説明

電圧制御発振回路

【課題】発振周波数を上昇させた場合であっても、電圧制御発振回路のコンデンサの充放電電流の増加を抑制する。
【解決手段】コンデンサの充電電圧を入力電圧に応じた周波数で発振させる電圧制御発振回路であって、コンデンサの充電電圧の最低電圧が第1電圧、充電電圧の最高電圧が第1電圧より高い第2電圧となるよう、コンデンサを繰り返し充放電する充放電回路と、入力電圧に応じて第1電圧と第2電圧との差を制御する制御回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの回転速度制御等に使用されるPLL(Phase Locked Loop)回路においては、一般的に入力電圧に応じた電流でコンデンサを充放電させることにより、コンデンサの充電電圧を発振させる方式の電圧制御発振回路が用いられる。
【0003】
図6に一般的な電圧制御発振回路のブロック図を示す(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。電圧制御発振回路300は、入力電圧Vinに応じた周波数でコンデンサ320の充電電圧Vcapを発振させる回路である。まず、電圧電流変換回路310は、入力電圧Vinに応じた電流I1を生成する。切り替え回路311は、電圧電流変換回路310から供給される電流I1と比較回路312の比較結果Voとに基づいて、コンデンサ320を電流I1に応じた充放電電流Icapにて充放電する。詳述すると、コンデンサ320の充電電圧Vcapが所定のしきい値電圧Vt1より低くなると、比較結果Voにより切り替え回路311は、コンデンサ320を電流Icapにて充電する。また、コンデンサ320の充電電圧Vcapが、しきい値電圧Vt1より高い所定のしきい値電圧Vt2を超えると、比較結果Voにより切り替え回路311は、コンデンサ320を電流Icapにて放電するよう動作する。したがって、コンデンサの充電電圧Vcapの発振周波数は、入力電圧Vinに応じた充放電電流Icapの電流値により変化する。
【特許文献1】特開平5−327428号公報
【特許文献2】特開2000−349598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電圧制御発振回路に求められる発振周波数は、PLL回路の用途等に応じて異なる。したがって、電圧制御発振回路を集積回路で実現した場合、電圧制御発振回路の発振周波数を適宜変更できるよう、一般的にコンデンサ320は外付けとされる。外付けされるコンデンサの容量値は集積回路内のコンデンサの容量値より大きいため、コンデンサ320の容量値は大きくなり、電圧制御発振回路の消費電流のうち、コンデンサの充放電電流Icapは大きな割合を占めることとなる。
【0005】
近年の電圧制御発振回路においては、発振周波数を上昇させた場合であっても消費電流の増加を抑制させる必要がある。しかしながら、図6に示した電圧制御発振回路では、発振周波数を上昇させる場合に、容量値の大きいコンデンサを充放電すべくコンデンサの充放電電流も大きく増加させる必要があるため、消費電流の増加を抑制できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の電圧制御発振回路は、コンデンサの充電電圧を入力電圧に応じた周波数で発振させる電圧制御発振回路であって、前記コンデンサの前記充電電圧の最低電圧が第1電圧、前記充電電圧の最高電圧が前記第1電圧より高い第2電圧となるよう、前記コンデンサを繰り返し充放電する充放電回路と、前記入力電圧に応じて前記第1電圧と前記第2電圧との差を制御する制御回路と、を備えることとする。
【発明の効果】
【0007】
コンデンサの充電電圧を入力電圧に応じた周波数で発振させる電圧制御発振回路において、発振周波数を上昇させた場合であっても、コンデンサの充放電電流の増加を抑制する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態である電圧制御発振回路1の構成を示す図である。なお、本実施形態の電圧制御発振回路1は集積回路であることとする。
電圧制御発振回路1は、例えばモータの回転速度制御等に使用されるPLL回路に用いられ、入力電圧に応じた周波数の電圧を出力する回路であり、電圧電流変換回路10(第1電流生成回路)、制御回路11、切り替え回路12、比較回路13、方形波出力回路14、端子30,31から構成される。なお、切り替え回路12と比較回路13とが本発明の充放電回路に相当する。
