりいずれか一方の回転方向への力行時における効率が他方の回転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成された埋込磁石形同期モータを含むことを特徴とする電動車両である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、正転方向もしくは逆転方向のいずれか一方の回転方向で力行制御される場合の効率が、他方の回転方向で力行制御される場合の効率および回生制御される場合の効率よりも高くなるように構成された電動機が、前後輪に駆動力を発生させる駆動力源として車両に搭載される。その電動機は、正転力行時における効率が高くなるように構成された前進用電動機と、逆転力行時および回生時における効率が高くなるように構成された後進・回生用電動機とに分けて用意されて、前進用電動機が、車両の前輪もしくは後輪のいずれか一方に設置され、後進・回生用電動機が、車両の前輪もしくは後輪の他方に設置される。したがって、車両の前進走行時には、前進用電動機が設置された前後輪のいずれか一方で前進方向の駆動力を発生させるように制御され、車両の後進走行時もしくは回生制動時には、後進・回生用電動機が設置された前後輪の他方で後進方向の駆動力を発生させるように、もしくは回生制動力を発生させるように制御される。そのため、車両の前進走行時、後進走行時、回生制動時のいずれの場合においても、常に効率が良い側の電動機により駆動力もしくは回生制動力を発生させることができ、その結果、電動車両の効率向上させることができる。
【0018】
また、請求項2の発明によれば、後進・回生用電動機に前進用電動機よりも減速比が大きい減速機構が設けられる。そのため、比較的に低速で大きなトルクが要求される車両の後進時に、後進・回生用電動機の出力トルクを減速して大きなトルクを出力することができる。それととともに、回生制動時に、車輪側からのトルクを増速して後進・回生用電動機に入力させることができ、回生効率を向上させることができる。
【0019】
また、請求項3の発明によれば、車両の走行時に、常に効率が最良となるように、前進用電動機および/または後進・回生用電動機が制御されて、駆動力もしくは回生制動力が発生させられる。そのため、電動車両の効率を一層向上させることができる。
【0020】
そして、請求項4の発明によれば、電動車両の駆動力源となる電動機が、ロータに永久磁石を設置した埋込磁石形同期モータによって構成される。そして永久磁石は、そのロータにおける配置が、電動機の正転・逆転の回転方向に対して非対称となるように、言い換えれば、ロータの円周方向を等分割するピッチ線を中心とする左右で(すなわち正転側と逆転側とで)非対称となるように、ロータに設置される。したがって、永久磁石を非対称に配置した埋込磁石形同期モータにより、いずれか一方向の回転効率を高めたこの発明における電動機を容易に構成することができる。そして、そのようにして構成した埋込磁石形同期モータのロータのステータに対する挿入方向を互いに逆にして組み付けることにより、前進用電動機と後進・回生用電動機とを容易に構成することができる。そのため、大幅な生産性の低下やコストアップを招くことなく、電動車両の効率を容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明に係る電動車両およびその駆動力源として用いる電動機の構成例を説明するための模式図である。
【図2】この発明に係る電動車両の他の構成例を説明するための模式図である。
【図3】この発明に係る電動車両の他の構成例を説明するための模式図である。
【図4】この発明に係る電動車両の他の構成例を説明するための模式図である。
【図5】この発明に係る電動車両の他の構成例を説明するための模式図である。
【図6】この発明に係る電動車両の駆動力源として用いる電動機の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明に係る電動車両の駆動力源として用いる電動機の他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図8】この発明に係る電動車両の駆動力源として用いる電動機の他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図9】この発明に係る電動車両の駆動力源として用いる電動機の他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図10】この発明に係る電動車両の駆動力源として用いる電動機の各制御例を実行する際に用いられるモータ効率マップの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする電動車両の構成および制御系統を図1に示す。この発明で対象とする電動車両Veは、駆動力源として、少なくとも左右の前輪1,2に付与するトルクと左右の後輪3,4に付与するトルクとをそれぞれ個別に制御することが可能な電動機5,6が設けられている。この図1で示す構成例では、前輪1,2のそれぞれに個別にトルクを付与する電動機5が設けられ、後輪3,4のそれぞれに個別にトルクを付与する電動機6が設けられた例を示している。