【0010】
まず、図1に示した、電圧制御発振回路1を構成する各回路の概要を説明する。
電圧電流変換回路10は、入力電圧Vinが入力されることにより、入力電圧Vin及び抵抗20の抵抗値R1に応じた電流I1(第1電流)を生成し、電流I1に基づいたバイアス電圧Vb1とバイアス電圧Vb2とを、制御回路11と切り替え回路12とに夫々出力する回路である。なお、入力電圧Vinは、例えば、PLL回路において電圧制御発振回路1の前段に設けられるフィルタ回路(不図示)からの電圧とする。
【0011】
制御回路11は、バイアス電圧Vb1と比較回路13の比較結果である出力電圧Voとに応じたしきい値電圧Vtを出力する回路である。なお本実施形態においては、電圧レベルの低いしきい値電圧Vt1(第1電圧)と、しきい値電圧Vt1より電圧レベルの高いしきい値電圧Vt2(第2電圧)との二つのしきい値電圧Vtが出力されることとする。また、本実施形態において、入力電圧Vinの上昇に応じてバイアス電圧Vb1が変化すると、低いしきい値電圧Vt1と高いしきい値電圧Vt2との差は、小さくなるように設計されていることとする。
【0012】
切り替え回路12は、バイアス電圧Vb2と比較回路13の比較結果である出力電圧Voとに基づいて、コンデンサ21を電流Icapにて充放電する回路である。
比較回路13は、コンデンサ21の充電電圧Vcapと、制御回路11からのしきい値電圧Vtとを比較し、比較結果である出力電圧Voを出力する回路である。詳述すると、充電電圧Vcapがしきい値電圧Vt1より低くなると、比較回路13は、制御回路11に高いしきい値電圧Vt2を出力させ、切り替え回路12にコンデンサ21を充電させる。一方、充電電圧Vcapがしきい値電圧Vt2より高くなると、比較回路13は、制御回路11に低いしきい値電圧Vt1を出力させ、切り替え回路12にコンデンサ21を放電させる。なお本実施形態において、比較回路13は、出力電圧Voとして電圧Voa,Vobの二つの電圧を出力することとする。
【0013】
方形波出力回路14は、出力電圧Voに基づいて方形波の発振電圧Voscを出力する回路である。
また、電圧電流変換回路10に端子30を介して接続された抵抗20には、電圧電流変換回路10に入力された入力電圧Vinに応じた電圧が印加されることにより、入力電圧Vinに応じた電流I1が生成される。なお、本実施形態において電流I1の電流値はI1とする。
切り替え回路12と比較回路13とに端子31を介して接続されたコンデンサ21には、切り替え回路12からの電流Icapが充放電されることにより充電電圧としてVcapが発生する。
【0014】
前述の様に、本実施形態の電圧制御発振回路1は、入力電圧Vinの上昇に応じて、制御回路11の低いしきい値電圧Vt1と高いしきい値電圧Vt2との差が小さくなるよう設計されている。これにより、コンデンサ21の充放電電流Icapの増加を抑制しつつ、電圧制御発振回路1の発振周波数を上昇させることが可能である。
【0015】
次に、本実施形態の電圧制御発振回路1を構成する各回路の動作について説明する。
図2は、電圧電流変換回路10の一実施形態を示す図である。電圧電流変換回路10はオペアンプ40、NPNトランジスタ41、PNPトランジスタ42から構成される。
【0016】
NPNトランジスタ41のベース電極とエミッタ電極とは夫々、オペアンプ40の出力と反転入力とに接続されている。したがって、オペアンプ40は、反転入力の電圧が非反転入力に印加された入力電圧Vinに一致するように、NPNトランジスタ41のベース電極に印加されるバイアス電圧Vb1を制御する。その結果、抵抗20に印加される電圧は入力電圧Vinに等しくなり、電流I1=Vin/R1が抵抗20に流れることとなる。また、PNPトランジスタ42はダイオード接続されていることから、電流I1に応じたバイアス電圧Vb2がベース電極から出力される。
【0017】
図3は、制御回路11、切り替え回路12、比較回路13、方形波出力回路14の一実施形態を示す図である。
【0018】
制御回路11は、NPNトランジスタ50〜53、PNPトランジスタ54,55、バイアス電流源56,57、抵抗58〜61から構成される。なお、本実施形態においては、PNPトランジスタ54,55は同じサイズであり、抵抗59(電流電圧変換回路)の抵抗値はR2であることとする。
【0019】
NPNトランジスタ53とバイアス電流源57とはエミッタフォロアを構成していることから、抵抗60と抵抗61とで電源電圧VDDを分圧した電圧に応じた電圧VeがNPNトランジスタ53のエミッタ電極から出力される。また、NPNトランジスタ53から出力される電圧Veが一端に印加された抵抗59は、NPNトランジスタ50,51と、バイアス電流源56とからなる差動回路の負荷に相当する。なお、本実施形態ではバイアス電流源56(定電流回路)の電流を電流I2(定電流)とする。また、電流I2の電流値はI2とし、NPNトランジスタ51と抵抗59とが接続されたノードから出力される電圧をしきい値電圧Vtとする。抵抗58は、バイアス電圧Vb1がベース電極に印加されたNPNトランジスタ52のエミッタ抵抗に相当するため、抵抗58にはバイアス電圧Vb1に応じた電流I3(第3電流)が流れる。なお、本実施形態において、電流I3の電流値はI3とする。電流I3が流れることにより、ダイオード接続されたPNPトランジスタ54のベース電極には、電流I3に応じた電圧が発生する。PNPトランジスタ54,55は同じサイズのトランジスタによるカレントミラーであるため、PNPトランジスタ55にも同様に電流I3が流れ、結果としてバイアス電流源56に電流I3が供給されることとなる。なお、本実施形態においては、電流値I3が電流値I2より小さくなるよう設計されている。ここで、前述のようにNPNトランジスタ50,51、電流I3が供給されたバイアス電流源56は差動回路を構成するため、NPNトランジスタ50,51の何れか一方のみがオンすることとなる。なお、本実施形態においては、電流I2と電流I3との差の電流を電流I4(第2電流)とし、電流I4の電流値をI4とする。まず、NPNトランジスタ50がオンで、NPNトランジスタ51がオフしている場合、しきい値電圧VtにはNPNトランジスタ53から出力される電圧Veが発生する。一方、NPNトランジスタ50がオフで、NPNトランジスタ51がオンしている場合、しきい値電圧Vtとしては、NPNトランジスタ53から出力される電圧Veから抵抗59に流れる電流の電流値分だけ降下した電圧が出力される。すなわち、抵抗59の抵抗値はR2、抵抗59に流れる電流はI4であることから、しきい値電圧Vtとしては、Ve−R2×I4が出力されることとなる。本実施形態では、NPNトランジスタ50,51の状態が変わることにより出力されるしきい値電圧Vtのうち、低いしきい値電圧をVt1とし、高いしきい値電圧をVt2としている。したがって、しきい値電圧としてVt1=Ve−R2×I4,Vt2=Veとが夫々NPNトランジスタ50,51の状態に応じて出力されることとなる。なお、NPNトランジスタ52,PNPトランジスタ54,55、バイアス電流源56、抵抗58が本発明の第2電流生成回路に相当し、NPNトランジスタ50,51が本発明の電流制御回路に相当し、NPNトランジスタ52,PNPトランジスタ54,55、抵抗58が本発明の第3電流生成回路に相当する。
【0020】
切り替え回路12は、NPNトランジスタ70〜74、PNPトランジスタ75,76から構成される。なお、本実施形態において、PNPトランジスタ42,75,76は同じサイズ、さらにNPNトランジスタ70〜72は同じサイズであることとする。
【0021】
PNPトランジスタ75,76と電圧電流変換回路10のPNPトランジスタ42とはカレントミラーを構成するため、PNPトランジスタ75,76には電流I1が流れる。NPNトランジスタ70はダイオード接続されていることから、電流I1が供給されることにより電流I1に応じた電圧がベース電極に生成される。さらに、NPNトランジスタ71,72は、NPNトランジスタ70とカレントミラーを構成していることから、NPNトランジスタ71,72の夫々には電流I1が流れることとなる。
【0022】
また、電流I1が夫々流れるNPNトランジスタ71,72とNPNトランジスタ73,74とは差動回路を構成している。まず、NPNトランジスタ73がオフし、NPNトランジスタ74がオンしている場合、NPNトランジスタ74には、電流値2×I1の電流が流れ、コンデンサ21は、PNPトランジスタ76からの電流I1により充電されることとなる。一方、NPNトランジスタ73がオンし、NPNトランジスタ74がオフしている場合、NPNトランジスタ71,72に供給される電流の電流値が合計2×I1となるように、PNPトランジスタ76からの電流I1に加え、コンデンサ21に充電された電荷が電流I1となるように放電される。したがって、切り替え回路12は、NPNトランジスタ73とNPNトランジスタ74との差動入力の状態により、コンデンサ21を電流I1にて充放電する。本実施形態におけるコンデンサ21を充放電する電流Icapとしては、電流I1が相当することとなる。