【0023】
具体的には、左側の前輪1に電動機5Lが設けられ、右側の前輪2に電動機5Rが設けられている。同様に、左側の後輪3に電動機6Lが設けられ、右側の後輪4に電動機6Rが設けられている。より具体的には、それら各電動機5L,5R,6L,6Rは、それぞれ、車輪1,2,3,4のホイール内部に組み込まれていて、それら各電動機5L,5R,6L,6Rの出力軸と、車輪1,2,3,4とが、それぞれ動力伝達可能に連結されている。
【0024】
上記の各電動機5L,5R,6L,6Rは、後述するように交流同期モータにより構成されていて、インバータ7を介してバッテリやキャパシタなどの蓄電装置8に接続されている。したがって、各電動機5L,5R,6L,6Rの駆動時には、蓄電装置8の直流電力がインバータ7によって交流電力に変換され、その交流電力が各電動機5L,5R,6L,6Rに供給されることによりそれら各電動機5L,5R,6L,6Rが力行制御されて、前輪1,2および後輪3,4に駆動トルクが付与される。
【0025】
また、各電動機5L,5R,6L,6Rは前輪1,2および後輪3,4の回転エネルギを利用して回生制御することも可能である。すなわち、各電動機5L,5R,6L,6Rの回生制動時には、前輪1,2および後輪3,4の回転(運動)エネルギが各電動機5L,5R,6L,6Rによって電気エネルギに変換され、その際に生じる電力がインバータ7を介して蓄電装置8に蓄電される。このとき、前輪1,2および後輪3,4には回生・発電力に基づく制動トルクが付与される。
【0026】
上記のインバータ7は、各電動機5L,5R,6L,6Rの回転状態を制御する電子制御装置(ECU)9に接続されている。この電子制御装置9には、例えば、各車輪1,2,3,4の回転速度(車輪速度)をそれぞれ検出する車輪速センサや各電動機5L,5R,6L,6Rの出力軸の回転角度を検出するレゾルバなどの各種センサ類(いずれも図示せず)からの検出信号、およびインバータ7からの情報信号などが入力されるように構成されている。
【0027】
一方、電子制御装置9からは、インバータ7を介して各電動機5L,5R,6L,6Rの回転をそれぞれ制御する信号が出力されるように構成されている。すなわち、各電動機5L,5R,6L,6Rの回転(力行・回生)を制御するために、各電動機5L,5R,6L,6Rへ供給するもしくは各電動機5L,5R,6L,6Rから回収する電流を制御するための制御信号が、電子制御装置9からインバータ7へ出力されるようになっている。
【0028】
このように、この構成例における各電動機5L,5R,6L,6Rは、いわゆるインホイールモータであり、各電動機5L,5R,6L,6Rの回転をそれぞれ個別に独立して制御することにより、前輪1,2および後輪3,4で発生させる駆動力もしくは回生制動力を、それぞれ独立して制御することが可能な構成となっている。
【0029】
そして、この発明における電動車両Veの駆動力源である各電動機5L,5R,6L,6Rは、いずれも、永久磁石をロータに内蔵したいわゆる埋込磁石形同期モータによって構成されている。さらに、この発明で用いられる埋込磁石形同期モータは、いずれか一方の回転方向への力行時における効率が他方の回転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成されている。具体的には、ロータに設置する永久磁石が、正転・逆転の回転方向に対して非対称に配置されている。図1には、後輪3,4のインホイールモータとして用いられる電動機6(6L,6R)が示してある。電動機6は、中空の円筒状に形成されたステータ61を有しており、そのステータ61の内周部分にロータ62が配置されている。そして、ロータ62には、永久磁石63,64が内蔵されている。
【0030】
ロータ62に内蔵される永久磁石63,64は、ロータ62の円周方向に等ピッチで複数個配置されている。永久磁石63と永久磁石64とは、互いに形状や大きさが異なっている。図1に示す構成例では、相対的に大きな体積を有する永久磁石63に対して、その永久磁石63よりも体積が小さい永久磁石64が用いられている。そして、それら永久磁石63および永久磁石64は、ロータ62における配置が電動機6の正転・逆転の回転方向に対して非対称となるように、それぞれロータ62に設置されている。言い換えると、永久磁石63と永久磁石64とは、ロータ62の円周方向を等分割するピッチ線PLを中心とする左右で(すなわち正転側と逆転側とで)、互いに非対称となるように、それぞれロータ62に設置されている。
【0031】