【0023】
比較回路13は、NPNトランジスタ80〜83、バイアス電流源84〜86、抵抗87〜90から構成される。バイアス電流源84とNPNトランジスタ80,81とは、差動回路を構成し、NPNトランジスタ80,81の夫々のコレクタ電極には負荷として抵抗87,88が接続されている。なお、本実施形態では、バイアス電流源84の電流を電流I5とし、電流I5の電流値はI5とする。また、抵抗87,88の抵抗値は同じでありR3とする。したがって、NPNトランジスタ80,81のベース電極に夫々印加された電圧により、NPNトランジスタ80,81の夫々のコレクタ電極がハイレベル(電源電圧VDDの電圧レベル、以下Hレベル)、またはローレベル(VDD−R3×I5、以下Lレベル)に変化する。NPNトランジスタ82のエミッタ電極は、抵抗89を介してバイアス電流源85に接続されており、エミッタフォロアを構成する。したがって、抵抗89とバイアス電流源85とが接続されたノードからは、NPNトランジスタ82のベース電極に印加された電圧に応じた電圧が出力されることとなる。なお、NPNトランジスタ83、バイアス電流源86、抵抗90は夫々NPNトランジスタ82、バイアス電流源85、抵抗89と同じ構成であることから、抵抗90とバイアス電流源86とが接続されたノードからは、NPNトランジスタ83のベース電極に印加された電圧に応じた電圧が出力されることとなる。また、本実施形態においては、バイアス電流源85と抵抗89とが接続されたノードの電圧を出力電圧Voの一方である電圧Voa、バイアス電流源86と抵抗90とが接続されたノードの電圧を出力電圧Voの他方である電圧Vobとする。ここで、NPNトランジスタ80がオンし、NPNトランジスタ81がオフしている場合は、NPNトランジスタ82のベース電極に印加された電圧がLレベルとなり、NPNトランジスタ83のベース電極に印加された電圧がHレベルとなるため電圧Voaが電圧Vobより低くなる。一方、NPNトランジスタ80がオフし、NPNトランジスタ81がオンしている場合は、NPNトランジスタ82のベース電極に印加された電圧がHレベルとなり、NPNトランジスタ83のベース電極に印加された電圧がLレベルとなるため電圧Voaが電圧Vobより高くなる。
【0024】
方形波出力回路14は、コンパレータ100からなる。コンパレータ100の非反転入力と反転入力には夫々比較回路13からの電圧Voa,Vobが印加される。したがって、電圧Voaが電圧Vobより高い場合、コンパレータ100の出力である発振電圧VoscはHレベルとなり、電圧Voaが電圧Vobより低い場合、コンパレータ100の出力である発振電圧VoscはグランドGNDの電圧レベルとなる。
【0025】
ここで、本実施形態の電圧制御発振回路1の動作について説明する。なお、本実施形態における電圧制御発振回路1のコンデンサ21は、起動時は放電されているものとする。また、起動時のコンデンサ21の放電は、例えば起動されるとオンし、その後にオフするようなスイッチ(不図示)により実現可能である。図4は、電圧制御発振回路1の動作を説明するためのタイミングチャートであり適宜参照する。
【0026】
まず、電圧制御発振回路1が起動されると、バイアス電流源56,57,84〜86が生成され、制御回路11のNPNトランジスタ53からは電圧Veが出力されることとなる。一方、起動後にコンデンサ21の充電電圧Vcapは、グランドGNDの電圧レベルとなるように放電されている。したがって、しきい値電圧Vtの値によらず、比較回路13のNPNトランジスタ80はオフし、NPNトランジスタ81はオンすることとなる。この結果、比較回路13の出力である電圧Voaは電圧Vobより高くなり、制御回路11からは高いしきい値電圧Vt2が出力される。さらに、切り替え回路12からの充放電電流Icapとして、電流I1がコンデンサ21に供給される。また、電圧Voaは電圧Vobより高いため、コンパレータ100から出力される発振電圧VoscはHレベルとなる。
【0027】