上記のように永久磁石63,64を正転・逆転の回転方向に対して非対称に配置した埋込磁石形同期モータによって電動機6を構成することにより、ロータ62が正転方向に回転する場合と逆転方向に回転する場合とで、ロータ62に作用する磁力が異なることになる。すなわち、図1に示す構成例では、電動機6が正転方向に力行制御される場合の方が電動機6が逆転方向に力行制御される場合よりも、ロータ62に大きな磁力が作用し、その結果、電動機6は大きな回転力(トルク)を出力することになる。反対に、電動機6が逆転方向に力行制御される場合は、電動機6が正転方向に力行制御される場合よりも出力するトルクは小さくなる。したがって、この電動機6は、正転方向に力行制御される場合の方が逆転方向に力行制御される場合よりも効率が高くなるように構成されている。なおこの説明において、電動機の正転方向とは、その電動機の出力トルクにより電動車両Veが前進する場合の回転方向のことを示し、電動機の逆転方向とは、その電動機の出力トルクにより電動車両Veが後進する場合の回転方向のことを示す。
【0032】
また、ロータ62が正転方向に回転している状態で、電動機6を回生制御すると、電動機6を正転方向に力行制御する場合よりもロータ62に作用する磁力は小さくなる。したがって、電動機6が正転方向に回生制御される場合は、正転方向に力行制御される場合よりも作用する回転力が小さくなる。すなわち、この電動機6は、正転方向に力行制御される場合の方が回生制御される場合よりも効率が高くなるように構成されている。
【0033】
上記のように、後輪3,4のインホイールモータとして搭載される電動機6は、正転方向への力行時における効率が逆転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成されている。これに対して、前輪1,2のインホイールモータとして搭載される電動機5は、逆転方向への力行時における効率が正転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成されている。これは、上記のように大きさ・形状が異なる永久磁石63,64が設置されたロータ62を、電動機6のステータ61と同一形状に形成した電動機5のステータ(図示せず)に、ステータ61に組み付ける場合と挿入方向を逆にして組み付けることにより、容易に構成することができる。
【0034】
上記のように、この発明における電動車両Veは、左右の前輪1,2および左右の後輪3,4の四輪で発生させる駆動力もしくは制動力を、それぞれ独立して個別に制御することが可能ないわゆるインホイールモータ車である。そして前輪1,2で発生させる駆動力・制動力を制御する電動機5(具体的には、前輪1で発生させる駆動力・制動力を制御する電動機5Lおよび前輪2で発生させる駆動力・制動力を制御する電動機5R)と、後輪3,4で発生させる駆動力・制動力を制御する電動機6(具体的には、後輪3で発生させる駆動力・制動力を制御する電動機6Lおよび後輪4で発生させる駆動力・制動力を制御する電動機6R)とが搭載されている。
【0035】
それら電動機5および電動機6は、それぞれ、いずれか一方の回転方向への力行時における効率が他方の回転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成されている。すなわち、電動機5は、電動車両Veが後進する逆転方向への力行時における効率が、電動車両Veが前進する正転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成され、電動機6は、電動車両Veが前進する正転方向への力行時における効率が、電動車両Veが後進する逆転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成されている。したがって、前輪1,2に搭載される電動機5(5L,5R)が、この発明における「後進・回生用電動機」に相当し、後輪3,4に搭載される電動機6(6L,6R)が、この発明における「前進用電動機」に相当している。
【0036】
さらに、各電動機5,6には、それぞれ、出力トルクを増幅して各車輪1,2,3,4へ伝達させるための減速機構10,11が設けられている。すなわち、電動機5Lの出力軸と車輪1との間、および電動機5Rの出力軸と車輪2との間に、減速機構10が設けられている。また、電動機6Lの出力軸と車輪3との間、および電動機6Rの出力軸と車輪4との間に、減速機構11が設けられている。そしてそれら減速機構10,11は、後輪3,4側に設けられる減速機構11の減速比よりも、前輪1,2側に設けられる減速機構10の減速比の方が大きくなるように構成されている。すなわち、この発明における「後進・回生用電動機」に相当して前輪1,2の駆動力もしくは制動力を制御する電動機5に、その電動機5の出力トルクを、この発明における「前進用電動機」に相当する電動機6よりも大きな減速比で減速させる減速機構11が設けられている。
【0037】
そのため、一般に、比較的低速で大きなトルクが要求される電動車両Veの後進走行時に、逆転方向への力行時における効率が正転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも良くなるように構成された電動機5の出力トルクを、減速機構11により減速して大きなトルクを出力することができる。それとともに、回生制動時に、各前輪1,2側からのトルクを増速して電動機5に入力させることができ、その結果、電動機5における回生制御の効率を向上させることができる。
【0038】
なお、上記の図1に示した電動車両Veの構成例では、この発明における「前進用電動機」に相当する電動機6が後輪3,4側に設けられ、この発明における「後進・回生用電動機」に相当する電動機5が前輪1,2側に設けられた例を示しているが、この発明における電動車両Veは、例えば図2に示すように、この発明における「前進用電動機」に相当する電動機6が前輪1,2側に設けられ、この発明における「後進・回生用電動機」に相当する電動機5が後輪3,4側に設けられた構成であってもよい。この場合も、各電動機5,6には、図1に示した構成例と同様に、この発明における「後進・回生用電動機」に相当する電動機5に、その電動機5の出力トルクをこの発明における「前進用電動機」に相当する電動機6よりも大きな減速比で減速させる減速機構11を設けることができる。
【0039】
また、上記の図1に示した構成例では、電動車両Veが、左右の前輪1,2および左右の後輪3,4の両方に駆動力源として各電動機5L,5R,6L,6Rを搭載した四輪駆動方式の車両として構成された例を示しているが、この発明における電動車両Veは、例えば図3に示すように、左右の前輪1,2および左右の後輪3,4のそれぞれの駆動力もしくは制動力を発生させる駆動力源として電動機12,13の2基の電動機が設けられた構成であってもよい。すなわち、この発明における「後進・回生用電動機」に相当する電動機12が後輪3,4側に設けられ、この発明における「前進用電動機」に相当する電動機13が前輪1,2側に設けられた構成であってもよい。あるいは、この図3に示す構成例の場合も、この発明における「前進用電動機」に相当する電動機13が後輪3,4側に設けられ、この発明における「後進・回生用電動機」に相当する電動機12が前輪1,2側に設けられた構成であってもよい。
【0040】
また、この場合も、各電動機12,13には、図1,図2に示した構成例と同様に、この発明における「後進・回生用電動機」に相当する電動機12に、その電動機12の出力トルクをこの発明における「前進用電動機」に相当する電動機13よりも大きな減速比で減速させる減速機構14を設けることができる。すなわち、電動機13に減速機構15が設けられている場合、それら減速機構14,15は、この発明における「前進用電動機」に相当する電動機13に設けられる減速機構15の減速比よりも、この発明における「後進・回生用電動機」に相当する電動機12に設けられる減速機構14の減速比の方が大きくなるように構成されている。
【0041】
さらに、この発明における電動車両Veは、例えば図4に示すように、この発明における「後進・回生用電動機」と車輪との間に、その間の動力伝達経路を接続・遮断するクラッチ機構を設けることもできる。すなわち、この図4に示す構成例では、この発明における「後進・回生用電動機」に相当する電動機5と前輪1,2との間に、もしくは、その電動機5と後輪3,4との間に、それら電動機5と前輪1,2との間の動力伝達経路、もしくは電動機5と後輪3,4との間の動力伝達経路を接続・遮断するクラッチ機構16が設けられている。
【0042】
また、例えば図5に示すように、前述の図3に示した構成例と同様に左右の前輪1,2および左右の後輪3,4のそれぞれの駆動力もしくは制動力を発生させる駆動力源として電動機12,13の2基の電動機が設けられた構成に対しても、この発明における「後進・回生用電動機」と車輪との間に、その間の動力伝達経路を接続・遮断するクラッチ機構を設けることもできる。すなわち、この図5に示す構成例では、この発明における「後進・回生用電動機」に相当する電動機12と前輪1,2との間に、もしくは、その電動機12と後輪3,4との間に、それら電動機12と前輪1,2との間の動力伝達経路、もしくは電動機12と後輪3,4との間の動力伝達経路を接続・遮断するクラッチ機構16が設けられている。
【0043】
この図5に示す構成例のように、この発明における「後進・回生用電動機」(電動機5もしくは12)と前輪1,2との間に、もしくは、その「後進・回生用電動機」と後輪3,4との間に、それら「後進・回生用電動機」と前輪1,2との間の動力伝達経路、もしくは「後進・回生用電動機」と後輪3,4との間の動力伝達経路を接続・遮断するクラッチ機構16を設けることにより、電動車両Veが前進走行する際の引き摺り損失を低減して電動車両Veの効率を向上させることができる。すなわち、電動車両Veが前進走行する際には、この発明における「前進用電動機」(電動機6もしくは13)を正転方向に力行制御して駆動力を発生させて電動車両Veを走行させるが、その際、上記のようなクラッチ機構16を備えていない場合は、「後進・回生用電動機」が従動させられて連れ回されることになる。したがって、上記のようにクラッチ機構16を設け、そのクラッチ機構16を「前進用電動機」の出力により電動車両Veを前進走行させる際に解放状態に制御することにより、「後進・回生用電動機」での引き摺り損失の発生を防止することができる。