電流I1によりコンデンサ21が充電され、コンデンサ21の充電電圧Vcapが高いしきい値電圧Vt2を超えると、比較回路13のNPNトランジスタ80はオンし、NPNトランジスタ81はオフする。この結果、比較回路13の出力である電圧Voaは電圧Vobより低くなり、制御回路11からは低いしきい値電圧Vt1が出力される。さらに、切り替え回路12は、充放電電流Icapとして電流I1でコンデンサ21を放電する。また、電圧Voaは電圧Vobより低いため、コンパレータ100から出力される発振電圧VoscはグランドGNDの電圧レベルとなる。さらに、電流I1によりコンデンサ21が放電され、コンデンサ21の充電電圧Vcapが低いしきい値電圧Vt1より低くなると、比較回路13のNPNトランジスタ80はオフし、NPNトランジスタ81はオンすることとなるため、前述の様に、制御回路11からは高いしきい値電圧Vt2が出力され、切り替え回路12からの充放電電流Icapとして、電流I1がコンデンサ21に供給される。この様に、本実施形態の電圧制御発振回路1は、充電電圧Vcapの最低電圧が低いしきい値電圧Vt1、充電電圧Vcapの最高電圧が高いしきい値電圧Vt2となるように、コンデンサ21の充放電を繰り返す。
【0028】
つぎに、入力電圧Vinの電圧値を変化させた場合の電圧制御発振回路1の動作について、図5に示した入力電圧Vinと発振電圧Voscの周波数との関係を参照しつつ説明する。前述の様に、コンデンサ21を充放電する電流I1及び低いしきい値電圧Vt1=Ve−R2×I4は入力電圧Vinに応じて変化する。具体的には、入力電圧Vinが上昇すると、電流I1の電流値は増加する。また、I4=I2−I3で、I3が入力電圧Vinの上昇に応じて増加するため、低いしきい値電圧Vt1は上昇する。したがって、入力電圧Vinが上昇することにより、充電電圧Vcapと発振電圧Voscとの周波数は上昇する。一方、入力電圧Vinが低下すると、前述の逆の動作となるため、結果的に充電電圧Vcapと発振電圧Voscとの周波数は低下する。したがって、しきい値電圧Vt1,Vt2が所定の電圧であり、入力電圧Vinに対して変化しない一般的な電圧制御発振回路と比較すると、本実施形態の電圧制御発振回路1は入力電圧Vinの変化範囲が同じであっても、出力可能な周波数範囲が拡大することとなる。
【0029】
以上に説明した構成からなる電圧制御発振回路1は、入力電圧Vinの上昇に応じて、低いしきい値電圧Vt1と高いしきい値電圧Vt2との差を小さくできる。これにより、例えば、コンデンサ21の充放電電流Icapの電流値が一定であっても、入力電圧Vinの上昇に応じて、コンデンサ21の充電電圧Vcapの発振周波数を上昇させることが可能である。したがって、発振周波数を上昇させる場合に、消費電流の増加に大きく寄与するコンデンサ21の充放電電流の増加を抑制することができる。
【0030】
また、電圧制御発振回路1は、入力電圧Vinの上昇に応じて、低いしきい値電圧Vt1と高いしきい値電圧Vt2との差を小さくするとともに、コンデンサ21の充放電電流Icapを増加することができる。したがって、入力電圧Vinの変化に応じて、しきい値電圧Vtと充放電電流Icapとのどちらか一方のみを変化させる場合と比較して、発振周波数の範囲を広く変化することが可能である。さらに、しきい値電圧Vtと充放電電流Icapの両方を入力電圧Vinの上昇に応じて変化させたときは、充放電電流Icapのみを変化させた場合と比べ、同じ周波数を得るためにコンデンサ21を充放電する電流を少なくできる。
【0031】
また、制御回路11は、比較回路13の出力電圧Voに応じて、低いしきい値電圧Vt1か高いしきい値電圧Vt2のどちらか一方のみを出力する。したがって、例えば特開2000−349598号公報に示されるように、2つのしきい値電圧Vtに対して夫々比較回路を設ける必要はなく、回路規模を小さくすることが可能となる。
【0032】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】電圧制御発振回路1の構成を示す図である。
【図2】電圧電流変換回路10の一実施形態を示す図である。
【図3】制御回路11、切り替え回路12、比較回路13、方形波出力回路14の一実施形態を示す図である。
【図4】電圧制御発振回路1の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】入力電圧Vinと発振電圧Voscの周波数との関係を示す図である。