【0044】
上記のように構成されたこの発明に係る電動車両Veは、その走行時に、駆動力源である各電動機5,6(もしくは12,13)を適宜制御することにより、より効率の良い走行を行うことができる。その場合の制御例を以下に説明する。
【0045】
図6は、その制御の一例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図6において、先ず、電動車両Veの車輪が正転しているか否か、すなわち、電動車両Veが前進方向に走行しているか否かが判断される(ステップS11)。車輪が正転していない、すなわち、電動車両Veが停止しているもしくは後進方向に走行していることにより、このステップS11で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
【0046】
一方、車輪が正転している、すなわち電動車両Veが前進方向に走行していることにより、ステップS11で肯定的に判断された場合には、ステップS12へ進み、正方向の駆動力要求、すなわち電動車両Veを前進させる方向の駆動力要求があるか否かが判断される。正方向の駆動力要求がないことにより、このステップS12で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
【0047】
これに対して、正方向の駆動力要求があることにより、ステップS12で肯定的に判断された場合には、ステップS13へ進み、モータ効率マップが読み込まれる。モータ効率マップとは、電動車両Veの各電動機5,6(もしくは12,13)を回転制御する場合の回転状態に応じた効率を示したマップであり、例えば図10に示すように、モータの回転数とトルクとをパラメータとした場合のモータ効率の高低を示すマップである。そしてこの場合は、例えば回転数や負荷に応じた力行制御時の効率を求めるためのマップである。
【0048】
ステップS13でモータ効率マップが読み込まれると、そのマップの読み込み値に基づいて、正駆動用モータのみの駆動の方が低損失であるか否か、すなわち全ての電動機5,6(もしくは12,13)を力行制御するよりも前進用電動機6(もしくは13)のみを力行制御した方が効率が良いか否かが判断される(ステップS14)。
【0049】
前進用電動機6(もしくは13)のみを力行制御した方が効率が良いことにより、このステップS14で肯定的に判断された場合は、ステップS15へ進み、正駆動用モータのみを駆動させることにより、すなわち前進用電動機6(もしくは13)のみを力行制御することにより、電動車両Veの要求駆動力が出力される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0050】
一方、前進用電動機6(もしくは13)のみを力行制御した方が効率が良くないことにより、ステップS14で否定的に判断された場合には、ステップS16へ進み、全モータを出力し、トータル損失を最少にしつつ、電動車両Veの要求駆動力が出力される。すなわち、電動車両Ve全体としての効率が最良となるように全ての電動機5,6(もしくは12,13)を力行制御することにより、電動車両Veの要求駆動力が出力される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0051】
なお、電動車両Veが、前述の図4もしくは図5に示したように、この発明における「後進・回生用電動機」と車輪との間にクラッチ機構16を備えた構成である場合には、以下の図7のフローチャートに示すように制御が実行される。すなわち、図7において、ステップS11からステップS14までの制御が、前述の図6のフローチャートで示した制御例と同様に実行される、そして、ステップS14において、前進用電動機6(もしくは13)のみを力行制御した方が効率が良いことにより肯定的に判断されると、ステップS21へ進み、クラッチ機構16が解放状態に制御され、前進用電動機6(もしくは13)のみを力行制御することにより、電動車両Veの要求駆動力が出力される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0052】
一方、ステップS14において、前進用電動機6(もしくは13)のみを力行制御した方が効率が良くないことにより否定的に判断されると、ステップS22へ進み、クラッチ機構16が係合状態に制御され、かつ電動車両Ve全体としての効率が最良となるように全ての電動機5,6(もしくは12,13)を力行制御することにより、電動車両Veの要求駆動力が出力される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0053】
さらに、電動車両Veが回生制御される場合には、以下の図8,図9のフローチャートに示すように制御が実行される。すなわち、図8において、先ず、電動車両Veの車輪が正転しているか否か、すなわち、電動車両Veが前進方向に走行しているか否かが判断される(ステップS31)。車輪が正転していない、すなわち、電動車両Veが停止しているもしくは後進方向に走行していることにより、このステップS31で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
【0054】
一方、車輪が正転している、すなわち電動車両Veが前進方向に走行していることにより、ステップS31で肯定的に判断された場合には、ステップS32へ進み、回生が必要か否か、すなわち各電動機5,6(もしくは12,13)を回生制御する必要があるか否かが判断される。回生要求がないことにより、このステップS32で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
【0055】
これに対して、回生要求があることにより、ステップS32で肯定的に判断された場合には、ステップS33へ進み、モータ効率マップが読み込まれる。このモータ効率マップは、前述の図6のフローチャートで説明したものと同様のマップであり、この場合は、例えば回転数や負荷に応じた回生制御時の効率を求めるためのマップである。
【0056】
ステップS33でモータ効率マップが読み込まれると、そのマップの読み込み値に基づいて、回生用モータのみの回生の方が発電量大であるか否か、すなわち全ての電動機5,6(もしくは12,13)を回生制御するよりも後進・回生用電動機5(もしくは12)のみを回生制御した方が効率が良いか否かが判断される(ステップS34)。
【0057】
後進・回生用電動機5(もしくは12)のみを回生制御した方が効率が良いことにより、このステップS34で肯定的に判断された場合は、ステップS35へ進み、回生用モータのみを回生させることにより、すなわち後進・回生用電動機5(もしくは12)のみを回生制御することにより、電動車両Veの回生走行が行われる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0058】
一方、後進・回生用電動機5(もしくは12)のみを回生制御した方が効率が良くないことにより、ステップS34で否定的に判断された場合には、ステップS36へ進み、全モータにて回生し、トータル発電量が最大になるように制御される。すなわち、電動車両Ve全体としての回生効率が最良となるように全ての電動機5,6(もしくは12,13)を回生制御することにより、電動車両Veの回生走行が行われる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0059】
このように、この発明に係る電動車両Veに対して、上記のような各制御を実行することにより、常に効率が最良となるように、前進用電動機6(もしくは13)および/または後進・回生用電動機5(もしくは12)の回転が制御されて、駆動力もしくは回生制動力が発生させられる。そのため、電動車両Veの効率を一層向上させることができる。
【0060】
また、図9のフローチャートに示す制御例は、電動車両Veが回生制御される場合に、要求される回生制動力も考慮した例である。すなわち、図9において、ステップS31,S32の制御が、上記の図8のフローチャートで示した制御例と同様に実行される。そして、ステップS41において、モータ効率マップが読み込まれ、また、電動車両Veの要求制動力が求められると、そのマップの読み込み値および要求制動力の値に基づいて、回生用モータのみの回生制動により電動車両Veの要求制動力を確保することが可能か否か、すなわち、後進・回生用電動機5(もしくは12)のみを回生制御することにより要求制動力を発生させることが可能か否かが判断される(ステップS42)。
【0061】
後進・回生用電動機5(もしくは12)のみを回生制御することにより要求制動力を発生させることが可能であることから、このステップS42で肯定的に判断された場合は、ステップS43へ進み、回生用モータのみを回生させることにより、すなわち後進・回生用電動機5(もしくは12)のみを回生制御することにより、電動車両Veの回生制動が行われる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0062】
一方、後進・回生用電動機5(もしくは12)のみを回生制御したのでは要求制動力を発生させることが不可能であることから、ステップS42で否定的に判断された場合には、ステップS44へ進み、全モータにて回生し、トータル回生制動力が最大になるように制御される。すなわち、電動車両Ve全体としての回生制動力が最大となるように全ての電動機5,6(もしくは12,13)を回生制御することにより、電動車両Veの回生制動が行われる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0063】