【図6】一般的な電圧制御発振回路の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 電圧制御発振回路
10 電圧電流変換回路
11 制御回路
12 切り替え回路
13 比較回路
14 方形波出力回路
20,58〜61,87〜90 抵抗
21 コンデンサ
30,31 端子
40 オペアンプ
100 コンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧に応じた周波数でコンデンサを充放電することにより発振する電圧制御発振回路であって、
前記コンデンサの充電電圧の最低電圧が第1電圧、前記充電電圧の最高電圧が前記第1電圧より高い第2電圧となるよう、前記コンデンサを繰り返し充放電する充放電回路と、
前記入力電圧に応じて前記第1電圧と前記第2電圧との差を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とする電圧制御発振回路。
【請求項2】
前記入力電圧の上昇に応じて電流値が増加する第1電流を生成する第1電流生成回路を更に備え、
前記充放電回路は、前記コンデンサの充電または放電の少なくとも何れか一方を前記第1電流生成回路の前記第1電流に応じた電流で行い、
前記制御回路は、前記入力電圧の上昇に応じて前記第1電圧と前記第2電圧との前記差が小さくなるよう、前記差を制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の電圧制御発振回路。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記入力電圧の上昇に応じて電流値が減少する第2電流を生成する第2電流生成回路と、
一端に前記第2電流が供給され、前記第2電流の電流値の減少に応じて前記一端と他端との間の電圧差が小さくなる電流電圧変換回路と、
を含み、
前記第1電圧と前記第2電圧との前記差は、前記電流電圧変換回路の両端の前記電圧差に基づいて制御されること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の電圧制御発振回路。
【請求項4】
前記第1電圧または前記第2電圧の何れか一方は、前記電流電圧変換回路の前記他端に印加された電圧であり、
前記電流電圧変換回路は、
前記第2電流が供給されると、前記第1電圧または前記第2電圧のうち前記他端に印加されていない何れか一方を前記一端に出力し、前記第2電流の供給が停止されると、前記他端に印加された前記電圧を前記一端に出力し、
前記充放電回路は、
前記コンデンサの前記充電電圧と前記電流電圧変換回路の前記一端の電圧とを比較する比較回路と、
前記比較回路の比較結果に基づき、前記充電電圧が前記一端の電圧より低くなると、前記コンデンサを充電し、前記充電電圧が前記一端の電圧より高くなると、前記コンデンサを放電する切り替え回路と、
を含み、
前記制御回路は、
前記比較回路の比較結果に基づき、前記充電電圧が前記一端の電圧より低くなると、前記電流電圧変換回路の前記一端に前記第2電圧が出力され、前記充電電圧が前記一端の電圧より高くなると、前記電流電圧変換回路の前記一端に前記第1電圧が出力されるよう、前記第2電流の前記電流電圧変換回路への供給を制御する電流制御回路を更に含むこと、
を特徴とする請求項3に記載の電圧制御発振回路。
【請求項5】
前記第2電流生成回路は、
所定電流値の定電流を生成する定電流回路と、
前記入力電圧の上昇に応じて電流値が増加し、前記所定電流値より小さい第3電流を生成し、前記定電流回路に前記第3電流を供給する第3電流生成回路と、
を含み、
前記第2電流は、
前記定電流と前記第3電流との差に応じた電流であること、
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の電圧制御発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−44646(P2009−44646A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209793(P2007−209793)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】