このように、電動車両Veの回生走行時に、その要求制動力も考慮して各電動機5,6(もしくは12,13)を回生制御することにより、電動車両Veの回生制御を効率良く実行するとともに、電動車両Veの回生制動力を確保して、制動安全性を向上させることができる。
【0064】
以上のように、この発明に係る電動車両Veによれば、正転方向もしくは逆転方向のいずれか一方の回転方向で力行制御される場合の効率が、他方の回転方向で力行制御される場合の効率および回生制御される場合の効率よりも高くなるように構成された電動機5,6(もしくは12,13)が、駆動力源として電動車両Veに搭載される。それらの電動機5,6(もしくは12,13)は、正転力行時における効率が高くなるように構成された前進用電動機6(もしくは13)と、逆転力行時および回生時における効率が高くなるように構成された後進・回生用電動機5(もしくは12)とに分けて用意されて、前進用電動機6(もしくは13)が、電動車両Veの前輪1,2もしくは後輪3,4のいずれか一方に設置され、後進・回生用電動機5(もしくは12)が、電動車両Veの前輪1,2もしくは後輪3,4の他方に設置される。
【0065】
したがって、電動車両Veの前進走行時には、前進用電動機6(もしくは13)が設置された車輪で前進方向の駆動力を発生させるように制御され、電動車両Veの後進走行時もしくは回生制動時には、後進・回生用電動機5(もしくは12)が設置された車輪で後進方向の駆動力を発生させるように、もしくは回生制動力を発生させるように制御される。そのため、電動車両Veの前進走行時、後進走行時、回生制動時のいずれの場合においても、常に効率が良い側の電動機により駆動力もしくは回生制動力を発生させることができ、その結果、電動車両Veの効率向上させることができる。
【符号の説明】
【0066】
1,2…前輪、 3,4…後輪、 5,5L,5R,12…電動機(駆動力源;後進・回生用電動機)、 6,6L,6R,13…電動機(駆動力源;前進用電動機)、 9…電子制御装置(ECU)、 11,15…減速機構、 16…クラッチ機構、 62…ロータ、 63,64…永久磁石、 Ve…電動車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前輪の駆動力と後輪の駆動力とを独立して制御可能な車両であって、該前後輪の各駆動力をそれぞれ個別に発生させる駆動力源として少なくとも2つの電動機を備えた電動車両において、
前記電動機は、いずれか一方の回転方向への力行時における効率が他方の回転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成されているとともに、
前記前後輪のいずれか一方の駆動力を発生させる前記電動機は、前進用電動機として前記車両を前進させる正転方向への正転力行時における効率が前記車両を後進させる逆転方向への逆転力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように配置され、
前記前後輪の他方の駆動力を発生させる前記電動機は、後進・回生用電動機として前記逆転力行時における効率および回生時における効率が前記正転力行時における効率よりも高くなるように配置されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記電動機のうち少なくとも前記後進・回生用電動機に、該後進・回生用電動機の出力トルクを前記前進用電動機よりも大きな減速比で減速させる減速機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記電動車両の走行時に、前記前進用電動機もしくは前記後進・回生用電動機のいずれか一方のみを制御して駆動力を発生させるもしくは回生を行う場合の効率と、前記前進用電動機および前記後進・回生用電動機の両方を制御して駆動力を発生させるもしくは回生を行う場合の効率とを比較し、該効率が高くなる方を選択して前記前進用電動機および/または前記後進・回生用電動機を制御することを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項4】
前記電動機は、ロータに設置する永久磁石を正転・逆転の回転方向に対して非対称に配置することによりいずれか一方の回転方向への力行時における効率が他方の回転方向への力行時における効率および回生時における効率よりも高くなるように構成された埋込磁石形同期モータを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−110158(P2012−110158A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258169(P2010−258169)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】